説明

二重結合を有する化合物の製造方法

【課題】特定の二重結合を有する化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記工程を含む式(III)の製造方法。工程(A):式(I)及び/又は式(II)で表される化合物と、水素とを反応させて反応液を得る工程。工程(B):水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程。工程(C):脱水触媒の存在下、式(III)で表される二重結合を有する化合物を得る工程。


[式中、Rは、炭化水素基を表す。]


[式中、Rは、芳香環を含む炭化水素基を表す。]


[式中、Rは、アルキル基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の二重結合を有する化合物を高選択的に得ることができる二重結合を有する化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二重結合を有する化合物は、オレフィン重合体の原料として有用である。二重結合を有する化合物を製造する方法としては、例えば、特許文献1、2には、酸化ジルコニウムを触媒に用いる2級アルコールから二重結合を有する化合物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−158121号公報
【特許文献2】特開昭61−53230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の二重結合を有する化合物の製造方法では、二種類の二重結合を有する化合物が生成するため特定の二重結合を有する化合物の選択性の点でさらなる改良が求められていた。本発明の課題は、特定の二重結合を有する化合物を高選択的に得ることができる特定の二重結合を有する化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記工程(A)、下記工程(B)及び下記工程(C)を含む下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物の製造方法にかかるものである。
工程(A):0.1重量部以上の水素化触媒の存在下、下記一般式(I)及び/又は下記一般式(II)で表される化合物と、水素とを反応させて反応液を得る工程(ただし、反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(B):工程(A)で得られた反応液に含まれる水素化触媒が、0.0010重量部以下になるまで水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程(ただし、工程(A)で得られた反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(C):脱水触媒の存在下、工程(B)で得られた水素化触媒除去液から下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物を得る工程



[式中、Rは、炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、芳香環を含む炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル基で置換されたアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特定の二重結合を有する化合物を高選択的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0008】
本発明の下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物の製造方法は、下記工程(A)、下記工程(B)及び下記工程(C)を含むものである。
工程(A):0.1重量部以上の水素化触媒の存在下、下記一般式(I)及び/又は下記一般式(II)で表される化合物と、水素とを反応させて反応液を得る工程(ただし、反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(B):工程(A)で得られた反応液に含まれる水素化触媒が、0.0010重量部以下になるまで水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程(ただし、工程(A)で得られた反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(C):脱水触媒の存在下、工程(B)で得られた水素化触媒除去液から下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物を得る工程



