説明

二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン

二酸化チタンの芯材と二酸化ケイ素のコーティングを有する粒子からなる粉末であって、該粉末が0.5〜40質量%の二酸化ケイ素含量を有し、5〜300m/gのBET表面積を有し、かつ二酸化ケイ素のコーティングおよび二酸化チタンの芯材を有する一次粒子から構成されている、二酸化チタンの芯材と二酸化ケイ素のコーティングを有する粒子からなる粉末。この粉末は、蒸発可能なケイ素化合物と蒸発可能なチタン化合物を生成物中でのその後の望ましいSiOとTiOとの比に相応する量で混合し、200℃以下の温度で蒸発させ、水素および空気または酸素に富んだ空気と一緒に不活性ガス流により公知のバーナーの中央管(芯材)中に移動させ、この反応混合物をバーナーの開口で点火し、第2の空気と一緒に導入し、冷却された火炎管中で燃焼させ、引続き二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粉末をガス状の反応生成物から分離し、必要に応じて湿潤空気中で付着塩化水素から遊離し、この場合第1の空気と第2の空気との比は、0.3より大きく、芯材の水素と第2の空気との比は、1より大きく、二酸化チタン前駆体と第2の空気との比は、0.5より大きいことによって特徴付けられる方法によって製造される。粉末を0.01〜25質量%の量で含有する日焼け止め剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化ケイ素のコーティングで被覆され、焔内加水分解によって製造された二酸化チタン粉末、該粉末を含有する分散液ならびに該粉末および該分散液を製造するための方法に関する。また、本発明は、粉末および分散液の使用を提供する。
【0002】
金属酸化物、例えば二酸化チタンまたは酸化亜鉛は、日焼け止め剤において広範囲で使用されている。この日焼け止め剤の作用は、基本的に有害なUV線の反射、散乱および吸収を含み、実質的に金属酸化物の一次粒径に依存する。
【0003】
金属酸化物、例えば二酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いる欠点は、金属酸化物の光触媒活性にあり、この光触媒活性により、日焼け止め剤の成分中での変化をまねきうる反応が誘発される。
【0004】
例えば、金属酸化物をコーティングで被覆することによって、UVスクリーニング特性を減少させることなく、金属酸化物の光触媒活性を減少させることが試みられた。
【0005】
二酸化チタン粉末を二酸化ケイ素で被覆することは、公知である。概して、二酸化チタン粒子は、液状媒体中で分散され、コーティング成分は、ケイ酸塩の形で添加され、ケイ酸は、二酸化チタン粒子の表面上に沈殿される。更に、このケイ酸は、熱処理法によって処理されることができる。ケイ酸塩の代わりに、有機ケイ素化合物が使用されてもよい。
【0006】
欧州特許出願公開第0988853号明細書には、二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粒子、ならびにこの二酸化チタン粒子の製造および日焼け止め剤中の成分としての二酸化チタンの使用が記載されている。
【0007】
前記粒子を用いた場合に欠点は、前記粒子の表面官能性が低いことおよび粒子の成長度が高いことにある。一面で、この欠点は、化粧配合物中での粒子の配合を複雑化し、他面、粒子の安定性を沈殿に関連して制限する。
【0008】
前記欠点は、2002年8月8日に出願日の欧州特許出願第01119108.7号においては殆んど克服されている。この欧州特許出願に記載されている、二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粒子は、化粧配合物中に簡単に配合されることができ、この化粧配合物中で安定性であり、低い光触媒活性を有する。
【0009】
しかし、コーティングが液相から塗布されるような方法を用いた場合の欠点は、再現精度を留めていることである。二酸化チタン粉末は、液状の分散相中で凝集物を形成する傾向にある。付加的に有利に使用される焔内加水分解によって製造された二酸化チタンは、凝集された構造を示す。これは、コーティングがそのつど凝集物および/または凝集塊を包囲することを意味する。しかし、凝集物および凝集塊の構造は、反応中の条件、例えばpH値または分散エネルギーに著しく依存する。それ故に、再現可能な方法で均一な粉末を得ることは、困難である。
