説明

二部材の組付け構造

【課題】クリップの保持部とコネクタの被保持部との挿入荷重を増大させることなく、クリップとコネクタとを結合した状態での相互間の隙間を詰める。
【解決手段】クリップ10の保持部20と、コネクタ30の被保持部40とを相対的に差し込むことで、クリップとコネクタとが互いに結合される構成の二部材の組付け構造であって、クリップの保持部20は、クリップとコネクタとが結合された状態においてコネクタ側の外面に干渉する隙間詰め部(両側板28の突出部分28b)を備えている。この隙間詰め部は、クリップの保持部20とコネクタの被保持部40とを相対的に差し込むときの力を受けてコネクタ側から離れる方向への弾性変形が可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部材の組付け構造に関し、詳しくは車体側に装着されるクリップと、ワイヤハーネスなどのケーブルを接続するコネクタとを互いに結合するための組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クリップとコネクタとを結合するための構成については、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、クリップの基部に一対のレールからなる保持部が設けられ、コネクタの外面に同じく一対のレールからなる被保持部が設けられている。これらのレールを係合させることによって保持部に被保持部を差し込むことができ、それによってクリップとコネクタとを結合することができる。
【特許文献1】特開平11−30208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、クリップの保持部にコネクタの被保持部を差し込むためには、これらの相互間に所定のクリアランス(隙間)が必要である。しかし、この隙間によってクリップとコネクタとの間でガタツキが生じ、これが車両の走行時における異音発生の原因となる。
これを解消するために、隙間を小さくしたり、隙間を部分的にゼロにする突起を設けたりすることが考えられるが、そうするとクリップの保持部にコネクタの被保持部を差し込むときの挿入荷重が増大する。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クリップの保持部とコネクタの被保持部との挿入荷重を増大させることなく、クリップとコネクタとを結合した状態での相互間の隙間を詰めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
クリップの保持部と、コネクタの被保持部とを相対的に差し込むことで、クリップとコネクタとが互いに結合される構成の二部材の組付け構造であって、クリップの保持部は、クリップとコネクタとが結合された状態においてコネクタ側の外面に干渉する隙間詰め部を備えている。この隙間詰め部は、クリップの保持部とコネクタの被保持部とを相対的に差し込むときの力を受けてコネクタ側から離れる方向への弾性変形が可能に構成されている。
【0006】
これにより、クリップの保持部とコネクタの被保持部とを相対的に差し込むときの挿入荷重を増大させることなく、クリップとコネクタとを結合した状態での相互間の隙間を詰めることができる。このため、クリップに対するコネクタのガタツキを抑えることができ、車両の走行時における異音を軽減することが可能となる。
【0007】
好ましくは、クリップの保持部が、クリップの基板の両側において、コネクタの被保持部を両側から位置決めする側板をそれぞれ備え、両側板が基板に対して外方への弾性変形可能で、かつ、両側板に被保持部の外面に干渉する突出部分を設けることで隙間詰め部を構成する。
【0008】
より好ましくは、クリップの保持部が、コネクタの被保持部を案内するとともに、該被保持部を下側から支持する一対の係止片を備え、両係止片に弾性をもたせるとともに、個々の縁部をコネクタの外面に干渉させることで隙間詰め部を構成する。
【0009】
さらに好ましくは、隙間詰め部を、クリップにおける基板の二箇所に設定された弾性変形可能の可撓部分に、コネクタの被保持部に干渉する突片をそれぞれ設けることによって構成する。
【0010】
