説明

二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法

【課題】回収性能が高く消費動力が低い二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】実施形態の二酸化炭素回収装置は、吸収塔と、再生塔と、少なくとも1つの冷却装置とを持つ。前記吸収塔は、二酸化炭素含有ガスと、二酸化炭素を吸収するリーン液とが導入され、前記二酸化炭素含有ガスを前記リーン液と接触させて二酸化炭素を吸収したリッチ液を生成して排出する。前記再生塔は、前記吸収塔から排出された前記リッチ液を加熱することにより、二酸化炭素を含有する蒸気を放散させ、前記リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液を生成して前記吸収塔に戻す。前記冷却装置は、冷却媒体が導入され、ガス、前記リーン液、および前記リッチ液の少なくともいずれかを冷却する。前記冷却装置は、互いに直列に接続され、第1および第2の冷却媒体がそれぞれ導入される第1および第2の冷却器を含み、前記第1の冷却媒体は、実質的に動力を用いることなく生成され、前記第2の冷却媒体は、動力を用いて生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の回収に関し、地球規模で懸念される地球温暖化問題に対する有効な対策として二酸化炭素回収貯留(CCS: Carbon Dioxide Capture and Storage)技術が注目されている。特に、火力発電所や製鉄所などで発生するプロセス排出ガスを対象に、二酸化炭素を水溶液により回収する手法が検討されている。
【0003】
しかしながら、従来の二酸化炭素回収技術によれば、吸収塔内の温度を低温にして高い二酸化炭素回収性能を維持するために、吸収塔内に供給される二酸化炭素含有排ガスや吸収液、吸収塔内部などを冷却する必要があり、吸収塔や再生塔の排ガス中の吸収液成分が二酸化炭素回収系統(以下、単に「系」という)の外に排出されることを抑制するために、吸収塔や再生塔排ガスを冷却するガスコンデンサの温度を冷却する必要がある。また、二酸化炭素含有ガス中に含まれる多量の水が冷却されずに二酸化炭素回収装置内に導入されると吸収液の濃度が低下するなど、冷却動力エネルギが高い一方で二酸化炭素分離回収性能が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−240629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、回収性能が高く消費動力が低い二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の二酸化炭素回収装置は、吸収塔と、再生塔と、少なくとも1つの冷却装置とを持つ。前記吸収塔は、二酸化炭素含有ガスと、二酸化炭素を吸収するリーン液とが導入され、前記二酸化炭素含有ガスを前記リーン液と接触させて二酸化炭素を吸収したリッチ液を生成して排出する。前記再生塔は、前記吸収塔から排出された前記リッチ液を加熱することにより、二酸化炭素を含有する蒸気を放散させ、前記リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液を生成して前記吸収塔に戻す。前記冷却装置は、冷却媒体が導入され、ガス、前記リーン液、および前記リッチ液の少なくともいずれかを冷却する。前記冷却装置は、互いに直列に接続され、第1および第2の冷却媒体がそれぞれ導入される第1および第2の冷却器を含み、前記第1の冷却媒体は、実質的に動力を用いることなく生成され、前記第2の冷却媒体は、動力を用いて生成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は、実施形態1の二酸化炭素回収装置の全体構成を示す図であり、図1(b)は、図1に示す二酸化炭素回収装置が備える冷却器の説明図である。
【図2】二酸化炭素含有ガスの冷却温度と系内への持ち込み水分量との関係の一例を示したグラフ。
【図3】飛散防止設備における排ガスの温度と飛散吸収液量の関係の一例を表すグラフ。