【0010】
コーティングを液状媒体から塗布するような方法以外に、二酸化ケイ素で塗布された二酸化チタン粒子を気相反応で製造するような方法も存在する。
【0011】
HungおよびKatz(米国特許第5268337号明細書)およびJ. Mater. Res. 7, 1861 (1992))は、焔内加水分解法で二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粒子を製造することを記載している。この目的のために、バーナーが使用され、この場合、二酸化チタンの前駆体および二酸化ケイ素は、燃料ガスおよび流れ1としての不活性ガスおよび流れ2としての酸化ガスと一緒に向流で供給され、拡散火炎は、2つの流れの衝突点で点火される。四塩化チタンおよび四塩化ケイ素が前駆体として1:1〜3:1のSiCl対TiClの比で使用され、火炎温度は、500゜K〜2300゜Kである場合には、完全な二酸化ケイ素コーティングが形成される。二酸化チタン芯材は、これに関連してルチル型の配置で存在する。二酸化ケイ素の割合が少ない場合には、二酸化チタン表面上での二酸化ケイ素領域が形成される。
【0012】
この方法を用いた場合の欠点は、向流拡散火炎を有するバーナーが経済的に動作される大型のバーナーと適合させることが困難であることにある。もう1つの欠点は、完全に形成されたコーティングを得るために必要とされる二酸化ケイ素前駆体の割合が大きいことである。
【0013】
二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粒子を製造するための他の可能な方法は、少なくとも1300℃の温度で管状反応器中で酸素を用いての熱分解可能な二酸化チタン前駆体および熱分解可能な二酸化ケイ素前駆体の、WO 96/36441に記載された気相酸化である。この場合には、何はともあれ、二酸化チタン粒子の形成と共に二酸化チタン前駆体の酸化が行なわれ、次に二酸化ケイ素前駆体のみが反応混合物に添加される。
【0014】
この方法の欠点は、管状反応器の使用により、不均一な生成物が生じることにある。これは、二酸化チタンの前駆体の加水分解によって形成された二酸化チタン粒子の滞留時間が管状反応器中で均一ではなく、それ故に、変化する構造を有する二酸化チタン芯材が生じる。
【0015】
更に、この二酸化チタン粒子は、反応器の横断面に亘っての不均一な滞留時間のために二酸化ケイ素で均一には被覆されない。結果は、二酸化チタン芯材および二酸化ケイ素コーティングに関連して不均一な生成物である。付加的に、反応条件下でこの生成物中に配合されることができる、反応器壁上での未定義の生成物の付着力は、考慮に入れなければならないという事実が存在する。従って、WO 96/36441に記載の方法は、均一な生成物を得るのに有利な方法であることを証明するものではない。
【0016】
本発明の目的は、公知技術水準の欠点を有しない、二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粉末を提供することである。殊に、本発明の目的は、著しく均一な厚さの完全な二酸化ケイ素コーティングおよび低い光触媒活性を有するはずであり、再現可能な方法で製造されうるはずである。
【0017】
従って、本発明は、二酸化チタンの芯材と二酸化ケイ素のコーティングを有する粒子からなる粉末を提供し、この場合には、
該粉末が0.5〜40質量%の二酸化ケイ素含量を有し、
該粉末が5〜300m/gのBET表面積を有し、
該粉末が二酸化ケイ素のコーティングおよび二酸化チタンの芯材を有する一次粒子から構成されていることによって特徴付けられる。
【0018】
本発明による粉末中での二酸化ケイ素の含量は、0.5〜40質量%である。0.5質量%未満の値を用いた場合には、完全に閉鎖された二酸化ケイ素コーティングが存在することを保証することができない。40質量%を上廻る値を用いた場合には、二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粉末は、低すぎるUV吸収を有する傾向にある。本発明による粉末のBET表面積は、DIN 66131により定められる。
【0019】
一次粒子は、化学結合を破断することなしではさらに分解されることができない極めて小さな粒子を示すことができる。
【0020】
