説明

人体支持具の通気装置

【課題】人体を支持する支持部材の表皮に通気溝が形成される人体支持具において、該通気溝を形成自在とすることによる人体支持具の使い勝手の向上、および、通気溝が形成される表皮の清掃性の向上を図る。
【解決手段】人体支持具としての椅子1の通気装置20は、バックレスト4において人体が接触する表皮10に、人体と表皮10との間で空気が流通する複数の通気溝21を形成する通気溝形成機構30を備える。通気溝形成機構30は、バックレスト4の表皮10の内面10i側に設けられると共に表皮10に通気溝21を形成する複数の空気袋33を有する空気袋部材31と、空気袋部材31を作動させる作動機構40とを備える。作動機構40は、空気袋部材31を、表皮10に通気溝21を形成する溝形成形態と、表皮10から通気溝21をほぼ消失させる溝消失形態とに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を支持する支持部材を備える人体支持具に関し、さらに詳細には、人体支持具が備える通気装置に関する。そして、人体支持具は、例えば椅子である。
【背景技術】
【0002】
人体支持具として、例えば椅子において、座面シートやバックレストの表皮に通気溝が形成され、該通気溝に送風機で送風された空気を流通させて、蒸れを防止するものは知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−253705号公報(図5,図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
椅子の座面シートやバックレストの表皮に通気溝が形成される場合には、通気溝の清掃に手間がかかる。また、気候または季節や着座する人によっては、表皮に通気溝を形成する必要がないこともある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、人体を支持する支持部材の表皮に通気溝が形成される人体支持具において、該通気溝を形成自在とすることによる人体支持具の使い勝手の向上、および、通気溝が形成される表皮の清掃性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、人体を支持する支持部材(3,4,6)を備える人体支持具(1)における通気装置(20)であって、前記支持部材(3,4,6)において前記人体が接触する表皮(10)に、前記人体と前記表皮(10)との間で空気が流通する1以上の通気溝(21)を形成する通気溝形成機構(30)を備え、前記通気溝形成機構(30)は、前記支持部材(3,4,6)において前記表皮(10)の内面(10i)側に設けられると共に前記表皮(10)を変形させることにより前記表皮(10)に前記通気溝(21)を形成する溝形成部材(31,131)と、前記溝形成部材(31,131)を作動させる作動機構(40,140,240)とを備え、前記作動機構(40,140,240)は、前記溝形成部材(31,131)を、前記表皮(10)に前記通気溝(21)を形成する溝形成形態と、前記表皮(10)から前記通気溝(21)をほぼ消失させる溝消失形態とに変更する通気装置(20)である。
【0007】
これによれば、通気装置が表皮に通気溝を形成することにより、表皮と人体との間の通気性が向上することで、人体支持具の快適性が向上する。
また、人体支持具において、通気装置の溝形成部材は、人体支持具の支持部材の表皮おいて、該表皮と人体との間で空気が流通する通気溝を形成する一方で、通気溝が不要な場合には、該通気溝をほぼ消失させることができる。この結果、通気溝の形成が自在であることにより、通気溝の形成が自在になるので、通気溝の形成が可能な人体支持具の使い勝手が向上する。さらに、通気溝がほぼ消失して溝消失状態になった表皮では、通気溝が形成されている場合に比べて、表皮の清掃作業が容易になる。
さらに、溝形成部材により表皮を変形させることで通気溝が形成されることから、表皮を変えることなく、形状が異なる複数種類の溝形成部材を用意することで、溝形成部材の交換により、同じ表皮に所望の形状の通気溝を容易に形成することができる。
さらに、作動機構による表皮の変形度合いを作動機構により調整することが可能になるので、通気溝の形状の調整(例えば、通気溝の深さや長さの調整)が可能になる。この結果、通気溝の形成の自由度が大きくなって、人体支持具の使用者にとって、より好適な通気溝の形成が可能になる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の通気装置(20)であって、前記通気溝(21)での空気流(22)を形成する空気流形成手段(50)を備えるものである。
これによれば、空気流形成手段により、通気溝に強制的に空気流を形成することができるので、通気溝での通気が促進されて、通気装置による通気性が向上する。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の通気装置(20)であって、前記支持部材(3,4,6)に支持された前記人体近傍での前記表皮(10)または前記表皮(10)近傍の温度または湿度を検出する状態検出手段(63)を備える制御装置(60)を備え、前記空気流形成手段(50)は、前記空気流(22)を形成するために供給される気流用空気の流量、温度および供給時期の少なくともいずれかを調節する調節部材(43)を備え、前記制御装置(60)は、前記状態検出手段(63)からの検出信号に基づいて前記調節部材(43)を制御するものである。
これによれば、気流用空気の流量、温度および供給時期の少なくともいずれかが調節されることにより、通気溝を流通する空気の流量、温度および空気流の形成時期の少なくともいずれかが調節されるので、通気による人体支持具の快適性を一層向上させることができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置(20)であって、前記溝形成部材(31,131)は、前記表皮(10)に前記通気溝(21)を形成するための突条(33,39,133)を有し、前記支持部材(3,4,6)は、前記表皮(10)の前記内面(10i)側に支持基部(11)を備え、前記支持基部(11)には、前記表皮(10)に向かって開口する収容空間(36)が形成され、前記突条(33,39,133)は、前記溝形成形態において前記収容空間(36)に収容されて、前記収容空間(36)内で前記支持基部(11)に保持されるものである。
これによれば、溝形成部材の突条が表皮の外面側に突出することで通気溝が形成される場合は、突条は収容空間内において支持基部に保持されることで、支持基部により補強される。この結果、人体の荷重が突条に作用したときに、支持基部により、通気溝の深さの減少を招来する突条の倒れや潰れの発生が抑制されて、突条の形状を確実に維持できる。
