説明

人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法及び受信装置

【課題】本発明は、人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法及び受信装置を提供する。
【解決手段】本発明は、複数の受信電極を含んで構成され、データを受信する場合に、最適な受信電極対を選択することで、受信情報の質を高め、人体内部における感知装置の位置情報を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法及び受信装置に関し、特に、複数の受信電極を使用することで、受信する情報の質を高め、人体内部にある感知装置の位置情報を把握し得る、人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の内部から医療情報を収集するための様々な感知装置が開発され、使用されているが、このような情報収集技術だけでなく、収集した情報を人体の外部に転送する技術も非常に重要である。
【0003】
一般のデータ送信方法としては、胃腸の内部状態を観察するための目的で開発された内視鏡に適用される通信ケーブル方式がある。この通信ケーブル方式においては、導線又は光ファイバーからなるケーブルを、主に患者の喉を通して人体の内部に挿入する。このような通信ケーブル方式は、信頼性が高く、人体の内部で収集されたデータの品質に優れるという利点があるが、内視鏡施術を受ける患者にひどい苦痛を与えるという深刻な問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、近年、イスラエルのギブン・イメージング(Given Imaging)社が、カプセル型内視鏡「M2A」を開発した。前記カプセル型内視鏡は、患者が錠剤のように飲み込むだけで、内視鏡のカメラが捉えた人体の内部の映像データを、外部の受信装置に送信してモニタで再生することができる。
【0005】
しかしながら、前記カプセル型内視鏡は、信号送信方式として無線電波方式を採用するため、消費電力が大きくて動作時間が短い。また、人体外部の各種電波干渉により受信感度が劣化する。さらに、映像信号を高周波信号に変調する変調回路及び信号を送信するためのアンテナなどの無線送信器を備えなければならないので、サイズが大きくなりかつ生産コストが上昇する。さらにまた、高周波の使用により人体に有害な影響を及ぼす恐れがあるという問題があった。そこで、本出願人は、人体を導体として低周波電流により人体内部のデータを人体の外部に送信し得る人体を通じた通信システムを開発した。
【0006】
前記人体を通じた通信システムにおいては、人体の内部に投入されたカプセル型内視鏡の表面に形成された送信電極間の電位差により電流が発生する。この電流が人体を通して流れると、人体の表面に装着された2つの受信電極間に電圧が誘起され、これによって、受信装置が人体内部のデータを受信する。
【0007】
図1は、カプセル型内視鏡と、2つの受信電極を有する受信装置とを含む人体を通じた通信システムを示す。図1に示したように、カプセル型内視鏡10は人体の内部1に位置し、受信装置20は人体の外部に位置する。カプセル型内視鏡10の両端の表面には送信電極11がそれぞれ形成されており、受信装置20は、人体の表面に接触している2つの受信電極30と接続されている。カプセル型内視鏡10により収集された医療情報が信号処理された後、2つの送信電極11間に電位差が発生すると、体液に接触している送信電極11が、閉ループを形成して、人体2を通して電流を流す。この電流は、人体の表面を流れて、人体の表面に装着された2つの受信電極30間に電圧を誘起する。この誘起電圧は、受信電極30間の距離及び電流の大きさに比例する。このように誘起電圧が誘起されることで、人体の内部からカプセル型内視鏡10が送信した信号を、人体外部の受信装置が感知することができるようになる。
【0008】
しかしながら、このように2つの受信電極のみを使用する場合、電流の方向が受信電極の配置方向に対して垂直になると、受信電極間に電圧が、誘起されないか、又は非常に小さな電圧総量しか誘起されないことになる。このため、人体内部のカプセル型内視鏡から送信された信号を、人体外部の受信装置が正確に受信しできないという問題があった。
【0009】
即ち、カプセル型内視鏡10が図1の(A)方向に位置すると、2つの受信電極30が配列された方向と送信電極11の方向とが一致する。この場合、2つの受信電極30間に最大の電流が流れるため、受信感度は良好である。一方、カプセル型内視鏡10が(B)方向に位置すると、2つの受信電極30が配列された方向と送信電極11の方向とが垂直になる。この場合、2つの受信電極30間に電流が流れないため、受信装置20は、カプセル型内視鏡10が送信した信号を受信することができない。従って、受信電極30は固定されているが、送信電極11の配列方向は随時変更するため、受信感度が時間経過と共に変化して、送信された信号が消失するなど、受信情報の質が低下するという問題があった。
【0010】
また、2つの受信電極のみを使用する場合、カプセル型内視鏡が、人体内部のどの位置にいるのか等、その位置情報を検出することができないため、カプセル型内視鏡を効率的に使用できないという問題があった。例えば、カプセル型内視鏡が消化器官内の異常徴候を検出したとき、その検出時点でのカプセル型内視鏡の位置を把握することで、正確な手術が可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたもので、人体を通じた通信システムにおいて、最適な受信感度でデータを受信することができ、人体の内部にあるカプセル型内視鏡の位置情報を導き出して、医療情報として活用し得る、人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するための本発明に係る人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法は、複数の受信電極から受信電極対を順次選択する段階と、前記選択された受信電極対の電圧値を処理してメモリに保存する段階と、前記メモリに保存された値に対して所定の演算を行って、最適な受信電極対を選択する段階と、前記メモリに保存された値のうち、前記最適な受信電極対に対応する値に対して画像処理を行う段階と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る人体を通じた通信システムにおける受信装置は、人体の表面に装着された複数の受信電極と、それら複数の受信電極から受信電極対を順次選択するスイッチング手段と、前記スイッチング手段により選択された受信電極対の電圧値を処理する処理手段と、前記処理された値を保存するメモリと、前記メモリに保存された値から最大値を算出する比較演算手段と、前記最大値に対して画像処理を行う画像処理手段と、前記スイッチング手段及び前記比較演算手段を制御して、前記最大値を前記画像処理手段に提供する制御手段と、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい一実施形態を説明する。
