説明

二酸化炭素分離システム

【課題】コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようにする。
【解決手段】二酸化炭素排出源は、放出温度の動作温度で発電動作して吸収温度の排ガスを排出する発電システム107より排出される吸収温度で大気圧状態の排ガスを第1ガス流通経路103に導入して第1吸収材101を吸収温度としている。また、発電システム107を熱源として第2吸収材102を放出温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含んだ排ガスより二酸化炭素を分離・回収する二酸化炭素分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つとして、排出量削減が課題とされている。二酸化炭素の大気中への排出量を削減する方法としては、例えば、火力発電所やガソリンエンジンなどの、二酸化炭素を含有する排ガスを排出する二酸化炭素排出源において、排ガス中の二酸化炭素を分離・回収することにより、排出される排ガス中に二酸化炭素を含まなくする方法がある。このような二酸化炭素の分離・回収の技術として、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法が実用化段階にあるとされている(非特許文献1参照)。例えば、アミン系の吸着液を用いた化学吸収法は、火力発電所などの大規模な二酸化炭素排出源からの回収に実用化されている。
【0003】
しかしながら、燃料電池のような、火力発電所などに比べて小型の規模でありながら、二酸化炭素を高濃度で含有する高温の排ガスを常圧(大気圧)で排出する排出源においては、上述した二酸化炭素の分離・回収技術にいくつかの問題がある。
【0004】
まず、アミン系の吸収液を用いる化学吸収法では、吸着液が二酸化炭素を分離・回収する温度が40〜50℃であるため、高温の排ガスを一旦冷却してから分離・回収する必要がある。
【0005】
また、物理吸収法、吸着分離法、膜分離法では、高濃度の二酸化炭素の排ガスに用いることができるが、まず、効率のよい二酸化炭素の分離・回収には高圧が必要であり、また、この場合においても、高温の排ガスを一旦冷却してから分離・回収する必要がある。
【0006】
ところが、例えば、出力が数〜数十kWの固体酸化物形燃料電池では、火力発電所などに比べて小規模でありながら、二酸化炭素を高濃度で含有する高温の排ガスを、高圧状態ではない常圧(大気圧)で排出する二酸化炭素排出源である。このため、上述した分離・回収技術では、排ガスを冷却し、また、高圧にするなどの工程が必要となり、二酸化炭素を容易に分離・回収することができないという問題がある。
【0007】
高温で二酸化炭素を吸収できる固体の二酸化炭素吸収材を用いることができれば、毒性のないドライプロセスで高純度の二酸化炭素回収が可能となる。さらに、燃料電池、特に運転温度の高い固体酸化物形燃料電池においては、運転温度と近い反応温度を持つ二酸化炭素吸収材を用いた二酸化炭素分離・回収プロセスの実現により、二酸化炭素が吸収された後の排ガスも高温であることから、排ガスの熱を活用したメタン改質など付加価値を有するシステムを構成することが可能となる。このため、固体の二酸化炭素吸収材を用いることで、固体酸化物形燃料電池による発電システムなどの小規模の二酸化炭素排出源からの二酸化炭素回収のためのエネルギー収支においても、アミン系吸収液などより優位なシステムが実現可能になる。
【0008】
固体吸収材を用いた二酸化炭素分離システムとしては、複数の提案がなされている(特許文献1,特許文献2参照)。しかしながら、二酸化炭素を回収する排ガスを、二酸化炭素吸収材の吸収温度に合わせるための加熱および二酸化炭素放出のための加熱、および加熱のための機構の必要性など、エネルギー収支、装置の規模の面で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−161220号公報
【特許文献2】特開2005−075683号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】財団法人地球環境産業技術研究機構 編、「図解 CO2貯留テクノロジー」、株式会社工業調査会、初版2刷、2008年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の二酸化炭素分離では、二酸化炭素の吸収を行う排ガスを、二酸化炭素吸収材の吸収温度に合わせて加熱し、また、冷却するなど、エネルギー収支の面でコストの上昇を招くなどの問題がある。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る二酸化炭素分離システムは、吸収温度で二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を吸収温度より高温の放出温度で放出する二酸化炭素吸収材から構成された第1吸収材および第2吸収材と、第1吸収材が配置される第1ガス流通経路と、第2吸収材が配置される第2ガス流通経路と、二酸化炭素排出源からの排ガスを第1ガス流通経路に導入する排ガス導入経路とを備え、二酸化炭素排出源は、放出温度の動作温度で発電動作して吸収温度の排ガスを排出する発電システムであり、吸収温度の排ガスを第1ガス流通経路に導入して第1吸収材を吸収温度とし、発電システムを熱源として第2吸収材を放出温度に加熱する。
【0014】
上記二酸化炭素分離システムにおいて、二酸化炭素吸収材は、リチウム複合酸化物から構成されていればよい。リチウム複合酸化物は、例えば、リチウムシリケートであればよい。
【0015】
なお、第2ガス流通経路にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段を備えるようにしてもよい。また、キャリアガス供給手段は、第2ガス流通経路より放出された一部の二酸化炭素をキャリアガスとして供給するようにしてもよい。また、キャリアガス供給手段が供給するキャリアガスを加熱する加熱手段を備えるようにしてもよい。
【0016】
上記二酸化炭素分離システムにおいて、第1ガス流通経路で二酸化炭素を吸収した第1吸収材と、第2ガス流通経路で二酸化炭素を放出した第2吸収材とを循環して入れ替える移送手段を備えるようにしてもよい。また、第1吸収材を収納する第1収納容器および第2吸収材を収納する第2収納容器を備え、移送手段は、第1収納容器と、第2収納容器とを循環して入れ替えるようにしてもよい。
【0017】