【図4】実施形態1の二酸化炭素回収装置による冷却動力エネルギの低減効果の一例を示す表。
【図5】実施形態2の二酸化炭素回収装置の全体構成を示す図。
【図6】実施形態2の二酸化炭素回収装置による冷却動力エネルギの低減効果の一例を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において、同一の部分には同一の参照番号を付し、その重複説明は適宜省略する。
【0009】
(1)実施形態1
図1(a)は、実施形態1の二酸化炭素回収装置の全体構成を示す図であり、図1(b)は、図1に示す二酸化炭素回収装置1が備える冷却器の説明図である。本実施形態の二酸化炭素回収装置1は、吸収塔20、再生塔30、再生熱交換器40、冷却器CH31,CH32,CH11,CH12,およびCH33、気液分離器501〜503、脱硫装置60、リボイラ70、ポンプP1〜P3を備える。
【0010】
吸収塔20は、例えば向流型気液接触装置から構成され、その下部から二酸化炭素含有排ガスG1が供給され、その上部から二酸化炭素を吸収する吸収液(以下、「リーン液LL」という)が導入され、二酸化炭素含有排ガスG1をリーン液LLに気液接触させて吸収させ、二酸化炭素を吸収したリッチ液RLを生成してその下部から排出する。吸収塔20は、気液の接触を効率よく進めるため充填物またはトレイが配置された構造となっている。吸収塔20に供給される二酸化炭素含有ガスG3は、特に限定されるものではないが、例えば燃焼排ガスやプロセス排ガス等であってもよい。リーン液LLは、例えば、モノエタノールアミン(monoethanolamin)、ジエタノールアミン(diethanolamin)等のアミン系水溶液やアルカリ性水溶液の他、イオン性液体およびその水溶液などを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。吸収塔20で二酸化炭素が除去された脱二酸化炭素ガスG4は、吸収塔20の上部から排出される。
【0011】
吸収塔20の下部から排出されたリッチ液RLは、ポンプP3を通して再生熱交換器40に導入される。再生熱交換器40は、導入されたリーン液LLを加熱して再生塔30へ供給する。本明細書において、リーン液LLはリッチ液RLと比べて二酸化炭素含有量が少ない吸収液と定義する。
【0012】
再生塔30は、導入されたリーン液LLを加熱することにより、大部分の二酸化炭素を蒸気とともに放散させてリーン液LLから離させ、その上部から二酸化炭素含有蒸気GSとして排出する。再生塔30もまた、気液の接触を効率よく進めるため充填物またはトレイが配置された構造となっている。二酸化炭素の大部分が除去されたリーン液LLは、再生熱交換器40を通じて吸収塔20に戻される。
【0013】
本実施形態において二酸化炭素含有排ガスG1は、吸気口10から取り入れられ、脱硫装置60、冷却器CH31および気液分離器50を介して吸収塔20へ供給される。脱硫装置60については後述する。
冷却器CH31,CH32,CH11,CH12およびCH33は、図1(b)に符号CHで総括的に示されるように、第1冷却器CL1および、これに直列に接続された第2冷却器CL2で構成され、導入されるガスを二段構成の冷却器CL1,CL2で冷却する。冷却器CHは、プレート型熱交換器やスパイラル型熱交換器、シェルアンドチューブ型熱交換器などの熱交換器を用いて構成することができるが、これらの熱交換器に限られるものではない。冷却器CH31について説明すると、二酸化炭素含有排ガスG1を、室温の範囲内での低温に、望ましくは40℃以下であって二酸化炭素含有排ガスG1に含まれる成分単体または混合物の凝固点温度以上の温度にまで冷却する。これにより二酸化炭素含有排ガスG1中の水分が液体に凝縮する。
【0014】
図2(b)に示すように、冷却器CHの第1冷却器CL1には、第1冷媒CM1が供給される。第1冷媒CM1は、実質的に動力を用いることなく生成された冷媒であり、例えば海水や河川水、水道水の他、本実施形態の二酸化炭素回収装置1の外部における図示しない冷却塔などによって冷却された冷却媒体、またはこれらの冷却媒体によって冷却された二次冷却水および二次冷却媒体を含む。冷却媒体としては、水道水や処理された水に限ることなく、例えば脱イオン処理や、アルコール水溶液、エチレングリコールなどを含む。この点は、次記する第2冷媒についても同様である。本実施形態において第1冷媒CM1は例えば第1の冷却媒体に対応する。なお、本願明細書において、「実質的に動力を用いることなく生成され」るとは、二酸化炭素回収装置の外部で既に生成されており、二酸化炭素回収装置内での冷却に用いるために追加的に動力が用いられることがないことを意味する。
