説明

人工補装器具用の現場酸化テクスチャ加工表面およびその製造方法

【課題】基板材料のテクスチャ加工表面と酸化層コーティング、およびこのようなテクスチャ加工表面と酸化層コーティングの人工補装器具を提供する。
【解決手段】金属材料上のテクスチャ加工表面および酸化層コーティングが、表面のテクスチャを改質する、表面の化学的および/または電気化学的エッチング、ならびに現場酸化方法により達成される。該表面は、酸化層により賦与された耐食性および耐摩耗性、ならびに表面テクスチャにより賦与された骨へのインプラントの移植を向上する能力のために、人工補装器具、特に医療用インプラントの製作に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2001年12月6日付けでファイルされた米国仮特許出願第60/338,420号の特典と優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、整形外科のインプラントの分野に関する。具体的には、本発明は、拡散硬化酸化層の薄くて高密度で耐摩耗性の高いコーティングでコートされたテクスチャ改質表面を有する整形外科のインプラントを目的とする。好ましくは、テクスチャ改質は、化学的または電気化学的エッチングによって行われ、そして金属製インプラントはジルコニウムを含み、表面層は酸化ジルコニウムを含む。表面コーティングは骨の内方増殖を促進する性能が増大されている。また、本発明は、テクスチャ改質表面を有する金属製の整形外科のインプラントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
整形外科のインプラント材料は、高い強度、耐食性および組織適合性を兼ね備えていなければならない。特にインプラントの受容者が比較的若い場合には、患者の全生涯にわたってインプラントが機能することが望ましいので、インプラントの寿命が最も重要である。特定の金属合金は、必要な機械的強度と生体適合性を有するので、人工補装器具の作製に理想的な候補である。これらの合金としては、316Lステンレス鋼、クロム-コバルト-モリブデン合金、そして最近では荷重支持人工補装器具の作製に最も適切な材料であることが証明されている、チタン合金が挙げられる。
【0004】
金属製人工補装器具が身体内で完全に不活性ではないことも見出されている。体液は、金属に作用し、それらがイオン化プロセスによりゆっくり腐食され、それにより金属イオンが身体中に放出される。表面に形成された不動態の酸化物皮膜は常に除去されるので、人工補装器具からの金属イオンの放出は、荷重支持表面の摩耗率にも関連する。再不動態化のプロセスは、イオン化プロセス中、絶えず金属イオンを放出する。さらに第三者の摩耗(セメントまたは骨の破片)があると、このプロセスが促進されて、微細擦過金属粒子が摩擦を増大する。
【0005】
ジルコニウムの優れた耐食性は、長年にわたって知られている。ジルコニウムは多くの水性および非水性媒体の中で優れた耐食性を示し、この理由から化学プロセス産業および医療用途での使用が増大している。ジルコニウムをこれらの領域で広く用いることへの制約は、耐摩耗性が比較的低く、摩滅する傾向があることである。この比較的低い耐摩耗性および摩滅する傾向は、ジルコニウム合金についても示されている。
【0006】
Watsonの米国特許第2,987,352号は、特定の形態の酸化ジルコニウムを表面層として有するジルコニウム製軸受けの製造方法を最初に開示した。Watsonの方法は、Haygarth(米国特許第4,671,824号)が改良して、酸化された物質の耐摩耗性が改善され、より良好な寸法制御となった。Davidsonの米国特許(5,037,438号、5,152,794号、5,180,394号、5,370,694号、5,372,660号、5,496,359号および5,549,667号)は、人工補装器具において、ジルコニウムまたはジルコニウム合金の基板の上に特定の形態の酸化ジルコニウムを使用することによって実現できる多くの利点を示した。これらには、増大された強度、低い摩擦および高い耐摩耗性を含む。
【0007】
Davidsonの米国特許第5,037,438号は、酸化ジルコニウムの表面を有するジルコニウム合金製人工補装器具の製造方法を最初に開示した。WatsonとDavidsonの研究は、金属表面の強さを維持しながらセラミック材料のすべての利点をもつ特定の形態の酸化ジルコニウムを教示している。酸化は、金属表面への遊離酸素の拡散を特徴とする;得られる酸化物層は、金属表面への遊離酸素の拡散を特徴とする。得られる「拡散硬化」材料は、セラミックと金属の有利な特性の独特の組み合わせを有し、同時にこれら材料の欠点を最小限度にする。Davidson、WatsonおよびHaygarthの上記の米国特許はすべて、あたかも本明細書中に全体が記載されるように本明細書に援用される。
【0008】
Davidsonの初期の研究は、純ジルコニウム、およびジルコニウムが主な金属であるジルコニウム合金に集中したが、後期の研究は、このことが所望の拡散硬化酸化物を作るために必須ではないことを示している。例えば74重量%のチタン、13重量%のニオブおよび13重量%のジルコニウムの合金(「Ti-13-13」)は、本発明で使用される拡散硬化酸化層を形成する。Ti-13-13はDavidsonらの米国特許第5,169,567号に教示されている。
【0009】
医療用インプラントの別の重要な性能の判定基準は、固定安定度である。これは、周囲の組織のインプラント内への内方増殖、および骨セメントなどの他の成分に大きなせん断強度でしっかりと固定されるようになるインプラントの性能によって一般に達成される。典型的な股関節の人工補装器具は、大腿骨に固定される幹状部、大腿骨頭、および大腿骨頭が関節をなす寛骨臼杯を含む。典型的な膝関節の人工補装器具は大腿骨と脛骨の要素を持っており、これら両者はそれぞれの骨に固定されている。これは、インプラントが所定の場所に固定される安定性である。この固定は、骨もしくは他の組織に行うことができるか、または少なくとも部分的に骨セメントなどの材料で構成されることができる。Davidsonの人工補装器具の固定安定性は、骨の内方増殖を促進し、かつ他の材料へ接着するための表面積を増大する多孔質の金属製ビーズまたはワイヤメッシュコーティングを使用することにおいて実現された。これらの技術は、Davidsonの米国特許第5,037,438号などの特許に教示されており、酸化ジルコニウムの利点と組み合わせると、多くの分野の医療用インプラントの性能が改良されることを示した。しかしながら、このようなインプラントの固定安定性は、引続き改良することが望ましい。
【0010】
人工補装器具インプラントの分野の本来の目標は、外科手術による修正もしくは取替えの必要を避けるか、または最小限にするようにインプラントの有効寿命を延長することである。インプラントの不具合を遅らせるか、または完全に防止することが望ましい。インプラントの不具合の原因は多数にのぼる。該不具合は、骨セメントに対する身体の拒絶反応が原因であると考えられる。また、骨セメントに対する拒絶反応は重要な問題ではなく、むしろ骨セメントはその物理的特性のために、関節インプラントの部分として使用するのに適切な構造要素ではないとも考えられている。
【0011】
具体的には、天然の骨は、弾性率が約4×106 p.s.i.までである。インプラントに使う金属は、一般に弾性率が15〜35×106 p.s.i.の程度である。一方ポリメチルメタクリレート(PMMA)セメントは、弾性率が0.3〜0.5×106 p.s.i.程度である。したがって、PMMAセメントの剛性は、金属製人工補装器具または周囲の骨より小さい。セメントは、機械的特性の強度と疲労強度が金属または骨より小さい。このような物理的特性の差が、骨セメントを使って移植された股関節と膝関節の人工補装器具の不具合の原因であると考えられる。
【0012】
人工補装器具は、セメント無しでも移植することができる。これらの器具は、骨または組織の人工補装器具内への内方増殖によるか、または人工補装器具の骨の中への楔止めによって固定される。これらの器具は、線維組織または骨の内方増殖を促進する表面特性をも含み得る。その表面特性は、沈着法またはスプレー法で付与することができる。
【0013】
