説明

二色成形品の成形方法並びに成形装置

【課題】キャビティを分割して、各分割キャビティに異なる色彩の溶融樹脂を射出充填してなる二色成形品の成形方法並びにその成形装置であって、金型構造の簡素化を図るとともに、一般部の厚みと斜面部の厚みを均一に制御する。
【解決手段】成形上下型50,60間のキャビティCを区画する仕切り部材70は、成形下型60の溝部64内に収容される耐熱・耐圧チューブ71から構成され、チューブ71の膨張状態でキャビティC1,C2間を区画する一方、チューブ71の収縮状態でキャビティC1,C2間を連通させる。従って、従来の油圧シリンダに比べ構造を簡素化するとともに、チューブ71を採用することで、製品における一般部10aと斜面部10bとの厚みが均一になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム等の自動車用内装部品に好適な二色成形品の成形方法並びに成形装置に係り、特に、仕切りプレートを駆動させるシリンダを廃止することで金型構造を簡素化でき、かつ金型の設計自由度を高めることができるとともに、製品の斜面部においても板厚を充分に確保でき、成形精度を高めた二色成形品の成形方法並びに成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、自動車用内装部品の代表的な部品である自動車用ドアトリムを示す正面図であり、この自動車用ドアトリム1は、その外観意匠性を高めるために、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3との間で色彩を相違させた二色成形品から構成されている。
【0003】
そして、このドアトリム1を成形する成形装置4の構成について図14,図15を基に説明すると、成形装置4は、可動側金型5と固定側金型6が相互に型締め、型開き可能に設けられており、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3とを区画する見切り部分には固定側金型6に仕切りプレート7が設けられている。この仕切りプレート7は、駆動シリンダ7aにより所定ストローク上下動作を行ない、ドアトリムアッパー2の成形時には、駆動シリンダ7aの駆動により、キャビティ8内に臨み、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aとドアトリムロア成形用キャビティ8bとを区画することで、ドアトリムアッパー2側の溶融樹脂M1がドアトリムロア成形用キャビティ8b内に浸入することを阻止し、ドアトリムロア3の成形時には仕切りプレート7が下降して、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3との一体成形が行なわれる。
【0004】
すなわち、ドアトリムアッパー2の成形時、図15(a)に示すように、可動側金型5と固定側金型6とで画成されるキャビティ8には、仕切りプレート7の上昇により、仕切りプレート7の先端面7bが可動側金型5の型面に突き当たり、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aとドアトリムロア成形用キャビティ8bとに区画される。その後、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aに溶融樹脂M1が射出充填され、ドアトリムアッパー2がまず所要形状に成形される。
【0005】
そして、ドアトリムアッパー2の成形が完了すれば、図15(b)に示すように、駆動シリンダ7aの収縮動作により、仕切りプレート7が下降して、キャビティ8から後退し、ドアトリムロア成形用キャビティ8b内に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア3がドアトリムアッパー2と一体に成形されて図13に示すドアトリム1の成形が完了する。二色成形品を同一の金型内で仕切りプレートを使用して成形する従来例としては、特許文献1に詳細に示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−267479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来では、同一の成形装置4を使用して、二色成形品(ドアトリム)1を成形するには、キャビティ8を分割する仕切りプレート7と、仕切りプレート7を駆動するシリンダ7aが使用されており、シリンダ7aを収容する金型スペースが多く必要となり、金型の自由度が制限されるとともに、シリンダ7aの制御機構が必要となり、コスト高を招くという不具合があった。
【0008】
更に、ドアトリム1の左右側縁部分は、製品に質感をもたせるために斜面部1aが設定されているが、斜面部1aに相当する金型の構造は、図16に示すように、斜面部キャビティ8cが設定されており、仕切りプレート7の下降時にこの斜面部キャビティ8cの板厚が確保しづらく、一般部の厚みを確保した場合には斜面部キャビティ8cの厚みが薄くなり、また、斜面部キャビティ8cの厚みを確保した場合には一般部の厚みが厚くなるという傾向にあり、製品厚みとして一般部と斜面部1aの双方を均一な厚みに設定することが難しいという欠点が指摘されていた。