【0015】
第2冷却器CL2には、第2冷媒CM2が供給される。第2冷媒CM2は、第1冷媒CM1とは対照的に、動力を用いて生成される冷媒であり、例えば本実施形態の二酸化炭素回収装置1の外部における、チラーなどの冷凍機、ヒートポンプなどによって冷却された冷水または冷却媒体の他、極低温冷媒、例えば液体窒素やドライアイスまたは液体ヘリウムなどによって冷却された冷水または冷却媒体を含む。本実施形態において第2冷媒CM2は例えば第2の冷却媒体に対応する。
【0016】
気液分離器501は、冷却器CH31で発生した凝縮水分を二酸化炭素回収装置1の外部へ排出することにより、二酸化炭素回収装置1内に多量の水分が持ち込まれるのを防止する。これにより、リーン液LLの濃度が低下して二酸化炭素回収性能が悪化することが防止され、リーンLL液の濃度管理に関する作業等を最小限にしながら回収性能を維持することができる。気液分離器501を通過した二酸化炭素含有排ガスG1は二酸化炭素含有排ガスG3として吸収塔20のへ供給される。気液分離器501および後述する気液分離器502,503は、本実施形態において例えば水分除去装置に対応する。
【0017】
図2は、二酸化炭素含有ガスの冷却温度と系内への持ち込み水分量との関係を示したグラフである。図2のグラフから分かるように、吸収塔20へ持ち込まれる水分量は、二酸化炭素含有排ガスG1の温度が低下するほど減少する。したがって、海水や河川水などの第1冷媒CM1で冷却可能な温度よりも低温であることが望ましい。本実施形態によれば、実質的に動力を用いることなく生成された第1冷媒CM1によって一旦冷却した後に、動力を用いて生成される第2冷媒CM2によってさらに冷却するので、動力を抑えながら必要な温度(室温)にまで二酸化炭素含有排ガスG1を冷却することができる。
【0018】
脱硫装置60は、吸気口10と冷却器CH31との間に設置され、二酸化炭素含有排ガスG1中に含まれる硫黄酸化物成分SOxなどの酸性成分を除去する。脱硫装置60には、冷却器CH32が設けられ、酸性成分除去の際にも二酸化炭素含有排ガスG1が冷却される。
【0019】
吸収塔20から排出された脱二酸化炭素ガスG4は、冷却器CH11に供給され、冷却器CH31について上述した冷却方法と同様の方法で凝縮水が生成される温度にまで冷却される。冷却された凝縮水を含むガスは、気液分離器50によって気体と液体とに分離され、その凝縮水の一部または全部がポンプP2を通して吸収塔20などの二酸化炭素回収装置1内に再び供給される。これにより、脱二酸化炭素ガスG4中の水蒸気が二酸化炭素回収装置1外に排出されることが防止される。なお、本実施形態では気液分離器502の前に冷却器CH11を設けたが、これに限ることなく、例えば気液分離器502に内蔵させてもよい。
【0020】
再生塔30は、例えば向流型気液接触装置であり、その貯留液の加熱はリボイラ70において外部供給熱である高温蒸気と熱交換することにより行われる。また、二酸化炭素含有蒸気GSは、冷却器CH33に供給され、上述した冷却器CH31による冷却方法と同様の方法で凝縮水が生成される温度まで冷却される。これにより二酸化炭素含有蒸気GS内部の水蒸気が二酸化炭素回収装置1外に排出されることが防止される。冷却器CH33内で生成された凝縮水は気液分離器503を経てポンプP3により、二酸化炭素含有蒸気GS中の気体成分、主に二酸化炭素と液体成分、主に水の一部または全部が再生塔30などの系内に再び供給される。
【0021】