この一次粒子は、一緒に成長することができ、凝集物を形成する。凝集物は、この凝集物の表面積が、結合されている一次粒子の表面積の総和よりも小さいという事実によって特徴付けられている。更に、凝集物は、分散の際に一次粒子へ完全には分解されない。小さいBET表面積を有する本発明による粉末は、全体的にかまたは大部分が凝集されていない一次粒子の形で存在することができ、一方、大きいBET表面積を有する本発明による粉末は、比較的高い凝集度を有することができるかまたは完全に凝集された形で存在することができる。
【0021】
凝集物は、好ましくは二酸化ケイ素コーティングによって一緒に成長する一次粒子から構成されている。このような凝集物の構造を基礎とする本発明による粉末は、特に低い光活性および高い吸収率を示す。
【0022】
付加的に、本発明による粉末は、好ましくは1〜20質量%の二酸化ケイ素含量を有することができる。
【0023】
本発明による粉末の二酸化チタン芯材のルチル型変態/アナターゼ型変態の比は、広い範囲内で変動可能である。従って、ルチル型変態/アナターゼ型変態の比は、1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10であることができる。二酸化チタン変態は、異なる光活性度を示す。コーティングの二酸化ケイ素含量と共に、ルチル型変態/アナターゼ型変態の比の広い範囲のために、粉末は、例えば日焼け止め剤への使用のために特に選択されることができる。
【0024】
本発明による粉末は、好ましくは320nmで少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%の吸収率を有することができ、360nmでは、有利に少なくとも90%、特に有利に少なくとも92%の吸収率を有することができる。吸収率は、そのつど3質量%の固体含量を有する粉末の水性分散液中で測定される。
【0025】
本発明による粉末は、好ましくは0.5未満、特に好ましくは0.3未満の光活性度を有することができる。
【0026】
光活性度の測定において、測定することができる試料は、2−プロパノール中で懸濁され、UV光で1時間照射される。更に、形成されるアセトンの濃度は、測定される。
【0027】
光活性度は、粉末を使用した場合に測定されるアセトン濃度と二酸化チタンP25、Degussa社からの熱分解により製造された二酸化チタン、を使用した場合に測定されるアセトン濃度との商である。
【0028】
mg/kgでのアセトン濃度は、試料の光触媒活性の測定値として使用されることができる。それというのも、アセトンの形成は、等式dc[Ac]/dt=kによる零次反応(zero order kinetics)によって記載されうるからである。
【0029】
本発明による粉末の等電点(IEP)は、1〜4、特に有利に2〜3のpH値である。
【0030】
それによって、安定した分散液は、例えば日焼け止め剤にとって重要なpH5〜7の範囲内で製造されることができる。コーティングなしの二酸化チタン粒子は、他の添加剤が分散液に添加されない場合には、前記のpH範囲内で不安定な分散液を生じる。
【0031】
IEPは、零電位が零である場合のpH値を示す。二酸化チタンの場合のIEPは、約5〜6のpHであり、二酸化ケイ素の場合には、約2〜4のpHである。粒子が酸性基または塩基性基を表面上に運搬する分散液においては、電荷は、pH値を調節することによって変えることができる。pH値とIEPとの差がよりいっそう大きくなれば、分散液は、ますます安定性になる。
【0032】
ゼータ電位は、粒子の表面電荷の測定値である。ゼータ電位は、分散液中の本発明による粉末の粒子と電解質とから構成されている電気化学的二重層内の剪断平面での電位を表わす。ゼータ電位は、なかんずく粒子、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタンまたは二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタンの性質に依存する。同じ材料の粒子は、表面電荷の同じ徴候を有し、したがって互いに反発し合う。しかしながら、ゼータ電位が小さすぎる場合には、斥力は、粒子のファンデルワールス引力を補償するには十分でなく、粒子の凝集および場合により沈降を生じる。
【0033】
本発明による粉末のゼータ電位は、水性分散液中で測定される。
【0034】
更に、本発明による粉末は、好ましくは40〜120m/g、特に好ましくは60〜70m/gのBET表面積を有する。
【0035】
