説明

人体状態判定装置及び人体状態判定方法

【課題】姿勢の変化を最小限として必要なデータを取得し、適切に人体状態を判定することができる人体状態判定装置を提供する。
【解決手段】人体状態判定装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いて送信されて計測対象人物Mによって反射した電磁波を受信器103によって受信すると、受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、時間変化検出部106によって計測対象人物Mの呼吸活動を検出するとともに、計測対象人物Mの呼気の気体成分毎の受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、呼吸状態計測部107によって気体成分毎の変化量を計測し、検出した呼吸活動についての計測した気体成分毎の変化量に基づいて、計測対象人物Mの状態を負荷推定部108によって推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の肉体及び精神状態を判定する人体状態判定装置及び人体状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両を運転中の運転者等の肉体及び精神状態を判定することは、車両の安全な運転動作につながる。人体情報を判定する技術としては、特許文献1に記載された居眠り検出装置のように、人体の鼻骨上皮膚温の上昇による交感神経緊張の低下と、咬筋上皮膚温の上昇による入眠時の有意差とに基づいて、居眠りを検出するものが知られている。
【特許文献1】特開平9−154835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転者をはじめとする車両の乗員は、乗車中の姿勢に変化が生じることが通常である。しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術においては、咬筋上皮膚温を計測する必要があるため、交差点やカーブ等で顔向きが変化すると連続的にデータを取得することができず、結果として人体状態を適切に判定することができないことがある。
【0004】
本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、姿勢の変化を最小限として必要なデータを取得し、適切に人体状態を判定することができる人体状態判定装置及び人体状態判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、送信した電磁波が計測対象人物によって反射され、これを受信すると、受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、計測対象人物の呼吸活動を検出するとともに、計測対象人物の呼気の気体成分毎の受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、気体成分毎の変化量を計測し、検出した呼吸活動についての計測した気体成分毎の変化量に基づいて、計測対象人物の状態を推定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、計測対象人物の呼吸を遠隔計測し、その状態に基づいて状態推定を行うことから、必要なデータを取得するための計測対象人物の姿勢の変化が呼吸動作のみと最小限で済み、適切に人体状態を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態としての人体状態判定装置について具体的に説明する。
【0008】
〔第1実施形態〕
〔人体状態判定装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置は、計測対象人物の呼気成分の変化量に基づいて計測対象人物の状態を判定する。
【0009】
本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置は、呼気成分の変化を求めるために、0.1THz〜3THz帯からなるテラヘルツ帯の電磁波(以下、テラヘルツ波という。)を利用する。テラヘルツ波は、水蒸気による減衰が顕著に現れるが、その吸収周波数帯域は、100MHz〜100GHz帯程度(中心周波数に対して0.01%〜10%程度)と狭帯域であり、他の気体中の吸収や散乱等の影響を受けにくいという性質がある。従って、テラヘルツ波を利用することにより呼気中に含まれる水蒸気を検出することができる。
【0010】
呼気中の水蒸気量は、人体の体温で湿度100%の状態が保持されることから、水蒸気量は1回あたりの呼吸の換気量に比例するといえる。生理学における交感神経(ストレスや緊張や攻撃的な態勢に整えるための自律神経)優位時には、気管拡張と呼吸の換気量の増大とが起こることが知られている。従って、呼吸の換気量を計測することにより計測対象人物の負荷状態を推定することができる。
【0011】
計測対象人物から反射されてきた電磁波に対し周波数解析を行うことにより、水蒸気の吸収周波数帯域の振幅値と水蒸気の吸収周波数帯域以外の周波数帯域の振幅値との比率を求める。これは、テラヘルツ波を反射系で使用した際に、反射物の反射率や表面での水分(液体)による吸収によって振幅強度が低くなることによる影響を低減するためである。この場合においても、上述した水蒸気による減衰帯域が狭いことから、水蒸気の吸収周波数帯域の振幅値と水蒸気の吸収周波数帯域以外の周波数帯域の振幅値との比率を用いることにより、水蒸気量の変化を高精度に検出することができる。
【0012】
本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置は、このような原理に基づいて、テラヘルツ波を発生して計測対象人物に対して送信し、その反射波形を解析することにより、計測対象人物の状態を判定する。テラヘルツ波の発生及び送受信系は、いわゆる光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器を用いる。
【0013】
具体的には、本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置は、図1に示すように、電磁波を発生する電磁波送信手段としての電磁波発生器101と、この電磁波発生器101によって発生された電磁波を計測対象人物Mに対して送信する電磁波送信手段としての送信器102と、計測対象人物Mによって反射された電磁波を受信する電磁波受信手段としての受信器103と、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する周波数制御部104と、受信器103によって受信した受信信号に対して周波数解析を施す周波数解析部105と、この周波数解析部105による周波数解析結果に基づいて受信信号の振幅値の時間変化を検出する呼吸活動検出手段としての時間変化検出部106と、計測対象人物Mの呼吸状態を計測する呼気成分変化量計測手段としての呼吸状態計測部107と、計測対象人物Mの負荷状態を推定する状態推定手段としての負荷推定部108とを備える。
【0014】
電磁波発生器101は、周波数制御部104によって指示された周波数、すなわち、呼吸活動の気体成分毎の吸収周波数を含む発信周波数帯域の電磁波を発生する。具体的には、電磁波発生器101は、近赤外光を用いたQスイッチ動作Nd:YAGレーザ(波長:1.064μm)光源と波長可変半導体レーザ(波長:1.066μm〜1.075μm)光源とを用いて、単一縦モード周波数の電磁波を発生するように構成することができる。この電磁波発生器101によって発生された電磁波は、送信器102に供給される。
【0015】
送信器102は、電磁波発生器101によって発生された電磁波をテラヘルツ波として計測対象人物Mに対して送信する。具体的には、送信器102は、「川瀬他、“テラフォトニクス光源−波長可変THz波の発生と応用可能性−”応用物理2002年2月号解説」に記載されているように、MgO;LiNb03光導波路等の非線形光学結晶と、この非線形光学結晶上に設けられたレンズ系とからなる光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器を用いて構成することができる。
【0016】
電磁波発生器101を構成する2つのレーザ光源のうち、Qスイッチ動作Nd:YAGレーザ光源からのレーザ光源からのアイドラ光と、波長可変半導体レーザ光源からのポンプ光と、送信器102によって送信する送信テラヘルツ波光の光学系との関係は、ノンコリニア位相整合条件を満たし、送信器102は、パラメトリック波数ベクトル方向に送信テラヘルツ波を発生する。またレンズ系は、計測対象人物Mの頭部を含む領域へ向けて送信テラヘルツ波を照射し、ビーム径が1m離れた地点で100mmφ程度となるように調整する。なお、レンズとしては、例えば、非線形光学結晶上に配設されたSi製プリズムアレイと、ポリメチルペンテン製シリンドリカルレンズとを用いて構成することができる。この送信器102によって送信された送信テラヘルツ波は、計測対象人物Mへと到達する。
【0017】
受信器103は、送信器102から送信されて計測対象人物Mによって反射された電磁波を受信する。具体的には、受信器103は、焦電素子のDTGS結晶(Deuterated Triglycine Sulfate)を主成分とする検出器を用い、他波長域の遮断フィルタと集光系とを検出器の前部に配設して構成することができる。この受信器103によって受信された電磁波からなる受信信号は、周波数解析部105に供給される。
【0018】
周波数制御部104は、周波数解析部105から供給される指示信号に基づいて、電磁波発生器101を構成する波長可変半導体レーザ光源から発振される電磁波の発振波長を制御することにより、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する。すなわち、周波数制御部104は、呼吸活動の気体成分毎、ここでは水蒸気の吸収周波数を含む発信周波数帯域の電磁波を電磁波発生器101及び送信器102によって送信するように制御する。
【0019】
周波数解析部105は、増幅器、A/Dコンバータ、CPU(Central Processing Unit)、及びメモリ等から構成され、受信器103によって受信した受信信号の信号波形を取得して周波数解析を行う。そして、周波数解析部105は、呼吸に関する情報を取得するために、水蒸気の吸収周波数(例えば1.2THz付近)の振幅値と、水蒸気以外の吸収周波数(例えば1.3THz付近)の振幅値との比率を算出する。周波数解析部105は、算出した比率を示す情報を、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107に供給する。また周波数解析部105は、解析に利用する周波数帯域を示す情報を、周波数制御部104に供給する。
【0020】
時間変化検出部106は、CPUやメモリ等から構成され、周波数解析部105による周波数解析結果に基づいて、受信信号の振幅値の時間変化を検出する。そして時間変化検出部106は、検出した時間変化に基づいて、計測対象人物Mの呼吸周期に関する値(例えば1秒±50%)の周期以上で、受信信号の振幅値が変化するか否かを計測することにより、計測対象人物Mの呼吸活動の有無を検出する。時間変化検出部106は、計測対象人物Mが呼吸を行っている旨を検出すると、その旨を示す情報を負荷推定部108に供給する。
【0021】
