説明

人物検査方法

【課題】身長や姿勢に関わらず、不審物をもった人物が検知器を通過した場合、その画像を撮影できる検知器を提供する。
【解決手段】ゲート110と、ゲート110を通過する人物を画像化するためのイメージキャプチャデバイス120とを有する検知器100を用いた人物検査方法であって、前記人物Pがゲート110を通過したときに、前記人物Pを画像化するステップと、前記イメージキャプチャデバイス120によって取得した画像をバッファするステップと、不審物Sを検知するステップと備え、前記不審物Sを検知するステップでは、前記不審物Sの検知前から検知後までの時間間隔の間にバッファされた画像の中から関連画像を自動記録し、検知ステップの間に、前記関連画像と前記不審物Sに対応したデータとを自動でマッチングさせ、これらをともに単一出力でオペレータに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属探知機等のように、人の出入りを管理する制限エリア内において、不審物を検知するため、およびを検知器を通過する人物の画像を撮像するために用いられる検知器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記のような検知器が知られている。例えば、欧州特許出願第1750147号には、2つの楕円形状の竪型ハウジングを含むゲート形状を有する検知器の例が開示されている。この検知器は、前記竪型ハウジングの上部が接続された構造を有し、前記ハウジングに取り付けられた電気コイルを給放電を行うようになっている。
【0003】
図1および図2に示すように、検知器1は、ゲート10を通過する人物を撮影するように構成されたカメラ20をさらに備える。カメラ20は、人物Pが検知器1を通過するときに人物Pを上方から正確に捉えるために、通常、ゲート10の上部構造13の中央に配置される。カメラ20の支持体としてゲート10を利用することで、人物Pはハウジングの側部11、12により規定される制限スペースを通り抜けなければならないため、撮影される人物のフレーミングを正確に行うことができる。
【0004】
カメラ20は、検知器1が何かを検知すると作動し、検知器を作動させた人物の画像を瞬時に記録する。
しかしながら、このタイプの検知器は、作動させた人物を見逃したり、人物の形態、すなわちゲート通過時の姿勢や、人が素早く通過するという理由から使用可能な画像を撮影できないことがある。これに加えて、カメラに使用されているレンズに関わらず、人物の体の上部のみしか撮影できないということもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願第1750147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、オペレータの監視下になくても使用可能な検知器、例えば、検知器が人目につかないところに位置し、身長や姿勢(体を曲げている、膝をついている等)に関わらず、不審物をもった人物が検知器を通過した場合、その画像を撮影できる検知器が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る検知器を用いた人物検査方法は、ゲートと、ゲートを通過する人物を画像化するためのイメージキャプチャデバイスとを有する検知器を用いた人物検査方法であって、前記人物がゲートを通過したときに、前記人物を画像化するステップと、前記イメージキャプチャデバイスによって取得した画像をバッファするステップと、不審物を検知するステップと備え、前記不審物を検知するステップでは、前記不審物の検知前から検知後までの時間間隔の間にバッファされた画像の中から関連画像を自動記録し、検知ステップの間に、前記関連画像と前記不審物に対応したデータとを自動でマッチングさせ、これらをともに単一出力でオペレータに送信することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、オペレータが、不審物を査定しながら、検知器を設定した人物を迅速に且つ明瞭に識別可能なように、関連画像を自動で記録でき、不審物に対応するデータとともにオペレータにこれらの画像を提示できるので、検知現場でのオペレータの介入や存在を不要とすることができる。
さらに、画像をバッファするステップでは、不審物を持つ人物をより正確に識別可能である。さらにまた、全ての情報を含む単一出力は、オペレータにとってコスト削減および時間削減が可能となる。なお、オペレータは、これ以上、検知器によって提供される様々なデータを適合する必要がない。したがって、オペレータによるデータのマッチングミスを防ぐことができる。
【0009】
以下に、本発明の方法における好ましい他の態様を示す。ただし、本発明の方法はこれらの態様に限定されるものではない。
前記関連画像および前記データのマッチングは、リアルタイムで実行されるようにしてもよい。
前記画像をバッファするステップは、少なくとも前記時間間隔に対応した所定時間の間実行され、前記人物検査方法は、不審物が検知されなかった場合、新しい画像に置き換えるために、前記所定時間が終了したら前記バッファされた画像を自動で消去するステップをさらに備えるようにしてもよい。