上記二酸化炭素分離システムにおいて、筒状に形成されて筒の軸を中心に回転可能とされた流路切り替え手段と、断熱材から構成されて流路切り替え手段の内部を軸の方向に延在する複数の領域に分割する隔壁と、複数の領域の各々に配置された流通経路と、各々の流通経路に配置された二酸化炭素吸収材とを備え、流路切り替え手段のいずれか1つの領域に配置された流通経路が第2ガス流通経路であり、流路切り替え手段の残りの領域に配置された流通経路が第1ガス流通経路であるようにしてもよい。また、複数の流路切り替え手段を備え、第1ガス流通経路および第2ガス流通経路を複数組備えるようにしてもよい。なお、発電システムは、固体酸化物形燃料電池から構成されているとよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、二酸化炭素排出源を、放出温度の動作温度で発電動作して吸収温度の排ガスを排出する発電システムとし、吸収温度の排ガスを第1ガス流通経路に導入して第1吸収材を吸収温度とし、発電システムを熱源として第2吸収材を放出温度に加熱するようにしたので、コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における二酸化炭素分離システム100の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、実施の形態1における二酸化炭素分離システム100の動作を説明するための説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2における二酸化炭素分離システム300の構成を示す構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態3における二酸化炭素分離システムの構成を示す構成図である。
【図5A】図5Aは、実施の形態3における流路切り替え部421の構成を示す斜視図である。
【図5B】図5Bは、実施の形態3における流路切り替え部421の構成を示す構成図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態4における二酸化炭素分離システムの構成を示す構成図である。
【図7】図7は、実施の形態4における第1流路切り替え部621aおよび第2流路切り替え部621bの構成を示す構成図である。
【図8】図8は、実施の形態4における二酸化炭素分離システムを用いた燃料電池システム600の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0021】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における二酸化炭素分離システム100の構成を示す構成図である。二酸化炭素分離システム100は、まず、第1吸収材101が配置される第1ガス流通経路103と、第2吸収材102が配置される第2ガス流通経路104とを備える。第1吸収材101および第2吸収材102は、吸収温度で二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を吸収温度より高温の放出温度で放出する二酸化炭素吸収材から構成されたものである。例えば、第1吸収材101および第2吸収材102は、リチウム複合酸化物から構成されている。
【0022】
また、この二酸化炭素分離システム100は、二酸化炭素排出源からの排ガスを第1ガス流通経路103に導入する排ガス導入経路105を備える。また、第2ガス流通経路104にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部106を備える。キャリアガス供給部106を用いる場合、回収する二酸化炭素を高純度に保つために、二酸化炭素をキャリアガスとして用いればよい。キャリアガス供給部106は、例えば、二酸化炭素を収容したボンベを備え、このボンベよりキャリアガスとして二酸化炭素を供給する。また、キャリアガス供給部106は、第2ガス流通経路104より放出される二酸化炭素の一部を循環させて第2ガス流通経路104に供給する形態としてもよい。
【0023】
ここで、二酸化炭素排出源は、放出温度の動作温度で発電動作して吸収温度の排ガスを排出する発電システム107である。本実施の形態では、まず、発電システム107より排出される吸収温度で大気圧状態の排ガスを第1ガス流通経路103に導入して第1吸収材101を吸収温度としている。このようにすることで、第1吸収材101は、二酸化炭素を吸収する吸収温度となるので、導入される排ガス中の二酸化炭素が吸収可能な状態となる。
【0024】
また、本実施の形態では、発電システム107を熱源として第2吸収材102を放出温度に加熱する。例えば、発電システム107の発熱部に第2ガス流通経路104を接触させることで、第2吸収材102を放出温度に加熱することができる。このようにすることで、第2吸収材102は、二酸化炭素を放出する放出温度となるので、二酸化炭素が放出可能な状態となる。
【0025】
上述した本実施の形態によれば、二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収温度への加熱、および二酸化炭素放出温度への加熱の熱源を、二酸化炭素分離対象の排ガスを排出する二酸化炭素排出源である発電システム107より得ているので、上記加熱のために、新たなエネルギーを消費することが抑制できるようになる。この結果、本実施の形態によれば、コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようになる。
【0026】
次に、実施の形態1における二酸化炭素分離システム100の動作について図2を用いて説明する。まず、図2の(a)に示すように、初期状態では、第1吸収材101は二酸化炭素を吸収していない状態「吸収材」であり、第2吸収材102は、二酸化炭素を吸収している状態「二酸化炭素を吸収した吸収材」である。
【0027】
動作開始時のステップでは、図2の(b)に示すように、発電システム107からの排ガスは、排ガス導入経路105を経由し、第1ガス流通経路103の「吸収材」の状態の第1吸収材101に供給され、二酸化炭素が吸収され、二酸化炭素吸収後の排ガスが第1ガス流通経路103より排出される。
【0028】
また、キャリアガス供給部106からのキャリアガスが、第2ガス流通経路104の「二酸化炭素を吸収した吸収材」の状態で発電システム107により加熱されている第2吸収材102に供給され、放出された二酸化炭素を移送する。
【0029】
上述した二酸化炭素の吸収および二酸化炭素の放出を続けると、次のステップでは、図2の(c)に示すように、第1吸収材101では二酸化炭素の吸収が終了して「二酸化炭素を吸収した吸収材」となり、第2吸収材102では二酸化炭素の放出が終了して「吸収材」となる(再生)。この状態で、各ガスの流通を停止する。
