説明

二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法

【課題】二次電池の種類や個体差によらずSOCを正確に検出することが可能な二次電池状態検出装置を提供すること。
【解決手段】二次電池14の状態を検出する二次電池状態検出装置1において、二次電池の任意の時点における内部抵抗を二次電池が基準の充電状態における内部抵抗との比で表した内部抵抗比と、二次電池の残容量と満充電容量の比によって求まる相対SOCとの対応関係を示す情報を格納する格納手段(RAM10c)と、二次電池の内部抵抗を検出する検出手段(電圧センサ11、電流センサ12)と、検出手段によって検出された内部抵抗に基づいて内部抵抗比を求め、格納手段に格納されている対応関係を示す情報に基づいて相対SOCを特定する特定手段(CPU10a)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等においては、二次電池に蓄積されている電力によって動作する電気デバイスの数が増加するとともに、例えば、電動ステアリングおよび電動ブレーキ等のように走行の安全に関連するデバイスも二次電池によって駆動されるようになっている。このため、二次電池の充電状態(例えば、SOC:State of Charge)を正確に知る必要が高くなっている。
【0003】
このようなSOCを検出するための技術として、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、例えば、二次電池の種類や個体差に起因してSOCを正確に検出することが困難な場合があるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は二次電池の種類や個体差によらず二次電池の状態を正確に検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、前記二次電池の任意の時点における内部抵抗を前記二次電池が基準の充電状態における内部抵抗との比で表した内部抵抗比と、前記二次電池の残容量と満充電容量の比によって求まる相対SOCとの対応関係を示す情報を格納する格納手段と、前記二次電池の内部抵抗を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された内部抵抗に基づいて前記内部抵抗比を求め、前記格納手段に格納されている前記対応関係を示す情報に基づいて前記相対SOCを特定する特定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、二次電池の種類や個体差によらず二次電池の状態を正確に検出することが可能となる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記基準の充電状態における内部抵抗は、前記二次電池が満充電か、または、それに近い状態における内部抵抗であることを特徴とする。
このような構成によれば、相対SOCの変化に対して内部抵抗の変化が少ない満充電またはそれに近い状態を基準とすることで、満充電からずれた状態を基準とした場合であっても誤差の発生を抑えることができる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記内部抵抗比は、前記二次電池の任意の時点における内部抵抗および基準の充電状態における内部抵抗を、基準温度における値にそれぞれ補正した値に基づいて算出することを特徴とする。
このような構成によれば、二次電池の温度が変化した場合であっても、二次電池の状態を正確に検出することができる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記格納手段は、前記内部抵抗比と、前記相対SOCとを対応付けしたテーブルとして前記対応関係を示す情報を格納していることを特徴とする。
このような構成によれば、テーブルを参照することで、低い計算コストで相対SOCを得ることができる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記格納手段は、前記内部抵抗比と、前記相対SOCとの関係を示す関係式として前記対応関係を示す情報を格納していることを特徴とする。
このような構成によれば、計算式を利用することで、格納部の必要な記憶領域を減らすことができる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記二次電池に流れる積算電流を検出する積算電流検出手段と、前記積算電流検出手段によって検出された積算電流の値と、前記特定手段によって特定された前記相対SOCの値に基づいて前記二次電池の満充電容量を計算し、前記二次電池の劣化状態を判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、二次電池の劣化状態を正確かつ簡易に判定することができる。