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、キャビティを分割する仕切り部材を備えた成形装置を使用して二色成形品を成形する二色成形品の成形方法並びにそれに使用する成形装置であって、簡単かつ廉価な構造の装置を使用して、一般部及び斜面部の双方の厚みを均一に設定でき、成形精度を高めた二色成形品の成形方法並びに成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は、仕切りプレートに替えて、膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブを使用することで構造の簡素化が図れるとともに、キャビティ厚みを有効に制御できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、成形上下型のキャビティを仕切り部材により二つのキャビティに区画し、第1のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、一方側の樹脂成形品を成形した後、前記仕切り部材をキャビティから後退させて、第2のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、他方側の樹脂成形品を一方側の樹脂成形品と一体化してなる二色成形品の成形方法において、前記仕切り部材は、一方側の樹脂成形品と他方側の樹脂成形品との見切りラインに沿う成形下型に形成された溝部内に収容された膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブから構成され、成形上下型の型締め時、耐熱・耐圧チューブ内に流体を供給して、耐熱・耐圧チューブを膨張させることにより二つのキャビティを区画した後、第1のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、一方側の樹脂成形品を成形する工程と、前記膨張状態の耐熱・耐圧チューブから流体を外部に排出して、耐熱・耐圧チューブを収縮させることにより一方側の樹脂成形品の端末部分と第2のキャビティとを連通させた後、第2のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、一方側の樹脂成形品と一体に他方側の樹脂成形品を成形する工程とからなることを特徴とする。
【0012】
ここで、二色成形品とは、同一の成形金型で成形される色違いの二種類の樹脂成形品を一体化したものであり、用途としては、二分割構成の自動車用ドアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム等、ツートンタイプの二色成形品に適用することができる。
【0013】
そして、二色成形品の成形に使用する成形装置は、複数の樹脂成形品を接合一体化してなる二色成形品を成形する成形装置であって、この成形装置は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型と、複数の樹脂成形品の見切りラインに対応して、キャビティを区画する機能を有する仕切り部材とから構成され、この仕切り部材は、成形下型内に形成される溝部内に収容される膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブを備え、一方側の樹脂成形品を成形する際、耐熱・耐圧チューブ内に外部から流体が供給されて、耐熱・耐圧チューブが膨張して、第1のキャビティと第2のキャビティとを区画するとともに、他方側の樹脂成形品を成形する際は、耐熱・耐圧チューブから流体が外部に排出されるように、耐熱・耐圧チューブの一方端には流体供給系が接続され、他方端には流体排出系が接続されていることを特徴とする。
【0014】
従って、本発明によれば、成形上下型を型締めした後、耐熱・耐圧チューブ内に流体を充填して、耐熱・耐圧チューブを膨張させれば、この耐熱・耐圧チューブにより第1のキャビティと第2のキャビティとを区画することができる。よって、第1のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填すれば、一方側の樹脂成形品を精度良く成形することができる。
【0015】
次いで、一方側の樹脂成形品を成形した後、膨張状態にある耐熱・耐圧チューブ内の流体を他方端に設けた流体排出系から排出すれば、耐熱・耐圧チューブが収縮状態となり、収縮状態の耐熱・耐圧チューブは成形下型に凹設されている溝部内に埋没することになり、第1のキャビティ形状に沿って成形された一方側の樹脂成形品の端末が第2のキャビティ内に臨むことになる。よって、第2のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することで、一方側の樹脂成形品に対して他方側の樹脂成形品を一体化することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、耐熱・耐圧チューブ内に流体を供給するか、あるいは排出するかして、耐熱・耐圧チューブを膨張状態、あるいは収縮状態に制御することでキャビティを区画、あるいは連通させるというものであるから、従来の油圧シリンダ等に比べ制御機構を簡素化することができるとともに、駆動される仕切りプレート及びシリンダを廃止でき、成形金型の設計自由度、加工自由度を高めることができる。
【0017】
更に、キャビティ形状に一般部と斜面部とがあっても、一般部と斜面部において、型クリアランスを一定に確保できるため、成形品の板厚を均一に設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明に係る二色成形品の成形方法並びに成形装置によれば、キャビティを区画連通させる仕切り部材として、一方端に流体供給系、他方端に流体排出系を接続してなる耐熱・耐圧チューブを採用し、耐熱・耐圧チューブを膨張させることでキャビティを区画するとともに、耐熱・耐圧チューブを収縮させることでキャビティを連通させる機能を達成するというものであるから、従来の油圧シリンダ等の駆動機構に比べ、構造、制御が簡単であるとともに、スペースも大幅に節約でき、成形金型の設計自由度、加工自由度を向上させることができるという効果を有する。