【0030】
次のステップでは、図2の(d)に示すように、二酸化炭素を吸収した第1吸収材101と再生された第2吸収材102とを交換し、第1ガス流通経路103には、「吸収材」の状態の第2吸収材102を配置し、第2ガス流通経路104には、「二酸化炭素を吸収した吸収材」の第1吸収材101を配置する。言い換えると、吸収および放出をした後で、二酸化炭素を吸収した第1吸収材101を第2吸収材102とし、再生した第2吸収材102を第1吸収材101とすることで、初期状態とする。この後、前述した各ステップを繰り返すことで、二酸化炭素の分離・回収が実現できる。
【0031】
ここで、上述した最後のステップにおける吸収材の交換は、どの様な方法で行ってもよく、例えば、各吸収材を各々収納容器(第1収納容器,第2収納容器)に収容した状態で、収納容器ごと交換すればよい。この交換は、人為的に交換してもよく、また、機械によって自動的に交換してもよい。
【0032】
また、第1吸収材101と第2吸収材102とを循環して入れ替える移送装置を用いるようにしてもよい。例えば、ベルトコンベアなどの流動床を用い、第1吸収材101と第2吸収材102とを循環して入れ替えるようにしてもよい。
【0033】
また、第1ガス流通経路103と第2ガス流通経路104とを2組備え、一方の組で二酸化炭素の分離・回収を行っている状態で、他方の組では、第1吸収材101と第2吸収材102との入れ替えを行うことで、全体としてガスの流通を停止せずに連続運転ができるようにしてもよい。
【0034】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本発明の実施の形態2における二酸化炭素分離システム300の構成を示す構成図である。二酸化炭素分離システム300は、まず、第1吸収材301が配置される第1ガス流通経路303と、第2吸収材302が配置される第2ガス流通経路304とを備える。第1吸収材301および第2吸収材302は、吸収温度で二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を吸収温度より高温の放出温度で放出する二酸化炭素吸収材から構成されたものである。
【0035】
第1吸収材301および第2吸収材302は、リチウム複合酸化物であるリチウムシリケートから構成されている。リチウムシリケートは、二酸化炭素吸収の反応温度領域(吸収温度)が、500〜700℃である。また、リチウムシリケートは、二酸化炭素放出の温度領域(放出温度)が、700〜850℃である。
【0036】
また、この二酸化炭素分離システム300は、二酸化炭素排出源からの排ガスを第1ガス流通経路303に導入する排ガス導入経路305と、第2ガス流通経路304にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部306とを備える。キャリアガス供給部306は、第2ガス流通経路304より放出される二酸化炭素の一部を循環させて第2ガス流通経路304に供給する。このようにすることで、別途にボンベなどを用いることなくキャリアガスが供給できるので、装置を小型化することが可能となり、また、ボンベの交換などの作業を削減することができる。
【0037】
また、循環する二酸化炭素を加熱する予熱部(加熱部)308を備える。キャリアガスを予熱しておくことで、キャリアガスの導入による第2ガス流通経路304における温度低下を抑制できる。
【0038】
ここで、二酸化炭素排出源は、放出温度の動作温度で発電動作して吸収温度の排ガスを排出する燃料電池システム307である。例えば、運転温度(動作温度)が700〜850℃である固体酸化物形燃料電池であれば、排ガス温度は、550〜650℃である。従って、この場合、動作温度は、放出温度となっており、排ガス温度は吸収温度となっている。
【0039】
実施の形態2では、まず、燃料電池システム307より排出される吸収温度で大気圧状態の排ガスを、第1ガス流通経路303に導入して第1吸収材301を吸収温度としている。このようにすることで、第1吸収材301は、二酸化炭素を吸収する吸収温度となるので、導入される排ガス中の二酸化炭素が吸収可能な状態となる。
【0040】
また、実施の形態2では、燃料電池システム307を熱源として第2吸収材302を放出温度に加熱する。第2吸収材302は、燃料電池システム307の燃料電池モジュール310に接して設けられ、燃料電池モジュール310を熱源としている。燃料電池モジュール310に第2ガス流通経路304を接触させることで、第2吸収材302を放出温度に加熱することができる。このようにすることで、第2吸収材302は、二酸化炭素を放出する放出温度となるので、二酸化炭素が放出可能な状態となる。
【0041】
上述した実施の形態2によれば、二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収温度への加熱、および二酸化炭素放出温度への加熱の熱源を、二酸化炭素分離対象の排ガスを排出する二酸化炭素排出源である燃料電池システム307より得ているので、上記加熱のために、新たなエネルギーを消費することが抑制できるようになる。この結果、実施の形態2によれば、コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようになる。
【0042】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図4は、本発明の実施の形態3における二酸化炭素分離システムの構成を示す構成図である。実施の形態3では、二酸化炭素分離システムを組み込んだ燃料電池システム400を例に説明する。
【0043】
燃料電池システム400は、まず、固体酸化物形燃料電池からなる燃料電池モジュール407を備える。燃料電池モジュール407が、二酸化炭素排出源である。燃料電池モジュール407は、複数の燃料電池セルが積層した燃料電池スタック、原料ガスを改質する改質器、内部を動作温度にまで加熱する加熱部などを備え、例えば、運転温度(動作温度)が700〜850℃であり、排ガス温度は、550〜650℃である。燃料電池モジュール407は、燃料ガスなどを大気圧の状態で用いており、排ガスは大気圧の状態とされている。また、排ガスには、二酸化炭素が含まれている。
【0044】
また、実施の形態3の燃料電池システム400は、第1吸収材401が配置される第1ガス流通経路403と、第2吸収材402が配置される第2ガス流通経路404とを備える。第1吸収材401および第2吸収材402は、リチウムシリケートから構成されている。
【0045】
