説明

交通制御システムおよび車両制御システム

【課題】渋滞の発生を抑制すること、あるいは渋滞を緩和することの少なくともいずれか一方を可能とする交通制御システムおよび車両制御システムを提供すること。
【解決手段】道路50を走行する車両のうち所定の走行状態で走行する車両101の運転者に対して、道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行う交通制御システム。所定の走行状態とは、例えば、道路における渋滞の原因となる走行状態である。情報提供において、運転者に対して加速あるいは車線変更の少なくともいずれか一方の運転操作を促すようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通制御システムおよび車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発生した渋滞に応じた案内を行う技術が提案されている。特許文献1には、渋滞の要因に応じた案内を行うことができる渋滞案内方法及び車載装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−300771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
渋滞の発生を抑制できることや渋滞を緩和できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、渋滞の発生を抑制すること、あるいは渋滞を緩和することの少なくともいずれか一方を可能とする交通制御システムおよび車両制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の交通制御システムは、道路を走行する車両のうち所定の走行状態で走行する車両の運転者に対して、前記道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行うことを特徴とする。
【0007】
上記交通制御システムにおいて、前記所定の走行状態とは、前記道路における渋滞の原因となる走行状態であることが好ましい。
【0008】
上記交通制御システムにおいて、前記所定の走行状態とは、車群の先頭を走行することであり、前記情報提供とは、前記車群の先頭を走行している先頭車両の運転者に対して、前記先頭車両を先頭とする前記車群が形成されていること、あるいは前記車群の増大を抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報を提供することであることが好ましい。
【0009】
上記交通制御システムにおいて、前記先頭車両の走行速度、前記先頭車両の直前を走行する車両と前記先頭車両との車間、前記車群に含まれる車両の台数の少なくともいずれか一つに基づいて前記情報提供を行うことが好ましい。
【0010】
上記交通制御システムにおいて、前記情報提供において、前記先頭車両の運転者に対して加速あるいは車線変更の少なくともいずれか一方の運転操作を促すことが好ましい。
【0011】
上記交通制御システムにおいて、前記先頭車両の走行速度が小さい場合には、前記先頭車両の走行速度が大きい場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促すことが好ましい。
【0012】
上記交通制御システムにおいて、前記先頭車両の直前を走行する車両と前記先頭車両との車間が大きい場合には、前記直前を走行する車両と前記先頭車両との車間が小さい場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促すことが好ましい。
【0013】
上記交通制御システムにおいて、前記車群に含まれる車両の台数が多い場合には、前記車群に含まれる車両の台数が少ない場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促すことが好ましい。
【0014】
上記交通制御システムにおいて、前記所定の走行状態とは、予め定められた所定速度よりも低速で走行することであり、前記情報提供とは、前記所定速度よりも低速で走行する所定車両の運転者に対して、前記所定車両を先頭とする車群が形成されると予測されること、あるいは前記所定車両を先頭として車群が形成されることを抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報を提供することであることが好ましい。
【0015】
上記交通制御システムにおいて、前記道路における走行速度の低下が生じやすい走行環境の領域あるいは前記走行環境の領域の手前の領域の少なくともいずれか一方において前記情報提供を行うことが好ましい。
【0016】
本発明の車両制御システムは、車両が車群の先頭を走行している場合に前記車群の増大を抑制する前記車両の走行制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる交通制御システムは、道路を走行する車両のうち所定の走行状態で走行する車両の運転者に対して、道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行う。本発明にかかる交通制御システムによれば、所定の走行状態で走行する車両の運転者に対して選択的に渋滞の抑制に関する情報提供を行うことで、渋滞の発生を抑制すること、あるいは渋滞を緩和することの少なくともいずれか一方を可能とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態にかかる交通制御を示す図である。
【図2】図2は、実施形態の交通制御システムを示す図である。
【図3】図3は、第2実施形態の交通制御システムを示す図である。
【図4】図4は、第3実施形態の交通制御システムを示す図である。
【図5】図5は、第3実施形態の交通制御について説明するための図である。
