人工膝関節の部分置換術および全置換術の際の力の感知法
手術中の膝の空間内の力を測定するためのシステム、装置および方法が提供される。そのような力は膝の靭帯における張力により引き起こされ得る。大腿骨部材を遠位大腿骨に係合させる。膝が屈曲、部分伸展または完全伸展している間に、力センサおよびゲージシムを大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に配置することにより、それらの間の力を測定することができる。力センサは力の正確かつ数量化可能な測定値をもたらし、これによって、人工膝関節置換術および靭帯張力バランシングがさらに正確になり、標準化され、かつ繰り返し可能になる。力センサは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを備える細長いハウジングを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は概して、医療用外科装置、システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、人工膝関節形成術の際の屈曲間隙および/または伸展間隙における力の測定を含む、膝手術を向上させるための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膝は、大腿骨と脛骨との関節点として一般に定義される。膝を構成する構造としては、遠位大腿骨、近位脛骨、膝蓋骨、ならびに膝関節内のおよびそれを取り囲む軟部組織であって、膝の靭帯を含む軟部組織が挙げられる。一般に膝は3つの区画に分けられる: 内側区画(膝の内方部分)、外側区画(膝の外方部分)および膝蓋大腿骨区画(膝頭と大腿骨との間の関節)。内側区画は、大腿骨、脛骨、およびそれらの間に割り込まれる半月板の内側関節面を含む。外側区画は、大腿骨、脛骨、およびそれらの間に割り込まれる半月板の外側関節面を含む。膝蓋大腿骨区画は、膝頭または膝蓋骨の下面と大腿骨との間の関節を含む。前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯および外側側副靭帯という4つの靭帯が、膝の安定性、位置合わせおよび機能において特に重要である。関節炎の膝では、大腿骨と脛骨との関節点での保護軟骨がしばしば摩耗し、それによって大腿骨が脛骨に直接接触する。この骨対骨の接触は、患者の著しい疼痛、不快感および能力障害を引き起こすことがあり、人工膝関節置換術または人工膝関節形成術をしばしば必要とする。
【0003】
人工膝関節形成術は、膝の自然な動作を可能にするように形状化される金属およびプラスチックのコンポーネントによる、膝の患部でありかつ痛みのある関節面の置換を包含する。人工膝関節置換術は全置換または部分置換であり得る。人工膝関節全形成術(「TKA」)とも呼ばれる人工膝関節全置換術は、大腿骨の遠位端、脛骨の近位端、およびしばしば人工関節部品付きの膝蓋骨の内面の全置換を包含する。大腿骨の遠位端および脛骨の近位端上で切断を実行する。次に人工関節部品を取り付ける。人工関節部品は、広範な関節可動域を通じて動く安定した膝関節を作り出す。人工関節部品による膝構造の置換は、膝が骨対骨の接触を回避することを可能にし、関節運動用の円滑で十分に位置合わせされた表面を与える。
【0004】
TKAでは、大腿骨の遠位端および脛骨の近位端を完全に除去する。したがって、健康な組織も同様に除去されることがある。1区画においてのみ軟骨が摩耗した患者では、TKAの代替は人工膝関節部分置換術すなわち人工膝関節単一区画形成術(「UKA」)であり得、その一例としてはOxford(登録商標)人工膝関節部分置換手技がある。TKAと比較したUKAの利点としては、切開の縮小、術後リハビリテーションの容易化、院内滞留時間の短縮、出血の減少、感染症、硬直および血塊の危険性低下、ならびに必要な場合の再置換術の容易化が挙げられる。
【0005】
TKAとUKAとの両方を含む人工膝関節置換術の課題は、屈曲位置から完全伸展位置までの膝の関節可動域全体を通じての、靭帯張力、特に内側および外側の側副靭帯における張力の適切なバランシングである。膝の内側および外側の遠位大腿骨と近位脛骨とを接続する側副靭帯は、膝の安定性および運動の大部分を担う。典型的には、人工膝関節置換術後の不均一な靭帯張力は、関節不安定および膝蓋骨トラッキング不良、関節可動域の制限、膝の機能障害、ならびに人工関節装置の不均一で増大した摩耗および/または弛緩を含む症状を導く。これらの症状は再手術をしばしば必要とし得る。したがって、人工膝関節置換手技は、膝の関節可動域全体を通じて膝のバランスの取れた靭帯張力を実現することに、短期的および長期的に成功することが必須である。
【0006】
人工膝関節置換術の際の靭帯張力のバランシングは、単軸の周りを動くヒンジのようには自然な膝は動作しないという事実により複雑化する。膝がその屈曲位置からその完全伸展位置まで動く際に、膝は大腿骨に対する脛骨の動的回転を示し、これは逆もまた真である。したがって、自然な膝は、制限された内部および外部の弧を通じて脛骨が膝屈曲中に回転することを可能にするという回転弛緩を示す。さらに、大腿骨は、脛骨がその周りで屈曲している際に前方および後方に平行移動し、これによりさらに別の可変運動がもたらされる。したがって、膝の靭帯は、大腿骨、脛骨および膝蓋骨と共に、動的な生体機構を作り出し、これによりTKA手術における靭帯張力バランシングが難しいものになる。Mihalko, W. H. et al., "Comparison of Ligament-Balancing Techniques During Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 132-135; Eckhoff, D. G. et al., "Three-Dimensional Morphology and Kinematics of the Distal Part of the Femur Viewed in Virtual Reality, Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 97-104; およびRies, M. D., et al., "Soft-Tissue Balance in Revision Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 38-42(非特許文献1〜3)などの多くの論文および研究が、TKAにおける靭帯張力バランシングを対象としている。
【0007】
人工膝関節置換手技中の側副靭帯張力のバランシング用の1つの技術は、靭帯張力を低下させるために一方または両方の靭帯の線維を切断すること、すなわち「靭帯放出」と呼ばれる技術を包含する。この技術の短所は、靭帯組織の切断が、靭帯を弱め、かつ将来の靭帯放出または人工膝関節置換手技が必要になる場合に誤りの余地が少なくなるということである。
【0008】
靭帯張力のバランシングのために、靭帯放出よりもむしろまたは靭帯放出に加えて、膝人工関節のコンポーネントを選択しかつ位置づけることができる。典型的な人工膝関節置換手技では、人工関節の大腿骨コンポーネントを取り付ける前に、遠位大腿骨に対して複数の切断を実行する。例えば、大部分のTKA手技は、大腿骨コンポーネントをしっかりと定位置に固定することを支援するために、大腿骨の遠位端を横切る遠位切断、前方切断および後方切断、ならびに角度の付いた前方面取り切断および後方面取り切断を実行することを包含する。外科医は、膝の関節可動域全体を通じて靭帯張力のバランスを最適に取るために、これらの大腿骨切断を実行して大腿骨人工関節コンポーネントの位置および向きを得ることを試みる。しかし、膝の関節可動域全体を通じて理想的な靭帯張力を得るために大腿骨切断および大腿骨人工関節コンポーネントを位置づけることはしばしば非常に難しいものとなる。これは主に、先に記載のような膝の周りの動作の複雑さ、および、関節可動域全体を通じて所望の靭帯張力を維持するための大腿骨コンポーネントの配置の困難による。
【0009】
TKA手技中の靭帯バランシングを容易にすることを試みるいくつかの装置および技術が記載されている。米国特許第5,733,292号(特許文献1)に記載の技術などのいくつかの技術は、靭帯張力を評価するために大腿骨および脛骨の切断を実行した後で使用する試行用人工関節コンポーネントを包含する。米国特許出願公開第2003/0187452 A1号(特許文献2)に記載の装置などのいくつかの装置は、伸展状態の遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙を測定するために、および膝が屈曲状態の時にその同一の間隙を外科医が再び作り出すことを支援するために使用される。他の「間隙点検」装置は米国特許第6,575,980号(特許文献3)に記載されている。靭帯張力量の測定を支援するためのまたは所望の張力量を靭帯に印加するための他の装置も開発されている。例えば、米国特許第4,501,266号(特許文献4)では、所望の張力量を印加するための膝伸延装置が記載されている。米国特許第5,597,379号; 第5,540,696号; 第5,800,438号; 第5,860,980号; 第5,911,723号; および第6,022,377号(特許文献5〜10)に記載の装置などの、膝関節を横切る張力を印加または測定するための多くのパドル状装置が示唆されている。他の方法および装置は、共に譲渡されかつ同時係属中の米国特許出願第10/773,608号(代理人整理番号021976-000200US)、第10/973936号(代理人整理番号021976-000210US)および第11/149,944号(代理人整理番号021976-000220US)(特許文献11〜13)に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【0010】
TKA手技中の靭帯バランシングを容易にするために記載の装置も、UKA手順において用途を見出し得る。ある種のUKA手技、例えばOxford(登録商標)人工膝関節部分置換術では、いずれも一定の厚さを有する一組のシムまたはすきまゲージが外科医に与えられ得る。シムまたはすきまゲージは、膝張力のバランシングを容易にするために遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙を測定するために使用される。遠位大腿骨の一側面および近位脛骨の相補側面を切断または粉砕した時点で、遠位大腿骨および近位脛骨の表面をテンプレート人工関節に嵌合させることができる。屈曲状態の膝において、外科医は、大腿骨人工関節と脛骨人工関節との間の間隙の厚さの測定を、膝の「自然張力」が実現されるようにシムまたはすきまゲージを間隙中に配置することで行うことができる。シムまたはすきまゲージが間隙の内または外に容易に摺動するが傾かないという場合に、「自然張力」を実現することができる。シムまたはすきまゲージを除去した後に、膝を例えば20度屈曲状態に伸展させ、間隙を同様に測定する。膝が屈曲状態の時と膝が伸展した時とで遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙が同一になるように遠位大腿骨の端部をさらに切断または粉砕することにより、膝の張力のバランスを取ることができる。屈曲状態の膝の間隙サイズと伸展した膝の間隙サイズとの間の差に基づいて、遠位大腿骨をさらに切断または粉砕する。例えば、屈曲間隙が5mmであると測定されかつ伸展間隙が2mmであると測定される場合、粉砕する骨の量を3mmとする。しかし、この手技は、外科医の主観的な「感覚」に大きく依存する。したがって、この手技を定量化しかつ標準化することが必要である。
【0011】
上記の理由から、人工膝関節置換術を向上させるための、具体的には人工膝関節の関節可動域、安定性および膝蓋骨トラッキングを改善するために人工膝関節置換術中に靭帯のバランスを動的に取るための、改善された装置、システムおよび方法の必要性が存在する。理想的には、そのような装置および方法は、大腿骨に対する最終的な骨切断を確約および実行する前に、外科医が所望の靭帯張力バランスを実現することを可能にすると考えられる。理想的には、そのような装置は、既存の人工膝関節置換用の手技ならびに人工関節テンプレート、測定ガイド、切断ガイドおよびソーブレードまたはバーなどの機器との組み合わせでの使用が簡単であると考えられる。これらの目的のうち少なくとも一部は本発明により達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,733,292号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0187452 A1号
【特許文献3】米国特許第6,575,980号
【特許文献4】米国特許第4,501,266号
【特許文献5】米国特許第5,597,379号
【特許文献6】米国特許第5,540,696号
【特許文献7】米国特許第5,800,438号
【特許文献8】米国特許第5,860,980号
【特許文献9】米国特許第5,911,723号
【特許文献10】米国特許第6,022,377号
【特許文献11】米国特許出願第10/773,608号
【特許文献12】米国特許出願第10/973936号
【特許文献13】米国特許出願第11/149,944号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mihalko, W. H. et al., "Comparison of Ligament-Balancing Techniques During Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 132-135
【非特許文献2】Eckhoff, D. G. et al., "Three-Dimensional Morphology and Kinematics of the Distal Part of the Femur Viewed in Virtual Reality, Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 97-104
【非特許文献3】Ries, M. D., et al., "Soft-Tissue Balance in Revision Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 38-42
【発明の概要】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明の態様は、手術中の膝の空間内の力を測定するためのシステム、装置および方法を提供する。そのような力は膝の靭帯における張力により引き起こされ得る。大腿骨部材を遠位大腿骨に係合させる。膝が屈曲、部分伸展または完全伸展している間に、力センサおよびゲージシムを大腿骨部材の端部と脛骨プラトーとの間の間隙中に配置して、それらの間の力を測定することができる。力センサは、力の正確かつ数量化可能な測定値を与えることで、人工膝関節置換術および靭帯張力バランシングをさらに正確にし、標準化し、繰り返し可能にする。力センサは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む細長いハウジングを含む。センサ素子は、細長いハウジングの薄い力感知遠位部内に設置される。
【0015】
本発明の一局面は、解剖学的関節の空間内の力を測定するためのシステムを提供する。本システムは、細長いハウジングとセンサ素子とを含む力センサを含む。細長いハウジングは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む。薄い力感知遠位部はセンサ素子を含む。解剖学的関節はしばしば膝であり、解剖学的関節の空間内の力は膝に隣接する靭帯により引き起こされる。あるいは、解剖学的関節は別の関節、例えば肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。細長いハウジングは、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含み得る。
【0016】
多くの態様では、センサ素子は力感知部材を含む。力感知部材は圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択され得る。視覚ディスプレイは、典型的には配線接続されているセンサと同一のハウジングに組み入れることができるか、または無線でプロセッサと結合することができる。いくつかの態様では、細長いハウジングの薄い遠位部は、幅広い近位領域と薄い近位領域とを含む。センサ素子の力感知部材は、細長いハウジングの幅広い遠位領域内に設置される。センサ素子は、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含み得る。
【0017】