また、溝形成部材の突条が表皮の内面側に移動することで通気溝が形成される場合は、収容空間を利用して通気溝が形成されるので、通気溝の形成が容易になる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置(20)であって、前記溝形成部材(31)は、給排される流体により変形して前記溝形成形態および前記溝消失形態になる流体圧応動体(33,39)を有する流体圧応動部材(31)であり、前記作動機構(40)は、前記流体圧応動体(33,39)に対して流体の給排を行い、前記支持部材(3,4,6)には、前記溝形成形態にある前記流体圧応動体(33,39)の形状を保持するための形状保持部(37)が設けられるものである。
これによれば、溝形成状態にある流体圧応動体の形状が、形状保持部により保持されるので、人体からの荷重が流体圧応動体に作用したときに、形状保持部により、通気溝の深さの減少を招来する流体圧応動体の倒れや潰れの発生を抑制することができる。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の通気装置(20)であって、前記流体圧応動体(33)は、伸縮性の流体袋(33)であるものである。
これによれば、流体圧応動体が伸縮性の流体袋であることにより、流体圧応動体の形成が容易になり、しかも形状保持部により、流体袋の倒れや潰れの発生を抑制することができる。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置(20)であって、前記溝形成部材(131)は、前記表皮(10)に前記通気溝(21)を形成するための複数の突条(133)を有すると共に前記表皮(10)に対する進退方向に移動可能な溝形成パッド(131)であり、前記作動機構(140,240)は、前記溝形成パッド(131)を前記進退方向に駆動するものである。
これによれば、溝形成パッドは表皮に通気溝を形成する複数の突条を有するので、溝形成パッドを進退方向に移動させることで、複数の通気溝を形成すること、および該複数の通気溝をほぼ消失させることが容易になる。また、溝形成パッドにより表皮を変形させることから、表皮を変えることなく、突条の形状が異なる複数種類の溝形成パッドを用意することで、溝形成パッドの交換により、同じ表皮に所望の形状の通気溝を容易に形成することができる。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項記載の通気装置(20)であって、前記支持部材(3,4,6)には、前記表皮(10)の前記内面(10i)側に、内部用空気が流通する内部空気路(56)が、前記表皮(10)と前記表皮の前記内面(10i)側で前記表皮に隣接する隣接部材(11)とにより形成されるものである。
これによれば、内部空気路を流通する空気と表皮との間の熱交換が可能になり、表皮の温度を内部空気路を流通する空気の温度に近づけることができるので、人体支持具の快適性の一層の向上が可能になる。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項記載の通気装置(20)であって、前記人体支持具(1)は、座面シート(3)、バックレスト(4)およびレッグレスト(6)のうちの少なくとも前記座面シート(3)および前記バックレスト(4)と、前記座面シート(3)および前記バックレスト(4)の少なくともいずれかを傾動させる傾動機構(7)とを備える椅子(1)であり、前記支持部材(3,4,6)は、前記座面シート(3)、前記バックレスト(4)および前記レッグレスト(6)の少なくともいずれかであり、前記作動機構(40,140,240)は、前記傾動機構(7)の作動に連動して、前記溝形成部材(31,131)を前記溝形成形態および前記溝消失形態に変更するものである。
これによれば、通気溝が椅子の傾動機構に連動して形成されるので、傾動可能な椅子の使用形態に応じて、通気性を向上させて、椅子の快適性の向上が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人体を支持する支持部材の表皮に通気溝が形成される人体支持具において、該通気溝を形成自在とすることによる人体支持具の使い勝手の向上、および、通気溝が形成される表皮の清掃性の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、通気装置を備える椅子の要部側面図であり、一部が模式的に示されている。
【図2】図1の椅子のバックレストおよび通気装置の要部分解斜視図であり、一部が模式的に示されている。
【図3】図1のバックレストの、図2の概ねIII−III線に相当する位置での断面図である。
【図4】図3の概ねIV−IV線での要部断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、通気装置を備える椅子において、図2に相当する図である。
【図6】図5の椅子において、図3に相当する図であり、通気装置の作動機構が外観で示されている。
【図7】本発明の第3実施形態を示し、通気装置を備える椅子において、図2に相当する図である。
【図8】図7の椅子において、図3に相当する図であり、通気装置の作動機構が外観で示されている。
【図9】本発明の前記各実施形態の変形例を示し、通気装置を備える椅子の要部斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例を示し、図3に相当する図の一部を示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態の別の変形例を示し、図3に相当する図の一部を示す図である。
【図12】本発明の第2,第3実施形態の変形例を示し、図6に相当する図の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図1〜図12を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を説明するための図である。
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係る通気装置20(図2参照)を備える人体支持具としての椅子1は、医療用椅子として、歯科診療で使用される歯科用椅子である。
【0019】
図2を併せて参照すると、椅子1は、台座2と、該台座2に支持される座面シート3と、該座面シート3に着座した人(椅子1の使用者であり、以下、「人体」という。)の背部を支えるバックレスト4と、バックレスト4に支持されると共に人体の頭部を支えるヘッドレスト5と、人体の脚部を支えるレッグレスト6と、座面シート3に対してバックレスト4を傾動させる傾動機構7(図1に大部分が模式的に示されている。)と、バックレスト4に通気溝21(図3,図4参照)を形成する前記通気装置20と、傾動機構7を制御する制御装置8と、椅子1の操作者(例えば、医師)により操作されて制御装置8を通じて座面シート3とバックレスト4との位置設定および通気装置20の操作を行うための操作部9と、を備える。
ここで、座面シート3、バックレスト4、レッグレスト6およびヘッドレスト5は、いずれも人体を支持する支持部材である。
また、図1において、傾動機構7は、その大部分が模式的に示され、一部である連結アーム71、駆動リンク72および連結リンク73が示されている。