【0019】
更に、本発明に係る二色成形品の成形方法並びに成形装置によれば、キャビティを区画する仕切り部材として、一方端に流体供給系、他方端に流体排出系を接続してなる耐熱・耐圧チューブを採用したから、一般部や斜面部に対応する金型のキャビティ厚みを均一に設定できるため、二色成形品の板厚バラツキを解消でき、成形精度を高めることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る二色成形品の成形方法並びに成形装置の具体的な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0021】
図1乃至図12は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明方法により成形してなるツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同ドアトリムの構成を示す断面図、図3は本発明に係る成形装置の概略構成を示す説明図、図4は同成形装置における見切りラインに対応する箇所の構成を示す説明図、図5,図6は同成形装置における耐熱・耐圧チューブの構成を示す、図5はチューブの膨張状態、図6はチューブの収縮状態をそれぞれ示す説明図である。更に、図7乃至図9は本発明方法における一方側の樹脂成形品の成形工程を示す各説明図、図10乃至図12は本発明方法における他方側の樹脂成形品の成形工程を示す各説明図である。
【0022】
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との上下二分割体から構成されており、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との間には、見切りライン11が設定されている。更に、外観上のアクセント効果を強調できるように、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とは色彩を相違させた樹脂成形品で構成し、それぞれ製品面は後述する成形金型の金型面から絞模様が転写されている。尚、ドアトリム10には、各種付属部品、例えば、ドアトリムアッパー20にはインサイドハンドルユニット21が取り付けられており、見切りライン11の上方に乗員が肘を掛けて休めるアームレスト22が形成されている。一方、ドアトリムロア30には、ドアポケット開口31が開設されており、このドアポケット開口31のフロント側にスピーカグリル32がドアトリムロア30と一体、あるいは別体に設けられている。尚、図2中符号33はポケットバックカバーを示し、符号34はドアパネルを示す。また、ドアトリム10の左右側側縁は、ドアトリム10に質感を与えるために一般部10aに対して縦壁フランジ状に形成された斜面部10bが設定されている。そして、本発明においては、斜面部10bはドアトリム10の上下方向に延びているが、見切りライン11の対応箇所において、従来は一般部10aと斜面部10bとの間に板厚バラツキが生じているけれども、本発明では見切りライン11の端末部分において一般部10aと斜面部10bの双方の板厚が均一に設定されている。
【0023】
次いで、図3乃至図6に基づいて、本発明に係る二色成形品の成形方法に使用する成形装置40の構成について説明する。図3において成形装置40の全体構成を説明すると、この成形装置40は、射出成形工法を採用しており、可動側である成形上型50と、固定側である成形下型60とが相互に型締め、型開き可能に設けられており、成形下型60には、ドアトリムアッパー20及びドアトリムロア30の素材をそれぞれ供給するために、2基の射出機61a,61bが連設されているとともに、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との各キャビティC1,C2を分割する仕切り部材70が設けられている。
【0024】
更に詳しくは、上記成形上型50は、ドアトリム10の製品形状に合致したキャビティ面を備えており、昇降シリンダ51の昇降駆動により、成形上型50は所定ストローク上下動作を行ない固定側の成形下型60に対して型締め、型開きが行なわれる。
【0025】
一方、2基の射出機61a,61bから供給される溶融樹脂M1,M2の樹脂通路として成形下型60にはマニホールド62a,62bとゲート63a,63bがそれぞれ設けられている。すなわち、ドアトリムアッパー20を成形するために一方側の射出機61aからマニホールド62a、ゲート63aを通じて第1のキャビティC1に溶融樹脂M1が射出充填されてドアトリムアッパー20が所要形状に成形される。そして、他方側の射出機61bからマニホールド62b、ゲート63bを通じて第2のキャビティC2に溶融樹脂M2が射出充填されてドアトリムロア30が所要形状に成形される。
【0026】
