説明

二流体微粒化ノズル

【課題】本発明の課題は、構造が簡単なものであって、気体の圧力が低い場合においても、従来の形態の二流体微粒化ノズルに比べ単位時間当たりより多くの液体をより微細に微粒化できる新規な二流体微粒化ノズルを提供することにある。
【解決手段】本発明の二流体微粒化ノズルは、液体供給器、液膜形成器、気体供給器、気流旋回器、外筒とからなり、前記液膜形成器は、その基部から先端の第1の円形開口に延びる回転対称の内周壁面を有し、前記気流旋回器は半径流方式で、前記外筒は、その先端部壁に前記第1の円形開口と同心に第2の円形開口が開口し、気流の一部が前記外筒の内周面から前記液膜形成器の内周壁面で囲まれた空間に旋回流となって流入して前記第1の円形開口から噴出する第1の流路と、気流の他の一部が、前記第2の円形開口の内周壁と前記第1の円形開口の外周壁との間の環状開口から噴出する第2の流路を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流により液体を微粒化する手段として用いる二流体微粒化ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化する液体微粒化ノズルは、液体燃料焚き燃焼装置、薬液散布装置、加湿装置、冷凍乾燥法による粉末製造装置、塗装機などに広く用いられている。大別すると、液体を微小な孔から噴出することによって微粒化する一流体微粒化ノズルと、空気や蒸気等の気体の流れにより液体を微粒化する二流体微粒化ノズルに分類される。なお、一流体ノズルに分類されるもののなかにも微粒化の促進や粒子の分散の制御のために補助的に気流が使用されるものがある。一般的に、二流体微粒化ノズルは、一流体微粒化ノズルに比べ微粒化性能がよく、粘性の高い液体でも微粒化が良好で、粒子の分散を制御できるという特徴がある。
【0003】
二流体微粒化ノズルの先端部の典型的な構造を図10に示す。これは特許文献1に示された「二流体微粒化ノズル」である。気流には空気が広く使用されるので、ここでは気流は空気として説明する。液体が流出する円形断面の液体ノズルが中心軸上に配置され、それと同軸に空気ノズルが配置されている。液体ノズルからは液体が円柱状に流出し、この液柱は、その外周面と接触する高速の空気流との速度差に起因するせん断作用により微粒化される。図10に示した例では液の流出方向と気流の噴出方向は同軸であるが、特許文献2に示されるようなYジェット微粒化ノズル(図9参照。)と呼ばれる二流体微粒化ノズルでは、その名の示すように空気の流出方向と液の流出方向が一定の角度をなしている。この二流体霧化器においては、図9に示すように、加熱された圧縮性キャリアガスが、キャリアガス導入配管10により導入され、二流体霧化器の加速部101で音速もしくは亜音速に加速され、液体材料との会合部102へ供給される。一方、液体材料は、キャリアガスのエゼクタ効果によって負圧の生じた配管21により会合部102へ供給される。会合部102では、加速されたキャリアガスと流量制御された液体材料が会合し、液体材料は、キャリアガスの運動エネルギにより噴霧口103に到達するまでに微細な液滴に剪断霧化される。微粒化の機構は、基本的に同じである。
引用文献3に示されている「ノズル」は、液体と気体を外部混合させる二流体ノズルの改良を目的としたもので、図8に示されるように、ノズル本体からなる外筒と、ノズルチップからなる内筒とを備え、内筒の中空部を液体流路とすると共に内筒と外筒の間を環状の気体流路とし、上記気体流路に旋回部材を介設して気体を旋回させながら外筒先端の気体噴射口から噴射させるようにし、かつ、上記内筒先端を外筒より僅かに突出させて、該内筒先端の液体噴射口より噴射する液体に、上記旋回して噴射される気体を外部混合する構成が採られている。このように、内筒と外筒の間のガス等の気体流路に、旋回部材を介在させていることにより、気体噴射口から気体が旋回流れとなって噴射され、気体噴射口の内筒外周面に液滴が付着していても、旋回流により液滴を飛散させることができ、気体噴射口に還元剤が硬化して目詰まりが発生するのを防止できる。さらに、気体噴射口から僅かに突出している内筒外周面に液滴が付着しても気体の旋回流で飛散させることができると共に、内筒先端開口の液体噴射口に残留する液滴も気体の旋回流で飛散させて、液体噴射口の目詰まり発生も防止できる効果を奏する。
【0004】
