二段式押釦スイッチ部材
【課題】最初の入力を軽いタッチで実現でき、次の入力の際には確実な入力感を与えることができ、設置面積の小スペース化を可能とする二段式押釦スイッチ部材を提供する。
【解決手段】第二スイッチ部材40の押し下げで最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材40からの押圧を受けた第一スイッチ部材30の押し下げで次の入力を実行する。第一スイッチ部材30は、坐屈可能な第一ドーム部32と、第一ドーム部32の内側に接続される第一押圧部33とを有し、第二スイッチ部材40は、第一ドーム部32の上方に配置される変形可能な第二ドーム部42と、第二ドーム部42の内側に接続される第二押圧部43と、第二押圧部43の押し込みで押し込み方向に可動な可動部45と、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形する薄肉部44とを有する。
【解決手段】第二スイッチ部材40の押し下げで最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材40からの押圧を受けた第一スイッチ部材30の押し下げで次の入力を実行する。第一スイッチ部材30は、坐屈可能な第一ドーム部32と、第一ドーム部32の内側に接続される第一押圧部33とを有し、第二スイッチ部材40は、第一ドーム部32の上方に配置される変形可能な第二ドーム部42と、第二ドーム部42の内側に接続される第二押圧部43と、第二押圧部43の押し込みで押し込み方向に可動な可動部45と、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形する薄肉部44とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段式押釦スイッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車載用機器、多機能固定電話機、携帯電話機等の電子機器の機能が益々高度化するに伴い、当該電子機器に多くのスイッチを備える必要性が高くなってきている。しかし、スイッチの数が多すぎると、操作が複雑になり、操作者の負担が増大する。加えて、電子機器の小型化を図る上では、スイッチの数を制限する必要がある。このような理由から、1つのスイッチで多機能を発揮できる押釦スイッチ部材が求められている。かかる押釦スイッチ部材として、例えば、坐屈可能な薄肉部分をそれぞれ備える内側弾性体および外側弾性体から成り、内側弾性体の外側を覆うように外側弾性体を配置したタッチレスポンスセンサが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されているタッチレスポンスセンサでは、外側弾性体を押圧していくと、外側弾性体の内側が内側弾性体に当接し、内側弾性体の薄肉部が先に坐屈し、最初の接点入力が行われる。さらに押圧を継続すると、次に外側弾性体の薄肉部が坐屈し、二番目の接点入力が行われる。
【0003】
また、図9に示す二段式押釦スイッチ部材も知られている。この二段式押釦スイッチ部材100は、基板(例えば、PCB)101上に固定されるリング形状の固定部110と、固定部110の内側に向かって延出する薄肉状の第一ドーム部111と、第一ドーム部111の内側に配置される円筒形状の第一押圧部材112と、第一押圧部材112の内側に向かって延出する薄肉状の第二ドーム部113と、第二ドーム部113の内側であって二段式押釦スイッチ部材部材100の略中央に配置される略円柱形状の第二押圧部材114とを連接した構成を有する。第一押圧部材112の底部には導電層115が形成されており、第二押圧部材114の底部には導電層116が形成されている。一方、基板101上には、導電層115の直下に離間して2つの接点102,103が、導電層116の直下に離間して2つの接点104,105が、それぞれ分離して形成されている。導電層115と接点102,103との距離は、導電層116と接点104,105との距離よりも小さい。
【0004】
二段式押釦スイッチ部材100の第二押圧部材114を基板101に向かって押圧していくと、まず、第一ドーム部111が坐屈して、導電層115と接点102,103とが接触し、接点102,103が導通状態になる。その状態からさらに押圧を継続すると、次に、第二ドーム部113が坐屈して、導電層116と接点104,105とが接触し、接点104,105が導通状態になる。こうして、第二押圧部材114の押圧で、二段の入力を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−301331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1に開示されるタッチレスポンスセンサには、次のような問題がある。それは、外側弾性体の押圧開始からストロークが増加するに伴い、操作者の指にかかる反力が増加し、指への負担が大きいという問題である。それは、外側弾性体の薄肉部が坐屈後、内側弾性体が二回坐屈するまでの間、一方的に反力が増加するからである。また、図9に示す二段式押釦スイッチ部材100は、第一ドーム部111を坐屈容易に構成すれば、第二ドーム部113のみを坐屈させれば良いだけなので、上記のタッチレスポンスセンサのような問題は生じにくい。しかし、二段式押釦スイッチ部材100は、第一ドーム部111と第二ドーム部113を、二段式押釦スイッチ部材100の径方向に直列にならべて配置する構造を有するため、底部の面積が大きくなってしまう。その結果、二段式押釦スイッチ部材100を電子機器の操作パネルに組み込むためには、広い設置面積を必要とするという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、最初の入力を次の入力に比べて軽いタッチで実現でき、次の入力の際には確実な入力感を操作者に与えることができ、かつ設置面積の小スペース化を可能とする二段式押釦スイッチ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、ともに弾性変形可能な第一スイッチ部材および第二スイッチ部材を押圧方向に重ねた構造を有し、第二スイッチ部材の押し下げにより最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材からの押圧を受けた第一スイッチ部材の押し下げにより次の入力を実行する二段式押釦スイッチ部材であって、第一スイッチ部材は、坐屈可能な第一ドーム部と、当該第一ドーム部の内側に接続される第一押圧部とを有し、第二スイッチ部材は、第一ドーム部の上方に配置される変形可能な第二ドーム部と、当該第二ドーム部の内側に接続される第二押圧部と、当該第二押圧部の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部と、当該可動部がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部から可動部への押圧を低減し、第二押圧部が第一押圧部を押し下げ可能に変形する薄肉部とを有する二段式押釦スイッチ部材としている。
【0009】
本発明の別の実施形態は、可動部を、第一押圧部の径方向内側に配置した二段式押釦スイッチ部材である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、第二押圧部の天面側に凹部を有し、薄肉部がその凹部の外縁部として形成されている二段式押釦スイッチ部材である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、さらに、第二押圧部の天面に、凹部を覆うキートップを備える二段式押釦スイッチ部材である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、さらに、凹部の内底部とキートップの下面との間に、可動部の上方への浮上を抑制する1若しくは2以上の浮上抑制部を備える二段式押釦スイッチ部材である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、さらに、浮上抑制部を、凹部の内底部との間若しくはキートップの下面との間で隙間を有するように形成した二段式押釦スイッチ部材である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、第二スイッチ部材を、第一スイッチ部材と同径若しくはより小径に形成した二段式押釦スイッチ部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最初の入力を次の入力に比べて軽いタッチで実現でき、次の入力の際には確実な入力感を操作者に与えることができ、かつ設置面積の小スペース化を可能とする二段式押釦スイッチ部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す二段式押釦スイッチ部材をその構成部材の単位に分解した状態を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す第一スイッチ部材の平面図および当該平面図中のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示す第二スイッチ部材の平面図および当該平面図中のB−B線断面図である。