【0015】
図2は、人体の表面に装着された複数の受信電極の平面図である。図2に示したように、8個の受信電極が、人体の表面、例えば、胸、ヘソ部位、背中の上側、背中の下側、両脇、両横腹などにそれぞれ装着されている。前述したように、カプセル型内視鏡10の送信電極11間の電位差により発生した電流が、人体を通して複数の受信電極に届くと、任意の2つの受信電極間における電流の大きさと距離に比例した電圧が誘起される。
【0016】
図2を参照して、例えば、受信電極対として、受信電極1、2を考慮すると、その受信電極1、2間で、最大電圧が検出される。これは、カプセル型内視鏡10の送信電極11の配列方向と、受信電極1、2の配列方向とが一致しており、カプセル型内視鏡10と受信電極との距離が最も近接しているいためである。一方、受信電極対として、受信電極3、4又は受信電極7、8考慮すると、その各受信電極間では電圧が検出されない。これは、送信電極の配列方向と受信電極の配列方向とが垂直をなしているからである。また、受信電極対として、受信電極5、6を考慮すると、その受信電極間の電圧は受信電極1、2よりも小さい。これは、送信電極の配列方向と受信電極の配列方向とが一致しているが、カプセル型内視鏡10との距離が受信電極1、2に比べて遠いためである。
【0017】
前述のように、全ての受信電極対の電圧を測定及び比較することによって、本発明の一実施形態に係る方法及びデータ受信装置は、受信電極1、2間の電圧が最大であるという事実から、良好な受信感度を示す受信電極1、2を選択する。また、受信電極1、2の電圧が受信電極5、6の電圧よりも大きいという事実から、カプセル型内視鏡が受信電極1、2に最も近接していることを知ることができる。
【0018】
人体の内部でのカプセル型内視鏡の正確な位置は、所定の時間間隔で各受信電極対において感知される電圧を比較及び演算して導き出すことができる。また、その導き出した内視鏡の位置を連続的に表示することで、カプセル型内視鏡10が、人体の内部を移動した経路、速度及び方向などを知ることができるようになる。
【0019】
本発明の一実施形態においては、平面的に配列された複数の受信電極を一例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。複数の受信電極を人体の上下、前後及び左右に分布配置することで、カプセル型内視鏡の3次元的位置及び方向を導き出すこともできる。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係る複数の受信装置を有する受信装置を示したブロック図である。図3に示したように、N個の受信電極が受信装置30の第1スイッチング回路21及び第2スイッチング回路22にそれぞれ接続されている。第1スイッチング回路21の出力線は、差動増幅器23の+端子に接続され、第2スイッチング回路22の出力線は、差動増幅器23の−端子に接続されている。スイッチング回路21、22は、制御回路28の制御下でN個の受信電極からの入力のうち、それぞれ1つのみを選択する。
【0021】
以下、前記受信装置30の動作を詳細に説明する。まず、第1スイッチング回路21が受信電極1を選択し、第2スイッチング回路22が受信電極2を選択すると、受信電極1、2間の信号電圧が、差動増幅器23に入力されて、増幅される。その増幅された信号は、帯域通過フィルタ24を通過することによってノイズが除去される。帯域通過フィルタ24を通過した信号は、A/Dコンバータ25でデジタル信号に変換されてメモリ27に保存される。次に、第1スイッチング回路21が受信電極1の選択を維持したままで、第2スイッチング回路22が受信電極3を選択し、前述の過程を通じて、受信電極1、3間の信号電圧がメモリ27の他のアドレスに保存される。引き続き、第1スイッチング回路21が受信電極1の選択を維持したままで、第2スイッチング回路22が受信電極4、5、...、Nを選択することによって、受信電極1と他の受信電極間の信号電圧がメモリ27にそれぞれ保存される。
【0022】
同様に、第1スイッチング回路21が受信電極2を選択し、第2スイッチング回路22が他の受信電極1、3、...、Nを順次選択することによって、受信電極2と他の受信電極間の信号電圧がメモリ27にそれぞれ保存される。このように、第1スイッチング回路21が受信電極3、4、...、Nを順次選択し、第2スイッチング回路22が他の受信電極を順次選択することによって、最終的に(N−1)個の信号電圧がメモリ27に保存される。もちろん、受信電極間の信号電圧を、数回(2回以上)サンプリングして平均値を保存するようにしてもよく、又は所定時間の間の電圧波形の平均値を保存することもできる。また、メモリの容量と時間を節約するため、1回選択された受信電極対を、再び選択しないようにすることで、個の受信電極対を選択することもできる。
【0023】
比較演算回路29は、メモリ27に保存された信号電圧値を比較して、最大値を検出する。この演算回路29の結果から、カプセル型内視鏡の方向が、最大値を発生した受信電極対の配列方向と相似していることを知ることができる。また、比較演算回路29は、メモリ27に保存された信号電圧値を比較及び演算して、カプセル型内視鏡10の3次元的位置を導き出し、これを再びメモリ27に保存することができる。
【0024】
制御回路28は、最大の受信電圧を発生する受信電極対を通信用電極として選択することで、最も良好な受信感度で人体内部のカプセル型内視鏡10が送信する信号を受信することができるようになる。さらに詳細には、最大の受信電圧を発生する受信電極対の信号が、画像処理回路26で処理されるようになる。
【0025】