表面の粗さは、一般に、二つの表面の固定のための優れた接着をもたらす表面積の増大となると広く理解されている。平滑な表面は、インプラント内の応力を最小限度にするが、全表面積も最小限度にする。この表面積の減少は、インプラントの骨や組織に対する結合力をかなり低下させ、これはインプラントと組織の機械的相互作用に大きく依存する。この機械的相互作用には二つの形態がある。一つは、組織がインプラントの部分の背後または周囲で増殖する範囲への結合の形態である。他方は摩擦的であり、この場合に、組織はインプラント表面に密接して増殖し、比較的強固な摩擦嵌合になる。
【0014】
Wagnerらは、電気化学的エッチング法を使用して、骨組織の内方増殖を促進するランダムで不規則なパターンを有する結合表面をつくり、かつその表面を第二の材料に結合しやすくする米国特許第5,922,029号の方法(および米国特許第6,193,762号の得られる物品)を示した。Wagnerらは、用いられるエッチング法が純粋に化学的である類似の方法(米国特許第5,258,098号)と、医療用のインプラント製品(米国特許第5,507,815号)を教示している。Wagnerらの技術は、表面テクスチャを改質する方法の一つの可能性のある源を示しているが、いずれの他の表面テクスチャ改質法も固定を助けるのに同様に有効であると思われる。例えばFray(米国特許第4,272,855号)、Van Kampen(米国特許第4,673,409号)、Sump(米国特許第4,644,942号)およびNoiles(米国特許第4,865,603号)の教示はとりわけ、Davidsonの現場(in situ)拡散硬化表面酸化と組み合わせて、表面酸化の優れた特性、および顕微鏡的なテクスチャ改質から生じる安定性と内方増殖が高まる利点を有する人工補装器具表面を製造することができる。
【0015】
酸化されたジルコニウムを使用することによって実現した進歩を保持または改良しながら、固定が改良された医療用インプラントを製造する方法が要求されている。この改良された安定性は、インプラントと骨および周囲組織との間の界面に関して、ならびにインプラントと骨セメントなどの他の材料との間の界面において要求される。これは、酸化されたジルコニウムなどの現場で酸化された拡散硬化表面の使用を通して効果を生じる利点を同時に保持しながら達成されるはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発明の要約
本発明は、基板材料のテクスチャ加工表面と酸化層コーティング、およびこのようなテクスチャ加工表面と酸化層コーティングの人工補装器具を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一つの観点においては、金属基板の表面の少なくとも一部のテクスチャを改質し、そして金属基板の表面の少なくとも一部を酸化して、該金属基板に拡散硬化表面を形成する工程を含む、金属基板に改質表面を製造する方法がある。
【0018】
以下は、使用される場合に単独でまたは他の実施態様と組み合わせて使用できる本発明の方法の特定の実施態様である。
【0019】
本方法の他の実施態様では、改質する工程は、化学的エッチングまたは電気化学的エッチングを特徴とする。該エッチングは、酸を用いるエッチングを特徴とすることができる。該エッチングは、マスキング剤を金属基板の表面に塗布するさらなる工程を特徴とすることができる。マスキング剤は、ランダムに塗布され得る。マスキング剤は、該金属基板の該表面にスプレーするか、またはスパッターすることによって塗布することができる。このようなスプレーすることまたはスパッタリングは、マスキング剤をランダムに塗布することを特徴とすることができる。マスキング剤は、金属基板の表面をマスキング剤で完全に被覆し、その後、マスキング剤の部分を部分的に除くことによって表面に塗布することができる。マスキング剤を部分的に除く工程は、マスキング剤の部分のレーザーアブレーションを行う工程を特徴とすることができる。
【0020】
他の方法の実施態様では、マスキング剤を部分的に除く工程は、マスキング剤の部分を機械的に除く工程を特徴とすることができる。表面は、機械的エッチング法で改質することができる。表面は、表面上に物質を沈着させることによって改質することができる。該沈着は、化学蒸着を特徴とすることができる。
【0021】
他の方法の実施態様において、金属基板の少なくとも一部を酸化する工程は、空気、水蒸気または水による酸化プロセスを特徴とすることができる。金属基板の表面の少なくとも一部を酸化する工程は、酸化剤として酸素を使うことを特徴とすることができる。あるいは、酸化法は、塩浴の使用を含む。
【0022】
別の実施態様において、金属の表面はジルコニウムまたはジルコニウム合金である。該方法の具体的実施態様においては、ジルコニウム合金は、約4.5重量%までのハフニウム
および約3.0重量%までのニオブからなるジルコニウム;約4.5重量%までのハフニウムを含有するジルコニウム;2.5〜2.8重量%のニオブを含有するジルコニウム;ならびに約13重量%のニオブおよび約13重量%のジルコニウムを含有するチタンからなる群から選択される。
【0023】
金属の表面は、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびチタンからなる群から選択される金属を含み得る。
【0024】
本発明の別の実施態様において、第一人工補装器具部分と第二人工補装器具部分を含む移植用人工補装器具があり、第一人工補装器具部分は支持表面を有し、該支持表面は第二人工補装器具部分上の第二支持表面と係合または協働するサイズと形状であり;そして第一人工補装器具部分もしくは第二人工補装器具部分または両者の表面の少なくとも一部が、上記の方法のいずれかの方法によってテクスチャが改質され、そして第一人工補装器具部分もしくは第二人工補装器具部分または両者の少なくとも一部が、拡散硬化酸化層を含む。
【0025】
次に、使用される場合に単独でまたは他の実施態様と組み合わせて使用できる、本発明の人工補装器具の具体的実施態様について述べる。
【0026】
該人工補装器具の他の実施態様では、第一人工補装器具部分は、少なくとも一つの顆頭(condyle)を含む支持表面をもつことをさらなる特徴とする大腿骨要素であり、そして第二人工補装器具部分は脛骨底(tibial base)をさらなる特徴とする脛骨要素であり、該脛骨要素は、支持表面と協働するようにされている。脛骨要素は、有機ポリマーまたはポリマーベースの複合体を含み得る。金属製の人工補装器具本体は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含むことができ、拡散硬化酸化層は濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングであり得る。拡散硬化酸化層は、厚さが約20ミクロンまでであり得る。別の実施態様では、拡散硬化酸化層は、厚さが約10ミクロンまでであり得る。
【0027】
人工補装器具の別の実施態様では、第一人工補装器具部分は、ヘッド部分およびヘッド部分の上の支持表面を有する大腿骨要素をさらなる特徴とし、そして第二人工補装器具部分は、ヘッド部分上の支持表面と協働するように適合された内表面を有する寛骨臼杯をさらなる特徴とする。該内表面は、有機ポリマーまたはポリマーベースの複合体を含み得る。金属製の人工補装器具本体は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含むことができ、拡散硬化酸化層は、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングであり得る。該拡散硬化酸化層は、厚さが約20ミクロンまでであり得る。別の実施態様では、拡散硬化酸化層は、厚さが約10ミクロンまでであり得る。
具体的な実施態様では、人工補装器具は脊椎の人工補装器具である。好ましくは、脊椎の人工補装器具は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層は、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムの層である。
別の具体的な実施態様においては、脊椎の人工補装器具は、脊椎板(spinal disc)の人工補装器具である。好ましくは、脊椎板の人工補装器具は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層は、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムの層である。