呼吸状態計測部107は、CPUやメモリ等から構成され、例えば図2に示すように、周波数解析部105による周波数解析結果に基づいて、計測対象人物Mの呼気の気体成分毎の含有量の増減の傾向を算出する。すなわち呼吸状態計測部107は、呼吸に関する所定周期内の最小振幅値を求めてその値を保存し、その最小振幅値の時間変化に基づいて、水蒸気量(呼吸の換気量)の増減の傾向を算出する。より具体的には、呼吸状態計測部107は、例えば10呼吸といった呼吸周期の定数倍を計測時間領域とし、その計測時間領域内での最小振幅値の変化を計測し、最小二乗法等の統計処理による補正と時間微分とを用いて、計測時間領域の開始と終了とにおける呼吸の換気量の変化量の割合を算出する。呼吸状態計測部107は、算出した割合を示す情報を負荷推定部108に供給する。
【0022】
負荷推定部108は、CPUやメモリ等から構成され、例えば図3中Aに示すように、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が例えば10%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部108は、例えば図3中Bに示すように、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が例えば10%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。負荷推定部108は、推定した負荷状態を示す情報を外部に出力する。
【0023】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図4に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0024】
まず、人体状態判定装置は、図4に示すように、ステップS1において、電磁波発生器101によって電磁波を発生させて送信器102に入射し、テラヘルツ波を計測対象人物Mに照射する。続いて、人体状態判定装置は、ステップS2において、計測対象人物Mによって反射された電磁波を受信器103によって受信すると、その受信信号を周波数解析部105に供給する。周波数解析部105は、受信信号を検波した際に、解析に利用する周波数帯域を示す情報を周波数制御部104に供給する。また、周波数解析部105は、受信信号の周波数解析を行い、その周波数特性を計測する。そして人体状態判定装置は、ステップS3において、計測対象人物Mによる電磁波の反射状態の影響を低減するために、周波数解析部105により、水蒸気の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない水蒸気以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出する。
【0025】
ここで、人体状態判定装置は、ステップS4において、図示しないタイマ等の計時手段によって計時した結果、所定の計測時間を経過していない場合には、ステップS1からの処理を繰り返し行う一方で、計測時間を経過した場合には、ステップS5へと処理を移行する。人体状態判定装置は、ステップS5へと処理を移行すると、時間変化検出部106により、ステップS3にて算出された振幅比の時間変化が所定周期以上で行われているか否かを検出する。ここで、人体状態判定装置は、振幅比の時間変化が所定周期以上で行われていない旨を検出した場合には、そのまま一連の処理を終了する一方で、振幅比の時間変化が所定周期以上で行われている旨を検出した場合には、計測対象人物Mが呼吸を行っているものと判定し、ステップS6へと処理を移行する。
【0026】
人体状態判定装置は、ステップS6において、時間変化検出部106により、振幅比の時間変化に基づいて呼吸の周期を算出し、計測対象人物Mが呼吸を行っている旨とその呼吸周期とを示す情報を負荷推定部108に供給する。続いて、人体状態判定装置は、ステップS7において、呼吸状態計測部107により、例えば10呼吸分として10秒といった所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%以内であるか否かを判定する。
【0027】
人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%未満である場合には、計測対象人物Mの状態が通常状態であるものと判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%以上である場合には、ステップS8において、負荷状態推定部108により、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部108は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷状態推定部108は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。
【0028】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を適切に判定することができる。なお、0.1THz〜10THzの周波数帯域には、水蒸気の吸収周波数帯域が複数存在することから、人体状態判定装置においては、周波数解析部105による解析の際に複数の吸収周波数帯域を設定することにより、解析対象とする周波数帯域幅を拡大し、より高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。また、人体状態判定装置において、電磁波発生器101、送信器102及び受信器103からなるテラヘルツ波の発生及び送受信系は、上述した光注入テラヘルツ波パラメトリック発生器に限らず、テラヘルツ波帯に相当する単パルスを送信する原理であるテラヘルツ波時間分光法(THz−TSD)を用い、実時間計測と周波数解析とによる手法を適用するようにしてもよい。
【0029】
以上詳細に説明したように、本発明の第1実施形態として示した人体状態判定装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いて送信されて計測対象人物Mによって反射した電磁波を受信器103によって受信すると、受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、時間変化検出部106によって計測対象人物Mの呼吸活動を検出するとともに、計測対象人物Mの呼気の気体成分毎の受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、呼吸状態計測部107によって気体成分毎の変化量を計測し、検出した呼吸活動についての計測した気体成分毎の変化量に基づいて、計測対象人物Mの状態を負荷推定部108によって推定する。これにより、この人体状態判定装置においては、計測対象人物Mの呼吸を遠隔計測し、その状態に基づいて状態推定を行うことから、必要なデータを取得するための計測対象人物Mの姿勢の変化が呼吸動作のみと最小限で済み、適切に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0030】
また、この人体状態判定装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いて、水蒸気の吸収周波数を含む発信周波数帯域の電磁波を発生して送信し、その発信周波数帯域に基づいて、計測対象人物Mの呼気中の水蒸気の含有量を呼吸状態計測部107によって計測し、呼吸数に基づく所定の計測時間内に呼吸状態計測部107によって計測された水蒸気の含有量の時間変化量と、人の交感神経の作用との相関に基づいて、計測対象人物Mの状態を負荷推定部108によって推定する。このように、この人体状態判定装置においては、呼気中の水蒸気の含有量の変化に基づいて交感神経優位の是非を推定することができ、過度なリラックス状態、すなわち、入眠傾向の是非を判定することができる。
【0031】
さらにこの人体状態判定装置においては、呼吸状態計測部107により、水蒸気の吸収周波数帯域と水蒸気の吸収周波数帯域以外の周波数帯域との振幅比に基づいて、計測対象人物Mの呼気中の水蒸気の含有量を計測することから、反射物の反射率等による振幅強度の低下の影響を低減することができ、水蒸気の含有量の変化を高精度に検出することができる。
【0032】
さらにまたこの人体状態判定装置において、負荷推定部108は、呼吸状態計測部107によって計測された水蒸気の含有量の時間変化量が、相関の有意差に関する所定の第1の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が交感神経優位と推定し、相関の有意差に関する所定の第2の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が副交感神経優位と推定する。このように、この人体状態判定装置においては、閾値に基づく推定を行うことにより、定量的に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置は、第1実施形態として示した人体状態判定装置を改良し、水蒸気量に基づく呼吸状態の計測に加え、口腔状態の計測も行うものである。従って本実施形態では、第1実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
〔人体状態判定装置の構成〕
テラヘルツ波は、水蒸気と同様に、揮発性硫化物(気体)によっても周波数帯域で狭い減衰特性が得られる。この揮発性硫化物は、口臭の原因となる物質のひとつであり、口臭は、交感神経優位にともなう唾液分泌量の減少と相関がある。すなわち、口腔内の揮発性硫化物の発生は、唾液分泌量の減少が持続することによって生じる。従って、人体状態判定装置においては、呼吸の換気量による交感神経優位の計測とは異なり、唾液分泌量の減少が持続性を有するか否かに基づいて、計測対象人物Mの負荷状態が持続性のあるものであるか否かを推定することができる。
【0035】
本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置は、このような原理に基づいて、計測対象人物Mの状態を判定する。具体的には、人体状態判定装置は、図5に示すように、上述した電磁波発生器101、送信器102、受信器103、周波数制御部104、周波数解析部105、時間変化検出部106、及び呼吸状態計測部107の他に、計測対象人物Mの負荷状態を推定する負荷推定部208と、計測対象人物Mの口腔状態を計測する呼気成分変化量計測手段としての口腔状態計測部209とを備える。すなわち人体状態判定装置は、第1の実施形態となる体状態判定装置における負荷推定部108に代えて負荷推定部208を備えると共に、新たに口腔状態計測部209を追加した構成とされる。
【0036】
口腔状態計測部209は、CPUやメモリ等から構成され、例えば図6に示すように、周波数解析部105による周波数解析結果に基づいて、メチルメルカプタンや硫化水素等の揮発性硫化物の所定の周波数特性を検出する。例えば硫化水素は、0.85THzや0.92THz付近で吸収ピークを有することから、周波数解析部105による解析の際に当該吸収周波数帯域を設定し、口腔状態計測部209により、揮発性硫化物に関する所定周期内の最小振幅値を求めてその値を保存し、その最小振幅値の時間変化に基づいて、口腔内の唾液分泌量と相関がある揮発性硫化物量の増減の傾向を算出する。具体的には、口腔状態計測部209は、上述した呼吸周期の定数倍を計測時間領域とし、その計測時間領域内での揮発性硫化物の吸収周波数帯域での最小振幅値の変化を計測し、最小二乗法等の統計処理による補正と時間微分とを用いて、計測時間領域の開始と終了とにおける唾液分泌量の変化量の割合を算出する。口腔状態計測部209は、算出した割合を示す情報を負荷推定部208に供給する。