[式中、Rは、炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、芳香環を含む炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル基で置換されたアルキル基を表す。]
【0009】
1)工程(A)
工程(A)は、0.1重量部以上の水素化触媒の存在下、上記一般式(I)及び/又は上記一般式(II)で表される化合物と、水素とを反応させて反応液を得る工程(ただし、反応液の全重量を100重量部とする。)である。
【0010】
上記一般式(I)で表される化合物におけるRは、炭化水素基を表す。炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
【0011】
炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等があげられる。
【0012】
炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,3,4−トリエチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、2−n−ペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、2−n−ヘキシルフェニル基、2−n−オクチルフェニル基、2−n−デシルフェニル基、2−n−ドデシルフェニル基、2−n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0013】
炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(4,6−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(2−エチルフェニル)メチル基、(2−n−プロピルフェニル)メチル基、(2−イソプロピルフェニル)メチル基、(2−n−ブチルフェニル)メチル基、(2−sec−ブチルフェニル)メチル基、(2−tert−ブチルフェニル)メチル基、(2−n−ペンチルフェニル)メチル基、(2−ネオペンチルフェニル)メチル基、(2−n−ヘキシルフェニル)メチル基、(2−n−オクチルフェニル)メチル基、(2−n−デシルフェニル)メチル基、(2−n−デシルフェニル)メチル基、(2−n−テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、ジフェニルメチル基、2,2−ジフェニルエチル基、3,3−ジフェニルプロピル基、4,4−ジフェニルブチル基等が挙げられる。
【0014】
として好ましくは、炭素原子数2以上の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数2〜20の炭化水素基である。
【0015】
上記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、アセトフェノン、1−フェニル−2−プロパノン等が挙げられる。得られる二重結合を有する化合物の有用性の観点から、4−メチル−2−ペンタノンやアセトフェノンが好ましい。なお、4−メチル−2−ペンタノンは、m−ジイソプロピルベンゼンを空気酸化し、得られた過酸化物を酸触媒の存在下に、酸分解することでレゾルシンを製造するプラントで副生されるアセトンをアルドール反応させることによって得られたものを用いることができる。
【0016】
上記一般式(II)で表される化合物におけるRは、芳香環を含む炭化水素基を表す。芳香環を含む炭化水素基としては、例えば、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、上記Rにおける炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基として例示したものと同じものを例示することができる。
【0017】
上記一般式(II)で表される化合物としては、例えば、1−フェニルエチルアルコール、1−ベンジルエチルアルコール、4−フェニル−2−ブタノール等が挙げられる。得られる二重結合を有する化合物の有用性の観点から、1−フェニルエチルアルコールが好ましい。
【0018】
上記一般式(I)で表される化合物及び上記一般式(II)で表される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
水素化触媒としては、上記一般式(I)及び上記一般式(II)で表される化合物と、水素との反応において、上記一般式(I)及び上記一般式(II)で表される化合物を水素化できる触媒であればいずれでもよく、例えば、ニッケル、ルテニウム、鉄、オスミウム、ロジウム、白金、パラジウム、銅、クロム等が挙げられる。これらのなかでも、水素化の反応収率の観点から、好ましくは、周期律表第8族の金属である。また、これら金属を担体に担持し水素化触媒として使用することもできる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、チタニア、ケイソウ土、各種ゼオライト等が挙げられる。
【0020】
水素としては、純水素を用いてもよく、メタン等の不活性ガスを含有している水素を用いてもよい。
【0021】
工程(A)における反応は、溶媒を用いることなく行ってもよく、溶媒を用いて行ってもよい。溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0022】
反応温度は、通常、50〜200℃であり、好ましくは70〜150℃である。反応圧力は、通常、0.5〜10MPaであり、好ましくは1〜7MPaである。反応時間は通常、0.1〜24時間である。
【0023】
工程(A)における反応形式としては、例えば、槽型反応器を用いる回分式、半連続式若しくは連続式のスラリー法、又は管型反応器を用いる連続式の固定床法等が挙げられる。槽型反応器としては、通常、一段又は多段の混合槽が使用される。管型反応器としては、単管又は多数の管を並列に配列した多管式熱交換型の構造を持つものを単一又は複数を直列にさせた固定床反応器が挙げられる。
【0024】
工程(A)において、水素化触媒の使用量は、0.1重量部以上である(ただし、反応液の全重量を100重量部とする。)。ここで、反応液の全重量とは、工程(A)における反応に用いる上記一般式(I)及び/又は上記一般式(II)で表される化合物の重量と、必要に応じて反応に用いた溶媒の重量との合計の重量を意味する。水素化触媒の使用量が0.1重量部未満であると、水素化反応速度が遅くなり、不経済になる。水素化触媒の使用量として好ましくは、0.5重量部以上である。
なお、水素化触媒の使用量は、槽型反応器を用いる回分式の場合は、下記の計算式によって計算される。
水素化触媒仕込み重量/(一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物仕込み重量+必要に応じて反応に用いた溶媒の仕込み重量)×100
また、槽型反応器を用いる半連続式若しくは連続式のスラリー法の場合は、下記の計算式によって計算される。
水素化触媒反応器内重量/反応器内液重量×100
また、管型反応器を用いる連続式の固定床法の場合は、下記の計算式によって計算される。
水素化触媒充填量/((一般式(I)及び/又は(II)で表される化合物供給流量++必要に応じて反応に用いた溶媒供給流量)/滞留時間)×100
【0025】
工程(A)における反応によって、2級アルコールが得られる。
【0026】
2)工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られた反応液に含まれる水素化触媒が、0.0010重量部以下になるまで水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程(ただし、工程(A)で得られた反応液の全重量を100重量部とする。)である。水素化触媒が0.0010重量部より多く残存していると、後述する工程(C)において、副生物が多くなり、特定の二重結合を有する化合物を高い収率で、経済的に製造することができなくなる。好ましくは、水素化触媒が0.0004重量部以下になるまで水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程である。除去する方法としては、工程(A)で得られた反応液から該水素化触媒を除去できる方法ならばいかなる方法でも良く、例えば、水や有機溶媒による液洗浄操作、吸着操作又は濾過操作等が挙げられる。特に、濾過操作は、該水素化触媒が濾過される濾布などに通液すれば良く、設備や操作の観点から工業的に好ましい。
