説明

人の認知能力を監視するシステム及び方法

【課題】遠隔に位置する人の認知能力及びその指標を非侵襲的に評価するツールを医師に提供する。
【解決手段】本書では、遠隔に位置する人54の健康を監視するシステム及び方法を開示する。このシステムは、少なくとも1台の電子装置56を含んでいる。電子装置56は、第一のセンサ、プロセッサ82及び送信器86を含んでいる。システムはまた、少なくとも1台の電子装置56からデータを受け取って人の健康の評価を発生する遠隔監視ステーション64を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、健康監視の分野に関する。さらに具体的には、本開示は、人の認知能力を監視するための人に対する遠隔監視に関する。
【背景技術】
【0002】
西欧文明諸国の人間は、医学の進歩及び予防医学に対する関心の高まりのため長寿化している。例えば、米国在住の高齢者数は増大しており、ベビー・ブーマー世代の高齢化に伴って米国の高齢者数は今後数十年にわたって著しく増大すると見られる。加えて、様々な精神的障碍及び身体的障碍に対する意識及び理解の高まりから、精神的能力及び/又は身体的能力は低下しているが独居している人々の数が増大している。
【0003】
自宅に安全に心配なく住まうことについて不安を覚える独居高齢者及び障碍者は増加しつつある。独居高齢者及び障碍者にとっては、怪我をしたり動けなくなったりしたときに助けを求めることができないことへの不安が高まる。この不安は多くの場合に、独居高齢者及び/又は障碍者から離れて暮らしている家族も共有している。
【0004】
現在、独居高齢者及び障碍者が抱える不安、並びに家族が抱える不安は、幾つかの手段によって対処されている。不安を和らげる一つの方法は、介護者による頻繁な自宅訪問によるものである。かかる訪問は侵入性で時間が掛かり、また多くの場合に不都合であったり喜ばれなかったりする。もう一つの方法は、高齢者又は障碍者が家を出てさらに十分に健康を監視してもらえる可能な施設に入居するものである。しかしながら、この方法は当該高齢者又は障碍者の自立を奪うものであり、費用も高く、多くの場合に歓迎されない。高齢者又は障碍者を監視するもう一つの方法は、自宅にいる人に対する技術的支援又は監視によるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】米国特許第7154399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自宅にいる人を支援するかかる技術的システムとして、個人用緊急応答システムがある。これらのシステムでは、高齢者又は障碍者個人が腕時計型装置、ペンダント型装置又は他の類似の装置を着用し、転倒のような緊急発生時にボタンを押す。ボタンを押すと警報信号が起動されて中央監視施設へ送信され、この施設が警報信号に応答することにより支援を与えると共にこの個人を呼び出して問題を識別する。この施設はまた、状況の必要に応じて、血縁者、近隣の人又は救急隊のような予め決められた連絡先一覧への緊急連絡を開始することができる。有用な業務ではあるが、これらのシステムは、個人が緊急ボタンを押す能力があるときに生ずる問題を識別するに過ぎない。
【0007】
幾つかの公知の在宅監視システムは、例えば「日中」及び「夜間」の境界を任意に選択し、「日中」時間に予め決められた時間量にわたって活動が見られない場合に警報を送ることにより、屋内での異常に長い「静寂時間」のような異例の活動を検出することを試みている。これら公知の在宅監視システムは、居住者が在宅しているか外出しているかを示すために押すことのできるボタンを居住者に提供する。かかる公知のシステムはしばしば、居住者の実際の活動パターンを正確に反映することができない。さらに、在宅しているか外出しているかを示す居住者の責任能力がしばしば不十分であり、かかる公知のシステムでは偽警報率が高く、また感度も低い。
【0008】
以上に述べたシステムは、緊急事態に応答するために人を監視する能力を提供することができるが、これらのシステムは、かかる監視システムの具現化形態から人の付加的な診断情報を何ら収集することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本書では、所定位置の少なくとも一つのセンサを用いて人を監視するシステム及び方法の両方を開示する。
【0010】