また、本発明は、本発明による粉末の製造方法を提供し、この方法は、蒸発可能なケイ素化合物と蒸発可能なチタン化合物を生成物中でのその後の望ましいSiOとTiOとの比に相応する量で混合し、200℃以下の温度で蒸発させ、水素および空気または酸素に富んだ空気と一緒に不活性ガス流により公知のバーナーの中央管(芯材)中に移動させ、この反応混合物をバーナーの開口で点火し、第2の空気と一緒に導入し、冷却された火炎管中で燃焼させ、引続き二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粉末をガス状の反応生成物から分離し、必要に応じて湿潤空気中で付着塩化水素から遊離し、この場合
第1の空気と第2の空気との比は、0.3より大きく、
芯材の水素と第2の空気との比は、1より大きく、
二酸化チタン前駆体と第2の空気との比は、0.5より大きいことによって特徴付けられている。
【0036】
本発明による粉末は、規定された全てのパラメーターが守られている場合にのみ得られる。変動が存在する場合には、本発明によらない粉末および粉末混合物が得られる。従って、例えば第2の空気の付加がなく、第2の空気と第1の空気/芯材の水素/二酸化チタン前駆体との比を観察しない場合には、ケイ素とチタンが均一に分布しているケイ素/チタン混合酸化物粉末が得られる。このような混合酸化物粉末は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4235996号明細書中に記載されている。
【0037】
本発明による粉末の製造における蒸発可能なチタン化合物の型は、制限されていない。四塩化チタンは、有利に使用されてよい。
【0038】
蒸発可能なケイ素化合物の型は、同様に制限されていない。四塩化ケイ素は、有利に使用されてよい。
【0039】
また、本発明は、本発明による粉末を0.01〜25質量%の量で含有する日焼け止め剤を提供する。付加的に、本発明による日焼け止め剤は、公知の無機UV吸収性顔料および/または化学的UVフィルターとの混合物で使用されてよい。
【0040】
適当な公知のUV吸収性顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムまたはこれらの混合物を含む。
【0041】
化学的UVフィルターとして、当業者に公知の全ての水溶性または油溶性のUV−AフィルターおよびUV−Bフィルターを使用することができる。挙げることができる選択された例は、次のものを含む:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホネートナトリウム塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホネートナトリウム塩、テトラヒドロキシベンゾフェノン、p−アミノ安息香酸、エチル−p−アミノベンゾエート、グリセリル−p−アミノベンゾエート、アミル−p−ジメチルアミノベンゾエート、オクチル−p−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシ桂皮酸エステル、オクチル−p−メトキシ桂皮酸エステル、2−エチルヘキシル−p−メトキシ桂皮酸エステル、p−メトキシ桂皮酸エステルナトリウム塩、グリセリル−ジ−p−メトキシ桂皮酸エステル、モノ−2−エチルヘキサノエート、オクチルサリチレート、フェニルサリチレート、ホモメンチルサリチレート、ジプロピレングリコールサリチレート、エチレングリコールサリチレート、ミリスチルサリチレート、メチルサリチレート、4−第三ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタンおよび2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール。これらの中で、2−エチルヘキシル−p−メトキシ桂皮酸エステルおよび4−第三ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタンは、これらの化合物のUV保護およびこれらの化合物が皮膚にとって無害であるという事実のために好ましい。
【0042】
更に、本発明による日焼け止め剤は、当業者に公知の溶剤、例えば水、一価アルコールまたは多価アルコール、整髪油、乳化剤、安定剤、コンシステンシー調節剤、例えばカルボマー、セルロース誘導体、キサンタムガム、ろう、ベントン(bentone)、熱分解法ケイ酸および美容術で常用される他の物質、例えばビタミン、酸化防止剤、防腐剤、着色剤および香料を含有することができる。