また、工程(A)における反応形式が、管型反応器を用いる連続式の固定床法の場合は、工程(A)と工程(B)における両工程の機能を果たすことがある。
【0027】
3)工程(C)
工程(C)は、脱水触媒の存在下、工程(B)で得られた水素化触媒除去液から上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物を得る工程である。工程(B)で得られた水素化触媒除去液中には、工程(A)における反応によって得られた2級アルコールが含まれ、脱水触媒の存在下、工程(B)で得られた水素化触媒除去液を付すことによって、2級アルコールが脱水反応し、上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物が得られる。
【0028】
上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物におけるRは、アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル基で置換されたアルキル基を表す。
【0029】
アルキル基としては、好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基である。炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等があげられる。
【0030】
シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基である。炭素原子数6〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,3,4−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,6−トリメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,4,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,4,5−テトラメチルシクロヘキシル基、2,3,4,6−テトラメチルシクロヘキシル基、2,3,5,6−テトラメチルシクロヘキシル基、ペンタメチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、2,3−ジエチルシクロヘキシル基、2,3,4−トリエチルシクロヘキシル基、2−n−プロピルシクロヘキシル基、2−イソプロピルシクロヘキシル基、2−n−ブチルシクロヘキシル基、2−sec−ブチルシクロヘキシル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、2−n−ペンチルシクロヘキシル基、2−ネオペンチルフェニル基、2−n−ヘキシルフェニル基、2−n−オクチルフェニル基、2−n−デシルシクロヘキシル基、2−n−ドデシルシクロヘキシル基、2−n−テトラデシルシクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基、テトラデカヒドロアントラセニル基等が挙げられる。
【0031】
シクロアルキル基で置換されたアルキル基としては、好ましくは、炭素原子数7〜20のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である。炭素原子数7〜20のシクロアルキル基で置換されたアルキル基としては、例えば、シクロヘキシルメチル基、(2−メチルシクロヘキシル)メチル基、(3−メチルシクロヘキシル)メチル基、(4−メチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,4−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,5−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,6−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(3,4−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(4,6−ジメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,4−トリメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,5−トリメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,6−トリメチルシクロヘキシル)メチル基、(3,4,5−トリメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,4,6−トリメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルシクロヘキシル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルシクロヘキシル)メチル基、(ペンタメチルシクロヘキシル)メチル基、(2−エチルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−プロピルシクロヘキシル)メチル基、(2−イソプロピルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−ブチルシクロヘキシル)メチル基、(2−sec−ブチルシクロヘキシル)メチル基、(2−tert−ブチルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−ペンチルシクロヘキシル)メチル基、(2−ネオペンチルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−ヘキシルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−オクチルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−デシルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−デシルシクロヘキシル)メチル基、(2−n−テトラデシルシクロヘキシル)メチル基、デカヒドロナフチルメチル基、テトラデカヒドロアントラセニルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、3−シクロヘキシルプロピル基、4−シクロヘキシルブチル基、ジシクロヘキシルメチル基、2,2−ジシクロヘキシルエチル基、3,3−ジシクロヘキシルプロピル基、4,4−ジシクロヘキシルブチル基等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、ビニルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、4−シクロヘキシル−1−ブテン等が挙げられる。
【0033】
脱水触媒としては、工程(B)で得られた水素化触媒除去液に含有される2級アルコールを脱水反応させ上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物が得られる触媒であればいかなるものでも良く、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、酸化ジルコニウム、イオン交換樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、特定の二重結合を有する化合物を高選択率で得られる観点から、好ましくは、酸化ジルコニウムである。