【図6】図6は、第5実施形態の交通制御システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態にかかる交通制御システムおよび車両制御システムにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、交通制御システムに関する。図1は、本発明の実施形態にかかる交通制御を示す図、図2は、本実施形態の交通制御システムを示す図である。
【0021】
本実施形態の交通制御システム1は、道路を走行する車両のうち所定の走行状態で走行する車両の運転者に対して、道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行う。所定の走行状態とは、例えば、道路における渋滞の原因となる走行状態を示す。本実施形態では、車群の先頭を走行することを所定の走行状態とした場合について説明する。具体的には、交通制御システム1は、車群の先頭を走行している先頭車両の運転者に対して、先頭車両を先頭とする車群が形成されていること、あるいは車群の増大を抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報提供を行う。これにより、先頭車両の運転者に自車両が車両の流れを妨げていることを気づかせ、車群の増大を抑制する運転操作を促すことができる。運転者の運転操作によって車群の増大が抑制され、あるいは車群が解消されることで、渋滞の発生を抑制すること、あるいは渋滞を緩和することの少なくともいずれか一方が可能となる。
【0022】
なお、所定の走行状態は、車群の先頭を走行することには限定されない。所定の走行状態は、車両の走行速度、加速度等の自車両の状態や、車間距離や車間時間、相対速度等の他車両との相対関係に関する状態、車群における位置や接近する車群との位置関係等の車群との相対関係に関する状態などに基づいて定めることが可能である。所定の走行状態は、道路における渋滞の原因となる走行状態として定められることが好ましい。なお、渋滞の原因となる走行状態とは、例えば、渋滞の発生原因となりやすい走行状態や既に発生した渋滞を助長しやすい走行状態を示す。
【0023】
図2に示すように、交通制御システム1は、車両システム1−1およびインフラシステム2−1を備える。車両システム1−1は、車速計測装置21、自車位置認識装置22、路車間通信装置23、車両ECU24およびMHI(Human Machine Interface)装置25を有する。
【0024】
車速計測装置21は、自車両の走行速度を計測することができる。車速計測装置21は、例えば、車輪速に基づいて車両の走行速度を計測する。自車位置認識装置22は、自車両の位置を認識するものである。自車位置認識装置22は、例えば、GPS装置と地図データを有するナビゲーションシステムとすることができる。GPS装置は、GPSレシーバ、地磁気センサ、距離センサ、ビーコンセンサ、及びジャイロセンサ等を有している。自車位置認識装置22は、GPS装置から自車両の位置や方位(進行方向)を取得する。
【0025】
地図データは、道路に関する情報(座標、直線路、勾配、カーブ、高速道路、車線数、トンネル、サグ等)を含んでいる。自車位置認識装置22は、GPS装置から取得した自車両の位置に基づいて、自車両が走行している道路に関する情報を地図データから取得することができる。自車位置認識装置22は、例えば、自車両が走行している道路の現在位置に関する情報や、自車両の前方の領域に関する情報を地図データから取得する。路車間通信装置23は、インフラシステム2−1の路車間通信装置13と対応するものであり、車両システム1−1とインフラシステム2−1との間で双方向の通信を行う通信装置である。
【0026】
車両ECU24は、電子制御ユニットである。車両ECU24は、車速計測装置21、自車位置認識装置22および路車間通信装置23と接続されている。車速計測装置21によって計測された走行速度を示す信号は、車両ECU24に出力される。また、自車位置認識装置22によって認識された自車両の位置や方位を示す信号、および地図データから取得した道路に関する情報は、車両ECU24に出力される。車両ECU24は、路車間通信装置23を介してインフラシステム2−1との間で情報を通信する。
【0027】
路車間通信では、車両ECU24は、識別情報、走行情報、通信規格情報等を送信する。識別情報は、送信元の車両IDや送信元車両が所属する車群のIDを含む。走行情報は、現在位置、進行方向(方位)、走行速度、走行加速度、ジャーク、車間距離、車間時間等の自車両の走行に関する測定値情報である。通信規格情報は、予め決められたルールに基づくものであって、挨拶情報や転送情報を示すフラグなどを含む。
【0028】
HMI装置25は、運転者に対する情報提供等を行う装置である。HMI装置25は、車載機器であって、例えば、車室内に設けられたディスプレー装置やスピーカー等を有する。HMI装置25として、既存の装置、例えば、ナビゲーションシステムのディスプレー装置やスピーカー等が流用されてもよい。HMI装置25は、インフラシステム2−1から送信される情報に基づいて運転者に対して情報提供する機能を有する。すなわち、本実施形態の交通制御システム1は、運転者に対して、HMI装置25を介して道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行う。HMI装置25は、音声情報、図形情報、文字情報等によって情報提供を行う。
【0029】
インフラシステム2−1は、交通基盤としての道路側に設置されたシステムである。インフラシステム2−1は、例えば、道路上や道路脇等に配置される。インフラシステム2−1は、交通量計測装置11、インフラ装置12および路車間通信装置13を有する。交通量計測装置11は、道路を走行する車両の交通量を計測することができる。図1に示すように、交通量計測装置11は、道路50上の計測箇所51において交通量を計測する。交通量計測装置11は、計測箇所51を通過する車両の時間あたりの台数、通過速度および車間時間を計測することができる。交通量計測装置11は、車線毎の交通量を計測する。交通量計測装置11によって計測された交通量(台/時間・車線)、通過速度、および車間時間を示す信号は、インフラ装置12に出力される。
【0030】