多くの態様では、本システムはプロセッサと視覚ディスプレイとをさらに含む。プロセッサは、感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合している。視覚ディスプレイはプロセッサと結合しており、かつ、使用可能データをデジタルスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)などを含む各種グラフィカルインターフェースまたは数値インターフェースのうちいずれか1つにより表示するように適合化されている。視覚ディスプレイは近位ハンドル部に取り付けられている。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。光は、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射される。各照射光は、センサに印加される力の増加に対応している。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。各光は、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される。
【0018】
視覚ディスプレイは、赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続およびZigbee(登録商標)接続などの無線接続を通じて無線でプロセッサと結合することができる。いくつかの態様では、本システムは、プロセッサおよび視覚ディスプレイのうち少なくとも1つに結合している有形媒体をさらに含む。有形媒体は、測定された力の値を記録するように構成されている。
【0019】
多くの態様では、本システムは少なくとも1つのゲージシムをさらに含む。少なくとも1つのゲージシムは、凹形であり、かつ以下に記載の球状に凹形の(すなわち内向きに曲線状の)領域により典型的に確定される顆部接触区域を有する。いくつかの態様では、薄い遠位力感知部の長さは少なくとも1つのゲージシムの顆部接触区域の長さと一致し得る。いくつかの態様では、細長いバーは、平坦な第1の側面と第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有し得る。平坦な第1の側面は、少なくとも1つのゲージシムと一致するように適応し得る。テーパ状の第2の側面は、細長いバーの遠位端に向かってテーパ状になり得る。
【0020】
多くの態様では、ストップ部は薄い遠位部よりも厚い。多くの態様では、ストップ部は、解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定するために薄い部分の遠位端に垂直に取り付けられている。多くの態様では、近位ハンドル部は薄い遠位力感知部よりも厚い。
【0021】
多くの態様では、本システムは、近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含む。約90度屈曲状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に大腿骨コンポーネントの顆部中心の正中線を捕捉するために、光源は、遠位大腿骨の前部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている。多くの態様では、光は屈曲の際の大腿骨コンポーネントの顆部中心との回転位置合わせを示す。他の態様では、本システムは、近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含む。伸展状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に臀部中心の位置を捕捉するために、光源は、臀部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている。多くの態様では、光はレーザーである。
【0022】
本発明の別の局面は、解剖学的関節の空間内の力を測定するための手持ち型装置を提供する。本装置は、細長いハウジングとセンサ素子とを含む。細長いハウジングは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む。薄い力感知遠位部はセンサ素子を含む。解剖学的関節はしばしば膝であり、解剖学的関節の空間内の力は膝に隣接する靭帯により引き起こされる。あるいは、解剖学的関節は別の関節、例えば肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。細長いハウジングは、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含み得る。
【0023】
多くの態様では、センサ素子は力感知部材を含む。力感知部材は圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択され得る。多くの態様では、細長いハウジングの薄い遠位部は、幅広い近位領域と薄い近位領域とを含む。力感知部材はセンサ素子を含む。センサ素子は、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含み得る。
【0024】
多くの態様では、手持ち型装置は、感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと、プロセッサと結合しておりかつ使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイとをさらに含む。本装置は、センサ素子およびプロセッサと結合している電源をさらに含み得る。
【0025】
多くの態様では、細長いハウジングは、平坦な第1の側面と第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する。テーパ状の第2の側面は、細長いハウジングの遠位端に向かってテーパ状になり得る。
【0026】
多くの態様では、ストップ部は薄い遠位力感知部よりも厚い。多くの態様では、近位ハンドル部は薄い遠位部よりも厚い。
【0027】
本発明の別の局面は、手術中の膝の空間内の力を測定するための方法を提供する。本方法は、遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階、および膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階を含む。本方法の多くの態様では、遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階は、近位脛骨プラトーの上に力センサの遠位部を配置することを含む。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が屈曲状態の時に力を測定する。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が部分伸展している時に力を測定する。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が完全伸展状態の時に力を測定する。多くの態様では、近位脛骨または遠位大腿骨のうち一方から切除された骨により増加した間隙内の力を測定するために、力センサを間隙中に、移動可能に力センサに結合しているゲージシムと共に配置する。多くの態様では、移動可能に結合しているゲージシムの厚さと力センサの厚さとの組み合わせが、膝の靭帯が許容される張力に調節されたことを示す力測定値を与える場合に、膝の靭帯の自然張力が実現される。
【0028】
多くの態様では、本方法は、測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階、および使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを位置合わせするために、力センサを間隙中に繰り返し可能な様式で多数回配置する段階を含む。多くの態様では、本方法は、間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを当接させることで間隙の同一後面で停止させる段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階、および解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む。
【0029】
多くの態様では、本方法は、力センサ上のまたは力センサから投射される光の線またはビームを可視化することにより、解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、力センサの薄い力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること、センサ素子を通過した後で電圧を測定すること、センサ素子に伝達された電圧に対するセンサ素子を通過した電圧の割合を決定すること、および測定される力を該割合より導出することにより、膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階を含む。
【0030】
本発明の別の局面は、手術中の解剖学的関節の空間内の力を測定するための方法を提供する。解剖学的関節は、第1の端部を有する第1の骨と、第1の端部に対向する第2の端部を有する第2の骨とを含む。第1の骨の第1の端部に人工関節を係合させる。人工関節と第2の骨の第2の端部との間の間隙中に力センサを配置する。第1の骨の第1の端部と第2の骨の第2の端部との間で互いに対して及ぼされる力を力センサの力感知部によって測定する。間隙から力センサを取り外す。間隙中に力センサを配置する段階は、第2の骨の第2の端部の上に力センサの遠位部を配置することを含む。多くの態様では、本方法は間隙中にゲージシムを配置する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階、および使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階をさらに含む。
【0031】
多くの態様では、本方法は、視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む。多くの態様では、力を測定する段階は、力センサの力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること、センサ素子を通過した後で電圧を測定すること、センサ素子に伝達された電圧に対するセンサ素子を通過した電圧の割合を決定すること、および測定される力を該割合より導出することを含む。
【0032】
そのような力が測定される解剖学的関節は膝関節、肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】本発明の態様に係る手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図1B】図1Aの力センサの側面図を示す。
【図1C】図1Aの力センサの上面図を示す。
【図1D】上面から見た図1Aの力センサの断面を示す。
【図1E】図1Aの力センサの遠位部の断面を示す。
【図1F】本発明の態様に係る手持ち型力センサのストップ部の斜視図を示す。
【図2A】単一区画のすなわち人工膝関節部分置換術を受けた膝を示す。
【図2B】単一区画のすなわち人工膝関節部分置換術を受けた膝を示す。
【図2C】人工膝関節全置換術を受けた膝を示す。
【図3A】屈曲の際の人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図3B】伸展の際の人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4A】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4B】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4C】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4D】手持ち型力センサ視覚ディスプレイの代替態様を示す。
【図4E】手持ち型力センサ視覚ディスプレイの代替態様を示す。
【図5A】レーザービームが起動した手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5B】レーザービームが起動した、屈曲状態の間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5C】レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5D】臀部中心位置の内側図を含む、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5E】手持ち型力センサと顆部面との間の界面の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
システム、装置および方法の以下の例示的態様を、人工膝関節部分置換術および人工膝関節全置換術の際の力の感知の文脈で説明する。これは例示目的のみとして意図されており、当業者は、本明細書で開示されているシステム、装置および方法がいくつかの他の用途に使用可能であり、したがって膝手術に限定されないということを認識するであろう。以下の詳細な説明を読み、かつ全体を通じて同様の番号が同様の部品を指す添付の図面を参照することにより、特徴および利点が明らかになるであろう。
【0035】
図1A〜1Fは、本発明の態様に係る手持ち型力センサ100を示す。図1Aは、力センサ100の斜視図を示す。図1Bは、力センサ100の側面図を示す。図1Cは、力センサ100の上面図を示す。図1Dは、上面から見下ろした力センサ100の断面を示す。図1Eは、正面から見た力センサ100の遠位部の断面を示す。図1Fは、本発明の態様に係る手持ち型力センサ100のストップ部140Bの斜視図を示す。
【0036】
力センサ100は、平坦な上面110とテーパ状の下面115とを有する細長いハウジング105を含む。テーパ状の下面115により、細長いハウジング105の近位端に向かって一般に厚くなる力センサ100が得られる。力センサ100は、幅広い遠位力感知部120を有する薄い遠位部130とハンドル部150とを含む。薄い遠位部130の厚さ135は非常に薄く、例えば約1mm〜4mmの範囲、典型的には3mmであり得る。薄い遠位部130は、膝の内側区画または外側区画のサイズと一致するサイズを有し得る。力センサ100は、遠位力感知部120の近位にあるストップ部140Aまたは140Bをさらに含み得る。ストップ部140Aは力遠位感知部120よりも厚い。ハンドル部150は遠位感知部120とストップ部140Aとの両方よりも厚いことがある。あるいは、図1Fに示すストップ部140Bを「バックストップ」構成で構成することもできる。いずれの構成でも、ストップ部は解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定する。力感知パッド上の同一位置中に顆部面が繰り返し嵌合されるため、ストップ部は、異なる前方/後方挿入位置を防止する。大腿骨などの外科的標識および/または大腿骨コンポーネントなどの装置に対してストップを当接させることで、力センサを解剖学的関節間隙中に同一位置で多数回配置することができる。ストップ部140Bの「バックストップ」構成は、光を通過させるように、透過性材料で作製可能でありかつ/または開口600を有し得る。
【0037】
図1Dは、上面から見下ろした手持ち型力センサ100の断面を示す。センサ素子125、回路またはプロセッサ155、および電源165、例えば電池は細長いハウジング105内に設置される。センサ素子125は薄い遠位部130内に設置される。図1Dに示すように、プロセッサ155および電源165はハンドル部150内に設置される。しかし、プロセッサ155および電源165は、細長いハウジング105の外側に位置づけることができ、有線接続または無線接続を通じて力センサ100と結合することができる。センサ素子125は力感知パッドまたは力感知部材127を含む。力感知部材127は任意の好適な形状、サイズおよび構成を有し得る。図1Dに示す態様では、力感知部材127は遠位力感知部120を含む。力感知部材127は、例えば遠位力感知部120内に完全に設置されていてもそうでなくてもよい。力感知部材127は圧力感知材料または力感知材料の層を含み得る。任意の好適な圧力感知材料または力感知材料または材料組み合わせを、力感知部材127を形成するために使用することができる。使用可能ないくつかの例としては圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、他の圧力センサおよび他の力センサが挙げられるがそれに限定されない。
【0038】
センサ素子125は、力感知部材127より遠位に延在する遠位配線129をさらに含む。遠位配線129は薄い遠位部130内に少なくとも部分的に設置される。センサ素子125は遠位配線129を通じてプロセッサ155に結合することができる。力感知部材127は、それ自体に及ぼされる圧力または力を感知することができ、遠位配線129は、感知された力または圧力を表す電気信号を送ることができる。プロセッサ155は、これらの信号を処理して、外科医などのユーザーに提供するための使用可能データとする。例えば、プロセッサ155と結合した視覚ディスプレイを通じて、使用可能データを外科医に提供することができる。有線接続または無線接続を通じて視覚ディスプレイをプロセッサ155と結合することができる。有線接続はケーブル接続、イーサネット接続、USB接続などを例えば含み得る。無線接続は赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続、Zigbee(登録商標)接続などを例えば含み得る。電源165は、センサ素子125およびプロセッサ155に結合しかつ電力を提供することができる。