前記時間間隔は、前記検知ステップ直前の少なくとも3秒間であることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様は、人物を検査する検知器であって、ゲートと、2つの垂直な側壁と、前記側壁の上部に接続される上部構造と、イメージキャプチャデバイスと、前記不審物の検知前から検知後までの時間間隔の間に、前記イメージキャプチャデバイスで取得した関連画像を記録するように構成されたメモリとを備えることを特徴とする。
【0011】
以下に、本発明の検知器における好ましい他の態様を示す。ただし、本発明の検知器はこれらの態様に限定されるものではない。
前記イメージキャプチャデバイスは、前記検知器の2つの対向する前記側壁の間に架けて広がる、検知器の横中央断面から所定距離だけ離れて前記ゲートに固定されていてもよい。
前記イメージキャプチャデバイスは、前記ゲートから該ゲートの外側に向けて前方に延びるアームに固定されていてもよい。
金属センサと、爆発物の存在を検知するように構成されたセンサと、特定物質の存在を検知するように構成されたセンサと、電離放射線を検知するように構成されたセンサとのうち少なくともいずれかのセンサをさらに備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術に係る検知器を示す側面図である。
【図2】図2の検知器の正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る検知器を示す透視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る検知器を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係り、移動中の人物の検査方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
この方法では、例えば欧州特許出願第1750147号に開示されるような従来技術の検知器、あるいは、図3および図4に関連して、以下に記載される検知器100を用いることができ、検知器を通過する人物の画像を提供することによって、人物の識別を簡易化および改善する。
【0015】
検知器は、ゲート110と、イメージキャプチャデバイス120とを有する。本実施形態において、ゲート110は、互いに並行に設けられた2つの垂直な側壁111、112と、それらの間に配設される上部構造113とから構成することができる。この側壁111、112には、複数のセンサが取り付けられている。センサとしては、例えば、金属センサ、爆発物の存在を検知するように構成されたセンサ、薬物等の特定物質の存在を検知するように構成されたセンサ、電離放射線を検知するように構成されたセンサの少なくともいずれかを用いてもよい。
【0016】
イメージキャプチャデバイス120には、写真の撮影または動画の撮影を行うカメラを用いることができる。
検知器100は、カメラ120が写真を撮影している間(図5のステップ150を参照)に、不審物Sを探す。撮影した写真は、連続的に一時バッファに蓄積される(ステップ152)。
【0017】
人物Pがゲートを通過するとき、検知器100は、金属物質、爆発物、薬物等の特定物質などの不審物を感知するか、または何も感知しない。
検知器が少なくとも一つの不審物Sを感知した場合(ステップ154)、不審物Sの検知前から検知後までの時間間隔の間に、カメラ120で撮影された関連画像の記録を行う(ステップ158)。
【0018】
ここで、前記時間間隔は、例えば、検知動作直前の少なくとも3秒間、および、検知動作後の1秒間から10秒間としてもよい。
この目的のために、本発明の一実施形態において、検知器100は、少なくとも前記関連画像を一時的に保存するメモリと、検知ステップの間に、関連画像および検知された不審物Sに対応するデータを自動的に記録し、オペレータへ送信する処理ユニットとを有する。
【0019】
前記データは、ゲート10の各センサによって収集される情報であってもよいし、単に、検知された不審物Sに関連した関連情報であってもよい。
前記メモリは、バッファとして用いられるとともに、繰り返し利用可能に構成され、カメラ120で撮影された画像を一時的に保存する。そして、保存された過去の一時画像で不審物Sが検知されない場合は、漸次、過去の画像を消去する。このようにして、前の格納場所に新しい写真を格納していくことによって他の画像を自動的に消去している間、不審物Sの検知に対応した関連画像のみを専用のメモリに保存し、記録する。例えば、検知器100が、ゲート10を通過する人物Pの持つ金属を検知した場合、最後の10秒間の間にメモリに格納された画像は、次の10秒間で撮影される画像および検知情報とともに保存される。
【0020】
専用メモリは、検知器100自体に組み込むことができる。また別の構成として、専用メモリは、オペレータのコンピュータ内のように、検知器100の外部に設けてもよい。