本システムの一実施形態では、システムは、少なくとも1台の電子装置と、遠隔監視ステーションとを含んでおり、遠隔監視ステーションは、少なくとも1台の電子装置からデータを受け取り、データを記憶して、健康評価を発生するためにデータを解析する。本実施形態では、電子装置は、当該電子装置に付設されている第一のセンサを含んでいてよく、このセンサは、人と電子装置との間の相互作用を示す第一の信号を発生する。加えて、この電子装置の実施形態は、センサに接続されており、センサから第一の信号を受け取って、電子装置の人の利用を示すデータを発生するプロセッサを含み得る。さらに、電子装置は、プロセッサからデータを受け取って、このデータで符号化されたデータ信号を発生する送信器を含み得る。
【0011】
また、本書では、人の認知能力を監視して評価する方法の一実施形態を開示する。一実施形態では、少なくとも1台の電気製品を人の住宅に分配する。電気製品は、人の電気製品との相互作用を感知して相互作用データを送信するサーキットリを含み得る。この方法の実施形態はさらに、相互作用データを受け取って、人の電気製品との相互作用を表わす第一の統計値を発生するために相互作用データを解析するステップを含み得る。最後に、この方法の実施形態は、第一の統計値に基づいて患者の認知能力を評価するステップを含み得る。
【0012】
これらの利点及び特徴並びに他の利点及び特徴は、添付図面と共に掲げられている以下の詳細な開示からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】人の活動を遠隔監視するシステムの一実施形態の模式図である。
【図2】遠隔に位置する人の認知能力を監視するシステムの一実施形態の模式図である。
【図3】本書に開示するシステム又は方法の一実施形態と共に用いられ得る電気製品の一実施形態を示す図である。
【図4】本書に開示する方法の一実施形態でのステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、住居12の全体に分配された1又は複数の活動センサ14を含む活動監視システム10を示す。活動センサ14は、無線式又は有線式の通信手法を介して通信中継器18へ送信され得る通信信号16を発生する。
【0015】
センサ14は、扉、戸棚、電気製品と接続して配置された運動センサ、又は住居12にいる人が行なう活動に関するデータを収集して伝達するのに適したその他任意のセンサ若しくはセンサ位置を含み得る。他の適当なセンサ14としては、事故センサ及び/又は警備センサ等がある。
【0016】
センサ14の1又は複数が異例の出来事を検出した場合には、電話連絡等を介して住居の外部の位置から住居にいる患者と連絡を取ることにより住居12における介入を行なうことができる。代替的には、介護者38、又は緊急応答職員、血縁者若しくは後見人のような他の適当な人物による訪問を開始してもよい。
【0017】
通信中継器18は、例えば有線電話、無線電話、双方向無線電話器、ポケット・ベル、ケーブル・テレビ、インターネット、又はその他任意の無線通信プラットフォームのような適当な有線式又は無線式の通信プラットフォーム24を介して遠隔監視センター22へデータを含むデータ信号20を送ることにより、センサ14から収集されたセンサ・データすなわちデータ点を伝達する。選択された通信プラットフォーム24に応じて、データ信号20は、近実時間で送られてもよいし、不連続な間隔、規則的な間隔又は不規則な間隔で送られてもよい。例えばデータ信号20は、無線電話、双方向無線電話器、ポケット・ベル、ケーブル・テレビ、インターネット又はその他任意の無線通信プラットフォームを介して近実時間で送られ得る。有線電話通信プラットフォームの場合には、データ信号20はバッファリングされて、様々な時間間隔で送信され得る。
【0018】
住居12から遠隔に配置されている遠隔監視ステーション22は、データベース42、プログラム可能な事象検出器26、及び状態報告発生器28を含んでいる。データベース42は、信号20を介して伝達されたセンサ・データの収集装置となる。介護者38が状態報告を要請したら、センサ・データはデータベース24から状態報告発生器28へ転送される。状態報告発生器28は、介護者38のコンピュータ・ワークステーション32に状態信号30を伝達する。状態信号30は、幾つかの実施形態では近実時間であってよく、すなわち3分間まで及び3分間を超えて殆ど瞬時と言える範囲での任意の位置への信号の伝送を含む。例えば双方向ポケット・ベル通信プラットフォーム24の場合には、通信に要する時間量は2分〜3分間であり得る。状態報告発生器28は、例えば10分間毎のような一定間隔で各々の住居12についての報告を更新するようにプログラムされ得る。状態信号30は、状態報告発生器28によって発生される報告を含んでいてよい。報告の書式及び内容は、介護者38の要請に依存し得る。尚、コンピュータ・ワークステーション32を介するのではなく、代替的に携帯情報端末(PDA)又は他のスマート装置と信号30をやり取りし得ることを認められたい。
