説明

二酸化炭素の蒸留装置とそれを備える洗浄装置

【課題】外部から供給または外部へ排出する熱を低減可能な二酸化炭素の蒸留装置と洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄システム1は、液体状態の二酸化炭素を蒸発させる蒸発部210と、二酸化炭素を凝縮する凝縮部230と、蒸発部210と凝縮部230の内部の圧力を調節する圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500と、蒸発部210と凝縮部230との間で熱交換を行うヒートパス300と、外部の温度を検知する温度センサ400とを備え、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500は、二酸化炭素の沸点が温度センサ400によって検知される外部の温度よりも低くなるように蒸発部210内の圧力を調節し、二酸化炭素の沸点が温度センサ400によって検知される外部の温度よりも高くなるように凝縮部230内の圧力を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には蒸留装置とそれを備える洗浄装置に関し、特定的には、二酸化炭素の蒸留を行うための蒸留装置と、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いて、例えば繊維の洗浄を行なう洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被蒸留対象物質を蒸発部で蒸発させ、凝縮部で凝縮する蒸留装置において、凝縮部で生じる熱を利用して蒸発部での蒸発を行う蒸留装置がある。蒸発部に供給される被蒸留対象物質の純度が十分に高い場合には、蒸留によって被蒸留対象物質から分離される不純物の温度変化によって消費される熱量をほとんど無視することができる。この場合には、蒸発部で被蒸留対象物質の蒸発に必要な熱量と、凝縮部で被蒸留対象物質を凝縮させることによって生じる熱量とがほぼ等しくなる。そこで、このような場合には、被蒸留対象物を蒸発部で蒸発させるために必要な熱量のほとんどを、凝縮部で生じる熱によって補うことができる。また、被蒸留対象物の純度が比較的低い場合であっても、凝縮部で生じる熱を蒸発部に供給することによって、蒸発部の加熱や凝縮部の冷却を低減することができる。このようにして、省エネルギー効果を高めることが可能な蒸留装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開平03−181302号公報(特許文献1)には、ヒートポンプを用いて排熱部の熱を加熱部に供給して、水蒸気の凝縮時に発生する潜熱によって水を加熱する、水の蒸留装置が記載されている。
【0004】
また、特開2000−126502号公報(特許文献2)には、有機溶媒蒸気の凝縮潜熱を回収して有機溶媒水溶液の脱水をする、有機溶媒蒸気の廃熱回収装置が記載されている。
【0005】
特表2002−539868号公報(特許文献3)に記載の液体二酸化炭素などの高密度化液状処理ガスを用いる清浄化装置では、凝縮手段は蒸発容器に熱的に接触している。
【0006】
特開昭54−19474号公報(特許文献4)に記載の連続真空濃縮装置では、第1と第2の蒸発効用缶を用いて、第2の蒸発効用缶の凝縮部の排熱を第1の蒸発効用缶の蒸発部に原液の顕熱として伝達している。
【特許文献1】特開平03−181302号公報
【特許文献2】特開2000−126502号公報
【特許文献3】特表2002−539868号公報
【特許文献4】特開昭54−19474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際には、蒸発部や凝縮部においては、外部との熱の授受が生じる。そのため、上記のように、蒸発部と凝縮部の間で熱交換を行なうことによって蒸発部が加熱されたり凝縮部が冷却されたりしたとしても、外部から蒸留装置に大きな熱量を供給したり、蒸留装置から外部へ大きな熱量を排出したりする必要がある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、蒸発部と凝縮部との間で熱交換を行う場合において、外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な二酸化炭素の蒸留装置とそれを備える洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置は、液体状態の二酸化炭素を蒸発させるための蒸発部と、蒸発部の内部の圧力を調節するための蒸発部圧力調節手段と、蒸発部で蒸発させられた二酸化炭素を凝縮するための凝縮部と、凝縮部の内部の圧力を調節するための凝縮部圧力調節手段と、蒸発部と凝縮部との間で熱交換を行うための熱交換手段と、蒸発部と凝縮部の外部の温度を検知するための温度検知手段とを備え、蒸発部圧力調節手段は、蒸発部の内部における二酸化炭素の沸点が、温度検知手段によって検知される外部の温度よりも低くなるように蒸発部の内部の圧力を調節するように構成され、凝縮部圧力調節手段は、凝縮部の内部における二酸化炭素の沸点が、温度検知手段によって検知される外部の温度よりも高くなるように凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されている。
【0010】
液体状態の二酸化炭素は、蒸発部において蒸発に必要な熱量を与えられると、気体状態になる。次に、凝縮部において凝縮熱が除去されることによって、液体状態に戻る。このようにして、二酸化炭素の蒸留が行われる。
【0011】
蒸発部においては、温度と圧力を一定に保ちながら二酸化炭素を蒸発させるためには、二酸化炭素の蒸発に必要な熱を供給する、すなわち、蒸発部を加熱する必要がある。一方、凝縮部においては、温度と圧力を一定に保ちながら二酸化炭素を凝縮させるためには、凝縮熱を除去する、すなわち、凝縮部を冷却する必要がある。蒸留対象の二酸化炭素に含まれる不純物が少量であれば、蒸発部で二酸化炭素を蒸発させるために加えることが必要な熱量と、凝縮部で二酸化炭素を凝縮させるために除去することが必要な熱量の大きさは、ほぼ等しい。そこで、凝縮部から蒸発部に熱量を供給するように熱交換することによって、外部から蒸発部を加熱したり、外部から凝縮部を冷却したりする必要がほぼなくなる。