そして、本発明に係る成形装置40においては、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とを区画できるように設けられる仕切り部材70は、膨張・収縮可能なフッ素ゴム、シリコンゴム等の耐熱・耐圧チューブ71が使用される。この耐熱・耐圧チューブ71は、成形下型60の溝部64内に収容され、チューブ径10〜30mm、チューブ厚み1〜8mmに設定され、図5,図6に示すように、耐熱・耐圧チューブ71の一方端には、流体供給系72が接続され、他方端には流体排出系73が接続されており、流体供給系72としては、ブロワ、コンプレッサー等が、流体排出系73としては真空ポンプ等が使用されて良い。また、流体としては、エア、ガス等の気体、あるいはオイル等の液体を使用することができる。
【0027】
上記耐熱・耐圧チューブ71は、仕切り部材70として有効に機能するものであり、図5,図6を用いてその作用について説明する。ドアトリムアッパー20を成形する際は、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とを気密にシールする必要があり、そのために、図5(a),(b)に示すように、耐熱・耐圧チューブ71は、流体供給系72から流体を充填することで膨張状態を維持し、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とが良好にシールされている。
【0028】
また、図6(a),(b)は耐熱・耐圧チューブ71の収縮状態を示しており、この時には、耐熱・耐圧チューブ71は成形下型60の溝部64内に没入しており、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とが連通状態に制御される。
【0029】
このように、本発明に係る成形装置40によれば、仕切り部材70として膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブ71を使用し、この耐熱・耐圧チューブ71の一方端に流体供給系72、他方端に流体排出系73をそれぞれ接続して、流体を供給、あるいは排出することで、耐熱・耐圧チューブ71を膨張状態、あるいは収縮状態に制御することにより、キャビティC1,C2を区画連通させて二色成形品の精度の良い成形を可能にするというものであるから、従来の油圧シリンダ及びそれに駆動される仕切りプレートを廃止することで構造を簡素化でき、かつ成形金型に大きなスペースを必要とせず、金型の設計自由度、加工自由度を高めることができる。
【0030】
次いで、図7乃至図12に基づいて、ドアトリム10の成形方法について説明する。図7乃至図9はドアトリムアッパー20の成形工程を示し、図10乃至図12はドアトリムロア30の成形工程をそれぞれ示している。図7は成形上下型50,60を型締めした状態であり、図7,図8に示すように、耐熱・耐圧チューブ71内には流体が充填されて耐熱・耐圧チューブ71は膨張状態であり、この耐熱・耐圧チューブ71により、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とを区画している。
【0031】
そして、この状態で射出機61aから溶融樹脂M1が供給され、マニホールド62a、ゲート63aを通じて第1のキャビティC1内に溶融樹脂M1が射出充填されて、ドアトリムアッパー20が所要形状に成形される。この時、耐熱・耐圧チューブ71は、溶融樹脂M1の熱により損傷を受けることがなく、繰り返しの成形においても耐熱・耐圧チューブ71が劣化することがない。そして、特に、ドアトリム10の両側縁は、質感をもたせるための斜面部10bに対応する斜面部キャビティC3が設定されているが、図9に示すように、この斜面部キャビティC3の形状に対応して、耐熱・耐圧チューブ71が良好に追従する。
【0032】
次いで、図10乃至図12は、ドアトリムロア30の成形工程を示すもので、ドアトリムアッパー20の成形工程と同様に、成形上下型50,60は型締め状態が維持されており、図10,図11に示すように、耐熱・耐圧チューブ71内の流体が流体排出系73を通じて外部に排出されることで、耐熱・耐圧チューブ71は収縮状態に規制され、第2のキャビティC2と、ドアトリムアッパー20の端末とが連通状態であり、第2のキャビティC2内に射出機61bを通じて溶融樹脂M2がマニホールド62b、ゲート63bを通じて射出充填されて、ドアトリムアッパー20と一体にドアトリムロア30が所要形状に成形される。
【0033】
そして、図12に示すように、耐熱・耐圧チューブ71は、収縮状態に調整すれば、斜面部10bに対応する斜面部キャビティC3から成形下型60の溝部64内に退避するため、一般部10aの厚みと斜面部10bの厚みを均一に設定することができ、一般部10aと斜面部10bとの厚みが相違することが原因となり、成形性が劣り、剛性の低下や重量アップを招くという従来の不具合を有効に解決できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明した実施例は、本発明をドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との上下二分割体からなるドアトリム10の成形方法及び成形装置に適用したものであるが、ドアトリム10以外にも、ツートンタイプの二色成形品全般の成形方法、成形装置に本発明を適用することができる。更に、ドアトリムアッパー20の変形例として、表皮付き樹脂成形品を適用することができるとともに、トリムアッパー、トリムセンター、トリムロアのように上下方向に三分割した三色成形品の形態に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る二色成形品の成形方法を適用して製作したツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示す自動車用ドアトリムの成形に使用する成形装置を示す概要図である。