一流体微粒化ノズルは、液体を霧状に微粒化するためには液体を高速で噴射する必要があるので、通常、液体は噴射ポンプにより0.7MPa以上に加圧されるが、ディーゼルエンジンの燃料ノズルでは、近年の排気規制に適合するため100MPa以上に加圧されるようになっている。一方、二流体微粒化ノズルにおいては、上述のように微粒化用気体として圧縮空気が広く用いられており、その圧力は通常、0.2〜0.4MPaで、一流体微粒化ノズルの液体の圧力に比べると低い。しかし、液体は圧縮性が非常に小さいのに対し、空気は圧縮気体であるので、圧縮空気を製造するに要する仕事、すなわち所要エネルギーは非常に大きい。そのため、二流体微粒化ノズルを用いて多量の液体を微粒化する施設においては、空気圧縮機の駆動に要する電力は施設の総使用エネルギーのかなりを占めている。
【0005】
従来よりも相当低い圧力、たとえば0.05MPa程度の圧力の空気で良好な微粒化性能が得られる二流体微粒化ノズルが実現でき、空気源の所定圧力を下げることができれば、使用空気量が多少増えたとしても、装置の運転コストの大幅な削減が可能になり、結果として世界的に取り組みが求められているCO削減にも大きな貢献ができる。また、新設の設備では、空気源設備のコストが削減できることになるため、大きな期待が掛けられる。
また、従来と同一の圧力と流量の圧縮空気で、単に粒子の平均径が小さいというだけでなく、粒子の最大径も小さい霧を大量に発生することができれば、大規模施設における加湿、静電気除去、殺菌などの用途において水や薬品の使用量を減らすことができ、環境への影響も小さくでき、また装置の小型化が可能になり、エネルギー消費の削減となることが期待される。
【0006】
一部の航空用ガスタービンには、燃焼室に流入する空気流により燃料液膜を微粒化する、エアブラスト燃料ノズルと呼ばれる燃料噴射弁が使用されている。特許文献4に開示のもの(図7参照。)はその一例である。空気の圧力や流速はエンジンの作動条件によって大きく異なるが、始動時を除けば、流速は100m/s、圧力は1MPa以上となり、しかも空気の流量は質量で液体燃料の数倍から数十倍と非常に大きいために微粒化は良好である。このエアブラスト燃料ノズルは、大気圧下において0.1MPa程度の低空気圧でも、従来の圧縮空気を利用する二流体微粒化ノズルに比べ良好な微粒化が得られることが知られているが、これを一般の二流体微粒化ノズルの代替として用いようとしても、低圧とはいえ、非常に大量の空気を発生できる大型の空気源が必要となり、そのコストと電力の大きさゆえに経済的に成り立たない。また、燃料を液膜状に供給するための液体供給部は、同軸に配設された2個の円筒状部材によって形成される環状断面の燃料流路が、先端部において周方向の隙間が一様になるように高い精度が必要とされ、また、環状断面の流路の形成には、ロー付けが不可欠で製作コストが高いという問題がある。
【0007】
また、特許文献5には、液体を円筒状の液膜形成器の内周面に膜状に広げ、その環状の液膜を液膜形成器の先端部において、内周及び外周の流路からの気流により微粒化するガスタービン燃焼器用の液体微粒化ノズル(図6参照。)が開示されている。この発明においては内周流路と外周流路に複数の旋回羽根からなる軸流形式の気流旋回器を配設し、中心軸上に燃料供給器を配設し、液体を内周流路の気流旋回器の羽根の中に配設した燃料供給流路を通して液膜形成器の内周壁面上に流出させることが示されている。この発明によると、液体は流量の大小に関わらず確実に液膜形成器の内周面に到達し、液膜を形成することができる。一方、液体を燃料供給器の外周壁面にあけた孔から内周流路を流れる気流を横断して放射状に噴射する場合には、噴射された液体の噴流が内周流路の気流によって曲げられ、あるいは微粒化されるために、気流の運動量に比べて噴流の運動量が小さい場合には、液体が液膜形成器の内周面に到達できず、環状の液膜を形成することが困難になる。また、この方式も、図7の二流体微粒化ノズルと同様、それ自身において大量の圧縮空気を発生しており、それを燃料の微粒化に利用することがなんらエネルギー損失に繋がらないガスタービンの燃焼器の燃料ノズルには適しているが、圧縮空気を別途製造しなければならない一般的な用途の二流体微粒化ノズルには、適用できないという問題がある。また、燃料供給流路が軸に垂直あるいは角度を持っており、また羽根自体も軸に対して傾き、さらに捩れているため、プラスチック成型による製造が非常に困難で、低コストでの製造という観点からは大きな障害となる。