【図5】図5は、図3に示すA−A線および図4に示すB−B線を合わせて、図1に示す二段式押釦スイッチ部材およびPCBを切断したときの断面図である。
【図6】図6は、図5に示す二段式押釦スイッチ部材のキートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重して次の入力がなされた段階(C)の各状態を示す断面図である。
【図7】図7は、キートップを押し込んでいく荷重過程および押し込んだキートップから荷重を解除する抜重過程における、ストローク量と操作者の指に感じる反力との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の二段式押釦スイッチ部材の第二の実施の形態であって、キートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重した段階(C)の各状態を示す断面図である。
【図9】従来の二段式押釦スイッチ部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の二段式押釦スイッチ部材の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
1.第一の実施の形態
図1は、第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材の斜視図である。
【0019】
第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1は、好適には、基板の一例である印刷回路基板(PCB)10上に固定される。二段式押釦スイッチ部材1は、弾性変形可能な弾性体20と、その上方に固定されるキートップ50とを備える。ただし、キートップ50は二段式押釦スイッチ部材1にとって必須の構成部材ではなく、二段式押釦スイッチ部材1は、少なくとも弾性体20を備えていればよい。弾性体20は、好ましくは、エラストマー、より好ましくはシリコーンゴムから構成される。キートップ50は、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等の如何なる材料で構成されても良く、好ましくは、樹脂から構成される。二段式押釦スイッチ部材1とPCB10との固定および弾性体20とキートップ50との固定については、はめ込み、接着、筐体による上下方向からの挟持等の如何なる方法であるかを問わない。PCB10は、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の回路基板である。ただし、PCB10として、ガラスコンポジット基板、アルミナ等から成るセラミックス基板を採用しても良い。
【0020】
図2は、図1に示す二段式押釦スイッチ部材をその構成部材の単位に分解した状態を示す分解斜視図である。
【0021】
PCB10の弾性体20を固定する側の面には、内側から外側に向かって、円形状の接点用電極11、リング形状の接点用電極12、リング形状の接点用電極13、リング形状の接点用電極14の順に、4種類の接点用電極11,12,13,14が互いに非接触状態で形成されている。接点用電極11,12,13,14は、互いにほぼ同じ厚さにて、好ましくは、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、タングステンあるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成される薄膜状若しくは薄板状の電極である。接点用電極11の形状は、円形以外の形状、例えば、三角形、四角形等の形状、あるいは櫛歯形状でも良い。接点用電極12,13,14は、円環状以外の形状、例えば、角枠形状であっても良い。接点用電極11,12,13,14は、CVD、PVD、金属箔の貼り付けなど如何なる方法で形成しても良い。
【0022】
弾性体20は、PCB10側から、弾性変形可能な第一スイッチ部材30、同じく弾性変形可能な第二スイッチ部材40の順に、押圧方向に重ねた構造を有する。第一スイッチ部材30は、接点用電極14を、その内方に覆う大きさである。第一スイッチ部材30および第二スイッチ部材40は、好適には同じ種類のエラストマー(好適には、シリコーンゴム)から構成されるが、別の種類のエラストマーから構成しても良い。二段式押釦スイッチ部材1の主要部である弾性体20は、第二スイッチ部材40の押し下げにより最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材40からの押圧を受けた第一スイッチ部材30の押し下げにより次の入力を実行することが可能な構成を有する。第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40とは、はめ込み、接着、別部材による挟持等の如何なる方法で重ねて配置していても良い。
【0023】
キートップ50は、円柱形状の操作部51と、その下面に操作部51より大径である円形のフランジ部52とを固定した形態を有する。キートップ50のフランジ部52は、第二スイッチ部材40の天面側と固定されている。
【0024】
図3は、図2に示す第一スイッチ部材の平面図および当該平面図中のA−A線断面図である。
【0025】
第一スイッチ部材30は、円環形状の第一脚部31と、当該第一脚部31の内側に接続される坐屈可能な第一ドーム部32と、当該第一ドーム部32の内側に接続される略円筒形状の第一押圧部33とを有する。第一脚部31は、その内側の環内領域に、接点用電極11,12,13,14を配置できる形態を有する。第一脚部31の下面には、第一脚部31の環内領域に連通する2本の溝31a,31aが形成されている。これら2本の溝31a,31aは、ほぼ一直線になるように形成されている。溝31a,31aは、第一スイッチ部材30をその上方から押圧したときに、環内領域の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝31aは、2つではなく、3つ以上とし、あるいは1つのみとしても良い。なお、第一脚部31は、第一スイッチ部材30にとって必須の構成部材ではない。例えば、第一ドーム部32を、PCB10あるいは第二スイッチ部材40の第二脚部41に固定するようにしても良い。第一ドーム部32は、第一脚部31の上方内側と第一押圧部33の外側とを接続する薄肉の部材であって、下方に向かって大径に広がるドーム形状を有する部材である。
【0026】
第一押圧部33は、第一ドーム部32の接合部分から、PCB10上の接点用電極13,14に接触しない高さまで下方に向かって延出する。第一押圧部33の径方向略中央には、円形の開口面を有する穴34が上下方向に貫通形成されている。この穴34は、第二スイッチ部材40の可動部45(後述する)を挿通可能に形成されている。第一押圧部33の下面、すなわち、PCB10との対向面には、略三日月形状の2つの凸部33a,33aが形成されている。さらに、凸部33a,33aを含む第一押圧部33の下面には、導電層35が形成されている。凸部33a,33aに形成されている導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14の真上になるように形成されている。このため、第一押圧部33が押し下げられると、凸部33a,33aの下面の導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14に接触し、その結果、接点用電極13,14は電気的に接続する。導電層35は、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、あるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成され、材料に限定されない。また、導電層35は、第一スイッチ部材30にとって必須の構成ではない。例えば、PCB10上にドーム型のスイッチを配置した場合には、第一押圧部33の先端に導電層35を形成する必要はない。
【0027】
第一スイッチ部材30の好適な大きさは、次のとおりである。穴34の直径(D1)は3.0mm、第一押圧部33の下方突出部分の直径(D2)は6.6mm、第一脚部31の内側に形成される環内領域の直径(D3)は9.0mm、第一押圧部33の天面の直径(D4)は8.0mm、第一ドーム部32の下方外縁の直径(D5)は9.4mm、第一脚部31の外縁の直径(D6)は14.0mm、第一ドーム部32の肉厚(T1)は0.3mm、導電層35の下面から第一脚部31の下面位置までの高さ(H1)は0.9mm、第一脚部31の高さ(H2)は1.5mm、第一スイッチ部材30の全高(H3)は3.5mmである。