また、燃料電池システム400は、燃料電池モジュール407からの排ガスを第1ガス流通経路403に導入する排ガス導入経路405と、第2ガス流通経路404にキャリアガスを供給するキャリアガス供給部406とを備える。キャリアガス供給部406は、第2ガス流通経路404より放出される二酸化炭素の一部を循環させて第2ガス流通経路404に供給する。また、循環する二酸化炭素を加熱する予熱部408を備える。
【0046】
加えて、実施の形態3では、図5A,図5Bにも示すように、筒状に形成されて筒の軸501を中心に回転可能とされた流路切り替え部421を備える。流路切り替え部421は、例えば、円筒の形状とされている。流路切り替え部421は、内部に軸501の方向に延在する複数の領域を備え、断熱材から構成され隔壁422で、上記複数の領域に分離(分割)している。本実施の形態では、流路切り替え部421は、2つの領域を備え、これらの領域を隔壁422で分割している。分割された一方の領域423に第1ガス流通経路403が配置され、分割された他方の領域424に、第2ガス流通経路404が配置されている。
【0047】
実施の形態3では、流路切り替え部421を軸501で回転させることで、領域424が燃料電池モジュール407内に配置される状態と、領域423が燃料電池モジュール407内に配置される状態とを切り替え可能としている。図4は、領域424が燃料電池モジュール407内に配置される状態を示している。
【0048】
図4に示すように、領域424が燃料電池モジュール407内に配置される状態では、排ガス導入経路405は、第1ガス流通経路403に接続される。また、キャリアガス供給部406からのキャリアガスは、第2ガス流通経路404に供給され、第2ガス流通経路404より排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部406に循環して再利用される。この場合は、第2ガス流通経路404が、燃料電池モジュール407の動作温度に加熱される状態となる。
【0049】
一方、領域423が燃料電池モジュール407内に配置される状態では、図示していないが、排ガス導入経路405は、第2ガス流通経路404に接続される。また、キャリアガス供給部406からのキャリアガスは、第1ガス流通経路403に供給され、第1ガス流通経路403より排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部406に循環して再利用される。この場合は、第1ガス流通経路403が、燃料電池モジュール407の動作温度に加熱される状態となる。
【0050】
次に、実施の形態3における二酸化炭素分離システムを用いた燃料電池システム400の動作について説明する。まず、初期状態では、流路切り替え部421の領域424が燃料電池モジュール407内に配置されている。また、第1ガス流通経路403の第1吸収材401は二酸化炭素を吸収していない状態(未吸収)である。また、第2ガス流通経路404の第2吸収材402は、二酸化炭素を吸収している状態(吸収済み)である。
【0051】
動作開始時のステップでは、まず、排ガス導入経路405のバルブ431を、開状態とし、第1ガス流通経路403の排出側のバルブ432も開状態とする。この開状態で、燃料電池モジュール407からの排ガスは、排ガス導入経路405を経由し、第1ガス流通経路403の未吸収の状態の第1吸収材401に供給され、二酸化炭素が吸収され、二酸化炭素吸収後の排ガスが第1ガス流通経路403より排出される。
【0052】
また、キャリアガスの供給側のバルブ433を開状態とし、第2ガス流通経路404の排出側のバルブ434も開状態とする。この開状態で、キャリアガス供給部406からのキャリアガスが、第2ガス流通経路404の吸収済みの状態で燃料電池モジュール407により加熱されている第2吸収材402に供給され、放出された二酸化炭素を移送する。
【0053】
上述した二酸化炭素の吸収および二酸化炭素の放出を続けると、次のステップでは、第1吸収材401では二酸化炭素の吸収が終了して吸収済みの吸収材となり、第2吸収材402では二酸化炭素の放出が終了して未吸収の吸収材となる(再生)。この状態で、バルブ431,バルブ432,バルブ433,バルブ434を閉状態として各ガスの流通を停止する。
【0054】
次のステップでは、流路切り替え部421を回転させ、今度は領域423を燃料電池モジュール407内に配置させる。この状態では、第1ガス流通経路403が燃料電池モジュール407内に配置され、キャリアガスが供給される経路に接続される。また、第2ガス流通経路404は、排ガス導入経路405に接続される。この結果、排ガス導入経路405からの排ガスは、未吸収状態の第2吸収材402に供給可能な状態となる。また、キャリアガスは、吸収済み状態の第1吸収材401に供給可能な状態となる。また、第1吸収材401は、二酸化炭素を放出する放出温度の状態となる。これらの流路接続の切り替えは、例えば、回転式のマニホールドおよびバルブを用いて行えばよい。
【0055】
このように、流路切り替え部421を回転させて切り替えることで、吸収状態の第1吸収材401と未吸収状態の第2吸収材402とが交換できることになる。以上のように切り替えた後、前述した各ステップを繰り返すことで、引き続いて二酸化炭素の分離・回収が実現できる。また、第2吸収材402が吸収済みの状態となり、第1吸収材401が未吸収の状態となったら、流路切り替え部421を回転させ、今度は領域424を燃料電池モジュール407内に配置させればよい。これは、前述した初期状態である。このように、前述した各ステップと、流路切り替え部421の回転による切り替えとを繰り返せば、連続して二酸化炭素の分離・回収が実現できる。
【0056】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図6は、本発明の実施の形態4における二酸化炭素分離システムの構成を示す構成図である。実施の形態4では、二酸化炭素分離システムを組み込んだ燃料電池システム600を例に説明する。
【0057】
燃料電池システム600は、第1吸収材601aが配置される第1ガス流通経路603aと、第2吸収材602aが配置される第2ガス流通経路604aとを備える。また、第3吸収材601bが配置される第3ガス流通経路603bと、第4吸収材602bが配置される第4ガス流通経路604bとを備える。各吸収材は、リチウムシリケートから構成されている。
【0058】
