説明

他の1種のポリマーと組み合わせた、長鎖分岐(LCB)、ブロック、または相互連結エチレンコポリマー

核磁気共鳴により求めて、炭素原子1000個当たり約0.1から約2.0単位のアミル基、ならびに、DSC結晶度により求めて、ピーク融解温度、T(℃)、および融解熱、H(J/g)の両方を備え、ここで、TおよびHの数値は、関係式、T>(0.2143)+79.643、に相応する、エチレン性ポリマー。分取昇温溶離分別法を用いて、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるgpcBR分岐指数により求めて、0.05を超え、5未満のgpcBR値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5%が、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、米国特許仮出願第61/036329号(2008年3月13日に出願)に対する優先権の利益を主張し、この仮出願の開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
今日、製造され販売されているポリエチレンには多くのタイプがある。特に2つのタイプが、様々な製造業者によって製造され、大量に販売されている。これらの2つのタイプは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)および高圧フリーラジカルポリエチレン(通常、LDPEと呼ばれる)である。時折、ポリマーのユーザーは、これらの2つのタイプのポリエチレンを一緒にブレンドして、流動性または加工性のような性質を変えようと試みる。しかし、このブレンドは、また、他の物理的性質に欠陥を生じ得る。このため、LLDPEに類似の機械的性質を、またLDPEのそれに類似の加工性を有すれば、利点があると思われる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、今回、LLDPEとLDPEの両方の性能特性を有する新しいポリマーを見出した。
【0004】
一実施形態として、核磁気共鳴によって求めて、炭素原子1000個当たり少なくとも0.1個のアミル分岐、ならびに、DSC結晶度により求めて、最高ピーク融解温度、T(℃)、および融解熱、H(J/g)の両方を備え、ここで、TおよびHの数値は、関係式:
≧(0.2143)+79.643、好ましくは、T≧(0.2143)+81
に相応する、エチレン性ポリマーであって、約1モルパーセント未満のヘキセンコモノマー、および約0.5モルパーセント未満のブテン、ペンテン、もしくはオクテンコモノマー、好ましくは約0.1モルパーセント未満のブテン、ペンテン、もしくはオクテンコモノマーを有するエチレン性ポリマーが、特許請求される。
【0005】
前記エチレン性ポリマーは、約170J/g未満のエチレン性ポリマーの融解熱、および/または126℃未満のエチレン性ポリマーのピーク融解温度を有し得る。好ましくは、エチレン性ポリマーは、核磁気共鳴により求めて、検知できるメチルおよび/またはプロピル分岐を全く含まない。エチレン性ポリマーは、好ましくは、核磁気共鳴により求めて、炭素原子1000個当たり2.0単位以下のアミル基を含む。
【0006】
別の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定(Methyls per 1000 Carbons Detemination)により求めて、炭素原子1000個当たり約2個のメチルを超える分岐レベルを有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0007】
第3の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるg’により求めて、1未満、好ましくは0.95未満のg’値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0008】
第4の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるgpcBR分岐指数により求めて、0.05を超え、5未満のgpcBR値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0009】
第5の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定により求めて、炭素原子1000個当たり約2個のメチルを超える分岐レベルを有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0010】
第6の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるg’により求めて、1未満、好ましくは0.95未満のg’値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0011】
第7の実施形態として、分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるgpcBR分岐指数により求めて、0.05を超え、5未満のgpcBR値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマーが特許請求される。
【0012】
最後に、このようなエチレン性ポリマーの製造方法が特許請求され、この方法は、
A)第1反応器または多部分反応器の第1部分において、触媒の存在下でエチレンを重合して、DSC結晶度により求めて少なくとも50%の結晶度を有する線状エチレン系ポリマーを生成させるステップ;および
B)前記線状エチレン系ポリマーを、少なくとも1つの別の反応器または多部分反応器の後の部分において、フリーラジカル開始剤の存在下で、さらなるエチレンと反応させて、エチレン性ポリマーを生成させるステップ;
を含む。
【0013】
好ましくは、ステップ(B)の反応は、グラフト重合によって起こる。
【0014】
やはり好ましくは、ステップ(A)の触媒は、メタロセン触媒であり得る。極性化合物が反応プロセスに存在する、例えば、第1反応器、または多部分反応器の第1部分に存在する場合、このような極性化合物はメタロセン触媒の活性を阻害しない。
【0015】
前記要約、さらには以下の詳細な説明は、添付図に関連させて読まれる時に、よりよく理解される。しかし、本発明は、示された通りの配置構成および手段に限定されないことが理解されるべきである。図における要素は、必ずしも一定の率で拡大または縮小されておらず、むしろ、本発明の原理を明瞭に示すことに重点が置かれている。さらに、図において、類似の参照数字は、いくつかの図の全体を通して相応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】線状エチレン系ポリマー100からの、本発明のエチレン性ポリマー400の生成ステップを示す概略図である。
【図1B】線状エチレン系ポリマー100からの、本発明のエチレン性ポリマー400の生成ステップを示す概略図である。
【図1C】線状エチレン系ポリマー100からの、本発明のエチレン性ポリマー400の生成ステップを示す概略図である。
【図1D】線状エチレン系ポリマー100からの、本発明のエチレン性ポリマー400の生成ステップを示す概略図である。
【図2】低密度ポリエチレン(LDPE)の市販の30種の樹脂についての密度と融解熱との間の関係のプロットである。
【図3】実施例1、比較例1(CE1)、およびポリマー2(P2)について、DSC結晶度分析によって求めた、熱流 vs.温度のプロットである。
【図4】実施例2、比較例1(CE1)、およびポリマー1(P1)について、DSC結晶度分析によって求めた、熱流 vs.温度のプロットである。
【図5】実施例1および比較例1の分析的昇温溶離分別分析により求めた、温度 vs.溶離したポリマー試料の重量パーセントのプロットである。
【図6】実施例2、比較例1、およびポリマー1の分析的昇温溶離分別分析により求めた、温度 vs.溶離したポリマー試料の重量パーセントのプロットである。
【図7】実施例1〜5、比較例1および2、ならびに市販樹脂1〜30についての、最高ピーク融解温度 vs.融解熱のプロット、ならびに実施例、比較例、および市販樹脂の間の直線による境界画定である。
【図8】実施例3について、分取昇温溶離分別法を用いる、フラクションA〜Dに対する温度分割を示す。
【図9】実施例3の合わせたフラクションABおよびCDに対する温度分割を示す。
【図10】実施例3〜5のフラクションABおよびCDの重量パーセントを示す。
【図11】実施例3〜5のフラクションABおよびCDについて、P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定分析により求めた、炭素1000個当たりのメチル(鎖の末端について補正) vs.重量平均溶離温度のプロットである。
【図12】TREFによるクロス分別分析を実施するためのクロス分別装置の概略図を示す。
【図13(a)】TREFによるクロス分別法を用い、溶離した重量分率に対する3Dおよび2D赤外(IR)応答曲線 vs.log(分子量)およびATREF温度である。(aおよびb)は、ポリマー3と比較例2との33:67重量パーセントの物理的ブレンドを示す。(cおよびd)は、実施例5のIR応答曲線についての、3Dおよび2D図をそれぞれ示す。(a)および(b)は、ブレンド試料の離散的な成分を示し、(c)および(d)は、連続的なフラクションを示す(離散的成分が存在しない)。
【図13(b)】TREFによるクロス分別法を用い、溶離した重量分率に対する3Dおよび2D赤外(IR)応答曲線 vs.log(分子量)およびATREF温度である。(aおよびb)は、ポリマー3と比較例2との33:67重量パーセントの物理的ブレンドを示す。(cおよびd)は、実施例5のIR応答曲線についての、3Dおよび2D図をそれぞれ示す。(a)および(b)は、ブレンド試料の離散的な成分を示し、(c)および(d)は、連続的なフラクションを示す(離散的成分が存在しない)。
【図13(c)】TREFによるクロス分別法を用い、溶離した重量分率に対する3Dおよび2D赤外(IR)応答曲線 vs.log(分子量)およびATREF温度である。(aおよびb)は、ポリマー3と比較例2との33:67重量パーセントの物理的ブレンドを示す。(cおよびd)は、実施例5のIR応答曲線についての、3Dおよび2D図をそれぞれ示す。(a)および(b)は、ブレンド試料の離散的な成分を示し、(c)および(d)は、連続的なフラクションを示す(離散的成分が存在しない)。
【図13(d)】TREFによるクロス分別法を用い、溶離した重量分率に対する3Dおよび2D赤外(IR)応答曲線 vs.log(分子量)およびATREF温度である。(aおよびb)は、ポリマー3と比較例2との33:67重量パーセントの物理的ブレンドを示す。(cおよびd)は、実施例5のIR応答曲線についての、3Dおよび2D図をそれぞれ示す。(a)および(b)は、ブレンド試料の離散的な成分を示し、(c)および(d)は、連続的なフラクションを示す(離散的成分が存在しない)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、開示されている組成物および方法を、当業者が製造し用いることを可能にするために提供される。記載されている一般的原理は、開示されている組成物および方法の精神および範囲から逸脱することなく、詳細に記載されているもの以外の実施形態および応用に適用され得る。開示されている組成物および方法は、示されている実施形態に限定されるとは意図されておらず、開示されている原理および特徴に合致する最も広い範囲に適合させられるべきである。
【0018】
現在、高結晶度のエチレン系ポリマーが、高度に長鎖分岐した低結晶度のエチレン系ポリマーと共に用いられる時、エチレン系ポリマーの物理的性能の全ての利点と、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの好ましい全ての加工特性とを忠実に併せ持つブレンドを生み出す機械的手段は存在しない。開示されているのは、この欠点に対処する組成物および方法である。
【0019】
エチレン系ポリマーと高度に分岐したエチレン系ポリマーとの単なる物理的ブレンドを凌ぎ超える物理的性質の向上を達成するために、2つの別個の構成成分(エチレン系ポリマーおよび高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー)の結合が、エチレン系ポリマー成分に類似の、またはより良好な物理的性質を有しながら同時に、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー成分に類似の加工特性を保持するエチレン性ポリマー材料を生じることが見出された。開示されているエチレン性ポリマーの構造は、エチレン系ポリマーのラジカル化されたサイトにグラフトした、高度に分岐したエチレン系ポリマー置換基、または、エチレン系ポリマーのラジカル化されたサイトに由来する、フリーラジカル重合により生成したエチレン系長鎖ポリマー分岐を含むと考えられる。開示されている組成物は、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの長鎖分岐を有するエチレン系ポリマーを含むエチレン性ポリマーである。
【0020】
開示されているエチレン性ポリマーの物理的特性および加工特性の組合せは、エチレン系ポリマーと、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとの単なるブレンドでは、認められない。開示されているエチレン性ポリマーの独特の化学構造は、エチレン系ポリマーと、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー置換基とが連結されているので、有利である。結合した時、2つの異なる結晶度の材料は、構成成分の単なるブレンドとは異なるポリマー材料を生成する。異なる2組の分岐および結晶度の材料の結合体は、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーより良好な物理的性質、およびエチレン系ポリマーより良好な加工性を有するエチレン性ポリマーを生じる。
【0021】
開示されているエチレン性ポリマーのメルトインデックスは、ASTM 1238−04(2.16kg、190℃)により測定して、約0.01から約1000g/10分であり得る。
【0022】
エチレン系ポリマー
適切なエチレン系ポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセンまたはバナジウム系シングルサイト触媒、あるいは幾何拘束型シングルサイト触媒により製造できる。線状エチレン系ポリマーの例には、高密度ポリエチレン(HDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれる。適切なポリオレフィンには、これらに限らないが、エチレン/ジエンインターポリマー、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、エチレンホモポリマー、およびこれらのブレンドが含まれる。
【0023】
適切な不均一線状エチレン系ポリマーには、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超超低密度ポリエチレン(ULDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)が含まれる。例えば、チーグラー−ナッタ触媒を用いて製造される、いくつかのインターポリマーは、約0.89から約0.94g/cmの密度を有し、ASTM 1238−04(2.16kg、190℃)により測定して、約0.01から約1,000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。好ましくは、メルトインデックス(I)は、約0.1から約50g/10分である。不均一線状エチレン系ポリマーは、約3.5から約4.5の分子量分布(M/M)を有し得る。
【0024】
線状エチレン系ポリマーは、少なくとも50モルパーセントの重合したエチレンモノマーがポリマー中に存在する限り、1種または複数のα−オレフィンコポリマーに由来する単位を含み得る。
【0025】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、約0.94から約0.97g/cmの範囲の密度を有し得る。HDPEは、通常、エチレンのホモポリマー、またはエチレンと低レベルの1種または複数のα−オレフィンコポリマーとのインターポリマーである。HDPEは、エチレンと1種または複数のα−オレフィンコポリマーとの様々なコポリマーに比べて、比較的少数の分岐鎖を含む。HDPEは、1種または複数のα−オレフィンコモノマーに由来する5モル%未満の単位を含み得る。
【0026】