【0039】
図4D〜4Eに示すように、データを数値、視覚またはコード(例えば緑色光は許容される力を示し、黄色光はかろうじて許容される力を示し、赤色光は許容されない力を示す)で表示することができる。本装置は、関節可動域全体を通じた2つ以上の位置で関節空間における機能力値を同定する。これにより、医師は、再構築された関節空間を、自然な関節の運動および機能にごく近くなるように外科的に調整することができる。外科医は、ディスプレイを、例えば増大した厚さをさらに粉砕および/または調整することで関節空間を調整するためのフィードバックとして使用する。
【0040】
センサ素子125は、いくつかの好適な圧力センサおよび/または力センサのいずれかを含み得る。例示的な態様では、公知の電圧を力感知部材127に伝達し、力感知部材127からの電圧または電流を測定し、公知の電圧に対する力感知部材127を出る電圧の割合を計算する。この割合より圧力および/または力を計算することができる。圧力および/または力を表すアナログ信号は、アナログデジタル(A/D)変換器でデジタル信号に変換可能であり、A/D変換器は、圧力および/または力を表す(1つまたは複数の)表示値を決定するルックアップテーブルにデジタル信号を与えることができる。ユーザーは、表示値を絶対数として使用することができる。A/D変換器、および、感知されたデータを処理して使用可能データにするための任意のさらなる処理モジュールを、プロセッサ155などの単一のプロセッサ中にすべて収容することができる。感知されたデータを感知および表示するための代替的方法も想定される。
【0041】
図2Aおよび2Bを参照すると、本発明の態様は、人工膝関節単一区画形成術(「UKA」)としても知られる人工膝関節部分置換術において用途を見出し得るものであり、その一例としてはOxford(登録商標)人工膝関節部分置換手技がある。図2Aおよび2Bは、内側区画において膝人工関節を有する屈曲状態の左膝を示す。膝は、遠位大腿骨DFおよび近位脛骨PT、ならびに前十字靭帯ACL、後十字靭帯PCL、内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLを含む膝靭帯を含む。関節炎のまたは他の損傷を受けた膝のいくつかの場合では、膝の1つの区画のみが損傷組織を含んでいるかまたはそうでなければ罹患しており、置換を必要とする。図2Aおよび2Bに示す例示的UKA手技では、内側顆部MC上および内側脛骨プラトーMTP上の軟骨が摩耗している(すなわち損傷を受けている)。したがって、右膝の内側区画において、遠位大腿骨と脛骨プラトーTPとの間で、痛みがありかつ衰弱性である骨対骨の接触が存在する。外側顆部LCおよび外側脛骨プラトーLTPは依然として健康である(すなわち損傷を受けていない)。内側顆部MCと遠位大腿骨DFの内側端部とを切断または粉砕し、大腿骨人工関節210に嵌合させる。大腿骨人工関節210は、内側顆部MCと遠位大腿骨DFの内側端部との切断面を覆う。内側脛骨プラトーMTP上の骨を切断または粉砕し、厚さ222、例えば3mmの厚さを有する脛骨人工関節220に嵌合させる。人工軸受面230を大腿骨人工関節210と脛骨人工関節230との間に配置する。他の例示的UKA手技では、左膝の外側区画および/または右膝の内側区画もしくは外側区画は、置換を必要とすることがあり、同様に置換されることがある。いずれの場合でも、膝靭帯、特に内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLの張力のバランスを取るように、かつ完全屈曲から完全伸展までの膝の関節可動域全体を通じて膝が安定しかつ適切に位置合わせされるように、内側または外側の大腿骨後方顆部と、遠位大腿骨の内側または外側の末端と、内側または外側の脛骨プラトーとに加える切断は、非常に正確でかつ適切にサイズ設定されていなければならない。本明細書で使用する「屈曲」とは、膝関節を曲げて角度を低下させること(すなわち大腿の裏側に向かって下腿を動かすこと)を意味する。本明細書で使用する「伸展」とは、膝関節を真っ直ぐ伸ばして角度を増加させること(すなわち大腿の裏側から離して脚を動かすこと)を意味する。
【0042】
図2Cを参照すると、本発明の態様は、人工膝関節全形成術(「TKA」)としても知られる人工膝関節全置換術にも用途を見出し得る。図2Cは、人工関節膝に嵌合した左膝の正面図を示す。膝蓋骨、十字靭帯および半月板は示さない。内側顆部MC、外側顆部LC、内側脛骨プラトーMTPおよび外側脛骨プラトーLTP上の軟骨が損傷を受けている。したがって、左膝において、遠位大腿骨と脛骨プラトーTPとの間で、痛みがありかつ衰弱性である骨対骨の接触が存在する。例示的TKA手技では、大腿骨顆部と遠位大腿骨DFの端部とを切断または粉砕し、全大腿骨人工関節260に嵌合させる。全大腿骨人工関節260は、大腿骨顆部と遠位大腿骨DFの端部との切断面を覆う。脛骨プラトーTP上の骨を切断または粉砕し、全脛骨人工関節270に嵌合させる。全人工軸受面280を全大腿骨人工関節260と全脛骨人工関節270との間に配置する。膝靭帯、特に内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLの張力のバランスを取るように、かつ完全屈曲から完全伸展までの膝の関節可動域全体を通じて膝が安定しかつ適切に位置合わせされるように、大腿骨顆部および脛骨プラトーTPに加える切断は、非常に正確でかつ適切にサイズ設定されていなければならない。
【0043】
図3Aおよび3Bを参照すると、例示的UKA手技中の膝靭帯張力のバランシングを容易にするために、複数のゲージシムを使用することができる。大腿骨の内側または外側の顆部と内側または外側の脛骨プラトーとを切断または粉砕する。次に膝を90度屈曲状態に配置する。切断した大腿骨顆部に大腿骨部材またはテンプレート人工関節215を挿入し、軽く固定する。大腿骨部材またはテンプレート人工関節215は、図2Aに示す大腿骨人工関節210と同様にサイズ設定および形状化されているが、遠位大腿骨DFに恒久的に取り付けられるわけではない。大腿骨テンプレート人工関節215の厚さは大腿骨人工関節210の厚さと一致している。切断した脛骨プラトーを脛骨部材またはテンプレート人工関節225に嵌合させる。脛骨テンプレート人工関節225は、図2Aに示す脛骨人工関節220と同様にしばしばサイズ設定および形状化されているが、近位脛骨PTに恒久的に取り付けられるわけではない。屈曲状態と伸展状態両方での大腿骨テンプレート人工関節215と脛骨人工関節225との間の間隙を測定するために、複数のゲージシムを使用することができる。膝が90度屈曲状態の場合、この間隙を屈曲間隙と呼ぶ。膝が約20度屈曲〜完全伸展の状態である場合、この間隙を伸展間隙と呼ぶ。図4B〜4Cに示すように力センサの上にゲージシム310Aおよび310Bが位置し得るか、または図4Eに示すように力センサの下にゲージシム310Cを取り付けることができる。ゲージシムは平坦な、球状の、曲線状の、凸形のまたは凹形の表面を有し得る。各ゲージシムの少なくとも1つの端部上には、大腿骨テンプレート人工関節215の顆部に接触するように適応した接触区域がある。凹形の表面は、図5Bに示す大腿骨コンポーネント502の同一の内側/外側中心線505の周りの正確な回転位置合わせを可能にする。球状に凹形の領域はまた、相補的嵌合で、丸みのある大腿骨コンポーネントを受け止める。各ゲージシムは特定の厚さを有し得るものであり、例えば1つのシムは1mm厚であり得るものであり、別のシムは2mm厚であり得るものであり、別のシムは3mm厚であり得るものであり、別のシムは4mm厚であり得るものであり、別のシムは5mm厚であり得る。個々のゲージシムを屈曲間隙に挿入する(すなわち試行する)。図3Aに示すように、特定の厚さ315Aのゲージシム310Aは膝靭帯の「自然張力」を実現する。屈曲間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Aの厚さ315Aである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるが屈曲間隙に挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Aにより示すことができる。この「自然張力」は、ユーザーまたは外科医の主観的な「感覚」に基づく。
【0044】
屈曲間隙を測定した時点で伸展間隙を測定する。ゲージシム310Aを除去し、膝を伸展位置、例えば20度屈曲まで動かす。膝を完全伸展などの他の角度の屈曲および伸展まで動かすことは可能であるが、20度屈曲が好ましいことがある。これは、完全伸展状態においては、伸展状態の膝の後方関節包に隙間がないことがあり、その影響により誤った下方測定が導かれることがあるためである。UKA手技のこの時点では、伸展間隙は屈曲間隙よりもしばしば小さい。屈曲間隙を測定する方法と同様にして伸展間隙を測定する。図3Bに示すように、特定の厚さ315Bの特定のゲージシム310Bが膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、個々のゲージシムを屈曲間隙に挿入する。伸展間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Bの厚さ315Bである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるが伸展間隙に挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Bにより示すことができる。この「自然張力」もやはり、ユーザーまたは外科医の主観的な「感覚」に基づく。大腿骨の端部を横切るさらなる切断または粉砕により、屈曲間隙および伸展間隙のバランスを取ることができる。切断される骨の厚さは屈曲間隙と伸展間隙との間の差に等しい。例えば、伸展間隙が2mmであると測定されかつ屈曲間隙が5mmであると測定される場合、遠位大腿骨よりさらに切断または粉砕する骨の厚さを3mmとする。
【0045】
図4A〜4Eをここで参照すると、例示的UKA手技において膝靭帯張力のバランシングを容易にしかつ屈曲間隙と伸展間隙との間のバランスを取るために、手持ち型力センサ100を使用することができる。内側または外側の大腿骨顆部と、遠位大腿骨の内側または外側の端部と、内側または外側の脛骨プラトーとを切断または粉砕する。次に膝を約90度屈曲に配置する。切断した大腿骨顆部に大腿骨テンプレート人工関節215を挿入し、軽く固定する。図4Aに示すように、図3Aおよび3BのUKA手順のように脛骨プラトーTPを脛骨テンプレート人工関節225に嵌合させる代わりに、図1Aに示す薄い遠位部130が脛骨プラトーTPの切断部分または粉砕部分の上に配置されてそれを覆うように、手持ち型力センサ100を屈曲間隙中に配置することができる。薄い遠位部130は、図3Bに示す脛骨テンプレート人工関節225の表面積と一致する表面積を有し得る。薄い遠位部130の厚さ135は、脛骨テンプレート人工関節225の厚さ227と実質的に一致し得る。ストップ部140Aまたは140Bは、手持ち型力センサ100が膝の中に進みすぎることを防ぐことができる。図4Aに示す態様では、手持ち型力センサ100のプロセッサ155を視覚ディスプレイ180に接続190を通じて結合することができる。接続190は、有線接続、例えばUSB接続、同軸ケーブル接続、イーサネットケーブル接続などであり得るか、または無線接続、例えばBlueTooth(登録商標)接続、高周波接続、赤外線接続、Z-Wave接続、Zigbee(登録商標)接続もしくは他の無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)であり得る。図4A〜4Eは、スクリーン185上にプロセッサ155からの使用可能な力データおよび/または圧力データを表示するために適応可能な視覚ディスプレイ180の代替的態様を示す。スクリーン185はLCDディスプレイまたはLEDディスプレイを例えば含み得る。視覚ディスプレイ180はまた、プロセッサ155に結合しているかまたはそれと一体化している有形媒体中に記録可能な力データおよび/または圧力データを表示することができる。そのような有形媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはフラッシュメモリをそれぞれ含む揮発性メモリまたは不揮発性メモリを例えば含み得る。図4Eを参照すると、データはコードを経由して視覚表示180が可能である。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。各光は、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射される。各照射光は、センサに印加される力の増加に対応している。各光は、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される可能性もある。例えば、緑色光186Aは許容される力を示し、黄色光186Bはかろうじて許容される力を示し、赤色光186Cは許容されない力を示す。光は、測定された力の変化を示すために、順次または何らかの他の様式で照射される可能性もある。
【0046】
図4Bに示すように、手持ち型力センサ100は、先に記載の複数のゲージシムと共に、屈曲間隙の測定を容易にすることができ、この場合の屈曲間隙は、膝が屈曲状態の時の薄い遠位部130と大腿骨テンプレート人工関節215との間の間隙である。ゲージシムは、しばしば平坦な表面を有し、手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動可能である。ゲージシムの長さは手持ち型力センサ100の長さと一致し得る。特定の厚さ315Aの特定のゲージシム310Aが屈曲間隙について膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、個々のゲージシムを手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動させて屈曲間隙中に配置する。屈曲間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Aの厚さ315Aである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるがそこに挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Aにより示すことができる。手持ち型力センサ100は、この「自然張力」が得られる際に主観的な力測定値および/または圧力測定値を与える。この測定値データを記録し、スクリーン185を通じて表示することができる。
【0047】
屈曲間隙を測定した後、膝が伸展している時の伸展間隙、すなわち薄い遠位部130と大腿骨テンプレート人工関節215との間の間隙を測定する。ゲージシム310Aおよび/または手持ち型センサ100を除去し、膝を伸展状態、例えば20度屈曲に配置する。膝を他の角度の屈曲および完全伸展などの伸展に動かすことは可能であるが、20度屈曲が好ましいことがある。これは、完全伸展状態では、伸展状態の膝の後方関節包に隙間がないことがあり、その影響により誤った下方測定が導かれることがあるためである。UKA手技のこの時点では、伸展間隙は屈曲間隙よりもしばしば小さい。屈曲間隙を測定する方法と同様にして伸展間隙を測定する。図4Cに示すように、厚さ315Bの特定のゲージシム310Bが伸展間隙について膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、手持ち型力センサ100を伸展間隙に配置しかつ個々のゲージシムを手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動させて伸展間隙中に配置する。伸展間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Bの厚さ315Bである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるがそこに挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Bにより示すことができる。手持ち型力センサ100は、この「自然張力」が得られる際に主観的な力測定値および/または圧力測定値を与える。この測定値データを記録し、スクリーン185を通じて表示することができる。理想的には、伸展間隙について実現される「自然張力」により、屈曲間隙について膝靭帯において実現される「自然張力」と同一の力測定値および/または圧力測定値が得られるはずである。先に記載のように、屈曲間隙の厚さと伸展間隙の厚さとの間の差に基づいて大腿骨の端部を横切ってさらに切断または粉砕することにより、屈曲間隙および伸展間隙ならびに膝靭帯張力のバランスを取ることができる。切断される骨の厚さは屈曲間隙と伸展間隙との間の差に等しい。例えば、伸展間隙が2mmであると測定されかつ屈曲間隙が5mmであると測定される場合、遠位大腿骨よりさらに切断または粉砕する骨の厚さを3mmとする。
【0048】
