説明

仕切材を内挿固設した光量調整材入り複層ガラス

【課題】分割された複数の光量調整材を配置する大面積の複層ガラスにおいて、端面に凹凸があっても、光量調整材同士が噛合って意匠が損われず、光量調整材が振動でずれず、更には任意の位置に光量調整材を部分的に配置したり、複数の異なる光量調整材を配置する事が可能な構造を提供する。
【解決手段】複層ガラス100の対向するスペーサー103a間に一つ以上の仕切材109を固設し、前記スペーサー103aと仕切材で囲まれる空気層107内に複数の光量調整材108を配置する事により大面積の光量調整材108入り複層ガラス100が製作可能になり、更には任意の位置に光量調整材108を部分的に配置したり、複数の異なる光量調整材108を配置する事が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対向するスペーサー間に仕切材を内挿固設し、スペーサーと仕切材で囲まれる空気層内に光量調整材を配置した複層ガラス関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複層ガラスの空気層内にアルミハニカム等の光量調整材配置して太陽光を拡散制御したり、装飾用として用いられる光量調整材入り複層ガラスが知られている。(例えば特許文献1)
【特許文献1】実開平5−89426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に述べた従来の光量調整材入り複層ガラスにおいて、一つの光量調整材の大きさに製造上の制限がある場合、大面積の光量調整材入り複層ガラスを製作するには分割された複数の光量調整材を配置する事になるが、光量調整材の端面に凹凸があると、光量調整材同士が噛合ってしまい意匠が損われたり、光量調整材が振動でずれてしまう等の欠点があった。更には任意の位置に光量調整材を部分的に配置したり、複数の異なる光量調整材を配置する事が困難であった。
【0004】
本発明は、従来の問題点を解消し安価で容易に製作出来る光量調整材入り複層ガラスを提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2枚のガラスの四周にコーナーキーにより四隅を接続したスペーサーを配置し、スペーサーとガラスの間はブチルゴム等からなる一次封着剤で封止し、スペーサー外周の空間はポリサルファイドやシリコンシーラント等の二次封着剤で封止される複層ガラスにおいて、前記複層ガラスの対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、前記スペーサーと仕切材で囲まれる空気層内に複数の光量調整材を配置する事により大面積の光量調整材入り複層ガラスが製作可能になり、更には任意の位置に光量調整材を部分的に配置したり、複数の異なる光量調整材を配置するが可能になる。
【0006】
本発明の一態様は、対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、この仕切材とスペーサーにより区切られた空気層内に複数の光量調整材を配置する事により、光量調整材同士が噛合って意匠を損う事がなく大面積の光量調整材入り複層ガラスを製作する事が出来る。
【0007】
又、本発明の他の態様は対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、この仕切材とスペーサーにより区切られた空気層内に種類の異なる複数の光量調整材を配置する事により、意匠的に変化に富む大面積の光量調整材入り複層ガラスを製作する事が出来る。
【0008】
又、本発明のさらなる態様として、対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、この仕切材とスペーサーにより区切られた空気層内一部に、一つ又は複数の光量調整材を配置する事により光量調整材がない透明部分と光量調整材のある部分を形成し、意匠的に変化に富む光量調整材入り複層ガラスとする事が出来る。
【0009】
仕切材の固設方法については、まず対向するスペーサーの対向面に小径の雌ネジ孔を穿いた後、先端に小径の雄ネジ部を設けた丸棒状の支持材を捩じ込んで固定しておき、他のスペーサーと共にコーナーキーを用いて四辺形状の枠体を組立てる。その後この枠体の片面にブチルゴム等からなる一次封着剤を貼付け、一次封着剤側を一面のガラス板に貼付け固定し仕切材とスペーサーにより形成された空気層内に光量調整材を適宜配置して行く。光量調整材を配置した後、スペーサーのもう一方の面に前記と同様にブチルゴム等からなる一次封着剤を貼付け、他面のガラス板を重ねて圧着する。圧着後、スペーサー外周に二次封着剤を充填し複層ガラスとする。
【0010】
仕切材と支持材のもう一つの態様としては、仕切材として新規の部材を使用せず、周囲のスペーサーとして使用している材料を、そのまま転用して製作を容易にすると共に、支持材として丸棒状ではなく断面六角形状で先端に小径のオネジが形成された市販されている部材を転用する事も出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一の実施形態に係る構成を図1〜図4に示す。図1は第一実施例の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図(光量調整材は図示せず。)、図4はコーナー部分の断面図(光量調整材は図示せず。)を示す。
【0012】