【特許文献1】特開2005−103366号公報 「二流体ノズル」 平成17年4月21日公開
【特許文献2】特開2001−49438号公報 「液体材料の気化供給装置」 平成13年2月20日公開
【特許文献3】特開2002−224592号公報 「ノズル」 2002年8月13日公開
【特許文献4】米国特許第3,980,233号明細書 「空気微細化燃料ノズル」 1976年9月14日発行
【特許文献5】特開2005−106411号公報 「プレフィルマー式エアブラスト微粒化ノズル」 2005年4月21日公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、圧縮空気を使用する二流体微粒化ノズルは、一流体微粒化ノズルに比べ微粒化性能に優れるという特徴があるが、その特徴を発揮させるためには、比較的高い圧力の圧縮空気が必要で、そのため電力消費量が多いという問題があった。また、新設の場合には空気源のコストが嵩むという問題があった。一方、航空用ガスタービンの燃料ノズルとして使用されている、液体を膜状にしてから微粒化する液膜形成式の二流体微粒化ノズルは、一般的な二流体微粒化ノズルに比べると比較的低圧の空気によっても微粒化が行えるという特徴があるが、所要空気量が非常に膨大で、そのような空気を製造するための空気源の初期コストや運転コストが嵩むという問題があった。
また、従来の二流体微粒化ノズルにおいては、単位時間当たりの液流量を増加さようとすると液の速度が必然的に増大し、気流との相対速度が減って、粒子が粗大化するという問題がある。一方、液の速度を増大させないようにとノズルの口径を大きくしても、液柱の直径が太くなる結果液と気流との相対速度は同じでも粒子が粗大化するという問題がある。さらに、比較的高い圧力の空気を使用しても、体表面積平均径(粒子群の総体積を総表面積で除した値で定義される。)で10ミクロン以下の細かい液体粒子を大量に発生することが難しいという問題もあった。
【0009】
本発明の課題は、構造が簡単なものであって、気体の圧力が低い場合においても、従来の形態の二流体微粒化ノズルに比べ単位時間当たりより多くの液体をより微細に微粒化できる新規な二流体微粒化ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の二流体微粒化ノズルは、液体供給器、液膜形成器、気体供給器、気流旋回器、外筒とからなり、前記液膜形成器は、基部から先端の第1の円形開口に延びる回転対称の内周壁面を有し、前記気流旋回器は半径流方式で、前記外筒は、その先端部壁に前記第1の円形開口と同心に第2の円形開口が開口し、気流の一部が気流旋回器を経て前記液膜形成器の内周壁面で囲まれた空間に旋回流となって流入して前記第1の円形開口から噴出する第1の流路と、気流の他の一部が、前記第2の円形開口の内周壁と前記第1の円形開口の外周壁との間の環状開口から噴出する第2の流路を備えるものとし、液体は前記液体供給器の内部に配設された液体溜まりに連通する液体噴出孔から噴出して前記液膜形成器の内周壁面上を流れ、前記第1の円形開口において円筒状液膜となって、内周を前記第1の流路の気流により、外周を前記第2の流路の気流により挟まれて流出して微粒化されるようにした。
【0011】
また、本発明の二流体微粒化ノズルは、上記構成において前記第2の流路には液膜形成器の基部と前記外筒の内壁面との間に半径流方式の第2の気流旋回器を配設し、前記第2の気流が旋回流となって前記環状開口から噴出するようにした。
また、前記第1の気流旋回器は前記液体供給器の端部壁に一体として配設され、前記液体噴出孔は環状に複数個、気流旋回器の羽根を貫通して前記液膜形成器の内周壁面近傍にまで延びるようにした。
また、更なる形態として前記液体供給器の端部中央部は、前記液膜形成器の内側に、前記液膜形成器の先端の近傍にまで延びる先細の回転対称形状の中心体が配設される構成を採用した。