いずれにしても、不審物Sに関するデータは、検知ステップの間に検出され、コスト削減および時間短縮のために、記録画像は単一出力でオペレータに送信された後、オペレータに提示される。
【0021】
この検知器が、撮影された画像を単に記録するだけのものであれば、従来技術と同様に、オペレータは、不審物Sを持つ人物の画像であることに気づかないであろう。例えば、人物の左の靴の中に不審物Sが隠されており、人物が右足を前にしてゲートを歩いて通り抜ける場合、左足がセンサ近くのゲート内側にあるとき検知が行われる。これは、関連画像を撮影するには遅すぎる。逆に、本発明のように、検知前から検知後までの所定の時間間隔の間中、画像を記録することによって、どちらの足が前に出ていても人物の画像を良好に取得することが可能となる。
一方、検知器100が不審物Sを検知しなかった場合、オペレータにとって画像は不要であるため、このような場合画像は記録されない。
【0022】
本発明の第2実施形態においては、画像は全て、例えば24時間のような長期間、メモリに格納される。そして、不審物Sの検知に関する画像の選択が、後で自動的に実行される。このとき、例えば、検知システムおよびカメラ120のそれぞれに関係したクロックを用いることができる。しかし、どのような場合であっても、検知器100のデータに関係して選択される画像は、検知前から検知後までの時間間隔に対応している。
【0023】
処理ユニットは、不審物Sを検知したときに、カメラ120の焦点を合わせたり、視野を広げたりするためにカメラ120の動きを制御する。
さらにまた、検知データおよび記録画像は、リアルタイム若しくは次のステップにて、オペレータによってさらなる処理を行うために、自動的にマッチングされるようにしてもよい。
最後に、本発明の検知器100は、方位センサを有していてもよい。例えば、ゲートを通過する人物の移動方向を測定するためのインライン光学ビームと制御論理手段とを有していてもよい。これにより、ゲートの出口から入口に向かって間違った方向に進む人の画像を記録しないような処理ユニットとすることができる。
【0024】
次に、本発明に係る検知器100についてさらに記載する。これは、上記したように移動する人物の検査方法に用いられる。
図3および図4には、本発明に係る検知器100の2つの実施形態を示している。
検知器100は、通常、空港において商業地区のような公共区域等の入口および/または出口を通過する人物Pの検査に用いられる。
【0025】
この検知器100は、ゲート110およびイメージキャプチャデバイス120を有している。上述したように、本実施形態によれば、ゲート110は、互いに並行に設けられた2つの垂直な側壁111、112と、それらの間に配設される上部構造113とから構成することができる。ゲート110は、空港の制限エリアの入り口や検問所等の目立つ場所に設置されたり、またはセキュリティのための検査であることを知らずに通過することがないように、植物や広告で隠された場所に設置されたりする。
【0026】
側壁111、112は、上述した欧州特許出願第1750147号に開示される検知器のように、複数のセンサを収納している。例えば、側壁111、112は、金属センサ、爆発物の存在を検知するように構成されたセンサ、薬物等の特定物質の存在を検知するように構成されたセンサ、電離放射線を検知するように構成されたセンサの少なくともいずれかを含むようにしてもよい。
【0027】
イメージキャプチャデバイス120には、写真の撮影または動画の撮影を行うカメラを用いることができる。このイメージキャプチャデバイス120は、ゲート110に固定されている間、ゲート110を通過する人物Pの画像を取得可能である。この目的のために、カメラ120は、検知器の2つの対向する壁111、112間に間に架けて広がる、検知器の横中央断面Mから所定距離だけ離れてゲート110に固定されている。ここで、断面Mは、人物Pの移動方向Tに対して横方向に広がるものである。
【0028】
さらにまた、カメラ120は、ゲート110を通過する人物Pを追跡するようにしてもよいし、静止するようにしてもよい。
図3に示すように、第1の実施形態では、カメラ120がゲート110から所定距離だけ前方に位置し、ゲート110の内部空間を向くように、カメラ120はゲート110の上部構造113に固定されるアーム121の先端に取り付けられている。また別の構成として、カメラ120は、側壁111、112の一つから前方に延びたアームに取り付けられていてもよい。
好ましくは、アーム121は、ゲート110から実質的に水平に延びている。さらにまた、アーム121はゲート110の出口側に固定されていてもよい。
【0029】
図4に示す第2実施形態では、ゲートの上部構造113の前方端(または出口側)がカメラ120の取り付けに十分な広さを持つように、ゲート110が幅広の通路となっている。したがって、ゲート110を通過する人物Pの広範囲な写真を撮影することが可能となる。
【0030】