【0019】
介護者38はまた、住居12で生じた場合に事象と看做されるような幾つかの活動を選択することができる。事象は一般的には、状態遷移(一つの状態から他の状態への遷移、例えば活動から静寂への遷移等)のように、介護者38が評価したがるであろう活動又は任意の重要な遷移発生を含んでいる。例えば人の起床時間、異例に長い静寂若しくは非活動時間、又は玄関扉の利用は、重要な活動又は状態遷移発生と看做され得る。介護者38は、信号34を介して遠隔監視センター22に対し事象を構成するもののパラメータを伝達する。介護者38は事象を構成するものを定義する能力は与えられない場合もあるが、予め定義されている活動の集合から事象を構成する活動又は動作を選択することは許されていてよい。さらに、各実施形態では、介護者38は、住居12にいる患者の正常な活動に合致する事象を構成設定するパラメータを設定することができる。例えば介護者38は、例えば「起床」を構成しているものを定義することはないが、何時になったら「起床」が遅いと看做されるかを定義することはできる。センサ・データは、監視センター22において記憶されて処理される。データが事象の発生を示していたら、例えば有線電話若しくは無線電話、PDA、スマート装置、双方向無線電話器、電子メール、又は例えばポップ・アップ式通知フォーマット等を介した他のインターネット支援式通信媒体のような任意の適当な通信媒体を介して介護者38に対し信号36を送ることができる。すると、介護者38に、住居12に在宅している人との連絡路40を開設する機会が与えられる。連絡路40は有線式又は無線式の電話線、及びインターネット・ブラウザ(すなわち電子メール又は他のインターネット方式通信ツール)、ケーブル・テレビ、PDA、又は他のスマート装置を介したものであってよい。代替的には、連絡路40は、介護者38又は他の適当な人物による人への訪問であってもよい。
【0020】
活動監視システム10は、活動センサ14を利用して、住居12内にいる人の活動を監視する。介護者38へ送られる規則的な状態信号30に加えて、遠隔監視ステーション22のプログラム可能な事象検出器26もまた、データベース42に記憶された患者データを解析して、異常な活動が検出されたときに介護者38に警報を送る信号36が発生されるようにしている。
【0021】
このように、上で開示した活動監視システム10は、人の活動を監視して住居12から遠隔に位置する介護者38に時宜を得た警報を与えることのできる実効的なシステムを提供する。尚、上の記載では住居等の用語を用いているが、かかる用法は患者の任意の形式の住宅を包含するものであって、単一家族構造に限定されている訳ではないことを特記しておく。このようなものとして、住居との用語の利用はまた、分譲マンション若しくは賃貸マンション、コーポラティブ・ハウス若しくは他の多人数居住構成、又は人が居住している介護施設の1若しくは複数の居室を包含し得る。
【0022】
活動監視システム10は、患者の介護又は患者への付加的な連絡が必要とされるような緊急の場合の時宜を得た通報を介護者38に提供するものであるが、監視システムを用いて独居者の精神状態又は認知状態を監視して判定することを可能にすることも望ましい。図2は、認知能力監視システム50の一実施形態を示す。監視システム50は、人54の住宅52を含んでいる。尚、上と同様に、住宅52は本書では単一家族向け住宅に限定されている訳ではなく、単一家族、賃貸マンション若しくは分譲マンション、コーポラティブ・ハウス若しくはグループ・ホーム、又は患者54が居住することのできる介護施設の居室等を含めた任意の形式の居宅を包含する広い意味に解釈されるものとする。
【0023】
住宅52は、住宅52の全体に分配された複数の電子装置56を含み得る。電子装置56は幾つかの実施形態では、典型的な住宅に広く見受けられるような電気製品を含む。電子装置56の範囲内に含まれると看做され得る非限定的な例示的な電気製品の一覧としては、コンロ、コーヒー・ポット、電子レンジ、冷蔵庫、食器洗い器及び/又は乾燥器等がある。他の電子装置56としては、テレビ又はラジオ等のものがある。
【0024】
電子装置56は各々、電子装置56の人54による利用に関するデータを含むデータ信号58を発生する。このことについては後にあらためて詳述する。データ信号58は、システム50の具現化形態に最適なように有線接続又は無線接続を介して送信され得る。データ信号58は、住宅52と関連した任意の場所に位置する通信中継器60によって受信され且つ/又は処理される。通信中継器60は、電子装置56の各々の中心位置に配置されていてもよいし、データの送信を容易にする等のために住宅52内の1箇所に配置されていてもよい。通信中継器60は、電子装置56からデータ信号58を受け取り、データを処理して、合成データ信号62を介して遠隔監視ステーション64にデータを送信する。