【0020】
図1,図2を参照すると、バックレスト4は、傾動機構7により駆動されて傾動するフレーム(図示されず)に取り付けられる取付部13hを有する支持基板11と、支持基板11を人体側から覆うと共に人体が接触する接触領域10a(図4には、その一部が示されている。)を有する表皮10と、支持基板11を反人体側から覆って支持基板11に結合される背面部材としての背面カバー17と、台座2とバックレスト4とを連結する左右1対の枢支アーム18(図1には右側の枢支アーム18が示されている。)とを備える。各枢支アーム18は、一端部で台座2の連結部2aに枢着され、他端部で背面カバー17に固定される。
【0021】
ここで、反人体側とは、対象となる部材等に対して、人体が位置する側である人体側とは反対側を意味する。また、表皮10に形成される通気溝21の深さ方向(図3,図4参照)で、表皮10の内面10i側において表皮10に近づく方向を進出方向とし、進出方向とは反対方向であって内面10i側において表皮10から遠ざかる方向を後退方向とし、進出方向および後退方向を進退方向(前記深さ方向でもある。)とする。
また、進退方向から見たときに、人体支持具(第1実施形態では椅子1)の支持部材(第1実施形態ではバックレスト4)に支持されている人体が延びている方向を縦方向とし、該縦方向に直交する方向を横方向とする。
【0022】
図2〜図4を参照すると、表皮10の内面10i側で表皮10に隣接する隣接部材である支持基部としての支持基板11は、人体側で表皮10に覆われるクッション材(例えば、弾性材料としての発泡材料であるウレタンフォーム)から形成されるクッション部材12と、表皮10と協働してクッション部材12を収容して保持する板状の芯材13とから構成される。表皮10の周縁部10mは、取付部13hを有する芯材13に結合される。
【0023】
バックレスト4において人体と表皮10との間での通気を可能にする通気装置20は、表皮10の外面10o側(または、人体側)に、人体と表皮10との間で空気が流通する1以上の、ここでは複数の通気溝21を、表皮10に形成する通気溝形成機構30と、各通気溝21での空気流22を強制的に形成する空気流形成手段50と、空気流形成手段50を制御する通気用制御装置60とを備える。
各通気溝21は、接触領域10a(図4,図9参照)と、表皮10において人体が接触しない非接触領域10b(図4,図9参照)とに跨って、表皮10自体により形成、または画成される溝である。また、通気用制御装置60は、制御装置8の一部により構成される。
【0024】
通気溝形成機構30は、表皮10に内面10i側から力を作用させることで表皮10を屈曲変形させて表皮10に通気溝21を形成する溝形成部材としての流体圧応動部材である空気袋部材31と、流体としての気体である空気が給排される流体袋部材である空気袋部材31を作動させてその形態を変更する作動機構40とを備える。
作動機構40は、空気袋部材31を、表皮10の外面10oに通気溝21を形成する溝形成形態(図3,図4に二点鎖線で示される。)と、表皮10から通気溝21をほぼ消失させる溝消失形態(図3,図4に実線で示される。)とに変更する。
【0025】
ここで、各通気溝21がほぼ消失したときの表皮10の状態である溝消失状態には、通気溝21が消失して、表皮10の外面10oが、通気溝21による凹凸がない平坦面(図3,図4に実線で示されている。)になる状態と、外面10oがほぼ前記平坦面になる状態とが含まれる。外面10oがほぼ平坦面になる状態とは、外面10oが前記平坦面であるときの該外面10oの清掃性が著しく阻害されない程度であって、表皮10が人体と接触している状態で空気の流通が不可能な程度の浅い溝が、通気溝21の跡として残っているときの外面10oの状態である。
【0026】
空気袋部材31は、バックレスト4の内部に収納されて、表皮10の内面10i側(または、反人体側)で、芯材13と背面カバー17との間に配置される。空気袋部材31は、板状の基体32と、縦方向に細長く延びている複数の溝形成体としての流体圧応動体である空気袋33と、各空気袋33と作動機構40とを連通させる連通部としての分配通路部34とを有する。
なお、「方向に延びている」旨の表現には、該方向に平行である場合、および該方向に傾斜している場合が含まれる。
【0027】
複数の空気袋33は、横方向に並んで配列される。各空気袋33と基体32とは連結されていて、各空気袋33は、空気袋部材31において、基体32から表皮10に向かって突出している突条である。この実施形態では、空気袋部材31は、空気袋33と共に基体32および分配通路部34が一体成形された単一の部材である。
【0028】
一方、空気袋部材31の各空気袋33に対して空気の給排を行う作動機構40は、流体圧源である空気圧源としてのコンプレッサ41と、コンプレッサ41により加圧された加圧流体としての加圧空気を作動用空気(作動用流体である。)として空気袋部材31の分配通路部34に導く圧力導管42と、圧力導管42の途中に設けられて、各空気袋33に供給される作動用空気の温度を調節する温度調節部材44とを備える。
【0029】
コンプレッサ41は、歯科治療具に使用されるコンプレッサが利用されるが、別の例として、通気装置20に専用のコンプレッサであってもよい。圧力導管42は、コンプレッサ41から分岐導管29が分岐する分岐部(図示されず)までの第1導管27と、前記分岐部から分配通路部34までの第2導管28とから構成される。第1導管27の一部は、管状部材である連結アーム71の内部を通るように配置される。
コンプレッサ41から吐出された加圧空気に関する状態量である温度状態を調節する調節部材43としての温度調節部材44は、例えばペルチェ素子により構成されて、通気用制御装置60により制御されることで、加圧空気の加熱および冷却を行う。
【0030】
図2を参照すると、空気袋部材31は、該空気袋部材31を芯材13に固定するために基体32に設けられた複数の取付部32bにおいて、ネジ(図示されず)が芯材13に設けられネジ孔13bにねじ込まれることで、芯材13と結合されて固定される。
図3,図4を参照すると、各空気袋33には、空気袋33により形成される圧力室33aと分配通路部34により形成される通路34aと間での空気の流通を可能とする連通口35が設けられる。そして、圧力導管42と各空気袋33の圧力室33aとは、分配通路部34の通路34aおよび連通口35を通じて連通状態にある。
【0031】
図2〜図4を参照すると、各空気袋33は、作動機構40により作動用空気が供給されたときに、空気袋33の先端部が表皮10の外面10o側に向かってクッション部材12よりも突出する溝形成形態(したがって、空気袋部材31が溝形成形態)になって、空気袋33が表皮10から外面10o側に突出することなく、表皮10に表皮突条10cを形成する。そのために、空気袋部材31において、少なくとも空気袋33は、作動用空気の圧力に応じた伸縮を可能とする伸縮性および弾性に富む材料(例えば、ポリ塩化ビニル、ニトリルゴム)で形成される。
【0032】