【0012】
ところで、熱は、エントロピーが増大する方向、すなわち、蒸発部と凝縮部の温度が均一化する方向にしか伝達されない。したがって、凝縮部から蒸発部に熱量を供給するためには、凝縮部の温度が蒸発部の温度よりも高いことが必要である。
【0013】
蒸発部の温度は、液体状態の二酸化炭素が気体状態の二酸化炭素になる温度、すなわち、二酸化炭素の沸点にほぼ等しくなる。また、凝縮部の温度は、気体状態の二酸化炭素が液体状態の二酸化炭素になる温度、すなわち、二酸化炭素の沸点(凝縮点)にほぼ等しくなる。蒸発部における二酸化炭素の沸点は、蒸発部の内部の圧力を調節することによって、変化させることができる。同様に、凝縮部における二酸化炭素の沸点(凝縮点)も、凝縮部の内部の圧力を調節することによって変化させることができる。
【0014】
そこで、蒸発部における二酸化炭素の沸点が、凝縮部における二酸化炭素の沸点(凝縮点)よりも低くなるように、蒸発部の内部の圧力と凝縮部の内部の圧力を調節することによって、凝縮部から蒸発部に熱量を供給することができる。
【0015】
しかしながら、実際には、蒸発部と凝縮部において外部との熱の流出入が生じて、凝縮部で除去することが必要な熱量すべてを蒸発部に供給して二酸化炭素を蒸発させるために利用することはできない。
【0016】
例えば、凝縮部と蒸発部の温度がどちらも外部の温度よりも高く、凝縮部の温度が蒸発部の温度よりも高い場合には、凝縮部の熱量の一部が外部に流出し、残りが蒸発部に供給される。しかしながら、蒸発部においても、凝縮部から供給された熱量の一部がさらに外部に流出し、残りの熱量のみが蒸発部において二酸化炭素を蒸発させるために利用される。そのため、蒸発部において二酸化炭素を蒸発させるためには、蒸発に必要な熱量を蒸発部に供給し、かつ、蒸発部から外部に流出する熱量と、凝縮部から外部に流出する熱量とを合わせた量に相等する熱量を蒸発部に供給するように、蒸発部を加熱する必要がある。
【0017】
また、例えば、凝縮部の温度も蒸発部の温度も外部の温度よりも低く、凝縮部の温度が蒸発部の温度よりも高い場合には、蒸発部においては外部から熱が供給され、凝縮部にも外部から熱が供給される。そのため、凝縮部において二酸化炭素を凝縮させるためには、凝縮に必要な熱量を凝縮部から排出し、かつ、凝縮部に外部から流入する熱量と、蒸発部に外部から流入する熱量とを合わせた量に相等する熱量を凝縮部から排出するように、凝縮部を冷却する必要がある。
【0018】
そこで、この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部の温度、すなわち、蒸発部における二酸化炭素の沸点を外部の温度よりも低くし、凝縮部の温度、すなわち、凝縮部における二酸化炭素の沸点(凝縮点)を外部の温度よりも高くするように、蒸発部の内部の圧力と凝縮部の内部の圧力を調節する。
【0019】
このようにすることにより、蒸発部の加熱や凝縮部の冷却を行なうために外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な蒸留装置を提供することができる。
【0020】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、温度検知手段によって検知される外部の温度が所定の温度よりも低い場合には、蒸発部圧力調節手段は、蒸発部の圧力を低くし、凝縮部圧力調節手段は、凝縮部の圧力を低くするように構成されていることが好ましい。
【0021】
このようにすることにより、蒸発部の加熱や凝縮部の冷却をするために外部から供給することが必要なエネルギーを低減することができる。
【0022】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部圧力調節手段と凝縮部圧力調節手段は、蒸発部の外部から内部に流入する熱量と、凝縮部の内部から外部に流出する熱量とがほぼ等しくなるように、蒸発部と凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されていることが好ましい。
【0023】
このようにすることにより、凝縮部から除去する必要がある凝縮熱を、ほとんど全部、蒸発部において二酸化炭素を蒸発させるために利用することができる。
【0024】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部圧力調節手段と凝縮部圧力調節手段は、蒸発部の外部から内部に流入する熱量が、凝縮部の内部から外部に流出する熱量よりも小さくなるように、蒸発部と凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されていることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、外部から凝縮部を冷却する必要がなくなる。
【0026】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部圧力調節手段と凝縮部圧力調節手段は、蒸発部の外部から内部に流入する熱量が、凝縮部の内部から外部に流出する熱量よりも大きくなるように、蒸発部と凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されていることが好ましい。
【0027】
このようにすることにより、外部から蒸発部を加熱する必要がなくなる。
【0028】
この発明に従った二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部の熱伝導率が凝縮部の熱伝導率よりも小さいことが好ましい。
【0029】
蒸発部の熱伝導率が凝縮部の熱伝導率よりも小さいことによって、蒸発部において熱量が外部から流入しにくく、凝縮部において熱量が外部に流出しやすくなる。蒸発部と凝縮部における外部との熱の流出入量は、熱伝導率と、外部との温度差とに比例する。そこで、蒸発部の熱伝導率を凝縮部の熱伝導率よりも小さくすることによって、外部と凝縮部との温度差を、外部と蒸発部との温度差よりも小さくしても、蒸発部と凝縮部における外部との熱の流出入量を等しくすることができる。凝縮部の温度は、外部の温度よりも高いので、凝縮部の内部の圧力を低くすることによって、凝縮部と外部との温度差を小さくすることができる。