【0028】
本発明の別の実施態様においては、患者の身体組織内に挿入される医療用インプラントがあり、該インプラントは要素を含み、該要素の表面の少なくとも一部は、上記の方法のいずれかでテクスチャが改質され、そしてさらに該要素の表面の少なくとも一部が拡散硬化酸化層を含む。
【0029】
医療用インプラントの発明には多数の具体的実施態様があり、それは、使用される場合に単独でまたは他の実施態様と組み合わせて使用できる。医療用インプラントとしては、骨板または骨ねじがあり得る。金属製の人工補装器具の本体は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含むことができ、拡散硬化酸化層は、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングであり得る。拡散硬化酸化層は、厚さが約20ミクロンまでであり得る。拡散硬化酸化層は、厚さが約10ミクロンまでであり得る。医療用インプラントは、さらに自己移殖性器具(self-grafting device)を含むことができる。
【0030】
以下に述べる本発明の詳細な説明をより良く理解できるように、上記は本発明の特徴と技術的利点をむしろ広く略述している。本発明の請求項の主題を形成する本発明の追加の特徴と利点を、以下に説明する。開示した概念と具体的実施態様は、本発明の同じ目的を実行するためのその他の構造の改変または設計のためのベースとして、すぐに利用できることは当業者には分かるであろう。このような均等な構造が、本願の請求項に記載の本発明の精神と範囲を逸脱しないことは当業者には分かるであろう。その構成と操作方法の両方に関する本発明の特徴である新規な特徴は、さらなる目的と利点とともに、添付図面を参照して検討すると、以下の説明からより良く理解されるであろう。しかし、各図面は、例示と説明だけを目的として提供するものであり、本発明の限界を定義するものではないことは明確に理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、定位置にある股関節人工補装器具を示す模式図である。
【図2】図2は、典型的な股関節人工補装器具を示す模式図である。
【図3】図3は、定位置にある膝関節人工補装器具の模式図である。
【図4】図4は、典型的な膝関節の部品の模式図である。
【図5】図5は、誤差バーを含む、各種表面のせん断強度のバーグラフである。
【図6】図6は、各種表面について行ったピンプッシュアウト試験の結果を示すグラフである。
【0032】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する「a」または「an」は、1以上を意味する。本明細書の請求項において「a」または「an」は、用語「含む」とともに使用する場合、1または1以上を意味する。本明細書で使用する「別の」は、少なくとも第二またはそれ以上を意味する。
【0033】
本明細書で使用する用語「医療用インプラント」は、体内に移植するいかなる器具も含む。この用語は、人工補装器具より範囲が広く、そしてそれを含み、骨板および骨ねじならびに類縁器具を含む。
本明細書で使用する「金属製の」は、純金属または合金を意味する。
【0034】
本明細書で使用する、表面に関連する用語「テクスチャを改質した」は、骨の内方増殖と外方増殖を改良して固定の安定性を改善する当該技術分野で知られている技法で処置された天然の表面と定義する。これは、金属製のビーズまたはワイヤメッシュのコーティングを天然の表面に組み込むことのような、単に天然の表面と同じかまたは異なる組成の異種物質を添加することによって天然の表面を改質する方法を含まない。これらの後者の技術は、テクスチャを改質された天然の表面とは対照的に、天然の表面を単に覆って、骨が内方増殖と外方増殖を行う新しい表面をつくる。
【0035】
本明細書で使用する「ジルコニウム合金」は、ゼロより多いいずれかの量のジルコニウムを含有する金属合金と定義する。したがってジルコニウムが少ない構成成分である合金は、本明細書では「ジルコニウム合金」とみなす。同様に他の指名金属の「金属合金」(例えばハフニウム合金またはニオブ合金;これらの場合、その指名金属はそれぞれハフニウムとニオブである)は、ゼロより多いいずれかの量の指名金属を含有する合金と定義する。
【0036】
以下の論議には、本発明を実施する好ましい実施態様の例示と考察が含まれる。しかしながら、それらは本発明を限定する実施例ではない。本発明を実施する他の実施例と方法も考えられる。
【0037】
本発明は、移植可能な人工補装器具のための改良された結合表面を提供することに関する。規則的なパターンの、または不規則な表面からなるテクスチャを改質された表面が、一般に厚さが20ミクロン以下の拡散硬化酸化層となる現場酸化プロセスを使用して、表面が酸化されているかまたは酸化された人工補装器具の全表面の少なくとも一部に形成される。本発明は、テクスチャ加工表面および現場拡散硬化酸化表面が少なくとも部分的に同じ表面領域を占める人工補装器具、ならびにテクスチャ加工表面および現場拡散硬化酸化表面が人工補装器具の異なる別の表面を占める人工補装器具を含む。唯一の必要条件は、人工補装器具がどこかにテクスチャ加工表面と現場拡散硬化酸化表面との両方を有することである。
【0038】
本発明者らは、現場で形成された拡散硬化酸化層が、表面テクスチャ改質技術の性能を相乗作用的に改善することを見出した。
【0039】
表面テクスチャの改質
典型的な股関節人工補装器具を、図1および2に示す。図1に示すように、股関節幹状部2が大腿骨に嵌合し、人工補装器具の大腿骨頭6が、骨盤に取り付けられている寛骨臼杯10の内張り8に嵌合して関節をなす。多孔質金属製のビーズまたはワイヤメッシュのコーティング12を組み入れて、該多孔質コーティング内への周囲組織の内方増殖によって、インプラントの固定を促進することができる。同様に、このような多孔質金属のビーズまたはワイヤメッシュのコーティングは、寛骨臼の要素にも用い得る。重要なことに、領域12は、多孔質金属のビーズまたはワイヤメッシュのコーティングと同じ目的を達成するのに、テクスチャを改質された領域からなる。
【0040】
典型的な膝関節人工補装器具を図3および4に示す。膝関節は、大腿骨要素20と脛骨要素30を含む。大腿骨要素は、大腿骨要素の関節をなす面を提供する顆頭22、および大腿骨要素を大腿骨に固定するためのペグ24を含む。脛骨要素30は、脛骨底を脛骨に取り付けるためのペグ34を有する脛骨底32を含む。脛骨プラットホーム36が脛骨底32の頂上に取り付けられ、顆頭22の形状と類似している溝38が設けられている。図3に示す膝人工補装器具の他の部分とともに、脛骨底、ペグおよびプラットホームは、テクスチャ改質および拡散硬化酸化の理想的な候補である。
【0041】
先に明記した股関節人工補装器具と膝関節人工補装器具は、本発明で使用し得る人工補装器具のための、例示的であるが網羅的でない実施例として提供しているだけである。本発明は、限定されないが脊椎、肩、肘および指の人工補装器具を含む他の人工補装器具とともに、他の股関節と膝関節の人工補装器具に広げることができることは、当業者には分かることである。脊椎の用途の例としては、他のものとともに、椎体の代替物および脊椎板人工補装器具のような脊椎人工補装器具がある。本発明は、限定されないが、骨板および骨ねじを一般に含む医療用インプラントにも適用できる。
【0042】
表面テクスチャを改質する最も一般的な方法は、マスキング剤と化学的エッチング剤の使用を含む。このような技術において、マスキング剤は、マスキング剤で保護されていない領域だけをエッチングする化学的エッチング剤の塗布から表面の種々の部分を保護するのに使用される。本発明が化学的エッチングを利用する場合、表面は、マスキング剤のランダム塗布、およびその後のマスキング剤で保護されていない領域の金属基板のエッチングを用いるエッチング法によって作製される。このエッチング法は、いずれの特定の用途に要求される不規則性の量と性質によって必要とされる回数を繰り返すことができるか、または一回実施することができる。エッチング剤の濃度、および温度や時間のプロセス条件の制御は、該方法により製造される、得られる表面のオペレーター調節を可能にする。既定の結合表面に利用される繰返し回数、ならびに特定のマスキング剤およびエッチング剤は、インプラントに利用されるベース金属によって決まる。ジルコニウムまたはジルコニウム合金製のインプラントは、本発明を実施するのに最良の形態と考えられるが、以下に充分詳細に説明する拡散硬化現場酸化技術で酸化することができる金属基板のいずれも、移植される材料として利用できると解すべきである。ベース金属が変わればマスキング剤とエッチング剤を変える必要があるだろう。他の適切な基板金属の使用は、本発明の範囲に含まれる。