【0025】
幾つかの実施形態では、通信中継器60は受け取ったデータ信号58に対し、受け取ったデータ信号58をフィルタ処理し且つ/又はディジタル化すると共に合成データ信号62を生成する信号処理を施してもよい。代替的には、通信中継器60は単に、データ信号58を合成して合成データ信号62を形成してもよい。他の場合には、通信中継器60は受け取ったデータ信号58を多重化して合成データ信号62として送信してもよい。
【0026】
代替的な実施形態では、データ信号58は遠隔監視ステーション64へ直接送信される。この手法は、介護施設又は生活支援施設等のように遠隔監視ステーション64が住宅52に十分に近接して位置しているときに用いられてよく、又はデータ信号58が電子装置56からインターネットによるデータ接続を用いて送信される場合に用いられてもよい。
【0027】
一旦、合成データ信号62が遠隔監視ステーション64によって受領されたら、合成データ信号62からのデータを処理前(raw)電子装置データのデータベース66に記憶させる。処理前電子装置データは、評価モジュール68によって処理され得るようになる時刻までデータベース66に記憶される。
【0028】
評価モジュール68は、データベース66に記憶されている電子装置56からのデータを処理する。評価モジュール68は最初に、電子装置56の各々の人54による利用の基準判定を展開するために受け取った信号を処理する。基準は、患者による電子装置の標準的な又は通常の利用を識別するものとして用いられ、典型的には、1日、1週、1ヶ月又は複数月のような時間にわたって収集されたデータを解析することにより達成される。この基準判定は、評価履歴70のデータベースに記録される。評価履歴70のデータベースは、基準的又は日常的な電子装置の利用を、評価モジュール68によって決定された患者の電子装置利用の新たに導かれた評価に対して後に比較することを可能にする。このように、異なる時刻に行なわれた評価の間での比較から、人の認知能力のあらゆる減退に関する情報を得ることができる。次いで、これらの判定を監視ステーション64から患者54の介護及び監視を担当している医師のコンピュータ・ワークステーション72へ報告する。
【0029】
ここで、電子装置の人の利用を表わすデータ信号58について、図3に関してさらに詳細に説明する。同図は、本書に開示するシステムによる電子装置の実施形態の一例を示す。図3に示す実施形態では、電子装置56は電子レンジ74である。電子レンジ74はユーザ・インタフェイス76を含んでおり、ユーザ・インタフェイス76はさらに、表示器78と、複数のボタン及び/又は制御部80とを含んでいる。人は、自分が任意の電子レンジを動作させるような通常の態様で電子レンジ74を動作させる。人は、制御部80を用いてエネルギ・レベル及び調理時間のような典型的な命令を入力して電子レンジ機能をプログラムする。すると、人は、入力された機能の出力を表示器78において確認することができる。
【0030】
ここで開示される電子レンジ74は、ユーザ・インタフェイス76からの入力84を受け取るプロセッサ82をさらに含んでいる点で標準的な電子レンジとは異なる。ユーザ・インタフェイスからの入力84は、電子レンジ74を動作させるのに必要とされる入力を超えるものであり、ユーザ・インタフェイス76が人によって操作される方法の指標を含んでいる。これらの入力84は、電子レンジ74が用いられている日中の時刻及び人の利用時に作動された特定のボタン又は制御部80に関する情報を含み得る。入力84に含まれ得る制御部80の人の利用に関する情報は、制御部の各々の選択/作動の順序、及び/又は制御部80の各々についての人の選択の間での遅延タイミングを含み得る。これらの入力84の全てがプロセッサ82へ送られて、プロセッサ82は入力84をさらに処理してもよいし、データ信号88を発生する送信器86へ入力84を直接送り付けてもよい。
【0031】
次に、電子レンジ74は、圧力センサ89又は活動センサ90のような付加的なセンサを含んでいてもよい。これら付加的なセンサを用いて、電子レンジ74の人による実際の利用を表わす追加の入力をプロセッサ82へ与えることができる。圧力センサ89は、物体が電子レンジ74に配置されたときを圧力センサ89が感知するように、電子レンジ74の作動空間の内部に配設され得る。電子レンジ74の作動空間のような電気製品の作動空間は、何らかの物体が配置される又は加工される電気製品の部分を指す場合がある。
【0032】