気液分離器502は、水洗部110を内蔵し、これによりリーン液の飛散を防止する。吸収液の飛散量は排ガス温度の蒸気圧によって決まる。このため、水洗部110は十分に冷却する必要があり、本実施形態においても冷却器CH12が設けられ、気液分離器50内の脱二酸化炭素排ガスG4が冷却される。水洗部110は、本実施形態において例えば飛散防止装置に対応する。なお、水洗部110は、気液分離器50に内蔵される必要は無く、その前後で処理対象ガスが導入される前または排出された後に設置してもよい。また、気液分離器502の前後および内部に限定されることなく、再生塔30の内部または前後にも設置することが望ましい。飛散防止設備における排ガスの温度と飛散吸収液量の関係の一例を図3のグラフに示す。図3のグラフは、排ガス温度を40℃に設定した場合の飛散量を100%とし、5℃〜45℃の範囲内の各温度での減少量を示している。吸収塔20からの脱二酸化炭素排ガスG4および再生塔30からの二酸化炭素含有蒸気GSの両方とも、温度が低下するにしたがって、吸収液成分の飛散量が減少した。吸収液成分の飛散量を抑えるためには、海水や河川水などの自然冷却水で可能な冷却温度よりも低温である必要がある。本実施形態によれば、水洗部110内部またはその前後冷却器CH12が設けられるので、冷却に必要な動力を抑えながら冷却することができる。
【0022】
再生塔30から吸収塔20にリーン液LLが供給される経路中、再生熱交換器40と吸収塔20との間に冷却器CH22がさらに設けられている。冷却器CH22も、上述の冷却器CH31による冷却方法と同様の方法で、外部から供給される第1冷媒および第2冷媒によりリーン液LLを冷却した後、吸収塔20に戻す。
【0023】
次に、本実施形態の二酸化炭素回収装置1を用いた二酸化炭素の回収方法について、実施形態1による二酸化炭素回収方法として説明する。
【0024】
まず、第1のプロセスとして、吸収塔20に二酸化炭素含有排ガスG1とリーン液LLが導入されて二酸化炭素含有排ガスG1をリーン液LLとが互いに接触し、二酸化炭素含有排ガスG1がリーン液LLに吸収させてリッチRL液が生成される。この第1のプロセスにおいては、二酸化炭素の吸収性能を向上させるために、低温で吸収工程が進行することが望ましい。そこで、吸収塔20内に導入される二酸化炭素含有ガスG3は、二酸化炭素含有排ガスG1が、冷却器CH31を用いた冷却プロセスにより、室温中での低温、望ましくは35〜40℃以下に冷却されて二酸化炭素含有排ガスG3として吸収塔20へ供給される。再生熱交換器40から吸収塔20内に導入されるリーン液LLも同様に、冷却器CH22を用いた冷却プロセスにより、室温中での低温、望ましくは35〜40℃以下に冷却させて吸収塔20へ供給される。
【0025】
吸収塔20から排出された脱二酸化炭素ガスG4は、系内からの水蒸気の排出量を制御するために冷却器CH11を用いた冷却プロセスによって、含有する水蒸気が冷却され、凝縮水が生成される。生成された凝縮水の一部または全部は気液分離器50を介してポンプP1により吸収塔20に戻される。
【0026】
第1のプロセスにより生成されたリッチ液RLは、ポンプP2により再生塔30に供給され、第2のプロセスにおいて、リボイラ70によって加熱されることにより、二酸化炭素含有蒸気GSとして再生塔30の上部から排出されるとともに、リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液が生成され、再生熱交換器40を介して吸収塔20へ戻して前記第1のプロセス用に再利用される。このようにして、二酸化炭素を回収したリッチ液RLはリーン液LLとして再生される。
【0027】
系内からの水蒸気の排出量を制御するため、再生塔30から排出される二酸化炭素含有蒸気GSについても冷却プロセスにより二酸化炭素含有蒸気GS中の水蒸気を冷却することにより凝縮水が生成され、気液分離器503で分離される。凝縮水の一部または全部はポンプP3を用いて気液分離器50から再生塔30へ戻すことにより系内に戻される。
【0028】
上述の一連のプロセスにおいて、二酸化炭素含有排ガスG1、吸収塔20へ供給されるリーン液LL、脱二酸化炭素排ガスG4、二酸化炭素含有蒸気GS、脱硫装置60に対する各冷却プロセスは、第一冷却器CL1を通して海水などの実質的に動力を用いることなく生成される第1冷媒によって冷却され、さらに第二の冷却器に導入されてチラーなどの動力を用いて低温に冷却されて生成された冷水などによって冷却される。これにより、チラーなどの動力を用いて低温に冷却されて生成された第2の冷却媒体のみで冷却対象を冷却する場合と比較して、動力冷却エネルギを低減することができる。