【0013】
また、本発明は、二次電池の状態を検出する二次電池状態検出方法において、前記二次電池の内部抵抗を検出する検出ステップと、前記検出ステップによって検出した内部抵抗を前記二次電池が基準の充電状態における内部抵抗との比で表した内部抵抗比を求めるとともに、前記内部抵抗比と、前記二次電池の残容量とSOHの比によって求まる相対SOCの値との対応関係を示す情報に基づいて前記相対SOCを特定する特定ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、二次電池の種類や個体差によらず二次電池の状態を正確に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二次電池の種類や個体差によらず二次電池の状態を正確に検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置の構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の動作原理を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態の動作原理を説明するための図である。
【図5】図4の測定対象の二次電池のSOHを示す図である。
【図6】相対SOCを求める際に実行される処理の一例を示す図である。
【図7】SOHを求める際に実行される処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、二次電池状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13を主要な構成要素としており、二次電池14の状態を検出する。ここで、制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の状態を検出する。電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、二次電池14自体または周囲の環境温度を検出し、制御部10に通知する。放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチと抵抗素子等によって構成され、制御部10によって半導体スイッチがオン/オフ制御されることにより二次電池14を間欠的に放電させる。
【0018】
二次電池14は、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、または、リチウムイオン電池等によって構成され、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジンを始動するとともに、負荷19に電力を供給する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。
【0019】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、二次電池14からの電力によって動作する。
【0020】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、表示部10d、I/F(Interface)10eを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラムbaを実行する際に生成されるデータや、後述するテーブルまたは数式等のパラメータ10caを格納する。表示部10dは、CPU10aから供給される情報を表示する、例えば、液晶ディスプレイ等によって構成される。I/F10eは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、放電回路15に駆動電流を供給してこれを制御する。
【0021】
(B)実施形態の動作原理の説明
つぎに、図3〜5を参照して、実施形態の動作原理について説明する。本発明者は、二次電池14の内部抵抗を、二次電池14の基準の充電状態における内部抵抗との比として表した内部抵抗比と、相対SOC(State of Charge)との関係が二次電池の種類や個体に拘わらず略一定であることを見いだした。そこで、本実施形態では、内部抵抗比と相対SOCとの関係を利用し、内部抵抗比から相対SOCを求めることを特徴とする。なお、相対SOCとは二次電池14の残容量を満充電容量SOH(State of Health)によって除算して得られる値(=残容量/SOH)である。
【0022】