UKA手技のための手持ち型力センサ100の使用に特に言及しているが、手持ち型力センサ100は、膝および他の解剖学的関節について行われるTKAまたは他の同様の手技にも用途を見出し得る。例えば、そのような解剖学的関節としては肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節を挙げることができる。例えば、手持ち型力センサ100は、肘の上腕骨と尺骨との間の力または隣接する椎骨間の力を測定するために使用されるように適応可能である。
【0049】
図5Aは、ハンドル部150上の源503より光504のビームを放射する手持ち型力センサ100の斜視図を示す。光は、レーザーを例えば含む、ヒトの目に見える任意の光であり得る。光ビーム509は、上向き90度の角度506で力感知パッドまたは部材127に向かってかつそれを横切って光ることで、通路508に沿って高さ510を作り出す。光ビームは、力感知パッド127の平面507に垂直に投射される。力センサ100を大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の屈曲間隙中に設置する際に、光は、外科医に対する傾きおよび位置合わせの視覚的指示として役立つ。このことが重要なのは、光センサを間隙中に挿入する時点ごとに、光により投射される線が正確かつ繰り返し可能な回転位置を確立するためである。人工膝関節形成術中に大腿骨コンポーネント505の顆部中心の位置合わせと光通路508とを比較することで位置を確立する。それは、大腿骨コンポーネント502(すなわち移植片)の大腿骨コンポーネント505の顆部中心との回転位置合わせを確実にする。図5Bは、レーザービームが大腿骨コンポーネント502の面を光らせる、屈曲間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【0050】
図5Cは、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。図5Dは、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を含む、図5Cの回転図を示す。光504のビームを大腿骨Fに沿って方向づける際に、臀部中心位置601の眺めが可視化される。伸展の際、光504のビームを臀部に向かって方向づけることで、大腿骨頭部602上またはその周りの臀部中心位置601の位置に関して外科医に視覚的合図を与えることができる。このことが重要なのは、例えば人工膝関節形成術中に脚の機械的または解剖学的な軸の位置を決定するために役立つためである。
【0051】
図5Eは、凹形力感知パッド501と顆部面502との間に位置する界面511の側面図である。凹形の形状は、橈骨/関節側壁を上昇する接触区域の結果としての力感知パッド501の端部荷重を回避する。力感知パッド501上の同一位置に顆部面が繰り返し嵌合されるため、凹形の形状はまた、異なる前方/後方挿入位置を防止する。あるいは、感知素子は例えば平坦な、球状の、凸形のまたは曲線状の表面を有し得る。
【0052】
上記は本発明の好ましい態様の完全な説明であるが、各種の代替、変形および等価物を使用することができる。したがって、上記の説明を、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は概して、医療用外科装置、システムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、人工膝関節形成術の際の屈曲間隙および/または伸展間隙における力の測定を含む、膝手術を向上させるための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膝は、大腿骨と脛骨との関節点として一般に定義される。膝を構成する構造としては、遠位大腿骨、近位脛骨、膝蓋骨、ならびに膝関節内のおよびそれを取り囲む軟部組織であって、膝の靭帯を含む軟部組織が挙げられる。一般に膝は3つの区画に分けられる: 内側区画(膝の内方部分)、外側区画(膝の外方部分)および膝蓋大腿骨区画(膝頭と大腿骨との間の関節)。内側区画は、大腿骨、脛骨、およびそれらの間に割り込まれる半月板の内側関節面を含む。外側区画は、大腿骨、脛骨、およびそれらの間に割り込まれる半月板の外側関節面を含む。膝蓋大腿骨区画は、膝頭または膝蓋骨の下面と大腿骨との間の関節を含む。前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯および外側側副靭帯という4つの靭帯が、膝の安定性、位置合わせおよび機能において特に重要である。関節炎の膝では、大腿骨と脛骨との関節点での保護軟骨がしばしば摩耗し、それによって大腿骨が脛骨に直接接触する。この骨対骨の接触は、患者の著しい疼痛、不快感および能力障害を引き起こすことがあり、人工膝関節置換術または人工膝関節形成術をしばしば必要とする。
【0003】
人工膝関節形成術は、膝の自然な動作を可能にするように形状化される金属およびプラスチックのコンポーネントによる、膝の患部でありかつ痛みのある関節面の置換を包含する。人工膝関節置換術は全置換または部分置換であり得る。人工膝関節全形成術(「TKA」)とも呼ばれる人工膝関節全置換術は、大腿骨の遠位端、脛骨の近位端、およびしばしば人工関節部品付きの膝蓋骨の内面の全置換を包含する。大腿骨の遠位端および脛骨の近位端上で切断を実行する。次に人工関節部品を取り付ける。人工関節部品は、広範な関節可動域を通じて動く安定した膝関節を作り出す。人工関節部品による膝構造の置換は、膝が骨対骨の接触を回避することを可能にし、関節運動用の円滑で十分に位置合わせされた表面を与える。
【0004】
TKAでは、大腿骨の遠位端および脛骨の近位端を完全に除去する。したがって、健康な組織も同様に除去されることがある。1区画においてのみ軟骨が摩耗した患者では、TKAの代替は人工膝関節部分置換術すなわち人工膝関節単一区画形成術(「UKA」)であり得、その一例としてはOxford(登録商標)人工膝関節部分置換手技がある。TKAと比較したUKAの利点としては、切開の縮小、術後リハビリテーションの容易化、院内滞留時間の短縮、出血の減少、感染症、硬直および血塊の危険性低下、ならびに必要な場合の再置換術の容易化が挙げられる。
【0005】
TKAとUKAとの両方を含む人工膝関節置換術の課題は、屈曲位置から完全伸展位置までの膝の関節可動域全体を通じての、靭帯張力、特に内側および外側の側副靭帯における張力の適切なバランシングである。膝の内側および外側の遠位大腿骨と近位脛骨とを接続する側副靭帯は、膝の安定性および運動の大部分を担う。典型的には、人工膝関節置換術後の不均一な靭帯張力は、関節不安定および膝蓋骨トラッキング不良、関節可動域の制限、膝の機能障害、ならびに人工関節装置の不均一で増大した摩耗および/または弛緩を含む症状を導く。これらの症状は再手術をしばしば必要とし得る。したがって、人工膝関節置換手技は、膝の関節可動域全体を通じて膝のバランスの取れた靭帯張力を実現することに、短期的および長期的に成功することが必須である。
【0006】
人工膝関節置換術の際の靭帯張力のバランシングは、単軸の周りを動くヒンジのようには自然な膝は動作しないという事実により複雑化する。膝がその屈曲位置からその完全伸展位置まで動く際に、膝は大腿骨に対する脛骨の動的回転を示し、これは逆もまた真である。したがって、自然な膝は、制限された内部および外部の弧を通じて脛骨が膝屈曲中に回転することを可能にするという回転弛緩を示す。さらに、大腿骨は、脛骨がその周りで屈曲している際に前方および後方に平行移動し、これによりさらに別の可変運動がもたらされる。したがって、膝の靭帯は、大腿骨、脛骨および膝蓋骨と共に、動的な生体機構を作り出し、これによりTKA手術における靭帯張力バランシングが難しいものになる。Mihalko, W. H. et al., "Comparison of Ligament-Balancing Techniques During Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 132-135; Eckhoff, D. G. et al., "Three-Dimensional Morphology and Kinematics of the Distal Part of the Femur Viewed in Virtual Reality, Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 97-104; およびRies, M. D., et al., "Soft-Tissue Balance in Revision Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 38-42(非特許文献1〜3)などの多くの論文および研究が、TKAにおける靭帯張力バランシングを対象としている。
【0007】
人工膝関節置換手技中の側副靭帯張力のバランシング用の1つの技術は、靭帯張力を低下させるために一方または両方の靭帯の線維を切断すること、すなわち「靭帯放出」と呼ばれる技術を包含する。この技術の短所は、靭帯組織の切断が、靭帯を弱め、かつ将来の靭帯放出または人工膝関節置換手技が必要になる場合に誤りの余地が少なくなるということである。
【0008】
靭帯張力のバランシングのために、靭帯放出よりもむしろまたは靭帯放出に加えて、膝人工関節のコンポーネントを選択しかつ位置づけることができる。典型的な人工膝関節置換手技では、人工関節の大腿骨コンポーネントを取り付ける前に、遠位大腿骨に対して複数の切断を実行する。例えば、大部分のTKA手技は、大腿骨コンポーネントをしっかりと定位置に固定することを支援するために、大腿骨の遠位端を横切る遠位切断、前方切断および後方切断、ならびに角度の付いた前方面取り切断および後方面取り切断を実行することを包含する。外科医は、膝の関節可動域全体を通じて靭帯張力のバランスを最適に取るために、これらの大腿骨切断を実行して大腿骨人工関節コンポーネントの位置および向きを得ることを試みる。しかし、膝の関節可動域全体を通じて理想的な靭帯張力を得るために大腿骨切断および大腿骨人工関節コンポーネントを位置づけることはしばしば非常に難しいものとなる。これは主に、先に記載のような膝の周りの動作の複雑さ、および、関節可動域全体を通じて所望の靭帯張力を維持するための大腿骨コンポーネントの配置の困難による。
【0009】
TKA手技中の靭帯バランシングを容易にすることを試みるいくつかの装置および技術が記載されている。米国特許第5,733,292号(特許文献1)に記載の技術などのいくつかの技術は、靭帯張力を評価するために大腿骨および脛骨の切断を実行した後で使用する試行用人工関節コンポーネントを包含する。米国特許出願公開第2003/0187452 A1号(特許文献2)に記載の装置などのいくつかの装置は、伸展状態の遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙を測定するために、および膝が屈曲状態の時にその同一の間隙を外科医が再び作り出すことを支援するために使用される。他の「間隙点検」装置は米国特許第6,575,980号(特許文献3)に記載されている。靭帯張力量の測定を支援するためのまたは所望の張力量を靭帯に印加するための他の装置も開発されている。例えば、米国特許第4,501,266号(特許文献4)では、所望の張力量を印加するための膝伸延装置が記載されている。米国特許第5,597,379号; 第5,540,696号; 第5,800,438号; 第5,860,980号; 第5,911,723号; および第6,022,377号(特許文献5〜10)に記載の装置などの、膝関節を横切る張力を印加または測定するための多くのパドル状装置が示唆されている。他の方法および装置は、共に譲渡されかつ同時係属中の米国特許出願第10/773,608号(代理人整理番号021976-000200US)、第10/973936号(代理人整理番号021976-000210US)および第11/149,944号(代理人整理番号021976-000220US)(特許文献11〜13)に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【0010】
TKA手技中の靭帯バランシングを容易にするために記載の装置も、UKA手順において用途を見出し得る。ある種のUKA手技、例えばOxford(登録商標)人工膝関節部分置換術では、いずれも一定の厚さを有する一組のシムまたはすきまゲージが外科医に与えられ得る。シムまたはすきまゲージは、膝張力のバランシングを容易にするために遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙を測定するために使用される。遠位大腿骨の一側面および近位脛骨の相補側面を切断または粉砕した時点で、遠位大腿骨および近位脛骨の表面をテンプレート人工関節に嵌合させることができる。屈曲状態の膝において、外科医は、大腿骨人工関節と脛骨人工関節との間の間隙の厚さの測定を、膝の「自然張力」が実現されるようにシムまたはすきまゲージを間隙中に配置することで行うことができる。シムまたはすきまゲージが間隙の内または外に容易に摺動するが傾かないという場合に、「自然張力」を実現することができる。シムまたはすきまゲージを除去した後に、膝を例えば20度屈曲状態に伸展させ、間隙を同様に測定する。膝が屈曲状態の時と膝が伸展した時とで遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙が同一になるように遠位大腿骨の端部をさらに切断または粉砕することにより、膝の張力のバランスを取ることができる。屈曲状態の膝の間隙サイズと伸展した膝の間隙サイズとの間の差に基づいて、遠位大腿骨をさらに切断または粉砕する。例えば、屈曲間隙が5mmであると測定されかつ伸展間隙が2mmであると測定される場合、粉砕する骨の量を3mmとする。しかし、この手技は、外科医の主観的な「感覚」に大きく依存する。したがって、この手技を定量化しかつ標準化することが必要である。
【0011】
上記の理由から、人工膝関節置換術を向上させるための、具体的には人工膝関節の関節可動域、安定性および膝蓋骨トラッキングを改善するために人工膝関節置換術中に靭帯のバランスを動的に取るための、改善された装置、システムおよび方法の必要性が存在する。理想的には、そのような装置および方法は、大腿骨に対する最終的な骨切断を確約および実行する前に、外科医が所望の靭帯張力バランスを実現することを可能にすると考えられる。理想的には、そのような装置は、既存の人工膝関節置換用の手技ならびに人工関節テンプレート、測定ガイド、切断ガイドおよびソーブレードまたはバーなどの機器との組み合わせでの使用が簡単であると考えられる。これらの目的のうち少なくとも一部は本発明により達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,733,292号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0187452 A1号
【特許文献3】米国特許第6,575,980号
【特許文献4】米国特許第4,501,266号
【特許文献5】米国特許第5,597,379号
【特許文献6】米国特許第5,540,696号
【特許文献7】米国特許第5,800,438号
【特許文献8】米国特許第5,860,980号
【特許文献9】米国特許第5,911,723号
【特許文献10】米国特許第6,022,377号
【特許文献11】米国特許出願第10/773,608号
【特許文献12】米国特許出願第10/973936号
【特許文献13】米国特許出願第11/149,944号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mihalko, W. H. et al., "Comparison of Ligament-Balancing Techniques During Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 132-135
【非特許文献2】Eckhoff, D. G. et al., "Three-Dimensional Morphology and Kinematics of the Distal Part of the Femur Viewed in Virtual Reality, Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 97-104
【非特許文献3】Ries, M. D., et al., "Soft-Tissue Balance in Revision Total Knee Arthroplasty," Journal of Bone & Joint Surgery, Vol. 85-A, Supplement 4, 2003, 38-42
【発明の概要】
【0014】
発明の簡単な概要
本発明の態様は、手術中の膝の空間内の力を測定するためのシステム、装置および方法を提供する。そのような力は膝の靭帯における張力により引き起こされ得る。大腿骨部材を遠位大腿骨に係合させる。膝が屈曲、部分伸展または完全伸展している間に、力センサおよびゲージシムを大腿骨部材の端部と脛骨プラトーとの間の間隙中に配置して、それらの間の力を測定することができる。力センサは、力の正確かつ数量化可能な測定値を与えることで、人工膝関節置換術および靭帯張力バランシングをさらに正確にし、標準化し、繰り返し可能にする。力センサは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む細長いハウジングを含む。センサ素子は、細長いハウジングの薄い力感知遠位部内に設置される。
