説明

二次電池装置

【課題】組立て時の短絡による電池セル、配線の損傷に防止し、かつ、セルバランシングを円滑に行うことが可能な二次電池装置を提供する。
【解決手段】二次電池装置は、複数の電池セルBTを含む組電池12と、各電池セルの端子間の電圧を測定する電圧測定回路20と、各電池セルの電極と前記電圧測定回路との間を接続する複数の電圧検出用配線40と、各電圧検出用配線に設けられ、外部から抵抗値を変更可能な可変抵抗素子VRと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、複数の電池セルを有する二次電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両で使われる二次電池装置は、高出力でかつ頻繁な出力変化に対応する必要がある。このような二次電池装置は、一般に、必要な出力や容量に応じて、電池セルを複数個電気的に直列あるいは並列接続し、かつ、機械的にも一体化した組電池あるいは電池モジュールとして構成されている。電池モジュールにおいて、各電池セルは、正極および負極の電極端子を有し、複数の電池セルのうち、例えば隣接する2つの電池セルの電極端子は、導電部材で互いに接続されている。また、複数の電池セルは、外ケース内に並べて収容されている。
【0003】
また、二次電池装置は、複数の電池セルの電圧を検出し管理する電池制御装置を備えている。電池制御装置は電圧測定回路を有し、各電池セルの電極から電圧測定回路まで電圧検出線を接続することで各電池セルの電圧を測定している。
【0004】
上記の構成では、二次電池装置を組み立てる際に、電圧検出線同士が短絡して電圧検出線を損傷させたり、あるいは、電池セルにダメージを与える場合がある。このような電圧検出線の短絡時の電流を制限する目的で、各電圧検出線に保護抵抗を実装することが考えられる。十分な短絡保護を図る場合、保護抵抗の抵抗値は高い方が望ましい。
【0005】
一方、電池制御装置は、複数の電池セル間に電圧のバラツキがある場合、電圧の高い電池セルを放電させて電池セル間の電圧のバランスを取るセルバランシングを行う。このセルバランシングを行う際、電圧検出線の抵抗は低い方が望ましい。そのため、あまり大きな抵抗値を有する保護抵抗を電圧検出線に実装することができず、電圧検出線の十分な短絡保護が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−231175号公報
【特許文献2】特開2005−44701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、組立て時の短絡による電池セル、配線の損傷を確実に防止し、かつ、セルバランシングを円滑に行うことが可能な二次電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、二次電池装置は、複数の電池セルを含む組電池と、前記各電池セルの端子間の電圧を測定する電圧測定回路と、前記各電池セルの電極と前記電圧測定回路との間を接続する複数の電圧検出用配線と、前記各電圧検出用配線に設けられ、外部から抵抗値を変更可能な可変抵抗素子と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る二次電池装置を概略的に示す図。
【図2】図2は、組立て時、上記二次電池装置に磁界を印加する作業台を示す側面図。
【図3】図3は、第2の実施形態に係る二次電池装置における可変抵抗素子の抵抗温度特性を示す図。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る二次電池装置の組立て時に二次電池装置を加熱する工程を示す側面図。
【図5】図5は、第3の実施形態に係る二次電池装置を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら種々の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る二次電池装置10を概略的に示している。二次電池装置10は、例えばハイブリッド自動車や電動アシスト自転車の電源などに使用される二次電池装置である。
【0011】
二次電池装置10は、直列に接続された複数の電池セルBTを含む組電池12と、組電池12を制御および管理する電池制御装置14と、を備え、電池モジュールとして構成されている。組電池12は、並んで配設された複数の電池セルBTと、これらの電池セルBTを収容する図示しないケースと、隣り合う電池セルの電極端子間を電気的に接続するバスバー等を備えている。電池セルBTは、例えば、リチウムイオン二次電池として構成されている。なお、複数の電池セルBTは、直列に限らず、並列に接続してもよい。