【0028】
図4は、図2に示す第二スイッチ部材の平面図および当該平面図中のB−B線断面図である。
【0029】
第二スイッチ部材40は、円環形状の第二脚部41と、当該第二脚部41の内側に接続される変形可能な第二ドーム部42と、当該第二ドーム部42の内側に接続される略円筒形状の第二押圧部43と、第二押圧部43の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部45と、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形する薄肉部44とを有する。
【0030】
第二脚部41は、その内側の環内領域に、第一スイッチ部材30の第一ドーム部32および第一押圧部33を配置できる大きさを有する。第二脚部41の下面には、第二脚部41の環内領域に連通する2本の溝41a,41aが形成されている。これら2本の溝41a,41aは、ほぼ一直線になるように形成されている。溝41a,41aは、第二スイッチ部材40をその上方から押圧したときに、環内領域の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝41aは、2つではなく、3つ以上とし、あるいは1つのみとしても良い。なお、第二脚部41は、第二スイッチ部材40にとって必須の構成部材ではない。例えば、第二ドーム部42を、第一スイッチ部材30の第一脚部31に固定するようにしても良い。なお、第二押圧部43の下面と第一押圧部33の上面の重なる位置の少なくとも一方に溝部を設ける場合には、溝31aおよび溝41aのいずれか一方のみを形成するようにしても良い。
【0031】
第二ドーム部42は、第二脚部41の上方内側と第二押圧部43の外側下端とを接続する薄肉の部材であって、下方に向かって湾曲形状に広がる部材である。第二ドーム部42は、第一スイッチ部材30の第一ドーム部32の上方に配置される位置に形成されている。第二ドーム部42は、キートップ50を軽くタッチするだけで変形できるように、第一ドーム部32と比較して、より薄肉に、あるいはより柔らかい材料から構成されるのが好ましい。第二ドーム部42は、断面視にて上方に弧を描く形状であるが、弧を描かない斜面形状であっても良い。ただし、小さな押圧力にて第二ドーム部42を変形可能に設計するためには、第二ドーム部42は、断面視にて上方に弧を描く形状の方が好ましい。
【0032】
第二押圧部43の天面側の略中央には、下方にへこむ凹部46が形成されている。凹部46の下方には、第二押圧部43の押し込みによって下方に可動な可動部45が形成されている。可動部45は、第一スイッチ部材30の穴34を貫通する径および位置にて形成されている。可動部45の下方先端は、第二脚部41よりも下方に位置する。第二押圧部43の天面には、凹部46と連通して径方向外側に通じる1本の溝43aが形成されている。溝43aは、キートップ50をその上方から押圧したときに、凹部46内の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝43aは、1つではなく、2つ以上としても良い。
【0033】
凹部46の外縁部には、薄肉状の薄肉部44が形成されている。可動部45は、薄肉部44によって第二押圧部43と接続されている。薄肉部44は、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形することができる。薄肉部44は、断面視にて下方に弧を描く形状であるが、弧を描かない斜面形状であっても良い。ただし、可動部45が下降できなくなった後に、第二押圧部43がスムーズに下降可能なように薄肉部44が変形するには、薄肉部44は、断面視にて下方に弧を描く形状の方が好ましい。
【0034】
可動部45の下面には、導電層47が形成されている。導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12の真上になるように形成されている。このため、第二押圧部43が押し下げられると、可動部45の下面の導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12に接触し、その結果、接点用電極11,12は電気的に接続する。導電層47は、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、あるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成され、材料に限定されない。また、導電層47は、第二スイッチ部材40にとって必須の構成ではない。例えば、PCB10上にドーム型のスイッチを配置した場合には、可動部45の先端に導電層47を形成する必要はない。
【0035】
前述の第一スイッチ部材30の好適な大きさを前提とする第二スイッチ部材40の好適な大きさは、次のとおりである。可動部45の直径(D10)は2.5mm、第二脚部41の裏側に形成される環内領域の直径(D11)は10.5mm、凹部46の開口部の直径(D12)は4.0mm、第二押圧部43の天面の直径(D13)は9.0mm、第二ドーム部42の下方外縁の直径(D14)は11.0mm、第二脚部41の外縁の直径(D15)は14.0mm、導電層47の下面から第二脚部41の下面位置までの高さ(H10)は0.8mm、第二脚部41の高さ(H11)は1.5mm、第二押圧部43の下面から第二脚部41の下面までの高さ(H12)は2.7mm、第二押圧部43の天面から第二脚部41の下面までの高さ(H13)は4.5mmである。
【0036】
図5は、図3に示すA−A線および図4に示すB−B線を合わせて、図1に示す二段式押釦スイッチ部材およびPCBを切断したときの断面図である。
【0037】
第一スイッチ部材30の上に第二スイッチ部材40を重ねると、第二スイッチ部材40の可動部45の下端に形成される導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12との間に、隙間(w1)を隔てた状態になる。また、第一スイッチ部材30の第一押圧部33の下端に形成される導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14との間に、隙間(w2)を隔てた状態になる。さらに、第二スイッチ部材40の第二押圧部43の円環の下端は、第一スイッチ部材30の第一押圧部33の上面との間に、隙間(w3)を隔てた状態になる。隙間(w1)と隙間(w3)との関係は、w1=w3若しくはw1<w3の関係にある。導電層47が接点用電極11,12に接触して隙間(w1)がゼロになったときに、第二押圧部43の円環の下端が第一押圧部33の上面と同時に接触するか若しくは未だ非接触の状態となる必要があるからである。隙間(w1)がゼロになった後にキートップ50から第二スイッチ部材40へのさらなる押圧を受けると、薄肉部44が変形しながら、第二押圧部43が第一押圧部33を下方に向けて押し下げる。
【0038】
隙間(w2)は、好ましくは、隙間(w1)より大きい。最初の入力を軽いタッチで実行する一方、次の入力をある程度強い押し込みによって確実に行うようにするには、w1<w2の方が、設計上、容易だからである。ただし、隙間(w2)は必ずしも隙間(w1)より大きくなくても良い。導電層47が接点用電極11,12に接するまでの距離と、導電層35が接点用電極13,14に接するまでの距離との間には、w1とw3との関係と異なり、基本的に、相関関係がないからである。
【0039】
前述の第一スイッチ部材30および第二スイッチ部材40の好適な大きさを前提にすると、隙間(w1)、隙間(w2)および隙間(w3)は、それぞれ、0.7mm、0.9mmおよび0.7mmである。
【0040】
図6は、図5に示す二段式押釦スイッチ部材のキートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重して次の入力がなされた段階(C)の各状態を示す断面図である。図7は、キートップを押し込んでいく荷重過程および押し込んだキートップから荷重を解除する抜重過程における、ストローク量と操作者の指に感じる反力との関係を示すグラフである。
【0041】