【0030】
このようにすることにより、凝縮部の内部の圧力を低くすることができる。
【0031】
この発明に従った洗浄装置は、被洗浄対象物を超臨界または液体状態の二酸化炭素で洗浄するための洗浄槽と、凝縮部から洗浄槽に二酸化炭素を供給するための供給路と、洗浄槽から蒸発部に二酸化炭素を排出するための排出路と、上記のいずれかの二酸化炭素の蒸留装置を備えることが好ましい。
【0032】
化学工場等における蒸留では、一般的に、蒸留自体が多段式で行われている。そのため、ひとつの段の排熱を別の段で使用することが一般的に行なわれている。また、反応容器や乾燥機など他の装置が周囲に設置されていることも多く、それらの装置と熱を有効活用することができる。しかしながら、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いて被洗浄対照物の洗浄を行なう洗浄装置では、蒸留を一段で行うことが一般的である。また、超臨界または液体状態の二酸化炭素を用いて被洗浄対象物を洗浄することにより、被洗浄対象物を乾燥させるための乾燥機も不要になるので、反応容器や乾燥機などの他の装置が周囲に設置されることも少ない。
【0033】
そこで、洗浄装置は、被洗浄対象物を超臨界または液体状態の二酸化炭素で洗浄するための洗浄槽と、凝縮部から洗浄槽に二酸化炭素を供給するための供給路と、洗浄槽から蒸発部に二酸化炭素を排出するための排出路と、上記のいずれかの二酸化炭素の蒸留装置を備えることにより、蒸発部の加熱や凝縮部の冷却を行なうために外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な蒸留装置を備える洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、この発明によれば外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な二酸化炭素の蒸留装置とそれを備える洗浄装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、この発明の第1実施形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【0037】
図1に示すように、洗浄装置として洗浄システム1は、主に、洗浄槽100と、蒸発部210と、蒸発部圧力センサ212と、圧縮機220と、凝縮部230と、凝縮部圧力センサ232と、二酸化炭素供給源として液体二酸化炭素ボンベ240と、二酸化炭素を高圧化して送出するポンプ250と、二酸化炭素から分離された汚れを回収する汚れ受け容器260と、熱交換手段としてヒートパス300と、温度検知手段として温度センサ400と、制御装置500とから構成されている。弁a271と蒸発部210と弁b272と圧縮機220と凝縮部230と弁c273は二酸化炭素の蒸留装置を構成している。圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500は、蒸発部圧力調節手段と凝縮部圧力調節手段の一例である。
【0038】
洗浄システム1を構成する各部材は、配管によって接続され、配管に配置されている弁は、適宜開閉される。洗浄槽100には、被洗浄対象物110が収容される。被洗浄対象物110は、例えば、繊維構造体である。繊維構造体は、衣類や、リネン、布団、枕、マット、ハンカチ、タオル、ぬいぐるみなど、繊維からできているものであればなんでもよい。
【0039】
蒸発部210と凝縮部230は、耐圧容器によって形成されている。蒸発部210には、蒸発部210の内部の圧力を検知するための蒸発部圧力センサ212が配置されている。凝縮部230には、凝縮部230の内部の圧力を検知するための凝縮部圧力センサ232が配置されている。蒸発部210と凝縮部230とは、熱伝導率の大きさが等しくなるように形成されている。熱伝導率の大きさは、蒸発部210と凝縮部230の構造や材質によって決まる。
【0040】
ただし、ここでいう熱伝導率は、材料などの物性値としての熱伝導率のことではなく、ある部分(例えば、凝縮部230)が直接、外部の空気と熱の授受を行なったり、その部分と接触する部品などを通じて間接的に外部の空気と熱の授受を行なったりする際の、その部分の周辺全体の熱の伝わりにくさを示す伝熱抵抗の逆数のことである。例えば、凝縮部230の熱伝導率とは、凝縮部230の材料の物性値としての熱伝導率のことではなく、凝縮部230が直接、外部の空気と熱の授受を行なったり、凝縮部230と接触する配管等の部品などを通じて間接的に外部の空気と熱の授受を行なったりする際の、凝縮部230の周辺全体の熱の伝わりにくさを示す伝熱抵抗の逆数のことである。
【0041】
蒸発部210と凝縮部230とは、ヒートパス300を介して熱的に接触しており、蒸発部210と凝縮部230との間ではヒートパス300を通じて熱交換される。ヒートパス300は、熱伝導率が高い材料として銅などによって形成されていてもよい。また、熱媒体が流れる流路として形成されていてもよい。熱媒体を用いる場合には、熱伝導をより促進するために、熱媒体に圧力変化を加えて、ヒートポンプのようにしてもよい。
【0042】
ヒートパス300と蒸発部210との間には蒸発部熱交換器211が配置され、ヒートパス300と凝縮部230との間には凝縮部熱交換器231が配置されている。蒸発部熱交換器211と凝縮部熱交換器231は、ヒートパス300と蒸発部210または凝縮部230との間の熱の授受を容易にするための部材である。例えば、ヒートパス300と蒸発部210または凝縮部230の接続部分において、接触面積が大きくなるように形成されている部分を含む。
【0043】
液体二酸化炭素ボンベ240は、二酸化炭素供給弁241と、弁c273と、ポンプ250を介して、配管によって洗浄槽100に接続されている。洗浄槽100と蒸発部210とを接続する配管には、弁a271が配置されている。蒸発部210と圧縮機220とを接続する配管には、弁b272が配置されている。圧縮機220と凝縮部230は、配管で接続されている。凝縮部230は、弁d274が配置される配管を通して汚れ受け容器260と接続されている。
【0044】