【0012】
電池制御装置14は、各電池セルBTの端子間電圧を測定する電圧測定回路20と、組電池12と直列に接続された電流測定回路22と、電圧測定回路および電流測定回路の測定結果を受けて、電池セルBTの充放電容量を演算するとともに電池セルBTの充放電を制御するMPU24、組電池12に並列に接続された電源回路26、例えば充放電容量を演算するためのデータテーブルあるいは演算式と、演算された充放電容量とを記録するメモリ28と、電池セルBTの近傍に設置された温度センサにより温度を測定する図示しない温度測定回路と、測定値や演算値を外部機器100に送信する通信インタフェース30と、を備えている。
【0013】
更に、電池制御装置14は、MPU24の制御の下、電池セルBTの充電を制御する充電制御回路32、電池セルBTからの放電を制御する放電制御回路34、MPU24に情報を入力するための入力ポート36、およびMPU24から情報を出力するための出力ポート38を備えている。このような電池制御装置14は、制御回路基板等により構成され、組電池12のケース上に設置される。
【0014】
電圧測定回路20は、組電池12を構成する個々の電池セルBTの電圧を測定し、MPU24に測定電圧値を送る。電圧測定回路20と組電池12との間は、複数の電圧検出用の配線40が接続されている。配線40は、一端が電池セルBTの正極端子あるいは負極端子に接続され、他端がコネクタ23を介して電圧測定回路20に接続されている。
【0015】
各配線40には、保護抵抗Rおよび可変抵抗素子VRが直列に実装されている。保護抵抗Rは、例えば、100Ω程度の抵抗値を有している。可変抵抗素子VRは、外部から抵抗値を変更可能な抵抗素子であり、例えば、外部から磁界を印加することにより抵抗値が増大する磁気抵抗素子を用いている。この磁気抵抗素子は、所定の初期抵抗値、例えば、100Ω程度の初期抵抗値を有し、磁界が印加されると、その抵抗値が初期抵抗値から100〜1000倍に増大する。例えば、n-InSbを主成分とし2端子構造を有する磁気抵抗素子は、4T(テスラ)の磁界が印加されると、初期抵抗値の約150倍の抵抗値に増大する。可変抵抗素子VRは、増大された時の抵抗値が、保護抵抗Rの100〜1000倍程度、例えば、100KΩとなるように構成されている。
【0016】
複数の可変抵抗素子VRは、共通の回路基板上に実装され、同一の向きに並んで配置されている。この回路基板は、例えば、組電池12のケース上に載置されている。
【0017】
複数の電池セルBT間に電圧のバラツキがある場合、電圧測定回路20は、MPU24からの指示により、保護抵抗Rを介して特定の電池セルBT、つまり、他に比較して電圧の高い電池セルBT、を放電し、容量を調整することで、電池セル間の電圧のバランスを取るセルバランシングを行う。
【0018】
上記のように構成された二次電池装置10によれば、電圧測定回路20はMPU24からの指示により、特定の電池セルBTを、保護抵抗Rを介して放電し、容量を調整するセルバランシングを行う。保護抵抗Rは、電池セルBTと電圧測定回路20とを接続する配線40が他の回路と短絡した際に流れる電流を制限するとともに、セルバランシング時の電流を制限する目的で使用される。そのため、保護抵抗Rは、セルバランシング時には低い抵抗値であることが要求され、短絡保護の為には高い抵抗値を有することが要求される。
【0019】
配線40の短絡の可能性は、二次電池装置10の組立時に高くなる。本二次電池装置10では、保護抵抗Rと直列に可変抵抗素子VRを設けることにより、組立時には、図2に示すように、可変抵抗素子VRを含む二次電池装置に磁界を印加し、可変抵抗素子VRを高抵抗値とすることができる。例えば、作業台50の下に、磁界発生装置52が設けられている。作業台50上に二次電池装置10を載置した状態で、磁界発生装置52から磁界を発生し、二次電池装置10に印加する。この際、二次電池装置10は、可変抵抗素子VRが磁界印加により抵抗値が最大となる向きに合わせて配置される。たとえば、可変抵抗素子VRが実装されている回路基板54が磁界に対して垂直に位置するように、二次電池装置10を作業台50上に配置する。なお、作業台50あるいは磁界発生装置52の向きを調整可能とし、可変抵抗素子VRに所望の向きで磁界が印加されるように調整してもよい。