圧力センサ89からの入力94は、プロセッサ82へ送られる。活動センサ90が、電子レンジ74の扉98又は他の電気製品の他の類似構成要素に付設され得る。すると、活動センサ90は、扉98の動作を感知して、付加的な活動センサ入力96をプロセッサ82へ与えることができる。プロセッサ82へ与えられる圧力センサ入力94及び活動センサの入力96は、ユーザ・インタフェイス76に対する人の操作を示すユーザ・インタフェイス入力84とは異なり、電子レンジ74の人による実際の利用の指標を与える。ユーザ・インタフェイス76、圧力センサ89、及び/又は活動センサ90からのデータは、送信器86を介して遠隔監視ステーション64(図2)へ送信される。
【0033】
上述のように、また図2に関して以下でさらに詳述するように、遠隔監視ステーション64は、電子装置56の1又は複数からの合成データ信号を用いて、人の認知能力の初期評価を実行する。この人の認知能力の評価は、特定の電子装置56の人の慣例的利用、電子装置56を動作させるときに入力する命令と命令との間の時間の長さ、人が電子装置56に命令を入力するときの正確さ、及び/又は電子装置56の人の実際の適正利用のような合成データの特徴を観察することができる。電子装置56の人の実際の適正利用は、圧力センサ及び活動センサからの入力をユーザ・インタフェイスからの入力と比較することにより監視される。この比較から、電子レンジ74の例の場合で述べると、人が電子レンジに最初に適正に物体を入れ、次いで、電子レンジに配置された物体を加熱するように電子レンジを適正にプログラムしたか否かについての指標が得られる。適正な動作は、電子レンジに物体を入れたとの指標が受信されないのに、電子レンジ74がプログラムされて動作させられているといった例と対照的なものである。
【0034】
電子装置56の各々に対する人の利用における相違は経時的に記録される。このように、人の認知能力(又はその減退)を一定期間にわたって、人が電子装置を正しく動作させるのにかかる時間量が長くなった、又は電子装置が不適正に動作させられている事例の数が増え始めている等として評価することができる。
【0035】
一定期間にわたる認知能力の減退の監視ばかりでなく、システム50は、人の精神状態に関する診断情報を与える。人が電子装置をプログラムしているのに圧力センサ及び/又は活動センサは電子装置の作動空間92(図3)に物体が入れられたことを検出することができないような事例は、認知症又はアルツハイマー病のような状態の開始を示す場合がある。電子装置の反復的で高頻度の利用又は儀式的利用は、強迫神経症のような他の状態の指標を与える。
【0036】
独居者に関するもう一つの不安の原因は、患者が十分な栄養を取っているか否かである。一般的な調理用電気製品の人の利用及び動作を監視すると、人が自分の食事をうまく準備しているか否かについての指標が得られる。このことは、面接時又は往診時には患者が巧みにかわす場合のある話題であり得る。ここで開示する実施形態は、この付加的な医療データを得る能力を与える。
【0037】
本書ではまた、認知能力を監視し評価する方法100の一実施形態を開示する。図4は、方法100の一実施形態のステップを示す流れ図である。方法100の実施形態はステップ102で開始し、このステップでは人の住宅の全体に複数の電気製品を分配する。ステップ102で分配される電気製品は、人の電気製品との相互作用を当該電気製品が監視するように特別に設計されて付加的なセンサを装備されている電気製品である。ステップ102で分配されるかかる電気製品の実例については本書で詳細に開示した。次に、ステップ104では、電気製品相互作用データを受け取る。電気製品相互作用データは、ステップ102に関して上で述べたようなセンサによって記録されるデータであってもよいし、当業者に認められるような他の電気製品相互作用データであってもよい。電気製品相互作用データはステップ104において、複数の電気製品からのデータ信号の有線伝送又は無線伝送を介して受領される。
【0038】
次いで、受領された電気製品データをステップ106において解析して、人の電気製品との相互作用に関する第一の統計値を発生する。ステップ106において発生される第一の統計値としては、限定しないが電気製品に正しく物体を出し入れしている率、誤った相互作用順序の事例の測度、全相互作用持続時間、人の電気製品との相互作用における特定の事象と事象との間の時間、及び/又は人が電気製品と相互作用する頻度等のような統計値がある。
【0039】