これらの構成によれば、クリップにおける既存の部材を利用して隙間詰め部が構成されているので、クリップの大幅な設計変更を避けることができる。また、保持部における両側板の突出部分、係止片の縁部、あるいは突片の先端部だけを被保持部の外面に干渉させているので、保持部に被保持部を差し込むときの挿入荷重の増加をより抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
実施の形態1
まず、本発明における実施の形態1を図1〜図4によって説明する。
図1は、コネクタ用のクリップ10とケーブル用のコネクタ30とを表した斜視図である。図2は、クリップ10を図1の下側からみた斜視図である。図3は、クリップ10の正面図である。図4は、クリップ10の側断面図である。これらの図面で示すクリップ10は、樹脂材による一体成形品であり、基板12の片側(図面の上側)に脚部14を備え、反対側(図面の下側)に保持部20を備えている。
【0012】
脚部14は、剛性を有する支柱14aの両側に弾性爪14bがそれぞれ設けられた構成になっている。また、脚部14の基部には、弾性変形が可能な皿形状のスタビライザー16が設けられている。脚部14は、車体側の所定のパネル部材に開けられた取付け孔(図示省略)に挿入可能である。取付け孔に脚部14を挿入することにより、両弾性爪14bが個々の弾性によって内方へ撓みながら取付け孔を通過する。そして、パネル部材の内側で両弾性爪14bが取付け孔の縁に係合するとともに、スタビライザー16が取付け孔の周囲におけるパネル部材の外側面に押し付けられる。この結果、クリップ10がパネル部材に対して安定した状態で装着される。
【0013】
保持部20は、つぎに説明するコネクタ30をクリップ10に結合するためのものであり、クリップ10における基板12の下側において左右一対の係止片22を備えている。これらの両係止片22は、個々の支持板24を通じて基板12から所定の距離を隔てて配置されている(図3および図4)。そして、両係止片22は互いに平行な状態で延びているとともに、両係止片22の相互間に架け渡された状態のロックバー26が設けられている。
また、保持部20は、基板12の両側に位置する左右の側板28を備えている。これらの両側板28は、両係止片22を両側から囲うように位置しているとともに、基板12に対する個々の結合部28aを支点として外方へ撓む(弾性変形する)ことが可能である。さらに、両側板28には、それぞれ内方へ湾曲させた状態の突出部分28bが設けられている。これらの突出部分28bは、互いに対向する面が円弧面で、かつ、それぞれ両係止片22に沿って連続している。なお、両側板28における突出部分28bの間の寸法は、つぎに説明するコネクタ30の被保持部40を構成している両係止片42の外形幅の寸法以下に設定されている。
【0014】
ワイヤハーネスなどのケーブルを接続するためのコネクタ30も樹脂材による一体成形品であり、その上板32に被保持部40が設けられている。この被保持部40は、クリップ10の保持部20に対して相対的に差し込むことが可能な形状に設定されている。この被保持部40は、互いに平行な状態で延びる左右一対の係止片42を備えている。これらの両係止片42は、コネクタ30の外面から立ち上がった個々の支持壁43と共に断面形状が「L」字状になっている。これにより、両係止片42は、それぞれの支持壁43を通じてコネクタ30の外面から所定の距離を隔てて位置している。
両係止片42の中間位置には、これらの係止片42と平行に延びるフック44が設けられている。このフック44の基端部は両係止片42に結合され、先端部は下向きの爪部44aになっている。また、フック44は弾性を有し、その基端部を支点として外方(図1の上方)へ撓むことができる。
【0015】
つづいて、クリップ10とコネクタ30とを結合する手順について説明する。
図1で示す状態において、クリップ10の保持部20にコネクタ30の被保持部40を相対的に差し込むことにより、保持部20における両側板28の間で、かつ、基板12と両係止片22との間に被保持部40の両係止片42が挿入される。つまり、被保持部40の両係止片42は、保持部20の両側板28によって両側から位置決めされ、同時に両係止片22によって下側から支持された状態で案内される。そして、被保持部40におけるフック44の爪部44aが、該フック44の撓みによって保持部20のロックバー26を乗り越えることにより、この爪部44aがロックバー26に係合する(図4)。