【0043】
典型的には、本発明による日焼け止め剤は、乳濁液(O/W、W/Oまたは多重)、水性ゲルもしくは水性アルコール性ゲルまたは油性ゲルとして存在することができ、ローション剤、クリーム剤、ミルクスプレー剤(milk sprays)、ムース剤の形で、スティックとして、かまたは他の常用の形で存在することができる。
【0044】
更に、日焼け止め剤の一般の構造式および処方は、A. Domsch, "Die kosmetischen Praeparate", Verlag fuer chemische Industrie (編者:H. Ziolkowsky), 第4版, 1992またはN.J. LoweおよびN.A. Shaat, Sunscreens, Development, Evaluation and Regulatory Aspects, Marcel Dekker Inc., 1990に記載されている。
【0045】
付加的に、本発明は、UVフィルターとしての本発明による粉末の使用、ならびに分散液の製造および化学機械研磨(CMP法)への使用を提供する。
【0046】
本発明による方法は、二酸化ケイ素で完全に被覆された二酸化チタン粒子の製造を可能にし、この場合には、少量の二酸化ケイ素前駆体のみが必要とされる。製造が熱分解法で実施される公知方法を用いた場合には、完全なコーティングを達成させるために、実質的に大量の二酸化ケイ素前駆体が必要とされる。更に、これは、公知技術水準による粉末のUV吸収を減少させる。
【0047】
また、一次粒子が既にシールされたコーティングを有するような本発明による粉末の独特の構造は、一次粒子の予想される凝集の場合に二酸化チタン芯材の凝集を全く生じないことを意味する。水性媒体中で二酸化チタン芯材を被覆することによって得られる公知の粉末を用いた場合には、概して初期の二酸化チタン粉末の凝集が存在するか、または最初から凝集された粉末が使用される。こうして、前記方法においては、凝集物が被覆され、本発明による方法の場合とは異なり一次粒子を被覆しない。
【0048】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4235996号明細書の記載から公知の事実を基礎にして、完全に異なる粉末が、使用されるガスの残分に対して特殊に定義された比で第2の空気を添加することによって形成されるであろうことは、予想できることではなかった。ドイツ連邦共和国特許出願公開第4235996号明細書中に記載の方法が二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の均一な分布を有する混合酸化物粉末を生じるのに対して、本発明による方法は、二酸化ケイ素の完全なコーティングおよび二酸化チタンの芯材を有する粉末を生じる。
【0049】
実施例
分析による測定
二酸化チタンおよび二酸化ケイ素の含量は、X線蛍光分析により測定される。
【0050】
BET表面積は、DIN 66131により測定される。
【0051】
ジブチルフタレート吸収率(DBP数)は、Haake社, Karlsruhe在からのRHEOCORD 90機器を用いて測定される。この目的のために、二酸化チタン粉末16gは、0.001gの精度で計量供給され、蓋で閉鎖されている混練室に添加され、この場合には、この混練室中にジブチルフタレートは、0.0667ml/秒の予め定められた計量速度で蓋中の穴を通して計量供給される。混練機は、125rpmのモータ速度で運転される。最大のトルクに混練機が達した後に、DBP計量供給装置は、自動的にスイッチオフされる。DBP吸収量は、以下のようにDBPの消費量および粒子の計量供給量から計算される:
DBP数(g/100g)=(DBPの消費量g/粉末の計量供給量g)×100。
【0052】
pH値は、DIN ISO787/IX、ASTM D 1280、JIS K 5101/24により測定される。
【0053】
光活性度の測定:実施例および比較例から得られた粒子約250mg(精度0.1mg)は、ウルトラターラックス(Uitra Turrax)撹拌機を用いて2−プロパノール350ml(275.1g)中に懸濁される。この懸濁液は、ポンプを用いて24℃にサーモスタット制御された冷却器を通して、先に酸素でフラッシュされたガラス光反応器中に運搬される。
【0054】