このような配置構造では、カメラのアングルショットAは、従来技術(図1および図3)の場合より広くなり、人物Pの姿を大きく且つ完全に撮像することができる。人物Pの重要なパーツがカメラで撮影可能なように、アーム121の長さおよびカメラ120のレンズは最適化される。例えば、搭乗待合室の入口に検知器が配置、設定されるとき、検知される対象の位置を特定したり、少なくとも識別を目的とした人物の撮像画像を記録したりするために、人物Pの全身が映るようにカメラ120の位置合わせが行われる。
【0031】
上述した実施形態によれば、検知器を他の場所に移動させた際に、ゲート110に対するカメラ120の調整を不要とするために、カメラ120とゲート110とを接続して一緒に移動可能な構成とすることが有利である。これによって、コストを削減可能であるとともに、同じ品質、フレーミングの人物画像を提供することができる。したがって、移動後の検知器によって送信される画像およびデータの処理が、オペレータにとって改良され、容易化する。
【0032】
第3の実施形態では、カメラ120は、ゲート110から所定の距離および角度で配置され支持体に固定される。この支持体としては、天井、脚部、デスク等を用いることができる。カメラ120は、アングルショットAがゲート110の全内部体積を含むように配置されることが好ましい。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート(110)と、ゲート(110)を通過する人物を画像化するためのイメージキャプチャデバイス(120)とを有する検知器(100)を用いた人物検査方法であって、
前記人物(P)がゲート(110)を通過したときに、前記人物(P)を画像化するステップと、
前記イメージキャプチャデバイス(120)によって取得した画像をバッファするステップと、
不審物(S)を検知するステップと備え、
前記不審物(S)を検知するステップでは、前記不審物(S)の検知前から検知後までの時間間隔の間にバッファされた画像の中から関連画像を自動記録し、検知ステップの間に、前記関連画像と前記不審物(S)に対応したデータとを自動でマッチングさせ、これらをともに単一出力でオペレータに送信することを特徴とする検知器を用いた人物検査方法。
【請求項2】
前記関連画像および前記データのマッチングは、リアルタイムで実行されることを特徴とする請求項1に記載の検知器を用いた人物検査方法。
【請求項3】
前記画像をバッファするステップは、少なくとも前記時間間隔に対応した所定時間の間実行され、
前記人物検査方法は、不審物が検知されなかった場合、新しい画像に置き換えるために、前記所定時間が終了したら前記バッファされた画像を自動で消去するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の検知器を用いた人物検査方法。
【請求項4】
前記時間間隔は、前記検知ステップ直前の少なくとも3秒間であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検知器を用いた人物検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載される、人物を検査する検知器であって、
ゲート(110)と、2つの垂直な側壁(111、112)と、前記側壁(111、112)の上部に接続される上部構造(113)と、イメージキャプチャデバイス(120)と、
前記不審物(S)の検知前から検知後までの時間間隔の間に、前記イメージキャプチャデバイスで取得した関連画像を記録するように構成されたメモリとを備えることを特徴とする人物を検査する検知器。
【請求項6】
前記イメージキャプチャデバイス(120)は、前記検知器(100)の2つの対向する前記側壁(111、112)の間に架けて広がる、検知器(100)の横中央断面から所定距離だけ離れて前記ゲート(110)に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の検知器。
【請求項7】
前記イメージキャプチャデバイス(120)は、前記ゲート(110)から該ゲート(110)の外側に向けて前方に延びるアーム(121)に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の検知器。
【請求項8】
金属センサと、
爆発物の存在を検知するように構成されたセンサと、
特定物質の存在を検知するように構成されたセンサと、
電離放射線を検知するように構成されたセンサとのうち少なくともいずれかのセンサをさらに備えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の検知器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−14694(P2012−14694A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−142376(P2011−142376)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(511156597)
【Fターム(参考)】