【0015】
本発明の一局面は、解剖学的関節の空間内の力を測定するためのシステムを提供する。本システムは、細長いハウジングとセンサ素子とを含む力センサを含む。細長いハウジングは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む。薄い力感知遠位部はセンサ素子を含む。解剖学的関節はしばしば膝であり、解剖学的関節の空間内の力は膝に隣接する靭帯により引き起こされる。あるいは、解剖学的関節は別の関節、例えば肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。細長いハウジングは、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含み得る。
【0016】
多くの態様では、センサ素子は力感知部材を含む。力感知部材は圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択され得る。視覚ディスプレイは、典型的には配線接続されているセンサと同一のハウジングに組み入れることができるか、または無線でプロセッサと結合することができる。いくつかの態様では、細長いハウジングの薄い遠位部は、幅広い近位領域と薄い近位領域とを含む。センサ素子の力感知部材は、細長いハウジングの幅広い遠位領域内に設置される。センサ素子は、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含み得る。
【0017】
多くの態様では、本システムはプロセッサと視覚ディスプレイとをさらに含む。プロセッサは、感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合している。視覚ディスプレイはプロセッサと結合しており、かつ、使用可能データをデジタルスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)などを含む各種グラフィカルインターフェースまたは数値インターフェースのうちいずれか1つにより表示するように適合化されている。視覚ディスプレイは近位ハンドル部に取り付けられている。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。光は、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射される。各照射光は、センサに印加される力の増加に対応している。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。各光は、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される。
【0018】
視覚ディスプレイは、赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続およびZigbee(登録商標)接続などの無線接続を通じて無線でプロセッサと結合することができる。いくつかの態様では、本システムは、プロセッサおよび視覚ディスプレイのうち少なくとも1つに結合している有形媒体をさらに含む。有形媒体は、測定された力の値を記録するように構成されている。
【0019】
多くの態様では、本システムは少なくとも1つのゲージシムをさらに含む。少なくとも1つのゲージシムは、凹形であり、かつ以下に記載の球状に凹形の(すなわち内向きに曲線状の)領域により典型的に確定される顆部接触区域を有する。いくつかの態様では、薄い遠位力感知部の長さは少なくとも1つのゲージシムの顆部接触区域の長さと一致し得る。いくつかの態様では、細長いバーは、平坦な第1の側面と第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有し得る。平坦な第1の側面は、少なくとも1つのゲージシムと一致するように適応し得る。テーパ状の第2の側面は、細長いバーの遠位端に向かってテーパ状になり得る。
【0020】
多くの態様では、ストップ部は薄い遠位部よりも厚い。多くの態様では、ストップ部は、解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定するために薄い部分の遠位端に垂直に取り付けられている。多くの態様では、近位ハンドル部は薄い遠位力感知部よりも厚い。
【0021】
多くの態様では、本システムは、近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含む。約90度屈曲状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に大腿骨コンポーネントの顆部中心の正中線を捕捉するために、光源は、遠位大腿骨の前部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている。多くの態様では、光は屈曲の際の大腿骨コンポーネントの顆部中心との回転位置合わせを示す。他の態様では、本システムは、近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含む。伸展状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に臀部中心の位置を捕捉するために、光源は、臀部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている。多くの態様では、光はレーザーである。
【0022】
本発明の別の局面は、解剖学的関節の空間内の力を測定するための手持ち型装置を提供する。本装置は、細長いハウジングとセンサ素子とを含む。細長いハウジングは、薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含む。薄い力感知遠位部はセンサ素子を含む。解剖学的関節はしばしば膝であり、解剖学的関節の空間内の力は膝に隣接する靭帯により引き起こされる。あるいは、解剖学的関節は別の関節、例えば肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。細長いハウジングは、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含み得る。
【0023】
多くの態様では、センサ素子は力感知部材を含む。力感知部材は圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択され得る。多くの態様では、細長いハウジングの薄い遠位部は、幅広い近位領域と薄い近位領域とを含む。力感知部材はセンサ素子を含む。センサ素子は、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含み得る。
【0024】
多くの態様では、手持ち型装置は、感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと、プロセッサと結合しておりかつ使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイとをさらに含む。本装置は、センサ素子およびプロセッサと結合している電源をさらに含み得る。
【0025】
多くの態様では、細長いハウジングは、平坦な第1の側面と第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する。テーパ状の第2の側面は、細長いハウジングの遠位端に向かってテーパ状になり得る。
【0026】
多くの態様では、ストップ部は薄い遠位力感知部よりも厚い。多くの態様では、近位ハンドル部は薄い遠位部よりも厚い。
【0027】
本発明の別の局面は、手術中の膝の空間内の力を測定するための方法を提供する。本方法は、遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階、および膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階を含む。本方法の多くの態様では、遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階は、近位脛骨プラトーの上に力センサの遠位部を配置することを含む。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が屈曲状態の時に力を測定する。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が部分伸展している時に力を測定する。多くの態様では、力センサを間隙中に配置し、膝が完全伸展状態の時に力を測定する。多くの態様では、近位脛骨または遠位大腿骨のうち一方から切除された骨により増加した間隙内の力を測定するために、力センサを間隙中に、移動可能に力センサに結合しているゲージシムと共に配置する。多くの態様では、移動可能に結合しているゲージシムの厚さと力センサの厚さとの組み合わせが、膝の靭帯が許容される張力に調節されたことを示す力測定値を与える場合に、膝の靭帯の自然張力が実現される。
【0028】
多くの態様では、本方法は、測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階、および使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを位置合わせするために、力センサを間隙中に繰り返し可能な様式で多数回配置する段階を含む。多くの態様では、本方法は、間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを当接させることで間隙の同一後面で停止させる段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階、および解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む。
【0029】
多くの態様では、本方法は、力センサ上のまたは力センサから投射される光の線またはビームを可視化することにより、解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、力センサの薄い力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること、センサ素子を通過した後で電圧を測定すること、センサ素子に伝達された電圧に対するセンサ素子を通過した電圧の割合を決定すること、および測定される力を該割合より導出することにより、膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階を含む。
【0030】
本発明の別の局面は、手術中の解剖学的関節の空間内の力を測定するための方法を提供する。解剖学的関節は、第1の端部を有する第1の骨と、第1の端部に対向する第2の端部を有する第2の骨とを含む。第1の骨の第1の端部に人工関節を係合させる。人工関節と第2の骨の第2の端部との間の間隙中に力センサを配置する。第1の骨の第1の端部と第2の骨の第2の端部との間で互いに対して及ぼされる力を力センサの力感知部によって測定する。間隙から力センサを取り外す。間隙中に力センサを配置する段階は、第2の骨の第2の端部の上に力センサの遠位部を配置することを含む。多くの態様では、本方法は間隙中にゲージシムを配置する段階をさらに含む。多くの態様では、本方法は、測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階、および使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階をさらに含む。
【0031】
多くの態様では、本方法は、視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む。多くの態様では、力を測定する段階は、力センサの力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること、センサ素子を通過した後で電圧を測定すること、センサ素子に伝達された電圧に対するセンサ素子を通過した電圧の割合を決定すること、および測定される力を該割合より導出することを含む。
【0032】
そのような力が測定される解剖学的関節は膝関節、肘関節、椎間関節、股関節、足首関節または肩関節であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】本発明の態様に係る手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図1B】図1Aの力センサの側面図を示す。
【図1C】図1Aの力センサの上面図を示す。
【図1D】上面から見た図1Aの力センサの断面を示す。
【図1E】図1Aの力センサの遠位部の断面を示す。
【図1F】本発明の態様に係る手持ち型力センサのストップ部の斜視図を示す。
【図2A】単一区画のすなわち人工膝関節部分置換術を受けた膝を示す。
【図2B】単一区画のすなわち人工膝関節部分置換術を受けた膝を示す。
【図2C】人工膝関節全置換術を受けた膝を示す。
【図3A】屈曲の際の人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図3B】伸展の際の人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4A】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4B】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4C】図1Aの力センサを使用する人工膝関節部分置換手技における膝靭帯張力のバランシングを示す。
【図4D】手持ち型力センサ視覚ディスプレイの代替態様を示す。
【図4E】手持ち型力センサ視覚ディスプレイの代替態様を示す。
【図5A】レーザービームが起動した手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5B】レーザービームが起動した、屈曲状態の間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5C】レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5D】臀部中心位置の内側図を含む、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【図5E】手持ち型力センサと顆部面との間の界面の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
システム、装置および方法の以下の例示的態様を、人工膝関節部分置換術および人工膝関節全置換術の際の力の感知の文脈で説明する。これは例示目的のみとして意図されており、当業者は、本明細書で開示されているシステム、装置および方法がいくつかの他の用途に使用可能であり、したがって膝手術に限定されないということを認識するであろう。以下の詳細な説明を読み、かつ全体を通じて同様の番号が同様の部品を指す添付の図面を参照することにより、特徴および利点が明らかになるであろう。
【0035】
図1A〜1Fは、本発明の態様に係る手持ち型力センサ100を示す。図1Aは、力センサ100の斜視図を示す。図1Bは、力センサ100の側面図を示す。図1Cは、力センサ100の上面図を示す。図1Dは、上面から見下ろした力センサ100の断面を示す。図1Eは、正面から見た力センサ100の遠位部の断面を示す。図1Fは、本発明の態様に係る手持ち型力センサ100のストップ部140Bの斜視図を示す。
【0036】
力センサ100は、平坦な上面110とテーパ状の下面115とを有する細長いハウジング105を含む。テーパ状の下面115により、細長いハウジング105の近位端に向かって一般に厚くなる力センサ100が得られる。力センサ100は、幅広い遠位力感知部120を有する薄い遠位部130とハンドル部150とを含む。薄い遠位部130の厚さ135は非常に薄く、例えば約1mm〜4mmの範囲、典型的には3mmであり得る。薄い遠位部130は、膝の内側区画または外側区画のサイズと一致するサイズを有し得る。力センサ100は、遠位力感知部120の近位にあるストップ部140Aまたは140Bをさらに含み得る。ストップ部140Aは力遠位感知部120よりも厚い。ハンドル部150は遠位感知部120とストップ部140Aとの両方よりも厚いことがある。あるいは、図1Fに示すストップ部140Bを「バックストップ」構成で構成することもできる。いずれの構成でも、ストップ部は解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定する。力感知パッド上の同一位置中に顆部面が繰り返し嵌合されるため、ストップ部は、異なる前方/後方挿入位置を防止する。大腿骨などの外科的標識および/または大腿骨コンポーネントなどの装置に対してストップを当接させることで、力センサを解剖学的関節間隙中に同一位置で多数回配置することができる。ストップ部140Bの「バックストップ」構成は、光を通過させるように、透過性材料で作製可能でありかつ/または開口600を有し得る。
【0037】