【0029】
本実施形態による動力エネルギ低減効果を確認するため、動力を用いて生成された第2の冷却媒体のみで冷却する場合を参考例1とし、プロセスシミュレーターを用いて本実施形態と比較した。比較に際して二酸化炭素回収量と回収率とを同一条件とした。本実施形態においては、参考例1と性能条件を同一にするため、再生塔30に導入される蒸気量を低減している。模擬比較の結果の一例を図4の表に示す。
【0030】
図4に示すように、冷却動力エネルギを低減することができる。ここでは、参考例1の回収エネルギを100%として本実施形態のエネルギ低減率を求めた。同様に必要な冷却水の量を比較した。参考例1はチラーによって冷却された冷水のみを使用して冷却した場合で、本実施形態の第1冷却器CL1を使用していないこと以外は同一の条件である。また、本実施形態での冷却動力エネルギとは、第1冷却器CL1および第2冷却器CL2の双方を使用して40℃未満まで冷却する際に必要なエネルギであり、参考例1での冷却動力エネルギは、本実施形態の第2冷却器CL2のみに対応する冷却器で冷却対象を40℃未満まで冷却する際に必要なエネルギである。
【0031】
このように本実施形態によれば、図4に示す通り、参考例1と比較して冷却動力エネルギを41%にまで低減させることが可能になる。ここでは、参考例1の冷却動力を100%として実施例2の冷却動力エネルギ低減率を求めた。同様の方法で必要な冷却水量も比較例1との比較を記載した。
【0032】
参考例1では、チラーを使用して冷却した場合を想定したが、その他にも、冷凍機などの機器による冷却や、極低温冷媒、例えば液体窒素やドライアイスまたは液体ヘリウムなどの極低温冷媒を使用した場合においても効果は同じであり、極低温冷媒を使用する場合では、その極低温媒体を冷却するのに必要な動力を低減することができる。
【0033】
(2)実施形態2
次に、実施形態2の二酸化炭素回収装置について図5および図6を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態の二酸化炭素回収装置2の全体構成を示す図である。図1(a)との対比により明らかなように、図5に示す二酸化炭素回収装置2は、実施形態1の吸収塔20に代えて、吸収塔22および冷却器CH34を備える。本実施形態において冷却器CH34は吸収塔22の外部に設置され、吸収塔22内のリーン液LLが第1のプロセス中に抜き出されて冷却器CH34にて冷却され、冷却されたリーン液LLが再度吸収塔22内へ戻される。
【0034】
前述した通り、吸収塔に導入されたリーン液LLと二酸化炭素含有排ガスG1は、第1のプロセスにより、吸収塔内で接触してリーン液LL内に二酸化炭素が吸収される。その際の吸収反応は発熱反応であるため、吸収塔内の温度が上昇する。その塔内温度の上昇は吸収性能を低下させる要因となる。
【0035】
そこで、本実施形態では、吸収塔22内のリーン液LLが第1のプロセスの途中で抜き出され、吸収塔22の外部に配置された冷却器CH34に導入されて冷却される。さらに、冷却器CH34によって冷却されたリーン液LLは、ポンプP4を通して吸収塔22内に再度供給される。この冷却プロセスにより温度の低下したリーン液LLが吸収塔22内に導入され、冷却されない場合と比べて、塔内の温度を低く保つことが可能となり、二酸化炭素の吸収効率が向上する。この冷却後のリーン液LLは、35℃以下であることが望ましく、そのため、実質的に動力を用いることなく生成される第1の冷却媒体のみならず、チラーなど動力を用いて冷却された第2の冷水媒体を使用して第2冷却器CL2をも通過させて冷却することが望ましい。
【0036】
図6は、本実施形態の二酸化炭素回収装置2による冷却動力エネルギの低減効果の一例を示す表である。図5の構成から第1冷却器CL1を除外して第2冷却器CL2により第2の冷却媒体のみで冷却する場合を参考例2としてプロセスシミュレーターを用い、参考例2の回収エネルギを100%として実施形態2の冷却動力エネルギ低減率を求めた。同様の方法で必要な冷却水量も参考例2との比較を記載した。比較に際して二酸化炭素回収量と回収率とを同一条件とした。図6から、本実施形態によれば、参考例2と比較して冷却動力エネルギを56%にまで低減可能であることが分かる。