この光量調整材入り複層ガラス100は2枚のガラス板材101四周の周囲部102には、対向する2組の中空体のスペーサー103a、103bと四隅のコーナーキー104により四方枠が形成され、スペーサー103a、103bとガラス板間は一次封着材105によって封止されると共に、枠状体の外周部は二次封着材106によって封止されて、内部には空気層107が形成される。この空気層内に複数の光量調整材108が配置されるが、光量調整材108間には、一つ以上の仕切材109が前記の対向するスペーサー103aの間に支持材110によって固設されている。
【0013】
この光量調整材入り複層ガラス100を組み付ける順序は、まず対向するスペーサー103aの空気層の側面で幅方向の中央の所定位置に、対となるように雌ネジ孔111を穿ち、この雌ネジ孔111に丸棒状の支持材110の先端に形成した小径の雄ネジ部112を捩じ込み、支持材110をスペーサー103aに固定する。前記支持材110が固定された一方のスペーサー103a、及びこれと直交する2本のスペーサー103bとを二つのコーナーキーにより、コの字状の三辺枠を形成した後、中空の仕切材109を支持材110に差込む。次に他方のスペーサー103aに、残り二つのコーナーキーを差込み、コーナーキー他端とスペーサー103bの開放端、及び前記仕切材109の開放端と支持材110とを同時に差込み四方枠を形成する。
【0014】
尚、仕切材109の断面形状は図3に示すように矩形の中空形状とし、長辺はスペーサー103aの幅と略同じとすると共に、支持材111は丸棒状とし、丸棒断面の外径は前記仕切材109の短辺内接径と略同じ径とする事により、ガラス面内方向のガタツキを押える事が出来る。ガラス面外方向のガタツキは一次封着剤105の厚み分でコンマ数ミリと僅かなので、空気層107内で仕切材109が回転してずれる事もない。又、スペーサー103a、103b内部には図2に示すように乾燥剤113を充填しておき、スペーサー103a、103bの空気層側には、例えば複数列の小孔を形成しておく事により、空気層内の湿気を乾燥剤113が吸収するので空気層107内での結露を防止する。コーナーキー104の形状は、例えば図4に示すようにL型形状のプラスチィックで先端を斜めに形成してスペーサー103a、103bに挿入し易くする。
【0015】
光量調整材108はアルミ等からなるハニカム材で高さはスペーサー103a、スペーサー103bの幅と略同じ高さで、2枚のガラス101との隙間は一次封着剤105の厚み分で僅かな隙間を形成する。又、光量調整材108の外周はカッター等で切断されており切口の形状は不規則であるが、スペーサー103a、スペーサー103bと仕切材109とは平面で当接するので、周囲のハニカム形状が変形する事はない。ハニカム材のひとつのセルサイズは適宜選択でき意匠に富む光量調整材入り複層ガラス100が得られる。更には窓ガラスとして太陽光が当ると太陽光の入射角により太陽光を拡散したり、遮蔽する事ができる。尚、光量調整材の大きさは皆同じ大きさである必要はなく適宜大きさを変える事は自由にできる。
【0016】
本発明の第二の実施形態に係る構成を図5〜図7に示す。図5は第二の実施例の正面図、図6は図5のA−A断面図、図7は図5のB−B断面図(光量調整材は図示せず。)を示す。
【0017】
この光量調整材入り複層ガラス200は、前記光量調整材入り複層ガラス100とは三つの点で異なり、一つ目は空気層207内に配置された光量調整材の内、中段の光量調整材208bが上下段の208aとはセルの方向が異なり、光量調整材208aは六角形の平行な辺が垂直方向に配置されているのに対し、光量調整材208bは六角形の平行な辺が水平方向に配置されている。このように種類の異なる光量調整材を配置する事で変化に富んだ意匠が得られ、太陽光の拡散・遮蔽も変化させる事ができる。
【0018】
二つ目に異なる点は、仕切材209の断面形状が異なる。仕切材209は仕切材109が断面形状が矩形の中空形状であるのに対し、新規部材を使用せずにスペーサーを転用しているため、スペーサー203a、203bと同じ断面となっている。
【0019】
三つ目に異なる点は、支持材110が丸棒状の形状であるのに対し、支持材210の断面形状が六角断面形状であり、六角断面の対向する辺の幅は支持材210の短辺内接径と略同じになっており、前記実施例と同様にガラス面内方向のガタツキを押える事ができ、空気層207内で仕切材209が回転してずれる事もない。尚、スペーサー203aに穿つ雌ネジ孔211と支持材210の先端に形成した小径の雄ネジ部212は前記実施例と同一であり、雌ネジ孔211に支持材210の先端に形成した小径の雄ネジ部212を捩じ込み、支持材210をスペーサー203aに固定する。尚、仕切材と支持材の組合せは前記第一、第二の実施例のどちらかを組合せても良い。
【0020】
本発明の第三の実施形態に係る構成を図8に示す。図8は第三の実施例の正面図を示す。
【0021】
この光量調整材入り複層ガラス300は第一の実施例の光量調整材入り複層ガラス100の内、中段の光量調整材が無く上下段に光量調整材308が配置されている。このため人の目線に相当する高さ位置には光量調整材が無く透明感のある意匠が可能になり、上下の光量調整材308により太陽光の拡散・遮蔽も変化させる事ができる。
【0022】
本発明の第四の実施形態に係る構成を図9〜図12に示す。図9は第四の実施例の正面図、図10は図9のA−A断面図、図11は図9のB−B断面図、図12は図9のC−C断面図を示す。
【0023】
この光量調整材入り複層ガラス400は光量調整材としてアルミ板材等からなるルーバー材を使用したものである。ルーバー材は水平な横材415と垂直の縦材416を互いに格子点に切込みを入れ噛合わせたものである。光量調整材408a、光量調整材材408b、光量調整材材408cは、それぞれ横材の断面において傾斜角度が異なり、光量調整材408aは断面図において右斜めに傾斜し、光量調整材408bは水平、光量調整材材408cは左斜めに傾斜している。このように配置する事により上段の光量調整材材408aでC方向からの太陽光の入射を防ぎ、中段の光量調整材材408bではD方向からの景色が透過し、目線を遮らず透明感のある意匠となり、下段の光量調整材408cではE方向からの視界を遮る効果がある。