キートップ50を押圧していないときには、二段式押釦スイッチ部材1は、図6に示す(A)の状態にある。このときには、ストロークがゼロであり、操作者の指に与える反力もゼロである(図7では荷重曲線上の点A)。キートップ50を押圧していくと(ストローク量:p(mm))、第二ドーム部42がすぐに変形して、可動部45の下端に形成される導電層47が接点用電極11,12に接触し、最初の入力がなされる。これとほぼ同時に、第二押圧部43の円環の下端が第一押圧部33の上面と接触する(図7では、荷重曲線上の点B)。点Bにおける力(F1)は、約1.0Nである。これ以降、キートップ50を押圧し続けると、第二スイッチ部40が第一スイッチ部30に対して押圧を与えることになる。第一ドーム部32が坐屈するまで、指への反力が急激に増大する。そして、ストローク量がr(mm)に達したときに、第一ドーム部32がその状態を維持するのに限界がきて、指への反力が最大になる。このときの力(F2)は約4.5Nである。そして、ついには、第一ドーム部32が坐屈して、指への反力が急激に低下していく。次に、ストローク量がs(mm)になったときに、第一押圧部33の下端に形成される導電層35,35が接点用電極13,14に接触し、次の入力がなされる(図7では、荷重曲線上の点C)。点Cにおける力(F3)は、約2.0Nである。これ以降、キートップ50を押圧しても、第一スイッチ部30および第二スイッチ部40の両方とも下降しないので、急激に指への反力が増大する。二段式押釦スイッチ部材1の性能としては、ピーク荷重を意味するF2は2〜10Nで、クリック率を意味する{(F2−F3)/F2}×100は30%以上が好ましく、ピーク加重が3〜7Nでクリック率が40%以上であるのがより好ましい。一方、F1は、0.3〜2Nであるのが好ましく、0.7〜1.5Nであるのがより好ましい。上述のように、図7に示すストローク量と反力の関係において、F2≒4.5N、F3≒2.0N、{(F2−F3)/F2}×100≒56%であることから、二段式押釦スイッチ部材1の性能は、ピーク荷重、復帰力およびクリック率とも、好ましい性能の範疇にある。
【0042】
2.第二の実施の形態
図8は、本発明の二段式押釦スイッチ部材の第二の実施の形態であって、キートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重した段階(C)の各状態を示す断面図である。
【0043】
第二の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1が第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1と共通する部分については、同一の符号で示し、重複した説明を省略する。第二の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1は、第一の実施の形態と異なり、第二押圧部43に形成されている凹部46の底面に、可動部45の上方への浮上を抑制する浮上抑制部48を備える。浮上抑制部48はキートップ50の方向に突出し、その先端は、第二押圧部43の天面の高さよりも低い位置に設定されており、浮上抑制部48の先端面とキートップ50の下面との間に隙間(w4)がある。
【0044】
キートップ50に荷重していない段階(A)、および当該段階(A)から荷重していき可動部45の先端に形成されている導電層47が接点用電極11,12に接触する段階(B)までは、隙間(w4)は維持される。しかし、第二スイッチ部材40が第一スイッチ部材30を押圧していくと、薄肉部44が変形しながら第二押圧部43が下降していく。この過程で、隙間(w4)は徐々に狭くなっていき、ついにはキートップ50の下面と浮上抑制部48の先端が接触する(段階(C))。浮上抑制部48は、その長さ方向に弾性変形可能となるように、エラストマー、好ましくはシリコーンゴムから構成されている。このため、浮上抑制部48は、キートップ50の押し下げを第一スイッチ部材30に伝達する妨げにならない。浮上抑制部48を可動部45の上方に設けることにより、可動部45の先端に形成されている導電層47が接点用電極11,12に接触した後、第二押圧部43が下降する際に、可動部45にかかる押圧が小さくなり、その結果、可動部45が上方に浮くという事態を効果的に防止できる。
【0045】
浮上抑制部48は、第二スイッチ部材40と一体成形にて凹部46の底面に形成されるのが好ましいが、別部材として凹部46に接着等により固定しても良い。また、浮上抑制部48を、キートップ50の下面に接着して、凹部46の底面との間に隙間(w4)を形成するようにしても良い。さらには、凹部46の底面とキートップ50の下面の両方にそれぞれ浮上抑制部を形成し、両浮上抑制部の間に隙間(w4)を形成するようにしても良い。また、浮上抑制部48を第二スイッチ部材40よりも伸縮性の高い材料で構成する場合には、浮上抑制部48の先端をキートップ50の下面に接触する高さに設定しても良い。かかる場合には、浮上抑制部48は、第二押圧部43の下降の妨げになりにくいからである。また、浮上抑制部48を1つのみならず、2以上設けても良い。
【0046】
3.その他の実施の形態
上述のように、本発明に係る二段式押釦スイッチ部材の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明に係る二段式押釦スイッチ部材は、上記の各実施の形態に限定されず、種々変形を施して実施可能である。
【0047】
例えば、可動部45の先端に形成される導電層47が接点用電極11,12に接した時点で、第二押圧部43の下面と第一押圧部33の上面とが非接触状態であり、隙間(w3)が存在するように、第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40をそれぞれ構成しても良い。また、可動部45は、第一押圧部33の穴34を挿通しているが、穴34の代わりに、第一押圧部33に側面を開口させた凹部を形成し、可動部45が凹部に沿って可動するようにしても良い。
【0048】
また、可動部45を第一押圧部33の外側に配置して、最初に可動部45の下降によって接点用電極13,14を接続し、次に、第一押圧部33の下降によって接点用電極11,12を接続するように、第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40を構成しても良い。
【0049】
薄肉部44は、凹部46の外縁部ではなく、別の形態で構成しても良い。例えば、凹部46に代えて、第二押圧部43に穴を貫通形成し、その穴の下方開口部分に複数本の紐状の弾性体を延出させ、当該紐状の弾性体に可動部45を接続しても良い。キートップ50は、必須の構成ではなく、また、前記の穴の上に被せるようにキートップ50を配置しても良い。
【0050】
第二脚部41を、第一脚部31の上方にてその側端面と面一になるようにしているが、第二脚部41が第一脚部31よりも内側に位置するように、第二スイッチ部材40を構成しても良い。また、第二脚部41が第一脚部31の上に存在するが、第一脚部31の側端面よりも外側に突出するように、第二スイッチ部材40を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車載用機器、携帯電話、携帯情報端末をはじめ各種電子機器の二段式押釦スイッチ部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 二段式押釦スイッチ部材
30 第一スイッチ部材
32 第一ドーム部
33 第一押圧部
40 第二スイッチ部材
42 第二ドーム部
43 第二押圧部
44 薄肉部
45 可動部
46 凹部
48 浮上抑制部
50 キートップ
w4 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段式押釦スイッチ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車載用機器、多機能固定電話機、携帯電話機等の電子機器の機能が益々高度化するに伴い、当該電子機器に多くのスイッチを備える必要性が高くなってきている。しかし、スイッチの数が多すぎると、操作が複雑になり、操作者の負担が増大する。加えて、電子機器の小型化を図る上では、スイッチの数を制限する必要がある。このような理由から、1つのスイッチで多機能を発揮できる押釦スイッチ部材が求められている。かかる押釦スイッチ部材として、例えば、坐屈可能な薄肉部分をそれぞれ備える内側弾性体および外側弾性体から成り、内側弾性体の外側を覆うように外側弾性体を配置したタッチレスポンスセンサが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されているタッチレスポンスセンサでは、外側弾性体を押圧していくと、外側弾性体の内側が内側弾性体に当接し、内側弾性体の薄肉部が先に坐屈し、最初の接点入力が行われる。さらに押圧を継続すると、次に外側弾性体の薄肉部が坐屈し、二番目の接点入力が行われる。
【0003】