線状低密度ポリエチレンおよび超超低密度ポリエチレン(ULDPE)のような線状エチレン系ポリマーは、LDPEのような通常の低結晶度、高分岐エチレン系ポリマーとは対照的に、長鎖分岐のないことによって特徴付けられる。LLDPEのような不均一線状エチレン系ポリマーは、米国特許第4076698号(Andersonら)に開示されているような方法によって、チーグラー−ナッタ触媒の存在下で、エチレンと1種または複数のα−オレフィンコモノマーとの、溶液、スラリー、または気相重合により製造され得る。これらの部類の材料の両方、およびそれらの製造方法の当を得た説明は、米国特許第4950541号(Taborら)に見出される。
【0027】
α−オレフィンコモノマーは、例えば、3から20個の炭素原子を有し得る。好ましくは、α−オレフィンコモノマーは3から8個の炭素原子を有し得る。代表的なα−オレフィンコモノマーには、これらに限らないが、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンが含まれる。インターポリマーである線状エチレン系ポリマーの市販品の例には、ATTANE(商標)超低密度線状ポリエチレンコポリマー、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂、およびFLEXOMER(商標)超低密度ポリエチレンが含まれ、全て、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0028】
コポリマーは、α,ω−オレフィンコモノマーを組み入れていてもよい。α,ω−オレフィンコモノマーとして用いられ得る直鎖または分岐状の非環状ジエン化合物の例には、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、およびこれらの低級アルキル置換誘導体が含まれる。単環の脂環式ジエン化合物の例には、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニル−シクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、およびこれらの低級アルキル置換誘導体が含まれる。他の適切なジエンには、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン(ノルボルナジエン)、ノルボルナジエンのダイマー、および歪んだ環の2つの2重結合を有するジオレフィン(例えば、2,5−ノルボルナジエンとシクロペンタジエニル−1,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレンとの反応によって得られる反応生成物)が含まれる。似ているが、シクロペンタジエンとのさらなる縮合による、より多くの架橋環単位の付加により得られる化合物もまた、用いることができる。
【0029】
さらなる態様において、エチレンホモポリマー(すなわち、如何なるコモノマーも、したがってまた短鎖分岐も全く含まない高密度エチレンホモポリマー)に関連して用いられる時、用語「均一エチレンポリマー」または「均一線状エチレンポリマー」が、このようなポリマーを示すために用いられ得る。
【0030】
一態様において、用語「実質的に線状のエチレンポリマー」は、用いられる場合、長鎖分岐を有する、均一に分岐したエチレンポリマーを表す。この用語は、線状ポリマー骨格を有する、不均一にまたは均一に分岐したエチレンポリマーを表さない。実質的に線状のエチレンポリマーでは、長鎖分岐は、ポリマー骨格とほぼ同じコモノマー分布を有し、長鎖分岐は、それらが結び付くポリマー骨格の長さとほぼ同じ長さであるように長いということがあり得る。実質的に線状のエチレンポリマーのポリマー骨格は、約0.01個の長鎖分岐/1000個の炭素から、約3個の長鎖分岐/1000個の炭素、より好ましくは、約0.01個の長鎖分岐/1000個の炭素から、約1個の長鎖分岐/1000個の炭素、特に、約0.05個の長鎖分岐/1000個の炭素から、約1個の長鎖分岐/1000個の炭素により置換されている。
【0031】
均一に分岐したエチレンポリマーは、短鎖分岐を有し、比較的大きな組成分布幅指数(CDBI)によって特徴付けられる均一エチレンポリマーである。すなわち、このエチレンポリマーは、50パーセント以上、好ましくは70パーセント以上、より好ましくは90パーセント以上のCDBIを有し、測定できる高密度(結晶性)ポリマーフラクションが本質的にない。
【0032】
CBDIは、全モルコモノマー含量の中央値の50パーセント以内のコモノマー含量を有するポリマー分子の重量パーセントとして定義され、ベルヌーイ分布に期待されるコモノマー分布に対する、ポリマー中のコモノマー分布の比較を表す。ポリオレフィンのCDBIは、例えば、Wildら、Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.、20巻、441頁(1982年);L.D.Cady、「The Role of Comonomer Type and Distribution in LLDPE Product Performance」、SPE Regional Technical Conference、Quaker Square Hilton、Akron、オハイオ州、107〜119頁(10月1〜2日、1985年);または、米国特許第4798081号(Hazlittら)および米国特許第5008204号(Stehling)に記載されている、例えば昇温溶離分別(「TREF」)のような、当技術分野において知られている技法により得られるデータから簡便に計算できる。しかし、TREF法は、CDBIの計算におけるパージ量を含まない。より好ましくは、ポリマーのコモノマー分布は、例えば、米国特許第5292845号(Kawasakiら)、およびJ.C.Randall、Rev.Macromol.Chem.Phys.、C29、201〜317頁に記載されている技法に従って、13C NMR分析を用いて求められる。
【0033】
用語「均一に分岐した線状エチレンポリマー」および「均一に分岐した線状エチレン/α−オレフィンポリマー」は、オレフィンポリマーが、均一な、または狭い短分岐分布を有する(すなわち、ポリマーが比較的大きなCDBIを有する)が、長鎖分岐を有さないことを意味する。すなわち、線状エチレン系ポリマーは、長鎖分岐のないことによって特徴付けられる、均一エチレンポリマーである。このようなポリマーは、一様な短鎖分岐分布(均一に分岐した)をもたらす重合法(例えば、Elstonによって記載されたような)を用いて製造できる。Elstonによって記載された重合法では、可溶性バナジウム触媒系がこのようなポリマーを製造するために用いられる;しかし、報告によれば、他に、例えば、Mitsui Petrochemical IndustriesおよびExxon Chemical Companyは、Elstonによって記載されたポリマーに類似の均一構造を有するポリマーを製造するために、いわゆるシングルサイト触媒系を用いている。さらに、Ewenら、および米国特許第5218071号(Tsutsuiら)は、均一に分岐した線状エチレンポリマーの製造に、メタロセン触媒を用いることを開示する。均一に分岐した線状エチレンポリマーは、通常、3未満、好ましくは2.8未満、より好ましくは2.3未満の分子量分布(M/M)を有するとして特徴付けられる。
【0034】
線状エチレン系ポリマーを論ずる際には、用語「均一に分岐した線状エチレンポリマー」または「均一に分岐した線状エチレン/α−オレフィンポリマー」は、非常に多数の長鎖分岐を有することが当業者に知られている高圧法分岐ポリエチレンを表さない。一態様において、用語「均一線状エチレンポリマー」は、線状エチレンホモポリマーと線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーの両方を一般的に表す。例えば、線状エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、短鎖分岐を有し、α−オレフィンは、通常、少なくとも1種のC〜C20α−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテン)である。
【0035】
長鎖分岐の存在は、エチレンホモポリマーでは、13C核磁気共鳴(NMR)分光法を用いることによって求めることができ、Randall(Rev.Macromol.Chem.Phys.、C29、V.2&3、285〜297頁)によって記載された方法を用いて定量化される。エチレン/1−オクテンインターポリマーを含めて、エチレンポリマーにおける長鎖分岐の存在を決定するために有用な、別の知られている技法がある。このような方法の代表的な2つは、低角レーザー光散乱検出器と結び付けたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LALLS)、および示差粘度計検出器と結び付けたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−DV)である。長鎖分岐の検出のためにこれらの技法を用いること、および基本的な理論は、文献に詳しく資料が提供されている。例えば、Zimm,G.H.およびStockmayer,W.H.、J.Chem.Phys.、17、1301頁(1949年)、および、Rudin,A.、Modern Methods of Polymer Characterization、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1991年)103〜112頁を参照。
【0036】
さらなる態様において、実質的に線状のエチレンポリマーは、均一に分岐したエチレンポリマーであり、米国特許第5272236号および米国特許第5278272号(どちらも、Laiら)に開示されている。均一に分岐した、実質的に線状のエチレンポリマーは、Midland(ミシガン州)のThe Dow Chemical Companyから、AFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマーおよびENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマーとして入手可能である。均一に分岐した、実質的に線状のエチレンポリマーは、欧州特許第0416815号(Stevensら)に開示されている方法のように、幾何拘束型触媒の存在の下での、エチレンと1種または複数の任意選択のα−オレフィンコモノマーとの、溶液、スラリー、または気相重合により製造できる。
【0037】
用語「不均一」および「不均一に分岐した」は、エチレンポリマーを、エチレンとコモノマーの様々なモル比を有するインターポリマー分子の混合物として特徴付けできることを意味する。不均一に分岐した線状エチレンポリマーは、The Dow Chemical Companyから、DOWLEX(商標)線状低密度ポリエチレン、およびATTANE(商標)超低密度ポリエチレン樹脂として入手可能である。不均一に分岐した線状エチレンポリマーは、米国特許第4076698号(Andersonら)に開示されているような方法によって、チーグラー−ナッタ触媒の存在の下での、エチレンと1種または複数の任意選択のα−オレフィンコモノマーとの、溶液、スラリーまたは気相重合により製造できる。不均一に分岐したエチレンポリマーは、通常、約3.5から約4.1の分子量分布(M/M)を有するとして特徴付けられ、このため、構成短鎖分岐分布および分子量分布の両方の点で、実質的に線状のエチレンポリマーおよび均一に分岐した線状エチレンポリマーと区別される。
【0038】
エチレン系ポリマーのブルックフィールド粘度は、試験法のセクションに記載のブルックフィールド粘度法を用い、177℃で測定して、約20から約55,000,000cPである。
【0039】
全般に、高結晶性のエチレン系ポリマーは、約0.89g/cm以上、好ましくは約0.91g/cm以上で、好ましくは約0.97g/cm以下の密度を有する。好ましくは、これらのポリマーは、約0.89から約0.97g/cmの密度を有する。全ての密度は、試験法のセクションに記載の密度法によって求められる。
【0040】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)は、エチレンモノマーを重合させるためにフリーラジカル化学反応を用いる高圧法を用いて製造できる。ポリマーの典型的な密度は、約0.91から約0.94g/cmである。低密度ポリエチレンは、約0.01から約150g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。LDPEのような高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーは、また、高圧法エチレンポリマーとも呼ばれることがあり、このポリマーが、フリーラジカル開始剤、例えば過酸化物を用いて、13,000psigを超える圧力のオートクレーブまたは管型反応器において、部分的に、または全体として、単独重合または共重合されることを意味している(例えば、米国特許第4599392号(McKinneyら)を参照)。この方法は、長鎖分岐を含めて、かなりの分岐を有するポリマーを生成する。
【0041】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーは、通常、エチレンのホモポリマーである。しかし、このポリマーは、少なくとも50モルパーセントの重合したエチレンモノマーがポリマー中に存在するならば、1種または複数のα−オレフィンコポリマーに由来する単位を含み得る。
【0042】
高度に分岐したエチレン系ポリマーを生成するのに用いられ得るコモノマーには、これらに限らないが、通常20個以下の炭素原子を有するα−オレフィンコモノマーが含まれる。例えば、α−オレフィンコモノマーは、例えば、3から10個の炭素原子を有し得る;あるいは、代わりに、α−オレフィンコモノマーは、例えば、3から8個の炭素原子を有し得る。例示的なα−オレフィンコモノマーには、これらに限らないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、および4−メチル−1−ペンテンが含まれる。代わりのものとして、例示的なコモノマーには、これらに限らないが、α,β−不飽和C〜C−カルボン酸、特に、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸、α,β−不飽和C〜C−カルボン酸の誘導体、例えば、不飽和C〜C15−カルボン酸のエステル(特に、C〜C−アルカノールのエステル)または無水物、特に、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルメタクリラート、ter−ブチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、2−エチルへキシルアクリラート、tert−ブチルアクリラート、メタクリル酸無水物、マレイン酸無水物、およびイタコン酸無水物が含まれる。代わりとなる別のものとして、例示的コモノマーには、これらに限らないが、ビニルカルボキシラート、例えば、ビニルアセタートが含まれる。代わりとなる別のものとして、例示的コモノマーには、これらに限らないが、n−ブチルアクリラート、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0043】
方法
エチレン系ポリマーは、高度に分岐したエチレン系ポリマーとの反応プロセスより前に、または独立して、生成され得る。開示される別の方法では、エチレン系ポリマーは、管式反応器またはオートクレーブ反応器のような十分に撹拌される反応器内で、in situに、高度に分岐したエチレン系ポリマーの存在下で、生成され得る。高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーは、エチレンの存在下で生成される。
【0044】
エチレン性ポリマーは、エチレンの存在下で生成される。図1は、生成している実施形態のエチレン性ポリマーの、ラジカル化された線状エチレン系ポリマーサイトから長鎖分岐を生成させるための、エチレンのフリーラジカル重合についての一般的説明を与える。エチレン系ポリマー、置換基の高度に分岐したエチレン系ポリマー、および開示のエチレン性ポリマーへのこれらの結合体の生成のための他の実施形態の方法が、存在し得る。
【0045】
実施形態の方法の第1ステップにおいて、図1Aに示されるエチレン系ポリマー100が生成される。エチレン系ポリマー100は、これらに限らないが、気相重合法、スラリー重合法、および溶液系重合法を含めて、いくつかの異なるポリマープロセスによって生成され得る。ある実施形態では、エチレン系ポリマー100は、別のプロセスにおいて生成される。エチレン系ポリマー100の形をとり得るポリマーの例には、HDPE、LLDPE、ULDPE、およびVLDPEが含まれる。
【0046】
実施形態の方法の第2ステップにおいて、エチレン系ポリマー100は、図1Bに示される、引き抜き可能な水素101をさらに含む。エチレン系ポリマー100は、ある区域(例えば、反応器)に入り、そこでは、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー300への、エチレンモノマー200のフリーラジカル重合が支持される。