【0043】
化学的エッチングの実施態様では、ランダムな様式でエッチングされる表面にマスキング剤を塗布する。表面へのマスキング剤のランダムなスパッタリングは、とりわけ、マスキング剤をはけを使ってはけぬりするか、またはマスキング剤をふくませたいずれの形態の繊維状アプリケーターを用いることによって、マスキング剤を手作業で塗布して達成できる。別の塗布方法は、エアブラシを使って空気気流中でもたらされる。
【0044】
マスキング剤としては、インプラントの操作中にインプラントの表面にしっかりと粘着し、そしてコートされた部分にエッチング剤溶液を塗布する場合に安定なままである物質を提供するものが選択される。またマスキング剤は、単一もしくは複数のエッチングプロセスが完了した後に、除去可能で残渣無しでなければならない。適切なマスキング剤の例としては、限定されないがアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂のマスキング剤を含む。マスキング剤は、エッチングプロセスが始まると、鮮明に画成された端縁を生成し、エッチングプロセス中にそれ自体劣化しないことが理想的である。
【0045】
インプラントの表面は、マスキング剤を塗布するための調製において、清浄でかつグリース無しでなければならない。金属酸化物の粒子、ガラスビーズまたはその他の適切な材料の軽い研磨噴射を使用する機械的洗浄が好ましい。あるいはグリット噴射も可能である。メタノールのような溶媒を、単独でまたは噴射工程とともに使用できる。マスキング剤は、エッチング剤が浸透しない材料であり、そして担体溶媒に溶解したネオプレンエラストマー類およびα-オレフィンコポリマー類のような材料で、少なくとも一部が構成され
ていることが可能である。使用するエッチング剤の種類にあわせて、特定のマスキング剤を作製するべきである。マスキング剤の粘度は、担体の蒸発によって増大させることができる。より粘稠なマスキング剤は、一般に手作業の塗布またはスプレー塗布法を用いてマスキング剤を塗布する点において、優れた結果が得られる。マスキング剤は、ランダムにスパッターする方式で塗布してインプラントの表面の部分だけをコートするのを許容することに、特に留意すべきである。マスキング剤の各ポイントが、他と比べてサイズや厚さが異なるランダムな「水玉」模様が好ましい。場合によって、塗布されたマスキング剤は、洗浄のために先に述べたグリットブラスト法を用いて、80〜120メッシュのグリットを80〜90 p.s.i.で用いて部分的に摩削して、不規則なマスキング剤コーティングを提供するのを助けることができる。
【0046】
マスキング剤の構成形状は、塗布によって異なることが可能である。マスキング剤は厚い塊として、または薄いスポットとして塗布され得る。ランダムに仕上げられた適切な表面を得るために、種々のサイズと厚さのマスキング剤を達成することが望ましい。このような特定のマスキング剤の表面の各構成形状によって、幾分異なるエッチング結果が生じる。マスキング剤を上昇した温度で乾燥する、任意の工程が有用である。条件は、マスキング剤の性質によって変わるが200゜Fにて4〜5分で通常充分である。
【0047】
多種類のエッチング剤を使用できるが、ある特定の実施態様は、容易に入手できる標準の30%硝酸/6%フッ化水素酸の組み合わせを使用する。エッチング剤を110゜Fで約4分間適用して、所望の0.008〜0.010インチのエッチ深さを得る。この期間またはエッチング剤溶液の濃度を上下に調節して、より重いか、またはより軽いエッチングを達成できる。エッチングは、水浴または水のスプレーで停止される。
【0048】
マスキング剤の物質は、機械的または化学的を含む各種の方法で取り除くことができる。場合によっては、マスキング剤の機械的ブラッシングまたはブラスティングを用いて、マスキング剤を剥離することができる。さらに硝酸を使用して、マスキング剤の物質を溶解することが考えられる。
【0049】
上記の表面処理によって多種類の表面の構成形状(feature)が得られる。一次プラトーは、より厚く塗布されたマスキング剤のプラトーに相当する。重いマスキング剤のコーティングは、インプラントの表面を完全に保護し、その部位においていずれかの金属材料が除去されるのを防止する。二次プラトーは、より薄いマスキング剤層に相当する。二次プラトーの中間の高さは、マスキング剤がエッチングサイクル中のある期間役割を果たしたが、エッチングサイクルが完了する前に結局作用しなくなり、合金がいくらかエッチングで除かれることを許容する領域を示す。得られる表面は、エッチングサイクル中に、下にある基板を部分的に保護する漸減マスキング剤の被覆に相当する、徐々に傾斜した表面の構成形状で構成される。大きく傾斜した構成形状は、エッチング前に高度に明確な境界をもつ、より厚いマスキング剤のコーティングを示す。中間の傾斜の構成形状は、マスキング剤の条件が二つの中間の条件であることを示す。エッチングの端は、全くエッチングされない領域により、そしてマスキング剤コーティング無しに対する、完全なマスキング剤コーティングの効果を示す領域によって示される。1以上の追加のマスキングとエッチングのサイクルを行って、先に形成された表面の上に類似の構成形状を重ね合わせたパターンを得ることができる。表面の複雑さの増加したレベルは、マスキングとエッチングのサイクルを複数回行うことによって得られる。広い多様性の、異なるレベルの凹凸は、骨の内方増殖を許容し、骨をインプラント構造の表面に沿ってしっかりと固定することを許容する。表面の構成形状は不規則な形状であり、骨の内方増殖を促進する。
【0050】
電気化学的エッチング法を使用する場合、所定の表面へのマスキング剤とプロセスのパラメータの選択は、インプラントに用いる基板の金属により決まる。ジルコニウムまたはジルコニウム合金製のインプラントが本発明を実施するのに最良の形態と考えられるが、いずれのベース金属も移植される材料として用い得ることが特に理解されるべきである。基板の金属が変わると、異なるマスキング剤電解質、および電気化学的エッチングプロセスのプロセス条件を使用することが必要になる。その他の適切な基板金属を使用することは、本発明の範囲内である。電気化学的エッチング法のいずれの適切なマスキング剤、およびプロセス条件も本発明の範囲内である。
【0051】
マスキング剤物質を塗布した後、加工物(workpiece)の結合表面の露出部分は、電気化学的エッチングされる準備ができている。結合表面の露出部分は、マスキング剤の沈着で被覆されていない部分である。タンクを使用して加工物とカソードを電解質液中に浸す。加工物は、電気化学系のアノードであり、直流電源の陽端子に接続される。電解質液で、カソードと加工物の結合表面との間の作動間隔(work gap)をみたす。カソードは、カソードの表面領域がエッチングされる加工物の表面領域のどこにでも近接するように、加工物とほぼ同じ寸法であるべきである。電解質液は、カソード中の経路を通じて制御された速度でポンプ輸送され、カソードと、アノードである加工物との間の作動間隔にオリフィスを通じて放出される。その電気化学的ハードウエアは当業者には知られている。典型的な配置は、Wagnerらの米国特許第5,922,029号により充分に記載されており、これは本明細書にあたかも完全に開示されているように完全に援用する。
【0052】
上記電気化学的エッチング法のための電解質液は、NaClとNaNO3を各々1ポンドずつ1ガロンの水に溶解した割合で含有する溶液が好ましい。金属の電気化学的エッチングの当業者は、特定の加工物の金属の種類に対して、使用される適切な電解質液を認識して採用する。電解質液は、電気化学的プロセスの熱と反応生成物の両者を充分に除かねばならないので、作動間隔を通過する電解質液の流量の制御が重要である。流量の最適なレベルは、利用される電流の量に関連する。電流に対する流量の比率が高いほど、熱と反応生成物がよりよく除去される。例えばコバルト-クロム合金の電気化学的エッチングについて、電解質液は、作動間隔104を通って約0.15〜0.5ガロン/分/100 ampの割合で流し、温度は約100〜130゜Fの間でなければならない。金属に電気化学的エッチングを行う当業者は、特定の用途に用いるこれらのパラメータの適切な値を決定することができる。