500ワットの出力を有するHg中圧TQ718型液浸ランプ(Heraeus)は、例えば照射源として使用される。ホウケイ酸塩ガラスの保護管は、放出される放射線を300nmを上廻る波長に制限する。照射源は、水が貫流する冷却管によって外部から取り囲まれている。
【0055】
酸素は、流量計を通して反応器中に計量供給される。反応は、照射源がスイッチオンされた時に開始される。反応の終結時に、少量の懸濁液は、直ちに除去され、濾過され、ガスクロマトグラフィーによって分析される。
【0056】
UV可視スペクトル(吸収)は、光度計球面を備えた、Specord 200 UVの可視範囲の分光光度計を用いて3質量%の分散液中で測定される(Analytikjena AG)。
【0057】
ゼータ電位および等電点は、DVI法により本発明による粉末の10%水性分散液中でDispersion Technology Inc.からのDT−1200型を用いて測定される。
【0058】
例1:
TiCl3.86kg/時およびSiCl0.332kg/時を蒸発器中で約200℃で蒸発させる。蒸気を窒素により、水素1.45Nm/時および乾燥した空気7.8Nm/時と一緒に、公知のデザインおよび構成のバーナーの混合室中で混合し、水冷却された火炎管に中央管を通して供給し、この中央管の端部で反応混合物を点火し、中央管で反応混合物を燃焼させる。付加的に、水素0.9Nm/時および空気25Nm/時を、中央管を同心的に包囲するジャケット管を通して火炎管に供給する。
【0059】
次に形成された粉末をフィルター中で分離する。この粉末を湿潤空気で約500〜700℃で処理することによって、付着する塩化物を除去する。この粉末は、二酸化チタン92質量%および二酸化ケイ素8質量%を含有する。
【0060】
例2〜5を例1と同様に実施する。バッチ量の大きさおよび試験条件は、第1表中に記載されており、本発明による粉末の物理化学的性質は、第2表中に記載されている。
【0061】
例1〜5の粉末のTEM−EDXによる評価は、完全な二酸化ケイ素コーティングおよび二酸化チタン芯材を有する、大きく凝集された粉末を示す。図1は、例1からの粉末のTEM画像を示す。凝集物は、粉末中に存在し、一次粒子は、二酸化ケイ素コーティングにより互いに成長しながら形成される。BET表面積は、66m/gである。X線回折分析は、26:74の芯材中でのルチル型変態/アナターゼ型変態の比を示す。
【0062】
図2は、二酸化チタン(Degussa社からのP25 TiO)と比較した例1〜3の本発明による粉末のゼータ電位曲線を示す。二酸化ケイ素の含量が増加するにつれて、等電点は、低いpH値に向かって変位し、例1〜3の粉末の低いSiO含量であっても3未満のpH範囲にあることを認めることができる。等電点は、分散液の安定性にとって重要なパラメーターであるので、本発明による粉末を少量の二酸化ケイ素で約5〜7の生理的に適切なpH範囲で安定化することが可能である。二酸化チタンの分散液は、この範囲内で最も低い安定性を示す。
【0063】
例1〜3の本発明による粉末は、Degussa社からの熱分解法で製造されたP25二酸化チタンよりも著しく低い感光度を示す。
【0064】
例1〜3からの本発明による粉末は、極めて高いUV吸収量を示し、このUV吸収量は、320nmで97%より大きく、360nmで90%より大きい。
【0065】
高いUV吸収量および低い感光度により、本発明による粉末は、日焼け止め配合物にとって理想的に適している。
【0066】
例1〜3の本発明による粉末のDBP吸収量は、僅かであるかまたは測定不可能である。これは、粉末の互いの成長度が低いことを示す。
【0067】
例6:日焼け止め剤
例1の本発明による粉末4質量%を含有する日焼け止め剤を次の処方により調製した(質量%での括弧内の値)。相A:Isolan GI 34 (3.0)、カスター油(1.2)、Tegesoft OP(10.0)、Tegesoft Liquid(5.0)、グリセロール86%(3.0)、相B:Paracera W80(1.8)、イソヘキサデカン(5.0)、相C:例1の本発明による粉末(4.0)、相D:硫酸マグネシウム(0.5)、十分に脱イオンされた水(66.5)。
【0068】
相Aを混合装置中で70℃に加熱する。相Bを電磁加熱板上で80℃で溶融し、次に相Aに添加する。相Cを約300rpmで真空下に油相中に攪拌混入する。また、相Dを70℃に加熱し、真空下でA〜Cの混合物に添加する。
【0069】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】例1からの粉末のTEM画像を示す略図。