【0047】
このステップの間のある時点で、フリーラジカルを有する分子、例えば過酸化物開始剤の開裂生成物、または成長している高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー鎖301が、引き抜き可能な水素101を引き抜くことによってエチレン系ポリマー100と相互作用し、フリーラジカルをエチレン系ポリマー100に移動させる。エチレン系ポリマー100から、引き抜き可能な水素101を引き抜く方法には、これらに限らないが、ホモリシス開裂分子(例えば、ペルオキシド含有化合物またはアゾ−含有化合物)によって、あるいは外部の放射線によって生成したフリーラジカルとの反応が含まれる。
【0048】
実施形態の方法の第3ステップにおいて、エチレン系ポリマー100は、図1Cに示されるように、水素引き抜きの後のラジカル化したサイト102をさらに含む。方法のこの時点で、エチレンの存在下で、成長している高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー鎖301、またはエチレンモノマー200が、ラジカル化したサイト102と相互作用して、長鎖分岐に結び付く(停止により)、または長鎖分岐を生成する(重合を通じて)。図1Bと1Cの間の反応は、同一のエチレン系ポリマーで数回起こり得る。
【0049】
図1Dは、実施形態のエチレン性ポリマー400の説明を示す。実施形態のエチレン性ポリマー400線状部分401は、得られるポリマーで、多くの長鎖分岐403を含まない部分である。開示のエチレン性ポリマー400の分岐部分402は、得られるポリマーで、多くの長鎖分岐403を実際に含む部分である。
【0050】
実施形態の方法において、エチレン系ポリマーは、実施形態のエチレン性ポリマーを生成させるために用いられる反応プロセスにとって外部で準備され、フリーラジカル重合条件の下で、エチレンの存在下で、一般的な反応器内で一緒にされ、プロセス条件の下に置かれ、反応物が実施形態のエチレン性ポリマーの生成を実施するようにする。
【0051】
別の実施形態のプロセスにおいて、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーは、どちらも、同じプロセスの異なる前方部分において製造され、次いで、そのプロセスの共通の下流部分で、フリーラジカル重合条件の下で、エチレンの存在下で、一緒にされる。エチレン系ポリマーと置換基の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとは、別個の前方反応区画またはゾーンにおいて、例えば、別個のオートクレーブ、または管式反応器の上流部分において、製造される。次いで、これらの前方反応区画またはゾーンからの生成物は、下流の反応区画またはゾーンに送られ、実施形態のエチレン性ポリマーの生成を容易にするように、フリーラジカル重合条件の下で、エチレンの存在下で、一緒にされる。あるプロセスでは、開示されているエチレン性ポリマーを生成するための、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの生成およびエチレン系ポリマーへのグラフトの両方、ならびにエチレンモノマーとエチレン系ポリマーとの直接反応を容易にするために、追加の新鮮なエチレンが、前方反応区画またはゾーンのプロセス下流に加えられる。ある別のプロセスでは、前方反応区画またはゾーンからの生成物流の少なくとも一方が、下流の反応を阻害し得る如何なる残留物または副生成物も中和するために、下流の反応区画またはゾーンに達する前に処理される。
【0052】
実施形態のin situ法では、エチレン系ポリマーが、第1もしくは前方反応区画またはゾーン、例えば、第1オートクレーブまたは管式反応器の上流部分において生成される。次いで、得られる生成物流は、フリーラジカル重合条件でエチレンが存在する下流の反応区画またはゾーンに送られる。これらの条件は、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの生成、およびエチレン系ポリマーへのグラフトの両方を支えるので、実施形態のエチレン性ポリマーを生成させる。ある実施形態の方法では、フリーラジカル生成化合物が、グラフト反応を容易にするために、下流の反応区画またはゾーンに添加される。ある別の実施形態の方法では、開示されているエチレン性ポリマーを生成するための、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの生成およびエチレン系ポリマーへのグラフトの両方、ならびにエチレンモノマーとエチレン系ポリマーとの反応を容易にするために、追加の新鮮なエチレンが、前方反応区画またはゾーンのプロセス下流に添加される。ある実施形態の方法では、前方反応区画またはゾーンからの生成物流は、開示のエチレン性ポリマーを生成するための、高度に分岐したエチレン系ポリマーの生成、エチレン系ポリマーへの高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーのグラフト、またはエチレンモノマーとエチレン系ポリマーとの反応を阻害し得る、前の反応による如何なる残留物または副生成物も中和するために、下流の反応区画またはゾーンに達する前に処理される。
【0053】
エチレン系ポリマーを製造するために、気相重合法が用いられ得る。気相重合反応は、通常、ガス状のエチレン、水素、触媒系、例えば、チタン含有触媒、および任意選択で、1種または複数のコモノマーを流動床反応器に連続的に供給して、低圧で実施される。このようなシステムは、通常、約300から約350psiの圧力、および約80から約100℃の温度で運転される。
【0054】
エチレン系ポリマーを製造するために、液相重合法が用いられ得る。通常、このようなプロセスは、ループ反応器または球形反応器のような十分に撹拌される反応器で、約150から約575℃、好ましくは約175から約205℃の温度で、また約30から約1000psi、好ましくは約30から約750psiの圧力で、実施される。このようなプロセスにおける滞留時間は、約2から約20分、好ましくは約10から約20分である。エチレン、溶媒、触媒、および任意選択で、1種または複数のコモノマーが、反応器に連続的に供給される。これらの実施形態における例示的な触媒には、これらに限らないが、チーグラー−ナッタ、幾何拘束型、およびメタロセン触媒が含まれる。例示的な溶媒には、これらに限らないが、イソパラフィンが含まれる。例えば、このような溶媒は、ISOPAR E(ExxonMobil Chemical Co.、ヒューストン、テキサス州)の名称で市販されている。結果として得られるエチレン系ポリマーおよび溶媒の混合物は、次いで、反応器から取り出され、ポリマーが分離される。溶媒は、通常、溶媒回収ユニット、すなわち、熱交換器および蒸気液体分離器ドラムにより回収され、重合システムに戻され再利用される。
【0055】
任意の適切な方法が、エチレン系ポリマーを、それが高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーと反応し得る反応器へ、供給するために使用され得る。例えば、エチレン系ポリマーが気相プロセスを用いて製造される場合には、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー反応器圧力を超える圧力で、エチレン系ポリマーを溶かすだけ少なくとも十分に高い温度で、また高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー反応器へ供給する前に過度の粘度にならない濃度で、エチレン系ポリマーは、エチレンに溶かされ得る。
【0056】
高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーを製造するために、フリーラジカルで開始される高圧重合法が、通常、用いられる。フリーラジカルで開始される高圧重合法の2つの異なるタイプが知られている。第1のタイプでは、1または複数の反応ゾーンを有する、撹拌式オートクレーブ容器が用いられる。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤またはモノマーフィードのための、あるいは両方のための、いくつかの注入箇所を有する。第2のタイプでは、ジャケット付きの管が、反応器として用いられ、これは、1つまたは複数の反応ゾーンを有する。限定ではないが適切な反応器の長さは、約100から約3000メートル、好ましくは約1000から約2000メートルである。どちらのタイプの反応器でも、反応ゾーンの始まりは、反応の開始剤、エチレン、テロマー、(1種または複数の)コモノマー、さらにはこれらの任意の組合せのいずれかのサイド注入によって定められる。高圧プロセスは、それぞれが1つ複数または複数の反応ゾーンを含む、オートクレーブもしくは管式反応器において、またはオートクレーブおよび管式反応器の組合せで、実施され得る。
【0057】
実施形態の方法において、触媒または開始剤は、フリーラジカル重合が引き起こされる反応ゾーンの前で注入される。別の実施形態の方法では、エチレン系ポリマーは、反応器システムの前部で反応システムに供給されてもよく、そのシステム自体の内部では生成されない。触媒活性の終結は、反応のフリーラジカル重合部分の高い反応器温度の組合せによって、あるいは、イソプロパノール、水のような極性溶媒の混合物、または分岐状もしくは無分岐のアルカンのような通常の開始剤溶媒に溶かされた開始剤を反応器に供給することによって、達成され得る。
【0058】
実施形態の方法は、転化効率を向上させるために、プロセスリサイクルループを含み得る。ある実施形態の方法では、エチレン系ポリマーもしくは高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーのいずれかの重合を阻害し得る、または開示されているエチレン性ポリマーを生成する反応を阻害し得る、前の反応サイクルからの残留物または副生成物を中和するために、リサイクルループは、処理され得る。ある実施形態の方法では、新鮮なモノマーがこの流れに加えられる。
【0059】
エチレン系ポリマーまたは高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの製造に用いられるエチレンは、精製されたエチレンであり得るが、これは、ループリサイクル流から極性成分を除去することによって、または新鮮なエチレンだけがエチレン系ポリマーを製造するために用いられるような反応システム構成を用いることによって、得られる。高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーを製造するために、精製されたエチレンが必要とされることは典型的ではない。このような場合、リサイクルループからのエチレンが使用され得る。
【0060】
実施形態の方法は、エチレン系ポリマーの存在下でおけるエチレンの単独重合、あるいはエチレン系ポリマーの存在下でおけるエチレンと1種または複数の他のコモノマーとの共重合のいずれかに用いられ得るが、但し、これらのモノマーが、高圧条件におけるフリーラジカル条件の下で、エチレンと共重合して、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーを生成するという条件付きである。
【0061】
連鎖移動剤(CTA)またはテローゲン(telogen)が、通常、フリーラジカル重合プロセスにおいてメルトインデックスを制御するために用いられる。連鎖移動は、成長しているポリマー鎖の停止を含むので、ポリマー材料の最終的な分子量を制限する。通常、連鎖移動剤は、成長しているポリマー鎖と反応し、鎖の重合反応を停止させる、水素原子ドナーである。高圧フリーラジカル重合では、これらの作用剤は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、アルデヒド、ケトンまたはアルコールのような、異なる多くのタイプであり得る。使用され得る通常のCTAには、これらに限らないが、プロピレン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、メチルエチルケトン、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、およびイソプロパノールが含まれる。プロセスにおいて用いられるCTAの量は、全反応混合物の約0.03から約10重量パーセントである。
【0062】
ポリマーのメルトインデックス(MIまたはI)は、分子量とは逆の関係にあり、連鎖移動剤の濃度を操作することによって制御される。フリーラジカル重合では、水素原子を供与した後、CTAは、新しいポリマー鎖を開始させるように、モノマーと、またはすでに生成したオリゴマーもしくはポリマーと反応できるラジカルを生成する。これは、連鎖移動剤に存在する如何なる官能基も、ポリマー鎖に導入されることを意味する。多数のCTA,例えば、オレフィン性不飽和結合を有するプロピレンおよび1−ブテンは、また、それら自体、共重合反応を通じても、ポリマー鎖に組み込まれ得る。連鎖移動剤の存在下で製造されたポリマーは、加工性、光学的性質(例えば、ヘーズおよび透明性)、密度、靱性、降伏点、フィルムの引張りおよび引裂き強さのような、かなりの数の物理的性質が改質される。
【0063】
水素は、高圧フリーラジカル重合での、また高結晶性エチレン系ポリマーの製造において、連鎖移動剤であることが示されている。開示されている方法で反応ゾーンにおいて行われる分子量の制御は、触媒または開始剤を注入する反応ゾーンに水素を供給することによって実施され得る。最終製品のメルトインデックスの制御は、フリーラジカル重合が起こる反応ゾーンに連鎖移動剤を供給することによって、実施され得る。フリーラジカル連鎖移動剤のフィードは、反応ゾーンへの直接注入によって、または反応器の前部へのそれらの供給によって、実施され得る。ある実施形態の方法では、プロセスの前部末端でのCTAの過度の蓄積を防ぐために、リサイクル流から過剰のCTAを取り除くこと、または注入を制限することが必要であり得る。
【0064】
エチレン系ポリマーを製造するために通常用いられるフリーラジカル開始剤は、酸素(これは、重合性モノマーの重量に対して、0.0001と0.005wt%の間の通常の量で、管反応器において使用できる)、および過酸化物である。好ましい開始剤は、t−ブチルペルオキシピバラート、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシアセタートおよびt−ブチルペルオキシ−2−ヘキサノアートまたはこれらの混合物である。これらの有機ペルオキシ開始剤は、重合性モノマーの重量に対して、0.005と0.2wt%の間の通常の量で用いられる。
【0065】
過酸化物開始剤は、例えば、有機過酸化物であり得る。例示的な有機過酸化物には、これらに限らないが、環状過酸化物、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシジカルボナート、ペルオキシエステル、およびペルオキシケタールが含まれる。
【0066】