【0037】
なお、本実施形態において、吸収塔22において冷却が必要な複数の箇所のそれぞれに抜き出し部および供給部を設置しても、その効果は同様であり、かつ、抜き出されるリーン液LLは塔内を流れるリーン液LLの全部または一部であっても冷却動力エネルギを低減させる効果は変わらない。
【0038】
また、本実施形態では、吸収塔22内部のリーン液LLを冷却する冷却器CH34が吸収塔22の外部に設置された例を取り上げて説明したが、これに限ることなく、リーン液LLの冷却を可能にする装置であれば、例えば吸収塔内組込型冷却器など、吸収塔22内部へ設置するものでもよい。
【0039】
以上述べた2つの実施形態の二酸化炭素回収装置によれば、二酸化炭素含有排ガスG1、脱二酸化炭素排ガスG4、二酸化炭素含有蒸気GS、リーン液LLなどについて、動力を用いて低温に冷却されて生成された第2の冷却媒体を第2冷却器CL2に通過させて冷却する前に、実質的に動力を用いることなく生成される第1冷媒によって第1冷却器CL1に通過させて冷却するので、動力冷却エネルギを低減することができ、その分電気エネルギを低減することができる。
【0040】
また、上述の少なくとも1つの実施形態の二酸化炭素回収方法によれば、上記ガス、蒸気、リーン液LLなどについて動力を用いて低温に冷却されて生成された第2の冷却媒体で冷却する前に、実質的に動力を用いることなく生成される第1冷媒によって冷却するので、冷却動力エネルギを低減することができ、その分電気エネルギを低減することができる。
【0041】
上述の実施形態では、気液分離器503で分離された凝縮水を再生塔30に戻すように構成されているが、この凝縮水は吸収塔20に戻すことも、再生熱交換器40を通過した後のリーン液LLと合流させることも可能であり、その他の用途に利用してもよい。
さらに、上述の実施形態では、二酸化炭素回収装置がポンプP1〜P4を備えているが、その全てを図1(a)または図5に示す通りに設ける必要はなく、また、その数を減らすことも増やすことも可能である。
【0042】
また、図1(a)および図5においては、冷却器CH11,CH12,CH22,CH31〜CH34をそれぞれ吸収塔20または再生塔30の外部に配置する構成となっているが、このような配置に限定されるものではなく、例えば、再生塔20内に配置してもよい。この点は、ガスコンデンサが再生塔20内に配置された形態であっても同様に可能である。
【0043】
さらに、上述の実施形態における冷却器は、第1冷却器CL1および第2冷却器CL2を用いているが、これらに限ることなく、第3冷却器、第4冷却器など、3個以上の冷却器を使用して冷却する場合にも適用可能である。また、上述の実施形態ではすべての冷却器に、2段構成の冷却器CHを使用しているが、例えばリーン液LLの冷却器のみに使用するなど、一部の冷却器のみへ適応することとしてもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1,2…二酸化炭素回収装置
20,22…吸収塔
30…再生塔
40…再生熱交換機
501〜50…気液分離器
60…脱硫装置
110…水洗部
CH,CH11,CH12,CH22,CH31〜CH34…冷却器
CM1…第1冷媒
CM2…第2冷媒
CL1…第1冷却器
CL2…第2冷却器
G1…二酸化炭素含有排ガス
G4…脱二酸化炭素排ガス
GS…二酸化炭素含有蒸気
P1〜P4…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有ガスと、二酸化炭素を吸収するリーン液とが導入され、前記二酸化炭素含有ガスを前記リーン液と接触させて二酸化炭素を吸収したリッチ液を生成して排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記リッチ液を加熱することにより、二酸化炭素を含有する蒸気を放散させ、前記リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液を生成して前記吸収塔に戻す再生塔と、
冷却媒体が導入され、二酸化炭素ガスおよび前記吸収液をそれぞれ冷却する第1および第2の冷却装置と、
