説明

人造黒鉛微粉末の製造法および人造黒鉛微粉末。

【課題】 粒径が1μm乃至3μm程度の微粉で、長径と短径の比が低く、十分な嵩密度を有し、かつ吸油量、比表面積が低い優れた特性の人造黒鉛微粉末およびその製造法を提供する。
【解決手段】
炭素前駆物質を乾式粉砕し、更に湿式粉砕して得た微粉末を乾燥し、黒鉛化することを特徴とする人造黒鉛微粉末の製造法。前記のような方法で製造された人造黒鉛微粉末であって、平均粒径が1μm±0.5μm以下、かつ最大粒径が7μm以下で、長径と短径の比が2以下の一次粒子で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量70ml/100g以下、比表面積20m/g以下、嵩密度0.3g/cm以上である人造黒鉛微粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人造黒鉛微粉末およびその製造法に関し、電池、キャパシタ用の導電助剤、各種の導電性フィラ−材等の用途に有効な平均粒径約1μm以下あるいは3μm以下の人造黒鉛微粉末および製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より炭素材、黒鉛材の粉末が、電気伝導性、熱伝導性、摺動性等の特性を生かして各種の用途に使用されている。
これらの代表的なものとしては、カ−ボンブラック、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末などがあり、最近では気相成長炭素繊維(VGCF)やカ−ボンナノチュ−ブ等も知られている。
【0003】
カーボンブラックは石油や天然ガス等の炭化水素の不完全燃焼、あるいは熱分解によって生成した煤であり、得られる粒子は非常に細かいナノミクロンオ−ダの一次粒子が凝集した状態、即ち一次粒子が複数個繋がった形のストラクチャ−と言われる二次粒子を構成している。
【0004】
レーザ−回折式の粒度分布測定器により湿式で測定を行うと、サブミクロンオ−ダ−の平均粒子径測定値が得られるが、二次粒子あるいは、これらがさらに凝集したものを測定しているに過ぎない。
現実には一次粒子が1μm以下のカ−ボンブラックは存在しない。
【0005】
カーボンブラックの主な用途としては導電助剤、ゴム添加剤等がある。特に導電助剤の分野では、前記のストラクチャ−と言われる形態を有効に利用して被添加物の導電性向上に寄与しているが、一次粒子に解砕しての使用例はない。
【0006】
現在使用されているカーボンブラックの中でも特に導電性に優れるケチェンブラックは、一次粒子径が30nmで、吸油量が360〜500ml/100g、比表面積が800〜1050m/gといずれも高吸油量、高比表面積である。
このため溶媒に分散させる場合に多量の溶媒が必要になり、これを用いて塗膜を形成する場合に端部の液だれを起こし易いなど作業上の問題がある。
また乾式で使用すると、凝集したままとなり、均一に分散させることが困難で、導電性等の特性を十分に付与できない欠点がある。
【0007】
その他に使用されている導電性カ−ボンブラックでは、三菱化学製のカ−ボンブラックが粒子径20〜50nm,吸油量130〜175ml/100g、東海カ−ボン製のカ−ボンブラックが粒子径18〜70nm、吸油量60〜130ml/100gであり、いずれも粒子径は数十nm以下で、吸油量は100ml/100gを超えるものである。
【0008】
従来のカーボンブラックの製造法は、基本的にミクロンオ−ダ−の一次粒子を得るのに適当な方法ではなく、また燃焼が不十分なものも多く、発ガン性を有する危険があるなどの問題もある。
さらに凝集体であるため、嵩密度が低く、例えばリチウムイオン電池負極材のように、所定の容積中に粉末を多量に充填することが特性向上のために必要な用途や、併用する分散媒の量が少量に限定される場合には適当な材料とならない。