凝縮部230と洗浄槽100とを接続する配管が供給路を構成し、洗浄槽100と蒸発部210とを接続する配管が排出路を構成している。
【0045】
二酸化炭素は、図中に二点鎖線で示す矢印の方向に、洗浄システム1内を循環している。
【0046】
図2は、洗浄システムの制御関連の構成を示すブロック図である。
【0047】
図2に示すように、温度センサ400は、蒸発部210と凝縮部230の外部の温度を検知して、制御装置500に信号を送信する。制御装置500は、温度センサ400によって検知される外部の温度に基づいて、蒸発部210における二酸化炭素の沸点が外部の温度よりも低くなるように、蒸発部210の圧力を調節する。また、制御装置500は、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)が外部の温度よりも高くなるように、凝縮部230の圧力を調節する。
【0048】
蒸発部圧力センサ212と凝縮部圧力センサ232は、蒸発部210の内部の圧力と凝縮部230の内部の圧力を検知して、制御装置500に信号を送信する。制御装置500は、蒸発部210の内部と凝縮部230の内部が、それぞれ所定の圧力になるように調節する。
【0049】
制御装置500は、温度センサ400と蒸発部圧力センサ212と凝縮部圧力センサ232から受信する信号に基づいて、上述のように蒸発部210の内部の圧力と凝縮部230の圧力を調整するように、圧縮機220と、弁a271と、弁b272と、弁c273に制御信号を送信する。
【0050】
まず、図1と図2を用いて、洗浄システム1の運転工程を説明する。
【0051】
被洗浄対象物110が洗浄槽100に収容された後、洗浄システム1の運転を開始する。
【0052】
まず、二酸化炭素供給弁241と弁c273が開かれて、液体二酸化炭素ボンベ240からポンプ250に二酸化炭素が供給される。二酸化炭素は、ポンプ250で圧縮されたり、ヒータ(図示しない)によって加熱されたりして、適当な温度と圧力の液体二酸化炭素(LCO)または超臨界二酸化炭素(ScCO)となる。液体状態または超臨界状態の二酸化炭素は、ポンプ250から洗浄槽100の内部に供給される。
【0053】
洗浄槽100の内部では、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素と繊維構造体などの被洗浄対象物110とが接触し、被洗浄対象物110の洗浄が行なわれる。被洗浄対象物110中の汚れは、超臨界または液体状態の二酸化炭素中に抽出される。なお、洗浄槽100で洗浄に用いられる二酸化炭素には、界面活性剤、水、油などの添加物を添加してもよい。
【0054】
被洗浄対象物110から抽出された汚れを含む二酸化炭素は、弁a271が開かれると、蒸発部210の内部に流入する。
【0055】
蒸発部210では、減圧および/または断熱膨張による冷却によって、二酸化炭素の温度および/または圧力が低下して、二酸化炭素が超臨界状態であった場合にも超臨界状態ではなくなり、気液に分離する。蒸発部210の圧力を、蒸発部210の内部における二酸化炭素の沸点が温度センサ400によって検知される外部の温度よりも低くなるように、制御装置500が圧縮機220、弁a271、弁b272、弁c273を制御すると、ヒートパス300を通して凝縮部230の熱が蒸発部210に供給される。また、外部から蒸発部210に熱が流入する。このようにして、蒸発部210の内部の液体状態の二酸化炭素が加熱されて次第に気体状態になる。二酸化炭素は、洗浄システム1内を循環しているので、蒸発部210には、液体状態の二酸化炭素が順次流入し、蒸発する。
【0056】
被洗浄対象物110から抽出された汚れや洗浄時に添加された界面活性剤などの添加剤は、二酸化炭素と比較して蒸発しにくいので、気体状態になった二酸化炭素と分離される。二酸化炭素から分離された汚れや界面活性剤などの添加剤は、蒸発部210の下部の弁d274が開かれると、汚れ受け容器260に排出される。
【0057】
気体状態の二酸化炭素は、圧縮機220で加圧されて、凝縮部230に送り込まれる。凝縮部230の圧力を、凝縮部230の内部における二酸化炭素の沸点が温度センサ400によって検知される外部の温度よりも高くなるように、制御装置500が圧縮機220、弁a271、弁b272、弁c273を制御すると、ヒートパス300を通して凝縮部230の熱が蒸発部210に供給される。また、凝縮部230から外部に熱が流出する。このようにして、凝縮部230の内部の気体状態の二酸化炭素が冷却されて次第に液体状態になる。
【0058】
液体状態になった二酸化炭素は、再び洗浄槽100に流入する。このようにして、二酸化炭素は洗浄システム1内を循環する。
【0059】
次に、蒸発部210と凝縮部230の圧力制御について説明する。
【0060】
外部の温度をT、蒸発部210の温度をT、凝縮部230の温度をTとする。温度は、T>T>Tの順に高いとする。また、蒸発部210の熱伝導率をk、凝縮部230の熱伝導率をkとする。また、凝縮部230において二酸化炭素の凝縮によって排出される熱量と蒸発部210おいて二酸化炭素の蒸発に必要な熱量を等しくQであるとする。二酸化炭素の蒸留の間、蒸発部210と凝縮部230の温度と圧力は一定であるとする。また、外部の温度も一定であるとする。
【0061】
外部よりも温度が高い凝縮部230においては、外部に熱が流出する。凝縮部230から外部に流出する熱量をQcrとすると、Qcr=k(T−T)となる。したがって、凝縮熱のうち、ヒートパス300を通して凝縮部230に供給される熱量はQ−Qcr=Q−k(T−T)となる。
【0062】
一方、外部よりも温度が低い蒸発部210においては、外部から熱が流入する。蒸発部210に外部から流入する熱量をQrvとすると、Qrv=k(T−T)となる。したがって、凝縮部230からヒートパス300を通して供給された熱量と、外部から蒸発部210に流入した熱量とをあわせた熱量が蒸発部210に供給される。蒸発部210に供給される熱量は、全体として以下のような量になる。
【0063】
Q−Qcr+Qrv=Q−k(T−T)+k(T−T