図1Dは、上面から見下ろした手持ち型力センサ100の断面を示す。センサ素子125、回路またはプロセッサ155、および電源165、例えば電池は細長いハウジング105内に設置される。センサ素子125は薄い遠位部130内に設置される。図1Dに示すように、プロセッサ155および電源165はハンドル部150内に設置される。しかし、プロセッサ155および電源165は、細長いハウジング105の外側に位置づけることができ、有線接続または無線接続を通じて力センサ100と結合することができる。センサ素子125は力感知パッドまたは力感知部材127を含む。力感知部材127は任意の好適な形状、サイズおよび構成を有し得る。図1Dに示す態様では、力感知部材127は遠位力感知部120を含む。力感知部材127は、例えば遠位力感知部120内に完全に設置されていてもそうでなくてもよい。力感知部材127は圧力感知材料または力感知材料の層を含み得る。任意の好適な圧力感知材料または力感知材料または材料組み合わせを、力感知部材127を形成するために使用することができる。使用可能ないくつかの例としては圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、他の圧力センサおよび他の力センサが挙げられるがそれに限定されない。
【0038】
センサ素子125は、力感知部材127より遠位に延在する遠位配線129をさらに含む。遠位配線129は薄い遠位部130内に少なくとも部分的に設置される。センサ素子125は遠位配線129を通じてプロセッサ155に結合することができる。力感知部材127は、それ自体に及ぼされる圧力または力を感知することができ、遠位配線129は、感知された力または圧力を表す電気信号を送ることができる。プロセッサ155は、これらの信号を処理して、外科医などのユーザーに提供するための使用可能データとする。例えば、プロセッサ155と結合した視覚ディスプレイを通じて、使用可能データを外科医に提供することができる。有線接続または無線接続を通じて視覚ディスプレイをプロセッサ155と結合することができる。有線接続はケーブル接続、イーサネット接続、USB接続などを例えば含み得る。無線接続は赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続、Zigbee(登録商標)接続などを例えば含み得る。電源165は、センサ素子125およびプロセッサ155に結合しかつ電力を提供することができる。
【0039】
図4D〜4Eに示すように、データを数値、視覚またはコード(例えば緑色光は許容される力を示し、黄色光はかろうじて許容される力を示し、赤色光は許容されない力を示す)で表示することができる。本装置は、関節可動域全体を通じた2つ以上の位置で関節空間における機能力値を同定する。これにより、医師は、再構築された関節空間を、自然な関節の運動および機能にごく近くなるように外科的に調整することができる。外科医は、ディスプレイを、例えば増大した厚さをさらに粉砕および/または調整することで関節空間を調整するためのフィードバックとして使用する。
【0040】
センサ素子125は、いくつかの好適な圧力センサおよび/または力センサのいずれかを含み得る。例示的な態様では、公知の電圧を力感知部材127に伝達し、力感知部材127からの電圧または電流を測定し、公知の電圧に対する力感知部材127を出る電圧の割合を計算する。この割合より圧力および/または力を計算することができる。圧力および/または力を表すアナログ信号は、アナログデジタル(A/D)変換器でデジタル信号に変換可能であり、A/D変換器は、圧力および/または力を表す(1つまたは複数の)表示値を決定するルックアップテーブルにデジタル信号を与えることができる。ユーザーは、表示値を絶対数として使用することができる。A/D変換器、および、感知されたデータを処理して使用可能データにするための任意のさらなる処理モジュールを、プロセッサ155などの単一のプロセッサ中にすべて収容することができる。感知されたデータを感知および表示するための代替的方法も想定される。
【0041】
図2Aおよび2Bを参照すると、本発明の態様は、人工膝関節単一区画形成術(「UKA」)としても知られる人工膝関節部分置換術において用途を見出し得るものであり、その一例としてはOxford(登録商標)人工膝関節部分置換手技がある。図2Aおよび2Bは、内側区画において膝人工関節を有する屈曲状態の左膝を示す。膝は、遠位大腿骨DFおよび近位脛骨PT、ならびに前十字靭帯ACL、後十字靭帯PCL、内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLを含む膝靭帯を含む。関節炎のまたは他の損傷を受けた膝のいくつかの場合では、膝の1つの区画のみが損傷組織を含んでいるかまたはそうでなければ罹患しており、置換を必要とする。図2Aおよび2Bに示す例示的UKA手技では、内側顆部MC上および内側脛骨プラトーMTP上の軟骨が摩耗している(すなわち損傷を受けている)。したがって、右膝の内側区画において、遠位大腿骨と脛骨プラトーTPとの間で、痛みがありかつ衰弱性である骨対骨の接触が存在する。外側顆部LCおよび外側脛骨プラトーLTPは依然として健康である(すなわち損傷を受けていない)。内側顆部MCと遠位大腿骨DFの内側端部とを切断または粉砕し、大腿骨人工関節210に嵌合させる。大腿骨人工関節210は、内側顆部MCと遠位大腿骨DFの内側端部との切断面を覆う。内側脛骨プラトーMTP上の骨を切断または粉砕し、厚さ222、例えば3mmの厚さを有する脛骨人工関節220に嵌合させる。人工軸受面230を大腿骨人工関節210と脛骨人工関節230との間に配置する。他の例示的UKA手技では、左膝の外側区画および/または右膝の内側区画もしくは外側区画は、置換を必要とすることがあり、同様に置換されることがある。いずれの場合でも、膝靭帯、特に内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLの張力のバランスを取るように、かつ完全屈曲から完全伸展までの膝の関節可動域全体を通じて膝が安定しかつ適切に位置合わせされるように、内側または外側の大腿骨後方顆部と、遠位大腿骨の内側または外側の末端と、内側または外側の脛骨プラトーとに加える切断は、非常に正確でかつ適切にサイズ設定されていなければならない。本明細書で使用する「屈曲」とは、膝関節を曲げて角度を低下させること(すなわち大腿の裏側に向かって下腿を動かすこと)を意味する。本明細書で使用する「伸展」とは、膝関節を真っ直ぐ伸ばして角度を増加させること(すなわち大腿の裏側から離して脚を動かすこと)を意味する。
【0042】
図2Cを参照すると、本発明の態様は、人工膝関節全形成術(「TKA」)としても知られる人工膝関節全置換術にも用途を見出し得る。図2Cは、人工関節膝に嵌合した左膝の正面図を示す。膝蓋骨、十字靭帯および半月板は示さない。内側顆部MC、外側顆部LC、内側脛骨プラトーMTPおよび外側脛骨プラトーLTP上の軟骨が損傷を受けている。したがって、左膝において、遠位大腿骨と脛骨プラトーTPとの間で、痛みがありかつ衰弱性である骨対骨の接触が存在する。例示的TKA手技では、大腿骨顆部と遠位大腿骨DFの端部とを切断または粉砕し、全大腿骨人工関節260に嵌合させる。全大腿骨人工関節260は、大腿骨顆部と遠位大腿骨DFの端部との切断面を覆う。脛骨プラトーTP上の骨を切断または粉砕し、全脛骨人工関節270に嵌合させる。全人工軸受面280を全大腿骨人工関節260と全脛骨人工関節270との間に配置する。膝靭帯、特に内側側副靭帯MCLおよび外側側副靭帯LCLの張力のバランスを取るように、かつ完全屈曲から完全伸展までの膝の関節可動域全体を通じて膝が安定しかつ適切に位置合わせされるように、大腿骨顆部および脛骨プラトーTPに加える切断は、非常に正確でかつ適切にサイズ設定されていなければならない。
【0043】
図3Aおよび3Bを参照すると、例示的UKA手技中の膝靭帯張力のバランシングを容易にするために、複数のゲージシムを使用することができる。大腿骨の内側または外側の顆部と内側または外側の脛骨プラトーとを切断または粉砕する。次に膝を90度屈曲状態に配置する。切断した大腿骨顆部に大腿骨部材またはテンプレート人工関節215を挿入し、軽く固定する。大腿骨部材またはテンプレート人工関節215は、図2Aに示す大腿骨人工関節210と同様にサイズ設定および形状化されているが、遠位大腿骨DFに恒久的に取り付けられるわけではない。大腿骨テンプレート人工関節215の厚さは大腿骨人工関節210の厚さと一致している。切断した脛骨プラトーを脛骨部材またはテンプレート人工関節225に嵌合させる。脛骨テンプレート人工関節225は、図2Aに示す脛骨人工関節220と同様にしばしばサイズ設定および形状化されているが、近位脛骨PTに恒久的に取り付けられるわけではない。屈曲状態と伸展状態両方での大腿骨テンプレート人工関節215と脛骨人工関節225との間の間隙を測定するために、複数のゲージシムを使用することができる。膝が90度屈曲状態の場合、この間隙を屈曲間隙と呼ぶ。膝が約20度屈曲〜完全伸展の状態である場合、この間隙を伸展間隙と呼ぶ。図4B〜4Cに示すように力センサの上にゲージシム310Aおよび310Bが位置し得るか、または図4Eに示すように力センサの下にゲージシム310Cを取り付けることができる。ゲージシムは平坦な、球状の、曲線状の、凸形のまたは凹形の表面を有し得る。各ゲージシムの少なくとも1つの端部上には、大腿骨テンプレート人工関節215の顆部に接触するように適応した接触区域がある。凹形の表面は、図5Bに示す大腿骨コンポーネント502の同一の内側/外側中心線505の周りの正確な回転位置合わせを可能にする。球状に凹形の領域はまた、相補的嵌合で、丸みのある大腿骨コンポーネントを受け止める。各ゲージシムは特定の厚さを有し得るものであり、例えば1つのシムは1mm厚であり得るものであり、別のシムは2mm厚であり得るものであり、別のシムは3mm厚であり得るものであり、別のシムは4mm厚であり得るものであり、別のシムは5mm厚であり得る。個々のゲージシムを屈曲間隙に挿入する(すなわち試行する)。図3Aに示すように、特定の厚さ315Aのゲージシム310Aは膝靭帯の「自然張力」を実現する。屈曲間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Aの厚さ315Aである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるが屈曲間隙に挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Aにより示すことができる。この「自然張力」は、ユーザーまたは外科医の主観的な「感覚」に基づく。
【0044】
屈曲間隙を測定した時点で伸展間隙を測定する。ゲージシム310Aを除去し、膝を伸展位置、例えば20度屈曲まで動かす。膝を完全伸展などの他の角度の屈曲および伸展まで動かすことは可能であるが、20度屈曲が好ましいことがある。これは、完全伸展状態においては、伸展状態の膝の後方関節包に隙間がないことがあり、その影響により誤った下方測定が導かれることがあるためである。UKA手技のこの時点では、伸展間隙は屈曲間隙よりもしばしば小さい。屈曲間隙を測定する方法と同様にして伸展間隙を測定する。図3Bに示すように、特定の厚さ315Bの特定のゲージシム310Bが膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、個々のゲージシムを屈曲間隙に挿入する。伸展間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Bの厚さ315Bである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるが伸展間隙に挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Bにより示すことができる。この「自然張力」もやはり、ユーザーまたは外科医の主観的な「感覚」に基づく。大腿骨の端部を横切るさらなる切断または粉砕により、屈曲間隙および伸展間隙のバランスを取ることができる。切断される骨の厚さは屈曲間隙と伸展間隙との間の差に等しい。例えば、伸展間隙が2mmであると測定されかつ屈曲間隙が5mmであると測定される場合、遠位大腿骨よりさらに切断または粉砕する骨の厚さを3mmとする。
【0045】
図4A〜4Eをここで参照すると、例示的UKA手技において膝靭帯張力のバランシングを容易にしかつ屈曲間隙と伸展間隙との間のバランスを取るために、手持ち型力センサ100を使用することができる。内側または外側の大腿骨顆部と、遠位大腿骨の内側または外側の端部と、内側または外側の脛骨プラトーとを切断または粉砕する。次に膝を約90度屈曲に配置する。切断した大腿骨顆部に大腿骨テンプレート人工関節215を挿入し、軽く固定する。図4Aに示すように、図3Aおよび3BのUKA手順のように脛骨プラトーTPを脛骨テンプレート人工関節225に嵌合させる代わりに、図1Aに示す薄い遠位部130が脛骨プラトーTPの切断部分または粉砕部分の上に配置されてそれを覆うように、手持ち型力センサ100を屈曲間隙中に配置することができる。薄い遠位部130は、図3Bに示す脛骨テンプレート人工関節225の表面積と一致する表面積を有し得る。薄い遠位部130の厚さ135は、脛骨テンプレート人工関節225の厚さ227と実質的に一致し得る。ストップ部140Aまたは140Bは、手持ち型力センサ100が膝の中に進みすぎることを防ぐことができる。図4Aに示す態様では、手持ち型力センサ100のプロセッサ155を視覚ディスプレイ180に接続190を通じて結合することができる。接続190は、有線接続、例えばUSB接続、同軸ケーブル接続、イーサネットケーブル接続などであり得るか、または無線接続、例えばBlueTooth(登録商標)接続、高周波接続、赤外線接続、Z-Wave接続、Zigbee(登録商標)接続もしくは他の無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)であり得る。図4A〜4Eは、スクリーン185上にプロセッサ155からの使用可能な力データおよび/または圧力データを表示するために適応可能な視覚ディスプレイ180の代替的態様を示す。スクリーン185はLCDディスプレイまたはLEDディスプレイを例えば含み得る。視覚ディスプレイ180はまた、プロセッサ155に結合しているかまたはそれと一体化している有形媒体中に記録可能な力データおよび/または圧力データを表示することができる。そのような有形媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはフラッシュメモリをそれぞれ含む揮発性メモリまたは不揮発性メモリを例えば含み得る。図4Eを参照すると、データはコードを経由して視覚表示180が可能である。視覚ディスプレイは複数の異なる着色光を含む。各光は、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射される。各照射光は、センサに印加される力の増加に対応している。各光は、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される可能性もある。例えば、緑色光186Aは許容される力を示し、黄色光186Bはかろうじて許容される力を示し、赤色光186Cは許容されない力を示す。光は、測定された力の変化を示すために、順次または何らかの他の様式で照射される可能性もある。
【0046】
図4Bに示すように、手持ち型力センサ100は、先に記載の複数のゲージシムと共に、屈曲間隙の測定を容易にすることができ、この場合の屈曲間隙は、膝が屈曲状態の時の薄い遠位部130と大腿骨テンプレート人工関節215との間の間隙である。ゲージシムは、しばしば平坦な表面を有し、手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動可能である。ゲージシムの長さは手持ち型力センサ100の長さと一致し得る。特定の厚さ315Aの特定のゲージシム310Aが屈曲間隙について膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、個々のゲージシムを手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動させて屈曲間隙中に配置する。屈曲間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Aの厚さ315Aである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるがそこに挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Aにより示すことができる。手持ち型力センサ100は、この「自然張力」が得られる際に主観的な力測定値および/または圧力測定値を与える。この測定値データを記録し、スクリーン185を通じて表示することができる。
【0047】