【0009】
1μm程度の粒径で、上記のような欠点を解消できる程度に吸油量、比表面積が低いカーボンブラックは得られていない。
【0010】
カーボンブラック以外では、天然黒鉛や人造黒鉛を粉砕、分級した黒鉛微粉末がある。
【0011】
天然黒鉛は高度に結晶化した黒鉛で、リチウムイオン電池負極材に使用すると高い充放電容量を示す。
例えば、特開2000−200606にはリチウム二次電池負極材料用の黒鉛粉末として、天然黒鉛をジェットミルで粉砕後、900度以上の温度で加熱処理して得られる粉末が記載されている。(特許文献1)
【0012】
【特許文献1】 特開2000−200606
【0013】
しかし、高度に結晶化した天然黒鉛は微粉末に粉砕すると、薄片状になりやすく、長径と短径の比が高くなる。
長径と短径の比が高いと配向し易く、特性に異方性が生じ易い。
【0014】
例えば、リチウムイオン二次電池負極材に使用した場合、配向することにより充放電によるサイクル特性を低下させたり、その他の電子用途の塗膜でも面方向に配向するため、等方的な導電性が要求される場合、不適当であるなどの欠点がある。
【0015】
例えば、中国製天然黒鉛微粉FS−4(青島古宇石墨製)は、平均粒径が3.6μm、長径と短径の比は2.8程度である。
1μm程度の粒径で、同程度の長径と短径の比の天然黒鉛粉末は他にも見当たらない。
平均粒子径は市販品では細粒品でも3〜4μm程度である。
【0016】
他には天然黒鉛の一種として土状黒鉛を粉砕したものとして、HOPシリ−ズ(日本黒鉛工業(株)製、平均粒径4μm)があるが嵩密度が0.15g/cmと低い。
【0017】
人造黒鉛の製造法は、コ−クス、コ−クスとバインダ−ピッチの混合成形体、メソフェ−ズピッチ等の炭素前駆体を焼成および黒鉛化して得る方法である。
【0018】
人造黒鉛は天然黒鉛に比べ、長径と短径の比の制御が容易で、以下のようなものがある。
人造黒鉛UF−J5(昭和電工製)は平均粒径3.0μm、嵩密度0.2g/cmで、人造黒鉛SGシリ−ズ(エスイ−シ−製)は平均粒径1μm、比表面積16〜25m/g、吸油量70〜120ml/100g、嵩密度0.2g/cmのもの又は平均粒径3μm、比表面積5〜20m/g、吸油量40〜120ml/100g、嵩比重0.2g/cmのものがある。
人造黒鉛KS6(TIMCAL製)は平均粒径3μm、比表面積20m/g、d0023.357Åであり、他に人造黒鉛CX−10000(中越黒鉛工業所製)が平均粒径3μmである。
【0019】
これらは、いずれも人造黒鉛のブロックや粒子を切削あるいは粉砕し、さらに整粒して得られるものであるため、嵩密度が十分ではなく、また上記のカーボンブラックと同様に吸油量、比表面積が高い欠点がある。
【0020】
気相成長炭素繊維(VGCF)やカ−ボンナノチュ−ブは、長径と短径の比が大きく、電気伝導性の向上という点で優れているが高価であり、使途は限定されてしまう。また長径と短径の比が大きく、嵩密度も低いため、分散・混合に工夫を要する。
【0021】
以上に述べた以外も含め、炭素・黒鉛粉末は、それぞれの粒径、形状、その他の特性を生かし、それぞれが適した分野、方法で種々の用途に利用されている。
しかしながら、炭素材料、黒鉛材料の微粉末につき、1μm乃至3μm程度の粒径で、長径と短径の比が小さく、低比表面積で、吸油量が比較的小さく、嵩密度が高めの特性を有するものは得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記のような状況に鑑み、本発明は、粒径が1μm乃至3μm程度の微粉で、長径と短径の比が低く、十分な嵩密度を有し、かつ吸油量、比表面積が低い、優れた特性の人造黒鉛微粉末およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記のような課題を解決するため、本発明が提案するのは、平均粒径が1μm±0.5μm以下、かつ最大粒径が7μm以下で、長径と短径の比が2以下の一次粒子で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量70ml/100g以下、比表面積20m/g以下、嵩密度0.3g/cm以上であることを特徴とする人造黒鉛微粉末である。