例示的な環状過酸化物には、これらに限らないが、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナンが含まれる。このような環状過酸化物は、例えば、TRIGONOX 301(Akzo Nobel;Arnhem、オランダ)の商用名で市販されている。例示的なジアシルペルオキシドには、これらに限らないが、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシドが含まれる。このようなジアシルペルオキシド、例えば、TRIGONOX 36(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なジアルキルペルオキシドには、これらに限らないが、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ−tert−アミルペルオキシド;ジ−tert−ブチルペルオキシド;およびtert−ブチルクミルペルオキシドが含まれる。このようなジアルキルペルオキシドは、例えば、TRIGONOX 101、TRIGONOX 145、TRIGONOX 201、TRIGONOX B、およびTRIGONOX T(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なヒドロペルオキシドには、これらに限らないが、tert−アミルヒドロペルオキシド;および1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが含まれる。このようなヒドロペルオキシドは、例えば、TRIGONOX TAHP、およびTRIGONOX TMBH(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なペルオキシカルボナートには、これらに限らないが、tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカルボナート;tert−アミルペルオキシ2−エチルへキシルカルボナート;およびtert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナートが含まれる。このようなペルオキシカルボナートは、例えば、TRIGONOX 117、TRIGONOX 131、およびTRIGONOX BPIC(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なペルオキシジカルボナートには、これらに限らないが、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート;およびジ−sec−ブチルペルオキシジカルボナートが含まれる。このようなペルオキシジカルボナートは、例えば、TRIGONOX EIIP、およびTRIGONOX SBP(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なペルオキシエステルには、これらに限らないが、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート;tert−アミルペルオキシネオデカノアート;tert−アミルペルオキシピバラート;tert−アミルペルオキシベンゾアート;tert−アミルペルオキシアセタート;2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン;tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート;tert−ブチルペルオキシネオデカノアート;tert−ブチルペルオキシネオヘプタノアート;tert−ブチルペルオキシピバラート;tert−ブチルペルオキシジエチルアセタート;tert−ブチルペルオキシイソブチラート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノアート;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバラート;tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート;クミルペルオキシネオデカノアート;tert−ブチルペルオキシベンゾアート;およびtert−ブチルペルオキシアセタートが含まれる。このようなペルオキシエステル溶媒は、例えば、TRIGONOX 121;TRIGONOX 123;TRIGONOX 125;TRIGONOX 127;TRIGONOX 133;TRIGONOX 141;TRIGONOX 21;TRIGONOX 23;TRIGONOX 257;TRIGONOX 25;TRIGONOX 27;TRIGONOX 41;TRIGONOX 421;TRIGONOX 423;TRIGONOX 425;TRIGONOX 42;TRIGONOX 99;TRIGONOX C;およびTRIGONOX F(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。例示的なペルオキシケタールには、これらに限らないが、1,1−ジ(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン;1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;および2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタンが含まれる。このようなペルオキシケタールは、例えば、TRIGONOX 122、TRIGONOX 22、TRIGONOX 29、およびTRIGONOX D(Akzo Nobel)の商用名で市販されている。フリーラジカル開始剤系は、例えば、前記過酸化物開始剤のいずれかの混合物または組合せを含み得る。過酸化物開始剤は、フリーラジカル開始剤系の60重量パーセント未満を占め得る。
【0067】
フリーラジカル開始剤系は、さらに、少なくとも1種の炭化水素溶媒を含む。炭化水素溶媒は、例えば、CからC30の炭化水素溶媒であり得る。例示的な炭化水素溶媒には、これらに限らないが、石油系溶媒(mineral solvent)、ノルマルパラフィン溶媒、イソパラフィン溶媒、環状溶媒などが含まれる。炭化水素溶媒は、例えば、n−オクタン、イソ−オクタン(2,2,4−トリメチルペンタン)、n−ドデカン、イソ−ドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)、および他のイソパラフィン溶媒からなる群から選択され得る。イソパラフィン溶媒のような例示的な炭化水素溶媒は、例えば、ISOPAR C、ISOPAR E、およびISOPAR H(ExxonMobil Chemical Co.)の商用名で市販されている。炭化水素溶媒は、フリーラジカル開始剤系の99重量パーセント未満を占め得る。
【0068】
ある実施形態の方法では、フリーラジカル開始剤系は、極性共溶媒をさらに含み得る。極性共溶媒は、アルコール共溶媒、例えば、CからC30のアルコールであり得る。さらに、アルコール共溶媒のアルコール官能基数は、例えば、1官能または多官能であり得る。極性共溶媒としての例示的アルコールには、これらに限らないが、イソプロパノール(2−プロパノール)、アリルアルコール(1−ペンタノール)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,4−ブタンジオール、これらの組合せ、これらの混合物などが含まれる。極性共溶媒は、フリーラジカル開始剤系の40重量パーセント未満を占め得る。
【0069】
極性共溶媒は、アルデヒドであってもよい。アルデヒドは、当業者に一般的に知られている;例えば、プロピオンアルデヒドが、極性共溶媒として使用され得る。しかし、連鎖移動剤としてのアルデヒドの反応の可能性が、極性共溶媒としてこのようなアルデヒドを用いる時には、考慮に入れられるべきである。このような反応の可能性は、当業者には広く知られている。
【0070】
極性共溶媒はケトンであり得る。ケトンは、当業者に一般的に知られている;例えば、アセトンまたはテトラヒドロフランが、極性共溶媒として使用され得る。しかし、連鎖移動剤としてのケトンの反応の可能性が、極性共溶媒としてこのようなケトンを用いる時には、考慮に入れられるべきである。このような反応の可能性は、当業者には広く知られている。
【0071】
ある実施形態の方法では、同時注入のために、フリーラジカル開始剤系は、溶媒として、またはブレンドとして、連鎖移動剤をさらに含み得る。前に論じたように、連鎖移動剤は、当業者に一般的に知られており、それらには、これらに限らないが、プロパン、イソブタン、アセトン、プロピレン、イソプロパノール、ブテン−1、プロピオンアルデヒド、およびメチルエチルケトンが含まれる。別の開示された方法では、連鎖移動剤は、開始剤系とは別個の入口ポートを通して反応器に投入され得る。別の実施形態の方法では、連鎖移動剤は、エチレンとブレンドされ、加圧され、次いで、それ自体の注入システムで、反応器に注入され得る。
【0072】
ある実施形態の方法では、過酸化物開始剤は、最初、炭化水素溶媒に溶かされる、または希釈され、次いで、重合反応器にフリーラジカル開始剤系を計量供給する前に、極性共溶媒が、過酸化物開始剤/炭化水素溶媒の混合物に、添加され得る。別の実施形態の方法では、過酸化物開始剤は、極性共溶媒の存在下で、炭化水素溶媒に溶かされ得る。
【0073】
本発明の方法において用いられるフリーラジカル開始剤は、引き抜き可能な水素を線状エチレン系ポリマーから引き抜くことによって、線状エチレン系ポリマーにグラフトサイトを開始させ得る。フリーラジカル開始剤の例には、すでに論じたフリーラジカル開始剤、例えば、過酸化物およびアゾ化合物が含まれる。ある別の実施形態の方法では、イオン化放射線もまた、引き抜き可能な水素を遊離させ、線状エチレン系ポリマーにラジカル化されたサイトを生み出すために使用され得る。有機開始剤は、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾアート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトアート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、およびtert−ブチルペルアセタート、t−ブチルα−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、t−アミルペルオキシベンゾアート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、および2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンを用いることは、引き抜き可能な水素を引き抜く好ましい手段である。好ましいアゾ化合物は、亜硝酸アゾビスイソブチルである。
【0074】
実施形態の方法に用いられる適切な触媒は、所望の組成またはタイプ(エチレン系ポリマーまたは高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーのいずれか)のポリマーを製造するのに適合している任意の化合物または化合物の組合せを含む。不均一および均一触媒の両方、およびこれらの組合せが用いられ得る。ある実施形態の方法では、よく知られたチーグラー−ナッタ組成物、特に、2族金属ハロゲン化物もしくは混合ハロゲン化物に担持された4族金属ハロゲン化物およびアルコキシド、ならびによく知られたクロムもしくはバナジウム系触媒を含めて、不均一触媒が用いられ得る。ある実施形態の方法では、使用される触媒は、比較的純粋な有機金属化合物または金属錯体、特に3〜10族またはランタニド系列から選択される金属に基づく化合物または錯体を含む、均一触媒であり得る。1つの系において2つ以上の触媒が用いられる場合、用いられるどの触媒も、重合条件下に、別の触媒の性能にそれほど悪影響を及ぼさないことが好ましい。望ましくは、どの触媒も、重合条件下に、25パーセントを超えて、より好ましくは10パーセントを超えて、活性が低下しない。好ましい触媒系の例は、米国特許第5272236号(Laiら);米国特許第5278272号(Laiら);米国特許第6054544号(Finlaysonら);米国特許第6335410号(Finlaysonら);および米国特許第6723810号(Finlaysonら);PCT公開第WO 2003/091262号(Boussieら);WO 2007/136497(Konzeら);WO 2007/136506(Konzeら);WO 2007/136495(Konzeら);およびWO 2007/136496(Aboelellaら)に見出すことができる。他の適切な触媒は、米国特許出願公開第2007/0167578号(Arriolaら)に見出すことができる。
【0075】
ある実施形態の方法では、配位−触媒重合法が、より高い結晶性の線状エチレン系ポリマーの生成に用いられ得る。このような実施形態の方法では、このような触媒系は、エチレンフィード中の不純物およびフリーラジカル開始剤からの分解生成物により生じ得る極性不純物に対して適切な許容範囲を有し得る。目標とする触媒効率のための、反応器の前部に供給される極性不純物の量の制御は、開始剤混合物に用いられる極性溶媒の量の制御によって、またプロセスリサイクル流において凝縮する材料の量によって、達成され得る。配位触媒のタイプには、米国特許第5272236号および米国特許第5278272号に記載の幾何拘束型触媒(CGC)が含まれ得る。このようなCGC系の好ましい触媒には、bis((2−オキソイル−3−(1,1−ジメチルエチル)フェン−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシ)プロパン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジメチル、およびビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシ)−トランス−シクロヘキサン−1,2−ジメチルエニル−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジメチルを含めて、それらが、極性不純物に対して十分な許容範囲を有することが知られているという理由で、ビフェニル−フェノール配位子を有するジルコニウム触媒の全般的部類が含まれ得る。炭素ラジカルを生成するフリーラジカル開始剤は、系における極性不純物の量を減らし、可能性として、より通常の触媒の使用を可能にする。炭素中心フリーラジカル発生体の例には、これに限らないが、アゾ−ビス−is−ブチロ−ニトリルを含めて、アゾ化合物が含まれる。このような化合物は、約30から約250℃の半減期分解温度を有し得る。炭素−炭素開始剤(このようなものの例には、ジメチルジフェニルブタン、ジメチルジフェニルヘキサン、およびこれらの誘導体が含まれる)が、禁止された操作条件下に、適切な半減期に達するように、使用され得る。
【0076】
錯体金属触媒を用いる実施形態の方法において、このような触媒は、助触媒、好ましくはカチオン生成助触媒、強いルイス酸、またはこれらの組合せと一緒にすることによって、活性化されて活性触媒組成物を生成し得る。用いられる適切な助触媒には、ポリマーまたはオリゴマーのアルミノキサン、特に、メチルアルミノキサン、さらには、適合する不活性非配位性イオン生成化合物が含まれる。いわゆる修飾メチルアルミノキサン(MMAO)もまた、助触媒として使用されるのに適する。このような修飾アルミノキサンを製造するための1つの技法は、米国特許第5041584号(Crapoら)に開示されている。アルミノキサンはまた、米国特許第5542199号(Laiら);米国特許第4544762号(Kaminskyら);米国特許第5015749号(Schmidtら);および米国特許第5041585号(Deavenportら)に開示されているようにして製造できる。他の好ましい助触媒は、不活性な非配位性ホウ素化合物、例えば、ペルフルオロアリールボラン(B(C)、および(ビス−水素化タロウアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートとして知られている種類の化合物(これらは、一般的化学構造([RNCH]+[B(C]−を有する錯体の混合物であり、式中、RはC14、C16またはC18アルキルであり得る)である。他の好ましい助触媒は、米国特許出願公開第2007/0167578号に見出すことができる。
【0077】
ある実施形態の方法では、加工助剤、例えば可塑剤もまた、実施形態のエチレン性ポリマー生成物に含めることができる。これらの助剤には、以下に限らないが、フタラート(例えば、ジオクチルフタラートおよびジイソブチルフタラート)、天然オイル(例えば、ラノリン)、石油精製から得られるパラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系オイル、ならびにロジンまたは石油原料からの液体樹脂が含まれる。加工助剤として有用なオイルの例示的種類には、KAYDOLオイル(Chemtura Corp.;Middlebury、コネチカット州)のようなホワイトミネラルオイル、およびSHELLFLEX 371ナフテン系オイル(Shell Lubricants;ヒューストン、テキサス州)が含まれる。別の適切なオイルはTUFFLOオイル(Lyondell Lubricants;ヒューストン、テキサス州)である。
【0078】
ある実施形態の方法では、実施形態のエチレン性ポリマーは、1種または複数の安定剤、例えば、酸化防止剤(例えば、IRGANOX 1010およびIRGAFOS 168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg、スイス)によって処理される。一般に、ポリマーは、押出または他の溶融プロセスの前に、1種または複数の安定剤により処理される。別の実施形態の方法では、他のポリマー添加剤として、これらに限らないが、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、造核剤、フィラー、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、安定剤、発煙抑制剤、粘度調節剤およびブロッキング防止剤が含まれる。例えば、実施形態のエチレン性ポリマー組成物は、1種または複数の添加剤を、合わせた重量として、実施形態のエチレン性ポリマーの重量に対して10パーセント未満含み得る。
【0079】
実施形態のエチレン性ポリマーは、さらに、混ぜ合わされ得る。ある実施形態のエチレン性ポリマー組成物では、1種または複数の酸化防止剤がポリマー中にさらに混ぜ合わせられ、混ぜ合わせられたポリマーはペレット化され得る。混ぜ合わされたエチレン性ポリマーは、任意の量の1種または複数の酸化防止剤を含み得る。例えば、混ぜ合わされたエチレン性ポリマーは、100万部のポリマー当たり、約200から約600部の1種または複数のフェノール系酸化防止剤を含み得る。さらに、混ぜ合わされたエチレン性ポリマーは、100万部のポリマー当たり、約800から約1200部のホスファイト系酸化防止剤を含み得る。混ぜ合わされた開示のエチレン性ポリマーは、100万部のポリマー当たり、約300から約1250部のステアリン酸カルシウムをさらに含み得る。