また、この燃料電池システム600は、燃料電池モジュール607からの排ガスを第1ガス流通経路603aに導入する第1排ガス導入経路605aと、燃料電池モジュール607からの排ガスを第3ガス流通経路603bに導入する第2排ガス導入経路605bとを備える。また、第2ガス流通経路604aおよび第4ガス流通路604bにキャリアガスを供給するキャリアガス供給部606を備える。キャリアガス供給部606は、第2ガス流通経路604aおよび第4ガス流通路604bより放出される二酸化炭素の一部を循環させて第2ガス流通経路604aに供給する。また、循環する二酸化炭素を加熱する予熱部608を備える。
【0059】
また、実施の形態4では、図7にも示すように、筒状に形成されて筒の軸を中心に回転可能とされた第1流路切り替え部621aおよび第2流路切り替え部621bを備える。
【0060】
第1流路切り替え部621aは、内部に軸の方向に延在する2つの領域を備え、断熱材から構成され隔壁622aで、上記2つの領域に分離(分割)している。分割された一方の領域623aに第1ガス流通経路603aが配置され、分割された他方の領域624aに、第2ガス流通経路604aが配置されている。
【0061】
同様に、第2流路切り替え部621bは、内部に軸の方向に延在する2つの領域を備え、断熱材から構成され隔壁622bで、上記2つの領域に分離している。分割された一方の領域623bに第3ガス流通経路603bが配置され、分割された他方の領域624bに、第4ガス流通経路604bが配置されている。
【0062】
実施の形態4では、図7に示すように、第1流路切り替え部621aおよび第2流路切り替え部621bを各々の軸で回転させることで、流路の機器換えを行う。第1流路切り替え部621aを軸で回転させることで、領域624aが燃料電池モジュール607内に配置される状態と、領域623aが燃料電池モジュール607内に配置される状態とを切り替え可能としている。同様に、第2流路切り替え部621bを軸で回転させることで、領域624bが燃料電池モジュール607内に配置される状態と、領域623bが燃料電池モジュール607内に配置される状態とを切り替え可能としている。図6、7は、領域624aおよび領域624bが燃料電池モジュール607内に配置される状態を示している。
【0063】
図6に示すように、領域624aが燃料電池モジュール607内に配置される状態では、第1排ガス導入経路605aは、第1ガス流通経路603aに接続される。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスは、第2ガス流通経路604aに供給され、第2ガス流通経路604aより排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部606に循環して再利用される。この場合は、第2ガス流通経路604aが燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態となる。
【0064】
同様に、領域624bが燃料電池モジュール607内に配置される状態では、第2排ガス導入経路605bは、第3ガス流通経路603bに接続される。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスは、第4ガス流通経路604bに供給され、第4ガス流通経路604bより排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部606に循環して再利用される。この場合は、第4ガス流通経路604bが燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態となる。
【0065】
一方、領域623aが燃料電池モジュール607内に配置される状態では、図示していないが、第1排ガス導入経路605aは、第2ガス流通経路604aに接続される。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスは、第1ガス流通経路603aに供給され、第1ガス流通経路603aより排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部606に循環して再利用される。この場合は、第1ガス流通経路603aが燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態となる。
【0066】
同様に、領域623bが燃料電池モジュール607内に配置される状態では、図示していないが、第2排ガス導入経路605bは、第4ガス流通経路604bに接続される。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスは、第3ガス流通経路603bに供給され、第3ガス流通経路603bより排出される一部の二酸化炭素が、キャリアガス供給部606に循環して再利用される。この場合は、第3ガス流通経路603bが燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態となる。
【0067】
上述した構成では、第1排ガス導入経路605aおよび一方のキャリアガスの供給配管が、第1流路切り替え部621aに接続し、第2排ガス導入経路605bおよび他方のキャリアガスの供給配管が、第2流路切り替え部621bに接続していることになる。
【0068】
また、以下に示すように、各配管(排ガス導入経路)には、バルブが設けられている。まず、第1排ガス導入経路605aには、第1バルブ631が設けられ、第2排ガス導入経路605bには、第2バルブ632が設けられている。また、第1流路切り替え部621aの排ガスの排出配管には第3バルブ633が設けられ、第2流路切り替え部621bの排ガスの排出配管には第4バルブ634が設けられている。
【0069】
また、キャリアガス供給部606から第1流路切り替え部621aの側へキャリアガスを供給する配管には、第5バルブ635が設けられ、キャリアガス供給部606から第2流路切り替え部621bの側へキャリアガスを供給する配管には、第6バルブ636が設けられている。また、また、第1流路切り替え部621aの二酸化炭素排出配管には第7バルブ637が設けられ、第2流路切り替え部621bの二酸化炭素排出配管には第8バルブ638が設けられている。
【0070】
前述した第1流路切り替え部621aおよび第2流路切り替え部621bによる切り替え動作は、以下に説明するように、上記各バルブを適宜に閉じた状態として行う。以下、第1流路切り替え部621aおよび第2流路切り替え部621bによる切り替え動作について図8を用いて説明する。
【0071】
まず、第1バルブ631,第3バルブ633,第5バルブ635,第7バルブ637を開状態とし、第2バルブ632,第4バルブ634,第6バルブ636,第8バルブ638を閉状態とする(a)。この状態では、燃料電池モジュール607からの排ガスが第1ガス流通経路603aに導入され、第1吸収材601aが排ガスに晒された状態となる。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスが第2ガス流通経路604aに導入される状態となる。