この製造法は、コ−クス、生コ−クス、メソフェ−スピッチ等の炭素前駆物質をそのまま、あるいは必要に応じて焼成した後、乾式粉砕し、更に必要に応じ湿式粉砕・乾燥して得た微粉末を黒鉛化するものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明の原料として使用する炭素前駆物質には各種のコ−クス、メソフェ−スピッチ、メソカ−ボンマイクロビ−ズなどが用いられる。
【0025】
コークスでは、カルサインコ−クス、生コ−クスを直接粉砕して用いるのも可能だが、カルサインコ−クスは固くて粉砕しにくい。
また、生コ−クスは1μmに微粉砕(湿式)する時に、変形や凝集、造粒等が生じ、目的とする粒径の粉末が得られないことがある。
このため、粉砕を適切に行うために、生コ−クスを800〜1200℃で焼成したものが好ましい。
【0026】
コークスの構造としては、フロ−構造、モザイク構造を持つものが好適である。
この構造により、粉砕後、黒鉛化後の長径と短径の比が変化するので、長径と短径の比のより小さい黒鉛粉末が必要な場合は、モザイク構造あるいはファインモザイク構造のものを使用するのが好ましい。具体的には黒鉛化したときの膨張係数が2×10−6/℃以上のものから、長径と短径の比のより小さい黒鉛粉末が必要な場合は、5×10−6/℃以上のものから選ぶのが好ましい。
【0027】
目的の黒鉛微粉末を得るには、まず上記の炭素前駆物質を粉砕することから始める。
この粉砕は、目的とする粉末の粒径が1μm品か3μm品かにより、方法をやや異にする。
3μm品の場合は、各種の粉砕機を用いた乾式粉砕のみでも可能であるが、1μm品の場合は、乾式粉砕に引き続き、ビ−ズミルによる湿式粉砕が必要になる。
粉砕は、原料の粒径に応じて、粗粒、中粒、微粒、超微粉と次第に細かく粉砕していき、所望の粒度のものを得る。
【0028】
乾式粉砕で用いる粉砕機は原料の大きさや硬度等に応じて、適宜選択する。
粒径が数cmの大きな塊は、まず高トルクタイプのオリエントミル((株)オリエント製)やロートプレックス、フェザ−ミル(以上ホソカワミクロン(株)製)カッタ−ミル(東京アトマイザ−(株))、ロ−ルクラッシャ−((株)マキノ他)等の粉砕機で中粉砕を行う。
次いで、より細かく粉砕するため、あるいは数mmの原料であれば最初からパルベライザイ−((株)ダルトン、東京アトマイザ−(株)他)、ハンマ−ミル、ACMパルベライザ−、ビクトリミル、コロプレックス、ウルトラプレックス(以上ホソカワミクロン(株))、タ−ボミル(タ−ボ工業(株))、インペラ−ミル((株)セイシン企業)、振動ミル(中央化工機(株))等の粉砕機で微粉砕を行う。
あるいは更に粒径を細かくするために、ジェット粉砕機(例えば(株)セイシン企業、ホソカワミクロン(株)、日本ニュ−マチック工業(株)製他)等で可能な限り細かい粒径に乾式粉砕を行う。
【0029】
その後は、必要であれば平均粒径が3μm以下、1μm以下になるまで、ビーズミル((株)シンマルエンタ−プライズ、アシザワファインテック(株)、日本アイリッヒ(株)他)により湿式粉砕する。
【0030】
1μm品を製造する場合は、乾式粉砕法のみでは目的とする粒径に達するのは、困難なので、乾式粉砕に引き続いてビ−ズミルによる湿式粉砕が必要になる。湿式粉砕する場合の分散媒は特定されないが、水を用いることが、分散媒の価格、安全性、排水処理費等を考えると安価なので好ましい。