【0080】
用途
実施形態のエチレン性ポリマーは、少なくとも1つのフィルム層を含むもの、例えば、キャスト、インフレーション(blown)、カレンダー、または押出コーティング法によって製造される単層フィルム、あるいは多層フィルムにおける少なくとも1つの層;成形物品、例えば、ブロー成形、射出成形、または回転成形による物品;押出による物品;繊維;織布もしくは不織布を含めて、有用な物品を製造するための、様々な通常の熱可塑性樹脂製造プロセスにおいて用いることができる。実施形態のエチレン性ポリマーを含む熱可塑性組成物には、他の天然または合成材料、ポリマー、添加剤、強化剤、耐発火性添加剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、増量剤(extender)、架橋剤、発泡剤、および可塑剤とのブレンドが含まれる。
【0081】
実施形態のエチレン性ポリマーは、他の用途のための繊維の製造に用いることができる。実施形態のエチレン性ポリマーまたはこれらのブレンドから製造され得る繊維には、ステープル繊維、トウ、マルチコンポーネント、鞘/芯、撚糸、およびモノフィラメントが含まれる。適切な繊維形成法には、米国特許第4340563号(Appelら)、米国特許第4663220号(Wisneskiら)、米国特許第4668566号(Nohrら)、および米国特許第4322027号(Reba)に開示されているスパンボンドおよびメルトブロー法、米国特許第4413110号(Kaveshら)に開示されているゲル紡糸繊維、米国特許第3485706号(May)に開示されている織布および不織布、または、他の繊維(例えば、ポリエステル、ナイロンまたは綿)とのブレンドを含めてこのような繊維から作られる構造体、熱成形物品、押出形状(異形押出および共押出を含めて)、カレンダー加工物品、ならびに延伸、撚り加工、または捲縮糸または繊維が含まれる。
【0082】
実施形態のエチレン性ポリマーは、これらに限らないが、透明収縮フィルム、コレイション(collation)収縮フィルム、キャストストレッチフィルム、牧草用フィルム、ストレッチフッダー(hooder)フィルム、シーラント、およびおむつバックシートを含めて、様々なフィルムに使用され得る。
【0083】
実施形態のエチレン性ポリマーは、また、他の直接末端消費用途にも有用である。実施形態のエチレン性ポリマーは、ワイヤおよびケーブルのコーティング工程、真空成形工程のためのシート押出、およびモールド成形物品の成形(射出成形、ブロー成形法、または回転成形法の使用を含めて)に有用である。実施形態のエチレン性ポリマーを含む組成物は、また、通常のポリオレフィン加工法を用いて、製造物品に成形できる。
【0084】
実施形態のエチレン性ポリマーの他の適切な用途には、弾性フィルムおよび繊維;ソフトタッチの品物、例えば、歯ブラシの柄および器具のハンドル;ガスケットおよび異形物品(profile);接着剤(ホットメルト接着剤および感圧接着剤が含まれる);履物(靴底および靴の裏地が含まれる);自動車インテリア部品および異形物品;発砲品(連続および独立気泡の両方);他の熱可塑性ポリマー(例えば、高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、または他のオレフィンポリマー)のための耐衝撃性改良剤;被覆繊維製品;ホース;チューブ;隙間塞ぎ(weather stripping);蓋ライナー;床材;および、潤滑剤のための粘度指数改良剤(流動点改良剤としても知られる)が含まれる。
【0085】
実施形態のエチレン性ポリマーのさらなる処理が、他の最終用途に、実施形態のエチレン性ポリマーを向けるために実施され得る。例えば、分散体(水性および非水性の両方)もまた、本発明のポリマーまたはそれらを含む配合を用いて製造され得る。実施形態のエチレン性ポリマーを含む起泡(frothed)発砲体もまた、PCT公開第2005/021622号(Strandeburgら)に開示されているように、製造できる。実施形態のエチレン性ポリマーは、また、知られている手段のいずれか、例えば、過酸化物、電子線、シラン、アジド、または他の架橋法の使用によって架橋され得る。実施形態のエチレン性ポリマーは、また、例えば、グラフト(例えば、無水マレイン酸(MAH)、シラン、または他のグラフト付加剤の使用によって)、ハロゲン化、アミノ化、スルホン化、または他の化学的変性によって、化学的に変性できる。
【0086】
添加剤およびアジュバントが、実施形態のエチレン性ポリマーに、生成後に添加され得る。適切な添加剤には、フィラー、例えば、有機もしくは無機粒子(クレー、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末金属が含まれる)、有機もしくは無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維、スチールワイヤまたはメッシュ、ならびにナイロンもしくはポリエスエルコーディングが含まれる)、ナノサイズの粒子、クレー、など;タッキファイヤ、オイル増量剤(パラフィン系オイルもしくはナフテン系オイルが含まれる);他の天然および合成ポリマー(実施形態の方法に従って製造される、もしくは製造できる他のポリマーを含めて);が含まれる。
【0087】
他のポリオレフィンと実施形態のエチレン性ポリマーとのブレンドおよび混合物が実施され得る。実施形態のエチレン性ポリマーとブレンドするのに適するポリマーには、天然および合成ポリマーを含めて、熱可塑性および非熱可塑性ポリマーが含まれる。ブレンドのための例示的なポリマーには、ポリプロピレン(耐衝撃性改良ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、およびランダムエチレン/プロピレンコポリマー)、様々なタイプのポリエチレン(高圧、フリーラジカルLDPE、チーグラー−ナッタLLDPE、メタロセンPEが含まれ、複数反応器によるPE(チーグラー−ナッタPEおよびメタロセンPEの「反応器内」ブレンド、例えば、米国特許第6545088号(Kolthammerら)、米国特許第6538070号(Cardwellら)、米国特許第6566446号(Parikhら)、米国特許第5844045号(Kolthammerら)、米国特許第5869575号(Kolthammerら)、および米国特許第6448341号(Kolthammerら)に開示されている生成物)が含まれる)、エチレン−ビニルアセタート(EVA)、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改良ポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよびこれらの水素化誘導体(SBSおよびSEBS)、ならびに熱可塑性ポリウレタンが含まれる。均一ポリマー、例えば、オレフィンプラストマーおよびクラストマー(clastomer)、エチレンおよびプロピレン系コポリマー(例えば、VERSIFY(商標)プラストマーおよびエラストマー(The Dow Chemical Company)ならびにVISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Co.)の商用名で入手可能なポリマー)もまた、実施形態のエチレン性ポリマーを含むブレンドの成分として有用であり得る。
【0088】
実施形態のエチレン性ポリマーのブレンドおよび混合物は、熱可塑性ポリオレフィンブレンド(TPO)、熱可塑性エラストマーブレンド(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)およびスチレン系ポリマーブレンドを含み得る。TPEおよびTPVブレンドは、実施形態のエチレン性ポリマー(これらの官能化または不飽和誘導体を含めて)を、任意選択のゴム(通常のブロックコポリマー、特にSBSブロックコポリマーを含めて)と、また任意選択で、架橋もしくは加硫剤と一緒にすることによって製造され得る。TPOブレンドは、通常、実施形態のエチレン性ポリマーを、ポリオレフィンと、また任意選択で、架橋もしくは加硫剤とブレンドすることによって製造される。前記ブレンドは、モールド成形物の成形に、また任意選択で、得られるモールド成形物品を架橋するのに使用され得る。異なる成分を用いる類似の手法が、米国特許第6797779号(Ajbaniら)にすでに開示されている。
【0089】
定義
用いられる場合、用語「組成物」は、組成物を構成する材料の混合物、さらには、組成物の材料から生成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0090】
用いられる場合、用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーのよく混ざった物理的(すなわち、反応のない)混合物を意味する。ブレンドは、混和性(分子レベルで相分離していない)であることも、そうでないこともある。ブレンドは相分離していることも、していないこともある。ブレンドは、透過電子顕微鏡、光散乱、x線散乱、および当技術分野において知られている他の方法により特定される、1つまたは複数のドメイン構造を含んでいることも、含んでいないこともある。ブレンドは、マクロレベルで(例えば、樹脂を溶融ブレンドする、または混ぜ合わせる)、またはミクロレベルで(例えば、同じ反応器内で同時に生成する)、2種以上のポリマーを物理的に混合することによって実施され得る。
【0091】
用語「線状」は、ポリマーのポリマー骨格に、測定できるまたは実証できる長鎖分岐がないポリマーを表し、例えば、そのポリマーは、炭素1000個当たり、平均で0.01個未満の長鎖分岐により置換されている。
【0092】
用語「ポリマー」は、モノマー(同じであろうと異なるタイプであろうと)を重合することによって製造されるポリマー化合物を表す。このように、一般的用語であるポリマーは、用語「ホモポリマー」(通常、1つのタイプのモノマーだけから製造されるポリマーを表すために用いられる)、および定義される用語「インターポリマー」を包含する。用語「エチレン/α−オレフィンポリマー」は、記載されるインターポリマーであることを示す。
【0093】
用語「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって製造されるポリマーを表す。一般的用語であるインターポリマーは、コポリマー(通常、2つの異なるモノマーから製造されるポリマーを表すために用いられる)、および3つ以上の異なるタイプのモノマーから製造されるポリマーを含む。
【0094】
用語「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの全量に対して)50モルパーセントを超える重合したエチレンモノマーを含み、任意選択で、少なくとも1種のコモノマーを含み得るポリマーを表す。
【0095】
用語「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」は、(重合性モノマーの全量に対して)50モルパーセントを超える重合したエチレンモノマーと、少なくとも1種のα−オレフィンとを含むインターポリマーを表す。
【0096】
用語「エチレン性ポリマー」は、エチレン系ポリマーと、少なくとも1種の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとの結合により得られるポリマーを表す。
【0097】
試験法
密度
密度が測定される試料は、ASTM D 1928に従って準備される。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、試料をプレスした後1時間以内に行われる。
【0098】
いくつかの高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーでは、密度(グラム/立方センチメートル)は、融解熱(H)(ジュール/1グラムの試料)との関係に基づいて計算される(「計算密度」)。ポリマー試料の融解熱は、下に記載のDSC結晶度法を用いて求められる。
【0099】
高度に分岐したエチレン系ポリマーの密度と融解熱との間の関係を確立するために、30種類の市販のLDPE樹脂(「市販樹脂」または「CAR」と称される)が、密度、メルトインデックス、DSC結晶度、ゲル浸透クロマトグラフィー、3D−GPCによるg’、および3D−GPC法によるgpcBR分岐指数(全て、下に記載される)の方法を用いて、密度、メルトインデックス(I)、融解熱、ピーク融解温度、g’、gpcBR、およびLCBfについて試験される。市販樹脂は表1に列挙される性質を有する。
【0100】
【表1】

【0101】
市販樹脂について密度と融解熱(H)との間の関係を示すグラフは、図2に示されている。図2に記されているRは、実測値とモデルによるデータ値との間の相関係数の2乗である。線形回帰に基づき、市販の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーの計算密度(グラム/立方センチメートル)は、融解熱(ジュール/グラム)から、次の式1:
計算密度=5.03E−04(H)+8.46E−01(式1)
を用いて求めることができる。
【0102】
メルトインデックス
メルトインデックス、またはIは、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分間当たりに流出したグラム数として報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分間当たりに流出したグラム数として報告される。
【0103】
ブルックフィールド粘度
溶融粘度は、Brookfield Laboratories(Middleboro、マサチューセッツ州)DVII+Viscometerおよび使い捨てアルミニウム試料チャンバを用いて求められる。用いられるスピンドルは、約10から約100,000センチポイズの粘度測定に適したSC−31ホットメルトスピンドルである。ポリマーの粘度がこの範囲から外れる場合、またはこの手順に述べられている推奨トルク範囲を得るために、他のスピンドルが、粘度を得るために使用され得る。試料は、試料チャンバに注ぎ込まれ、Brookfield Thermoselに挿入され、しかるべき位置に固定される。試料チャンバは、スピンドルが挿入され、回転している時に、チャンバが、勝手に回転しないことを保証するために、底に、Brookfield Thermoselの底に嵌め込まれるノッチを有する。溶融した試料が試料チャンバの最上部の約1インチ下になるまで(約8グラムの樹脂)、試料は、必要とされる温度(177℃)に加熱される。粘度計装置が下げられ、スピンドルが試料チャンバに沈められる。粘度計のブラケットがThemoselに接するまで、下げ続けられる。粘度計が運転され、約30から約60パーセントのトルクの測定値に導く剪断速度で運転するように設定される。測定値は、約15分間、または、値が安定するまで、1分毎に測られ、この時点で、最終測定値が記録される。
【0104】
DSC結晶度
示差走査熱量測定(DSC)は、広い温度範囲に渡る、ポリマーの融解および結晶化挙動を測定するために用いることができる。例えば、RCS(冷凍冷却システム)およびオートサンプラーを装備した、TA Instruments Q1000 DSCが、この分析を実施するために用いられる。試験の間、50ml/minの窒素ガスパージ流が用いられる。各試料は、約175℃で薄いフィルムに溶融プレスされ、次いで、この溶融試料は、室温(約25℃)まで空冷される。3〜10mgで直径6mmの試験体が、冷却されたポリマーから抜き取られ、秤量され、軽いアルミニウムパン(約50mg)に入れられ、クリンプして閉じられる。次に、分析が、その熱的性質を求めるために実施される。
【0105】
試料の熱的挙動は、試料温度を上下させて、熱流 vs.温度プロフィールを作り出すことによって求められる。最初に、試料は、180℃まで急速に加熱され、試料の熱履歴を取り除くために3分間等温に保たれる。次に、試料は、10℃/分の冷却速度で、−40℃まで冷却され、−40℃で3分間等温に保たれる。次に、試料は、10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱される(これは、「2回目の加熱」昇温である)。冷却および2回目の加熱曲線が記録される。冷却曲線は、結晶化の開始から−20℃にベースラインの端点を設定することによって解析される。加熱曲線は、−20℃から融解の終点にベースラインの端点を設定することによって解析される。求められる値は、ピーク融解温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融解熱(H)(ジュール/グラム)、および、ポリエチレン試料について、式2:
結晶度%=((H)/(292J/g))×100(式2)