次いで、ステップ106において発生された第一の統計値をステップ108において用いて人の認知能力を評価する。人はステップ108において、正常な認知能力を有すると評価される場合もあるし、減退しつつある認知能力についての予め存在する状態を有すると評価される場合もある。代替的には、ステップ108での評価は、ステップ106からの第一の統計値の解析からの基準又は「正常」水準の判定を含み得る。この基準判定は、この方法の代替的な実施形態において後に行なわれる解析に用いられ得る。
【0040】
一つのかかる代替的な実施形態では、ステップ108において人の認知能力の最初の評価が行なわれた後に、方法はステップ104へ戻り、付加的な電気製品相互作用データを受け取る。このステップは、1時間後、1日後、1ヶ月後又は数ヶ月後に生じ得る。このステップの実行は典型的には、規則的な間隔で生じてもよいし、監視担当医の要請に応じて促されたときに生じてもよい。一旦、新たな電気製品相互作用データがステップ104において受領されたら、この相互作用データをステップ110において解析して、人の電気製品との相互作用に関する第二の統計値を発生する。第二の統計値は、ステップ106に関して指定されたような解釈データの幾つか又は全てであってよい。次いで、この第二の統計値をステップ112において用いて、人の認知能力の新たな評価を実行する。このように、この代替的な実施形態は、担当医がこれらの周期的評価を検討し得るように規則的な間隔で人の認知能力の新たな評価を発生する。
【0041】
さらにもう一つの実施形態では、第一の統計値に基づいてステップ108において発生された人の認知能力の評価、及び第二の統計値に基づくステップ112からの人の認知能力の評価をステップ114において比較する。ステップ114における第一及び第二の統計値の比較は、ステップ106又は110において発生される統計値の任意のものにおける増大又は減少を単純に測定するものであってよい。次いで、このステップ114での第一及び第二の統計値の比較をステップ116において用いて、人の認知能力のあらゆる変化を評価する。人の認知能力の変化は、患者と電気製品との間の相互作用の時間が長くなっていること、電気製品に物体を正しく出し入れしていない率の増大、又はユーザ・インタフェイスを通じて電気製品を正しく動作させていない率の増大から看取され且つ/又は決定され得る。加えて、ステップ116での人の認知能力の変化の評価はまた、人の電気製品との相互作用の任意の特定のパターンの判定を含み得る。ステップ116において実行され得る以上に述べた評価の列挙は例示的なものであって、当業者によって実行され得る評価を限定するものではない。
【0042】
本書に開示するシステム及び方法の実施形態は、認知能力の非侵襲的遠隔監視を提供するシステム及び方法の利益を与える。この認知能力を監視する形態は、看護師又は他の医師が人を物理的に訪問して認知能力を決定するための人の観察及び面接に頼ることにより蒙ったであろう費用を軽減する。加えて、人の認知能力の適正な評価を下すことができる結果として、人の認知能力に見合った生活状況に人を適正に配置することができる。これらの生活配置としては、独居、支援付き生活、又は介護施設でのケア等がある。本書に開示するようなシステム及び方法の実施形態の具現化形態は、人の認知能力の評価の基礎を与え、従って人の適正な生活状況を評価する付加的なツールを提供する。
【0043】
本書に開示するような複数の電子装置の人による利用を遠隔監視するシステム及び方法はまた、独居者から、他の方法では得ることが困難であり得るような医学的に有用なデータを得ることができるため有益であり得る。人は、自立性を失うことを恥じ、又は自立性を失いたくないものであるから、認知能力の弱点又は減退をごまかしたり隠そうとしたりする。このことは、十分な栄養を自分で十分に取ることができない人について上に掲げた例の場合のように、この状態が人の健康の衰えとして顕在化するまで何も検出されないという事態を招き得る。このように、本書に開示するシステム及び方法の実施形態は、かかる医学的問題の背後にある原因又は開始に対する警告を与えることができる。
【0044】
本書に開示するシステム及び方法の実施形態の幾つかは、1又は複数のコンピュータ又は処理装置の利用を介して単独で具現化されてもよい。これらの装置は、コンピュータ・モジュール及びアルゴリズムのアプリケーションのような具現化形態を用いて本書に開示するような作用を果たすことができる。これらの実施形態では、コンピュータによる具現化形態の技術的効果は、遠隔に位置する人の認知能力及びその指標を評価するツールを医師に提供することである。
【0045】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また当業者が本発明を製造して利用することを可能にするように実例を用いている。本発明の特許付与可能な範囲は特許請求の範囲によって画定され、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0046】