【0037】
負荷推定部208は、CPUやメモリ等から構成され、上述した負荷推定部108と同様に、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が例えば10%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部208は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が例えば10%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。これに加え、負荷推定部208は、例えば図7中Aに示すように、口腔状態計測部209の出力に基づいて、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の増加である旨を検出した場合には、計測対象人物Mが交感神経優位にともなう持続性のあるストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部208は、例えば図7中Bに示すように、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の減少である旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mが副交感神経優位にともなう持続性のあるリラックス傾向にあると推定する。負荷推定部208は、推定した負荷状態を示す情報を外部に出力する。
【0038】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図8に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0039】
まず、人体状態判定装置は、図8に示すように、ステップS11において、図4中ステップS1乃至ステップS6と同様の処理を行う。このとき、人体状態判定装置は、ステップS3に相当する処理として、周波数解析部105により、水蒸気の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない水蒸気以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出するとともに、揮発性硫化物の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない揮発性硫化物以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出する。そして人体状態判定装置は、ステップS12において、呼吸状態計測部107により、水蒸気の吸収に関する判定を行う。すなわち、呼吸状態計測部107は、図4中ステップS7と同様に、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%以内であるか否かを判定する。
【0040】
人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%未満である場合には、計測対象人物Mの状態が通常状態であるものと判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±10%以上である場合には、ステップS13において、負荷状態推定部208により、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部208は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷状態推定部208は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合が10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。さらに人体状態判定装置は、ステップS14において、口腔状態計測部209により、揮発性硫化物の吸収に関する判定を行う。すなわち、口腔状態計測部209は、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、唾液分泌量の変化量の割合が±10%以内であるか否かを判定する。
【0041】
人体状態判定装置は、唾液分泌量の変化量の割合が±10%未満である場合には、ステップS13にて判定された計測対象人物Mの状態が持続性のないものであると判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、唾液分泌量の変化量の割合が±10%以上である場合には、ステップS15において、負荷状態推定部208により、時間変化検出部106及び口腔状態計測部209の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部208は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの交感神経優位にともなうストレス負荷傾向が持続性のあるものと推定する。また、負荷状態推定部208は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの副交感神経優位にともなうリラックス傾向が持続性のあるものと推定する。
【0042】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を適切に判定することができる。
【0043】
以上詳細に説明したように、本発明の第2実施形態となる人体状態判定装置においては、電磁波発生器101及び送信器102を用いて、揮発性硫化物の吸収周波数を含む発信周波数帯域の電磁波を発生して送信し、その発信周波数帯域に基づいて、計測対象人物Mの呼気中の揮発性硫化物の含有量を口腔状態計測部209によって計測し、呼吸数に基づく所定の計測時間内に口腔状態計測部209によって計測された揮発性硫化物の含有量の時間変化量と、人の交感神経の作用との相関に基づいて、計測対象人物Mの状態を負荷推定部208によって推定する。このように、この人体状態判定装置においては、呼気中の揮発性硫化物を検出することにより、特徴量を増やしてより高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。特に、この人体状態判定装置においては、検出する揮発性硫化物をメチルメルカプタン及び/又は硫化水素に限定することにより、不要に広い周波数帯域を処理対象とすることがなくなる。
【0044】
またこの人体状態判定装置において負荷推定部208は、口腔状態計測部209によって計測された揮発性硫化物の含有量の時間変化量が、相関の有意差に関する所定の第3の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が交感神経優位と推定し、相関の有意差に関する所定の第4の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が副交感神経優位と推定する。このように、この人体状態判定装置においては、閾値に基づく推定を行うことにより、定量的に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0045】
さらに揮発硫化物はストレス状態が持続すると発生する。そのため、この人体状態判定装置において、負荷推定部208は、口腔状態計測部209によって計測された揮発性硫化物の含有量の時間変化量が、相関の有意差に関する所定の第3の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が持続性のある交感神経優位と推定し、相関の有意差に関する所定の第4の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には計測対象人物Mの状態が持続性のある副交感神経優位と推定することができ、持続性のあるストレス状態を効率よく判定することができる。
【0046】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態となる人体状態判定装置は、第1実施形態及び第2実施形態として示した人体状態判定装置を改良し、計測対象人物周囲の大気状態に基づいて、計測対象人物の状態を判定するための閾値を補正するようにしたものである。従って本実施形態においては、第1実施形態及び第2実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
〔人体状態判定装置の構成〕
人体状態判定装置を車両に搭載した場合を考える。通常、車室内の空気は、35℃近傍にないことから、計測対象人物Mの口付近で呼気中の水蒸気成分を遠隔計測すると、その呼吸の換気量に応じた差異が生じるため、第1及び第2の実施形態にて説明した方法によって計測対象人物Mの状態を判定することができる。しかしながら、人体状態判定装置においては、乾季や雨季等の場合には湿度の影響を大きく受けることが予想される。例えば雨季の場合には、もともと周囲環境の湿度が高いことから、呼気による水蒸気の湿度変化は乾季に比べて小さい。また、雨季の場合には、湿度の変動が大きくないことから、人体状態判定装置においては、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を小さくした方が、より高精度に計測することができるといえる。一方、乾季の場合には、湿度の変動要因が大きいことから、人体状態判定装置においては、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値を高めに設定するのが望ましいといえる。
【0048】
本発明の第3の実施形態となる人体状態判定装置は、このような周囲環境の湿度の影響を考慮した補正を行うことにより、湿度の影響の低減を図るものである。具体的には、人体状態判定装置は、図9に示すように、上述した電磁波発生器101、送信器102、受信器103、周波数制御部104、周波数解析部105、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、及び口腔状態計測部209の他に、計測対象人物Mの負荷状態を推定する負荷推定部308と、計測対象人物Mの周囲の相対湿度を計測する大気状態計測手段としての湿度計測部310とを備える。すなわち、人体状態判定装置は、第2の実施形態となる人体状態判定装置における負荷推定部208に代えて負荷推定部308を備えるとともに、新たに湿度計測部310を追加した構成とされる。
【0049】
湿度計測部310は、例えば、高分子膜、電極部、及び駆動回路等からなる湿度計と、A/Dコンバータ、CPU、及びメモリ等からなる湿度処理手段とから構成され、計測対象人物Mの周囲の相対湿度を計測する。湿度計測部310は、計測した湿度情報を負荷推定部308に供給する。
【0050】