【0031】
粉砕品の最大粒径は、焼成・黒鉛化時、乾燥時の凝集を考慮して、3μm品、1μm品でそれぞれ13μm以下、7μm以下とする。
【0032】
湿式粉砕を行う場合は、引き続き乾燥が必要であるが、乾燥方法は乾燥後に凝集ができないような方式なら特に限定しない。
【0033】
乾燥機としては、単に熱風により乾燥する熱風循環型乾燥機、振動乾燥機、流動層乾燥機、スプレ−ドライヤ−、スラリ−に気流を当てて分散させながら乾燥させる気流式乾燥機、さらには凍結乾燥機などがある。
【0034】
これらの中でも、気流乾燥機が、凝集しないように分散させつつ乾燥を行えるので好ましい。但し、気流式乾燥機の中でも、フラッシュジェットドライヤ−は操業中に内部付着が起き易く、スプレ−ドライヤ−は造粒し易いなどの欠点があるので、操業条件を選ぶ必要がある。特に好ましいのは、マイクロミストドライヤ−で、これを用いると、湿式解砕後においても凝集体を生成することなく、乾燥が可能である。
【0035】
他の乾燥機、即ち熱風循環型乾燥機、振動乾燥機等は、乾燥途中で凝集ができ易く、乾燥後の解砕工程が必要になり、好ましくない。また凝集が残ったまま黒鉛化を行うと強固な凝集が生成し、粒径が大きくなり過ぎたり、最後の湿式粉砕の後の乾燥において凝集体や造粒体が混入していると品質上問題が起きるなどの欠点がある。
【0036】
粉砕した後は、必要に応じて焼成する。
湿式粉砕の場合は、焼成後に粉砕、乾燥するのが適当である。
【0037】
焼成は揮発分が多くて、微量にする必要がある場合に行うもので、既に800℃以上の熱履歴を受けている場合は、次工程の黒鉛化に直接進むことも可能である。
焼成条件は、非酸化性雰囲気下、焼成温度800〜1200℃で行うことが適当で、揮発成分が微量になる温度であれば、これより多少高温または低温でも差し支えない。 但し、1300〜1400℃程度での処理は、一般に炭素材料の硬度が一番高くなるところなので、その後に粉砕工程がある場合は、粉砕で苦労することになり,好ましくない。
【0038】
一般に炭素前駆体の熱分解による揮発分の発生は、600〜800℃が最も多い。揮発分が多い状態のままで黒鉛化を行うと、多量の揮発分の発生により炉の操業上不具合が発生したり、揮発分による凝集を引き起こす可能性があるので、800℃以上で揮発分が少なくなる温度で焼成するのが好ましい。
【0039】
焼成後はアチソン炉等で不活性ガスまたは還元性雰囲気中で黒鉛化する。黒鉛化温度は、2800〜3200℃が好ましい。2800℃以下では結晶化が不十分で得られた粉末の導電性が低く、3200℃を超えると実質的に黒鉛化できない。
【0040】
以上のようにして本発明の人造黒鉛微粉末が得られる。
【0041】
上記のようにして得られた人造黒鉛微粉末の特性は、1μm品は、長径と短径の比が2以下で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量70ml/100g以下、比表面積20m/g以下、嵩密度0.3g/cm以上である。
3μm品は長径と短径の比が2以下で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量35ml/100g以下、比表面積5m/g以下、嵩密度0.9g/cm以上である。
【0042】
本発明の人造黒鉛微粉末の用途としては以下のようなものに供せられる。
電池、キャパシタ、燃料電池用導電助剤。
樹脂、ゴム、インキ、セラミックス、金属、炭素質カ−ボン、複合材等へ導電性を賦与するか、または抵抗、帯電量等の電気特性を制御するためのフィラ−または構造部材。
樹脂、ゴム、インキ、セラミックス、金属、炭素質カ−ボン、複合材等の親水性、親油性を制御するためのフィラ−。
樹脂、ゴム、インキ、セラミックス、金属、炭素質カ−ボン、複合材等の硬度を制御するためのフィラ−。