より詳細には、二次電池14が所定の状態(例えば、満充電の状態または満充電に近い状態)における基準となる内部抵抗(以下、「基準内部抵抗」と称する)Z0と、検出時における内部抵抗Zとの比である内部抵抗比Zr(=Z/Z0)を求める。そして、各Zrにおける相対SOCの値を求め、これらを対応付けたテーブルを作成する。このようにして作成したテーブルは、前述したように二次電池14の種類(例えば、製造メーカや容量)または個体によらず略一定である。そして、相対SOCを求める場合には、測定した内部抵抗と、基準内部抵抗の比である内部抵抗比を求め、この内部抵抗比に対応する相対SOCをテーブルから取得することにより、相対SOCを得ることができる。なお、内部抵抗は二次電池14の温度によって変化することが知られているので、内部抵抗を基準となる温度における値に補正(温度補正)して用いることが望ましい。
【0023】
図3は、相対SOCと内部抵抗比との関係を示す図である。この図3では、菱形の各点が実測値であり、実線は実測値を式(1)に示す三次式によって近似した結果を示している。なお、式(1)ではxが相対SOCを示し、yが内部抵抗比を示し、a,b,c,dは定数である。図3の例では、内部抵抗比と相対SOCとの関係は、相対SOCが100%に近づくにつれて内部抵抗比が1に漸近し、100%から離れるにつれて内部抵抗比が1よりも大きくなる曲線である。なお、内部抵抗比は、温度補正を行った内部抵抗に基づいて求める。
【0024】
y=a・x+b・x+c・x+d ・・・(1)
【0025】
前述したテーブルは、式(1)に基づいて作成することができる。
【0026】
図4は、同じ種類の異なる個体の二次電池を、加速試験によってSOHを劣化させた場合の相対SOCと内部抵抗比との関係を示す図である。ここで、4桁の数は二次電池の個体を特定する番号である。この例では、0004および0005以外は加速試験によってSOHを意図的に劣化させてある。図5は各二次電池の番号と、SOHとの関係を示している。図4に示すように、SOHが異なる個体であっても同一の曲線上に実測値が分布していることが分かる。すなわち、個体によらず相対SOCと内部抵抗比との関係は略一定であることが理解できる。なお、このような関係は、二次電池14の種類に拘わらず成立することが、発明者の実測から明らかになっているので、二次電池14の種類が異なっている場合でも二次電池14の相対SOCを求めることができる。なお、以上では、テーブルに基づいて相対SOCを求めるようにしたが、式(1)を記憶しておき、この式(1)に解の公式を適用して、相対SOCを求めるようにしてもよい。
【0027】
(C)実施形態の詳細な動作の説明
つぎに、図6および図7を参照して、本発明の実施形態の詳細な動作について説明する。図6は相対SOCを検出する処理の流れを説明するためのフローチャートである。この処理が開始されると以下のステップが実行される。なお、以下の説明では、図3に示す曲線に対応する情報を格納したテーブルがRAM10cのパラメータ10caとして予め格納されているものとし、このテーブルに基づいて以下の処理を実行するものとする。なお、テーブルに格納するデータとしては、例えば、達成しようとする相対SOCの分解能が、例えば、2%である場合には、図3に示す相対SOCを2%刻みでサンプリングし、それぞれのサンプリング点における内部抵抗比を取得してテーブルに格納する。具体的には、例えば、相対SOCが10%から100%の範囲を2%刻み(10%,12%,14%,・・・,100%)で内部抵抗比をサンプリングし、テーブルに格納する。なお、相対SOCの刻みが一定である場合には、該当する内部抵抗比の値が格納されているアドレス値から相対SOCを求めることができる。もちろん、曲線の傾きに応じてサンプリングの刻みを調整することも可能である。具体的には、傾きが小さい場合にはサンプリングの刻みを大きくし、傾きが大きい場合にはサンプリングの刻みを小さくすることで誤差を抑制しつつ、テーブルのデータ量を減らすことができる。
【0028】
ステップS10では、制御部10のCPU10aは、二次電池14の静的内部抵抗Zを測定する。具体的には、CPU10aは、二次電池14が電気的平衡状態(充放電が殆どなされない状態)において、放電回路15により所定の周期で二次電池14を繰り返し放電させ、電圧と電流から二次電池14の静的内部抵抗(二次電池14が平衡状態における内部抵抗)Zを測定する。なお、このとき、CPU10aは、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の温度に基づいて静的内部抵抗Zの温度補正を行う。すなわち、内部抵抗は温度によって変化する(温度が上昇すると内部抵抗値が減少する)ので、温度と内部抵抗値との関係を示すテーブルをRAM10cに格納しておき、温度センサ13からの出力を参照してこのテーブルに基づいて基準温度における内部抵抗に温度補正を行う。あるいは、温度と内部抵抗の関係を示す温度特性曲線を、例えば、多項式によって近似し、この多項式に基づいて温度補正を行う。
【0029】