また、図9に示す二段式押釦スイッチ部材も知られている。この二段式押釦スイッチ部材100は、基板(例えば、PCB)101上に固定されるリング形状の固定部110と、固定部110の内側に向かって延出する薄肉状の第一ドーム部111と、第一ドーム部111の内側に配置される円筒形状の第一押圧部材112と、第一押圧部材112の内側に向かって延出する薄肉状の第二ドーム部113と、第二ドーム部113の内側であって二段式押釦スイッチ部材部材100の略中央に配置される略円柱形状の第二押圧部材114とを連接した構成を有する。第一押圧部材112の底部には導電層115が形成されており、第二押圧部材114の底部には導電層116が形成されている。一方、基板101上には、導電層115の直下に離間して2つの接点102,103が、導電層116の直下に離間して2つの接点104,105が、それぞれ分離して形成されている。導電層115と接点102,103との距離は、導電層116と接点104,105との距離よりも小さい。
【0004】
二段式押釦スイッチ部材100の第二押圧部材114を基板101に向かって押圧していくと、まず、第一ドーム部111が坐屈して、導電層115と接点102,103とが接触し、接点102,103が導通状態になる。その状態からさらに押圧を継続すると、次に、第二ドーム部113が坐屈して、導電層116と接点104,105とが接触し、接点104,105が導通状態になる。こうして、第二押圧部材114の押圧で、二段の入力を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−301331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1に開示されるタッチレスポンスセンサには、次のような問題がある。それは、外側弾性体の押圧開始からストロークが増加するに伴い、操作者の指にかかる反力が増加し、指への負担が大きいという問題である。それは、外側弾性体の薄肉部が坐屈後、内側弾性体が二回坐屈するまでの間、一方的に反力が増加するからである。また、図9に示す二段式押釦スイッチ部材100は、第一ドーム部111を坐屈容易に構成すれば、第二ドーム部113のみを坐屈させれば良いだけなので、上記のタッチレスポンスセンサのような問題は生じにくい。しかし、二段式押釦スイッチ部材100は、第一ドーム部111と第二ドーム部113を、二段式押釦スイッチ部材100の径方向に直列にならべて配置する構造を有するため、底部の面積が大きくなってしまう。その結果、二段式押釦スイッチ部材100を電子機器の操作パネルに組み込むためには、広い設置面積を必要とするという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、最初の入力を次の入力に比べて軽いタッチで実現でき、次の入力の際には確実な入力感を操作者に与えることができ、かつ設置面積の小スペース化を可能とする二段式押釦スイッチ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態は、ともに弾性変形可能な第一スイッチ部材および第二スイッチ部材を押圧方向に重ねた構造を有し、第二スイッチ部材の押し下げにより最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材からの押圧を受けた第一スイッチ部材の押し下げにより次の入力を実行する二段式押釦スイッチ部材であって、第一スイッチ部材は、坐屈可能な第一ドーム部と、当該第一ドーム部の内側に接続される第一押圧部とを有し、第二スイッチ部材は、第一ドーム部の上方に配置される変形可能な第二ドーム部と、当該第二ドーム部の内側に接続される第二押圧部と、当該第二押圧部の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部と、当該可動部がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部から可動部への押圧を低減し、第二押圧部が第一押圧部を押し下げ可能に変形する薄肉部とを有する二段式押釦スイッチ部材としている。
【0009】
本発明の別の実施形態は、可動部を、第一押圧部の径方向内側に配置した二段式押釦スイッチ部材である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、第二押圧部の天面側に凹部を有し、薄肉部がその凹部の外縁部として形成されている二段式押釦スイッチ部材である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、さらに、第二押圧部の天面に、凹部を覆うキートップを備える二段式押釦スイッチ部材である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、さらに、凹部の内底部とキートップの下面との間に、可動部の上方への浮上を抑制する1若しくは2以上の浮上抑制部を備える二段式押釦スイッチ部材である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、さらに、浮上抑制部を、凹部の内底部との間若しくはキートップの下面との間で隙間を有するように形成した二段式押釦スイッチ部材である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、第二スイッチ部材を、第一スイッチ部材と同径若しくはより小径に形成した二段式押釦スイッチ部材である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最初の入力を次の入力に比べて軽いタッチで実現でき、次の入力の際には確実な入力感を操作者に与えることができ、かつ設置面積の小スペース化を可能とする二段式押釦スイッチ部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す二段式押釦スイッチ部材をその構成部材の単位に分解した状態を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す第一スイッチ部材の平面図および当該平面図中のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2に示す第二スイッチ部材の平面図および当該平面図中のB−B線断面図である。
【図5】図5は、図3に示すA−A線および図4に示すB−B線を合わせて、図1に示す二段式押釦スイッチ部材およびPCBを切断したときの断面図である。
【図6】図6は、図5に示す二段式押釦スイッチ部材のキートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重して次の入力がなされた段階(C)の各状態を示す断面図である。
【図7】図7は、キートップを押し込んでいく荷重過程および押し込んだキートップから荷重を解除する抜重過程における、ストローク量と操作者の指に感じる反力との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の二段式押釦スイッチ部材の第二の実施の形態であって、キートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重した段階(C)の各状態を示す断面図である。
【図9】従来の二段式押釦スイッチ部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の二段式押釦スイッチ部材の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
1.第一の実施の形態
図1は、第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材の斜視図である。
【0019】
第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1は、好適には、基板の一例である印刷回路基板(PCB)10上に固定される。二段式押釦スイッチ部材1は、弾性変形可能な弾性体20と、その上方に固定されるキートップ50とを備える。ただし、キートップ50は二段式押釦スイッチ部材1にとって必須の構成部材ではなく、二段式押釦スイッチ部材1は、少なくとも弾性体20を備えていればよい。弾性体20は、好ましくは、エラストマー、より好ましくはシリコーンゴムから構成される。キートップ50は、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等の如何なる材料で構成されても良く、好ましくは、樹脂から構成される。二段式押釦スイッチ部材1とPCB10との固定および弾性体20とキートップ50との固定については、はめ込み、接着、筐体による上下方向からの挟持等の如何なる方法であるかを問わない。PCB10は、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の回路基板である。ただし、PCB10として、ガラスコンポジット基板、アルミナ等から成るセラミックス基板を採用しても良い。
【0020】