これによって保持部20と被保持部40とが互いに抜け出さないようにロックされ、クリップ10とコネクタ30とが結合状態に保持される。この状態において、既に説明したようにクリップ10の脚部14をパネル部材の取付け孔に挿入することにより、コネクタ30がパネル部材に装着さたことになる。
【0016】
クリップ10とコネクタ30との結合状態において、保持部20の両側板28における突出部分28bは、被保持部40の両支持壁43に干渉して保持部20と被保持部40との間の隙間が詰められている。これにより、クリップ10に対するコネクタ30のガタツキが抑えられる。
なお、保持部20に被保持部40を差し込むときにおいても、当然のことながら両側板28の突出部分28bは被保持部40の両支持壁43に干渉している。しかしながら、両側板28は保持部20に被保持部40を差し込むときの力を受けて個々に外方へ弾性変形する。また、両突出部分28bはそれぞれの円弧面で被保持部40の両支持壁43に接触している。これらのことから、保持部20に被保持部40を差し込むときの挿入荷重の増加が抑えられる。
このように、実施の形態1においては、保持部20の両側板28および個々の突出部分28bによって本発明の「隙間詰め部」が構成されている。
【0017】
実施の形態2
つぎに、本発明における実施の形態2を図5によって説明する。
図5は、実施の形態2におけるクリップ10を図3と対応させて表した正面図である。この実施の形態2では、クリップ10における保持部20の両係止片22Aに弾性をもたせ、個々に上下方向へ撓むことができるように設定されている。また、両係止片22Aは、それぞれの外側部分が下方へ傾斜した形状になっている。
そこで、実施の形態2におけるクリップ10の保持部20に、実施の形態1で説明したコネクタ30の被保持部40が相対的に差し込まれると、被保持部40の両係止片42およびフック44は、保持部20の基板12と両係止片22Aとの間に挿入される。これにより、両係止片22Aの両側縁部がコネクタ30の上板32に弾性をもって干渉する。
【0018】
したがって、クリップ10とコネクタ30とが結合された状態では、保持部20と被保持部40との間の隙間が詰められ、クリップ10に対するコネクタ30のガタツキが抑えられる。また、保持部20に被保持部40を差し込むときは、両係止片22Aがそれぞれ上方へ弾性変形可能であるとともに、両係止片22Aの縁部の角が上板32に対して線接触の状態で干渉することから、保持部20に被保持部40を差し込むときの挿入荷重の増加が抑えられる。
このように実施の形態2では、実施の形態1における保持部20の両側板28および突出部分28bによる「隙間詰め部」に代えて、保持部20の両係止片22Aを利用して「隙間詰め部」が構成されている。このため、本実施の形態2では保持部20の両側板28を省略することも可能であり、次に説明する実施の形態3,4についても同様に両側板28を省略できる。
【0019】
実施の形態3
つぎに、本発明における実施の形態3を図6および図7によって説明する。
図6は、実施の形態3におけるクリップ10を表した斜視図である。図7は、同じく実施の形態3におけるクリップ10を表した正面図である。この実施の形態3においては、クリップ10の基板12を利用して「隙間詰め部」が構成されている。すなわち、基板12の上面には、保持部20の両端面間に連続するV字溝50が、脚部14の両側において互いに平行に形成されている。これにより、両V字溝50よりも側方箇所の基板12は、個々のV字溝50をヒンジとして外方(図面の上方)への弾性変形が可能な可撓部分12Aとなっている。
また、両可撓部分12Aの下面に、保持部20の両端面間に連続するリブ形状の突片52が互いに平行に形成されている。これらの両突片52は、図面の下方へ突出しており、それぞれの先端部は円弧面もしくはクサビ状に尖っている。
【0020】
実施の形態3におけるクリップ10の保持部20に、実施の形態1で説明したコネクタ30の被保持部40が相対的に差し込まれると、この被保持部40における両係止片42の上面に両突片52の先端部が干渉する。したがって、クリップ10とコネクタ30とが結合された状態では、保持部20と被保持部40との間の隙間が詰められる。
そして、保持部20に被保持部40を差し込むときは、両可撓部分12Aがそれぞれ上方へ弾性変形可能であるとともに、両突片52の先端部が被保持部40における両係止片42の上面に対して線接触の状態で干渉することから、挿入荷重の増加が抑えられる。
【0021】
実施の形態4