一方、表皮10は、溝形成形態にある空気袋33により、通気溝21を形成するための表皮突条10cが人体側に突出して形成されるように、伸縮性および弾性に富む材料(例えば、ポリ塩化ビニル)で形成されている。また、表皮突条10cにより通気溝21が形成され易くなるように、表皮10は、空気袋33の周囲付近において、結合手段(例えば、接着剤、縫合、または、表皮10とクッション部材12との一体成型による結合)により、クッション部材12と結合されている。
そして、表皮突条10cを側壁とし、表皮10において空気袋33により変形しないか、または殆ど変形しない部分である不変形部分10d(図3参照)を底壁として、通気溝21が表皮10により形成される。したがって、突条である空気袋33自体が溝を形成することはない。
【0033】
図2,図3を参照すると、芯材13およびクッション部材12には、溝形成形態および溝消失形態にあるすべての空気袋33がそれぞれ収容される1以上の、ここでは複数の収容空間としての貫通孔36が形成される。貫通空間である貫通孔36は、空気袋部材31の基体32と表皮10との間で、芯材13およびクッション部材12を進退方向に貫通している。各貫通孔36は、各空気袋33にほぼ相似の形状であり、対応する空気袋33が挿入される。
【0034】
そして、空気袋33(したがって、空気袋部材31)が溝形成形態にあるとき、空気袋33内に供給された作動用空気により、空気袋33は貫通孔36内で芯材13およびクッション部材12に接触する状態になり、空気袋33は、貫通孔36の形状に倣う形状となって、芯材13およびクッション部材12に保持される。
このように、各空気袋33は、クッションおよび芯材13に形成された貫通孔36内に配置されることにより、人体からの荷重が表皮突条10cを介して空気袋33に作用する場合にも、芯材13およびクッション部材12によりその形状が保持されて、空気袋33の倒れや潰れが防止される。それゆえ、貫通孔36の周壁面である壁面37は、芯材13およびクッション部材12において、空気袋33の形状を保持する形状保持部である。
【0035】
図2を参照すると、空気流形成手段50は、作動機構40と共有の、空気供給源としてのコンプレッサ41および温度調節部材44と、通気溝21に向けて気流用空気を供給する空気供給部材51と、コンプレッサ41からの加圧空気を気流用空気として空気共有部に導く空気供給管52とを備える。
通気溝21に指向して気流用空気が流出する空気口51aが設けられた1以上の、この実施形態では1つの空気供給部材51は、バックレスト4の下端部に取り付けられて、該バックレスト4の下端部近傍に配置される。
空気供給管52は、作動機構40と共有の第1導管27と、分岐導管29とから構成される。分岐導管29には、空気袋33に供給される作動用空気の低下を防止するために、オリフィスまたは弁(いずれも図示されず)が設けられる。
【0036】
図4を参照すると、椅子1において、表皮10の内面10i側に、クッション部材12および表皮10により、空気が流通する内部空気路56が形成されている。クッション部材12に設けられた溝により形成される内部空気路56には、空気口51aから噴出する気流用空気の一部が内部用空気として、表皮10に設けられた導入口57を通じて導かれる。内部空気路56内の内部用空気は、クッション部材12および芯材13に設けられた排出路(図示されず)を通じてバックレスト4内の空間に排出された後、バックレスト4に存在する隙間または背面カバー17に設けられた小孔(図示されず)を通じて大気中に排出される。
【0037】
図2を参照すると、通気用制御装置60は、バックレスト4に支持された人体の近傍において、表皮10の状態または表皮10近傍の雰囲気の状態を検出する状態検出手段63を含む検出部61と、検出部61および操作部9(図1参照)からの信号が入力される電子制御ユニットから構成される制御部62とを備える。操作部9には、コンプレッサ41の運転・停止用スイッチを有する。
【0038】
表皮10または表皮10の近傍に配置される状態検出手段63は、表皮10の温度または表皮10近傍の雰囲気の温度を検出する温度センサ64と、表皮10近傍の雰囲気の湿度を検出する湿度センサ65とから構成される。湿度センサ65は、人体の発汗状態を検出することができる位置に配置される。
【0039】
制御部62は、操作部9からの操作信号に基づいて、コンプレッサ41の運転・停止による空気袋33および空気供給部材51への加圧空気の供給・停止を制御し、また温度センサ64および湿度センサ65の各検出信号に基づいて、温度調節部材44による加圧空気の温度を制御する。
例えば、制御部62は、温度検出手段により検出される温度が高いほど、および、湿度検出手段により検出される湿度が高いほど、コンプレッサ41からの加圧空気の温度が低下するように温度調節部材44を制御して、該加圧空気の温度を調節する。
【0040】
図2〜図4を参照すると、コンプレッサ41が運転を開始し、導管を経て分配通路部34に流入したコンプレッサ41からの作動用空気が、分配通路部34を介して空気袋33に供給されると、空気袋33が外面10o側で、表皮10を隆起させて、表皮突条10cが形成される。これにより、空気袋33は溝形成形態になり、表皮10は、表皮突条10cの間に通気溝21が形成される溝形成状態になる。この溝形成状態で、コンプレッサ41から吐出された気流用空気が空気供給部材51の空気口51aから噴出することにより、気流用空気は、空気流22を形成して、通気溝21の上流端側である下端部21a側から流入して通気溝21を流れ、通気溝21の下流端側である上端部21b側から流出し、人体と表皮10との間での通気が行われる。
同時に、空気口51aから供給される内部用空気の一部が、導入口57を通じて内部空気路56に流入して、内部空気路56に空気流が形成される。
【0041】
一方、コンプレッサ41の運転が停止されて、空気袋33に作動用空気が供給されないとき、突条内の作動用空気は分配通路部34を介して圧力導管42に流入し、さらに空気供給管52を経て空気口51aを通じて大気中に放出されるために、各空気袋33が収縮すると同時に、表皮10の弾性力により、空気袋33が表皮10に押圧されて後退方向に移動して、空気袋33が溝消失形態になり、表皮10が溝消失状態になる。また、コンプレッサ41の停止に同期して、空気供給部材51からの通気溝21への気流用空気および内部空気路56への内部用空気の供給が停止する。
【0042】
次に、前述のように構成された第1実施形態の作用および効果について説明する。
人体支持具としての椅子1の通気装置20は、バックレスト4において人体が接触する表皮10に、人体と表皮10との間で空気が流通する複数の通気溝21を形成する通気溝形成機構30を備え、通気溝形成機構30は、バックレスト4の表皮10の内面10i側に設けられると共に表皮10に通気溝21を形成する複数の空気袋33を有する空気袋部材31と、空気袋部材31を作動させる作動機構40とを備え、作動機構40は、空気袋部材31を、表皮10に通気溝21を形成する溝形成形態と、表皮10から通気溝21をほぼ消失させる溝消失形態とに変更する。