【0053】
カソードは、銅、ニッケルまたはタングステン-銅合金のような、電気化学的エッチングに使用するのに適切な材料から製造することができる。カソードは、カソードと加工物の結合表面との間の作動間隔が実質的に一定であるように配置構成されるべきである。このことは、結合表面に実質的に共形的にカソードを製造することによって達成される。好ましくは、作動間隔は約0.020〜0.250インチの間であり、より具体的には約0.060〜0.120インチの間である。金属の電気化学的エッチングの当業者は、適切な作動間隔を決定して特定の用途に用いることができる。加工物に電気化学的エッチングを行う間、カソードと結合表面の間の直流電圧差を約8V〜24V、結合表面の露出部分の比アンペア数を少なくとも約50 amp/in2に維持しなければならない。好ましくは、カソードと結合表面の間の直流電圧差は約12V〜18Vの間であり、結合表面の露出部分の比アンペア数は約75〜120 amp/in2である。他の材料との使用のためのこれらパラメータの値は、金属の電気化学的エッチングの当業者により、容易に決定される。加工物の材料がコバルト-クロム合金の場合、上記条件では金属除去速度が約0.003インチ/分になる。
【0054】
エッチングは、約0.002〜0.007インチという所望のエッチ深さが達成されるまで行うのが好ましい。電気化学的エッチングプロセスの期間や他のパラメータ、特に比アンペア数を上下に調節して、より重いかまたはより軽いエッチングを達成することができる。電気化学的エッチングプロセスは、カソードと加工物の間の電圧差を取り去ることによって停止される。
【0055】
有用な結合表面は、より少ない、およびより多いサイクルを通して得られるが、マスキング/電気化学的エッチング法は3回繰り返すことが好ましい。各サイクル中に除かれる材料の量は、特定の用途により決定される。材料の除去の深さにより測定されるように、実質的に同じ量の材料を各サイクルで除くのが好ましい。複数のマスキング/電気化学的エッチングのサイクルを用いる場合、マスキング剤物質の付着を促進するように、マスキング剤を塗布する前に結合表面を80〜120メッシュのアルミナグリットでブラストするのが好ましい。
【0056】
化学的および/または電気化学的エッチングの一般的方法の他の変形は可能であり、本発明の範囲に含まれる。例えば上記の説明には、テクスチャを改質する表面にマスキング剤をランダムに塗布して、ランダムで不規則な表面を得ることが含まれている。あるいはマスキング剤は、シグネチャー(signature)表面が得られる制御された方法で塗布することができる。このような系統的なシグネチャー表面は、規則的パターン、または場合によっては不規則なパターンを含む。これは、マスキング剤を制御された方法で塗布することで達成できる。あるいは結合表面を完全に被覆するような様式でマスキング剤を塗布し、続いてマスキング剤の選択した部分の系統的かつ制御された除去により、種々の被覆の領域を有する表面を達成できる。このような制御された除去は、光除去、例えば沈着マスキング剤のレーザーアブレーションのような方法で行うことができる。あるいは化学的、電気化学的または機械的な除去も利用できる。さらに、正確に制御された沈着を使用すると、エッチングに先立ってマスキングを部分的に除く必要なしに、最終的なマスキングを直接行うことができる。その他の沈着法のうち、例えば化学蒸着法を利用できる。本明細書の開示を読めば当業者にはすぐに分かる多くの変形が可能である。これらの変形はすべて本発明の範囲内に含まれる。
【0057】
また、本発明の表面改質法を利用して、自己移植性であり、移植の際に骨などの組織の表面をせん断し、骨または組織の物質をインプラント内に詰めて骨もしくは組織の内方増殖または外方増殖を促進する表面を作ることができる。現在知られている内方増殖表面と外方増殖表面(例えば焼結ビーズ、焼結ワイヤメッシュ、プラズマスプレーなど)は、このように設計されておらず、そしてこれを達成していない。固定が向上されると、拡散硬化酸化表面の高い耐摩耗性が理想的に補完される。
【0058】
本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されず、本願の請求項の範囲内である他の方法で実施することができることが、明確に理解されるべきである。
【0059】
現場で形成された拡散硬化酸化層
本発明は、先に教示した現場で酸化された拡散硬化層と、金属基板とテクスチャを改質された表面とを有する整形外科の金属製インプラントまたは人工補装器具を提供する。好ましくは、金属基板はジルコニウムまたはジルコニウム合金であり、酸化物層は濃い藍色または青色の酸化されたジルコニウムで構成された拡散硬化層である。限定されないが、ハフニウム、ニオブおよびタンタルならびにそれらの合金のようなその他の金属基板は、本発明の酸化層を形成するのに用い得る。以下の考察では、焦点はジルコニウムとジルコニウム合金であるが、本発明はそれに限定されない。
【0060】
酸化されたジルコニウムの場合、所望の拡散硬化酸化層を得るのに少量のジルコニウムで充分であることが発見された。例えばジルコニウムが13%およびニオブが13%で残りがチタンの合金に、所望の酸化層を形成することに成功している。酸素、ニオブおよびチタンは、しばしばハフニウムの存在とともに、合金中に共通の合金化元素を含有する。イットリウムは、ジルコニウムと合金化して、合金の酸化中に、イットリアで安定化されたより強靭な酸化ジルコニウムのコーティングの形成を促進することもできる。このようなジルコニウム含有合金は、冶金学の技術分野で公知の従来法で注文して配合することができるが、多種類の適切な合金が市販されている。これら市販されている合金としてはとりわけ、Zircadyne 705、Zircadyne 702およびZircalloyを含む。本発明で有用な合金のその他の限定しない例としては、約4.5重量%までのハフニウムと約3.0重量%までのニオブを含有するジルコニウム、約4.5重量%までのハフニウムを含有するジルコニウム、約2.5〜2.8重量%のニオブと約4.5重量%までのハフニウムを含有するジルコニウム、および約13重量%のニオブと13重量%のジルコニウムを含有するチタンを含む。類似の酸化条件下に、ハフニウム、ニオブ、チタンおよびタンタルならびにジルコニウムを含有しないこれらの合金のような化学的に類似の金属が、本発明の拡散硬化酸化層を形成できるので、ジルコニウムの存在は必須であるとは考えられない。これらの金属および金属合金は、すべて本発明の範囲内である。上記のリストは、使用できる金属と金属合金の候補を単に例示しており、網羅したものではない。
【0061】
ベース金属の合金を従来の方法で所望の形状とサイズに鋳造するか、または機械加工して、人工補装器具の基板を得る。次いで基板を、その表面上に、酸化物層の、強固に付着した拡散結合コーティングを自然に現場で形成させるプロセス条件に付す。プロセス条件としては、例えば空気、水蒸気もしくは水による酸化または塩浴内での酸化を含む。ジルコニウムおよびジルコニウム合金については、これらのプロセスは、厚さが一般に数ミクロン(10-6 m)程度の、薄くて硬質で緻密な濃い藍色または黒色の低摩擦で耐摩耗性である酸化ジルコニウムの薄膜またはコーティングを理想的に提供する。このコーティングの下で、酸化プロセスからの拡散した酸素が、下側の基板金属の硬度と強度を増大させる。
【0062】
空気、水蒸気および水による酸化プロセスは、現在期間が満了したWatsonの米国特許第2,987,352号に記載され、その教示はあたかも完全に記載されているように本明細書に援用される。空気酸化プロセスは、高度に配向した単斜晶の結晶形の酸化ジルコニウムの強固に固着した黒色または濃い藍色の層を提供する。酸化プロセスが過剰に続くと、そのコーティングは白色になり、金属基板より分離する。この酸化工程は、空気、水蒸気または熱水中で実施できる。便宜上、人工補装器具の金属基板は酸素含有雰囲気(空気のような)を有する炉内に入れ、一般に700〜1100゜Fで約6時間まで加熱する。しかし温度と時間の他の組み合わせも可能である。より高い温度を用いる場合、望ましくない酸化物の形態が生成するのを避けるために、酸化時間は短くするべきである。ジルコニウムまたはジルコニウム合金の場合、望ましくない酸化物は白色の酸化物である。