負荷推定部308は、CPUやメモリ等から構成され、上述した負荷推定部208と同様に、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107並びに口腔状態計測部209のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する。このとき、負荷推定部308は、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する際に、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を10%と固定値にするのではなく、湿度計測部310によって計測された相対湿度に基づいて補正した値とする。例えば、負荷推定部308は、飽和水蒸気量に関する簡素化した式を用いて、閾値としての呼吸の換気量の変化量の割合Hを次式(1)によって補正する。なお、次式(1)におけるRHは、相対湿度である。
【数1】

【0051】
すなわち、負荷推定部308は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部308は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。負荷推定部308は、推定した負荷状態を示す情報を外部に出力する。
【0052】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図10に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0053】
まず、人体状態判定装置は、図10に示すように、ステップS21において、図4中ステップS1乃至ステップS6と同様の処理を行う。続いて、人体状態判定装置は、ステップS22において、湿度計測部310によって計測対象人物Mの周囲の相対湿度を計測した上で、ステップS23において、呼吸状態計測部107により、水蒸気の吸収に関する判定を行う。すなわち、呼吸状態計測部107は、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、呼吸の換気量の変化量の割合がステップS22にて計測された湿度に基づいて補正された閾値である±H%以内であるか否かを判定する。
【0054】
人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±H%未満である場合には、計測対象人物Mの状態が通常状態であるものと判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±H%以上である場合には、ステップS24において、負荷状態推定部308により、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部308は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷状態推定部308は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。
【0055】
人体状態判定装置は、ステップS25において、口腔状態計測部209により、揮発性硫化物の吸収に関する判定を行う。すなわち、口腔状態計測部209は、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、唾液分泌量の変化量の割合が±10%以内であるか否かを判定する。なお、計測対象人物Mの周囲の相対湿度は、呼吸の換気量のみに影響することから、ここでの閾値、すなわち、唾液分泌量の変化量の割合は、±10%のような固定値とする。
【0056】
人体状態判定装置は、唾液分泌量の変化量の割合が±10%未満である場合には、ステップS24にて判定された計測対象人物Mの状態が持続性のないものであると判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、唾液分泌量の変化量の割合が±10%以上である場合には、ステップS26において、負荷状態推定部308により、時間変化検出部106及び口腔状態計測部209の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部308は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの交感神経優位にともなうストレス負荷傾向が持続性のあるものと推定する。また、負荷状態推定部308は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの副交感神経優位にともなうリラックス傾向が持続性のあるものと推定する。
【0057】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの周囲の相対湿度の影響を低減し、当該計測対象人物Mの状態を高精度に判定することができる。なお、人体状態判定装置においては、周囲環境の湿度のみならず温度を加味して閾値を補正するようにしてもよく、これにより、例えば日光が照射することに起因する計測対象人物Mの体表面の温度変化によって生じる誤差の影響を低減することができ、より高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0058】
以上詳細に説明したように、本発明の第3の実施形態となる人体状態判定装置においては、計測対象人物Mの周囲の大気状態、具体的には、計測対象人物Mの周囲の相対湿度を湿度検出部310によって計測し、計測した相対湿度に基づいて、負荷推定部308による判定の際に閾値を補正することにより、同じ呼気でも変化量に差がある場合に、高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0059】
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態となる人体状態判定装置は、第1乃至第3の実施形態として示した人体状態判定装置を改良し、鼻呼吸と口呼吸との別に基づいて、計測対象人物の状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を補正するようにしたものである。従って本実施形態においては、第1乃至第3の実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0060】
〔人体状態判定装置の構成〕
呼吸には鼻呼吸と口呼吸とがあるが、鼻呼吸の場合には、鼻腔による水蒸気の吸収が起こる。呼吸の深さによる減衰量が変化することから、人体状態判定装置においては、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を補正することにより、より高精度に計測することができるといえる。本発明の第4実施形態となる人体状態判定装置は、このような鼻呼吸と口呼吸との別を考慮した補正を行うものである。具体的には、人体状態判定装置は、図11に示すように、上述した電磁波発生器101、送信器102、受信器103、周波数制御部104、周波数解析部105、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、口腔状態計測部209、及び湿度計測部310の他に、計測対象人物Mの負荷状態を推定する負荷推定部408と、計測対象人物Mが開口した呼吸(口呼吸)を行っているか否かを判定する呼吸判定手段としての開口判定部411とを備える。すなわち、人体状態判定装置は、第3実施形態として示した人体状態判定装置における負荷推定部308に代えて負荷推定部408を備えるとともに、新たに開口判定部411を追加した構成とされる。
【0061】
開口判定部411は、時間変化検出部106によって検出された水蒸気量の推定に関する受信信号の振幅値の時間変化が例えば30%以上の変化を呈するものであった場合には、計測対象人物Mが閉口状態から開口状態へと、又は、開口状態から閉口状態へと変化したものと判定する。すなわち、開口判定部411は、計測対象人物Mの呼吸が、鼻呼吸から口呼吸へと、又は、口呼吸から鼻呼吸へと変化したものと判定する。開口判定部411は、判定結果を示す情報を負荷推定部408に供給する。
【0062】
負荷推定部408は、CPUやメモリ等から構成され、上述した負荷推定部308と同様に、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107並びに口腔状態計測部209のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する。このとき、負荷推定部408は、鼻呼吸と口呼吸とに応じて呼気中の含有湿度が変化するため、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する際に、鼻呼吸であるか口呼吸であるかに応じて、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を異なる値として補正する。すなわち、負荷推定部408は、開口判定部411による判定の結果、口呼吸である場合には、呼吸の換気量の変化量の割合を、上式(1)を用いたH%に補正する。一方、負荷推定部408は、開口判定部411による判定の結果、鼻呼吸である場合には、鼻呼吸による減衰率を加味し、閾値としての呼吸の換気量の変化量の割合HtNを次式(2)によって補正する。
【数2】

【0063】
すなわち、負荷推定部408は、計測対象人物Mの口呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部408は、計測対象人物Mの口呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。さらに、負荷推定部408は、計測対象人物Mの鼻呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHtN%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部408は、計測対象人物Mの鼻呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHtN%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。負荷推定部408は、推定した負荷状態を示す情報を外部に出力する。
【0064】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図12に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0065】
まず、人体状態判定装置は、図12に示すように、ステップS31において、図4中ステップS1乃至ステップS6と同様の処理を行うと、ステップS32において、開口判定部411により、口呼吸の有無に基づく開口判定を行う。人体状態判定装置は、口呼吸であった場合には、ステップS33乃至ステップS37の処理を行う。すなわち、図10中ステップS22乃至ステップS26と同様に、負荷状態推定部408は、呼吸の換気量の変化量の割合が計測対象人物Mの周囲の相対湿度に基づいて補正された閾値であるH%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷状態推定部408は、呼吸の換気量の変化量の割合がH%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。さらに、負荷状態推定部408は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの交感神経優位にともなうストレス負荷傾向が持続性のあるものと推定する。さらにまた、負荷状態推定部408は、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの副交感神経優位にともなうリラックス傾向が持続性のあるものと推定する。