図2は、図1に示す二段式押釦スイッチ部材をその構成部材の単位に分解した状態を示す分解斜視図である。
【0021】
PCB10の弾性体20を固定する側の面には、内側から外側に向かって、円形状の接点用電極11、リング形状の接点用電極12、リング形状の接点用電極13、リング形状の接点用電極14の順に、4種類の接点用電極11,12,13,14が互いに非接触状態で形成されている。接点用電極11,12,13,14は、互いにほぼ同じ厚さにて、好ましくは、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、タングステンあるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成される薄膜状若しくは薄板状の電極である。接点用電極11の形状は、円形以外の形状、例えば、三角形、四角形等の形状、あるいは櫛歯形状でも良い。接点用電極12,13,14は、円環状以外の形状、例えば、角枠形状であっても良い。接点用電極11,12,13,14は、CVD、PVD、金属箔の貼り付けなど如何なる方法で形成しても良い。
【0022】
弾性体20は、PCB10側から、弾性変形可能な第一スイッチ部材30、同じく弾性変形可能な第二スイッチ部材40の順に、押圧方向に重ねた構造を有する。第一スイッチ部材30は、接点用電極14を、その内方に覆う大きさである。第一スイッチ部材30および第二スイッチ部材40は、好適には同じ種類のエラストマー(好適には、シリコーンゴム)から構成されるが、別の種類のエラストマーから構成しても良い。二段式押釦スイッチ部材1の主要部である弾性体20は、第二スイッチ部材40の押し下げにより最初の入力を実行し、次に第二スイッチ部材40からの押圧を受けた第一スイッチ部材30の押し下げにより次の入力を実行することが可能な構成を有する。第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40とは、はめ込み、接着、別部材による挟持等の如何なる方法で重ねて配置していても良い。
【0023】
キートップ50は、円柱形状の操作部51と、その下面に操作部51より大径である円形のフランジ部52とを固定した形態を有する。キートップ50のフランジ部52は、第二スイッチ部材40の天面側と固定されている。
【0024】
図3は、図2に示す第一スイッチ部材の平面図および当該平面図中のA−A線断面図である。
【0025】
第一スイッチ部材30は、円環形状の第一脚部31と、当該第一脚部31の内側に接続される坐屈可能な第一ドーム部32と、当該第一ドーム部32の内側に接続される略円筒形状の第一押圧部33とを有する。第一脚部31は、その内側の環内領域に、接点用電極11,12,13,14を配置できる形態を有する。第一脚部31の下面には、第一脚部31の環内領域に連通する2本の溝31a,31aが形成されている。これら2本の溝31a,31aは、ほぼ一直線になるように形成されている。溝31a,31aは、第一スイッチ部材30をその上方から押圧したときに、環内領域の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝31aは、2つではなく、3つ以上とし、あるいは1つのみとしても良い。なお、第一脚部31は、第一スイッチ部材30にとって必須の構成部材ではない。例えば、第一ドーム部32を、PCB10あるいは第二スイッチ部材40の第二脚部41に固定するようにしても良い。第一ドーム部32は、第一脚部31の上方内側と第一押圧部33の外側とを接続する薄肉の部材であって、下方に向かって大径に広がるドーム形状を有する部材である。
【0026】
第一押圧部33は、第一ドーム部32の接合部分から、PCB10上の接点用電極13,14に接触しない高さまで下方に向かって延出する。第一押圧部33の径方向略中央には、円形の開口面を有する穴34が上下方向に貫通形成されている。この穴34は、第二スイッチ部材40の可動部45(後述する)を挿通可能に形成されている。第一押圧部33の下面、すなわち、PCB10との対向面には、略三日月形状の2つの凸部33a,33aが形成されている。さらに、凸部33a,33aを含む第一押圧部33の下面には、導電層35が形成されている。凸部33a,33aに形成されている導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14の真上になるように形成されている。このため、第一押圧部33が押し下げられると、凸部33a,33aの下面の導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14に接触し、その結果、接点用電極13,14は電気的に接続する。導電層35は、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、あるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成され、材料に限定されない。また、導電層35は、第一スイッチ部材30にとって必須の構成ではない。例えば、PCB10上にドーム型のスイッチを配置した場合には、第一押圧部33の先端に導電層35を形成する必要はない。
【0027】
第一スイッチ部材30の好適な大きさは、次のとおりである。穴34の直径(D1)は3.0mm、第一押圧部33の下方突出部分の直径(D2)は6.6mm、第一脚部31の内側に形成される環内領域の直径(D3)は9.0mm、第一押圧部33の天面の直径(D4)は8.0mm、第一ドーム部32の下方外縁の直径(D5)は9.4mm、第一脚部31の外縁の直径(D6)は14.0mm、第一ドーム部32の肉厚(T1)は0.3mm、導電層35の下面から第一脚部31の下面位置までの高さ(H1)は0.9mm、第一脚部31の高さ(H2)は1.5mm、第一スイッチ部材30の全高(H3)は3.5mmである。
【0028】
図4は、図2に示す第二スイッチ部材の平面図および当該平面図中のB−B線断面図である。
【0029】
第二スイッチ部材40は、円環形状の第二脚部41と、当該第二脚部41の内側に接続される変形可能な第二ドーム部42と、当該第二ドーム部42の内側に接続される略円筒形状の第二押圧部43と、第二押圧部43の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部45と、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形する薄肉部44とを有する。
【0030】
第二脚部41は、その内側の環内領域に、第一スイッチ部材30の第一ドーム部32および第一押圧部33を配置できる大きさを有する。第二脚部41の下面には、第二脚部41の環内領域に連通する2本の溝41a,41aが形成されている。これら2本の溝41a,41aは、ほぼ一直線になるように形成されている。溝41a,41aは、第二スイッチ部材40をその上方から押圧したときに、環内領域の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝41aは、2つではなく、3つ以上とし、あるいは1つのみとしても良い。なお、第二脚部41は、第二スイッチ部材40にとって必須の構成部材ではない。例えば、第二ドーム部42を、第一スイッチ部材30の第一脚部31に固定するようにしても良い。なお、第二押圧部43の下面と第一押圧部33の上面の重なる位置の少なくとも一方に溝部を設ける場合には、溝31aおよび溝41aのいずれか一方のみを形成するようにしても良い。
【0031】
第二ドーム部42は、第二脚部41の上方内側と第二押圧部43の外側下端とを接続する薄肉の部材であって、下方に向かって湾曲形状に広がる部材である。第二ドーム部42は、第一スイッチ部材30の第一ドーム部32の上方に配置される位置に形成されている。第二ドーム部42は、キートップ50を軽くタッチするだけで変形できるように、第一ドーム部32と比較して、より薄肉に、あるいはより柔らかい材料から構成されるのが好ましい。第二ドーム部42は、断面視にて上方に弧を描く形状であるが、弧を描かない斜面形状であっても良い。ただし、小さな押圧力にて第二ドーム部42を変形可能に設計するためには、第二ドーム部42は、断面視にて上方に弧を描く形状の方が好ましい。
【0032】
第二押圧部43の天面側の略中央には、下方にへこむ凹部46が形成されている。凹部46の下方には、第二押圧部43の押し込みによって下方に可動な可動部45が形成されている。可動部45は、第一スイッチ部材30の穴34を貫通する径および位置にて形成されている。可動部45の下方先端は、第二脚部41よりも下方に位置する。第二押圧部43の天面には、凹部46と連通して径方向外側に通じる1本の溝43aが形成されている。溝43aは、キートップ50をその上方から押圧したときに、凹部46内の空気を外部に逃がし、押圧の抵抗を低減するためのものである。溝43aは、1つではなく、2つ以上としても良い。