図1では、道路50は走行車線50aおよび追越車線50bを各1車線有する片側2車線の高速道路である。交通量計測装置11は、走行車線50aおよび追越車線50bのそれぞれにおいて交通量、通過速度および車間時間を計測する。インフラ装置12は、交通量計測装置11から出力される情報に基づいて、車線毎および道路50の合計の交通量、通過速度、および車間時間を取得することができる。以下の説明では、交通制御システム1が高速道路において交通制御を行う場合について説明するが、これには限定されない。交通制御システム1は、高速道路等の自動車専用道路以外の一般道路に適用されてもよい。
【0031】
インフラ装置12は、交通量計測装置11から送られる情報に基づき、計測箇所51を通過する車群100および車群の先頭を走行している車両を判別する。インフラ装置12は、例えば、交通量計測装置11によって計測された車間時間に基づいて車群100を判別する。例えば、1台の車両101と、その車両の直後を走行する車両102との車間時間が、予め定められた所定車間時間よりも短い場合に、車両101と車両102とは同じ車群100を構成する車両であると判断することができる。同様にして、インフラ装置12は、車両102と車両103との車間時間、車両103と車両104との車間時間、車両104と車両105との車間時間がそれぞれ所定車間時間よりも短い場合、車両103,104,105が車両101,102と同一の車群100を構成していると判断することができる。つまり、インフラ装置12は、所定車間時間よりも短い車間時間で前後方向に連なって走行する一群の車両を車群100として認識する。
【0032】
また、インフラ装置12は、車群100の先頭を走行している車両を判別する。インフラ装置12は、例えば、車両101と車両101の直前を走行する車両110との車間時間が、所定車間時間以上である場合に、車両110は車両101と同一の車群100の構成車両ではないと判断する。この場合、インフラ装置12は、車両101が車群100の先頭を走行している車両であると判断する。以下の説明において、車群100の先頭を走行している車両101を「先頭車両101」とも記載する。また、先頭車両101と同一の車群100を構成し、かつ先頭車両101の後方を走行している車両102,103,104,105をまとめて「後続車両100a」とも記載する。
【0033】
インフラ装置12は、車群100を認識すると、車群100の先頭車両101の運転者に対して情報提供を行う。この情報提供は、車両101を先頭とする車群100が形成されていること、あるいは車群100の増大を抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報提供である。車群100は、渋滞を誘発することがある。例えば、車群100が発生すると、車群100に含まれる各車両101,102,103,104,105間の車間距離が詰まりやすい。車間距離が詰まった状態で、車群100内の車両が減速すると、減速ショックウェーブが発生しやすくなる。例えば、先頭車両101が減速すると、後続車両100aにおいて前方の車両から後方の車両に減速が伝播していく。このときに、車間が詰まった状態であると、速度の低下量が増幅しながら後続車両100aの前方から後方に向けて減速が伝播する減速ショックウェーブが発生することがある。発生した車群100を解消したり、車群100の増大を抑制したりすることができれば、減速ショックウェーブ等による渋滞の発生を抑制したり、渋滞を緩和したりするなど道路における渋滞を抑制することが可能となる。
【0034】
本実施形態の交通制御システム1は、車群100の先頭を走行している先頭車両101の運転者に対する情報提供によって車群100の解消や車群100の増大の抑制を図る。ここで、車群100の増大とは、例えば、後方から車群100に追いついた車両が新たに車群100を構成する車両として加わるなど、車群100に含まれる車両の台数が増加することを意味する。また、車群100の解消とは、車群100に含まれる各車両の車間時間の少なくとも一部が所定車間時間以上に増加することを示す。つまり、車群100の解消には、車群100が複数の車群に分離することも含まれる。例えば、先頭車両101と直後の車両102との車間時間が拡大して先頭車両101と後続車両100aとが同一の車群に含まれると判定されない状態となることも車群100の解消に含まれる。
【0035】
インフラ装置12は、運転者に対して提供するための情報を路車間通信によって先頭車両101に送信する。なお、路車間通信における先頭車両101の識別は、交通量計測装置11によって車群100の先頭の車両の通過が計測された時刻と、路車間通信によって取得した車両101が計測箇所51を通過した時刻とに基づいて行うことが可能である。
【0036】
先頭車両101の運転者に対する情報提供は、単に自車両が車群100の先頭となっていることを自覚させるように状況を伝えるものであっても、車群100の増大を抑制する運転操作を運転者に促すものであっても、状況を伝えることに加えて運転操作を促すものであってもよい。例えば、状況を伝える情報提供では、先頭車両101が車群100の先頭となっていることだけでなく、先頭車両101の後方に連なる車両の台数や、車群100が増大していることなどが運転者に伝えられてもよい。なお、車群100が増大しているか否かは、道路50における進行方向の互いに異なる位置においてそれぞれ交通量計測装置11によって交通量を計測することで検出可能である。
【0037】
また、運転操作を伝える情報提供では、加速あるいは車線変更の少なくともいずれか一方の操作を促す情報提供がなされてもよい。加速を促す情報提供では、現在の速度よりも高車速で走行することを運転者に促す。例えば、先頭車両101が走行する車線の区間平均速度を運転者に伝え、この区間平均速度以上の速度での走行を促すことができる。インフラ装置12は、後続車両100aの目標速度を取得している場合、この目標速度以上の速度で走行することを運転者に促すようにしてもよい。例えば、後続車両100aにクルーズコントロール制御を実行中の車両がある場合に、路車間通信によってそのクルーズコントロールの目標速度を取得し、目標速度を先頭車両101の運転者に伝えるようにしてもよい。