【0066】
一方、人体状態判定装置は、鼻呼吸であった場合には、ステップS38乃至ステップS40の処理を行う。すなわち、人体状態判定装置は、ステップS38において、湿度計測部310によって計測対象人物Mの周囲の相対湿度を計測した上で、ステップS39において、呼吸状態計測部107により、水蒸気の吸収に関する判定を行う。具体的には、呼吸状態計測部107は、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、呼吸の換気量の変化量の割合が鼻呼吸である旨且つ湿度に基づいて補正された閾値である±HtN%以内であるか否かを判定する。
【0067】
そして、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±HtN%未満である場合には、計測対象人物Mの状態が通常状態であるものと判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±HtN%以上である場合には、ステップS40において、負荷状態推定部408により、呼吸の換気量の変化量の割合がHtN%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、人体状態判定装置は、負荷状態推定部408により、呼吸の換気量の変化量の割合がHtN%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。なお、鼻呼吸の場合には、口腔部分を呼気が通過しないことから、人体状態判定装置は、揮発性硫化物の吸収に関する判定処理を行わない。
【0068】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、鼻呼吸と口呼吸との別に基づいて、計測対象人物Mの状態を高精度に判定することができる。
【0069】
以上詳細に説明したように、本発明の第4の実施形態となる人体状態判定装置においては、計測対象人物Mが口呼吸を行っているか鼻呼吸を行っているかを開口判定部411によって判定し、その判定結果に基づいて、負荷推定部408による判定の際に閾値を補正することにより、鼻呼吸と口呼吸とが切り替わる際の極端な差異を適切に検出し、高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0070】
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置は、第1乃至第4の実施形態として示した人体状態判定装置を車両に搭載した場合の具体例を示すものである。従って本実施形態においては、第1乃至第4の実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0071】
〔人体状態判定装置の構成〕
本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置は、図13に示すように、上述した電磁波発生器101、受信器103、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、口腔状態計測部209、湿度計測部310、及び負荷推定部408の他に、電磁波発生器101によって発生された電磁波を計測対象人物Mに対して送信する複数の送信器502A,502B,502C,502Dと、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する周波数制御部504と、受信器103によって受信した受信信号に対して周波数解析を施す周波数解析部505と、電磁波を送信する送信器502A,502B,502C,502Dを切り替える切り替え手段としての送信器切替器511と、各種車両信号を出力する車両信号出力部512とを備える。すなわち、人体状態判定装置は、第4実施形態として示した人体状態判定装置における送信器102に代えて複数の送信器502A,502B,502C,502Dを備え、周波数制御部104に代えて周波数制御部504を備え、周波数解析部105に代えて周波数解析部505を備えるとともに、新たに送信器切替器511及び車両信号出力部512を追加した構成とされる。
【0072】
送信器502A,502B,502C,502Dは、それぞれ、上述した送信器102と同様の構成とされ、電磁波発生器101によって発生された電磁波をテラヘルツ波として計測対象人物Mに対して送信する。ここで、人体状態判定装置においては、できる限り呼気以外の気体成分を含まないようにするのが望ましいことから、送信器502A,502B,502C,502Dの車両に対する搭載位置を、例えば車両内部のハンドルの略上方の天井領域であり且つ計測対象人物Mの着座状態脚部から車高方向に延在した位置とする。これにより、人体状態判定装置においては、計測対象人物Mに対して約1m以内の距離で送信器502A,502B,502C,502Dを設置することができ、また、テラヘルツ波が車両の内装材を透過することから、レイアウト上、目立つことなく計測対象人物Mを検出することができる。また、人体状態判定装置は、身長の違い等、車両シートに着座する計測対象人物Mの頭部の位置の違いをカバーするために、複数の送信器502A,502B,502C,502Dを設置し、送信器切替器511により、電磁波を送信する送信器を切り替えるように構成される。具体的には、送信器502A,502B,502C,502Dは、それぞれ、例えば図14に示すように、車両シートに着座する計測対象人物Mの頭部を捕捉するように、ハンドルの略上方の天井領域に設置され、図14中矢印A,B,C,Dで示すように、仰角5°〜85°の範囲に属する4つの異なる領域に向けて送信方向が固定されるように設定される。また、送信器502A,502B,502C,502Dの指向性は、全域の方位を捕捉することができるように、半値半角を10°程度とするのが望ましい。
【0073】
送信器切替器511は、電磁波発生器101によって発生された電磁波の送信領域を制御するために、使用する送信器502A,502B,502C,502Dを切り替える。具体的には、送信器切替器511は、水蒸気スペクトラムの時間変化を取得できるように、すなわち、計測対象人物Mの呼気領域を含むように、送信器502A,502B,502C,502Dを切り替える。送信器切替器511は、設定した送信領域を示す情報を周波数解析部505に供給する。
【0074】
車両信号出力部512は、車両の窓の開閉情報、エアーコンディショナの稼動状態情報、及び、ワイパーの稼動状態情報等の車両信号を、図示しないセンサ等から取得し、周波数制御部504に供給する。
【0075】
周波数制御部504は、上述した周波数制御部104と同様に、周波数解析部505から供給される指示信号に基づいて、電磁波発生器101を構成する波長可変半導体レーザ光源から発振される電磁波の発振波長を制御することにより、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する。このとき、周波数制御部504は、車両信号出力部512から供給される窓の開閉情報、エアーコンディショナの稼動状態情報、及び、ワイパーの稼動状態情報に基づいて、水分補正、外乱物質補正、並びに、水蒸気(及び揮発性硫化物)検出感度補正に関する周波数帯域を補正して設定する。すなわち、人体状態判定装置は、気体中の成分を分析することから、窓の開閉、エアーコンディショナの稼動状態、及び、雨等の計測環境の影響を受けることが考えられる。そこで、周波数制御部504は、例えば図15に示すような論理表にしたがって、水分補正、外乱物質補正、並びに、水蒸気(及び揮発性硫化物)検出感度補正を行う。具体的には、車両走行時の環境で窓を開放している場合には、外気に含まれるCOやNO等の排気ガス成分を多く車室内に流入させてしまう可能性がある。そのため、周波数制御部504は、それら排気ガス成分等の外乱物質の影響を低減するために、窓の開閉の別に基づいて、当該外乱物質の吸収周波数帯域を、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dによって発信して送信する電磁波の発信周波数帯域から除外するように電磁波の周波数帯域を設定する。また、窓を開放している場合やエアーコンディショナを稼動している場合には、計測対象人物Mの周囲の気流変動の影響で電磁波の送信領域内の気体が流れやすい。そのため、周波数制御部504は、水蒸気や揮発性硫化物に対する感度を向上させるように電磁波の周波数帯域を1THz〜3THz程度に設定する。さらに、周波数制御部504は、ワイパーの稼動状態を悪天候条件の判定因子として利用し、雨が降っている場合には、水分による減衰が小さい1THz以下の低周波数帯域を利用するように設定する。なお、人体状態判定装置においては、雨の影響→外乱物質の影響→気流の影響の順序で、受ける影響が小さくなる。そのため、周波数制御部504は、例えば図15に示すように、水分補正、外乱物質補正、並びに、水蒸気(及び揮発性硫化物)検出感度補正に優先順位付けを行い、補正量を決定する。
【0076】
周波数解析部505は、増幅器、A/Dコンバータ、CPU、及びメモリ等から構成され、送信器切替器511によって設定された送信領域に基づいて、受信器103によって受信した受信信号の信号波形を取得して周波数解析を行う。そして、周波数解析部505は、水蒸気の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない水蒸気以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出するとともに、揮発性硫化物の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない揮発性硫化物以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出する。周波数解析部505は、周波数解析結果を示す情報を、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、口腔状態計測部209、及び開口判定部411に供給する。また、周波数解析部505は、解析に利用する周波数帯域を示す情報を、周波数制御部504に供給する。
【0077】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図16に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0078】
まず、人体状態判定装置は、図16に示すように、ステップS41において、周波数制御部504により、車両信号出力部512から出力された車両信号に基づいて、周波数帯域を補正すると、ステップS42において、電磁波発生器101によって電磁波を発生させて送信器502A,502B,502C,502Dに入射し、テラヘルツ波を計測対象人物Mに照射する。続いて、人体状態判定装置は、ステップS43において、計測対象人物Mによって反射された電磁波を受信器103によって受信すると、その受信信号を周波数解析部505に供給する。周波数解析部505は、受信信号を検波した際に、解析に利用する周波数帯域を示す情報を周波数制御部504に供給する。また、周波数解析部505は、受信信号の周波数解析を行い、その周波数特性を計測する。