この構造により、通気装置20が表皮10に通気溝21を形成することで、表皮10と人体との間の通気性が向上するので、椅子1の快適性が向上する。
また、椅子1において、通気装置20の空気袋部材31は、椅子1のバックレスト4の表皮10おいて、該表皮10と人体との間で空気が流通する通気溝21を形成する一方で、通気溝21が不要な場合には、該通気溝21をほぼ消失させることができる。この結果、通気溝21の形成が自在であることにより、通気溝21の形成が自在になるので、通気溝21の形成が可能な椅子1の使い勝手が向上する。さらに、通気溝21がほぼ消失して溝消失状態になった表皮10では、通気溝21が形成されている場合に比べて、表皮10の清掃作業が容易になる。
さらに、空気袋部材31により表皮10を変形させることで通気溝21が形成されることから、表皮10を変えることなく、突条でもある空気袋33の形状が異なる複数種類の空気袋部材31を用意することで、空気袋部材31の交換により、同じ表皮10に所望の形状の通気溝21を容易に形成することができる。
さらに、作動機構40による表皮10の変形度合いを作動機構40により調整することが可能になるので、通気溝21の形状の調整(例えば、通気溝21の深さや長さの調整)が可能になる。この結果、通気溝21の形成の自由度が大きくなって、椅子1の使用者にとって、より好適な通気溝21の形成が可能になる。
【0043】
通気溝21での空気流22を形成する空気流形成手段50を備えることから、空気流形成手段50により、通気溝21に強制的に空気流22を形成することができるので、通気溝21での通気が促進されて、通気装置20による通気性が向上する。
【0044】
通気装置20は、バックレスト4に支持された人体近傍での表皮10または表皮10近傍の温度および湿度をそれぞれ検出する温度センサ64および湿度センサ65を備えている通気用制御装置60を備え、空気流形成手段50は、空気流22を形成するために供給される気流用空気の温度を調節する温度調節部材44を備え、通気用制御装置60は、温度センサ64および湿度センサ65からの検出信号に基づいて温度調節部材44を制御する。
これにより、気流用空気の温度が調節されることにより、通気溝21を流通する空気の温度が調節されるので、通気による人体支持具の快適性を一層向上させることができる。
【0045】
各空気袋33に供給される作動用空気の温度が、空気流形成手段50が備える温度調節部材44を利用して調節される。
この構造により、空気袋33に供給される作動用空気が加熱・冷却されるので、空気袋33と表皮10との間の熱交換により表皮10の温度を空気袋33の温度に近づけることが可能になって、快適性が向上する。しかも、気流用空気を加熱・冷却するための温度調節部材44が共用されるので、部品点数が削減されて、コストが削減される。
【0046】
空気袋部材31は、表皮10に通気溝21を形成するための突条である空気袋33を有し、バックレスト4は、表皮10の内面10i側に支持基板11を構成するクッション部材12および芯材13を備え、クッション部材12および芯材13には、表皮10に向かって開口する貫通孔36が形成され、空気袋33は、溝形成形態において貫通孔36に収容されて、貫通孔36内でクッション部材12および芯材13に保持される。
この構造により、溝形成部材の空気袋33が表皮10の外面10o側に突出することで通気溝21が形成される場合に、空気袋33は貫通孔36内においてクッション部材12および芯材13に保持されることで、クッション部材12および芯材13により補強される。この結果、人体の荷重が空気袋33に作用したときに、クッション部材12および芯材13により、通気溝21の深さの減少を招来する空気袋33の倒れや潰れの発生が抑制されて、空気袋33の形状を確実に維持できる。
【0047】
空気袋部材31は、給排される流体である作動用空気により変形して溝形成形態および溝消失形態になる空気袋33を有する空気袋部材31であり、作動機構40は、空気袋33に対して流体の給排を行い、バックレスト4のクッション部材12および芯材13には、溝形成形態にある空気袋33の形状を保持するための形状保持部として、貫通孔36の壁面37が設けられる。
この構造により、溝形成状態にある空気袋33の形状が、壁面37により保持されるので、人体からの荷重が空気袋33に作用したときに、クッション部材12および芯材13に一部である壁面37により、通気溝21の深さの減少を招来する空気袋33の倒れや潰れの発生を抑制することができる。
また、流体圧応動体が伸縮性の空気袋33であることにより、流体圧応動体の形成が容易になる。
【0048】
バックレスト4には、表皮10の内面10i側に、内部用空気が流通する内部空気路56が、表皮10と表皮10の内面10i側で表皮10に隣接するクッション部材12により形成される。
この構造により、内部空気路56を流通する内部用空気と表皮10との間の熱交換が可能になり、表皮10の温度を内部空気路56を流通する空気の温度に近づけることができるので、椅子の快適性の一層の向上が可能になる。
また、空気供給部材51により内部用空気が供給されるので、椅子において、内部用空気を供給するための構造が簡単化される。
【0049】
次に、図1,図5〜図8を参照して、本発明の第2〜4実施形態を、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第2〜4実施形態は、第1実施形態に対して通気溝形成機構30が主に相違し、その他の構造は基本的に同一である。このため、空気流形成手段50においては、第1実施形態と同様に、コンプレッサ41から吐出された気流用空気が、温度調節部材44が設けられた空気供給管52を介して空気供給部材51に供給される。
なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号が使用されている。
【0050】
図1,図5,図6を参照して、第2実施形態を説明する。
椅子1において、傾動機構7は、背面カバー17に固定された連結アーム71(図2も参照)と、連結アーム71が枢着されると共にバックレスト4を傾動させる駆動リンク72と、駆動リンク72に枢着されると共にレッグレスト6を傾動させる機構を構成する連結リンク73(図1参照)と、椅子1用の制御装置8により制御されて駆動リンク72を駆動する駆動機構74とを備える。駆動機構74は、電動モータ75および電動モータ75により回転駆動されるネジ棒76と、該ネジ棒76に螺合すると共に駆動リンク72と連結されるスライダ77とを備える。
この傾動機構7により、バックレスト4が、図1に示される導入位置である着座位置から、座面シート3に対して下方に向かって傾動するとき、レッグレスト6が座面シート3に対して上方に向かって傾動して、椅子1が仰臥位置を占めて、人体が、着座位置での着座姿勢から、診療姿勢である仰臥姿勢になる。
【0051】
通気溝形成機構30は、溝形成部材としての溝形成パッド131と、可動部材としての溝形成パッド131を作動させる作動機構140とを備える。溝形成パッド131は、硬質の材料(例えば、合成樹脂または金属)から形成される。