【0033】
凹部46の外縁部には、薄肉状の薄肉部44が形成されている。可動部45は、薄肉部44によって第二押圧部43と接続されている。薄肉部44は、可動部45がそれ以上押し下げられなくなった後に、第二押圧部43から可動部45への押圧を低減し、第二押圧部43が第一押圧部33を押し下げ可能に変形することができる。薄肉部44は、断面視にて下方に弧を描く形状であるが、弧を描かない斜面形状であっても良い。ただし、可動部45が下降できなくなった後に、第二押圧部43がスムーズに下降可能なように薄肉部44が変形するには、薄肉部44は、断面視にて下方に弧を描く形状の方が好ましい。
【0034】
可動部45の下面には、導電層47が形成されている。導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12の真上になるように形成されている。このため、第二押圧部43が押し下げられると、可動部45の下面の導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12に接触し、その結果、接点用電極11,12は電気的に接続する。導電層47は、導電性の高い材料(金、白金、銀、銅、あるいは上記金属の内の2種以上の合金など)から構成され、材料に限定されない。また、導電層47は、第二スイッチ部材40にとって必須の構成ではない。例えば、PCB10上にドーム型のスイッチを配置した場合には、可動部45の先端に導電層47を形成する必要はない。
【0035】
前述の第一スイッチ部材30の好適な大きさを前提とする第二スイッチ部材40の好適な大きさは、次のとおりである。可動部45の直径(D10)は2.5mm、第二脚部41の裏側に形成される環内領域の直径(D11)は10.5mm、凹部46の開口部の直径(D12)は4.0mm、第二押圧部43の天面の直径(D13)は9.0mm、第二ドーム部42の下方外縁の直径(D14)は11.0mm、第二脚部41の外縁の直径(D15)は14.0mm、導電層47の下面から第二脚部41の下面位置までの高さ(H10)は0.8mm、第二脚部41の高さ(H11)は1.5mm、第二押圧部43の下面から第二脚部41の下面までの高さ(H12)は2.7mm、第二押圧部43の天面から第二脚部41の下面までの高さ(H13)は4.5mmである。
【0036】
図5は、図3に示すA−A線および図4に示すB−B線を合わせて、図1に示す二段式押釦スイッチ部材およびPCBを切断したときの断面図である。
【0037】
第一スイッチ部材30の上に第二スイッチ部材40を重ねると、第二スイッチ部材40の可動部45の下端に形成される導電層47は、PCB10上の接点用電極11,12との間に、隙間(w1)を隔てた状態になる。また、第一スイッチ部材30の第一押圧部33の下端に形成される導電層35,35は、PCB10上の接点用電極13,14との間に、隙間(w2)を隔てた状態になる。さらに、第二スイッチ部材40の第二押圧部43の円環の下端は、第一スイッチ部材30の第一押圧部33の上面との間に、隙間(w3)を隔てた状態になる。隙間(w1)と隙間(w3)との関係は、w1=w3若しくはw1<w3の関係にある。導電層47が接点用電極11,12に接触して隙間(w1)がゼロになったときに、第二押圧部43の円環の下端が第一押圧部33の上面と同時に接触するか若しくは未だ非接触の状態となる必要があるからである。隙間(w1)がゼロになった後にキートップ50から第二スイッチ部材40へのさらなる押圧を受けると、薄肉部44が変形しながら、第二押圧部43が第一押圧部33を下方に向けて押し下げる。
【0038】
隙間(w2)は、好ましくは、隙間(w1)より大きい。最初の入力を軽いタッチで実行する一方、次の入力をある程度強い押し込みによって確実に行うようにするには、w1<w2の方が、設計上、容易だからである。ただし、隙間(w2)は必ずしも隙間(w1)より大きくなくても良い。導電層47が接点用電極11,12に接するまでの距離と、導電層35が接点用電極13,14に接するまでの距離との間には、w1とw3との関係と異なり、基本的に、相関関係がないからである。
【0039】
前述の第一スイッチ部材30および第二スイッチ部材40の好適な大きさを前提にすると、隙間(w1)、隙間(w2)および隙間(w3)は、それぞれ、0.7mm、0.9mmおよび0.7mmである。
【0040】
図6は、図5に示す二段式押釦スイッチ部材のキートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重して次の入力がなされた段階(C)の各状態を示す断面図である。図7は、キートップを押し込んでいく荷重過程および押し込んだキートップから荷重を解除する抜重過程における、ストローク量と操作者の指に感じる反力との関係を示すグラフである。
【0041】
キートップ50を押圧していないときには、二段式押釦スイッチ部材1は、図6に示す(A)の状態にある。このときには、ストロークがゼロであり、操作者の指に与える反力もゼロである(図7では荷重曲線上の点A)。キートップ50を押圧していくと(ストローク量:p(mm))、第二ドーム部42がすぐに変形して、可動部45の下端に形成される導電層47が接点用電極11,12に接触し、最初の入力がなされる。これとほぼ同時に、第二押圧部43の円環の下端が第一押圧部33の上面と接触する(図7では、荷重曲線上の点B)。点Bにおける力(F1)は、約1.0Nである。これ以降、キートップ50を押圧し続けると、第二スイッチ部40が第一スイッチ部30に対して押圧を与えることになる。第一ドーム部32が坐屈するまで、指への反力が急激に増大する。そして、ストローク量がr(mm)に達したときに、第一ドーム部32がその状態を維持するのに限界がきて、指への反力が最大になる。このときの力(F2)は約4.5Nである。そして、ついには、第一ドーム部32が坐屈して、指への反力が急激に低下していく。次に、ストローク量がs(mm)になったときに、第一押圧部33の下端に形成される導電層35,35が接点用電極13,14に接触し、次の入力がなされる(図7では、荷重曲線上の点C)。点Cにおける力(F3)は、約2.0Nである。これ以降、キートップ50を押圧しても、第一スイッチ部30および第二スイッチ部40の両方とも下降しないので、急激に指への反力が増大する。二段式押釦スイッチ部材1の性能としては、ピーク荷重を意味するF2は2〜10Nで、クリック率を意味する{(F2−F3)/F2}×100は30%以上が好ましく、ピーク加重が3〜7Nでクリック率が40%以上であるのがより好ましい。一方、F1は、0.3〜2Nであるのが好ましく、0.7〜1.5Nであるのがより好ましい。上述のように、図7に示すストローク量と反力の関係において、F2≒4.5N、F3≒2.0N、{(F2−F3)/F2}×100≒56%であることから、二段式押釦スイッチ部材1の性能は、ピーク荷重、復帰力およびクリック率とも、好ましい性能の範疇にある。
【0042】
2.第二の実施の形態
図8は、本発明の二段式押釦スイッチ部材の第二の実施の形態であって、キートップに荷重していない段階(A)、荷重を開始して最初の入力がなされた段階(B)、および当該段階(B)からさらに荷重した段階(C)の各状態を示す断面図である。
【0043】
第二の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1が第一の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1と共通する部分については、同一の符号で示し、重複した説明を省略する。第二の実施の形態に係る二段式押釦スイッチ部材1は、第一の実施の形態と異なり、第二押圧部43に形成されている凹部46の底面に、可動部45の上方への浮上を抑制する浮上抑制部48を備える。浮上抑制部48はキートップ50の方向に突出し、その先端は、第二押圧部43の天面の高さよりも低い位置に設定されており、浮上抑制部48の先端面とキートップ50の下面との間に隙間(w4)がある。
【0044】
キートップ50に荷重していない段階(A)、および当該段階(A)から荷重していき可動部45の先端に形成されている導電層47が接点用電極11,12に接触する段階(B)までは、隙間(w4)は維持される。しかし、第二スイッチ部材40が第一スイッチ部材30を押圧していくと、薄肉部44が変形しながら第二押圧部43が下降していく。この過程で、隙間(w4)は徐々に狭くなっていき、ついにはキートップ50の下面と浮上抑制部48の先端が接触する(段階(C))。浮上抑制部48は、その長さ方向に弾性変形可能となるように、エラストマー、好ましくはシリコーンゴムから構成されている。このため、浮上抑制部48は、キートップ50の押し下げを第一スイッチ部材30に伝達する妨げにならない。浮上抑制部48を可動部45の上方に設けることにより、可動部45の先端に形成されている導電層47が接点用電極11,12に接触した後、第二押圧部43が下降する際に、可動部45にかかる押圧が小さくなり、その結果、可動部45が上方に浮くという事態を効果的に防止できる。