【0038】
車線変更を促す情報提供では、現在の車線とは異なる車線への車線変更を運転者に促す。例えば、先頭車両101が追越車線50bを走行している場合には、走行車線50aへの車線変更を促す。
【0039】
なお、インフラ装置12は、車線毎の交通量に基づいて、運転者に促す運転操作の内容を変更するものであってもよい。例えば、車群100が追越車線50b上にある場合に、走行車線50aの交通量が追越車線50bの交通量よりも少なければ先頭車両101に対して走行車線50aへの車線変更を促し、走行車線50aの交通量が追越車線50bの交通量よりも多ければ先頭車両101に対して加速を促すようにしてもよい。このようにした場合、一方の車線に車両が集中することを抑制しつつ車群100の増大の抑制を図ることができる。
【0040】
情報提供を受けた先頭車両101の運転者が、車線変更や加速の操作をすることで、車群100の増大が抑制される。例えば、先頭車両101の車線変更がなされた場合には、それまでの先頭車両101の走行速度による速度の規制がなくなる。これにより、車群100の走行速度が増加し、新たな車両が車群100に加わることが抑制される。また、車群100の走行速度が増加すると、車群100が複数の車群に分離するなど、車群100の解消につながる。
【0041】
また、先頭車両101の運転者が加速操作をした場合には、車群100の走行速度が増加する。これにより、車群100の増大が抑制されたり、車群100が解消したりする。このように情報提供を受けた先頭車両101における運転者の運転操作により、車群100が解消されたり、車群100の増大が抑制されたりする。これにより、車群100に起因する減速の伝播や、減速ショックウェーブが抑制されることで、渋滞の発生が抑制されたり、渋滞が緩和されたりする。なお、加速操作には、アクセル操作だけでなく、ACC(Adaptive Cruise Control)制御等のクルーズコントロール制御における目標速度を高速側に変更するなど、車両の加速を指示する運転者の操作が含まれる。ここで、ACC制御は、例えば、レーダー等により先行車を検出し、先行車に合わせ一定の車間距離を保つように追従走行する追従制御、および、車両の車速が一定車速となるように車両を走行させる定速走行制御を実行するものである。
【0042】
交通制御システム1による先頭車両101の運転者に対する情報提供は、道路50における走行速度の低下が生じやすい走行環境、すなわち速度低下を招きやすい走行環境の領域あるいは当該走行環境の領域の手前の領域の少なくともいずれか一方においてなされることが好ましい。速度低下を招きやすい走行環境とは、例えば、サグ、トンネル、合流などである。サグでは、下り勾配の箇所を通過して上り勾配の箇所を走行するときに走行速度が低下しやすい。また、トンネル手前やトンネル内、合流箇所は、速度低下を招きやすい。ここで、合流には、本線に対して合流路が合流するものだけでなく、本線における車線数の減少なども含まれる。つまり、合流とは、合流前後で道路の交通容量が変化せずに交通量が増加したり、交通量が変化せずに交通容量が減少したりする道路形状を示す。
【0043】
速度低下を招きやすい走行環境の手前の領域において、車群100の先頭車両101の運転者に対する情報提供がなされることで、道路50上の車両が車群100を形成したままで当該走行環境に到達することが抑制される。各車両が車群100のままでなく道路50上を分散して走行することで、サグやトンネル、合流箇所等で減速する車両があったとしても、その減速が後続車両に伝播することが抑制される。つまり、本実施形態の交通制御システム1によれば、渋滞の発生を未然に抑制したり、渋滞を緩和したりすることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態では、車群100および車群100の先頭車両101の判別が、交通量計測装置11の計測結果に基づいてなされたが、これには限定されない。例えば、インフラ装置12は、道路50上の車両をカメラ等によって撮像した画像データに基づいて、車群100や先頭車両101を判別することが可能である。また、プローブカーが車群100および先頭車両101に関する情報をインフラ装置12に知らせるようにしてもよい。
【0045】
また、インフラ装置12は、先頭車両101がボトルネックとして車両の流れを妨げる度合い、すなわちボトルネックとなっている確度に基づいて情報提供を行うようにしてもよい。車両の流れを妨げるとは、例えば、後続車両100aが所望の速度よりも低速での走行を強いられることである。車両の流れを妨げる度合いが高いほど、車群が増大しやすく、車間も詰まりやすい。インフラ装置12は、車両の流れを妨げる度合いが高い場合に先頭車両101の運転者に対して情報提供を行うようにしてもよい。
【0046】
車両の流れを妨げる度合いは、例えば、先頭車両101の走行速度が関係すると考えられる。例えば、車線の平均走行速度に対して、先頭車両101の走行速度が低いと車群が形成されやすく、かつ平均走行速度と先頭車両101の走行速度との乖離が大きいほど、車両の流れを妨げる度合いは大きくなる。また、後続車両100aの運転者が所望する走行速度に対して先頭車両101の走行速度が低いと車群が形成されやすく、かつ後続車両100aにおける所望速度と先頭車両101の走行速度との乖離が大きいほど、車両の流れを妨げる度合いは大きくなる。後続車両100aの運転者が所望する走行速度とは、例えば、ACC制御等のクルーズコントロール制御において運転者によって設定された目標速度である。インフラ装置12は、先頭車両101の走行速度が、平均走行速度や目標速度よりも低速であり、かつ平均走行速度や目標速度と先頭車両101の走行速度との乖離が所定値以上である場合に先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。これにより、ボトルネックとして渋滞の原因となりやすい車両の運転者に対して選択的に情報提供を行うことが可能となる。
【0047】
