説明

二輪車の後輪懸架装置

【課題】さらなる車幅のスリム化が可能な二輪車の後輪懸架装置を提供すること。
【解決手段】筒状のダンパーケース14aと、その筒状のダンパーケース14aからストローク可能に突設されクッションユニット14内部のピストンと接続されたロッド14bと、外部に油圧のサブタンク14cとを備えたクッションユニット14のコイルスプリング14dの上端を、クッションユニット14の上端より低くし、クッションユニット(緩衝器)14の構成部品であるサブタンク14cを、コイルスプリング14の上端よりもサブタンク14cの下端が上方になり、コイルスプリング14の外径よりもサブタンク14cの一部がシリンダー14g中心側に配置されるように、コイルスプリング14上方のクッションユニット14に近接又は当接させてコイルスプリング14分車体内側へ移動させ、側面視でセンターフレーム5の内側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車の後輪懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヘッドパイプから後方へ延出された車体フレームに前部が枢支され後部に後輪を支持させたスイングアームと、センターフレームの間に上部が枢支されると共に前記スイングアームに後部が枢支され、上下方向を長手にして配置されたクッションユニットとを備えた二輪車の後輪懸架装置がある。
【0003】
この上記した従来のクッションユニットは、緩衝器を上方にし下方にコイルスプリングを近接して配置しており、そのコイルスプリングの横にアウトレットケース等の車体構成部品を配置している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実登第2522667号公報(第2頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、従来の二輪車の後輪懸架装置は、緩衝器とコイルスプリングとを近接して配置しているため、スプリングの外径に応じたスペースが必要となり、しかも、そのコイルスプリングの横にアウトレットケース等の車体構成部品を配置しているため、車幅のスリム化に限界があった。
【0006】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、さらなる車幅のスリム化が可能な二輪車の後輪懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を達成するために、本発明にかかる二輪車の後輪懸架装置は、下記の技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1にかかる二輪車の後輪懸架装置は、ヘッドパイプから後方へ延出されたメインフレームの後部に連結され、下方へ延出された左右一対のセンターフレームと、そのセンターフレームに前部が枢支され後部に後輪を支持させたスイングアームと、前記センターフレームの間に上部が車体側に枢支されると共に前記スイングアーム側に下部が枢支され、上下方向を長手にして配置されたクッションユニットとを備えた二輪車の後輪懸架装置において、前記クッションユニットは、内部にシリンダーを備えた筒状のダンパーケースと、そのダンパーケースからストローク可能に突設され前記ダンパーケース内部のピストンと接続されたロッドとからなる緩衝器と、前記ロッドと前記ダンパーケースとに跨ってこれらの周囲に配置されるコイルスプリングとを備え、前記コイルスプリングの上端を前記緩衝器の上端より低くし、前記緩衝器の構成部品であるサブタンクを、前記コイルスプリングの上端よりも前記サブタンクの下端が上方になり、前記コイルスプリングの外径よりも前記サブタンクの一部が前記シリンダー中心側に配置されるように、前記コイルスプリング上方の前記緩衝器に近接又は当接させて前記コイルスプリング分車体内側へ移動させ、側面視で前記センターフレームの内側に配置したことを特徴とする。
請求項2にかかる二輪車の後輪懸架装置は、請求項1において、前記コイルスプリングの上方の前記シリンダーに近接して前記サブタンクを一体に形成し、前記シリンダーを構成する壁面の一部と前記サブタンクを構成する壁面の一部を兼用したことを特徴とする。
請求項3にかかる二輪車の後輪懸架装置は、請求項1又は2において、前記サブタンクは、その中心線が、前記サブタンク下部が僅かに外方へ向かって傾斜するように所要角度をもって形成されていることを特徴とする。
請求項4にかかる二輪車の後輪懸架装置は、前記サブタンクと前記シリンダーは減衰力調整弁を介して連通され、前記減衰力調整弁は、前記サブタンクの上方に設けられることを特徴とする。
請求項5にかかる二輪車の後輪懸架装置は、前記サブタンクと前記ダンパーケースは車両幅方向へ併設するように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クッションユニットを構成する緩衝器を上方にして配置すると共にコイルスプリングの環装位置を下方にし、さらに、コイルスプリング上方の緩衝器に近接または当接させて車体構成部品を配置して、車体構成部品をコイルスプリング分、車体内側へ移動したから、さらなる車幅のスリム化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態にかかる二輪車の後輪懸架装置を適用した二輪車の側面図。
【図2】図1おける本発明の要部を示す拡大側面図。
【図3】本発明の要部を示すセンターフレーム廻りの簡略した平面図。
【図4】本発明の要部を示すクッションユニット廻りの簡略した正面図。