蒸発部210に供給されるこの熱量のうち、蒸発部210において二酸化炭素の蒸発に必要とされるのはQである。凝縮部230から外部に流出する熱量Qcr=k(T−T)が、外部から蒸発部210に流入する熱量Qrv=k(T−T)よりも大きい場合には、蒸発部210に供給される熱量がQよりも小さくなってしまうので、蒸発部210を加熱する必要が生じる。一方、凝縮部230から外部に流出する熱量Qcr=k(T−T)が、外部から蒸発部210に流入する熱量Qrv=k(T−T)よりも小さい場合には、蒸発部210に供給される熱量はQよりも大きくなるので、凝縮部230を冷却する必要が生じる。
【0064】
そこで、第1実施形態においては、蒸発部210の熱伝導率kと、凝縮部230の熱伝導率kを等しくなるように、蒸発部210と凝縮部230を構成する。例えば、蒸発部210と凝縮部230の材料として断熱性の高い材料を用いたり、蒸発部210と凝縮部230の周囲の大気との接触面積を小さくすることによって、熱伝導率を小さくすることができる。また、蒸発部210と凝縮部230の材料として断熱性の低い材料を用いたり、蒸発部210と凝縮部230の周囲の大気との接触面積を大きくすることによって、熱伝導率を大きくすることができる。外部との熱の授受は、蒸発部210と凝縮部230以外の配管などにおいても生じているが、この実施形態においては、蒸発部210と凝縮部230以外の部分の熱伝導率は十分に低く、洗浄システム1と外部との熱の授受のほとんどが蒸発部210と凝縮部230で生じているものとする。
【0065】
さらに、外部と蒸発部210との温度差と、外部と凝縮部230との温度差が等しくなるように、すなわち、(T−T)と(T−T)が等しくなるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力を調節する。このようにすることにより、蒸発部210に外部から流入する熱量k(T−T)と、凝縮部230から外部に流出する熱量k(T−T)とが等しくなる。
【0066】
外部の温度が20℃であるときには、例えば、蒸発部210の温度が15℃、凝縮部230の温度が25℃になるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力を調節する。また、外部の温度が10であるときには、例えば、蒸発部210の温度が5℃、凝縮部230の温度が15℃になるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力を調節する。
【0067】
表1は、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときの蒸発部210と凝縮部230の圧力の例と、その圧力下における二酸化炭素の沸点と、その圧力下における二酸化炭素の気体−液体状態間の状態変化に必要な熱量を示す表である。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示すように、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときには、制御装置500は、蒸発部210における二酸化炭素の沸点を15℃にするために、蒸発部210の内部の圧力を5.09MPaになるように、圧縮機220、弁a271、弁b272、弁c273(図1)を調整する。同時に、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)を25℃にするために、蒸発部210の内部の圧力を6.43MPaになるように、圧縮機220、弁a271、弁b272、弁c273(図1)を調整する。
【0070】
二酸化炭素の循環量を60kg/hとして、蒸発部210の圧力を5.09MPaにしたとき、蒸発部210において二酸化炭素が蒸発するために必要な熱量は、12.7MJ/hとなる。また、凝縮部230の圧力を6.43MPaにしたとき、凝縮部230において二酸化炭素が凝縮するために必要な熱量は、−13.6MJ/h、すなわち、13.6MJ/hの熱量を排出することが必要となる。このように、蒸発部210に加えることが必要な熱量と、凝縮部230から排出する熱量とは、ほぼ等しい大きさになる。この説明においては、二酸化炭素に含まれる汚れや添加剤による影響を無視しているが、これらの成分は二酸化炭素と比較して量が少なく、また、これらの物質は、このような温度や圧力の下では相変化しにくいので、これらの成分が熱の授受に与える影響は少ないと考えられる。
【0071】
表2は、洗浄システム1において、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときと20℃のときの蒸発部210と凝縮部230の圧力の例と、その圧力下での沸点と、外部との温度差を示す表である。
【0072】
【表2】

【0073】
表2に示すように、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を3.97MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を5.09MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が5℃になり、凝縮部230の温度が15℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差も5℃である。
【0074】
また、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を5.09MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を6.43MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が15℃になり、凝縮部230の温度が25℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差も5℃である。
【0075】
蒸発部210と凝縮部230の熱伝導率は等しいので、蒸発部210と外部との温度差と凝縮部230と外部との温度差を等しくすることによって、凝縮部230から外部に流出する熱量と、外部から蒸発部210に流入する熱量を等しくすることができる。
【0076】