車両の流れを妨げる度合いは、先頭車両101の走行速度の変化が関係すると考えられる。例えば、先頭車両101の走行速度が低下傾向にある場合には、走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合よりも車両の流れを妨げる度合いが高い。インフラ装置12は、先頭車両101の走行速度が低下傾向にある場合に先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。また、インフラ装置12は、先頭車両101の減速度が一定以上である場合に先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。
【0048】
車両の流れを妨げる度合いは、先頭車両101と直前の車両110との車間から推測することも可能である。車間とは、車間距離や車間時間など、先頭車両101と直前の車両110との相対関係に関する値である。例えば、先頭車両101と直前の車両110との車間距離Lf(図1参照)の大きさや、車間距離Lfの変化は車両の流れを妨げる度合いに対応していると考えられる。インフラ装置12は、車間距離Lfが所定車間距離以上である場合や、車間距離Lfが増加傾向にある場合に、先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。所定車間距離は、例えば、交通量計測装置11によって計測された車間時間の平均値に基づいて決定されることができる。なお、車間距離に代えて、車間時間に基づいて情報提供をするか否かが決定されてもよい。
【0049】
車両の流れを妨げる度合いは、車群100に含まれる車両の台数に反映すると考えられる。インフラ装置12は、車群100に含まれる車両の台数が所定数以上である場合に先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。
【0050】
車両の流れを妨げる度合いは、車群100に含まれる車両の車間に反映すると考えられる。インフラ装置12は、車群100における各車両間の車間、例えば平均車間が所定の車間以下である場合に先頭車両101の運転者に対する情報提供をするようにしてもよい。
【0051】
インフラ装置12は、先頭車両101の走行速度、先頭車両101の走行速度の変化、先頭車両101と直前の車両110との車間、車群100に含まれる車両の台数、車群100における各車両間の車間の少なくとも一つに基づいて車両の流れを妨げる度合いを決定することができる。複数のパラメータに基づいて車両の流れを妨げる度合いを決定する場合、各パラメータに重み付けがなされてもよい。
【0052】
また、先頭車両101が車両の流れを妨げる度合いに応じて、情報提供の内容を変化させるようにしてもよい。例えば、車両の流れを妨げる度合いが高い場合には、妨げる度合いが低い場合よりも先頭車両101の運転者に対して加速や車線変更などの運転操作を強く促すようにしてもよい。
【0053】
なお、インフラ装置12は、情報提供を受けた先頭車両101の運転者が、加速や車線変更の運転操作を行わない場合や、情報提供がされてからも先頭車両101が車群100の先頭を走行し続けている場合には、繰り返し情報提供を行うようにしてもよい。こうした繰り返しの情報提供は、先頭車両101が車両の流れを妨げる度合いが高い場合に限り実行されてもよい。
【0054】
本実施形態では、音声情報、図形情報、文字情報等によって運転者に対する情報提供がなされたが、情報提供の方法はこれには限定されない。例えば、運転者によって操作される操作部材を介して運転者に対する情報提供がなされてもよい。例えば、アクチュエータによってステアリングにトルクを与えてわずかに振動させたり、ペダルにペダル反力を与えたりすることによって、運転者の注意を喚起するようにしてもよい。
【0055】
運転者に対して情報提供を行う装置は、車室内の装置には限定されない。例えば、路側に設置した表示装置によって、先頭車両101の運転者に対して選択的に情報提供を行うようにしてもよい。先頭車両101が表示装置を視認しやすい位置を走行するときに、車群の増大を抑制する操作を促す情報を表示装置に表示させるようにすることができる。
【0056】
運転者に対する情報提供の内容は、本実施形態で例示したものには限定されない。例えば、先頭車両101の運転者に対して、単に後続車両100aのACC制御における目標速度や道路50の区間平均速度を情報提供するようにしてもよい。これらの速度を情報提供するだけでも、低速で走行している先頭車両101の運転者に対して自車両がボトルネックとなっていることを自覚させることができる。
【0057】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態において、さらに、道路50の交通量に応じて先頭車両101の運転者に対する情報提供を行うか否かが決定されてもよい。例えば、道路50の交通量が一定以上である条件、あるいは道路50の交通量が増加傾向にある条件の少なくともいずれか一方が成立する場合に情報提供を行うようにしてもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図3を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0059】
本実施形態では、自車両が車群の先頭車両であることやボトルネックとなっていることを車両システム1−2が自律的に判断する点で上記第1実施形態と異なる。図3は、本実施形態の交通制御システム2を示す図である。図3に示すように、車両システム1−2は、上記第1実施形態の車両システム1−1が有する装置に加えて、車間距離計測装置26を有する。車間距離計測装置26は、自車両の直前を走行する車両と自車両との車間距離および相対車速を計測することができる。また、車間距離計測装置26は、自車両の直後を走行する車両と自車両との車間距離および相対車速を計測することができる。車間距離計測装置26は、例えば、車両前部および後部にそれぞれ搭載されたレーザーレーダーセンサ又はミリ波レーダーセンサなどのセンサとすることができる。車間距離計測装置26によって計測された車間距離および相対車速を示す信号は、車両ECU24に出力される。
【0060】