を用いて計算される結晶度%である。融解熱(H)およびピーク融解温度は、2回目の加熱曲線から報告される。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から求められる。
【0106】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
GPCシステムは、内蔵示差屈折計(RI)を装備した、Waters(Milford、マサチューセッツ州)150C高温クロマトグラフ(別の適切な高温GPC装置には、Polymer Laboratories(Shropshire、英国)210型および220型が含まれる)からなる。さらなる検出器として、Polymer ChAR(Valencia、スペイン)によるIR4赤外検出器、Precision Detectors(Amherst、マサチューセッツ州)の2−アングルレーザー光散乱検出器2040型、および、Viscotek(ヒューストン、テキサス州)の150R 4−キャピラリー溶液粘度計が含まれ得る。すぐ上の2つの独立した検出器および少なくとも1つの最初の検出器を有するGPCは、時に、「3D−GPC」と呼ばれ、一方、用語「GPC」だけは、一般に、通常のGPCを表す。試料に応じて、15度の角度または90度の角度の光散乱検出器のいずれかが、計算の目的で用いられる。データの収集は、Viscotek TriSECソフトウェア(3版)、および4−チャネルViscotek Data Manager DM400を用いて実施される。前記システムは、また、Polymer Laboratories(Shropshire,英国)によるオンライン溶媒脱ガスデバイスも装備している。適切な高温GPCカラム、例えば、4本の長さ30cmのShodex IIT803(13ミクロン)カラム、または4本の長さ30cmのPolymer LAbsカラム(20ミクロン、混合細孔径充填)(MixA LS、Polymer Labs)が使用され得る。試料カルーセル(carousel)コンパートメントは、140℃で運転され、カラムコンパートメントは、150℃で運転される。試料は、0.1グラムのポリマー/50ミリリットルの溶媒の濃度で調製される。クロマトグラフィー用溶媒および試料調製溶媒は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。どちらの溶媒も窒素によりスパージングされる。ポリエチレン試料は、160℃で4時間、穏やかに撹拌される。注入容積は、200マイクロリットルである。GPCを通る流量は、1ml/分に設定される。
【0107】
GPCカラムセットは、実施例を流す前に、21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を流すことによって較正される。標準の分子量(MW)は、580から8,400,000グラム/モルの範囲に渡り、標準は6つの「カクテル」混合物に含まれる。各標準混合物は、個々の分子量の間に、少なくとも1桁の相違がある。標準混合物は、Polymer Laboratories(Shropshire、英国)から購入される。ポリスチレン標準は、1,000,000グラム/モル以上の分子量では、0.025g/50mLの溶媒、また、1,000,000グラム/モル未満の分子量では、0.05g/50mlの溶媒で調製される。ポリスチレン標準は、80℃で30分間、穏やかに撹拌して溶かした。分布の狭い標準の混合物が最初に、また、分解を最小限にするために、最も高分子量の成分が、より低分子量になる順序で流される。ポリスチレン標準のピーク分子量は、ポリスチレンおよびポリエチレンについて後に言及される、Mark−HouwinkのKおよびa(αと呼ばれることもある)値を用いて、ポリエチレンのMに変換される。この手順の説明については、実施例のセクションを参照されたい。
【0108】
3D−GPCにより、絶対重量平均分子量(「MAbs」)および固有粘度もまた、前記と同じ条件を用い、適切な分布の狭いポリエチレン標準から独立に得られる。これらの分布の狭い線状ポリエチレン標準は、Polymer Laboratories(Shropshire,英国;パート番号 PL2650−0101およびPL2650−0102)から得ることができる。
【0109】
多検出器オフセットの決定についての系統的手法は、Balke、Moureyら(MoureyおよびBalke、Chromatography Polym.、12章(1992年))(Balke、Thitiratsakul、Lew、Cheung、Mourey、Chromatography Polym.、13章(1992年))によって出版されたものに一致するやり方で実施され、分布の広いDow 1683ポリスチレン(American Polymer Standards Corp.;Mentor、オハイオ州)またはその等価物による3種の検出器のlog(Mおよび固有粘度)の結果を、分布の狭いポリスチレン標準較正曲線による分布の狭い標準によるカラム較正結果に最適化する。検出器の容積オフセットの決定の理由となる分子量データは、Zimm(Zimm,B.H.、J.Chem.Phys.、16、1099頁(1948年))およびKratochvil(Kratochvil,P.、Classical Light Scattering from Polymer Solutions、Elsevier、Oxford、ニューヨーク州(1987年))によって公開されたものに一致するやり方で得られる。分子量の決定に用いられる全体の注入濃度は、質量分析器面積、および適切な線状ポリエチレンホモポリマー、またはポリエチレン標準の1つから導かれる質量分析器定数から得られる。計算分子量は、前記ポリエチレン標準の1つまたは複数から導かれる光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数(dn/dc)を用いて得られる。一般に、質量分析器の応答および光散乱定数は、約50,000ダルトンを超える分子量を有する線状標準から決められるべきである。粘度の較正は、製造業者によって記載された方法を用いて、または代わりに、適切な線状標準、例えば、Standard Reference Materials(SRM)1475a、1482a、1483、もしくは1484aの公開された値を用いることによって実施できる。クロマトグラフィーでの濃度は、第2ビリアル係数の影響(分子量への濃度の影響)を考慮しなくてよいだけ十分に低いと仮定される。
【0110】
分析的昇温溶離分別(ATREF)
ATREF分析は、米国特許第4798081号(Hazlittら)、およびWild,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;「Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers」、J.Polym.Sci.、20、441〜55頁(1982年)に記載の方法に従って実施される。構成および備品は、Hazlitt,L.G.、「Determination of Short−chain Branching Distributions of Ethylene Copolymers by Automated Temperature Rising Elution Fractionation(Auto−ATREF)」、Journal of Applied Polymer Science:Appl.Polym.Symp.、45、25〜39頁(1990年)に記載されている。ポリマー試料は、TCBに120℃から140℃で溶かされ(0.2重量%から0.5重量%)、等しい温度でカラムに投入され、不活性担体(ステンレス鋼ショット、ガラスビーズ、またはこれらの組合せ)を含むカラム内で、0.1℃/分の冷却速度で20℃まで温度をゆっくり下げることによって、晶析される。カラムは、ゲル浸透クロマトグラフィーの方法のセクションに記載の市販の赤外検出器(また、任意選択で、LALLS検出器および粘度計)に連結されている。次いで、20から120℃まで1.0℃/分の速度でカラムの温度を上昇させ(1℃/分)、溶媒を溶出させながら、晶析したポリマー試料をカラムから溶離させることによって、ATREFクロマトグラム曲線が生成される。
【0111】
高速昇温溶離分別(F−TREF)
高速−TREFは、Polymer ChAR(Valencia、スペイン)によるCrystex装置により、組成モードのIR−4赤外検出器(Polymer ChAR、スペイン)および光散乱(LS)検出器(Precision Detector Inc.、Amherst、マサチューセッツ州)を用いて、オルトジクロロベンゼン(ODCB)中で実施される。
【0112】
F−TREFでは、120mgの試料が、40mlのODCBと共に、Crystex反応容器に入れられ、機械的に撹拌しながら160℃で60分間保たれて、試料の溶解が達成される。試料は、TREFカラムに投入される。次いで、試料溶液は、2段階で冷却される:(1)40℃/分で、160℃から100℃まで、および(2)0.4℃/分で、100℃(ポリマー晶析過程が始まる)から30℃まで。次に、試料溶液は、30℃で一定温度に30分間保たれる。昇温溶離過程は、0.6ml/分の流量を用い、1.5℃/分で、30℃で始まり、160℃まで行われる。試料の投入容積は0.8mlである。試料の分子量(M)は、15°または90°のLS信号と、IR−4検出器の測定センサからの信号の比として計算される。LS−MW較正定数は、規格基準局ポリエチレンSRM1484aを用いることによって得られる。溶離温度は実際のオーブン温度として報告される。TREFと検出器との間の管遅延容積が、報告されるTREF溶離温度で考慮される。
【0113】
分取(preparative)昇温溶離分別(P−TREF)
ポリマーを分取分別するのに用いられる昇温溶離分別(TREF)の方法(P−TREF)は、カラムの寸法、溶媒、流れおよび温度プログラムを含めて、Wilde,L.;Ryle,T.R.;Knobeloch,D.C.;Peat,I.R.;「Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers」、J.Polym.Sci.、20、441〜455頁(1982年)に由来する。赤外(IR)吸光度検出器が、カラムからのポリマーの溶離をモニターするために用いられる。温度プログラムされた独立した液体浴−1つはカラムへの投入用で、1つはカラムからの溶離用)もまた用いられる。
【0114】
試料は、撹拌を与える磁気撹拌子を用い、160℃で、約0.5%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含むトリクロロベンゼン(TCB)に溶かすことによって調製される。試料の投入は、約150mg/カラムである。125℃で投入した後、カラムおよび試料は、約72時間かけて25℃まで冷却される。次いで、冷却された試料およびカラムは、温度プログラム可能な第2の浴に移され、4ml/分の一定のTCBの流れと、25℃で平衡状態に置かれる。線形温度プログラムが開始されて、約0.33℃/分で昇温し、約4時間で、102℃の最高温度に達する。
【0115】
フラクションは、IR検出器の出口に捕集ボトルを置くことによって手動で捕集される。先のATREF分析に基づいて、第1フラクションは、56から60℃で捕集される。引き続く小さなフラクション(サブフラクションと呼ばれる)は、92℃まで4℃上がる毎に、次いで、102℃まで2℃上がる毎に捕集される。サブフラクションは、そのサブフラクションを捕集した溶離温度の中央値によって参照される。
【0116】
しばしば、サブフラクションは、試験を実施するために、中央値温度の範囲によって、より大きなフラクションに纏められる。実施形態のエチレン性ポリマーを試験する目的で、97から101℃の範囲の中央値温度を有するサブフラクションが、一緒にされて、「フラクションA」と呼ばれるフラクションを与える。90から95℃の範囲の中央値温度を有するサブフラクションは、一緒にされて、「フラクションB」と呼ばれるフラクションを与える。82から86℃の範囲の中央値温度を有するサブフラクションは、一緒にされて、「フラクションC」と呼ばれるフラクションを与える。62から78℃の範囲の中央値温度を有するサブフラクションは、一緒にされて、「フラクションD」と呼ばれるフラクションを与える。フラクションは、試験の目的で、より大きなフラクションへと、さらに一緒にされることがある。
【0117】
重量平均溶離温度が、各フラクションに対して、各サブフラクションの溶離温度範囲と、試料の全重量に対するサブフラクションの重量との平均に基づいて求められる。式(3)によって求められる重量平均温度は、次のように定義される:
【0118】
【数1】

ここで、T(f)は、狭い区画または画分の中央値温度であり、A(f)は画分の面積(画分内のポリマーの量に比例する)である。
【0119】
データは、EXCEL(Microsoft Corp.;Redmond、ワシントン州)スプレッドシートを用いてデジタル的に記憶され、処理される。TREFプロット、ピーク最高温度、フラクションの重量パーセント、およびフラクションの重量平均温度は、スプレッドシートプログラムにより計算した。
【0120】
P−TREF後のポリマーフラクション調製
フラクションA、B、C、およびDは、トリクロロベンゼン(TCB)を除去することによって、後の分析のために準備される。これは、複数ステップのプロセスであり、このプロセスでは、1部のTCB溶液が3部のメタノールと一緒にされる。各フラクションで、析出したポリマーは、フルオロポリマー膜上に濾別され、メタノールにより洗われ、空気乾燥される。次いで、ポリマーを含むフィルターは、フィルターを覆うのに十分なキシレンを有する個々のバイアルに入れられる。バイアルは、135℃に加熱され、この時点で、ポリマーはキシレンに溶けるか、または板状物またはフレークとしてフィルターから持ち上げられるかのいずれかである。バイアルは冷却され、フィルターは取り出され、キシレンは、室温で、流れている窒素雰囲気下に、蒸発させられる。次いで、残留キシレンを除去するために、バイアルは、真空オーブンに入れられ、圧力は、−28インチHgまで下げられ、温度は、2時間の間80℃に上げられる。4つのフラクションは、数平均分子量を得るために、IR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分析される。IR分析では、フラクションは、IRスペクトルで、十分に大きい信号対雑音を得るために、より大きなフラクションへと一緒にされなければならないことがあり得る。
【0121】
P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定
この分析は、この手順に記載されるように、標準試料より小さい大きさに原因がある、手順における僅かな逸脱を除けば、ASTM D−2238の方法Bに従う。ASTMの手順では、約0.25mmの厚さのポリエチレンフィルムが、赤外によって走査され、分析される。記載されているこの手順は、P−TREF分離によって生成される、より少量の材料を用いる、類似の試験を許容するように修正される。
【0122】
各フラクションについて、一片のポリマーが、加熱された液圧プレスでアルミニウム箔の間でプレスされて、直径約4mmで厚さ0.02mmのフィルムを生じる。次いで、フィルムは、直径13mmで厚さ2mmのNaClディスク上に置かれ、IR顕微鏡を用いて赤外によって走査される。FTIR分光器は、液体窒素で冷却されたMCT検出器を装備した連続顕微鏡を有するThermo Nicolet Nexus 470である。128回の走査が、ゼロフィリングの1レベルを用い、波数2の分解能で収集される。
【0123】
メチルは、1378cm−1のピークを用いて測定される。用いられる較正は、ASTM D−2238を用いることによって導かれるものと同じ較正である。FTIRは、Thermo Nicolet Omnicソフトウェアを装備している。
【0124】
炭素1000個当たりの補正されていないメチル(X)は、1000個当たりの補正されたメチル(Y)を得るために、それらの対応する数平均分子量(M)を用いて、鎖の末端について、式4:
Y=X−21,000/M(式4)
に示されるように補正される。21,000の値が、サブフラクションにおける不飽和レベルを得るための信頼できる信号の欠如を許容するために用いられる。しかし、通常、これらの補正は小さい(炭素1000個当たり、<0.4個のメチル)。
【0125】
3D−GPCによるg’