バックレスト4の内部に収納されて、芯材13と背後カバーとの間に配置される溝形成パッド131は、板状の基体132と、縦方向に沿って細長く延びていると共に基体132から表皮10に向かって進出方向に突出している複数の溝形成体としての突条133とを備える。各突条133は基体132と連結され、ここでは各突条133と基体132とが一体成形されている。
【0052】
芯材13およびクッション部材12には、第1実施形態と同様の貫通孔36が形成されている。各貫通孔36は、各突条133にほぼ相似の形状であり、対応する突条133が挿入され、かつ貫通孔36内では芯材13およびクッション部材12に摺接して、突条133が、芯材13およびクッション部材12に案内されると共に保持される。
【0053】
流体圧式駆動機構としての油圧式駆動機構である作動機構140は、流体圧源である油圧源としてのマスタシリンダ機構80と、流体圧駆動部材81と、油圧源からの作動流体である作動油を流体圧駆動部材81に導く導管82とを備える。流体圧駆動部材81は、導管が接続されるシリンダ機構83と、シリンダ機構83により駆動される駆動ロッド84と、背面カバー17に固定されると共にシリンダ機構83が取り付けられる取付フレーム85と、取付フレーム85に設けられて溝形成パッド131を進退方向に移動可能に案内する案内部としての複数の案内ピン86とを有する。背面カバー17に結合された取付フレーム85に固定された案内ピン86は、基体132に設けられた貫通孔135を貫通して、芯材13に設けられた有底の孔13cに嵌合して、芯材13に保持される。
【0054】
台座2に固定されたフレーム70に固定されて設けられたマスタシリンダ機構80は、駆動リンク72に固定して設けられた作動部材である作動ロッド78がマスタシリンダ機構80のピストン(図示されず)を押圧することで発生する油圧を有する作動油を、導管82を通じてシリンダ機構83に供給する。導管82は、連結アーム71の内部を通ってシリンダ機構83に接続される。
【0055】
第2実施形態において、着座位置(図1参照)にある傾動機構7が、操作部9を通じて制御装置8により制御されて、駆動リンク72が椅子1の使用者の前方に移動し、バックレスト4が座面シート3に対して下方に傾動する。前方への駆動リンク72の移動の過程で、作動ロッド78がマスタシリンダ機構80に高油圧を発生させ、発生した高油圧の作動油が導管を介してシリンダ機構83に導かれて駆動ロッド84が進出方向に突出する。これにより、駆動ロッド84と当接する溝形成パッド131が駆動ロッド84に押圧されてクッション部材12および芯材13に対して進出方向に移動し、溝形成パッド131が溝形成形態となり、表皮10は、表皮10に表皮突条10cが形成されて通気溝21が形成される溝形成状態になる。
【0056】
また、仰臥位置から着座位置に復帰する過程では、駆動リンク72の後方移動により、マスタシリンダ機構80に対する作動ロッド78の押圧が解除されて、マスタシリンダ機構80で発生する油圧が低油圧になり、さらにはシリンダ機構83の油圧が低下して、駆動ロッド84が後退方向に移動する。このとき、表皮10の弾性力により、各突条133が表皮10に押圧されて溝形成パッド131がクッション部材12および芯材13に対して後退方向に移動して、溝形成パッド131が溝消失形態になり、表皮10が溝消失状態になる後退する。
【0057】
この第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用および効果が奏されるほか、次
の作用および効果が奏される。
通気溝形成機構30の溝形成部材は、表皮10に通気溝21を形成するための複数の突条133を有すると共に表皮10に対する進退方向に移動可能な溝形成パッド131であり、作動機構40は、溝形成パッド131を進退方向に駆動する。
この構造により、溝形成パッド131は表皮10に通気溝21を形成する複数の突条133を有するので、溝形成パッド131を進退方向に移動させることで、複数の通気溝21を形成すること、および該複数の通気溝21をほぼ消失させることが容易になる。また、溝形成パッド131により表皮10を変形させることから、表皮10を変えることなく、突条133の形状が異なる複数種類の溝形成パッド131を用意することで、溝形成パッド131の交換により、同じ表皮10に所望の形状の通気溝21を容易に形成することができる。
【0058】
椅子1は、座面シート3と、バックレスト4と、レッグレスト6と、バックレスト4およびレッグレスト6を傾動させる傾動機構7とを備える椅子1であり、作動機構40は、傾動機構7の作動に連動して、溝形成パッド131を溝形成形態および溝消失形態に変更する。
この構造により、通気溝21が椅子1の傾動機構7に連動して形成されるので、傾動可能な椅子1の使用形態に応じて、通気性を向上させて、椅子1の快適性の向上が可能になる。
【0059】
図7,図8を参照して、第3実施形態を説明する。
通気溝形成機構30は、第2実施形態の溝形成パッド131と同様の溝形成パッド131と、溝形成パッド131を作動させる作動機構240とを備える。
バックレスト4の内部に収納されて、芯材13と背後カバーとの間に配置される溝形成パッド131、および、芯材13およびクッション部材12に形成された各貫通孔36は、第2実施形態の溝形成パッド131および貫通孔36と同様である。
【0060】
作動機構240は、通気用制御装置60により制御される駆動部材としての電動モータ91と、電動モータ91により回転駆動される回転軸92に設けられた駆動カム93と、背面カバー17に固定されると共に電動モータ91を支持する支持台94および回転軸92を回転可能に支持する支持台95が取り付けられる取付フレーム96と、取付フレーム96に設けられて溝形成パッド131を進退方向に移動可能に案内する案内部としての複数の案内ピン97とを有する。
駆動カム93は、溝形成パッド131を介して、溝形成形態時での表皮10の弾性力により後退方向に付勢されて、溝消失形態においては、駆動カム93に当接するか、または駆動カム93との間に僅かな空隙を形成する位置を占める。
【0061】
また、操作部9(図1参照)がバックレスト4用傾動機構7を作動させるための傾動用操作スイッチを備えるか、または、通気用制御装置60が、バックレスト4用傾動機構7の作動を検出する傾動検出スイッチ(図示されず)を備える。そして、通気用制御装置60は、前記傾動用操作スイッチまたは前記傾動検出スイッチにより検出される傾動機構7の作動に連動して、電動モータ91を作動させて、溝形成パッド131を溝形成形態および溝消失形態に変更する。
ここで、前記傾動検出スイッチは、検出部61(図2参照)を構成する。
【0062】
第3実施形態においては、操作者により操作部9が操作されて、通気用制御装置60により制御された電動モータ91が駆動カム93を回転させて、該駆動カム93のカム山が溝形成パッド131を進出方向に押圧する。これにより、駆動カム93と当接する溝形成パッド131がクッション部材12および芯材13に対して進出方向に移動し、溝形成パッド131が溝形成形態となり、表皮10は、表皮10に表皮突条10cが形成されて通気溝21が形成される溝形成状態になる。