車両ECU24は、例えば、自車両の前後の車間距離に基づいて自車両が車群の先頭車両であることを判断することができる。図1を参照して説明すると、先頭車両101の車両ECU24は、直前を走行する車両110との車間距離(以下、「前方車間距離」と記載する。)Lf、および直後を走行する車両102との車間距離(以下、「後方車間距離」と記載する。)Lrに基づいて自車両が車群100の先頭車両であることを判断することが可能である。前方車間距離Lfが後方車間距離Lrよりも大きい場合、自車両が車群100の先頭車両101であると判定可能である。車両ECU24は、更に直前の車両との車間が大きく開いている場合に自車両が車群100の先頭車両101であると判定してもよい。また、車間距離に代えて、車間時間に基づいて自車両が車群100の先頭車両101であると判定されてもよい。
【0061】
車両ECU24は、更に、自車両がボトルネックとなっているか否かを判断することができる。例えば、サグを通過するときを例に説明すると、車両ECU24は、前方車間距離Lfが後方車間距離Lrよりも大きい条件(第一条件)、自車両の平均速度が道路50を走行する車両の区間平均速度よりも低速である条件(第二条件)あるいはサグポイントを通過してからの速度低下度合いが所定の度合い以上である条件(第三条件)の少なくとも一つの条件が成立する場合に自車両がボトルネックとなっていると判断する。区間平均速度は、例えば交通量計測装置11によって計測された各車両の通過速度に基づく。区間平均速度は、路車間通信によってインフラシステム2−1から車両システム1−2に対して送信される。なお、区間平均速度は、インフラシステム2−1から取得する値に代えて、自車両の周辺を走行する車両の速度の検出結果に基づくものとされてもよい。また、速度低下度合いは、例えば自車両の速度の低下量や低下速度である。
【0062】
車両ECU24は、自車両が車群100の先頭車両101であると判断した場合や、自車両がボトルネックとなっていると判断した場合にHMI装置25を介して運転者に対して情報提供を行う。また、自車両がボトルネックとして車両の流れを妨げる度合いに応じて情報提供を行うか否かを決定したり、情報提供の内容を異ならせたりしてもよい。例えば、上記第一条件から第三条件における成立する条件数が多いほど車両の流れを妨げる度合いが高いと判断することが可能である。また、車両の流れを妨げる度合いの決定において、上記第一条件から第三条件にそれぞれ重み付けがなされてもよい。運転者に対してなされる情報提供の内容は、例えば、上記第1実施形態の情報提供と同様のものとすることができる。
【0063】
本実施形態の車両システム1−2は、インフラシステム2−1を省略して単独で交通制御システム2として機能することが可能である。
【0064】
なお、自車両がボトルネックとなっているか否かを判断する方法は、上記第一条件〜第三条件に示されるものには限定されない。例えば、後方から自車両に接近して来た車両と自車両との速度差に基づいて自車両が車両の流れを妨げている度合いが推定されてもよい。
【0065】
(第3実施形態)
図4および図5を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
本実施形態では、後続車両100aから直接的にあるいは間接的に車群100の先頭車両101に対する情報提供がなされる点で上記各実施形態と異なる。図4は、本実施形態の交通制御システム3を示す図、図5は、本実施形態の交通制御について説明するための図である。図4に示すように、車両システム1−3は、上記第2実施形態の車両システム1−2が有する装置に加えて、車車間通信装置27を有する。車車間通信装置27は、車車間通信装置27を搭載した車両間で双方向の通信を行う通信装置である。
【0067】
車車間通信では、識別情報、走行情報、制御目標量情報、ドライバ操作情報、車両スペック情報、通信規格情報、環境情報を含む各種情報を他車両に向けて送信することができる。識別情報は、送信元の車両IDや送信元車両が所属する車群のIDを含む。走行情報は、現在位置、進行方向(方位)、走行速度、走行加速度、ジャーク、車間距離、車間時間等の自車両の走行に関する測定値情報である。制御目標量情報は、車載機器が車両を制御する際の目標値・入力値・制御指令値等であって、目標速度、目標加速度、目標ジャーク、目標方向(方位)、目標車間時間、目標車間距離を含む。
【0068】
ドライバ操作情報は、運転者から入力操作された操作量や入力情報であって、アクセル操作量、ブレーキ操作量(踏力やストローク)、ウィンカ操作(操作の有無や操作方向)、舵角、ブレーキランプのON/OFF等を含む。車両スペック情報は、車重、最大ブレーキ力、最大加速力、最大ジャーク、各アクチュエータ(ブレーキ、アクセル、シフト等)の反応速度や時定数を含む。通信規格情報は、予め決められたルールに基づくものであって、挨拶情報や転送情報を示すフラグなどを含む。環境情報は、走行環境に関する情報であって、路面情報(例えばμ、勾配、温度、ウェット/ドライ/凍結、アスファルト/未舗装)、風速や風向などの情報を含む。
【0069】
ここでは、図5に示す車群100において先頭車両101および先頭車両101の直後を走行する車両102にそれぞれ車両システム1−3が搭載されている場合を例に説明する。車両102は、先頭車両101がボトルネックとなっていることや、車群100の増大を抑制する運転操作を行って欲しいことなどを車車間通信によって先頭車両101に送信する。
【0070】
先頭車両101がボトルネックとなっていることは、例えば、先頭車両101の走行速度が道路50における区間平均速度よりも低速である条件や、先頭車両101の走行速度が低下している条件などが成立していることによって判断することができる。また、先頭車両101の走行速度が車両102の目標速度、例えばクルーズコントロール制御の目標速度よりも低速である条件が成立する場合に先頭車両101がボトルネックとなっていると判定されてもよい。
【0071】