【0072】
また、第1流路切り替え部621aの切り替え状態は、領域624aが燃料電池モジュール607内に配置され、第2ガス流通経路604aの第2吸収材602aが、二酸化炭素の放出温度に加熱され、二酸化炭素の放出状態(高温)となっている。この結果、キャリアガスが供給されている第2ガス流通経路604aでは、吸収済みの第2吸収材602aより二酸化炭素が放出される状態となる。
【0073】
一方、領域623aは燃料電池モジュール607の外側に配置され、第1ガス流通経路603aの第1吸収材601aは、二酸化炭素の放出温度には加熱されていない。この状態では、第1吸収材601aは、導入されている排ガスにより二酸化炭素の吸収温度に加熱され、二酸化炭素吸収状態(低温)となっている。この結果、排ガスが導入されている第1ガス流通経路604aでは、未吸収の第1吸収材601aが、排ガス中の二酸化炭素を吸収する状態となる。
【0074】
また、第2流路切り替え部621bの切り替え状態は、領域624bが燃料電池モジュール607内に配置され、第4ガス流通経路604bの第4吸収材602bが、二酸化炭素の放出温度に加熱された状態(高温)とされている。ここで、第4ガス流通経路604bには、キャリアガスが供給されておらず、二酸化炭素の排出側が閉じられているが、第4吸収材602bは、未吸収の状態であり、二酸化炭素を放出しないので、問題とならない。
【0075】
また、領域623bは燃料電池モジュール607の外側に配置され、第3ガス流通経路603bの第3吸収材601bは、二酸化炭素の放出温度には加熱されていない(低温)。また、第3ガス流通経路603bには、排ガスが導入されていない。第3吸収材601bは、吸収済みの状態であるが、上述したように、放出温度にまで加熱されておらず、また、排ガスが導入されていないので、問題とならない。
【0076】
以上に説明した状態は、第1流路切り替え部621aの側で、排ガス中の二酸化炭素を吸収し、また、吸収済みの吸収材を燃料電池モジュール607の動作温度に加熱することで放出温度とし、二酸化炭素を放出する動作をしてる状態である。この状態では、第2流路切り替え部621bの側では、二酸化炭素の吸収および放出の動作はなされていない。
【0077】
この状態を継続すると、いずれ、第1吸収材601aは、二酸化炭素を十分に吸収して吸収済みの状態となり、第2吸収材602aは、二酸化炭素を放出して未吸収の状態となる。ここで、上述したように、二酸化炭素の吸収および放出の動作がなされていない状態の第2流路切り替え部621bの側において、領域623aと領域624bとの配置を入れ替え、領域623bが、燃料電池モジュール607内に配置される状態とする。
【0078】
この入れ替えにより、図8の(b)に示すように、第3ガス流通経路603bは、燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態とされ、二酸化炭素を十分に吸収している吸収済みの第3吸収材601bが、二酸化炭素放出状態の温度(高温)とされる。加えて、第3ガス流通経路603bは、キャリアガスが供給可能な状態に切り替えられる。一方、第4ガス流通経路604bは、より低温状態の燃料電池モジュール607の外側に配置され、未吸収の第4吸収材602bは、二酸化炭素吸収状態の温度(低温)とされる。加えて、第4ガス流通経路604bは、排ガスが供給可能な状態に切り替えられる。以上のことにより、第3吸収材601bおよび第4吸収材602bは、各々の反応温度領域に温度制御が変更される。
【0079】
上述したように、第2流路切り替え部621bを切り替えた後、第1バルブ631,第3バルブ633,第5バルブ635,第7バルブ637を閉状態とし、第2バルブ632,第4バルブ634,第6バルブ636,第8バルブ638を開状態とする(c)。このように各バルブの開閉を切り替えることで、燃料電池モジュール607からの排ガスが第4ガス流通経路604bに導入され、第4吸収材602bが排ガスに晒された状態となる。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスが第3ガス流通経路603bに導入される状態となる。
【0080】
また、第2流路切り替え部621bの切り替え状態は、領域623bが燃料電池モジュール607内に配置され、第3ガス流通経路603bの第3吸収材601bが、二酸化炭素の放出温度に加熱されて二酸化炭素の放出状態(降温)となっている。このため、キャリアガスが供給されている第3ガス流通経路603bでは、吸収済みの第3吸収材601bより二酸化炭素が放出される状態となる。
【0081】
一方、領域624bは燃料電池モジュール607の外側に配置され、第4ガス流通経路604bの第4吸収材602bは、二酸化炭素の放出温度には加熱されていない。この状態では、第4吸収材602bは、導入されている排ガスにより二酸化炭素の吸収温度に加熱され、二酸化炭素吸収温度状態(低温)とされている。このため、排ガスが導入されている第4ガス流通経路604bでは、未吸収の第4吸収材602bが、排ガス中の二酸化炭素を吸収する状態となる。
【0082】
また、第1流路切り替え部621aの切り替え状態は、領域624aが燃料電池モジュール607内に配置され、第2ガス流通経路604aの第2吸収材602aが、二酸化炭素の放出温度に加熱された状態(高温)とされている。ここで、第2ガス流通経路604aには、キャリアガスが供給されておらず、二酸化炭素の排出側が閉じられているが、第2吸収材602aは、未吸収の状態であり、二酸化炭素を放出しないので、問題とならない。
【0083】
また、領域623aは燃料電池モジュール607の外側に配置され、第1ガス流通経路603aの第1吸収材601aは、二酸化炭素の放出温度には加熱されていない(低温)。また、第1ガス流通経路603aには、排ガスが導入されていない。第1吸収材601aは、吸収済みの状態であるが、上述したように、放出温度にまで加熱されておらず、また、排ガスが導入されていないので、問題とならない。
【0084】
以上に説明した状態は、第2流路切り替え部621bの側で、排ガス中の二酸化炭素を吸収し、また、吸収済みの吸収材を燃料電池モジュール607の動作温度に加熱することで放出温度とし、二酸化炭素を放出する動作をしてる状態である。この状態では、第1流路切り替え部621aの側では、二酸化炭素の吸収および放出の動作はなされていない。
【0085】