試料ポリマーの指数(g’)は、上でゲル浸透クロマトグラフィー法に記載された、光散乱、粘度、および濃度検出器を、SRM 1475aホモポリマーポリエチレン(または、同等の標準)により最初に較正することによって求められる。光散乱および粘度検出器のオフセットは、較正において記載された濃度検出器に対して決められる。ベースラインが、光散乱、粘度、および濃度のクロマトグラムから引かれ、次いで、積分ウィンドウが、検出できるポリマーの存在が屈折率クロマトグラムにより示される、光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲の全てを間違いなく積分するように設定される。SRM1475a標準のような広い分子量ポリエチレン標準を注入し、データファイルを計算し、そして各クロマトグラフィー区画に対して、固有粘度(IV)および分子量(M)(MおよびIVの各々は、光散乱および粘度検出器からそれぞれ導かれる)、ならびにRI検出器質量定数から導かれる濃度を記録することによって、Mark−Houwink(MH)の線状での基準線を確立するために、線状ホモポリマーポリエチレンが用いられる。試料の分析のために、各クロマトグラフィー区画に対する手順は、試料のMark−Houwink線を得るために繰り返される。ある試料では、より低分子量、固有粘度および分子量データは、測定された分子量および固有粘度が、線状ホモポリマーGPC較正曲線に漸近的に近づくように、外挿される必要があり得ることに注意。この目的のために、長鎖分岐指数(g’)の計算を進める前に、短鎖分岐の寄与を考慮するために、線状での基準線が僅かにシフトされることを、高度に分岐した多くのエチレン系ポリマー試料は必要とする。
【0126】
g−プライム(g’)は、式5:
’=(IV試料,i/IV線状標準、j)(式5)
に従って、各分岐試料のクロマトグラフィー区画(i)および測定分子量(M)に対して計算され、ここで、計算は、線状標準試料における等しい分子量(M)でのIV線状標準、jを用いる。別の言い方をすると、試料のIV区画(i)と、標準のIV区画(j)とは同じ分子量を有する(M=M)。簡単のため、IV線状標準、j区画は、標準のMark−Houwinkプロットの5次多項式フィットにより計算される。IVの比、すなわちg’は、光散乱データにおける信号対雑音の限界のために、3,500を超える分子量でだけ得られる。それぞれのデータ区画(i)での試料ポリマーに伴う分岐数(B)は、0.75の粘度遮蔽イプシロン因子を仮定して、式6を用いることによって求めることができる。
【0127】
【数2】

【0128】
最後に、全ての区画(i)に渡るポリマーの炭素1000個当たりの平均のLCBf量は、次の式(7)を用いて求めることができる。
【0129】
【数3】

【0130】
3D−GPCによるgpcBR分岐指数
3D−GPCの構成において、ポリエチレンおよびポリスチレン標準が、2つのポリマータイプ、ポリスチレンおよびポリエチレンのそれぞれに対して独立に、Mark−Houwink定数のKおよびαを求めるために使用され得る。これらは、次の方法の適用において、WilliamsおよびWardのポリエチレン等価分子量を精緻なものするために用いることができる。
【0131】
gpcBR分岐指数は、最初に、前に記載のように、光散乱、粘度、および濃度検出器を較正することによって求められる。次いで、ベースラインが、光散乱、粘度計、および濃度クロマトグラムから引かれる。次に、積分ウィンドウが、検出できるポリマーの存在が屈折率クロマトグラムにより示される、光散乱および粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲の全てを間違いなく積分するように設定される。次いで、線状ポリエチレン標準が、前に記載されたように、ポリエチレンおよびポリスチレンのMark−Houwinkの定数を確立するために用いられる。これらの定数を得ると、2つの値は、式8および9に示されるように、溶出体積の関数としてのポリエチレンの分子量およびポリエチレンの固有粘度についての2つの線状基準通常較正(conventional calibration、「cc」)を構成するのに用いられる。
【0132】
【数4】

【0133】
gpcBR分岐指数は、長鎖分岐の特性評価に対する確固とした方法である。Yau,Wallace W.、「Examples of Using 3D−GPC − TREF for Polyolefin Characterization」、Macromol.Symp.、2007年、257、29〜45頁を参照。この指数は、全ポリマー検出器面積および面積スカラー積に有利なように、g’値の決定および分岐頻度計算に従来用いられている、区画毎の3D−GPC計算を避ける。3D−GPCデータから、ピーク面積法を用いて、光散乱(LS)検出器によって試料全体のMを得ることができる。この方法は、g’の決定に必要とされる、光散乱検出器信号と濃度検出器信号との区画毎の比を回避する。
【0134】
【数5】

【0135】
式10における面積計算は、全試料面積として、検出器の雑音、ならびにベースラインおよび積分範囲についてのGPCでの設定によって生じる変動に、それがずっと敏感でないという理由で、一層の精度をもたらす。より重要なことに、ピーク面積計算は、検出器の容積オフセットによって影響を受けない。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)が、式11に示される面積法によって得られる。
【0136】
【数6】

ここで、DPは、オンライン粘度計から直接モニターされる示差圧力信号を表す。
【0137】
gpcBR分岐指数を求めるために、試料ポリマーの光散乱溶離面積が、試料の分子量を求めるために用いられる。ポリマー試料の粘度検出器溶離面積は、試料の固有粘度(IVまたは[η])を求めるために用いられる。
【0138】
最初に、線状ポリエチレン標準試料(例えば、SRM1475aまたは等価物)の分子量および固有粘度が、式12および13により、溶離容積の関数としての分子量および固有粘度の両方に対する通常の較正を用いて求められる。
【0139】
【数7】

式14が、gpcBR分岐指数を求めるために用いられる。
【0140】
【数8】

ここで、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]ccは、通常の較正による固有粘度であり、Mは、測定された重量平均分子量であり、Mw,ccは、通常の較正による重量平均分子量である。式(10)を用いる光散乱(LS)によるMは、一般に、絶対Mと呼ばれる;他方、通常のGPC分子量較正曲線を用いる、式(12)によるMw,ccは、しばしば、ポリマー鎖Mと呼ばれる。「cc」下付き文字を有する全ての統計値は、それらの個々の溶離体積、前に記載された対応する通常較正、および質量分析器の応答から導かれる濃度(C)を用いて求められる。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計の面積に基づいて測定された値である。KPEの値は、線状基準試料がゼロのgpcBR測定値をもつまで、繰り返し調節される。例えば、この特別の場合におけるgpcBRの決定のための、αおよびLogKの最終値は、ポリエチレンではそれぞれ、0.725および−3.355、ポリスチレンではそれぞれ、0.722および−3.993である。
【0141】
Kおよびα値が一旦決められると、手順が、分岐試料を用いて繰り返される。分岐試料は、最善の「cc」較正値として最終のMark−Houwinkの定数を用い、式10から14を適用して解析される。
【0142】
gpcBRの解釈は直接的である。線状ポリマーでは、式14から計算されるgpcBRは、LSおよび粘度測定によって測定された値が、通常較正標準に近くなるので、ゼロに近くなろう。分岐ポリマーでは、測定されたポリマーのMは、計算されたMw,ccより大きくなり、計算されたIVccは、測定されたポリマーのIVより大きくなるので、gpcBRは、特に高レベルのLCBで、ゼロより大きくなるであろう。実際に、gpcBR値は、ポリマーの分岐の結果としての分子の大きさの収縮効果に帰因するIV変化率を表す。0.5または2.0のgpcBR値は、等しい重さの線状ポリマー分子に対して、それぞれ50%および200%のレベルで、IVの分子サイズ収縮効果を意味すると推定される。
【0143】
これらの特定の例で、g’指数および分岐頻度計算に比較して、gpcBRを用いることの利点は、より高いgpcBRの精度に帰因する。gpcBR指数の決定において用いられる全てのパラメータは、良好な精度で得られ、濃度検出器からの、高分子量での3D−GPC検出器の低い応答によって悪影響を受けない。検出器体積アラインメントにおける誤差もまた、gpcBR指数決定の精度に影響を及ぼさない。他の特定の場合において、Mモーメントを求める別の方法が、前記技法にとって好ましくあり得る。
【0144】
核磁気共鳴(13C NMR)
LDPEおよび本発明の試料を含めての試料が、10mmのNMR管内の0.25gのポリマー試料に、0.025MのCr(AcAc)を含む約3gのテトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を加えることによって準備される。酸素は、開いた管を窒素雰囲気に少なくとも45分間置くことによって、試料から除去される。次いで、試料は、加熱ブロックおよびヒートガンを用いて、管およびその内容物を150℃に加熱することによって溶かされ、均質化される。溶かされた試料の各々は、均質性を保証するために目視検査される。試料は、分析の直前に十分に混合され、加熱されたNMR試料ホールダに挿入される前に、温度が下がることはなかった。
【0145】
エチレン系ポリマー試料は、10mmのNMR管内の0.4gのポリマー試料に、0.025MのCr(AcAc)を含む約3gのテトラクロロエタン−d/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物を加えることによって準備される。酸素は、開いた管を窒素雰囲気に少なくとも45分間置くことによって、試料から除去される。次いで、試料は、加熱ブロックおよびヒートガンを用いて、管およびその内容物を150℃に加熱することによって溶かされ、均質化される。溶かされた試料の各々は、均質性を保証するために目視検査される。試料は、分析の直前に十分に混合され、加熱されたNMR試料ホールダに挿入される前に、温度が下がることはなかった。
【0146】
全てのデータは、Bruker 400MHz分光計を用いて収集される。データは、125℃の試料温度で、6秒のパルス繰返し遅延、90度のフリップ角、および反転ゲートデカップリングを用い得られる。全ての測定は、無回転試料で、ロックモードで行われる。試料は、データ取得の前に15分間、熱平衡状態に置かれる。13C NMRの化学シフトは、30.0ppmのEEE3連子を内部基準とした。
【0147】
C13 NMRによるコモノマー含量
NMR分光法を、ポリマーの組成を求めるために用いることはよく知られている。ASTM D 5017−96;J.C.Randallら、「NMR and Macromolecules」、ACS Symposium series 247、J.C.Randall編、Am.Chem.Soc.、ワシントンD.C.、1984年、9章;およびJ.C.Randall、「Polymer Sequence Determination」、Academic Press、ニューヨーク(1977年)は、NMR分光法によるポリマー分析の一般的方法を提供する。
【0148】
TREFによるクロス分別(xTREF)
TREFによるクロス分別(xTREF)は、ATREFおよびGPCを用い、分子量と結晶性の両方による分離をもたらす。Nakano and Goto、J.Appl.Polym.Sci.、24、4217〜31頁(1981年)は、自動クロス分別装置の最初の開発を記載した。典型的なxTREF法は、ATREFカラム(ガラスビーズおよびスチールショットからなる)上へのポリマー試料のゆっくりとした晶析を含む。晶析のATREFステップの後、ポリマーは、ATREFカラムから、予め決められた温度範囲で逐次溶離され、分離されたポリマーフラクションがGPCにより測定される。溶離温度プロフィールおよび個々のGPCプロフィールの組合せにより、より完全なポリマー構造の3次元表示が可能になる(分子量および結晶度の関数としての、ポリマーの重量分布)。溶離温度は、短鎖分岐の存在のよい指標であるため、この方法は、ポリマーのかなり完全な構造の描写を与える。
【0149】
クロス分別装置の仕組みおよび操作の詳細な説明は、PCT公開第WO 2006/081116号(Gillespieら)に見出すことができる。図12は、xTREF装置500の概略図を示す。この装置は少なくとも1つのATREFオーブン600およびGPC700の組合せである。この方法では、Waters GPC 150が用いられる。xTREF装置500は、一連のバルブ操作を通じて、(1)溶液を試料ループ、次いで、ATREFカラムに注入すること、(2)ATREFオーブン/カラムを冷却することによってポリマーを晶析させること、および(3)段階的温度増加で、GPCにフラクションを溶離させること、によって運転される。加熱移送ライン505は、約150℃に保たれ、xTREF装置500の様々な構成要素の間の流出流に用いられる。5つの独立したバルブシステム(GPC700の2方向/6ポートバルブ750、および2方向/3ポートバルブ760;ATREFオーブン600のバルブ650、660、および670)が、試料の流路を制御する。
【0150】
屈折率(RI)GPC検出器720は、溶媒の流れおよび温度にかなり敏感である。晶析および溶離の間の溶媒圧力の変動は、TREF溶離の間に、間違った溶離に導き得る。外部赤外(IR)検出器710、IR4(Polymer ChAR(Valencia、スペイン)によって供給される)が、この問題を軽減するために、主濃度検出器(RI検出器720)として、付け加えられる。他の検出器(示されていない)は、試験法のセクションにおいて記載のゲル浸透クロマトグラフィー法において記載されたように配置されるLALLSおよび粘度計である。図12において、2方向/6ポートバルブ750および2方向/3ポートバルブ760(Valco;ヒューストン、テキサス州)は、Waters 150C加熱カラムコンパートメント705内に置かれる。
【0151】
ATREFオーブン600(Gaumer Corporation、ヒューストン、テキサス州)の各々は、強制流ガス(窒素)の仕組みを用い、よく断熱されている。各ATREFカラム610は、316 SS製で、ODが0.125インチ、IDが0.105インチ(3.18ミリメートル)の精密穿孔管で構築されている。この管が、19.5インチ(495.3ミリメートル)の長さに切断され、直径0.028インチ(0.7mm)のステンレス鋼カットワイアショットと30〜40メッシュの球状工業用品質ガラスとの60/40(v/v)混合物により充填されている。ステンレス鋼カットワイアショットは、Pellets,Inc.(North Tonawanda、ニューヨーク州)による。ガラス球は、Potters Industries(Brownwood、テキサス州)による。隙間の容積は約1.00mlであった。Parkerのフリット付き低内部容積カラムエンドフィッティング(部品番号2−1 Z2HCZ−4−SS)が、各管の末端に付けられ、管は1.5インチ(38.1ミリメートル)のコイルに包まれる。TCBは、1.0ml/分の標準流量で、非常に大きな熱容量を有するので、ATREFカラム610(これは、約1mlの隙間容積を有する)は、予備平衡化コイル605なしに、加熱または冷却され得る。予備平衡化コイル605は、大きな容積(>12ミリリットル)を有し、その結果、ATREF溶離サイクルの間だけインライン状態にある(ATREF担持サイクルではそうでない)ことに注意すべきである。ATREFオーブン600への窒素は、5から8℃の窒素を100scf/分で排出でき、100psigの窒素を供給する、サーモスタットで制御されたチラー(Airdyne;ヒューストン、テキサス州)を通過した。冷却された窒素は、低温制御の改善の目的で、各分析用オーブンにパイプで送られる。
【0152】
ポリエチレン試料は、分布、密度、および捕集される所望のフラクション数に応じて、2〜4mg/1mlのTCBで調製される。試料調製は、通常のGPCのそれと同様である。
【0153】
システムの流量は、GPCポンプ740およびGPC試料注入器745を用いて、GPC溶離およびATREF溶離の両方で1ml/分に制御される。GPCでの分離は、Polymer Laboratories(英国)によって供給される、4つの10μm「混合B」リニア(linear)混合床GPCカラム730を通して実施される。GPC加熱カラムコンパートメント705は、ATREFカラム610から溶離する時の析出を防ぐために、145℃で運転される。試料の注入量は500μlである。ATREFオーブン600の条件は、温度が約30から約110℃である;10.75時間の間、約0.123℃/分の晶析速度;10.75時間の間、0.123℃/分の溶離速度;および14個のP−TREFフラクション;である。
【0154】
GPC700は、ATREFカラム610のために、クロス分別システムに含まれる「死んだ容積(dead volume)」が存在することを除いて、通常のGPCに対するものと同じ仕方で較正される。所定のATREFカラム610から、収集されたGPCデータに一定の容積オフセットを与えることは、ATREFカラム620がGPC試料注入器745から投入されている間に用いられる一定の時間間隔を用い、それを等価な溶離容積に変換して(流量により)、容易に実施される。このオフセットは、装置の運転の間、GPCの開始時間は、ATREFカラムの出口末端のバルブによって決められ、GPC注入器システムによってではないために、必要である。ATREFカラム610の存在は、また、GPCカラム730の見掛けの効率に、いくらかの小さな低下を引き起こす。ATREFカラム610の注意深い構成が、GPCカラム730の性能への、その影響を最低限にする。