また、溝形成パッド131が溝形成形態から溝消滅形態に移行するときは、電動モータ91により回転駆動される駆動カム93が、カム山において溝形成パッド131と当接しない方向に回転すると共に、表皮10の弾性力により、溝形成パッド131は、駆動カム93との当接状態を維持しつつ、表皮10が溝消失形態になるまで後退方向に移動する。
そして、この第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0063】
以下、前述した各実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
図9に示されるように、座面シート3およびレッグレスト6にも通気溝形成機構30(図2,図5,図6参照)が設けられて、各表皮10に表皮突条10cが形成され、通気溝21が形成されてもよい。さらには、ヘッドレスト5にも通気溝形成機構30により通気溝21が形成されてもよい。そして、バックレスト4、座面シート3、レッグレスト6およびヘッドレスト5の少なくともいずれかに通気溝形成機構30が設けられてもよい。
ここで、座面シート3、レッグレスト6およびヘッドレスト5は、表皮10の内面側に該表皮10に隣接する前記支持基部(第1実施形態の支持基板11に相当)を備えている。
また、図9に示されるように、1つの支持部材(図9では、座面シート3である。)に、通気溝形成機構30および空気供給部材51の少なくとも一方が、図9では、通気溝形成機構30(図2,図5,図7参照)および空気供給部材51のそれぞれが、複数個、ここでは2つ設けられてもよい。
【0064】
第1実施形態に関連して、各空気袋33は、図10に示されるように、各空気袋33が給排される空気の圧力に応じた伸縮を可能とするために、可撓部(例えば、蛇腹状の可撓部)からなる伸縮部38を有していてもよい。また、作動機構40の空気圧源は、真空ポンプであってもよく、この場合は、図11に示されるように、流体圧応動体が、突条である流体圧応動筒体39であってもよい。溝形成体としての流体圧応動筒体39は、芯材13に固定された支持筒または支持柱である支持体39aと、支持体39aに進退方向に摺動可能に嵌合するキャップ状の可動筒39bとから構成され、圧力室33a内に真空圧(または、負圧)が導入されると、可動筒39bが後退方向に移動して表皮10が貫通孔36内に入り込むことで、通気溝21が形成される。また、表皮10の弾性力により、流体圧応動筒体39が溝消失形態になる。このとき、可動筒39bの先端部39eは、表皮10と結合手段により結合されて一体化され、表皮10とクッション部材12とは結合されていない。この場合にも、可動筒39bは貫通孔36内で摺動すると共に、芯材13およびクッション部材12に保持される。また、流体圧応動筒体39が表皮10の内面10i側に後退方向に移動する(または凹む)ことで通気溝21が形成される場合に、貫通孔36を利用して通気溝21が形成されるので、通気溝21の形成が容易になる。
【0065】
第1実施形態の作動機構40が、作動用流体の供給・停止を含む流量または流体圧を調節する、すなわち作動用流体の給排を調節するための給排用調節部材として給排用調節弁が設けられてもよい。そして、前記給排用調節弁が通気用制御装置60により制御されることで、流体の流量および流体圧が調節されて、溝形成形態になるときの流体圧応動体の進出方向または後退方向への移動量が変更され、通気溝21の深さ(流体圧応動部材が進出方向に移動して外面10o側に突出する場合は、表皮突条10cの高さでもある。)が変更されて、通気溝21の形状が変更されてもよい。
【0066】
空気袋部材31または流体圧応動部材は、基体32に相当する部分を備えることなく、複数の別々の空気袋33または流体圧応動体から構成されてもよい。
複数の空気袋33に、圧力導管42が途中から複数に分岐してそれぞれ接続され、または、複数の圧力導管42が互いに独立にそれぞれ接続されて、空気が供給されてもよい。
【0067】
第2,第3実施形態に関連して、図12に示されるように、溝形成パッド131の突条133の先端部134が表皮10と結合手段により結合されて一体化され、クッション部材12とは結合されていないものにおいて、溝形成形態になるとき、シリンダ機構83および駆動カム93が溝形成パッド131を後退方向に移動させるように配置される作動機構40とすることで、図12に二点鎖線で示されるように、溝形成パッド131が後退方向に移動して表皮10が貫通孔36内に入り込むことにより、通気溝21が形成される。この結果、貫通孔36を利用して通気溝21が形成されるので、通気溝21の形成が容易になる。
【0068】
圧力導管42と空気供給管52とが互いに独立に設けられてもよい。また、作動機構40が備える流体圧源と空気流形成手段50が備える空気供給源とは、別個の部材であってもよい。この場合、空気供給源は、コンプレッサ41よりも低圧縮比のファンであってもよい。
第1実施形態における作動機構40における作動用流体は、液体であってもよい。
【0069】
空気流形成手段50(図2参照)は、気流用空気の供給状態としての流量および供給時期の少なくともいずれかを調節する調節部材43としての空気調節弁を備え、操作部9からの操作信号と温度センサ64および湿度センサ65からの各検出信号の少なくともいずれかに応じて通気用制御装置60が制御する前記空気調節弁の開度調節または開閉により、気流用空気の流量および供給時期の少なくともいずれかが調節されてもよい。このように、気流用空気の流量および供給時期の少なくともいずれかが、温度センサ64および湿度センサ65からの各検出信号の少なくともいずれかに応じて調節されることにより、通気溝21を流通する空気の流量および供給時期の少なくともいずれかが調節されるので、通気による椅子1の快適性を一層向上させることができる。
【0070】
空気流形成手段50は、空気供給源および空気供給部材51の代わりに、空気吸引源としての真空ポンプに接続されて空気を吸引する空気吸引部材を備え、該空気吸引部材により空気を吸引することで、通気溝21に空気流22が形成されてもよい。また、空気流形成手段50は、空気供給源と、前記空気吸引源と、通気溝21の上流端側に配置された空気供給部材51と、該通気溝21の下流端側に配置された前記空気吸引部材とを備えていてもよい。
空気流形成手段50は、気流用空気に香り(芳香)やイオンを含有させるための補助部材を備えていてもよい。また、空気供給部材51および前記空気吸引部材には、空気中に含まれる塵埃を除去するための除塵フィルタが設けられてもよい。前記空気吸引部材により空気が吸引される場合、空気流形成手段50は、除菌および消臭のための補助部材を備えていてもよい。これら補助部材により、通気装置20を備える椅子1の快適性を一層高めることができる。
通気装置20が空気流形成手段50を備えることなく、通気溝21での空気の流れが、対流などによる自然の空気の流れであってもよい。
【0071】