【0063】
ジルコニウムとジルコニウム合金について、約20ミクロンまでのより大きい厚さを利用できるが、厚さが約1〜約10ミクロンの範囲内の濃い藍色の酸化ジルコニウム層をつくることが好ましい。例えば1000゜Fで3時間、炉内で空気酸化させると、Zircadyne 705上に約4〜5ミクロンの厚さの酸化物コーティングが形成される。より長い酸化時間およびより高い酸化温度はこの厚さを増加させるが、コーティングの完全性を損なうことがある。例えば1300゜Fにて1時間では厚さが約14ミクロンの酸化物コーティングが形成されるが、1000゜Fにて21時間では厚さが約9ミクロンの酸化物コーティングが形成される。もちろん、基板表面には薄い酸化物しか必要でないので、人工補装器具の厚さを一般に10ミクロン未満で超える、ごく小さい寸法の変化になる。一般により薄いコーティング(1〜4ミクロン)がより優れた結合強度を持っている。
【0064】
金属合金製人工補装器具に酸化ジルコニウムコーティングを塗布するのに使用できる塩浴法の一つは、Haygarthの米国特許第4,671,824号の方法であり、この教示はあたかも完全に記載されているように本明細書に援用される。ジルコニウムまたはジルコニウム合金の場合、この塩浴法は類似の耐摩耗性が僅かに高い濃い藍色または黒色の酸化ジルコニウムコーティングを提供する。この方法は、溶融塩浴中でジルコニウムを酸化できる酸化化合物の存在が必要である。溶融塩としては、塩化物、硝酸塩、シアン化物などを含む。酸化化合物である炭酸ナトリウムは、約5重量%までの少量で存在する。炭酸ナトリウムを添加すると、塩の融点が低下する。空気酸化のように、酸化速度は溶融塩浴の温度に比例し、特許第'824号は550〜800℃(1022〜1470゜F)の範囲を選好している。しかし塩浴中の酸素レベルは低いので、同じ時間と温度での炉内空気酸化より薄いコーティングが生成する。温度1290゜Fにて4時間塩浴で処理すると、厚さが約7ミクロンの酸化物コーティングが生成する。
【0065】
炉内酸化または塩浴酸化のどちらを利用しても、酸化ジルコニウムのコーティングは硬度が全く同じである。例えば鍛造Zircadyne 705(Zr、2〜3wt%のニオブ)製人工補装器具基板の表面を酸化すると、表面の硬度は、元の金属表面の200ヌープ硬度を超える、劇的な増大を示す。塩浴法または空気酸化法のいずれかによって酸化した後の濃い藍色の酸化ジルコニウムの表面の表面硬度は、約1700〜2000ヌープ硬度である。
【0066】
これらの拡散結合された低摩擦で耐摩耗性の高い酸化物層は、従来、着装の条件下に付す整形外科インプラントの表面に成長している。このような表面としては、とりわけ膝関節、肘関節および股関節の関節表面を含む。股関節と膝関節の人工補装器具を図1と2(股関節)および図3と4(膝関節)に模式的に例示する。先に述べたように、股関節の場合、大腿骨頭と幹状部は一般に金属合金で製造されるが、寛骨臼杯はセラミック、金属もしくは有機ポリマーでライニングした金属、またはセラミックで製造することができる。本明細書の開示において、我々はこれらの表面を人工補装器具の他の部分にも使用することを教示する。特にテクスチャ改質技術と組み合わせると、得られる表面は固定性能が向上する。人工補装器具内への骨や組織の内方増殖は増大され、骨、組織およびその他の物質に対する表面のせん断強度は、従来の人工補装器具の表面と比べて増大される。
【0067】
テクスチャを改質された拡散硬化酸化物層でコートされた人工補装器具の有用性は、高い摩耗率に見舞われ、固定が問題であると予期される、特に関節といった荷重支持人工補装器具に限定されない。酸化物コーティングは、純金属または合金製の人工補装器具基板にしっかりと結合されているので、体液と純金属もしくは合金との間にバリアーを提供して、イオン化のプロセスとそのプロセスの関連する金属イオンの放出による金属もしくは合金の腐食を防止する。
【0068】
テクスチャを改質された拡散硬化酸化層の表面の性能
せん断強度
我々は、各種表面、すなわち1)テクスチャを改質された拡散硬化酸化表面、2)テクスチャは改質されているが酸化されていない表面、および3)酸化もテクスチャの改質もされていない表面の、骨セメントに対するせん断強度を比較する実験を行った。この試験の結果は、同様にテクスチャ加工された酸化されていない表面に比較して、酸化されたテクスチャ加工表面が、実施的に向上された、骨セメントに対する平均せん断強度を有することを示した。
【0069】
下記データの「テクスチャ加工表面No.1」は、表面をマスキング剤で完全に被覆し、次いで制御されたレーザーアブレーションによっていくらかのマスキング剤を部分的に除いてマスクされた表面を生成する方法を使って製造した。次にこの表面を、硝酸/フッ化水素酸の混合物を使用して化学的エッチングを行った。次に、残っているマスキング剤を除去し次いでその表面を洗浄した。「テクスチャ加工表面No.2」は、ランダムスパッタリング法を使ってマスキング剤を塗布し次に硝酸/フッ化水素酸の混合物をエッチング剤として使用して製造した。すべての場合、基板は2.5%のニオブを含有するジルコニウム合金であった。
【0070】
酸化されたテクスチャ加工表面No.1の平均せん断強度は、対応する酸化されていないテクスチャ加工表面No.1より約500 p.s.i.大きく、そして酸化されたテクスチャ加工表面No.2の平均せん断強度は、酸化されていないテクスチャ加工表面No.2より160 psi以上大きかった。また、酸化されていないテクスチャ加工表面No.1の試料のうちの一つにおいて、金属の凹凸のいくらかが試験中削り取られてセメント内に残って埋まっているのがみられた。これは、酸化された試料のいずれにも観察されなかった。骨セメントに対するせん断強度およびテクスチャの形状構成のせん断に対する耐性が改善されることは、拡散硬化酸化表面の追加の利点であろう。データを以下に示し、図5にグラフで示す。
【0071】
【表1】

【0072】
酸化プロセスはテクスチャ加工表面を硬化させ、その結果、表面はインプラントが押し込まれる際にやすりとして働き、骨の切断面を削ってインプラントを自己移植させると考えられる。新たにすり減らされた骨が存在すると、テクスチャ加工表面への骨の増殖を促進すると考えられる。酸化されていないテクスチャ加工表面は、より延性であり硬質ではないので、この方式で骨の切断面を削るのに有効ではない。付加的な利点をデータに見ることができる。試験結果は、酸化されたテクスチャ加工表面は、骨セメントに対する平均せん断強度が酸化されていない類似のテクスチャ加工表面よりかなり改善されたことを示す。
【0073】
羊の生体内での試験
この試験では、羊の動物モデルを使用して、これらマクロテクスチャ加工された酸化ジルコニウムの表面に対する生体内の生物学的応答、およびそれら表面が与えるせん断強度を測定した。商業的に知られているテクスチャ加工法のChemTex (登録商標)5-5-5 (CYCAM,Inc.、Houston、PA)と、商業的に知られている新たに開発された化学的テクスチャ加工プロセスのTecotex (登録商標)I-103 (Tecomet、Woburn、MA)とを選択して、ジルコニウム合金(Zr-2.5Nb)上にマクロテクスチャ加工表面(Rmax>0.4mm)を得た。続いて、これらテクスチャ加工表面を酸化して、主として単斜晶のジルコニアからなる全表面上に約5μmの厚さで均一に硬質セラミック層を形成させた。
【0074】
ChemTex (登録商標)でテクスチャ加工し、酸化したジルコニウム(CT-OZ)の表面、およびTecotex (登録商標)でテクスチャ加工し、酸化したジルコニウム(TT-OZ)の表面を、焼結Co-Crビーズ(SB-CC)、股関節幹状部と膝大腿骨要素の共通固定表面、および全股関節置換要素に臨床で使われているChemTex (登録商標)でテクスチャ加工したTi-6Al-4V (CT-Ti)の表面と比較した。またChemTex (登録商標)でテクスチャ加工し酸化しないままの表面(CT-Zr)も試験した。上記の5種類の表面タイプを各々有する、12個の円筒形ピンクーポン(6.5 mm×15 mm)を作製した。動物1頭当たり1本ずつ各クーポンを、羊の大腿骨の遠位骨幹端の横側にドリルであけた6.4mmの穴に移植した。各クーポンのタイプを有する4頭の羊に、手術後の2時期に骨標識付け溶液を投与した。カルセイン(15mg/kg)とオキシテトラサイクリン(15mg/kg)の溶液を手術後14日目と35日目それぞれに静脈内投与した。手術後6週間目にこれら動物を安楽死させてその大腿骨を収穫した。