10 患者活動監視システム
12 住居
14 活動センサ
16 通信信号
18 通信中継器
20 データ信号
22 遠隔監視ステーション
24 通信プラットフォーム
26 プログラム可能な事象検出器
28 状態報告発生器
30 状態信号
32 コンピュータ・ワークステーション
34、36 信号
38 介護者
40 連絡路
42 データベース
50 患者認知能力監視システム
52 住宅
54 患者
56 電子装置
58 データ信号
60 通信中継器
62 合成データ信号
64 遠隔監視ステーション
66 データベース
68 評価モジュール
70 データベース
72 ワークステーション
74 電子レンジ
76 ユーザ・インタフェイス
78 表示器
80 制御部
82 プロセッサ
84 ユーザ・インタフェイス入力
86 送信器
89 圧力センサ
90 活動センサ
92 作動空間
94 圧力センサ入力
96 活動センサ入力
98 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の電子装置56と、遠隔監視ステーション64とを備えた遠隔に位置する人を監視するシステムであって、
前記電子装置56は、
当該電子装置56に付設されており、前記人と当該電子装置56との間の相互作用を示す第一の信号58を発生する第一のセンサと、
当該電子装置56に付設されて前記第一のセンサに接続されており、前記第一のセンサからの前記第一の信号を受け取って、当該電子装置56の前記人の利用を示すデータを発生するプロセッサ82と、
該プロセッサ82に接続されており、該プロセッサ82から前記データを受け取って、該データにより符号化されたデータ信号88を送信する送信器86と
を含んでおり、
前記遠隔監視ステーション64は、
前記少なくとも1台の電子装置56から前記データを受け取り、前記データを記憶して、健康評価を発生するために前記データを解析する、
遠隔に位置する人を監視するシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1台の電子装置56は前記人の住宅52に配置された電子式電気製品である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記住宅52に付設されており、前記少なくとも1台の電子式電気製品56から前記データ信号58を受け取って、前記複数の電子式電気製品56の各々からの前記データを含んでおり前記遠隔監視ステーション64へ送信される合成データ信号62を発生する通信中継器60をさらに含んでいる請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第一のセンサは前記電子装置56の既存のユーザ・インタフェイス76に付設される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子装置56の作動空間92に付設された第二のセンサ89をさらに含んでいる請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第二のセンサ89は、前記人と前記電子装置56との間の相互作用を示す第二の信号94を発生し、前記プロセッサ82は、前記第二のセンサ89から前記第二の信号94を受け取って、前記第二の信号94を前記電子装置56の前記人の利用を示す前記データに組み入れる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第二の信号94は、前記人による前記電子装置56の実際の利用を示す、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第二のセンサ89は圧力変換器である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記健康評価は前記人の認知能力の評価である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記遠隔監視ステーションは、前記データの変化を経時的に比較することにより、前記人の認知能力の評価を発生するために前記データを解析する、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−254817(P2009−254817A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94670(P2009−94670)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】