ステップS11では、CPU10aは、例えば、RAM10cにパラメータ10caとして格納されている基準内部抵抗Z0を取得する。なお、基準内部抵抗Z0としては、例えば、二次電池14が満充電か満充電に近い状態である場合に測定された静的内部抵抗に対して前述した温度補正を行って得られた値を基準内部抵抗として使用することができる。より詳細には、例えば、二次電池14の開放電圧OCV(Open Circuit Voltage)が所定の閾値(例えば、12.7V)よりも高い場合に測定された静的内部抵抗を基準内部抵抗Z0としてRAM10cに格納しておくことができる。なお、満充電または満充電に近い状態を基準として用いる理由としては、図3の曲線からも明白であるように、満充電に近い状態では曲線の傾きが小さいので満充電状態から多少ずれた状態を基準とした場合であっても誤差を少なくすることができるからである。
【0030】
ステップS12では、CPU10aは、ステップS10で取得した基準内部抵抗Z0と、ステップS11で取得した静的内部抵抗Zの比を計算し、内部抵抗比Zr(=Z/Z0)を得る。
【0031】
ステップS13では、CPU10aは、ステップS12で算出した内部抵抗比Zrに対応する相対SOCを、RAM10cにパラメータ10caとして格納されているテーブルに基づいて求める。具体的には、内部抵抗比が1.1の場合には、図3に示すように、相対SOCとして70弱の値が得られる。なお、内部抵抗比に該当する値がテーブルに格納されていない場合には、内部抵抗比により近い値を選択するか、あるいは、内部抵抗値に近い値の平均値を求めるようにしてもよい。
【0032】
ステップS14では、CPU10aは、ステップS13で得られた相対SOCを、例えば、図示せぬECU(Engine Control Unit)に通知する。この結果、ECUでは、例えば、相対SOCの値が所定の閾値よりも小さい場合には、オルタネータ16に内蔵されているレギュレータ(不図示)を制御して出力電圧を高くすることにより充電を促進する。また、相対SOCの値が所定の閾値よりも大きい場合には、例えば、レギュレータを制御して出力電圧を低くすることによりエンジン17にかかる負荷を軽減することで燃費を向上させることができる。あるいは、相対SOCの値が所定の閾値よりも小さい場合には、信号待ち等の場合にエンジン17を停止させることによりアイドリングによる燃料消費を抑制するいわゆるアイドリングストップ制御を実行しないことで、電力不足でエンジン17の再始動ができなくなることを防止できる。
【0033】
つぎに、図7を参照して、二次電池14の劣化を判定する際に実行されるフローチャートについて説明する。図7に示すフローチャートが実行されると、以下のステップが実行される。
【0034】
ステップS30では、CPU10aは、放電回路15を制御してパルス状の放電を行わせるとともに、そのときの電流および電圧を検出し、静的内部抵抗Z1を測定する。なお、このようにして測定した静的内部抵抗Z1に対しても、前述の場合と同様に温度補正を行う。
【0035】
ステップS31では、CPU10aは、ステップS30で測定した静的内部抵抗Z1に基づいてテーブルから対応する相対SOC1を取得する。より詳細には、CPU10aは、ステップS30で測定した静的内部抵抗Z1と、基準内部抵抗Z0との比から内部抵抗比Zrを求め、内部抵抗比Zrに対応する相対SOC1をテーブルから求める。
【0036】
ステップS32では、CPU10aは、過去に求めた静的内部抵抗Z2をRAM10cから取得する。ここで、過去に求めた静的内部抵抗Z2としては、例えば、図7に示すフローチャートが前回実行された際に取得した静的内部抵抗Z1を使用してもよいし、あるいは、前々回以前に実行された際に取得した静的内部抵抗Z1を使用してもよい。なお、Z1およびZ2の差が大きい程、より高い精度でSOHを判定することができるので、例えば、Z2の候補を複数格納しておき、Z1との差が大きいものを選択するようにしてもよい。もちろん、静的内部抵抗Z2に対しても温度補正が行われているものとする。
【0037】
ステップS33では、CPU10aは、ステップS32で取得した静的内部抵抗Z2に基づいてテーブルから対応する相対SOC2を取得する。より詳細には、CPU10aは、ステップS32で取得した静的内部抵抗Z2と、基準内部抵抗Z0との比から内部抵抗比Zrを求め、内部抵抗比Zrに対応する相対SOC2をテーブルから求める。なお、テーブルから求めるのではなく、例えば、過去に相対SOC2を求めた際に、静的内部抵抗Z2と相対SOC2とを対応付けしてRAM10cに格納しておき、RAM10cから取得するようにしてもよい。
【0038】
ステップS34では、CPU10aは、静的内部抵抗Z2を測定したタイミングから、静的内部抵抗Z1を測定するタイミングまでの間に二次電池14に流れた電流の電流積算値ΔIを取得する。ここで、電流積算値とは、二次電池14に流れる充放電電流値を積算することで得られる値であり、二次電池14の充放電電流の時間積分値を示す。