を備え、
前記第1および第2の冷却装置は、互いに直列に接続され、第1および第2の冷却媒体がそれぞれ導入される第1および第2の冷却器をそれぞれ含み、
前記第1の冷却媒体は、実質的に動力を用いることなく生成され、
前記第2の冷却媒体は、動力を用いて生成される、
二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
二酸化炭素含有ガスと、二酸化炭素を吸収するリーン液とが導入され、前記二酸化炭素含有ガスを前記リーン液と接触させて二酸化炭素を吸収したリッチ液を生成して排出する吸収塔と、
前記吸収塔から排出された前記リッチ液を加熱することにより、二酸化炭素を含有する蒸気を放散させ、前記リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液を生成して前記吸収塔に戻す再生塔と、
冷却媒体が導入され、ガス、前記リーン液、および前記リッチ液の少なくともいずれかを冷却する少なくとも1つの冷却装置と、
を備え、
各冷却装置は、互いに直列に接続され、第1および第2の冷却媒体がそれぞれ導入される第1および第2の冷却器を含み、
前記第1の冷却媒体は、実質的に動力を用いることなく生成され、
前記第2の冷却媒体は、動力を用いて生成される、
二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記吸収塔の排ガスを冷却することを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記再生塔から排出される二酸化炭素含有蒸気を冷却することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記吸収塔内の液もしくはガス、または前記吸収塔内の液およびガスの両方を冷却することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記二酸化炭素含有排ガスは硫黄酸化物を含み、
前記二酸化炭素含有排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記脱硫装置を冷却することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素含有排ガス中の水分を除去する水分除去装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記水分除去装置を冷却することを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
前記吸収塔および前記再生塔の少なくともいずれかにおける吸収液成分の飛散を防止する飛散防止装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記飛散防止装置を冷却することを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
二酸化炭素含有ガスをリーン液と接触させて二酸化炭素を吸収したリッチ液を生成する第1のプロセスと、
前記リッチ液を加熱することにより、二酸化炭素を含有する蒸気を放散させるとともに、前記リッチ液から二酸化炭素が分離したリーン液を生成して前記第1のプロセス用に再利用する第2のプロセスと、
ガス、前記リーン液、および前記リッチ液の少なくともいずれかを、実質的に動力を用いることなく生成される第1の冷却媒体で冷却した後に、動力を用いて生成される第2の冷却媒体で冷却する冷却プロセスと、
を備える二酸化炭素回収方法。
【請求項10】
前記リッチ液は、前記第1のプロセス中に前記冷却プロセスにより冷却される、ことを特徴とする請求項9に記載の二酸化炭素回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−729(P2013−729A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137716(P2011−137716)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】