屈曲間隙を測定した後、膝が伸展している時の伸展間隙、すなわち薄い遠位部130と大腿骨テンプレート人工関節215との間の間隙を測定する。ゲージシム310Aおよび/または手持ち型センサ100を除去し、膝を伸展状態、例えば20度屈曲に配置する。膝を他の角度の屈曲および完全伸展などの伸展に動かすことは可能であるが、20度屈曲が好ましいことがある。これは、完全伸展状態では、伸展状態の膝の後方関節包に隙間がないことがあり、その影響により誤った下方測定が導かれることがあるためである。UKA手技のこの時点では、伸展間隙は屈曲間隙よりもしばしば小さい。屈曲間隙を測定する方法と同様にして伸展間隙を測定する。図4Cに示すように、厚さ315Bの特定のゲージシム310Bが伸展間隙について膝靭帯の「自然張力」を実現するまで、手持ち型力センサ100を伸展間隙に配置しかつ個々のゲージシムを手持ち型力センサ100の平坦な上面110の上を摺動させて伸展間隙中に配置する。伸展間隙の厚さはしばしば、「自然張力」を実現する特定のゲージシム310Bの厚さ315Bである。そのような「自然張力」は、屈曲間隙の内および外に摺動可能であるがそこに挿入の際に傾かない、特定のゲージシム310Bにより示すことができる。手持ち型力センサ100は、この「自然張力」が得られる際に主観的な力測定値および/または圧力測定値を与える。この測定値データを記録し、スクリーン185を通じて表示することができる。理想的には、伸展間隙について実現される「自然張力」により、屈曲間隙について膝靭帯において実現される「自然張力」と同一の力測定値および/または圧力測定値が得られるはずである。先に記載のように、屈曲間隙の厚さと伸展間隙の厚さとの間の差に基づいて大腿骨の端部を横切ってさらに切断または粉砕することにより、屈曲間隙および伸展間隙ならびに膝靭帯張力のバランスを取ることができる。切断される骨の厚さは屈曲間隙と伸展間隙との間の差に等しい。例えば、伸展間隙が2mmであると測定されかつ屈曲間隙が5mmであると測定される場合、遠位大腿骨よりさらに切断または粉砕する骨の厚さを3mmとする。
【0048】
UKA手技のための手持ち型力センサ100の使用に特に言及しているが、手持ち型力センサ100は、膝および他の解剖学的関節について行われるTKAまたは他の同様の手技にも用途を見出し得る。例えば、そのような解剖学的関節としては肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節を挙げることができる。例えば、手持ち型力センサ100は、肘の上腕骨と尺骨との間の力または隣接する椎骨間の力を測定するために使用されるように適応可能である。
【0049】
図5Aは、ハンドル部150上の源503より光504のビームを放射する手持ち型力センサ100の斜視図を示す。光は、レーザーを例えば含む、ヒトの目に見える任意の光であり得る。光ビーム509は、上向き90度の角度506で力感知パッドまたは部材127に向かってかつそれを横切って光ることで、通路508に沿って高さ510を作り出す。光ビームは、力感知パッド127の平面507に垂直に投射される。力センサ100を大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の屈曲間隙中に設置する際に、光は、外科医に対する傾きおよび位置合わせの視覚的指示として役立つ。このことが重要なのは、光センサを間隙中に挿入する時点ごとに、光により投射される線が正確かつ繰り返し可能な回転位置を確立するためである。人工膝関節形成術中に大腿骨コンポーネント505の顆部中心の位置合わせと光通路508とを比較することで位置を確立する。それは、大腿骨コンポーネント502(すなわち移植片)の大腿骨コンポーネント505の顆部中心との回転位置合わせを確実にする。図5Bは、レーザービームが大腿骨コンポーネント502の面を光らせる、屈曲間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。
【0050】
図5Cは、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を示す。図5Dは、レーザービームが起動した、伸展間隙中に配置される手持ち型力センサの斜視図を含む、図5Cの回転図を示す。光504のビームを大腿骨Fに沿って方向づける際に、臀部中心位置601の眺めが可視化される。伸展の際、光504のビームを臀部に向かって方向づけることで、大腿骨頭部602上またはその周りの臀部中心位置601の位置に関して外科医に視覚的合図を与えることができる。このことが重要なのは、例えば人工膝関節形成術中に脚の機械的または解剖学的な軸の位置を決定するために役立つためである。
【0051】
図5Eは、凹形力感知パッド501と顆部面502との間に位置する界面511の側面図である。凹形の形状は、橈骨/関節側壁を上昇する接触区域の結果としての力感知パッド501の端部荷重を回避する。力感知パッド501上の同一位置に顆部面が繰り返し嵌合されるため、凹形の形状はまた、異なる前方/後方挿入位置を防止する。あるいは、感知素子は例えば平坦な、球状の、凸形のまたは曲線状の表面を有し得る。
【0052】
上記は本発明の好ましい態様の完全な説明であるが、各種の代替、変形および等価物を使用することができる。したがって、上記の説明を、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いハウジングとセンサ素子とを含む力センサを含む、解剖学的関節の空間内の力を測定するためのシステムであって、該細長いハウジングが薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含み、該薄い力感知遠位部が該センサ素子を含む、システム。
【請求項2】
解剖学的関節が膝であり、該解剖学的関節の空間内の力が該膝に隣接する靭帯により引き起こされる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
解剖学的関節が肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
細長いハウジングが、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
センサ素子が力感知部材を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
力感知部材が圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択される、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
細長いハウジングの薄い遠位部が幅広い遠位領域と薄い近位領域とを含み、センサ素子の力感知部材が該細長いハウジングの該幅広い遠位領域内に設置される、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
センサ素子が、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含む、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと;
該プロセッサと結合しておりかつ該使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイと
をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
視覚ディスプレイが近位ハンドル部に取り付けられている、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
表示ディスプレイが複数の異なる着色光を含み、光が、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射され、さらに各照射光が、センサに印加される力の増加に対応している、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
視覚ディスプレイが複数の異なる着色光を含み、各光が、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される、請求項9記載のシステム。
【請求項13】
視覚ディスプレイが無線でプロセッサと結合している、請求項9記載のシステム。
【請求項14】
視覚ディスプレイが、赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続およびZigbee(登録商標)接続のうち少なくとも1つを通じて、無線でプロセッサと結合している、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
プロセッサおよび視覚ディスプレイのうち少なくとも1つに結合している有形媒体をさらに含み、該有形媒体が測定された力の値を記録するように構成されている、請求項9記載のシステム。
【請求項16】
凹形でありかつ顆部接触区域を有する少なくとも1つのゲージシムをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
薄い遠位力感知部の長さが、少なくとも1つのゲージシムの顆部接触区域の長さと一致している、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
細長いバーが平坦な第1の側面と該第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
平坦な第1の側面が、少なくとも1つのゲージシムと一致するように適合化されている、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
テーパ状の第2の側面が、細長いバーの遠位端に向かってテーパ状になっている、請求項18記載のシステム。
【請求項21】
ストップ部が薄い遠位部よりも厚い、請求項4記載のシステム。
【請求項22】
ストップ部が、解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定するために薄い部分の遠位端に垂直に取り付けられている、請求項4記載のシステム。
【請求項23】
近位ハンドル部が薄い遠位力感知部よりも厚い、請求項1記載のシステム。
【請求項24】
近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含み、該光源が、約90度屈曲状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に大腿骨コンポーネントの顆部中心の正中線を捕捉するために、遠位大腿骨の前部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項25】
光が、屈曲の際の大腿骨コンポーネントの顆部中心との回転位置合わせを示す、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含み、該光源が、伸展状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に臀部中心の位置を捕捉するために、臀部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項27】
光がレーザーである、請求項24または26記載のシステム。
【請求項28】
細長いハウジングとセンサ素子とを含む、解剖学的関節の空間内の力を測定するための手持ち型装置であって、該細長いハウジングが薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含み、該薄い力感知遠位部が該センサ素子を含む、手持ち型装置。
【請求項29】
細長いハウジングが、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含む、請求項28記載の装置。
【請求項30】
解剖学的関節が膝であり、該解剖学的関節の空間内の力が該膝に隣接する靭帯により引き起こされる、請求項28記載の装置。
【請求項31】
解剖学的関節が肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項28記載の装置。
【請求項32】
センサ素子が力感知部材を含む、請求項28記載の装置。
【請求項33】
力感知部材が、圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択される、請求項32記載の装置。
【請求項34】
細長いハウジングの薄い遠位部が幅広い遠位領域と薄い近位領域とを含み、力感知部材がセンサ素子を含む、請求項32記載の装置。
【請求項35】
センサ素子が、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含む、請求項34記載の装置。
【請求項36】
感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと; 該プロセッサと結合しておりかつ該使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイとをさらに含む、請求項28記載の装置。
【請求項37】
センサ素子およびプロセッサと結合している電源をさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項38】
細長いハウジングが、平坦な第1の側面と該第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する、請求項28記載の装置。
【請求項39】
テーパ状の第2の側面が、細長いハウジングの遠位端に向かってテーパ状になっている、請求項38記載の装置。
【請求項40】
ストップ部が薄い遠位力感知部よりも厚い、請求項28記載の装置。
【請求項41】
近位ハンドル部が薄い遠位部よりも厚い、請求項28記載の装置。
【請求項42】
遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階;および
膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階
を含む、手術中の膝の空間内の力を測定するための方法。
【請求項43】
遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階が、近位脛骨プラトーの上に該力センサの遠位部を配置することを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
力センサを間隙中に配置し、膝が屈曲状態の時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
力センサを間隙中に配置し、膝が部分的に伸展している時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項46】
力センサを間隙中に配置し、膝が完全な伸展状態の時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項47】
近位脛骨または遠位大腿骨のうち一方から切除された骨により増加した間隙内の力を測定するために、移動可能に力センサに結合しているゲージシムと共に、該力センサを間隙中に配置する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項48】
移動可能に結合しているゲージシムの厚さと力センサの厚さとの組み合わせが、膝の靭帯が許容される張力に調節されたことを示す力測定値を与える場合に、該膝の該靭帯における自然張力が実現される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階;および
該使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階
をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項50】
同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを位置合わせするために、該力センサを間隙中に繰り返し可能な様式で多数回配置する段階
をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項51】
間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを当接させることで間隙の同一後面で停止させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階、および解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで該力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
力センサ上のまたは該力センサから投射される光の線またはビームを可視化することにより、解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで該力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項56】
膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階が、
該力センサの薄い力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること;
該センサ素子を通過した後で電圧を測定すること;
該センサ素子に伝達された電圧に対する該センサ素子を通過した電圧の割合を決定すること;および
測定される力を該割合より導出すること