【0075】
骨標識をつけなかった動物由来の各タイプの8個の試料を、ピンプッシュアウト試験(pin push-out testing)用に調整した。まず、ピンの末端にすぐ隣接する骨性組織を切断し、ピンの目的とする試験表面とだけ接触する骨を残して、ピンの軸に垂直の平坦な骨の表面を製作した。次にInstron 8511サーボ−水圧機械的試験フレーム(servo-hydraulic mechnical testing frame)(Instron Corporation、Canton、MA)を使用して、ピンの正中線側の末端に、その軸線に沿って直径4.5mmのスチール製プランジャーによって荷重を加えた。レストリクタープレートを使ってピンの横側末端の周囲の骨を支持した。荷重を移動速度0.1 mm/sで増大させて、ピンを脱落させるのに必要な最大の力を記録した。
【0076】
プッシュアウト荷重の統計的分析を、一元分散分析法(ANOVA)を利用して行った。グループ間の有意差は95%信頼区間(p<0.05)を使用して決定した。骨標識を付加した動物由来の各タイプの残りの4個の試料を、ピンの周囲に最小5mmの骨をつけたまま分離した。次にこれら骨/クーポン試料を4℃の70%エタノールで1週間固定し、一連の濃度勾配アルコールで脱水し、次いでTissue-Tek VIPプロセッサを使い、クロロホルムで透明にした。試料をメタクリル酸メチル(MMA)内に埋包し、ダイヤモンドソーを使用して横方向に切断した。「皮質」および「髄質」の切片をピンの対応する末端から約4mm採取し、最小の厚さ50μmまで削った。これらの切片を淡緑色に染色して、組織学的な切片における骨を確認した。
【0077】
ピンプッシュアウト試験の結果、図6に示すような平均プッシュアウト荷重が得られた。TT-OZクーポンは最高の平均プッシュアウト強度(2.83kN)を示したが、この値は、SB-CC(p=0.53)およびCT-OZ (p=0.25)の値と有意差はなかった。しかしこれら3試料は、すべてCT-Zr(p<0.44)およびCT-Ti (p<0.008)の表面より有意に高いプッシュアウト荷重に耐えた。CT-ZrとCT-Tiの表面の間に有意差(p=0.392)は全く見られなかった。組織学的分析は、骨が5表面すべてに直接付着して増殖するのを示した。各試料は、骨が固定表面の最も深いくぼみまで増殖して骨とインプラントが相互に絡み合っていた。骨の標識は、骨の沈着が、試験したすべての表面について手術後14日目に始まり、手術後35日目まで続いたことを示した。
【0078】
マクロテクスチャ加工され酸化されたジルコニウムの表面(CT-OZおよびTT-OZ)は、焼結Co-Crビーズをコートした表面(SB-CC)と同等の生物学的固定強度を提供した。これらの結果は、表面に骨が直接付着して活発に増殖するという組織学的知見とあいまって、マクロテクスチャ加工されて酸化されたジルコニウム表面の両形態が、焼結Co-Crビーズと同等の臨床固定性を提供することを示唆している。
【0079】
上記の3表面はすべて、化学的にテクスチャ加工されたZr-2.5Nb (CT-Zr)およびTi-6Al-4V (CT-Ti)の表面より有意に高い生物学的固定強度を示した。ジルコニウム合金を酸化するだけでせん断強度が改善されるということに注目すべきである。CT-OZおよびCT-Zr両者のピンクーポンは、同じZr-2.5Nb合金を使用して製造し、同一の方法で化学的にテクスチャ加工したが、テクスチャ加工プロセスの後に酸化された第一グループは、酸化しない条件のままの第二グループより、有意に高い生物学的固定強度を示した。
【0080】
酸化によって性能が改良される理由は完全には理解されていないが、いくつもの異なる要因の結果であろう。マクロテクスチャ加工されて酸化されたジルコニウム製の膝大腿骨の試験では、硬化セラミックテクスチャが、骨の調整された表面を「削り取り」、骨の粒子をテクスチャの陥凹の中に押し込むことが観察された。これは「自己移植」方式で作用して骨がインプラント表面上に増殖するのを促進する。より軟質のテクスチャ加工金属の表面はこの効果を行うことがあまり得意でないが、硬質セラミックの表面はテクスチャの凹凸を強化し、それを骨による摩耗に対してより耐性にする作用を行う。さらにセラミックの表面は耐腐食性でかつ耐イオン放出性であり、このことはその表面に直接隣接する生体組織に何らかの作用をする。いずれにしろ試験結果は、テクスチャ加工されたジルコニウムの表面を酸化すると、達成可能な生物学的固定強度を有意に向上させることを示唆している。
【0081】
本発明をその好ましい実施態様で説明してきたが、当業者は、この開示を読めば実施することが可能で、かつ先に述べたか、または本願で特許を請求される本発明の範囲と精神から逸脱しない変更と変形を認識することができる。
【0082】
参考文献
本明細書に挙げた特許および刊行物はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルを示す。これら特許および刊行物はすべて、あたかも個々の各刊行物が具体的にかつ別々に援用されるのと同じ程度に本願に援用するものである。
【0083】
米国特許明細書:
2,987,352 6/1961 Watson
4,671,824 6/1987 Haygarth
4,673,409 6/1987 Van Kampen
4,644,942 2/1987 Sump
4,272,855 6/1981 Frey
4,865,603 9/1989 Noiles
5,922,029 7/1999 Wagnerら
5,507,815 4/1996 Wagnerら
5,258,098 11/1993 Wagnerら
6,193,762 2/2001 Wagnerら
【0084】
5,037,438 8/1991 Davidson
5,152,794 10/1992 Davidson
5,169,597 12/1992 Davidsonら
5,180,394 1/1993 Davidson
5,370,694 12/1994 Davidson
5,372,660 12/1994 Davidsonら
5,496,359 3/1996 Davidson
5,549,667 8/1996 Davidson
【0085】
その他の参考文献:
ASTM Manual on Zirconium and Hafnium、J. H. Schemel;Special Technical Publication 639、American Society for Testing and Materials、Philadelphia、PA、1977。
【0086】
本発明がその目標を達成して本来もっている目的物や利点のみならず、先に述べた目的物や利点が得られるように充分構成されていることは、当業者であれば容易に分かる。本明細書に記載されているシステム、方法、手順および技術は、本発明の好ましい実施態様の代表的なものであり、例示を目的とし本発明の範囲を限定しようとするものではない。本発明の精神に含まれるかまたは請求項の範囲で定義されるそれらの変更や他の使用は、当業者であれば思いつくであろう。
【符号の説明】
【0087】
2 股関節幹状部
6 大腿骨頭
8 内張り
10 寛骨臼杯
12 ワイヤメッシュのコーティング
20 大腿骨要素
22 顆頭
24 ペグ
30 脛骨要素
32 脛骨底
34 ペグ
36 脛骨プラットホーム
38 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板の表面の少なくとも一部のテクスチャを改質し;そして
金属基板の表面の少なくとも一部を酸化して、該金属基板に拡散硬化表面を形成する工程を含む、金属基板に改質表面を製造する方法。
【請求項2】