この状態を継続すると、いずれ、第4吸収材602bは、二酸化炭素を十分に吸収して吸収済みの状態となり、第3吸収材601bは、二酸化炭素を放出して未吸収の状態となる。ここで、上述したように、二酸化炭素の吸収および放出の動作がなされていない状態の第1流路切り替え部621aの側において、領域623aと領域624aとの配置を入れ替え、領域623aが、燃料電池モジュール607内に配置される状態とする。
【0086】
この入れ替えにより、図8の(d)に示すように、第1ガス流通経路603aは、燃料電池モジュール607の動作温度に加熱される状態とされ、二酸化炭素を十分に吸収している吸収済みの第1吸収材601aが、二酸化炭素放出状態の温度(高温)とされる。加えて、第1ガス流通経路603aは、キャリアガスが供給可能な状態に切り替えられる。一方、第2ガス流通経路604aは、より低温状態の燃料電池モジュール607の外側に配置され、未吸収の第2吸収材602aは、二酸化炭素吸収状態の温度(低温)とされる。加えて、第2ガス流通経路604aは、排ガスが供給可能な状態に切り替えられる。以上のことにより、第2吸収材602aおよび第1吸収材601aは、各々の反応温度領域に温度制御が変更される。
【0087】
上述したように、第1流路切り替え部621aを切り替えた後、図8の(a)に示す状態に戻り、第1バルブ631,第3バルブ633,第5バルブ635,第7バルブ637を開状態とし、第2バルブ632,第4バルブ634,第6バルブ636,第8バルブ638を閉状態とする。
【0088】
この状態では、燃料電池モジュール607からの排ガスが第1ガス流通経路603aに導入され、第1吸収材601aが排ガスに晒された状態となる。また、キャリアガス供給部606からのキャリアガスが第2ガス流通経路604aに導入される状態となる。これば、前述したように、第1流路切り替え部621aの側で、排ガス中の二酸化炭素を吸収し、また、吸収済みの吸収材を燃料電池モジュール607の動作温度に加熱することで放出温度とし、二酸化炭素を放出する動作をしてる状態である。またこの状態では、第2流路切り替え部621bの側では、二酸化炭素の吸収および放出の動作はなされていない。
【0089】
以上に説明したように、第1流路切り替え部621a,第2流路切り替え部621bの切り替えと、第1バルブ631,第2バルブ632,第3バルブ633,第4バルブ634,第5バルブ635,第6バルブ636,第7バルブ637,第8バルブ638の開閉状態の切り替えとにより、排ガスからの二酸化炭素を分離・回収が、ガスの流通などを停止することなく連続して行えるようになる。
【0090】
なお、上述した各切り替え部の切り替えおよび各バルブの開閉は、人為的に行ってもよく、機械によって自動的に行ってもよい。また、二酸化炭素吸収材は二酸化炭素を吸収することで重量が増加し、二酸化炭素を放出することで重量が減少する。この重量変化を利用し、切り替え部の2つの領域を重力方向に配列させ、二酸化炭素吸収材の重力変化により、2つの領域の配置関係を自動的に入れ替えるようにしてもよい。
【0091】
以上に説明したように、本発明によれば、コストの上昇を抑制した状態で、排ガスより二酸化炭素を分離・回収できるようになる。本発明では、導入する排ガスの温度を、二酸化炭素吸収材における二酸化炭素吸収の反応温度領域としているので、二酸化炭素吸収のために外部からエネルギーを供給することなく二酸化炭素吸収反応を起こすことができる。また、発電システムの発電動作に伴い高温となっている領域に、二酸化炭素を放出させる吸収材を接触もしくは配置することで、当該吸収材を放出温度に加熱させるようにしたので、吸収材を再生させるために発電システムの高温の熱を利用することが可能になり、外部からのエネルギー供給を少なくし、かつ、システムの規模を小型化することが可能となる。
【0092】
また、二酸化炭素吸収材の主成分として、リチウム複合酸化物、特に、LiとSiの酸化物であるリチウムシリケートを用いることで、二酸化炭素吸収の反応温度領域は500〜700℃とし、二酸化炭素の放出温度領域は700〜850℃として利用することができる。このため、700℃以上の高温で発電を行い、500〜700℃の高温の排ガスを排出する発電システムに対して、排ガスの有する熱を二酸化炭素吸収の反応に用い、発電システムの有する高温の熱を二酸化炭素放出の反応に活用することができ、熱エネルギーの無駄なく二酸化炭素の分離・回収が可能になる。
【0093】
運転温度が700〜850℃である固体酸化物型燃料電池を発電システムとする場合には、排ガスは550〜650℃で取り出すことができ、二酸化炭素吸収の反応温度領域が500〜700℃で、二酸化炭素放出の反応温度領域が700〜850℃であるリチウムシリケートは二酸化炭素吸収材として最適な組み合わせとなる。
【0094】
前述したように、二酸化炭素吸収材を用いる二酸化炭素の分離・回収では、二酸化炭素の吸収温度および放出温度に吸収材を加熱することが重要となる。例えば、リチウム複合酸化物を用いる場合、700℃を超える放出温度が必要となり、加熱のためのエネルギーが必要であり、加熱のための機構が必要となる。
【0095】
燃料電池、特に運転温度の高い固体酸化物型燃料電池においては、運転温度が800℃の場合、この800℃の熱は、エクセルギー率(当該温度での電気への最大変換効率)が約50%の質の高い熱エネルギーである。実際のコジェネレーションシステムにおいては、この質の高い熱エネルギーを、エクセルギー率が10%程度しかない100℃の質の低い熱エネルギーとして、暖房や給湯に用いている。都市ガスなどを用いた固体酸化物型燃料電池においては、燃料の水蒸気改質のために排熱を利用しているが、この場合でも、650℃程度の熱を利用している状態であり、800℃の質の高い熱エネルギーが利用されていない。
【0096】
上述した固体酸化物形燃料電池の質の高い熱エネルギーを二酸化炭素吸収材からの二酸化炭素放出のための吸熱反応に用いることができれば、熱エネルギーを有効に利用することが可能になる。さらに、排気ガスから二酸化炭素を吸収するための発熱反応時に、500℃の排気ガスに熱を戻すことができれば、全体の熱量は無駄にすることなく、エクセルギー率40%の500℃の熱に戻すことができる。仮にこの500℃の熱を、100℃の質の低い熱エネルギーとして暖房や給湯に用いたとしても、エクセルギー損失は40%から30%と、従来に比べ10%の削減が可能なる。また、この500℃の熱は、メタン改質や水蒸気改質など、800℃の熱よりも有効利用できる用途が広く、システム全体としてエネルギーの利用効率の高いシステムが実現できる。
【0097】