【0079】
人体状態判定装置は、ステップS44において、周波数解析部505により、送信器切替器511によって設定された送信領域に基づいて、全ての送信領域についての周波数特性を取得したか否かを判定し、取得していない場合には、ステップS45において、送信領域を切り替え、ステップS42からの処理を繰り返す。この場合、周波数解析部505は、次の送信領域からの反射信号についての処理であるものと判定する。そして、人体状態判定装置は、全ての送信領域についての周波数特性を取得すると、ステップS46において、周波数解析部505により、水蒸気の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない水蒸気以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出するとともに、揮発性硫化物の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない揮発性硫化物以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出する。
【0080】
人体状態判定装置は、ステップS47において、図示しないタイマ等の計時手段によって計時した結果、所定の計測時間を経過していない場合には、ステップS42からの処理を繰り返し行う一方で、計測時間を経過した場合には、ステップS48へと処理を移行し、図12に示した一連の処理を行う。人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、車両特有の計測環境に応じた周波数帯域に補正し、計測対象人物Mの状態を高精度に判定することができる。
【0081】
以上詳細に説明したように、本発明の第5実施形態となる人体状態判定装置においては、車両内部の天井領域であり且つ計測対象人物Mの着座状態脚部から車高方向に延在した位置において、異なる領域に向けて送信方向が固定されるように複数の送信器502A,502B,502C,502Dを配設し、計測対象人物Mの呼気領域を含むように、送信器切替器511により、複数の送信器502A,502B,502C,502Dのうち使用する送信器を切り替える。このように、この人体状態判定装置においては、車両内部の天井領域に複数の送信器502A,502B,502C,502Dを配設することにより、呼気以外の大気成分をできる限り除外することができ、効率よく計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0082】
また、この人体状態判定装置においては、車両の窓の開閉情報、エアーコンディショナの稼動状態情報、及び、ワイパーの稼動状態情報に基づいて、周波数制御部504により、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dによって送信する電磁波の発信周波数帯域を制御することにより、電磁波の周波数帯域を適切に補正することができ、高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。特に、この人体状態判定装置においては、エアーコンディショナを稼動させた際に、冷風や温風を計測対象人物Mに当てることに起因する当該計測対象人物Mの体表面の温度変化によって生じる誤差の影響を低減することができ、より高精度に計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0083】
〔第6の実施形態〕
本発明の第6の実施形態となる人体状態判定装置は、第5の実施形態として示した人体状態判定装置を改良し、計測対象人物の呼気領域を設定し、集中的に呼気領域に時間配分を行うとともに、他の領域で雑音を検出し、より効率的に高精度に呼気判定を行うものである。従って本実施形態においては、第5の実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0084】
〔人体状態判定装置の構成〕
本発明の第6の実施形態となる人体状態判定装置は、図17に示すように、上述した電磁波発生器101、受信器103、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、口腔状態計測部209、湿度計測部310、負荷推定部408、送信器502A,502B,502C,502D、周波数解析部505、送信器切替器511、及び車両信号出力部512の他に、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する周波数制御部604と、電磁波発生器101によって発生された電磁波の送信領域を設定する送信領域設定部613と、計測対象人物Mの呼気領域を判定する呼気領域判定部614と、雑音を検出する雑音検出部615とを備える。すなわち、人体状態判定装置は、第5実施形態として示した人体状態判定装置における周波数制御部504に代えて周波数制御部604を備えるとともに、新たに送信領域設定部613、呼気領域判定部614、及び雑音検出部615を追加した構成とされる。
【0085】
送信領域設定部613は、初期状態では、送信器502A,502B,502C,502Dを例えば10m秒毎といった所定のタイミングで切り替えるように、送信器切替器511に制御信号を供給する。また、送信領域設定部613は、呼気領域判定部614によって呼気領域が判定された場合には、送信器502A,502B,502C,502Dのうち呼気領域を捕捉している一の送信器の送信領域と、他の領域とを交互に設定するように、送信器切替器511に制御信号を供給する。
【0086】
呼気領域判定部614は、呼吸状態計測部107の出力に基づいて、送信器502A,502B,502C,502Dの送信領域にて呼気を検出している送信器を選択し、その送信器の送信領域、すなわち、計測対象人物Mの呼気領域を示す情報を送信領域設定部613及び雑音検出部615に供給する。
【0087】
雑音検出部615は、呼気領域判定部614によって判定された呼気領域以外での反射波周波数特性に基づいて、既知の計測周波数帯域中に呼気物質以外の吸収周波数帯域からなる雑音を検出した場合には、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dによって発信して送信する電磁波の発信周波数帯域から当該雑音を含む計測周波数帯域を除外するように、周波数設定部604に指示信号を供給する。具体的には、雑音検出部615は、例えば10GHz毎に計測周波数帯域を分割して振幅を隣り合う領域と逐次比較したときに、10%以上の差異を認めるケースが3区間以上継続し、計測周波数帯域に干渉する場合に、当該計測周波数帯域を除外するように決定する。
【0088】
周波数制御部604は、上述した周波数制御部504と同様に、周波数解析部505から供給される指示信号に基づいて、電磁波発生器101を構成する波長可変半導体レーザ光源から発振される電磁波の発振波長を制御することにより、電磁波発生器101によって発生される電磁波の周波数を制御する。このとき、周波数制御部604は、雑音検出部615から供給される指示信号に基づいて、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dによって発信して送信する電磁波の発信周波数帯域から、雑音を検出した計測周波数帯域を除外する。
【0089】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図18に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0090】
まず、人体状態判定装置は、図18に示すように、ステップS51において、周波数制御部604により、車両信号出力部512から出力された車両信号と、雑音検出部613から供給された指示信号とに基づいて、周波数帯域を補正すると、ステップS52において、送信領域設定部613によって送信領域を設定する。そして、人体状態判定装置は、ステップS53において、電磁波発生器101によって電磁波を発生させて送信器502A,502B,502C,502Dに入射し、テラヘルツ波を計測対象人物Mに照射する。
【0091】
続いて、人体状態判定装置は、ステップS54において、計測対象人物Mによって反射された電磁波を受信器103によって受信すると、その受信信号を周波数解析部505に供給する。周波数解析部505は、受信信号を検波した際に、解析に利用する周波数帯域を示す情報を周波数制御部604に供給する。また、周波数解析部505は、受信信号の周波数解析を行い、その周波数特性を計測する。
【0092】
続いて、人体状態判定装置は、ステップS55において、周波数解析部505により、送信器切替器511によって設定された送信領域に基づいて、全ての送信領域についての周波数特性を取得したか否かを判定し、取得していない場合には、ステップS56において、送信領域を切り替える。そして、人体状態判定装置は、ステップS57において、呼気領域設定部614により、呼気領域を判定し、送信器502A,502B,502C,502Dのうち呼気を検出している送信器を選択した後、ステップS58において、雑音検出部615により、計測周波数帯域を計測し、既知の計測周波数帯域に影響を及ぼす雑音を検出した場合には、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dによって発信して送信する電磁波の発信周波数帯域から、当該雑音を含む計測周波数帯域を除外するように、周波数設定部604に指示信号を供給し、ステップS51からの処理を繰り返す。
【0093】
人体状態判定装置は、ステップS55において、全ての送信領域についての周波数特性を取得したものと判定すると、ステップS59において、周波数解析部505により、水蒸気の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない水蒸気以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出するとともに、揮発性硫化物の吸収周波数帯域と、減衰量が生じない揮発性硫化物以外の吸収周波数帯域との振幅比を算出する。
【0094】
人体状態判定装置は、ステップS60において、図示しないタイマ等の計時手段によって計時した結果、所定の計測時間を経過していない場合には、ステップS53からの処理を繰り返し行う一方で、計測時間を経過した場合には、ステップS61へと処理を移行し、図12に示した一連の処理を行う。
【0095】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの呼気領域を設定し、集中的に呼気領域に時間配分を行うとともに、他の領域で雑音を検出して除外することにより、計測対象人物Mの状態を効率よく且つ高精度に判定することができる。なお、人体状態判定装置においては、雑音検出部615によって雑音を検出するにあたって、新たに送信器を設けるとともに、計測対象人物Mを含む車両内の物体に遮蔽されない位置に別の反射物を設け、その反射信号に基づいて物体を判定するようにしてもよい。
【0096】