図8は、実施の形態4におけるクリップ10を表した正面図である。この実施の形態4にあっては、クリップ10における基板12の下面に、保持部20の両係止片22と対向するように一対の弾性片54が設けられている。これらの両弾性片54は、基板12に対してそれぞれ上方へ撓むことができるとともに、個々の外側部分が下方へ傾斜した形状になっている。
この実施の形態4では、両弾性片54が「隙間詰め部」を構成しており、クリップ10の保持部20にコネクタ30の被保持部40が相対的に差し込まれると、この被保持部40における両係止片42の上面に両弾性片54の両側縁部が弾性をもって干渉する。これにより、クリップ10とコネクタ30とが結合された状態では、保持部20と被保持部40との間の隙間が詰められる。また、保持部20に被保持部40を差し込むときは、両弾性片54がそれぞれ上方へ弾性変形可能であるとともに、両弾性片54の縁部の角が両係止片42の上面に対して線接触の状態で干渉することから、挿入荷重の増加が抑えられる。
【0022】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
すなわち、それぞれ個別に説明した各実施の形態を任意に組み合わせて新たな実施の形態とすることも可能である。例えば、実施の形態1、2の「隙間詰め部」を組み合わせることにより、クリップ10とコネクタ30とが結合された状態における保持部20と被保持部40との間では、上下左右方向の隙間が詰められ、クリップ10に対するコネクタ30のガタツキがより効果的に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1におけるクリップとコネクタとを表した斜視図。
【図2】実施の形態1におけるクリップを図1の下側からみた斜視図。
【図3】実施の形態1におけるクリップの正面図。
【図4】実施の形態1におけるクリップの側断面図。
【図5】実施の形態2におけるクリップを図3と対応させて表した正面図。
【図6】実施の形態3におけるクリップを表した斜視図。
【図7】実施の形態3におけるクリップを表した正面図。
【図8】実施の形態4におけるクリップを表した正面図。
【符号の説明】
【0024】
10 クリップ
20 保持部
28 側板
28b 突出部分
30 コネクタ
40 被保持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップの保持部と、コネクタの被保持部とを相対的に差し込むことで、クリップとコネクタとが互いに結合される構成の二部材の組付け構造であって、
クリップの保持部は、クリップとコネクタとが結合された状態においてコネクタ側の外面に干渉する隙間詰め部を備え、この隙間詰め部は、クリップの保持部とコネクタの被保持部とを相対的に差し込むときの力を受けてコネクタ側から離れる方向への弾性変形が可能に構成されている二部材の組付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載された二部材の組付け構造であって、
クリップの保持部は、クリップの基板の両側において、コネクタの被保持部を両側から位置決めする側板をそれぞれ備え、隙間詰め部は、両側板を基板に対して外方への弾性変形可能とし、かつ、両側板に被保持部の外面に干渉する突出部分を設けることによって構成されている二部材の組付け構造。
【請求項3】
請求項1に記載された二部材の組付け構造であって、
クリップの保持部は、コネクタの被保持部を案内するとともに、該被保持部を下側から支持する一対の係止片を備え、隙間詰め部は、両係止片に弾性をもたせるとともに、個々の縁部をコネクタの外面に干渉させるように構成されている二部材の組付け構造。
【請求項4】
請求項1に記載された二部材の組付け構造であって、
隙間詰め部は、クリップにおける基板の二箇所に外方への弾性変形が可能な可撓部分をそれぞれ設定し、これらの可撓部分に、コネクタの被保持部に干渉する突片をそれぞれ設けることによって構成されている二部材の組付け構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−127695(P2009−127695A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301635(P2007−301635)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】