また、本発明の二流体微粒化ノズルは、異なる形態として、前記第1の気流旋回器は前記液体供給器の端部壁に一体として配設されると共に、前記液体噴出孔は軸中心に1つ配置され、前記液膜形成器の内周壁面近傍にまで延びるようにした構成を採用するものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体供給器、回転対称形状の液膜形成器、気体供給器、気流旋回器、外筒で構成され、第1の流路の第1の気流旋回器は液体供給器の端面と前記液膜形成器の内周壁面とで形成される空間に配設され、第2の流路は前記液膜形成器の外周壁面と前記外筒の内壁面とで形成される空間に配設され、前記液体供給器の端面には液体が噴出する液体噴出孔が配設され、これら液体噴出孔からの液体は液膜形成器の内周壁面上に液膜状に広がり、前記第1の気流旋回器により旋回を与えられた第1の気流は、前記液膜形成器の内周壁面に沿って流れ、前記液膜形成器の先端部の出口から流出し、第2の流路の第2の気流は、前記液膜形成器の外周壁面と前記外筒の内壁面とで形成される流路を通って前記外筒端壁の開口から流出するようにしたので、液体は環状の薄い液膜となって流出させることができ、薄くなった効果に加え、この液膜には内外周両面が気流に曝され、せん断力が作用するので比較的低い圧力による流速の小さな気流でも良好な微粒化を実現できる。また、液膜状に流出させているので液柱状に流出させる場合に比べ、液体の流量を増大した場合の微粒化性能の低下が極めてすくなく、1本当たりの処理能力を大きくできる。
【0013】
また、この二流体微粒化ノズルにおいては、第1の気流旋回器は半径流方式とし、羽根を液体供給器の端壁に一体として配設し、前記液体噴出孔は前記端壁を貫通して配設し、これら噴出孔からの液体は液膜形成器の内周壁面上に液膜状に広がるようにしたので、液体の流量が設計点より著しく少ない場合でも確実に液膜を形成できるので、広い流量範囲にわたって良好な微粒化を維持できるようになった。
また、第2の流路に第2の気流旋回器を配置したものは、半径流方式とし、その羽根を液膜形成器の基部と前記外筒の内壁面との間に配設することで、強い旋回気流が発生でき、少ない空気量でも良好な微粒化を実現できる。特に、第2の気流旋回器の気流旋回方向を第1の気流旋回器の気流旋回方向と逆にしておくと、液膜はより強いせん断を受けやすく、微粒化促進に効果がある。また、半径流方式であるので形状が簡単なため、機械加工においても製造コストの削減が可能であるのはもちろんであるが、金型を用いたプラスチック成型による低コスト化も可能である。第2の気流旋回器を取り外し可能にして、羽根角度の異なるものに取り替えられるようにしておけば、噴霧の広がり角度を簡単に変えることができる。
また、液膜形成器の内側に同軸に、先端が液膜形成器の出口近傍にまで延びる、回転対称の中心体を配設した形態のものは、第1の気流の旋回が安定するとともに、軸方向速度が上昇するので、より一様でより薄い液膜の形成を促進し、しかも液膜形成器出口における第1の気流の速度が上昇するので、気流流量は流路が狭められことによって気流流量が削減できるにもかかわらず液膜の微粒化が促進される。
また、前記第1の気流旋回器は前記液体供給器の端部壁に一体として配設されると共に、前記液体噴出孔は軸中心に1つ配置され、前記液膜形成器の内周壁面近傍にまで延びるようにした本発明の二流体微粒化ノズルは、液体の噴出孔出口付近は第1の旋回気流によって負圧状態となっているため、液体を空気の圧力よりも低い圧力で供給できること、液体噴出孔が1つであるから、管径を細くする必要が無く、液体噴出孔と液体供給器の内径とを一致させることもできるので、つまりを起す危険性がさらに小さくなる。また、気流旋回器の直径を小さくでき、小型化に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するために最良の形態のひとつを図1に示す。図のAはノズル先端部方向から見た二流体微粒化ノズルの正面図、Bは前記正面部におけるA−B断面図、C,D,Eは部材の分解斜視図、そしてFはこの二流体微粒化ノズルの全体斜視図である。この二流体微粒化ノズル1は、液体供給器2、気体供給器3、液膜形成器4、供給された気体の一部を下流から見て反時計方向に旋回させる第1の気流旋回器5、残りの気体を同方向に旋回させる第2の気流旋回器6そして円筒状の外筒7とから構成される。図2のAに示す部分拡大断面図から分かるように、液膜形成器の内周壁4aは、先端4bの第1の円形開口8に向けて直径が小さくなる回転対称で、円形開口縁は尖っている。第1の気流旋回器5は前記液体供給器2の端壁2aの外周部において端壁と一体的に形成されており、液体噴射孔2bへの流路は複数個環状に配置分流され第1の気流旋回器5を微粒化ノズルの軸と平行に貫通し、液体噴射孔2bはその端面5bに開口している。前記第1の気流旋回器の端面5bは、液膜形成器4の基部端面4dと近接し、その流路5aは半径流方式で、第1の気流に旋回を与えるような溝形状となっている。