改質する工程が、化学的エッチングまたは電気化学的エッチングを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エッチングが、酸を用いるエッチングを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エッチングが、マスキング剤を金属基板の表面に塗布するさらなる工程を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
マスキング剤がランダムに塗布される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
マスキング剤を塗布する工程が、マスキング剤を金属基板の表面にスプレーするか、またはスパッターする工程を特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
スプレーするか、またはスパッターする工程が、マスキング剤のランダム塗布を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マスキング剤を金属基板の表面に塗布する工程が、表面をマスキング剤で完全に被覆し、その後、該マスキング剤の部分を部分的に除くことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
部分的に除く工程が、マスキング剤の部分のレーザーアブレーションの工程を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
部分的に除く工程が、マスキング剤の部分を機械的に除く工程を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
改質する工程が、機械的エッチングを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
改質する工程が、物質の表面への沈着を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
沈着工程が、化学蒸着を特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酸化する工程が、空気、水蒸気または水による酸化プロセスを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酸化する工程が、酸化剤としての酸素の使用を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
酸化する工程が、塩浴の使用を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
金属の表面が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
ジルコニウム合金が、
約4.5重量%までのハフニウムおよび約3.0重量%までのニオブを含有するジルコニウム;約4.5重量%までのハフニウムを含有するジルコニウム;
2.5〜2.8重量%のニオブを含有するジルコニウム;および
約13重量%のニオブおよび約13重量%のジルコニウムを含有するチタン
からなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
金属表面が、ハフニウム、ニオブ、タンタルおよびチタンからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
第一人工補装器具部分が支持表面を有し、該支持表面が第二人工補装器具部分上の第二支持表面と係合または協働するサイズと形状であり;そして
第一人工補装器具部分もしくは第二人工補装器具部分または両者の表面の少なくとも一部が、請求項1〜19のいずれかに記載の方法によりテクスチャが改質され;そして
第一人工補装器具部分もしくは第二人工補装器具部分または両者の少なくとも一部が拡散硬化酸化層を有する、
第一人工補装器具部分と第二人工補装器具部分を含む移植用人工補装器具。
【請求項21】
第一人工補装器具部分が、少なくとも一つの顆頭を含む支持表面を有することをさらに特徴とする大腿骨要素であり、そして第二人工補装器具部分が、脛骨底であることをさらに特徴とする脛骨要素であり、該脛骨要素が支持表面と協働するようにされている請求項20に記載の人工補装器具。
【請求項22】
脛骨要素が、有機ポリマーまたはポリマーベースの複合体を含む、請求項21に記載の人工補装器具。
【請求項23】
金属製人工補装器具の本体が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層が、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングである、請求項21に記載の人工補装器具。
【請求項24】
拡散硬化酸化層が、約20ミクロンまでの厚さである請求項23に記載の人工補装器具。
【請求項25】
拡散硬化酸化層が、約10ミクロンまでの厚さである請求項23に記載の人工補装器具。
【請求項26】
第一人工補装器具部分が、ヘッド部分および該ヘッド部分上の支持表面を有する大腿骨要素をさらに特徴とし、そして第二人工補装器具部分が、ヘッド部分上の該支持表面と協働するようにされている内表面を有する寛骨臼杯をさらに特徴とする、請求項20に記載の人工補装器具。
【請求項27】
内表面が有機ポリマーまたはポリマーベースの複合体を含む、請求項26に記載の人工補装器具。
【請求項28】
金属製人工補装器具の本体が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層が、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングである請求項27に記載の人工補装器具。
【請求項29】
拡散硬化酸化層が、約20ミクロンまでの厚さである請求項28に記載の人工補装器具。
【請求項30】
拡散硬化酸化層が、約10ミクロンまでの厚さである請求項28に記載の人工補装器具。
【請求項31】
人工補装器具が脊椎の人工補装器具である、請求項20に記載の人工補装器具。
【請求項32】
脊椎の人工補装器具が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層が、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムの層である請求項31に記載の人工補装器具。
【請求項33】
脊椎の人工補装器具が、脊椎板の人工補装器具である請求項31に記載の人工補装器具。
【請求項34】
脊椎板の人工補装器具が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層が、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムの層である請求項33に記載の人工補装器具。
【請求項35】
要素の表面の少なくとも一部が請求項1〜19のいずれかに記載の方法でテクスチャを改質され、そしてさらに該要素の表面の少なくとも一部が拡散硬化酸化層を含む、該要素を含み患者の身体組織に挿入される医療用インプラント。
【請求項36】
骨板および骨ねじからなる群から選択される、請求項35に記載の医療用インプラント。
【請求項37】
金属製人工補装器具の本体が、ジルコニウムまたはジルコニウム合金を含み、拡散硬化酸化層が、濃い藍色または黒色の酸化されたジルコニウムのコーティングである請求項35に記載の医療用インプラント。
【請求項38】
拡散硬化酸化層が、約20ミクロンまでの厚さである請求項37に記載の医療用インプラント。
【請求項39】
拡散硬化酸化層が、約10ミクロンまでの厚さである請求項37に記載の医療用インプラント。
【請求項40】
さらに自己移殖性器具を含む、請求項35に記載の医療用インプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−36692(P2011−36692A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216032(P2010−216032)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2003−550830(P2003−550830)の分割
【原出願日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】