以上のように、第1実施形態の洗浄システム1が備える二酸化炭素の蒸留装置は、液体状態の二酸化炭素を蒸発させるための蒸発部210と、蒸発部210で蒸発させられた二酸化炭素を凝縮するための凝縮部230と、蒸発部210と凝縮部230の内部の圧力を調節するための圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500と、蒸発部210と凝縮部230との間で熱交換を行うためのヒートパス300と、蒸発部210と凝縮部230の外部の温度を検知するための温度センサ400とを備え、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500は、蒸発部210の内部における二酸化炭素の沸点が、温度センサ400によって検知される外部の温度よりも低くなるように蒸発部210の内部の圧力を調節するように構成され、また、凝縮部230の内部における二酸化炭素の沸点が、温度センサ400によって検知される外部の温度よりも高くなるように凝縮部230の内部の圧力を調節するように構成されている。
【0077】
このようにすることにより、蒸発部210の加熱や凝縮部230の冷却を行なうために外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な二酸化炭素の蒸留装置を提供することができる。
【0078】
また、二酸化炭素の蒸留装置においては、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273と制御装置500は、蒸発部210の外部から内部に流入する熱量と、凝縮部230の内部から外部に流出する熱量とがほぼ等しくなるように、蒸発部210と凝縮部230の内部の圧力を調節するように構成されている。
【0079】
このようにすることにより、凝縮部230から除去する必要がある凝縮熱を、ほとんど全部、蒸発部210において二酸化炭素を蒸発させるために利用することができる。
【0080】
また、洗浄システム1は、被洗浄対象物110を超臨界または液体状態の二酸化炭素で洗浄するための洗浄槽100と、凝縮部230から洗浄槽100に二酸化炭素を供給するための供給路と、洗浄槽100から蒸発部210に二酸化炭素を排出するための排出路と、上記の二酸化炭素の蒸留装置を備える。
【0081】
このようにすることにより、蒸発部210の加熱や凝縮部230の冷却を行なうために外部から供給または外部へ排出する熱量を低減することが可能な蒸留装置を備える洗浄システム1を提供することができる。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態の洗浄システム1が第1実施形態の洗浄システム1と異なる点としては、蒸発部210における二酸化炭素の沸点と外部の温度との差が、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)と外部の温度との差よりも小さくなるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力が制御される。第2実施形態の洗浄システム1のその他の構成は、第1実施形態の洗浄システム1と同様である。
【0083】
表3は、第2実施形態の洗浄システム1において、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときと20℃のときの蒸発部210と凝縮部230の圧力の例と、その圧力下での沸点と、外部との温度差を示す表である。
【0084】
【表3】

【0085】
表3に示すように、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を4.23MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を5.09MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が7.5℃になり、凝縮部230の温度が15℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は2.5℃、凝縮部230と外部との温度差は5℃である。
【0086】
また、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を5.4MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を6.43MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が17.5℃になり、凝縮部230の温度が25℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は2.5℃、凝縮部230と外部との温度差は5℃である。
【0087】
蒸発部210と凝縮部230の熱伝導率は等しいので、蒸発部210と外部との温度差を凝縮部230と外部との温度差よりも2倍、小さくすることによって、凝縮部230から外部に流出する熱量よりも、外部から蒸発部210に流入する熱量を2倍小さくすることができる。
【0088】
以上のように、第2実施形態の洗浄システム1が備える二酸化炭素の蒸留装置においては、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273は、蒸発部210の外部から内部に流入する熱量が、凝縮部230の内部から外部に流出する熱量よりも小さくなるように、蒸発部210と凝縮部230の内部の圧力を調節するように構成されている。
【0089】
このようにすることにより、外部から凝縮部230を冷却する必要がなくなる。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態の洗浄システム1が第1実施形態の洗浄システム1と異なる点としては、蒸発部210における二酸化炭素の沸点と外部の温度との差が、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)と外部の温度との差よりも大きくなるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力が制御される。第3実施形態の洗浄システム1のその他の構成は、第1実施形態の洗浄システム1と同様である。
【0091】