車両102の車両ECU24は、先頭車両101がボトルネックとなっていると判断できる条件が成立している場合、先頭車両101に対して先頭車両101がボトルネックとなっていること、あるいは車群100の増大を抑制する運転操作を行ってほしいことの少なくともいずれか一方を示す情報を先頭車両101に送信する。車両102からこの情報を受信した先頭車両101の車両ECU24は、HMI装置25によって自車両の運転者に対して情報提供を行う。なお、車両102の車両ECU24は、先頭車両101が車両の流れを妨げる度合いを算出し、この度合いが高い場合に先頭車両101に対して運転者への情報提供を依頼するようにしてもよい。
【0072】
情報提供を受けた運転者によって、先頭車両101の加速操作や車線変更の操作がなされると、車群100の増大が抑制される。また、車群100が分離するなど、車群100が解消される効果が期待できる。
【0073】
なお、先頭車両101の前方車間距離Lfが車車間通信によって先頭車両101から車両102に送信されている場合には、車両102は、先頭車両101が車群100の先頭を走行しているか否かを判断することができる。
【0074】
本実施形態では、車車間通信によって車両102から先頭車両101の運転者に対して情報提供がなされたが、これに代えて、インフラシステム2−1を介して車両102から先頭車両101の運転者に情報提供がなされてもよい。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態については、上記各実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0076】
本実施形態では、現在は車群の先頭車両となっていないがいずれ車群の先頭車両となると予測される車両に対して情報提供を行う点が上記各実施形態と異なる。本実施形態の交通制御は、例えば上記第1実施形態の交通制御システム1において実行することが可能である。
【0077】
インフラ装置12は、道路50を走行する車両のうち、低速で走行している車両(以下、「所定車両」と記載する。)の運転者に対して情報提供を行う。ここで送信される情報は、所定車両を先頭とする車群が形成されると予測されること、あるいは所定車両を先頭として車群が形成されることを抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報である。
【0078】
インフラ装置12は、例えば、予め定められた所定速度よりも低速で走行している車両を所定車両とする。本実施形態における所定の走行状態とは、所定速度よりも低速で走行することである。所定速度は、例えば、それぞれの車線における区間平均速度とすることができる。区間平均速度よりも低速で走行している車両は、いずれ他の車両に追いつかれて車群の先頭車両になると予測できるためである。なお、所定速度は、同一車線を後方から走行してくる車両の走行速度とされてもよい。例えば、既に計測箇所51を通過した車両の走行速度が、その後に計測箇所51を通過した車両の走行速度よりも低速である場合に、先に通過した車両を所定車両とすることができる。また、所定速度は、同一車線を後方から走行してくる車群の走行速度とされてもよい。車群の走行速度は、例えば、その車群の先頭車両の走行速度で代表させてもよい。低速で走行している車両に後方から車群が追いつくと、先頭車両の減速により車群内に減速の伝播や減速ショックウェーブが発生しやすい。このため、車群の接近を所定車両の運転者に知らせたり、所定車両の運転者に加速や車線変更の操作を促したりすることは、渋滞の発生を抑制する上で効果的である。
【0079】
情報提供を受けた所定車両の運転者が、加速操作や車線変更の操作を実行することで、所定車両が先頭となって車群が形成されることが抑制される。また、所定車両に後方から車群が追いつくことによる渋滞の発生等が抑制される。よって、本実施形態によれば、車群の発生や渋滞の発生等が未然に抑制されるという利点がある。
【0080】
(第5実施形態)
図6を参照して、第5実施形態について説明する。第5実施形態については、上記各実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0081】
本実施形態では、先頭車両がインフラ装置12等から情報提供を受けた場合に、車両システム1−4によって車群の増大を抑制する自車両の走行制御が行われる点が上記各実施形態と異なる。図6は、本実施形態の交通制御システム4を示す図である。図6に示すように、車両システム1−4は、上記第1実施形態の車両システム1−1が有する装置に加えて車両制御装置28を有する。本実施形態の車両システム1−4は、車両制御システムとして機能する。
【0082】
車両制御装置28は、車両の走行状態を制御する装置であり、エンジン、ブレーキ、自動変速機、操舵装置等の制御を行う。例えば、自車両を加速させる場合、車両ECU24は、目標の走行速度や加速度を制御目標として車両制御装置28に指示する。また、自車両を車線変更させる場合、車両ECU24は、車両制御装置28に対して変更先の車線を指示する。車両制御装置28は、車両ECU24の指示に従って自車両の加速や車線変更を行うことができる。
【0083】
車両ECU24は、インフラ装置12や後続車両100aから自車両が車群100の先頭車両であることを示す情報や、自車両がボトルネックとなっていることを示す情報や、車群の増大を抑制する操作を促す情報を受信した場合、車両制御装置28に指示して自車両の加速あるいは自車両の車線変更を実行することができる。ここで、受信した情報に基づく車両の走行制御は、運転者の許可を得ている場合に限り実行するようにしてもよい。車両ECU24は、例えば、ACC制御等のクルーズコントロール制御を実行中であって、かつ車群の増大を抑制する走行制御が運転者に許可されている場合に、受信した情報に基づいて加速や車線変更の走行制御を実行する。
【0084】
加速あるいは車線変更のいずれを実行するかは、例えば、運転者によって選択されるようにしてもよく、予め定められた方法により選択されてもよい。運転者による選択では、加速あるいは車線変更のいずれを優先するかを予め運転者に設定させるようにしても、制御の開始時に毎回運転者に対して選択を促すようにしてもよい。また、車両ECU24が加速あるいは車線変更の選択を行う方法としては、例えば、各車線の交通量に基づいて選択する方法が挙げられる。例えば、自車線の交通量が隣接する車線の交通量よりも多い場合には、隣接する車線への車線変更を選択するようにしてもよい。