【0045】
浮上抑制部48は、第二スイッチ部材40と一体成形にて凹部46の底面に形成されるのが好ましいが、別部材として凹部46に接着等により固定しても良い。また、浮上抑制部48を、キートップ50の下面に接着して、凹部46の底面との間に隙間(w4)を形成するようにしても良い。さらには、凹部46の底面とキートップ50の下面の両方にそれぞれ浮上抑制部を形成し、両浮上抑制部の間に隙間(w4)を形成するようにしても良い。また、浮上抑制部48を第二スイッチ部材40よりも伸縮性の高い材料で構成する場合には、浮上抑制部48の先端をキートップ50の下面に接触する高さに設定しても良い。かかる場合には、浮上抑制部48は、第二押圧部43の下降の妨げになりにくいからである。また、浮上抑制部48を1つのみならず、2以上設けても良い。
【0046】
3.その他の実施の形態
上述のように、本発明に係る二段式押釦スイッチ部材の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明に係る二段式押釦スイッチ部材は、上記の各実施の形態に限定されず、種々変形を施して実施可能である。
【0047】
例えば、可動部45の先端に形成される導電層47が接点用電極11,12に接した時点で、第二押圧部43の下面と第一押圧部33の上面とが非接触状態であり、隙間(w3)が存在するように、第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40をそれぞれ構成しても良い。また、可動部45は、第一押圧部33の穴34を挿通しているが、穴34の代わりに、第一押圧部33に側面を開口させた凹部を形成し、可動部45が凹部に沿って可動するようにしても良い。
【0048】
また、可動部45を第一押圧部33の外側に配置して、最初に可動部45の下降によって接点用電極13,14を接続し、次に、第一押圧部33の下降によって接点用電極11,12を接続するように、第一スイッチ部材30と第二スイッチ部材40を構成しても良い。
【0049】
薄肉部44は、凹部46の外縁部ではなく、別の形態で構成しても良い。例えば、凹部46に代えて、第二押圧部43に穴を貫通形成し、その穴の下方開口部分に複数本の紐状の弾性体を延出させ、当該紐状の弾性体に可動部45を接続しても良い。キートップ50は、必須の構成ではなく、また、前記の穴の上に被せるようにキートップ50を配置しても良い。
【0050】
第二脚部41を、第一脚部31の上方にてその側端面と面一になるようにしているが、第二脚部41が第一脚部31よりも内側に位置するように、第二スイッチ部材40を構成しても良い。また、第二脚部41が第一脚部31の上に存在するが、第一脚部31の側端面よりも外側に突出するように、第二スイッチ部材40を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車載用機器、携帯電話、携帯情報端末をはじめ各種電子機器の二段式押釦スイッチ部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 二段式押釦スイッチ部材
30 第一スイッチ部材
32 第一ドーム部
33 第一押圧部
40 第二スイッチ部材
42 第二ドーム部
43 第二押圧部
44 薄肉部
45 可動部
46 凹部
48 浮上抑制部
50 キートップ
w4 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ともに弾性変形可能な第一スイッチ部材および第二スイッチ部材を押圧方向に重ねた構造を有し、上記第二スイッチ部材の押し下げにより最初の入力を実行し、次に上記第二スイッチ部材からの押圧を受けた上記第一スイッチ部材の押し下げにより次の入力を実行する二段式押釦スイッチ部材であって、
上記第一スイッチ部材は、坐屈可能な第一ドーム部と、当該第一ドーム部の内側に接続される第一押圧部とを有し、
上記第二スイッチ部材は、上記第一ドーム部の上方に配置される変形可能な第二ドーム部と、当該第二ドーム部の内側に接続される第二押圧部と、当該第二押圧部の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部と、当該可動部がそれ以上押し下げられなくなった後に、上記第二押圧部から上記可動部への押圧を低減し、上記第二押圧部が上記第一押圧部を押し下げ可能に変形する薄肉部と、
を有することを特徴とする二段式押釦スイッチ部材。
【請求項2】
前記可動部は、前記第一押圧部の径方向内側にあることを特徴とする請求項1に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項3】
前記第二押圧部の天面側に凹部を有し、
前記薄肉部は、その凹部の外縁部として形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項4】
前記第二押圧部の天面に、前記凹部を覆うキートップを備えることを特徴とする請求項3に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項5】
前記凹部の内底部と前記キートップの下面との間に、前記可動部の上方への浮上を抑制する1若しくは2以上の浮上抑制部を備えることを特徴とする請求項4に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項6】
前記浮上抑制部は、前記凹部の内底部との間若しくは前記キートップの下面との間で隙間を有するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項7】
前記第二スイッチ部材は、前記第一スイッチ部材と同径若しくはより小径に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項1】
ともに弾性変形可能な第一スイッチ部材および第二スイッチ部材を押圧方向に重ねた構造を有し、上記第二スイッチ部材の押し下げにより最初の入力を実行し、次に上記第二スイッチ部材からの押圧を受けた上記第一スイッチ部材の押し下げにより次の入力を実行する二段式押釦スイッチ部材であって、
上記第一スイッチ部材は、坐屈可能な第一ドーム部と、当該第一ドーム部の内側に接続される第一押圧部とを有し、
上記第二スイッチ部材は、上記第一ドーム部の上方に配置される変形可能な第二ドーム部と、当該第二ドーム部の内側に接続される第二押圧部と、当該第二押圧部の押し込みによって押し込み方向に可動な可動部と、当該可動部がそれ以上押し下げられなくなった後に、上記第二押圧部から上記可動部への押圧を低減し、上記第二押圧部が上記第一押圧部を押し下げ可能に変形する薄肉部と、
を有することを特徴とする二段式押釦スイッチ部材。
【請求項2】
前記可動部は、前記第一押圧部の径方向内側にあることを特徴とする請求項1に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項3】
前記第二押圧部の天面側に凹部を有し、
前記薄肉部は、その凹部の外縁部として形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項4】
前記第二押圧部の天面に、前記凹部を覆うキートップを備えることを特徴とする請求項3に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項5】
前記凹部の内底部と前記キートップの下面との間に、前記可動部の上方への浮上を抑制する1若しくは2以上の浮上抑制部を備えることを特徴とする請求項4に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項6】
前記浮上抑制部は、前記凹部の内底部との間若しくは前記キートップの下面との間で隙間を有するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【請求項7】
前記第二スイッチ部材は、前記第一スイッチ部材と同径若しくはより小径に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の二段式押釦スイッチ部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−175746(P2011−175746A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36900(P2010−36900)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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