【0020】
上記のように、可変抵抗素子VRに磁界を印加し、可変抵抗素子VRを高抵抗値とした状態で、配線40を電圧測定回路20に接続することにより、組立作業中の配線40が短絡した場合でも、配線に流れる短絡電流を可変抵抗素子VRによって効果的に制限することができるようになる。
【0021】
また、組立て後、二次電池装置10の通常の動作時には、可変抵抗素子VRに印加される磁界が低くなるので、可変抵抗素子VRの抵抗値は小さくなり、初期抵抗値に戻る。そのため、可変抵抗素子VRが二次電池装置10のセルバランシング機能を妨げることはない。
【0022】
以上のように構成することで、組立て時の短絡による電池セル、配線の損傷を確実に防止し、かつ、通常動作時のセルバランシングを円滑に行うことが可能な二次電池装置が得られる。
【0023】
可変抵抗素子VRは、磁気抵抗素子に限らず、外部から抵抗値を変更可能な抵抗素子であれば他の可変抵抗素子としてもよい。可変抵抗素子VRとして、例えば、温度の上昇に応じて抵抗値が増大する温度抵抗素子、電界を印加することにより抵抗値が増大する電界抵抗素子、圧力の増加に応じて抵抗値が増大する圧力抵抗素子等を用いることができる。
【0024】
第2の実施形態に係る二次電池装置は、可変抵抗素子VRとして、温度抵抗素子を用いている。この二次電池装置において、可変抵抗素子以外の構成は、図1に示す第1の実施形態に係る二次電池装置と同一であり、その詳細な説明は省略する。
【0025】
温度抵抗素子は、所定の初期抵抗値、例えば、100Ωを有しているとともに、例えば、図3に示すような、抵抗温度特性を有している。この温度抵抗素子は、25℃時の抵抗値を基準として、温度が70℃程度上がると、抵抗値が100倍(R/R25℃)程度に増大する。
【0026】
第2の実施形態に係る二次電池装置10では、保護抵抗Rと直列に可変抵抗素子VRを設けることにより、組立時には、図4に示すように、可変抵抗素子VRを含む二次電池装置全体を恒温槽60に入れて120度程度の恒温とし、温度抵抗素子を高抵抗値とする。
【0027】
上記のように、可変抵抗素子VRを加熱して高抵抗値とした状態で、配線40を電池制御装置の電圧測定回路20に接続することにより、組立作業中の配線40が短絡した場合でも、配線に流れる短絡電流を可変抵抗素子VRによって効果的に制限することができるようになる。
【0028】
また、組立て後、二次電池装置10の通常の動作時、可変抵抗素子VRは常温程度まで下がるため、可変抵抗素子VRの抵抗値が小さくなり初期抵抗値に戻る。そのため、可変抵抗素子VRが二次電池装置10のセルバランシング機能を妨げることはない。
【0029】
以上のように構成することで、組立て時の短絡による電池セル、配線の損傷を確実に防止し、かつ、通常動作時のセルバランシングを円滑に行うことが可能な二次電池装置が得られる。
【0030】
第1および第2の実施形態において、二次電池装置は、保護抵抗を省略し、可変抵抗素子で保護抵抗を兼ねるようにしてもよい。すなわち、可変抵抗素子の初期抵抗値を、保護抵抗に対応する所望の値に設定しておくことにより、通常の動作時、および、セルバランシング時、可変抵抗素子を保護抵抗として活用することができる。この場合、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、部品点数を削減し、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0031】
次に、第3の実施形態に係る二次電池装置について説明する。
図5に示すように、第3の実施形態に係る二次電池装置10は、前述した可変抵抗素子に代えて、電圧検出用の配線40に実装されたスイッチング素子SWを有している。このスイッチング素子SWは、電池セルBTの電極端子と電圧測定回路との間に保護抵抗Rと直列に接続されている。スイッチング素子SWは、外部から開閉可能な、すなわち、外部環境の変化に応じて開閉可能なスイッチング素子であり、例えば、磁界が印加された際に開放する磁気スイッチ、電界が印加された際に開放する電界スイッチ、あるいは、所定温度以上に加熱された際に開放する温度スイッチ等が用いられる。
【0032】
本実施形態では、スイッチング素子SWとして、磁気スイッチを用いている。そして、スイッチング素子SWは、外部から磁界が印加されると、開放して、配線40を遮断する。
第3の実施形態に係る二次電池装置において、スイッチング素子SW以外の構成は、図1に示す第1の実施形態に係る二次電池装置と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