前述したような受信電極対の組み合わせ過程、信号電圧の処理過程、比較及び演算過程、最適な受信電極対の選択過程などが、非常に高速度(10msec以内)且つ所定の時間間隔(5秒毎に)で繰り返し行われる。従って、カプセル型内視鏡10が送信する情報を常に最適な受信電極対を通じて受信することができるようになる。また、計算された位置情報をメモリ27に順次保存することで、カプセル型内視鏡10の人体内部での移動経路、速度及び方向などを測定することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明は、複数の受信電極を有する受信装置において、人体を通信用導体として利用するカプセル型内視鏡から送信される情報を、最適な受信感度で受信することができる。従って、受信情報の質を高めるだけでなく、カプセル型内視鏡の人体内部における移動経路、速度及び方向を把握することができ、これを有用な医療情報として活用し得るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】人体を通じた通信システムにおいて、データの受信時に発生する問題点を示した説明図。
【図2】本発明の一実施形態に係る人体の表面に装着された複数の受信電極を示した平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る受信装置を示したブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信電極から受信電極対を順次選択する段階と、
前記選択された受信電極対の電圧値を処理してメモリに保存する段階と、
前記メモリに保存された値に対して所定の演算を行って、最適な受信電極対を選択する段階と、
前記メモリに保存された値のうち、前記最適な受信電極対に対応する値に対して画像処理を行う段階と、
を含むことを特徴とする人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項2】
前記選択された受信電極対の電圧値を処理する段階が、
前記電圧値を増幅する段階と、
前記増幅された信号からノイズを除去する段階と、
前記ノイズが除去されたアナログ信号をデジタル信号に変換する段階と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項3】
前記メモリに保存された値が、2回以上サンプリングして得られた電圧値の平均、又は所定時間の間の電圧波形の平均に基づくものであることを特徴とする請求項1記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項4】
前記メモリに保存された値のうち、最大値に対応する受信電極対を、前記最適な受信電極対として選択することを特徴とする請求項1記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項5】
前記最適な受信電極対の位置から感知装置の位置情報を計算して、該位置情報を前記メモリに順次保存する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項6】
前記感知装置の移動経路、速度及び方向が、前記位置情報から導き出されることを特徴とする請求項5記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信方法。
【請求項7】
人体の表面に装着された複数の受信電極と、
前記複数の受信電極から受信電極対を順次選択するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段により選択された受信電極対の電圧値を処理する処理手段と、
前記処理された値を保存するメモリと、
前記メモリに保存された値から最大値を算出する比較演算手段と、
前記最大値を利用して画像処理を行う画像処理手段と、
前記スイッチング手段及び前記比較演算手段を制御して、前記最大値を前記画像処理手段に提供する制御手段と、
を含むことを特徴とする人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。
【請求項8】
前記スイッチング手段が、前記複数の受信電極がそれぞれ接続された第1スイッチング回路及び第2スイッチング回路を含むことを特徴とする請求項7記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。
【請求項9】
前記処理手段が、
前記スイッチング手段から出力された電圧値を増幅する差動増幅器と、
前記増幅された信号からノイズを除去する帯域通過フィルタと、
前記ノイズが除去されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
を含むことを特徴とする請求項7記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。
【請求項10】
前記メモリに保存された値が、2回以上サンプリングして得られた電圧値の平均、又は所定時間の間の電圧波形の平均に基づくものであることを特徴とする請求項7記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。
【請求項11】
前記比較演算手段が、前記最大値に対応する受信電極対の位置から感知装置の位置情報を計算して、該位置情報を前記メモリに順次保存することを特徴とする請求項7記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。
【請求項12】
前記感知装置の移動経路、速度及び方向が、前記位置情報から導き出されることを特徴とする請求項11記載の人体を通じた通信システムにおけるデータ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513001(P2006−513001A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567587(P2004−567587)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002938
【国際公開番号】WO2004/066833
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(399101854)コリア インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー (68)
【Fターム(参考)】