【0085】
車両ECU24は、自車両がボトルネックとして車両の流れを妨げる度合いに応じて走行制御の目標値を可変としてもよい。例えば、流れを妨げる度合いが高い場合には低い場合よりも目標速度を高車速としたり、追越車線からより大きく離れる側の車線に車線変更したりするようにしてもよい。流れを妨げる度合いは、インフラ装置12によって算出された値を車両ECU24が取得するようにしても、車両ECU24が算出するようにしてもよい。例えば、車両ECU24が、上記第2実施形態と同様に自車両が車群の先頭車両であることやボトルネックとなっていることを自律的に判断する場合、上記第一条件から第三条件において成立する条件数が多いほど流れを妨げる度合いが高いと判断することができる。
【0086】
制御の介入度合いを低減する観点から、自車両がボトルネックとして車両の流れを妨げる度合いが高い場合に限り、車群の増大を抑制する車両制御が行われるようにされてもよい。例えば、自車両が車両の流れを妨げる度合いが低い場合にはHMI装置25によって運転者に対する情報提供を行うに留めるようにし、流れを妨げる度合いが高い場合には車両制御装置28による車両制御を行うようにしてもよい。
【0087】
本実施形態によれば、車両制御装置28によって車群の増大を抑制する走行制御がなされることで、車群の増大がより確実に抑制される。また、インフラ装置12が交通状況に応じて最適な走行状態(走行すべき車線や目標の走行速度)を車群の先頭車両に指示するようにすれば、道路50の車両の流れをコントロールすることが可能となる。
【0088】
なお、車両システム1−4において、自車両が車群の先頭車両であるか否かを自律的に判断するようにすれば、車両システム1−4が単独で渋滞の発生を抑制すること、あるいは渋滞を緩和することの少なくともいずれか一方を可能とすることができる。
【0089】
上記の各実施形態において開示された内容は、適宜組み合わせて実行されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明にかかる交通制御システムおよび車両制御システムは、渋滞の発生を抑制したり渋滞を緩和したりするのに適している。
【符号の説明】
【0091】
1−1,1−2,1−3,1−4 車両システム
2−1 インフラシステム
1,2,3,4 交通制御システム
11 交通量計測装置
12 インフラ装置
13,23 路車間通信装置
24 車両ECU
25 HMI装置
50 道路
100 車群
100a 後続車両
101 先頭車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両のうち所定の走行状態で走行する車両の運転者に対して、前記道路における渋滞の抑制に関する情報提供を行う
ことを特徴とする交通制御システム。
【請求項2】
前記所定の走行状態とは、前記道路における渋滞の原因となる走行状態である
請求項1に記載の交通制御システム。
【請求項3】
前記所定の走行状態とは、車群の先頭を走行することであり、
前記情報提供とは、前記車群の先頭を走行している先頭車両の運転者に対して、前記先頭車両を先頭とする前記車群が形成されていること、あるいは前記車群の増大を抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報を提供することである
請求項1または2に記載の交通制御システム。
【請求項4】
前記先頭車両の走行速度、前記先頭車両の直前を走行する車両と前記先頭車両との車間、前記車群に含まれる車両の台数の少なくともいずれか一つに基づいて前記情報提供を行う
請求項3に記載の交通制御システム。
【請求項5】
前記情報提供において、前記先頭車両の運転者に対して加速あるいは車線変更の少なくともいずれか一方の運転操作を促す
請求項3または4に記載の交通制御システム。
【請求項6】
前記先頭車両の走行速度が小さい場合には、前記先頭車両の走行速度が大きい場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促す
請求項5に記載の交通制御システム。
【請求項7】
前記先頭車両の直前を走行する車両と前記先頭車両との車間が大きい場合には、前記直前を走行する車両と前記先頭車両との車間が小さい場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促す
請求項5または6に記載の交通制御システム。
【請求項8】
前記車群に含まれる車両の台数が多い場合には、前記車群に含まれる車両の台数が少ない場合よりも前記先頭車両の運転者に対して前記運転操作を強く促す
請求項5から7のいずれか1項に記載の交通制御システム。
【請求項9】
前記所定の走行状態とは、予め定められた所定速度よりも低速で走行することであり、
前記情報提供とは、前記所定速度よりも低速で走行する所定車両の運転者に対して、前記所定車両を先頭とする車群が形成されると予測されること、あるいは前記所定車両を先頭として車群が形成されることを抑制する運転操作の少なくともいずれか一方に関する情報を提供することである
請求項1または2に記載の交通制御システム。
【請求項10】
前記道路における走行速度の低下が生じやすい走行環境の領域あるいは前記走行環境の領域の手前の領域の少なくともいずれか一方において前記情報提供を行う
請求項1から9のいずれか1項に記載の交通制御システム。
【請求項11】
車両が車群の先頭を走行している場合に前記車群の増大を抑制する前記車両の走行制御を行う
ことを特徴とする車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43094(P2012−43094A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182319(P2010−182319)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】