【0039】
ステップS35では、CPU10aは、ステップS33で読み出した相対SOC2とステップS31で取得した相対SOC1の差ΔSOC(=SOC2−SOC1)を求める。
【0040】
ステップS36では、CPU10aは、ステップS34で取得した電流積算値ΔIとステップS35で取得したΔSOCの比(=ΔI/ΔSOC)からSOHを求める。
【0041】
ステップS37では、CPU10aは、ステップS36で求めたSOHが閾値Thよりも小さいか否かを判定し、小さい場合(ステップS37:Yes)にはステップS38に進み、それ以外の場合(ステップS37:No)には処理を終了する。一例として、例えば、SOHの値が、二次電池14の新品時の半分以下になった場合にはステップS37においてYesと判定されてステップS38に進むようにすることができる。もちろん、これ以外の判定基準であってもよい。
【0042】
ステップS38では、CPU10aは、二次電池14が劣化していると判定し、例えば、表示部10dに二次電池14が劣化しているので交換の必要があることを示すメッセージを表示することができる。あるいは、図示しないECUに通知し、ECUが主体となって同様のメッセージを表示するようにすることもできる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態によれば、内部抵抗比と相対SOCの関係に基づいて相対SOCを求めるようにした。前述したように、内部抵抗比と相対SOCの関係を示す図3の曲線は、二次電池14の種類または個体によらず略一定であることから、二次電池の種類または個体によらず相対SOCを正確に求めることができる。
【0044】
また、相対SOCと電流積算値に基づいてSOHを求めるようにしたので、SOHを正確かつ簡易に求めることができる。また、二次電池14を満充電にすることなく、放電可能容量または満充電容量を知ることができるので、例えば、車両に搭載される場合のように、充放電が常に実行されているような使用環境でも、放電可能容量または満充電容量を知ることができる。
【0045】
また、満充電またはそれに近い状態の内部抵抗を基準内部抵抗として用いるようにしたので、図3に示すように曲線の傾きが小さい領域を使用するため、満充電から多少ずれた状態を基準として用いたとしても誤差の発生を抑えることができる。
【0046】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、図3に示す曲線のデータをテーブルとして保持し、このテーブルに基づいて相対SOCを求めるようにしたが、例えば、図3に示す曲線を示す数式(例えば、前述した式(1))をRAM10cに格納しておき、当該数式に、例えば、解の公式を適用して相対SOCを算出するようにしてもよい。
【0047】
また、以上の実施形態では、図3に示す曲線を式(1)に示す三次方程式によって近似するようにしたが、もちろん、これ以外の数式によって近似することも可能である。例えば、二次方程式によって近似したり、四次方程式以上の方程式によって近似したりしてもよい。あるいは、指数関数等によって近似することも可能である。
【0048】
また、以上の実施形態では、図3に示す曲線に対応するテーブルの値または数式は固定としたが、例えば、二次電池状態検出装置1の製品出荷時には、固定のテーブルまたは数式を記憶させておき、学習処理によって、テーブルの値または数式を調整するようにしてもよい。一例として、スタータモータ18によってエンジン17を始動する際(クランキングの際)に、二次電池14の動的内部抵抗であるクランキング抵抗を測定し、このクランキング抵抗からSOHを求めるとともに、電流積算値から残容量を求めSOHと残容量の比(=残容量/SOH)から相対SOCを求める。そして、このようにして求めた相対SOCと実測した内部抵抗比に基づいて、テーブルの値を修正することができる。また、数式を用いる場合には、以下のようにすることもできる。
【0049】
すなわち、求めようとする式を以下のように定義する。ここで、gは既知の関数であり、aは定数であるとする。
【0050】

【0051】
このとき、測定値としての以下の組が存在するとする。
(x,y)=(x,y),(x,y),・・・,(x,y) ・・・(3)
【0052】
この場合、以下のJを最小にするaを求めることで、適切なf(x)を求めることができる。
【0053】

【0054】
また、図2に示す制御部10では表示部10dを設けるようにしたが、表示部10dを設けない構成とし、制御部10によって求めた相対SOCをECUに通知し、ECUによって制御される表示部に対して情報を表示するようにしてもよい。
【0055】