樹脂、ゴム、インキ、セラミックス、金属、炭素質カ−ボン、複合材等の強度、破壊エネルギ−、摩擦係数等の機械的特性を制御するためのフィラ−。
CVD、メッキ等のコ−テング担体。
【発明の効果】
【0043】
本発明では、1μm程度の粒径の黒鉛微粉末につき、長径と短径の比が小さく、十分な嵩密度で、かつ吸油量、比表面積の低い優れた特性の微粉末を得ることができる。
【実施例および比較例】
【0044】
次に本発明の実施形態について以下の実施例で述べる。
【実施例1】
【0045】
モザイク構造を有し熱膨張率が5.7×10−6/℃の石炭系ピッチ生コ−クスをオリエントミル((株)オリエント製)で平均粒径40〜60μm程度に粗粉砕後、さらにジェットミルSTJ−400((株)セイシン企業製)で粉砕し、4μm程度の粉末とした。
次にこの4μmの粉末を窒素雰囲気下1000℃で焼成した。
焼成後、ビ−ズミル((株)シンマルエンタ−プライズ製)により水を分散媒とし、微量の界面活性剤を添加し、混合分散させた状態で繰り返し処理を行い、平均粒径0.8μm、最大粒径7μm以下になるまで湿式粉砕した。
その後、気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤ−により乾燥して得られた粉末を、アチソン炉で3000℃で黒鉛化した。
この後再び上記のビ−ズミルにより水を分散媒に使用し、微量の界面活性剤を添加し混合分散させた状態で繰り返し2回ビ−ズミルに通すことにより、湿式解砕をした。最終的に気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤ−により乾燥して黒鉛微粉末を得た。
得られた黒鉛質粉末の粒度は平均粒径が1μm 、最大粒径が6.5μm であった。また各特性を測定したところ、比表面積は16m/g、吸油量は59ml/100g、結晶子サイズd002は3.364Å、嵩密度は0.3g/cm、長径と短径の比は1.7であった。
【実施例2】
【0046】
モザイク構造を有し熱膨張率が2×10−6/℃である石炭系生コ−クスをオリエントミル((株)オリエント製)で平均粒径40〜60μm程度に粗粉砕した後、さらに振動ミル(中央化工機(株)製次いでジエットミルSJT−400((株)セイシン企業製)にて粉砕し、4μm程度の粉末とした。
次にこの粉末を窒素雰囲気中1000℃で焼成した。
以後は、2回の乾燥工程でマイクロミストドライヤ(藤崎電機((株)製)を用いた以外は実施例1と同様の処理で黒鉛微粉末を得た。
得られた黒鉛微粉末の粒度は、平均粒径が1.1μm、最大粒径が6.5μmであった。各特性を測定したところ、比表面積は15m/g、 吸油量は65ml/100g、結晶子サイズd002は3.363Å、嵩密度0.3g/cm、長径と短径の比は1.9であった。
【実施例3】
【0047】
実施例1で用いた生コ−クスを実施例1と同様な方法で乾式粉砕を行い、900℃で焼成した。
次に水を分散媒としてビ−ズミル(アシザワファインテック(株)製)により湿式粉砕をし、平均粒径0.8μm、最大粒径7μmになるまで粉砕した。
これをスラリ−をバットに薄く延ばし熱風乾燥機(エスペック製)により110℃で乾燥した。
得られた粉末をアチソン炉にて3000℃で黒鉛化し、以下実施例1と同様に湿式粉砕を行い、気流式乾燥機マイクロミストドライヤ(藤崎電機(株)製)を用いて最終の乾燥を行い黒鉛質微粉末を得た。
得られた粉末の粒度は、平均粒径が1.1μm、最大粒径が6.8μmであった。各特性を測定したところ、比表面積は15m/g、吸油量は66ml/100g、結晶子サイズd002は3.364Å、嵩密度は0.3g/cm、長径と短径の比は1.75であった。
【実施例4】
【0048】
軟化点350℃のメソフェ−ズピッチを不融化後、実施例1と同様の方法でオリエントミルとジェットミルを使用して乾式粉砕し、平均粒径3.5μmとした後、空気中徐々に昇温し、最高320℃で30分の処理を行い不融化した。