放出された二酸化炭素の回収では、850℃で二酸化炭素放出反応を起こさせるようにすれば、放出した二酸化炭素自身の圧力で回収することが可能である。また、二酸化炭素を回収するガス流路を負圧もしくは真空引きすることで、より低い温度での二酸化炭素放出反応と回収もできる。さらに、放出された二酸化炭素を、回収のためのガス流路にキャリアガスを用いて流すこともできる。
【0098】
二酸化炭素放出部に入力するキャリアガスは、二酸化炭素放出部における二酸化炭素の放出に高温(リチウムシリケートにおいては700〜850℃)が必要なことから、本発明の二酸化炭素分離システムの一形態では、二酸化炭素放出部の直前に設置した予熱器でキャリアガスをあらかじめ加熱することで、二酸化炭素放出部の温度低下を防いでいる。
【0099】
また、流路切り替え手段を用いることで、吸収済みの二酸化炭素吸収材と放出済みの二酸化炭素吸収材との交換を、より小規模な状態で行えるようになり、システムの小型化が可能になる。また、2つの流路切り替え手段を用いることで、ガスの流れを停止することなく、連続して二酸化炭素の分離・回収の動作が行えるようになる。
【0100】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、流路切り替え部の切り替えは、同一方向に回転させることで順次に切り替えてもよく、また、180°回転させて切り替え、この次は、反対方向に180°回転させて切り替えるようにしてもよい。
【0101】
また、例えば、流路切り替え手段の中に3つ以上の複数の領域を設け、各々の領域にガス流通経路を配置することで、二酸化炭素の吸収時間と二酸化炭素の放出時間の差によるむだな時間の発生を抑制できるようになる。二酸化炭素の放出反応は短く、二酸化炭素の吸収時間は長いものとなる。このため、二酸化炭素の吸収の工程と二酸化炭素の放出の工程とを、時間的に同期させて行うと、二酸化炭素の放出が終了していても、二酸化炭素の吸収が終了するまで、流路の切り替えが行えない。このため、例えば、1つの流路切り替え手段を用いる場合、二酸化炭素の放出が終了しているガス流通経路には、むだな時間が発生していることになる。
【0102】
これに対し、例えば、流路切り替え手段の中に3つの領域を設け、各々の領域にガス流通経路を配置し、いずれか1つのガス流通経路で二酸化炭素の放出を行わせている間に、他の2つのガス流通経路において、二酸化炭素吸収の開始と終了との時刻をずらして行うことで、上述したむだ時間の発生が抑制できるようになる。
【0103】
また、二酸化炭素吸収材は、リチウムシリケートに限るものではなく、リチウムジルコネートおよびリチウムタイタネートなどの他のリチウム複合酸化物を用いるようにしてもよい。また、リチウム複合酸化物に限るものでもない。
【符号の説明】
【0104】
100…二酸化炭素分離システム、101…第1吸収材、102…第2吸収材、103…第1ガス流通経路、104…第2ガス流通経路、105…排ガス導入経路、106…キャリアガス供給部、107…発電システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収温度で二酸化炭素を吸収し、吸収した二酸化炭素を前記吸収温度より高温の放出温度で放出する二酸化炭素吸収材から構成された第1吸収材および第2吸収材と、
前記第1吸収材が配置される第1ガス流通経路と、
前記第2吸収材が配置される第2ガス流通経路と、
二酸化炭素排出源からの排ガスを前記第1ガス流通経路に導入する排ガス導入経路と
を備え、
前記二酸化炭素排出源は、前記放出温度の動作温度で発電動作して前記吸収温度の前記排ガスを排出する発電システムであり、前記吸収温度の前記排ガスを前記第1ガス流通経路に導入して前記第1吸収材を前記吸収温度とし、前記発電システムを熱源として前記第2吸収材を前記放出温度に加熱することを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
前記二酸化炭素吸収材は、リチウム複合酸化物から構成されていることを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項3】
請求項2記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
前記リチウム複合酸化物は、リチウムシリケートであることを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
前記第1ガス流通経路で二酸化炭素を吸収した前記第1吸収材と、前記第2ガス流通経路で二酸化炭素を放出した前記第2吸収材とを循環して入れ替える移送手段を備えることを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項5】
請求項4記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
前記第1吸収材を収納する第1収納容器および前記第2吸収材を収納する放出収納容器を備え、
前記移送手段は、前記第1収納容器と、前記放出収納容器とを循環して入れ替えることを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
筒状に形成されて筒の軸を中心に回転可能とされた流路切り替え手段と、
断熱材から構成されて前記流路切り替え手段の内部を前記軸の方向に延在する複数の領域に分割する隔壁と、
複数の前記領域の各々に配置された流通経路と、
各々の前記流通経路に配置された前記二酸化炭素吸収材と
を備え、
前記流路切り替え手段のいずれか1つの領域に配置された流通経路が前記第2ガス流通経路であり、
前記流路切り替え手段の残りの領域に配置された流通経路が前記第1ガス流通経路である
ことを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項7】
請求項6記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
複数の前記流路切り替え手段を備え、前記第1ガス流通経路および前記第2ガス流通経路を複数組備えることを特徴とする二酸化炭素分離システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の二酸化炭素分離システムにおいて、
前記発電システムは、固体酸化物形燃料電池から構成されていることを特徴とする二酸化炭素分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245510(P2012−245510A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121841(P2011−121841)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】