【図4】図3に示す成形装置における製品の見切りラインに沿う成形下型の溝部に配置される耐熱・耐圧チューブを示す断面図である。
【図5】図3に示す成形装置における耐熱・耐圧チューブの膨張状態を示す(a)説明図並びに(b)断面図である。
【図6】図3に示す成形装置における耐熱・耐圧チューブの収縮状態を示す(a)説明図並びに(b)断面図である。
【図7】本発明に係る二色成形品の成形方法を適用したドアトリムの成形方法におけるドアトリムアッパーの成形工程を示す説明図である。
【図8】図7に示すドアトリムアッパーの成形工程における耐熱・耐圧チューブの配置を示す説明図である。
【図9】図7に示すドアトリムアッパーの成形工程における耐熱・耐圧チューブの端末部分を示す説明図である。
【図10】本発明に係る二色成形品の成形方法を適用したドアトリムの成形方法におけるドアトリムロアの成形工程を示す説明図である。
【図11】図10に示すドアトリムロアの成形工程における耐熱・耐圧チューブの配置を示す説明図である。
【図12】図10に示すドアトリムロアの成形工程における耐熱・耐圧チューブの端末部分を示す説明図である。
【図13】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図14】従来のドアトリムを成形する成形金型の構成を示す説明図である。
【図15】従来のドアトリムの成形に使用する仕切り部材の動作を示す説明図である。
【図16】従来のドアトリムの成形に使用する分割バーの端末部分の動作状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10 自動車用ドアトリム
10a 一般部
10b 斜面部
11 見切りライン
20 ドアトリムアッパー
30 ドアトリムロア
40 成形装置
50 成形上型
51 昇降シリンダ
60 成形下型
61a,61b 射出機
62a,62b マニホールド
63a,63b ゲート
64 溝部
70 仕切り部材
71 耐熱・耐圧チューブ
72 流体供給系
73 流体排出系
C1 第1のキャビティ(ドアトリムアッパー成形用)
C2 第2のキャビティ(ドアトリムロア成形用)
C3 斜面部キャビティ
M1,M2 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形上下型(50,60)のキャビティ(C)を仕切り部材(70)により二つのキャビティ(C1,C2)に区画し、第1のキャビティ(C1)内に溶融樹脂(M1)を射出充填して、一方側の樹脂成形品(20)を成形した後、前記仕切り部材(70)をキャビティ(C)から後退させて、第2のキャビティ(C2)内に溶融樹脂(M2)を射出充填して、他方側の樹脂成形品(30)を一方側の樹脂成形品(20)と一体化してなる二色成形品(10)の成形方法において、
前記仕切り部材(70)は、一方側の樹脂成形品(20)と他方側の樹脂成形品(30)との見切りライン(11)に沿う成形下型(60)に形成された溝部(64)内に収容された膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブ(71)から構成され、成形上下型(50,60)の型締め時、耐熱・耐圧チューブ(71)内に流体を供給して、耐熱・耐圧チューブ(71)を膨張させることにより二つのキャビティ(C1,C2)を区画した後、第1のキャビティ(C1)内に溶融樹脂(M1)を射出充填して、一方側の樹脂成形品(20)を成形する工程と、
前記膨張状態の耐熱・耐圧チューブ(71)から流体を外部に排出して、耐熱・耐圧チューブ(71)を収縮させることにより一方側の樹脂成形品(20)の端末部分と第2のキャビティ(C2)とを連通させた後、第2のキャビティ(C2)内に溶融樹脂(M2)を射出充填して、一方側の樹脂成形品(20)と一体に他方側の樹脂成形品(30)を成形する工程と、
からなることを特徴とする二色成形品の成形方法。
【請求項2】
複数の樹脂成形品(20,30)を接合一体化してなる二色成形品(10)を成形する成形装置(40)であって、この成形装置(40)は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型(50,60)と、複数の樹脂成形品(20,30)の見切りライン(11)に対応して、キャビティ(C1,C2)を区画する機能を有する仕切り部材(70)とから構成され、この仕切り部材(70)は、成形下型(60)内に形成される溝部(64)内に収容される膨張・収縮可能な耐熱・耐圧チューブ(71)を備え、一方側の樹脂成形品(20)を成形する際、耐熱・耐圧チューブ(71)内に外部から流体が供給されて、耐熱・耐圧チューブ(71)が膨張して、第1のキャビティ(C1)と第2のキャビティ(C2)とを区画するとともに、他方側の樹脂成形品(30)を成形する際は、耐熱・耐圧チューブ(71)から流体が外部に排出されるように、耐熱・耐圧チューブ(71)の一方端には流体供給系(72)が接続され、他方端には流体排出系(73)が接続されていることを特徴とする二色成形品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−160874(P2009−160874A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2243(P2008−2243)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】