これを、窒素気流中900℃で焼成した後、アチソン炉で3000℃の黒鉛化処理をした。
得られた粉末を気流式分級機にて分級し、さらに細粒側を超音波振動フルイにより、目開き25mの篩いを通過させて、黒鉛質微粉末を得た。
得られた粉末の粒度は、平均粒径3.0μm、最大粒径12μmであった。各特性を測定したところ、比表面積は4.9m/g、吸油量は33ml/100g、結晶子サイズd002は3.364Å、嵩密度は0.9g/cm、長径と短径の比は1.75であった。
(比較例1)
【0049】
モザイク構造を有し、熱膨張率が5.7×10−6/℃の石炭ピッチ系生コ−クスをオリエントミルで平均粒径40〜60μm程度に粗粉砕後、デットミルでさらに粉砕し、平均粒径4μmとした。
この粉末を窒素雰囲気下1000℃で焼成した。ビ−ズミルにより、水を分散媒に使用し、微量の界面活性剤を添加し、混合分散させた状態で繰り返し処理をおこない、平均粒径0.8μm、最大粒径7μm以下になるまで湿式粉砕した。得られたスラリ−をバットに移し熱風乾燥機中で乾燥した。乾燥後、オリエントミルで解砕してから黒鉛ルツボに移し3000℃で黒鉛化したが、手で潰せないくらいの硬い数mmの凝集が複製し、目的とする黒鉛微粉末を得ることができなかった。
(比較例2)
【0050】
デイレ−トコークスをオリエントミル、インペラ−ミルで乾式粉砕後、ビ−ズミル(アシザワファインテック(株)製)にて湿式粉砕を行った。しかしながら何時間処理を続けても平均粒径は0.6〜1.1μmとなるも、最大粒径は逆に時間の経過とともに大きくなり、7μmを下回るものを得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素前駆物質を乾式粉砕し、更に湿式粉砕して得た微粉末を乾燥し、黒鉛化することを特徴とする人造黒鉛微粉末の製造法。
【請求項2】
炭素前駆物質を乾式粉砕して焼成し、更に湿式粉砕して得た微粉末を、乾燥し、黒鉛化することを特徴とする人造黒鉛微粉末の製造法。
【請求項3】
炭素前駆物質を乾式粉砕した微粉末を、黒鉛化することを特徴とする人造黒鉛微粉末の製造法。
【請求項4】
炭素前駆物質を乾式粉砕した微粉末を焼成し、黒鉛化することを特徴とする人造黒鉛微粉末の製造法
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの製造法で製造された人造黒鉛微粉末であって、平均粒径が1μm±0.5μm以下、かつ最大粒径が7μm以下で、長径と短径の比が2以下の一次粒子で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量70ml/100g以下、比表面積20m/g以下、嵩密度0.3g/cm以上であることを特徴とする人造黒鉛微粉末。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの製造法で製造された人造黒鉛微粉末であって、平均粒径が3μm±0.5μm以下、かつ最大粒径が12μm以下で、長径と短径の比が2以下の一次粒子で、結晶子サイズd002が3.37Å以下、DBP吸油量35ml/100g以下、比表面積5m/g以下、嵩密度0.9g/cm以上であることを特徴とする人造黒鉛微粉末。

【公開番号】特開2008−50245(P2008−50245A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258013(P2006−258013)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000228338)日本カーボン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】