以上詳細に説明したように、本発明の第6の実施形態となる人体状態判定装置においては、呼気状態計測部107によって計測された気体成分毎の変化量に基づいて、複数の送信器502A,502B,502C,502Dのうち呼気を検出している送信器を呼気領域判定部614によって選択し、計測対象人物Mの呼気領域を判定するとともに、その判定結果に基づいて、送信器502A,502B,502C,502Dの電磁波の送信領域を送信領域設定部613によって設定することにより、呼気領域と呼気以外の領域とをともに検出することができる。そのため、この人体状態判定装置においては、呼気領域に電磁波の送信時間を多く配分することができ、精度の向上を図ることができる。
【0097】
また、この人体状態判定装置においては、呼気領域判定部614の判定結果に基づいて、呼気物質以外の吸収周波数帯域からなる雑音が雑音検出部615によって検出された場合には、周波数制御部604により、電磁波発生器101及び送信器502A,502B,502C,502Dを用いて送信する電磁波の発信周波数帯域から当該雑音を含む計測周波数帯域を除外するように制御する。このように、この人体状態判定装置においては、呼気以外の領域からの反射信号に基づいて計測対象物質の影響を計測し、影響がある周波数帯域を除外して電磁波の周波数を設定することから、高精度に計測対象人物Mの状態を判定することっができる。
【0098】
[第7実施形態]
本発明の第7の実施形態となる人体状態判定装置は、第6の実施形態として示した人体状態判定装置を改良したものであり、計測対象人物の呼吸活動が運動によっても支配されることに着目し、ハンドルやペダルの操作等、計測対象人物の運動状態に基づいて、当該計測対象人物の状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を補正するようにしたものである。従って本実施形態では、第6実施形態にて説明した部位と同一部位については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0099】
〔人体状態判定装置の構成〕
本発明の第7の実施形態となる人体状態判定装置は、図19に示すように、上述した電磁波発生器101、受信器103、時間変化検出部106、呼吸状態計測部107、口腔状態計測部209、湿度計測部310、送信器502A,502B,502C,502D、周波数解析部505、送信器切替器511、車両信号出力部512、周波数制御部604、送信領域設定部613、呼気領域判定部614、及び雑音検出部615の他に、計測対象人物Mの負荷状態を推定する負荷推定部708と、計測対象人物Mが行った運転行動を検出する運動状態検出手段としての運転行動検出部716とを備える。すなわち、人体状態判定装置は、第6実施形態として示した人体状態判定装置における負荷推定部408に代えて負荷推定部708を備えるとともに、新たに運転行動検出部716を追加した構成とされる。
【0100】
運転行動検出部716は、図示しないハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダル等の操作手段の操作量を計測する操作量計測手段から出力される車両信号を取得し、それぞれのストローク量を各操作手段が許容する操作量の最大値との比率として算出する。運転行動検出部716は、算出した各操作手段の操作量比率を示す情報を負荷推定手段708に供給する。
【0101】
負荷推定部708は、CPUやメモリ等から構成され、上述した負荷推定部408と同様に、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107並びに口腔状態計測部209のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する。このとき、負荷推定部708は、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107のそれぞれの出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定する際に、当該計測対象人物Mの運転行動に応じて、計測対象人物Mの状態を判定するための閾値である呼吸の換気量の変化量の割合を異なる値として補正する。すなわち、負荷推定部708は、運転行動検出部716によって検出されたハンドル操作量比率Str、ブレーキペダル操作量比率Brk、及びアクセルペダル操作量比率acelに基づいて、閾値としての呼吸の換気量の変化量の割合Hdrvを次式(3)によって補正する。なお、次式(3)における等式が成立するのは、各操作手段が許容する操作量の最大値に基づく操作量比率から、2×(Str/4)+(Brk/4)+(acel/4)<25が成立するためである。
【数3】

【0102】
すなわち、負荷推定部708は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHdrv%以上の増加である旨を検出した場合には、交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の増加傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷推定部708は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHdrv%以上の減少である旨を検出した場合には、副交感神経優位にともなう1回あたりの換気量の減少傾向状態であると推定し、当該計測対象人物Mがリラックス傾向にあると推定する。負荷推定部708は、推定した負荷状態を示す情報を外部に出力する。
【0103】
〔人体状態判定装置の動作〕
このような各部を備える人体状態判定装置は、図20に示すような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの状態を判定する。
【0104】
まず、人体状態判定装置は、図20に示すように、ステップS71において、図4中ステップS1乃至ステップS6と同様の処理を行うと、ステップS72において、湿度計測部310によって計測対象人物Mの周囲の相対湿度を計測した上で、ステップS73において、運転行動検出部716により、ハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルのそれぞれの操作量比率を算出する。そして、人体状態判定装置は、ステップS74において、呼吸状態計測部107により、水蒸気の吸収に関する判定を行う。すなわち、呼吸状態計測部107は、所定周期内の最小振幅値の変化傾向を所定の統計手法を用いて求め、その最小振幅値の時間変化に基づいて、呼吸の換気量の変化量の割合がステップS72にて計測された湿度及びステップS73にて算出された操作量比率に基づいて補正された閾値である±Hdrv%以内であるか否かを判定する。
【0105】
人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±Hdrv%未満である場合には、計測対象人物Mの状態が通常状態であるものと判定し、そのまま一連の処理を終了する。一方、人体状態判定装置は、呼吸の換気量の変化量の割合が±Hdrv%以上である場合には、ステップS75において、負荷状態推定部708により、時間変化検出部106及び呼吸状態計測部107の出力に基づいて、計測対象人物Mの負荷状態を推定し、その推定結果を外部に出力して一連の処理を終了する。すなわち、負荷状態推定部708は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHdrv%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、交感神経優位にともなうストレス負荷傾向にあると推定する。また、負荷状態推定部708は、計測対象人物Mの呼吸を検出し且つ呼吸の換気量の変化量の割合がHdrv%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、当該計測対象人物Mの状態が、副交感神経優位にともなうリラックス傾向にあると推定する。
【0106】
人体状態判定装置は、ステップS76及びステップS77において、負荷状態推定部408により、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の増加傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの交感神経優位にともなうストレス負荷傾向が持続性のあるものと推定し、唾液分泌量の変化量の割合が例えば10%以上の減少傾向にある旨を検出した場合には、計測対象人物Mの副交感神経優位にともなうリラックス傾向が持続性のあるものと推定する。
【0107】
人体状態判定装置は、このような一連の手順にしたがって、計測対象人物Mの運転行動に基づいて、当該計測対象人物Mの状態を高精度に判定することができる。なお、人体状態判定装置においては、ハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルのそれぞれの操作量比率を運転行動検出部716によって算出するのみならず、車室内カメラによる顔振りや着座センサによる挙動、車室内マイクによる発話認識等を利用して自律神経活動の要因を分析することにより、計測対象人物Mの様々な運動状態を検出するようにしてもよく、その運転状態に基づいて、アプリケーションによって閾値を変化させるようにしてもよい。
【0108】
上述した第1乃至第7の実施形態として示した人体状態判定装置においては、呼気成分の時間傾向を検出するものとしたが、自律神経では呼吸周期も特徴量として優位であることが知られていることから、呼吸周期を閾値の因子として導入するようにしてもよい。さらに、上述した第1乃至第7の実施形態として示した人体状態判定装置からの出力は、例えば、計測対象人物Mの状態が過度なリラックス傾向を示した場合には、車室内にて再生するロックやアップテンポな楽曲を優先的に選択するように重み付けをした選曲パターンを提示するために利用することができ、また、計測対象人物Mの状態が過度に緊張した傾向を示した場合には、音声ガイダンスのメッセージを早めに提示して右左折や車線変更を補助したり、所定の提示手段を用いた出現タイミングや提示種類の詳細を補正する手段として利用したりすることができる。同様に、人体状態判定装置からの出力は、例えば車両衝突前の緊急回避が必要な場面において、計測対象人物Mである運転者の呼吸活動が急変するような急激なストレス傾向を示していない場合には、積極的な車両の制御介入を行う等、車両制御の介入度合いを補正する手段に利用することもできる。また第1乃至第7の実施形態として示した人体状態判定装置は、車両に搭載するものに限定されるものではなく、例えば発電所やビル警備等の管理業務において、居眠りや漫然の状態を引き起こしやすい管理者の監視用途に応用することができ、また、所定の音声提示手段や監督者への通報手段等に適用することもできる。
【0109】
以上詳細に説明したように、本発明の第7の実施形態となる人体状態判定装置においては、運動行動検出部716によって検出された計測対象人物Mの運動状態に基づいて、負荷推定部708による判定の際に閾値を補正することにより、ロバストに計測対象人物Mの状態を判定することができる。