第3の実施形態に係る二次電池装置10では、組立て時、図2に示した作業台50に二次電池装置10を載置し、スイッチング素子SWに磁界を印加することにより、スイッチング素子SWが開放され、配線40が電池セルBTとコネクタ23との間で電気的に遮断される。この状態で、各配線40を電池制御装置14の電圧測定回路20に接続することにより、組立作業中の配線40が他の部分と短絡した場合でも、配線に流れる短絡電流を遮断し、効果的に制限することができる。
【0034】
また、組立て後、二次電池装置10の通常の動作時には、スイッチング素子SWに印加される磁界が低くなるので、スイッチング素子SWは閉状態となり、配線40を通電可能な状態とする。そのため、スイッチング素子SWが二次電池装置10のセルバランシング機能を妨げることはない。
【0035】
以上のように構成することで、組立て時の短絡による電池セル、配線の損傷を確実に防止し、かつ、通常動作時のセルバランシングを円滑に行うことが可能な二次電池装置が得られる。
【0036】
第3の実施形態において、二次電池装置は、保護抵抗を省略し、スイッチング素子SWで保護抵抗を兼ねるようにしてもよい。すなわち、スイッチング素子SWを閉状態で保護抵抗に対応する所望抵抗値を有するように構成することにより、通常の動作時、および、セルバランシング時、スイッチング素子SWを保護抵抗として活用することができる。
【0037】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
組電池を構成する電池セルの数、電池制御装置の構成等は、前述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…二次電池装置、12…組電池、14…電池制御装置、20…電圧測定回路、
24…MPU、40…電圧検出用の配線、52…磁界発生装置、60…恒温槽、
BT…電池セル、R…保護抵抗、VR…可変抵抗素子、SW…スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを含む組電池と、
前記各電池セルの端子間の電圧を測定する電圧測定回路と、
前記各電池セルの電極と前記電圧測定回路との間を接続する複数の電圧検出用配線と、
前記各電圧検出用配線に設けられ、外部から抵抗値を変更可能な可変抵抗素子と、
を備える二次電池装置。
【請求項2】
前記可変抵抗素子は、外部から磁界が印加された際に抵抗値が増大する磁気抵抗素子である請求項1に記載の二次電池装置。
【請求項3】
前記可変抵抗素子は、加熱された際に抵抗値が増大する温度抵抗素子である請求項1に記載の二次電池装置。
【請求項4】
前記可変抵抗素子は、外部から電界が印加された際に抵抗値が増大する電界抵抗素子である請求項1に記載の二次電池装置。
【請求項5】
前記可変抵抗素子は、所定の初期抵抗値を有し、外部から抵抗値が増大されていない時に、前記電圧検出用配線の保護抵抗を構成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の二次電池装置。
【請求項6】
前記各電圧検出用配線に設けられた保護抵抗を備えている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の二次電池装置。
【請求項7】
複数の電池セルを含む組電池と、
前記各電池セルの端子間の電圧を測定する電圧測定回路と、
前記各電池セルの電極と前記電圧測定回路との間を接続する複数の電圧検出用配線と、
前記各電圧検出用配線に設けられ、外部から電圧検出用配線をオンオフ可能なスイッチング素子と、
を備える二次電池装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子は、磁界が印加された際に開閉する磁気スイッチ、電界が印加された際に開閉する電界スイッチ、加熱された際に開閉する温度スイッチのいずれかを有する請求項7に記載の二次電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−43710(P2012−43710A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185487(P2010−185487)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】