ここに示した形態では第2の気体流路には第2の気流旋回器6が配置されており、その気体流路も半径流方式で、その第2の気流旋回器6は液膜形成器4の端壁4dの外周部に端壁と一体的に形成されており、第2の気流旋回器の端面6bは外筒7の端壁の内壁面7aと接して、第2の気流旋回器6との間で形成される溝流路6aによって第2の気流に旋回を与えるようになっている。液体供給器の端壁2aは円錐形状の突起形状の中心体2cとなって液膜形成器4の先端4bの近傍まで軸方向に延びている。外筒の端壁7aには円形の開口が形成され、液膜形成器4の先端4bで形成された第1の円形開口8と同心に配設されて、それらの間に形成される第2の円形開口9に形成される環状隙間から旋回が与えられた第2の気流が流出する。液膜形成器4の先端4bと液体供給器の端部の突起形状の中心体2cとで形成される第1の円形開口8からは旋回が与えられた第1の気流が流出する。この実施例では、第1の気流の旋回の方向と第2の気流の旋回の方向は同方向になっているが、旋回方向を逆方向にすることもでき、その場合には、噴霧の拡がりは同方向の場合に比べ狭くなる。液膜は第1の気流によって同方向の旋回が与えられているので、微粒化の程度は、第1の気流と第2の気流の旋回方向が逆のほうがやや良好である。
【0015】
図1に示した形態と異なる本発明の別の実施形態は、第2の気体流路が第2の気流旋回器6を備えていない軸流方式のものである。本発明において第2の気流旋回器6は必須ではなく、特に噴霧を半径方向に拡げる必要がない場合には気流に旋回が与えられなくてもよい。第2の気流旋回器の流路6aを半径に沿って配設すれば、第2の気流は実質的に旋回流を形成せず、その場合噴霧の拡がりを狭めることができる。
【0016】
本発明を実施するに最良の形態の別のものを図3に示す。この実施形態例では、半径方向から供給された液体の液体噴射孔2bへの流路が複数個に分流されることなく、第1の気流旋回器5を微粒化ノズルの軸中心に1本だけ貫通し、液体噴射孔2bはその端面5bに開口している点と、図3のBから分かるように軸方向背後から供給される気体の供給路3aが複数個環状に配置分流され気体供給器3を微粒化ノズルの軸と平行に貫通し、その端面3bにおいて開口している点で先の実施形態例と相違している。第1の気流旋回器5は前記液体供給器2の端部壁2aに一体構造として配設され、第2の気流旋回器6は液膜形成器4の基部4dと一体構造とされ、図3のF,G,H,Iから分かるように気体を液膜形成器4の内側と外側において旋回流にする溝構造となっており、先の例とほぼ同様の形態となっている。
【0017】
この実施形態では、前記第1の気流旋回器5は前記液体供給器2の端部壁2aに一体として配設されると共に、前記液体噴出孔2bは軸中心に1本だけが配置され、前記液膜形成器4の内周壁面4d近傍にまで延びるようにした構成を採用したことにより、液体の噴出孔出口付近は第1の旋回気流によって負圧状態となるため、液体を高圧で供給する必要が無い。また、液体噴出孔2bが1つであるから、管の径を細くする必要が無く、つまりを起す危険性が低いので小型化に好適な形態である。
また、図4に上記実施形態の変形例を示す。変形構造は液体供給器2の端部壁2a部分で、液体噴出孔2bが液体供給器2の管路端で軸方向へストレートに開口するのではなく、半径方向に噴出孔2bが複数個配置された点である。この構成によって、液体は液膜形成器4の内周壁4aに直接噴射され、液膜が形成されやすい構成となっている。
【実施例1】
【0018】
本発明を薬剤散布装置に適用した実施例を図5に示す。これは、図に示すように多数の二流体微粒化ノズルを共通の水及び空気供給配管に接続するに適した構造で、液体供給器が外筒から独立し、その端部には液を供給する円筒が配設されており、外筒の基部壁には空気供給用の円筒が配設されている。これらは、ワンタッチ継ぎ手と呼ばれる市販のT字型継ぎ手を用いて水及び空気供給配管と二流体微粒化ノズルと接続するようにした。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は液体を霧状に微粒化する装置に広く適用できる。例えば、液体燃料焚き燃焼装置、加湿装置、薬剤散布装置、冷凍乾燥法による粉末製造装置、塗装機などに使用できる。また、新しい分野としては霧(ミスト)による除菌や臭気除去、霧による冷房機の効率向上(室外機の空気冷却)、霧による消火装置、霧による日射量の軽減などに適用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の二流体微粒化ノズルの一実施形態例を示す図である。