【0110】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置が備える呼吸状態計測部の動作を説明するための図であり、水蒸気の吸収スペクトラムの具体例について示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置が備える負荷推定部の動作を説明するための図であり、時間経過にともなう水蒸気含有量の変化の具体例について示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置が備える口腔状態計測部の動作を説明するための図であり、揮発性硫化物の吸収スペクトラムの具体例について示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置が備える負荷推定部の動作を説明するための図であり、時間経過にともなう揮発性硫化物含有量の変化の具体例について示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図14】本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置が備える送信器の設置領域の具体例について示す図である。
【図15】本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置が備える周波数制御部による周波数帯域を補正内容について示す図である。
【図16】本発明の第5の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図17】本発明の第6の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図18】本発明の第6の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【図19】本発明の第7の実施形態となる人体状態判定装置の構成について示すブロック図である。
【図20】本発明の第7の実施形態となる人体状態判定装置において、計測対象人物の状態を判定する際の一連の手順について示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0112】
101 電磁波発生器
102,502A,502B,502C,502D 送信器
103 受信器
104,504,604 周波数制御部
105,505 周波数解析部
106 時間変化検出部
107 呼吸状態計測部
108,208,308,408,708 負荷推定部
209 口腔状態計測部
310 湿度計測部
411 開口判定部
511 送信器切替器
512 車両信号出力部
613 送信領域設定部
614 呼気領域判定部
615 雑音検出部
716 運転行動検出部
M 計測対象人物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を計測対象人物に対し送信する電磁波送信手段と、
前記電磁波送信手段から送信されて前記計測対象人物によって反射された電磁波を受信する電磁波受信手段と、
前記電磁波受信手段によって受信した受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、前記計測対象人物の呼吸活動を検出する呼吸活動検出手段と、
前記電磁波受信手段によって受信した前記計測対象人物の呼気の気体成分毎の受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、気体成分毎の変化量を計測する呼気成分変化量計測手段と、
前記呼吸活動検出手段によって検出された呼吸活動についての前記呼気成分変化量計測手段によって計測された気体成分毎の変化量に基づいて、前記計測対象人物の状態を推定する状態推定手段と
を備えることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の人体状態判定装置において、
前記電磁波送信手段は、水蒸気の吸収周波数を含む発信周波数帯域の電磁波を発生して送信し、前記呼気成分変化量計測手段は、前記発信周波数帯域に基づいて、前記計測対象人物の呼気中の水蒸気の含有量を計測し、前記状態推定手段は、呼吸数に基づく所定の計測時間内に前記呼気成分変化量計測手段によって計測された前記水蒸気の含有量の時間変化量と、人の交感神経の作用との相関に基づいて、前記計測対象人物の状態を推定することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人体状態判定装置において、
前記呼気成分変化量計測手段は、水蒸気の吸収周波数帯域と水蒸気の吸収周波数帯域以外の周波数帯域との振幅比に基づいて、前記計測対象人物の呼気中の水蒸気の含有量を計測することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
前記状態推定手段は、前記呼気成分変化量計測手段によって計測された前記水蒸気の含有量の時間変化量が、前記相関の有意差に関する所定の第1の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が交感神経優位と推定し、前記相関の有意差に関する所定の第2の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が副交感神経優位と推定することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の人体状態判定装置において、
前記計測対象人物の周囲の大気状態を計測する大気状態計測手段を備え、前記状態推定手段は、前記大気状態計測手段によって計測された大気状態に基づいて、前記第1の閾値及び/又は前記第2の閾値を補正することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の人体状態判定装置において、
前記大気状態計測手段は、前記計測対象人物の周囲の相対湿度を計測することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
前記計測対象人物が口呼吸を行っているか鼻呼吸を行っているかを判定する呼吸判定手段を備え、前記状態推定手段は、前記呼吸判定手段の判定結果に基づいて、前記第1の閾値及び/又は前記第2の閾値を補正することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
前記電磁波送信手段は、揮発性硫化物の吸収周波数を含む第2の発信周波数帯域の電磁波を発生して送信し、前記呼気成分変化量計測手段は、前記第2の発信周波数帯域に基づいて、前記計測対象人物の呼気中の揮発性硫化物の含有量を計測し、前記状態推定手段は、呼吸数に基づく所定の計測時間内に前記呼気成分変化量計測手段によって計測された前記揮発性硫化物の含有量の時間変化量と、人の交感神経の作用との相関に基づいて、前記計測対象人物の状態を推定することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の人体状態判定装置において、
前記揮発性硫化物は、メチルメルカプタン及び/又は硫化水素であることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の人体状態判定装置において、
前記状態推定手段は、前記呼気成分変化量計測手段によって計測された前記揮発性硫化物の含有量の時間変化量が、前記相関の有意差に関する所定の第3の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が交感神経優位と推定し、前記相関の有意差に関する所定の第4の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が副交感神経優位と推定することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の人体状態判定装置において、
前記状態推定手段は、前記呼気成分変化量計測手段によって計測された前記揮発性硫化物の含有量の時間変化量が、前記第3の閾値に基づく増加の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が持続性のある交感神経優位と推定し、前記第4の閾値に基づく減少の傾向を示す場合には前記計測対象人物の状態が持続性のある副交感神経優位と推定することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
車両内部の天井領域であり且つ前記計測対象人物の着座状態脚部から車高方向に延在した位置において、異なる領域に向けて送信方向が固定されるように複数の前記電磁波送信手段を配設しており、当該人体状態判定装置は、前記計測対象人物の呼気領域を含むように、複数の前記電磁波送信手段のうち使用する電磁波送信手段を切り替える切り替え手段を備えることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の人体状態判定装置において、
前記呼気成分変化量計測手段によって計測された気体成分毎の変化量に基づいて、複数の前記電磁波送信手段のうち呼気を検出している電磁波送信手段を選択し、前記計測対象人物の呼気領域を判定する呼気領域判定手段と、前記呼気領域判定手段の判定結果に基づいて、複数の前記電磁波送信手段の電磁波の送信領域を設定する送信領域設定手段とを備えることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項14】
請求項13に記載の人体状態判定装置において、
前記呼気領域判定手段の判定結果に基づいて、呼気物質以外の吸収周波数帯域からなる雑音が検出された場合に、前記電磁波送信手段によって送信する電磁波の発信周波数帯域から当該雑音を含む計測周波数帯域を除外するように制御する周波数制御手段を備えることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
前記計測対象人物の運動状態を検出する運動状態検出手段を備え、前記状態推定手段は、前記運動状態検出手段によって検出された運動状態に基づいて、前記第1の閾値及び/又は前記第2の閾値を補正することを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のうち、いずれか1項に記載の人体状態判定装置において、
車両の窓の開閉情報、エアーコンディショナの稼動状態情報、及び、ワイパーの稼動状態情報に基づいて、前記電磁波送信手段によって送信する電磁波の発信周波数帯域を制御する周波数制御手段を備えることを特徴とする人体状態判定装置。
【請求項17】
電磁波を計測対象人物に対し送信する電磁波送信工程と、
前記電磁波送信工程にて送信されて前記計測対象人物によって反射された電磁波を受信する電磁波受信工程と、
前記電磁波受信工程にて受信した受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、前記計測対象人物の呼吸活動を検出する呼吸活動検出工程と、
前記計測対象人物の呼気の気体成分毎の受信信号の振幅値の時間変化に基づいて、気体成分毎の変化量を計測する呼気成分変化量計測工程と、
前記呼吸活動検出工程にて検出された呼吸活動についての前記呼気成分変化量計測工程にて計測された気体成分毎の変化量に基づいて、前記計測対象人物の状態を推定する状態推定工程と
を有することを特徴とする人体状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−12018(P2010−12018A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174427(P2008−174427)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】