表4は、第3実施形態の洗浄システム1において、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときと20℃のときの蒸発部210と凝縮部230の圧力の例と、その圧力下での沸点と、外部との温度差を示す表である。
【0092】
【表4】

【0093】
表4に示すように、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を3.97MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を4.79MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が5℃になり、凝縮部230の温度が12.5℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差は2.5℃である。
【0094】
また、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を5.09MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を6.07MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が15℃になり、凝縮部230の温度が22.5℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差は2.5℃である。
【0095】
蒸発部210と凝縮部230の熱伝導率は等しいので、蒸発部210と外部との温度差を凝縮部230と外部との温度差よりも2倍、大きくすることによって、凝縮部230から外部に流出する熱量よりも、外部から蒸発部210に流入する熱量を2倍大きくすることができる。
【0096】
以上のように、第3実施形態の洗浄システム1が備える二酸化炭素の蒸留装置においては、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273は、蒸発部210の外部から内部に流入する熱量が、凝縮部230の内部から外部に流出する熱量よりも大きくなるように、蒸発部210と凝縮部230の内部の圧力を調節するように構成されている。
【0097】
このようにすることにより、外部から蒸発部210を加熱する必要がなくなる。
【0098】
(第4実施形態)
第4実施形態の洗浄システム1が第1実施形態の洗浄システム1と異なる点としては、蒸発部210における二酸化炭素の沸点と外部の温度との差が、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)と外部の温度との差よりも大きくなるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力が制御される。
【0099】
また、蒸発部210の熱伝導率kは、凝縮部230の熱伝導率kの1/2倍の大きさになるように、蒸発部210と凝縮部230とが構成されている。k=2kである。
【0100】
第4実施形態の洗浄システム1のその他の構成は、第1実施形態の洗浄システム1と同様である。
【0101】
表5は、第4実施形態の洗浄システム1において、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときと20℃のときの蒸発部210と凝縮部230の圧力の例と、その圧力下での沸点と、外部との温度差を示す表である。
【0102】
【表5】

【0103】
表5に示すように、温度センサ400によって検知される外部の温度が10℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を3.97MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を4.79MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が5℃になり、凝縮部230の温度が12.5℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差は2.5℃である。
【0104】
また、温度センサ400によって検知される外部の温度が20℃のときには、蒸発部210の内部の圧力を5.09MPaにし、凝縮部230の内部の圧力を6.07MPaにするように、制御装置500が圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273とを制御する。このように制御することによって、蒸発部210の温度が15℃になり、凝縮部230の温度が22.5℃になる。このとき、蒸発部210と外部との温度差は5℃、凝縮部230と外部との温度差は2.5℃である。
【0105】
蒸発部210の熱伝導率kの大きさは凝縮部230の熱伝導率kの大きさの1/2であるので、蒸発部210と外部との温度差を凝縮部230と外部との温度差よりも2倍、大きくすることによって、凝縮部230から外部に流出する熱量と外部から蒸発部210に流入する熱量とを等しくすることができる。
【0106】
以上のように、第4実施形態の洗浄システム1が備える二酸化炭素の蒸留装置においては、蒸発部210の熱伝導率kが凝縮部230の熱伝導率kよりも小さい。
【0107】
蒸発部210の熱伝導率が凝縮部230の熱伝導率よりも小さいことによって、蒸発部210において熱量が外部から流入しにくく、凝縮部230において熱量が外部に流出しやすくなる。蒸発部210と凝縮部230における外部との熱の流出入量は、熱伝導率と、外部との温度差とに比例する。そこで、蒸発部210の熱伝導率を凝縮部230の熱伝導率よりも小さくすることによって、外部と凝縮部230との温度差を、外部と蒸発部210との温度差よりも小さくすることができる。凝縮部230の温度は、外部の温度よりも高いので、凝縮部230の内部の圧力を低くすることによって、凝縮部230と外部との温度差を小さくすることができる。
【0108】
(第5実施形態)