また、静的内部抵抗を測定する際において、分極の影響または充放電電流の影響を排除する処理を行うようにしてもよい。具体的には、二次電池14に発生する分極の影響により、内部抵抗の測定精度が低下することを防止するために、例えば、充電分極の影響を受けている場合には放電電流パルスを二次電池14に印加し、放電分極の影響を受けている場合には充電電流パルスを二次電池14に印加した後に内部抵抗を測定することでこれらの分極の影響を低減することができる。また、充放電電流の影響を排除する方法としては、電流の測定値から直流電流成分を算出し、直流電流と内部抵抗の関係を示す式に基づいて基準の直流電流値における内部抵抗を推定することができる。
【0056】
また、以上の実施形態では、相対SOCまたはSOHのみを求めるようにしたが、例えば、求めた相対SOCまたはSOHに基づいて、例えば、エンジン17のアイドリングを停止する、いわゆる、アイドリングストップの実行を制御するようにしてもよい。具体的には、SOCが所定の閾値よりも高いと判定された場合には、アイドリングストップを実行し、所定の閾値よりも低いと判定された場合には、アイドリングストップを実行しないようにしてもよい。また、相対SOCが前述した閾値に近づいている場合には、例えば、負荷19の動作を停止させ、二次電池14のさらなる消耗を防ぐようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 二次電池状態検出装置
10 制御部
10a CPU(特性手段、積算電流検出手段、判定手段)
10b ROM
10c RAM(格納手段)
10d 表示部
10e I/F
11 電圧センサ(検出手段)
12 電流センサ(検出手段)
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、
前記二次電池の任意の時点における内部抵抗を前記二次電池が基準の充電状態における内部抵抗との比で表した内部抵抗比と、前記二次電池の残容量と満充電容量の比によって求まる相対SOCとの対応関係を示す情報を格納する格納手段と、
前記二次電池の内部抵抗を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された内部抵抗に基づいて前記内部抵抗比を求め、前記格納手段に格納されている前記対応関係を示す情報に基づいて前記相対SOCを特定する特定手段と、
を有することを特徴とする二次電池状態検出装置。
【請求項2】
前記基準の充電状態における内部抵抗は、前記二次電池が満充電か、または、それに近い状態における内部抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項3】
前記内部抵抗比は、前記二次電池の任意の時点における内部抵抗および基準の充電状態における内部抵抗を、基準温度における値にそれぞれ補正した値に基づいて算出することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項4】
前記格納手段は、前記内部抵抗比と、前記相対SOCとを対応付けしたテーブルとして前記対応関係を示す情報を格納していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項5】
前記格納手段は、前記内部抵抗比と、前記相対SOCとの関係を示す関係式として前記対応関係を示す情報を格納していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項6】
前記二次電池に流れる積算電流を検出する積算電流検出手段と、
前記積算電流検出手段によって検出された積算電流の値と、前記特定手段によって特定された前記相対SOCの値に基づいて前記二次電池の満充電容量を計算し、前記二次電池の劣化状態を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項7】
二次電池の状態を検出する二次電池状態検出方法において、
前記二次電池の内部抵抗を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出した内部抵抗を前記二次電池が基準の充電状態における内部抵抗との比で表した内部抵抗比を求めるとともに、前記内部抵抗比と、前記二次電池の残容量とSOHの比によって求まる相対SOCの値との対応関係を示す情報に基づいて前記相対SOCを特定する特定ステップと、
を有することを特徴とする二次電池状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189373(P2012−189373A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51567(P2011−51567)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】