【0024】
本発明の第五の実施形態に係る構成を図13〜図14に示す。図13は第五の実施例の正面図、図14は図13のA−A断面図を示す。
【0025】
この光量調整材入り複層ガラス500は上段のみ光量調整材508が配置され、この光量調整材508は、横材515が断面三角形状の棒状アクリル透明樹脂等からなり、縦材516は、前記横材515が通過する穴を穿ったアクリル板材等からなり横材515とは接着剤等で固定されている。このように構成されているので図14のようにB方向から入射した太陽光はプリズム作用によりC方向に反射して室内天井を照明無しで明るくする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る光量調整材入り複層ガラスの正面図である。
【図2】図1の光量調整材入り複層ガラスのA−A断面図である。
【図3】図1の光量調整材入り複層ガラスのB−B断面図である。
【図4】図1の光量調整材入り複層ガラスのコーナー部分の断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る光量調整材入り複層ガラスの正面図である。
【図6】図5の光量調整材入り複層ガラスのA−A断面図である。
【図7】図5の光量調整材入り複層ガラスのB−B断面図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る光量調整材入り複層ガラスの正面図である。
【図9】本発明の第四の実施形態に係る光量調整材入り複層ガラスの正面図である。
【図10】図9の光量調整材入り複層ガラスのA−A断面図である。
【図11】図9の光量調整材入り複層ガラスのB−B断面図である。
【図12】図9の光量調整材入り複層ガラスのC−C断面図である。
【図13】本発明の第五の実施形態に係る光量調整材入り複層ガラスの正面図である。
【図14】図13の光量調整材入り複層ガラスのA−A断面図である。
【符号の説明】
【0027】
100、200、300、400、500 光量調整材入り複層ガラス
101、201、301、401、501 板ガラス
102、202、302、402、502 周囲部
103a、203a、303a、403a、503a スペーサー
103b、203b、303b、403b、503b スペーサー
104、204、304、404、504 コーナーキー
105、205、305、405、505 一次封着剤
106、206、306、406、506 二次封着剤
107、207、307、407、507 空気層
108、208a、202b、308、408a、408b、408c、508 光量調整材
109、209、309、409、509 仕切材
110、210、310、410、510 支持材
111、211、411、510 雌ネジ孔
112、212、412、512 雄ネジ部
113,213,413 乾燥剤
114,214,514 小孔
415a,415b,415c、515 横材
416a,416b,416c、516 縦材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラスの対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、前記スペーサーと仕切材で囲まれる空気層内に複数の光量調整材を配置する事を特徴とする光量調整材入り複層ガラス。
【請求項2】
前記複層ガラスの対向するスペーサーの空気層の側面で幅方向の中央の所定位置に、対となるように雌ネジ孔を穿ち、この雌ネジ孔に支持材110の先端に形成した小径の雄ネジ部を捩じ込み、支持材110をスペーサーに固定した事を特徴とする請求項1に記載の光量調整材入り複層ガラス。
【請求項3】
複層ガラスの対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、前記スペーサーと仕切材で囲まれる空気層内に種類の異なる複数の光量調整材を配置する事を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光量調整材入り複層ガラス。
【請求項4】
複層ガラスの対向するスペーサー間に一つ以上の仕切材を固設し、前記スペーサーと仕切材で囲まれる空気層内に光量調整材を配置しない部分と一つ又は複数の光量調整材を配置する事を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光量調整材入り複層ガラス。
【請求項5】
空気層内に配置する光量調整材がハニカム材で構成された事を特徴とする請求項1〜4項記載の光量調整材入り複層ガラス。
【請求項6】
空気層内に配置する光量調整材がルーバー材で構成された事を特徴とする請求項1〜4項記載の光量調整材入り複層ガラス。
【請求項7】
空気層内に配置する光量調整材が棒状のアクリル材と前記棒状のアクリル材が通過する穴を穿ったアクリル板材から構成された事を特徴とする請求項1〜4項記載の光量調整材入り複層ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−105898(P2010−105898A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300080(P2008−300080)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】