第5実施形態の洗浄システム1が第1実施形態の洗浄システム1と異なる点としては、温度センサ400によって検知される外部の温度が低くなれば、蒸発部210における二酸化炭素の沸点と、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)が低くなるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力が制御される。第5実施形態の洗浄システム1のその他の構成は、第1実施形態の洗浄システム1と同様である。
【0109】
まず、制御装置500は、温度センサ400によって検知される外部の温度を、所定の温度として記憶する。制御装置500は、蒸発部210における二酸化炭素の沸点が外部の温度よりも低い温度になるように、凝縮部230における二酸化炭素の沸点(凝縮点)が外部の温度よりも高い温度になるように、蒸発部210と凝縮部230の圧力を調節する。このときの蒸発部210と外部との温度差をTv0、凝縮部230と外部との温度差をTc0とする。
【0110】
外部の温度が上昇した場合には、制御装置500は、凝縮部230の温度が外部の温度よりも高くなるように、凝縮部230の圧力を調節する。
【0111】
一方、外部の温度が下降した場合には、制御装置500は、蒸発部210の温度が外部の温度よりも低くなるように、蒸発部210の圧力を調節する。
【0112】
外部の温度が、制御装置500に記憶されている所定の温度よりも降下した場合には、制御装置500は、蒸発部210の温度を下げるように蒸発部210の圧力を調節するとともに、凝縮部230の温度を下げるように凝縮部230の圧力を調節する。このようにすることにより、蒸発部210と外部との温度差をTv0、凝縮部230と外部との温度差をTc0に保つことができる。
【0113】
以上のように、第5実施形態の洗浄システム1が備える二酸化炭素の蒸留装置においては、温度センサ400によって検知される外部の温度が所定の温度よりも低い場合には、圧縮機220と弁a271と弁b272と弁c273は、蒸発部210の圧力を低くし、凝縮部230の圧力を低くするように構成されている。
【0114】
このようにすることにより、蒸発部210の加熱や凝縮部230の冷却をするために外部から供給することが必要なエネルギーを低減することができる。
【0115】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の第1実施形態として、洗浄システムの全体を概略的に示す図である。
【図2】洗浄システムの制御関連の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0117】
1:洗浄システム、100:洗浄槽、110:被洗浄対象物、210:蒸発部、220:圧縮機、230:凝縮部、271:弁a、272:弁b、273:弁c、400:温度センサ、500:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の二酸化炭素を蒸発させるための蒸発部と、
前記蒸発部の内部の圧力を調節するための蒸発部圧力調節手段と、
前記蒸発部で蒸発させられた二酸化炭素を凝縮するための凝縮部と、
前記凝縮部の内部の圧力を調節するための凝縮部圧力調節手段と、
前記蒸発部と前記凝縮部との間で熱交換を行うための熱交換手段と、
前記蒸発部と前記凝縮部の外部の温度を検知するための温度検知手段とを備え、
前記蒸発部圧力調節手段は、前記蒸発部の内部における二酸化炭素の沸点が、前記温度検知手段によって検知される外部の温度よりも低くなるように前記蒸発部の内部の圧力を調節するように構成され、
前記凝縮部圧力調節手段は、前記凝縮部の内部における二酸化炭素の沸点が、前記温度検知手段によって検知される外部の温度よりも高くなるように前記凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されている、二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項2】
前記温度検知手段によって検知される外部の温度が所定の温度よりも低い場合には、前記蒸発部圧力調節手段は、前記蒸発部の圧力を低くし、前記凝縮部圧力調節手段は、前記凝縮部の圧力を低くするように構成されている、請求項1に記載の二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項3】
前記蒸発部圧力調節手段と前記凝縮部圧力調節手段は、前記蒸発部の外部から内部に流入する熱量と、前記凝縮部の内部から外部に流出する熱量とがほぼ等しくなるように、前記蒸発部と前記凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項4】
前記蒸発部圧力調節手段と前記凝縮部圧力調節手段は、前記蒸発部の外部から内部に流入する熱量が、前記凝縮部の内部から外部に流出する熱量よりも小さくなるように、前記蒸発部と前記凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項5】
前記蒸発部圧力調節手段と前記凝縮部圧力調節手段は、前記蒸発部の外部から内部に流入する熱量が、前記凝縮部の内部から外部に流出する熱量よりも大きくなるように、前記蒸発部と前記凝縮部の内部の圧力を調節するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項6】
前記蒸発部の熱伝導率が前記凝縮部の熱伝導率よりも小さい、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の二酸化炭素の蒸留装置。
【請求項7】
被洗浄対象物を超臨界または液体状態の二酸化炭素で洗浄するための洗浄槽と、
前記凝縮部から前記洗浄槽に二酸化炭素を供給するための供給路と、
前記洗浄槽から前記蒸発部に二酸化炭素を排出するための排出路と、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の二酸化炭素の蒸留装置を備える、洗浄装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−285602(P2009−285602A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142599(P2008−142599)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】