第1実施形態のコンプレッサの運転・停止、または、通気溝形成機構30への流体の給排および作動機構40への気流用空気の供給が、自動的に行われてもよい。例えば、椅子1に人が着座したことを検出する着座スイッチまたはバックレスト4が診療位置である仰臥位置を占めたこと検出する位置センサからの検出信号に基づいて、椅子1に人が着座したとき、またはバックレスト4が診療位置である仰臥位置を占めたときに、運転が開始されてもよい。この場合、前記着座スイッチおよび前記位置センサは、通気用制御装置60の検出部61を構成する。
【0072】
第2実施形態において、作動流体は気体または空気であってもよく、さらに傾動機構7を利用した流体圧源(マスタシリンダ機構80)の代わりに、傾動機構7とは別個に流体圧源が設けられてもよい。
第1実施形態において、通気溝形成機構30への流体の給排および作動機構40への気流用空気の供給が、第2,第3実施形態と同様に傾動機構7の作動に応じて制御されてもよい。
傾動機構7は、バックレスト用の傾動機構に加えて、座面シート3を傾動させるチルト用傾動機構を備え、該チルト用傾動機構の作動に応じて溝形成部材が溝形成形態および溝消失形態に変更されてもよい。
【0073】
検出部61として、体温を直接または間接的に検出する体温センサが設けられて、該体温センサからの検出信号に応じて、温度調節部材44が、温度が高いほど(または、低いほど)気流用空気または加圧空気の冷却(または、加熱)をしてもよい。
作動機構40は、溝形成形態から溝消失状態への溝形成部材の移動を迅速化するために、戻り用付勢部材、例えばバネを備えていてもよい。
【0074】
通気装置20を既存の椅子に装着して、通気装置20を備える椅子に改造することができる。
人体支持具の支持部材に、通気溝21が横方向に延びて形成されてもよい。
内部用空気が流通する内部空気路56は設けられなくてもよい。
人体支持具は、歯科用以外の医療用椅子であってもよく、さらに医療用以外の(例えば、マッサージ用または自動車用の)椅子またはベンチであってもよく、さらに椅子以外にベッドであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 椅子(人体支持具)
3 座面シート(支持部材)
4 バックレスト(支持部材)
6 レッグレスト(支持部材)
7 傾動機構
10 表皮
10i 内面
11 支持基板(支持基部、隣接部材)
20 通気装置
21 通気溝
30 通気溝形成機構
31 空気袋部材(流体圧応動部材、溝形成部材)
33 空気袋(流体袋、流体圧応動体、突条)
36 貫通孔(収容空間)
37 壁面(形状保持部)
39 流体圧応動筒体
40,140,240 作動機構
43 調節部材
50 空気流形成手段
56 内部空気路
60 通気用制御装置
63 状態検出手段
131 溝形成パッド(溝形成部材)
133 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を支持する支持部材を備える人体支持具における通気装置であって、
前記支持部材において前記人体が接触する表皮に、前記人体と前記表皮との間で空気が流通する1以上の通気溝を形成する通気溝形成機構を備え、
前記通気溝形成機構は、前記支持部材において前記表皮の内面側に設けられると共に前記表皮を変形させることにより前記表皮に前記通気溝を形成する溝形成部材と、前記溝形成部材を作動させる作動機構とを備え、
前記作動機構は、前記溝形成部材を、前記表皮に前記通気溝を形成する溝形成形態と、前記表皮から前記通気溝をほぼ消失させる溝消失形態とに変更することを特徴とする通気装置。
【請求項2】
請求項1記載の通気装置であって、
前記通気溝での空気流を形成する空気流形成手段を備えることを特徴とする通気装置。
【請求項3】
請求項2記載の通気装置であって、
前記支持部材に支持された前記人体近傍での前記表皮または前記表皮近傍の温度または湿度を検出する状態検出手段を備える制御装置を備え、
前記空気流形成手段は、前記空気流を形成するために供給される気流用空気の流量、温度および供給時期の少なくともいずれかを調節する調節部材を備え、
前記制御装置は、前記状態検出手段からの検出信号に基づいて前記調節部材を制御することを特徴とする通気装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置であって、
前記溝形成部材は、前記表皮に前記通気溝を形成するための突条を有し、
前記支持部材は、前記表皮の前記内面側に支持基部を備え、
前記支持基部には、前記表皮に向かって開口する収容空間が形成され、
前記突条は、前記溝形成形態において前記収容空間に収容されて、前記収容空間内で前記支持基部に保持されることを特徴とする通気装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置であって、
前記溝形成部材は、給排される流体により変形して前記溝形成形態および前記溝消失形態になる流体圧応動体を有する流体圧応動部材であり、
前記作動機構は、前記流体圧応動体に対して流体の給排を行い、
前記支持部材には、前記溝形成形態にある前記流体圧応動体の形状を保持するための形状保持部が設けられることを特徴とする通気装置。
【請求項6】
請求項5記載の通気装置であって、
前記流体圧応動体は、伸縮性の流体袋であることを特徴とする通気装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項記載の通気装置であって、
前記溝形成部材は、前記表皮に前記通気溝を形成するための複数の突条を有すると共に前記表皮に対する進退方向に移動可能な溝形成パッドであり、
前記作動機構は、前記溝形成パッドを前記進退方向に駆動することを特徴とする通気装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の通気装置であって、
前記支持部材には、前記表皮の前記内面側に、内部用空気が流通する内部空気路が、前記表皮と前記表皮の前記内面側で前記表皮に隣接する隣接部材とにより形成されることを特徴とする通気装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の通気装置であって、
前記人体支持具は、座面シート、バックレストおよびレッグレストのうちの少なくとも前記座面シートおよび前記バックレストと、前記座面シートおよび前記バックレストの少なくともいずれかを傾動させる傾動機構とを備える椅子であり、
前記支持部材は、前記座面シート、前記バックレストおよび前記レッグレストの少なくともいずれかであり、
前記作動機構は、前記傾動機構の作動に連動して、前記溝形成部材を前記溝形成形態および前記溝消失形態に変更することを特徴とする通気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−45260(P2012−45260A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191848(P2010−191848)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【Fターム(参考)】