【図5】クッションユニットの縦断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明にかかる二輪車の後輪懸架装置の実施の形態を説明する。なお、本発明にかかる二輪車の後輪懸架装置の実施の形態は、4サイクル単気筒のエンジンを搭載したオフロード用二輪車に適用したものを例示しており、要部である後輪懸架装置の構成部以外の詳細な説明は簡略する。
【0011】
本実施の形態にかかる自動二輪車の基本的な構成は、図1に示すように、前輪1を回動自在に支持させたフロントサスペンション2と、そのフロントサスペンション2を回動自在に支持させたヘッドパイプ3と、そのヘッドパイプ3から後方に向かって二股状に延出されたメインフレーム4と、そのメインフレーム4の後部に接続され、下方へ延出された左右一対のセンターフレーム5と、そのセンターフレーム5の下部とヘッドパイプ3とを結ぶように接続されたダウンフレーム6及びロアフレーム7と、4サイクル単気筒のエンジンを備えたパワーユニット8と、センターフレーム5に取り付けられ後輪9の上方まで延出されたシートレール10と、フロントサスペンション2に接続されたバーハンドル11と、センターフレーム5に前部が枢支され後部に後輪9を支持したスイングアーム12と、パワーユニット8の駆動力を後輪9へ伝達するスプロケット91及びチェーン13と、センターフレーム5の間に上部が枢支されると共にスイングアーム12に下部がリンク機構を介して枢支され、上下方向を長手にして配置されたクッションユニット14と、前輪1を被装させるフロントフェンダー15と、後輪9を被装させるリアフェンダー16と、シートレール10に取り付けられたシート17と、車体前側上部に配設された燃料タンク18と、を備え、シート17に着座した運転者のハンドル操作やスロットル操作等によって自走するように構成されている。
【0012】
また上記したパワーユニット8は、メインフレーム4、センターフレーム5、ダウンフレーム6及びロアフレーム7で形成された領域内に配置された4サイクル単気筒のエンジン81と、そのエンジン81の吸気側に取り付けられたスロットルボディ82と、エアクリーナー83と、スロットルボディ82とエアクリーナー83を接続させるコネクティングチューブ(吸気系部品)84と、エキゾーストパイプ85を備えエンジン81の排気側に取り付けられたマフラー86とを備えて構成されている。
【0013】
次に本発明の要部である後輪懸架装置について詳述する。
本実施の形態にかかる後輪懸架装置は、上記した自動二輪車の構成のうち、センターフレーム5と、スイングアーム12と、クッションユニット14と、コネクティングチューブ84(吸気系部品)とを備えて構成されている。
【0014】
センターフレーム5は、上記したように、ヘッドパイプ3から後方に向かって二股状に延出されたメインフレーム4の後部に夫々接続された左右一対からなり、図2に示すように、センターフレーム5の上部同士を接続させるクロスパイプ19が架設されている。そして、センターフレーム5のクロスパイプ19近傍には、軸受け部20aが形成されたクッションブラケット20が内側に向かって対向するように延出されている。
【0015】
スイングアーム12は、センターフレーム5の下部に前部が上下方向揺動可能に枢支された平面視門形状に形成され、後部に後輪9が回動可能に支持されている。このスイングアーム12の前部側寄りの下部には、対向して設けられた略三角形状の第1リンク部材21の第1枢支部21aが枢支され、その第1枢支部21aより下方に位置した第2枢支部21bが、センターフレーム5とスイングアーム12との枢支部より下方のセンターフレーム5に配設された第4枢支部22aに枢支された棒状の第2リンク部材22と枢支されている。また、略三角形状の第1リンク部材21の前方に位置した第3枢支部21cが後述するロッド14bの先部に枢支されている。
【0016】
クッションユニット(緩衝器)14は、図2及び図5に示すように、内部にシリンダー14gを備えた筒状のダンパーケース14aと、そのダンパーケース14aからストローク可能に突設されダンパーケース14a内部のピストン14hと接続されたロッド14bと、外部に油圧のサブタンク14c(車体構成部品)とを備えた所謂ショックアブソーバーであり、そのロッド14bとダンパーケース14aにまたがってコイルスプリング14dが張架されるように環装されてなる。
【0017】
また、このクッションユニット14は、従来のものより、コイルスプリング14dの位置を下方へシフトさせてあると共に、サブタンク14c(車体構成部品)とダンパーケース14aとが兼用する壁面14mを介して一体化したハウジングで車輌幅方向へ並設するように設けられており、減衰力調整弁14kを介してサブタンク14c内とシリンダー14gとが連通されている。
なお、この上記したサブタンク14cは、その中心線が、図5に示すように、ダンパーケース14aやロッド14b等の中心線と平行ではなく、サブタンク14c下部が僅かに外方へ向かって傾斜するように所要角度θ(概ね2°程度が好適である)でもって形成されており、サブタンク14cの加工性を向上させている。
【0018】
このように構成されたクッションユニット14は、センターフレーム5の内側に対向して突設されたクッションブラケット20の軸受け部20a間にダンパーケース14a上部の第1取付部14eが枢支されると共に、スイングアーム12の前部側寄りの下部に設けた第1リンク部材21の第3枢支部21cに、ロッド14bの先部に設けた第2取付部14fが枢支されて、図1〜図3に示すように、ダンパーケース14aが前方側に僅かに傾斜するように取り付けられると共に、車体の幅方向略中央に配設されている。