【0034】
工程(C)における反応形式としては、液相反応又は気相反応のどちらでも良く、例えば、槽型反応器を用いる回分式、半連続式若しくは連続式のスラリー法、又は管型反応器を用いる連続式の固定床法等が挙げられる。槽型反応器としては、通常、一段又は多段の混合槽が使用される。管型反応器としては、単管又は多数の管を並列に配列した多管式熱交換型の構造を持つものを単一又は複数を直列にさせた固定床反応器があげられる。大規模な工業的操作の場合には、操作性、経済性の観点から、固定床法で実施するのが好ましい。
【0035】
工程(C)における反応は、溶媒を用いて行ってもよい。溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等があげられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等が挙げられる。これらの反応溶媒は単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。反応温度は、通常、100〜500℃であり、好ましくは300〜500℃である。反応圧力は、通常、常圧〜1MPaである。
反応時間は通常、0.1〜10時間である。
【0036】
本発明によって得られる上記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物は、ポリマーの原料、ポリオレフィン用のコモノマー等として有用な化合物であり、特に、4−メチル−1−ペンテンやビニルシクロヘキサンは、耐熱性ポリマーの原料、ポリオレフィン用のコモノマー等として有用な化合物である。
【実施例】
【0037】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、4−メチル−2−ペンタノールおよび1−シクロヘキシルエタノールの転化率、4−メチル−1−ペンテンおよびビニルシクロヘキサンの選択率及び副生物である4−メチル−2−ペンテンおよびエチリデンシクロヘキサンの選択率は、反応供給流量及びガスクロマトグラフィー組成分析値と反応後液流量及びガスクロマトグラフィー組成分析値から求めている。
【0038】
〔実施例1〕
(1)工程(A)
金属製バッチ反応器に、4−メチル−2−ペンタノン(一般式(I))を含む液100重量部に対し、ルテニウム/アルミナ(水素化触媒:ルテニウム5重量部と、アルミナ95重量部とが含有されたもの)が1.5重量部になるように仕込み、純水素ガスを供給しながら、液温度150℃、反応器内圧力3MPa−G条件下、10時間反応させる。得られる反応液は、4−メチル−2−ペンタノールの濃度が99重量%である。
(2)工程(B)
上記(1)で得られた該反応液を静置させ、上澄み液を濾布(ゼータープラス30C、住友スリーエム社製)で濾過することにより、水素化触媒除去液が得られる。得られる水素化触媒除去液は、水素化触媒の濃度が0.0001重量部未満である。
(3)工程(C)
金属製管型反応器(断面積0.71平方センチメートル)に酸化ジルコニウム触媒を66グラム充填し(充填長67センチメートル)、上記(2)で得られた水素化触媒除去液を40グラム/時で供給し、酸化ジルコニウム触媒層の温度を336〜353℃とした。
反応器出口での4−メチル−2−ペンタノールの転化率は88%、4−メチル−1−ペンテンの選択率は82%、副生物である4−メチル−2−ペンテンの選択率は11%であった。
【0039】
〔実施例2〕
(1)工程(A)
金属製バッチ反応器に、1−フェニルエチルアルコール(一般式(II))とアセトフェノン(一般式(I))を含む液100重量部に対し、ルテニウム/アルミナ(水素化触媒:ルテニウム5重量部と、アルミナ95重量部とが含有されたもの)が1.5重量部になるように仕込み、純水素ガスを供給しながら、液温度80℃、反応器内圧力3MPa−G条件下、7時間反応させた後、液温度100℃、反応器内圧力2MPa−Gに変更し、4時間反応させ反応液を得た。得られた反応液は、1−シクロヘキシルエタノールの濃度が94重量%であった。
(2)工程(B)
上記(1)で得られた該反応液を静置させ、上澄み液を濾布(ゼータープラス30C、住友スリーエム社製)で濾過することにより、水素化触媒除去液を得た。得られた水素化触媒除去液は、水素化触媒の濃度が0.0002重量部であった。
(3)工程(C)
金属製管型反応器(断面積4.1平方センチメートル)に酸化ジルコニウム触媒を41グラム充填し(充填長10センチメートル)、上記(2)で得られた水素化触媒除去液を320グラム/時で供給し、酸化ジルコニウム触媒層の温度を376〜398℃とした。
反応器出口での1−シクロヘキシルエタノールの転化率は45%、ビニルシクロヘキサンの選択率は84%、副生物であるエチリデンシクロヘキサンの選択率は6%であった。
【0040】
〔比較例1〕
実施例1(2)において、実施例1(1)で得られる該反応液を静置させ、上澄み液を得る。得られる該上澄み液は、水素化触媒の濃度が0.0018重量部である。実施例1(3)において、実施例1(2)で得られる水素化触媒除去液を40グラム/時で供給し、酸化ジルコニウム触媒層の温度を336〜353℃から337〜354℃とした以外は、実施例1と同様に実施したところ、反応器出口での4−メチル−2−ペンタノールの転化率は86%、4−メチル−1−ペンテンの選択率は75%、副生物である4−メチル−2−ペンテンの選択率は16%であった。
【0041】
〔比較例2〕
実施例2(2)において、実施例2(1)で得られた該反応液を静置させ、上澄み液を得た。得られた該上澄み液は、水素化触媒の濃度が0.0014重量部であった。実施例2(3)において、実施例2(2)で得られた水素化触媒除去液を320グラム/時で供給する代わりに、前記該上澄み液を323グラム/時で供給し、酸化ジルコニウム触媒層の温度を376〜398℃から376〜401℃とした以外は、実施例2と同様に実施したところ、反応器出口での1−シクロヘキシルエタノールの転化率は47%、ビニルシクロヘキサンの選択率は78%、副生物であるエチリデンシクロヘキサンの選択率は12%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A)、下記工程(B)及び下記工程(C)を含む下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物の製造方法。
工程(A):0.1重量部以上の水素化触媒の存在下、下記一般式(I)及び/又は下記一般式(II)で表される化合物と、水素とを反応させて反応液を得る工程(ただし、反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(B):工程(A)で得られた反応液に含まれる水素化触媒が、0.0010重量部以下になるまで水素化触媒を除去して、水素化触媒除去液を得る工程(ただし、工程(A)で得られた反応液の全重量を100重量部とする。)
工程(C):脱水触媒の存在下、工程(B)で得られた水素化触媒除去液から下記一般式(III)で表される二重結合を有する化合物を得る工程



[式中、Rは、炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、芳香環を含む炭化水素基を表す。]



[式中、Rは、アルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルキル基で置換されたアルキル基を表す。]
【請求項2】
一般式(I)のRが炭素原子数2以上の炭化水素基である請求項1に記載の二重結合を有する化合物の製造方法。
【請求項3】
脱水触媒が酸化ジルコニウムである請求項1又は2に記載の二重結合を有する化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−84550(P2011−84550A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130751(P2010−130751)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】