【図2】二酸化チタン(Degussa社からのP25 TiO)と比較した例1〜3の本発明による粉末のゼータ電位曲線を示す線図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンの芯材と二酸化ケイ素のコーティングを有する粒子からなる粉末において、
該粉末が0.5〜40質量%の二酸化ケイ素含量を有し、
該粉末が5〜300m/gのBET表面積を有し、
該粉末が二酸化ケイ素のコーティングおよび二酸化チタンの芯材を有する一次粒子から構成されていることを特徴とする、二酸化チタンの芯材と二酸化ケイ素のコーティングを有する粒子からなる粉末。
【請求項2】
一次粒子が一緒に成長することができ、凝集物を形成している、請求項1記載の粉末。
【請求項3】
二酸化ケイ素のコーティングにより一緒に成長した一次粒子から構成されている、請求項2記載の粉末。
【請求項4】
粉末中の二酸化ケイ素の含量が1〜20質量%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項5】
二酸化チタンの芯材が1:99〜99:1のルチル型変態/アナターゼ型変態の比を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項6】
3質量%の固体含量を有する粉末の水性分散液が320nmでの少なくとも95%の吸収率および360nmでの少なくとも90%の吸収率を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項7】
0.5未満の感光度を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項8】
等電点が1〜4のpH値である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項9】
BET表面積が40〜120m/gである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の粉末。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の粉末の製造法において、蒸発可能なケイ素化合物と蒸発可能なチタン化合物を生成物中でのその後の望ましいSiOとTiOとの比に相応する量で混合し、200℃以下の温度で蒸発させ、水素および空気または酸素に富んだ空気と一緒に不活性ガス流により公知のバーナーの中央管(芯材)中に移動させ、この反応混合物をバーナーの開口で点火し、第2の空気と一緒に導入し、冷却された火炎管中で燃焼させ、引続き二酸化ケイ素で被覆された二酸化チタン粉末をガス状の反応生成物から除去し、必要に応じて湿潤空気中で付着塩化水素から遊離し、この場合
第1の空気と第2の空気との比は、0.3より大きく、
芯材の水素と第2の空気との比は、1より大きく、
二酸化チタン前駆体と第2の空気との比は、0.5より大きいことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の粉末の製造法。
【請求項11】
四塩化チタンをチタン化合物として使用する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
四塩化ケイ素をケイ素化合物として使用する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
日焼け止め剤の量に関連して0.01〜25質量%の量で請求項1から9までのいずれか1項に記載の酸化物粒子を含有している日焼け止め剤。
【請求項14】
分散液を製造するためのUVフィルターとしての請求項1から9までのいずれか1項に記載の粉末の使用および化学機械研磨(CMP法)のための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−511638(P2006−511638A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561201(P2004−561201)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013534
【国際公開番号】WO2004/056927
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】