【0019】
なお、本実施の形態では第1リンク部材21や第2リンク部材22を介して、クッションユニット14とスイングアーム12とを接続させて、後輪9の揺動角度に対するロッド14bのストローク量を可変させている。すなわち、後輪9が深く沈みこんだ際、十分なクッション性が得られるようになっているが、このものに限定されず、クッションユニット14とスイングアーム12とを直に接続しても良いものである。
【0020】
コネクティングチューブ84(吸気系部品)は、図1及び図2に示すように、クッションユニット14より前方に配置されたスロットルボディ82と、クッションユニット14より後方に配置されたエアクリーナー83とを吸気可能に接続させる湾曲した管状部材であり、図3及び図4に示すように、ダンパーケース14aにサブタンク14cと反対側から迂回するように、そのダンパーケース14aに近接させて配置されている。
【0021】
なお、コネクティングチューブ84とサブタンク14cは、ダンパーケース14aを挟んで左右夫々に配設されていると共に、サブタンク14c側にマフラー86が配設されている。
【0022】
このコネクティングチューブ84の高さレイアウトは、パワーユニット8のレイアウト上、大きく変更することが容易ではないため、かかる高さを絶対位置として、本実施の形態では、コイルスプリング14dの位置を下方へシフトさせて、コネクティングチューブ84や、サブタンク14cをコイルスプリング14d分、車体内側へ移動している。
【0023】
このように本実施の形態にかかる後輪懸架装置は、コイルスプリング14dの位置を下方へシフトさせて、コネクティングチューブ84や、サブタンク14c等の車体構成部品をコイルスプリング14d分、車体内側へ移動しているから、さらなる車幅のスリム化ができるようになっている。
【0024】
この車幅のスリム化によって、運転者の足付き性を向上させたり、また、コネクティングチューブ84にあっては、クッションユニット14との干渉を防ぐための迂回が、従来に比べて小さくなったため、さらなる吸気効率の向上を期待できる。
【0025】
以上、本実施の形態にかかる二輪車の後輪懸架装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0026】
3…ヘッドパイプ
4…メインフレーム
5…センターフレーム
81…エンジン
82…スロットルボディ
83…エアクリーナー
84…コネクティングチューブ
9…後輪
12…スイングアーム
14…クッションユニット
14a…ダンパーケース
14b…ロッド
14c…サブタンク
14d…コイルスプリング
14g…シリンダー
19…クロスパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプから後方へ延出されたメインフレームの後部に連結され、下方へ延出された左右一対のセンターフレームと、
そのセンターフレームに前部が枢支され後部に後輪を支持させたスイングアームと、
前記センターフレームの間に上部が車体側に枢支されると共に前記スイングアーム側に下部が枢支され、上下方向を長手にして配置されたクッションユニットと
を備えた二輪車の後輪懸架装置において、
前記クッションユニットは、内部にシリンダーを備えた筒状のダンパーケースと、そのダンパーケースからストローク可能に突設され前記ダンパーケース内部のピストンと接続されたロッドとからなる緩衝器と、
前記ロッドと前記ダンパーケースとに跨ってこれらの周囲に配置されるコイルスプリングとを備え、
前記コイルスプリングの上端を前記緩衝器の上端より低くし、
前記緩衝器の構成部品であるサブタンクを、前記コイルスプリングの上端よりも前記サブタンクの下端が上方になり、前記コイルスプリングの外径よりも前記サブタンクの一部が前記シリンダー中心側に配置されるように、前記コイルスプリング上方の前記緩衝器に近接又は当接させて前記コイルスプリング分車体内側へ移動させ、側面視で前記センターフレームの内側に配置したことを特徴とする二輪車の後輪懸架装置。
【請求項2】
前記コイルスプリングの上方の前記シリンダーに近接して前記サブタンクを一体に形成し、
前記シリンダーを構成する壁面の一部と前記サブタンクを構成する壁面の一部を兼用したことを特徴とする請求項1記載の二輪車の後輪懸架装置。
【請求項3】
前記サブタンクは、その中心線が、前記サブタンク下部が僅かに外方へ向かって傾斜す
るように所要角度をもって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の二輪
車の後輪懸架装置。
【請求項4】
前記サブタンクと前記シリンダーは減衰力調整弁を介して連通され、
前記減衰力調整弁は、前記サブタンクの上方に設けられることを特徴とする請求項1〜3に記載の二輪車の後輪懸架装置。
【請求項5】
前記サブタンクと前記ダンパーケースは車両幅方向へ併設するように設けられることを特徴とする請求項1〜4に記載の二輪車の後輪懸架装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−56574(P2012−56574A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269243(P2011−269243)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2006−24335(P2006−24335)の分割
【原出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】