【図2】上記の二流体微粒化ノズルの一実施形態例の要部の部分拡大図である。
【図3】本発明の二流体微粒化ノズルの異なる実施形態例を示す図である。
【図4】図3に示す本発明の二流体微粒化ノズルの変形例を説明する図である。
【図5】本発明の二流体微粒化ノズルを薬剤散布装置に適用した実施例を説明する図である。
【図6】液体を液膜形成器の内周面に液膜状に広げ、その環状の液膜を液膜形成器の内周及び外周の流路からの気流により微粒化するガスタービン燃焼器用の二流体微粒化ノズルの構造を示す図である。
【図7】エアブラスト燃料ノズルと呼ばれる航空用ガスタービンの燃料噴射弁の構造を示す図である。
【図8】従来の二流体微粒化ノズルの改良構造を示す図である。
【図9】Yジェット微粒化ノズルの構造を示す図である。
【図10】二流体微粒化ノズルの先端部の典型的な構造を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 二流体微粒化ノズル 5 第1の気流旋回器
2 液体供給器 5a 第1の流路
2a 液体供給器の端壁 6 第2の気流旋回器
2b 液体噴出孔 6a 第2の流路
2c 中心体 7 外筒
3 気体供給器 7a 外筒の端面
3a 気体流路 8 第1の円形開口
4 液膜形成器 9 第2の円形開口
4a 液膜形成器の内周面
4b 液膜形成器の先端
4d 液膜形成器の端壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給器、液膜形成器、気体供給器、気流旋回器、外筒とからなり、前記液膜形成器は、基部から先端の第1の円形開口に延びる回転対称の内周壁面を有し、前記気流旋回器は半径流方式で、前記外筒は、その先端部壁に前記第1の円形開口と同心に第2の円形開口が開口し、気流の一部が気流旋回器を経て前記外筒内周から前記液膜形成器の内周壁面で囲まれた空間に旋回流となって流入して前記第1の円形開口から噴出する第1の流路と、気流の他の一部が、前記第2の円形開口の内周壁と前記第1の円形開口の外周壁との間の環状開口から噴出する第2の流路を備えるものとし、液体は前記液体供給器の内部に配設された液体溜まりに連通する液体噴出孔から噴出して前記液膜形成器の内周壁面上を流れ、前記第1の円形開口において円筒状液膜となって、内周を前記第1の流路の気流により、外周を前記第2の流路の気流により挟まれて流出して微粒化されるようにしたことを特徴とする二流体微粒化ノズル。
【請求項2】
前記第2の流路には液膜形成器の基部と前記外筒の内壁面との間に半径流方式の第2の気流旋回器を配設し、前記第2の気流が旋回流となって前記環状開口から噴出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の二流体微粒化ノズル。
【請求項3】
前記第1の気流旋回器は前記液体供給器の端部壁に一体として配設され、前記液体噴出孔は環状に複数個、気流旋回器の羽根を略軸方向に貫通して前記液膜形成器の内周壁面近傍にまで延びるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の二流体微粒化ノズル。
【請求項4】
前記液体供給器の端部中央部は、前記液膜形成器の内側に、前記液膜形成器の先端の近傍にまで延びる回転対称形状の中心体が配設されたことを特徴とする請求項3に記載の二流体微粒化ノズル。
【請求項5】
前記第1の気流旋回器は前記液体供給器の端部壁に一体として配設されると共に、前記液体噴出孔は軸中心に1つ配置され、前記液膜形成器の内周壁面近傍にまで延びるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の二流体微粒化ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−297589(P2009−297589A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151165(P2008−151165)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【特許番号】特許第4266239号(P4266239)
【特許公報発行日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】