を含む、請求項42記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、手術中の解剖学的関節の空間内の力を測定するための方法であって、該解剖学的関節が、第1の端部を有する第1の骨および該第1の端部に対向する第2の端部を有する第2の骨を含む、方法:
該第1の骨の該第1の端部に人工関節を係合させる段階;
該人工関節と該第2の骨の該第2の端部との間の間隙中に力センサを配置する段階;
該第1の骨の該第1の端部と該第2の骨の該第2の端部との間で互いに対して及ぼされる力を該力センサの力感知部によって測定する段階;および
該間隙から該力センサを取り外す段階。
【請求項58】
間隙中に力センサを配置する段階が、第2の骨の第2の端部の上に該力センサの遠位部を配置することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
間隙中にゲージシムを配置する段階
をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
測定された力に基づくデータを処理して、ユーザーに提供するための使用可能データとする段階;および
該使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階
をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
力を測定する段階が、
力センサの力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること;
該センサ素子を通過した後で電圧を測定すること;
該センサ素子に伝達された電圧に対する該センサ素子を通過した電圧の割合を決定すること;および
測定される力を該割合より導出すること
を含む、請求項57記載の方法。
【請求項63】
解剖学的関節が膝関節、肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項1】
細長いハウジングとセンサ素子とを含む力センサを含む、解剖学的関節の空間内の力を測定するためのシステムであって、該細長いハウジングが薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含み、該薄い力感知遠位部が該センサ素子を含む、システム。
【請求項2】
解剖学的関節が膝であり、該解剖学的関節の空間内の力が該膝に隣接する靭帯により引き起こされる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
解剖学的関節が肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
細長いハウジングが、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
センサ素子が力感知部材を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
力感知部材が圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択される、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
細長いハウジングの薄い遠位部が幅広い遠位領域と薄い近位領域とを含み、センサ素子の力感知部材が該細長いハウジングの該幅広い遠位領域内に設置される、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
センサ素子が、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含む、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと;
該プロセッサと結合しておりかつ該使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイと
をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
視覚ディスプレイが近位ハンドル部に取り付けられている、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
表示ディスプレイが複数の異なる着色光を含み、光が、センサ素子に印加される力の個別の漸進的変化に応答して照射され、さらに各照射光が、センサに印加される力の増加に対応している、請求項9記載のシステム。
【請求項12】
視覚ディスプレイが複数の異なる着色光を含み、各光が、センサ素子により検出される異なる所定の力に応答して別々に照射される、請求項9記載のシステム。
【請求項13】
視覚ディスプレイが無線でプロセッサと結合している、請求項9記載のシステム。
【請求項14】
視覚ディスプレイが、赤外線接続、高周波接続、BlueTooth(登録商標)接続、Z-Wave接続およびZigbee(登録商標)接続のうち少なくとも1つを通じて、無線でプロセッサと結合している、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
プロセッサおよび視覚ディスプレイのうち少なくとも1つに結合している有形媒体をさらに含み、該有形媒体が測定された力の値を記録するように構成されている、請求項9記載のシステム。
【請求項16】
凹形でありかつ顆部接触区域を有する少なくとも1つのゲージシムをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
薄い遠位力感知部の長さが、少なくとも1つのゲージシムの顆部接触区域の長さと一致している、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
細長いバーが平坦な第1の側面と該第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
平坦な第1の側面が、少なくとも1つのゲージシムと一致するように適合化されている、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
テーパ状の第2の側面が、細長いバーの遠位端に向かってテーパ状になっている、請求項18記載のシステム。
【請求項21】
ストップ部が薄い遠位部よりも厚い、請求項4記載のシステム。
【請求項22】
ストップ部が、解剖学的関節中への手持ち型力センサの挿入距離を限定するために薄い部分の遠位端に垂直に取り付けられている、請求項4記載のシステム。
【請求項23】
近位ハンドル部が薄い遠位力感知部よりも厚い、請求項1記載のシステム。
【請求項24】
近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含み、該光源が、約90度屈曲状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に大腿骨コンポーネントの顆部中心の正中線を捕捉するために、遠位大腿骨の前部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項25】
光が、屈曲の際の大腿骨コンポーネントの顆部中心との回転位置合わせを示す、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
近位ハンドル部に取り付けられている光源をさらに含み、該光源が、伸展状態の膝において大腿骨部材と脛骨プラトーとの間の間隙中に力センサを設置する際に臀部中心の位置を捕捉するために、臀部に向かって力感知パッドを横切って可視光の線を放射するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項27】
光がレーザーである、請求項24または26記載のシステム。
【請求項28】
細長いハウジングとセンサ素子とを含む、解剖学的関節の空間内の力を測定するための手持ち型装置であって、該細長いハウジングが薄い力感知遠位部と近位ハンドル部とを含み、該薄い力感知遠位部が該センサ素子を含む、手持ち型装置。
【請求項29】
細長いハウジングが、薄い遠位部の近位にありかつ近位ハンドル部の遠位にあるストップ部をさらに含む、請求項28記載の装置。
【請求項30】
解剖学的関節が膝であり、該解剖学的関節の空間内の力が該膝に隣接する靭帯により引き起こされる、請求項28記載の装置。
【請求項31】
解剖学的関節が肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項28記載の装置。
【請求項32】
センサ素子が力感知部材を含む、請求項28記載の装置。
【請求項33】
力感知部材が、圧電センサ、力感知抵抗器、力感知コンデンサ、ひずみゲージ、ロードセル、圧力センサおよび他の力センサからなる群より選択される、請求項32記載の装置。
【請求項34】
細長いハウジングの薄い遠位部が幅広い遠位領域と薄い近位領域とを含み、力感知部材がセンサ素子を含む、請求項32記載の装置。
【請求項35】
センサ素子が、力感知部材の近位に延在する遠位配線部をさらに含む、請求項34記載の装置。
【請求項36】
感知された力のデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとするために、センサ素子と結合しているプロセッサと; 該プロセッサと結合しておりかつ該使用可能データを表示するように適合化されている、視覚ディスプレイとをさらに含む、請求項28記載の装置。
【請求項37】
センサ素子およびプロセッサと結合している電源をさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項38】
細長いハウジングが、平坦な第1の側面と該第1の側面に対向するテーパ状の第2の側面とを有する、請求項28記載の装置。
【請求項39】
テーパ状の第2の側面が、細長いハウジングの遠位端に向かってテーパ状になっている、請求項38記載の装置。
【請求項40】
ストップ部が薄い遠位力感知部よりも厚い、請求項28記載の装置。
【請求項41】
近位ハンドル部が薄い遠位部よりも厚い、請求項28記載の装置。
【請求項42】
遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階;および
膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階
を含む、手術中の膝の空間内の力を測定するための方法。
【請求項43】
遠位大腿骨と近位脛骨との間の間隙中に力センサを配置する段階が、近位脛骨プラトーの上に該力センサの遠位部を配置することを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
力センサを間隙中に配置し、膝が屈曲状態の時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
力センサを間隙中に配置し、膝が部分的に伸展している時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項46】
力センサを間隙中に配置し、膝が完全な伸展状態の時に力を測定する、請求項43記載の方法。
【請求項47】
近位脛骨または遠位大腿骨のうち一方から切除された骨により増加した間隙内の力を測定するために、移動可能に力センサに結合しているゲージシムと共に、該力センサを間隙中に配置する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項48】
移動可能に結合しているゲージシムの厚さと力センサの厚さとの組み合わせが、膝の靭帯が許容される張力に調節されたことを示す力測定値を与える場合に、該膝の該靭帯における自然張力が実現される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
測定された力に基づくデータを処理してユーザーに提供するための使用可能データとする段階;および
該使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階
をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項50】
同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを位置合わせするために、該力センサを間隙中に繰り返し可能な様式で多数回配置する段階
をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項51】
間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
同定された解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して力センサを当接させることで間隙の同一後面で停止させる段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
間隙の前面より入って該間隙の後面の同一位置で停止する力センサを該間隙中に多数回配置する段階、および解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで該力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項54】
力センサ上のまたは該力センサから投射される光の線またはビームを可視化することにより、解剖学的もしくは外科的な標識または装置のうち1つに対して同一の向きで該力センサを回転可能に位置合わせする段階をさらに含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項56】
膝の靭帯が力センサの力感知部に及ぼす力を測定する段階が、
該力センサの薄い力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること;
該センサ素子を通過した後で電圧を測定すること;
該センサ素子に伝達された電圧に対する該センサ素子を通過した電圧の割合を決定すること;および
測定される力を該割合より導出すること
を含む、請求項42記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、手術中の解剖学的関節の空間内の力を測定するための方法であって、該解剖学的関節が、第1の端部を有する第1の骨および該第1の端部に対向する第2の端部を有する第2の骨を含む、方法:
該第1の骨の該第1の端部に人工関節を係合させる段階;
該人工関節と該第2の骨の該第2の端部との間の間隙中に力センサを配置する段階;
該第1の骨の該第1の端部と該第2の骨の該第2の端部との間で互いに対して及ぼされる力を該力センサの力感知部によって測定する段階;および
該間隙から該力センサを取り外す段階。
【請求項58】
間隙中に力センサを配置する段階が、第2の骨の第2の端部の上に該力センサの遠位部を配置することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
間隙中にゲージシムを配置する段階
をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
測定された力に基づくデータを処理して、ユーザーに提供するための使用可能データとする段階;および
該使用可能データを視覚ディスプレイ上に表示する段階
をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
視覚ディスプレイに結合した有形媒体に使用可能データを記録する段階をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
力を測定する段階が、
力センサの力感知部のセンサ素子に電圧を伝達すること;
該センサ素子を通過した後で電圧を測定すること;
該センサ素子に伝達された電圧に対する該センサ素子を通過した電圧の割合を決定すること;および
測定される力を該割合より導出すること
を含む、請求項57記載の方法。
【請求項63】
解剖学的関節が膝関節、肘関節、椎間関節、股関節、足首関節および肩関節からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【公表番号】特表2012−500667(P2012−500667A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524007(P2011−524007)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054518
【国際公開番号】WO2010/022272
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(506268876)シンバシブ テクノロジー インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/054518
【国際公開番号】WO2010/022272
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(506268876)シンバシブ テクノロジー インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】
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