【0155】
通常の分析の間、14個の個々のATREFフラクションが、GPCによって測定される。各ATREFフラクションは、約5〜7℃の温度「区画」を表す。各区画の分子量分布(MWD)が、GPCクロマトグラムの積分から計算される。温度の関数としてのGPC MWDのプロット(3D表面プロットが得られる)は、全体としての分子量および結晶性の分布を示す。滑らかな3D表面を生み出すために、14個のフラクションは、計算過程の一部として、40個の別個のGPCクロマトグラムを含むように表面プロットを拡張するために、補間される。個々のGPCクロマトグラムの面積は、ATREFフラクション(5〜7℃の温度区画に渡る)から溶離した量に相当する。GPCクロマトグラムの個々の高さ(3DプロットでのZ軸)は、ポリマーの重量分率に相当するので、そのレベルの分子量および結晶性で存在するポリマーの比率の表示を与える。
【実施例】
【0156】
エチレン系ポリマーの製造
3種のエチレン系ポリエチレンポリマーを生成させるために、連続溶液重合を、コンピュータ制御されよく混合される反応器で実施する。溶媒は、ISOPAR E(ExxonMobile Chemical Co.、ヒューストン、テキサス州)と呼ばれる、精製された混合アルカン溶媒である。エチレン、水素、および重合触媒を、39ガロン(0.15立方メートル)の反応器に供給する。ポリマー(P)1〜3と称される3種のエチレン系ポリエチレンポリマーのそれぞれの生成に対する、フィード量および反応器条件は、表2を参照。表2における「SCCM」は、標準立方センチメートル/分のガス流である。3種の全てのエチレン系ポリエチレンポリマーの触媒は、チタン,[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3a,7a−η)−3−(1−ピロリジニル)−1H−インデン−1−イル]シランアミナト(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]の組成を有する、チタン系幾何拘束型触媒(CGC)である。助触媒は、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)である。CGC活性化剤は、アミンのブレンドであるビス(水素化タロウアルキル)メチル、およびテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(1−)である。反応器は、約525psigで、液体を満たして運転する。
【0157】
重合方法は、P1〜3の生成にはコモノマーが用いられないこと以外は、米国特許第5272236号(Laiら)の実施例1〜4および図1、ならびに米国特許第5278272号(Laiら)の実施例1に詳細に記される手順と同様である。コモノマーが用いられないので、P1〜3は、エチレンホモポリマーである。転化率は、反応器におけるエチレン転化率(パーセント)として求められる。効率は、触媒中のグラムのチタンによって製造されるポリマーの重量(キログラム)として求められる。
【0158】
反応器を空にした後、添加剤(1300ppmのIRGAFOS 168、200ppmのIRGANOX 1010、250ppmのIRGANOX 1076、1250ppmのステアリン酸カルシウム)を、3種のエチレン系ポリエチレンポリマーのポスト反応器溶液の各々に注入する。次いで、各ポスト反応器溶液を、2段階の揮発分除去のための準備として加熱する。溶媒および未反応モノマーは、揮発分除去の間に、ポスト反応器溶液から除去される。得られるポリマー溶融物は、ダイにポンプで送られ、水面下でペレットに切断される。
【0159】
P1〜3の選ばれた性質を、表3に与える。P1〜3には、密度、メルトインデックス、およびブルックフィールド粘度法(全て、下に記載)を用いて求めた、密度、メルトインデックス(I)、I10、およびブルックフィールド粘度を与える。「NM」は、測定されてないことを意味する。
【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
実施例エチレン性ポリマー1および2の製造
(実施例1)
2グラムのポリマー2(P2)を、100mlのオートクレーブ反応器に入れる。反応器を閉じた後、撹拌機を、1000rpm(回転/分)で運転する。システムを真空に引き、窒素により加圧することによって、反応器を脱酸素する。これを3回、繰り返す。次いで、反応器を、雰囲気温度のままで、エチレンにより2000barまで加圧し、次に、排出する。これを3回、繰り返す。反応器の最後のエチレン排出時に、圧力を、約100barの圧力まで低下させるだけで、その状態で、反応器の加熱サイクルを開始する。約220℃の内部温度に達したら、次に、反応器を、エチレンにより約1600barまで加圧し、220℃で少なくとも30分間保つ。反応器内のエチレンの概算の量は、約46.96gである。次いで、エチレンを用いて、n−ヘプタン中、0.5648mmol/mlのプロピオンアルデヒドおよび0.01116mmol/mlのtert−ブチルペルオキシアセタート開始剤の混合物3.0mlを、反応器にスイープ(sweep)する。圧力の増加(約2000barまで)と開始剤の添加が結び付いて、エチレンモノマーのフリーラジカル重合が引き起こされる。重合は、274℃までの温度上昇を招く。15分間、反応器の混合を続けた後、反応器を、減圧し、パージし、開く。全部で4.9グラムの得られたエチレン性ポリマー(実施例1と呼ばれる)は、反応器から物理的に回収する(いくらかの付加的な生成物ポリマーは、反応器底出口の詰まりのせいで、回収不能である)。反応器におけるエチレンの転化率の値に基づいて、実施例1のエチレン性ポリマーは、40重量パーセントまでのエチレン系ポリエチレンP2を含み、残りは、フリーラジカル重合によって生成した高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーである。
【0163】
(比較例1)
エチレン系ポリマーの添加のない、実施例1と同じプロセス条件下でのエチレンのフリーラジカル重合は、4.9グラムの高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(比較例1(CE1)と呼ばれる)を生じる。反応の間に、285℃までの温度上昇が起こる。
【0164】
(実施例2)
2グラムのポリマー1(P1)を、100mlのオートクレーブ反応器に入れる。反応器を閉じた後、撹拌機を、1000rpmで運転する。システムを真空に引き、窒素により加圧することによって、反応器を脱酸素する。これを3回、繰り返す。次いで、反応器を、雰囲気温度のままで、エチレンにより2000barまで加圧し、次に、排出する。これを3回、繰り返す。反応器の最後のエチレン排出時に、圧力を、約100barの圧力まで低下させるだけで、その状態で、反応器の加熱サイクルを開始する。約220℃の内部温度に達したら、次に、反応器を、エチレンにより約1600barまで加圧し、220℃で少なくとも30分間保つ。この時点で、反応器内のエチレンの概算の量は、約46.96gである。次いで、エチレンを用いて、n−ヘプタン中、0.5648mmol/mlのプロピオンアルデヒドおよび0.01116mmol/mlのtert−ブチルペルオキシアセタート開始剤の混合物3.0mlを、反応器にスイープ(sweep)する。圧力の増加(約2000barまで)と開始剤の添加が結び付いて、エチレンのフリーラジカル重合が引き起こされる。重合は、267℃までの温度上昇を招く。15分間、反応器の混合を続けた後、反応器を、減圧し、パージし、開く。全部で7.4グラムの得られたエチレン性ポリマー(実施例2と呼ばれる)は、反応器から物理的に回収する(いくらかの付加的な生成物ポリマーは、反応器底出口の詰まりのせいで、回収不能である)。反応器におけるエチレンの転化率の値に基づいて、実施例2のエチレン性ポリマーは、約27重量パーセントのエチレン系ポリエチレンP1を含み、残りは、フリーラジカル重合によって生成した高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーである。
【0165】
実施例のエチレン性ポリマー1および2の特性評価
エチレン性ポリマー実施例1および2の両方、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー比較例1、およびエチレン系ポリマーP1およびP2の両方を、試験法のセクションにおいて記載のDSC結晶度法を用いて試験する。比較例ポリマーの計算密度は、試験法のセクションにおいて記載の密度法の使用による。試験の結果は、表4ならびに図3および4に与える。
【0166】
【表4】

【0167】
エチレン性ポリマー実施例1および2のどちらも、比較例1(これは、実施例1および2と同じ基本条件下に製造された高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーである)のそれと、それらの各々のエチレン系ポリエチレンポリマー2および1との間のピーク融解温度を有する。表4は、比較例1に対して、実施例の最高ピーク融解温度(T)が、約7乃至11℃高く、より大きな(約5から6パーセント)量の結晶度を有することを示す。さらに、ピーク結晶化温度(T)は、比較例1より、約9乃至12℃高く、CE1より高い温度で冷めるまたは固化する能力の点で、さらなる利点を示す。DSC結晶度の結果は、エチレン性ポリマー実施例1および2は、比較例の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(比較例1)より、高いピーク融解温度およびピーク結晶化温度の両方、さらには、比較例1と異なる融解熱の値を有することを示す。さらに、実施例1および2は、また、P2およびP1と、いくつかの性質で、特に融解熱の値で異なる。これは、実施例1および2が、それらの各々の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマー成分とは異なることを強く示す。
【0168】
図3および4は、エチレン性ポリマー実施例に対する、熱流 vs.温度のプロットを示す。これらの図には、それぞれのエチレン系ポリエチレンP2およびP1、ならびに比較例1についての、熱流 vs.温度のプロットもまた示されている。
【0169】
実施例1および2、比較例1、ポリマー1、およびCE1とP1の80:20の重量比の物理的ブレンドを、試験法のセクションに下に記載の分析的昇温溶離分別法を用いて試験する。図5には、実施例1および比較例1のATREFの試験結果をプロットする。図6には、実施例2、ポリマー1、および比較例1、およびCE1とP1の80:20の重量比の物理的ブレンドのATREFの試験結果をプロットする。表5は、90℃を超えて溶離する各ポリマー試料の全重量分率のパーセンテージを与える。
【0170】
【表5】

【0171】
比較例1に比べて、より高い実施例1の結晶度が、図5に与えるATREFプロットによって示される。図5に示されるように、実施例1は、比較例1(高度に分岐したエチレン系ポリマー)より高い温度で融解するフラクションを有する。より重要なことに、実施例1のATREF分布曲線は、比較的一様な曲線を示し、概ね単峰の結晶度分布を示す。エチレン性ポリマー実施例1が、別個の成分の単なるブレンドである場合、2つのブレンドされたポリマー成分の2峰曲線を示すと予想できる。表5はまた、実施例1が、90℃以上の温度で溶離するポリマー部分を有することも示す。比較例1は、90℃以上で溶離する部分を有さない。
【0172】
図6のプロットは、実施例2、ポリマー1、および比較例1のATREFプロットを示す。3つのプロットを比較すると、実施例2が、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(CE1)およびエチレン系ポリマー(P1)のいずれとも異なり、単なるブレンドでないことが明らかである。比較例1は、90℃を超えて溶離しない。P1は、90℃以上の温度で溶離するかなりの量の材料フラクション(85.2%)を有し、高結晶性エチレン系ポリマーフラクションが主であることを示す。実施例2は、実施例1に似て、比較的一様な曲線を示し、比較的狭い結晶度分布を示している。
【0173】
さらに、図6では、エチレン性ポリマー実施例2に対して、80:20の重量比のCE1:P1組成物の物理的ブレンドが、比較される。80:20の重量比の物理的ブレンドは、実施例エチレン性ポリマー1および2の製造のセクションにおいて前に記載の通り、27重量パーセントと概算されるエチレン系ポリマーP1と、残りの部分の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとの組成物(実施例2を構成する)と比較するために、作り出されている。図6におけるATTEF分布は、80:20の重量比のブレンドは、2つの異なるポリマーのブレンドとして製造されるので、それが、よく分解された双峰分布を有することを示す。すでに認められたように、エチレン性ポリマー実施例2は、双峰分布を有さない。さらに、表5に示されるように、エチレン性ポリマー実施例2は、90℃以上の温度で溶離する少量の材料フラクション(5.3%)を有し、これに対して、80:20の重量比の物理的ブレンドは、その高結晶度エチレン系ポリマーフラクションを反映して、かなりの量の溶離(17.9%)を有する。
【0174】
試験法のセクションにおいて記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いる、3種の検出器のGPC(3D−GPC)、結果を表6に要約する。
【0175】
【表6】

【0176】
表6から、実施例1および2はどちらも、高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー比較例1のそれより、通常のGPCによる狭い分子量分布(M/Mの比)を示すことが分かる(コントロールで5.03、実施例1で4.32、実施例2で4.63)。2つの実施例のより狭いM/Mの比は、フィルム用途で、比較例1を凌ぐ物理的性質における利点、透明性の向上、およびヘーズの低下をもたらし得る。絶対GPCによるM/Mの比も、また、狭い値(5.89および3.39)を有するエチレン性ポリマー実施例と、比較例1(7.26)との違いを示す。より小さいM/Mの比は、フィルムに用いられた時の透明性の向上に結び付く。M(絶対)/M(GPC)の比は、実施例(1.26、1.29)が、比較例1(1.51)より小さい値を有することを示す。
【0177】
表6には、g’およびgpcBRの両方を用いる分岐分析もまた含まれる。g’の値は、試験法のセクションにおいて記載の3D−GPCによるg’法を用いることによって求められる。gpcBRの値は、試験法のセクションにおいて記載の3D−GPCによるgpcBR分岐指数法を用いることによって求められる。比較例1および実施例2に比べて小さい、2つのエチレン性実施例でのgpcBRの値は、比較して、より少ない長鎖分岐を示している。しかし、1MIメタロセンポリマーに比べて、全ての組成物においてかなりの長鎖分岐が存在する。
【0178】
実施例エチレン性ポリマー3〜5の製造
(実施例3〜5)
この手順は各実施例で繰り返される。各実施例の場合に、エチレン系ポリマーの製造において製造したエチレン系ポリマー(すなわち、P1〜3)の1つの2グラムの樹脂を、100mlのオートクレーブ反応器に入れる。実施例3はP2を含む。実施例4はP1を含む。実施例5はP3を含む。これらのポリマーの基本的性質は、表3に見られる。反応器を閉じた後、撹拌機を1000rpmで運転する。システムを真空に引き、反応器を70℃に1時間加熱し、次いで、システムを窒素によりフラッシングすることによって、反応器を脱酸素する。この後、反応器を、窒素により加圧し、反応器を真空に引く。このステップを3回繰り返す。反応器を、雰囲気温度のままでエチレンにより2000barまで加圧し、排気する。このステップを3回繰り返す。最後のエチレン排出時に、圧力を、約100barの圧力まで低下させるだけで、反応器の加熱を開始する。内部温度が約220℃に達したら、次に、反応器をエチレンにより約1600barまで加圧し、少なくとも30分間、220℃に保つ。反応器内のエチレンの概算の量は、46.53gである。次いで、エチレンを用いて、n−ヘプタン中、0.4321mmol/mlのプロピオンアルデヒドおよび0.0008645mmol/mlのtert−ブチルペルオキシアセタート開始剤の混合物3.9mlを、反応器にスイープする。反応器への開始剤のスイープで、圧力は、反応器内で、約2000barまで上昇し、この状態で、フリーラジカル重合が開始する。240℃への反応器の温度上昇が認められる。15分間の混合の後、反応器の底のバルブを開き、圧力を、50〜100barの間まで下げて、得られたポリマーの回収を始める。次に、反応器を1600barに再加圧し、3分間撹拌し、次いで、底のバルブを開いて、圧力を、50〜100barの間まで再び下げる。各実施例の場合に、合計で約6グラムの生成物ポリマーを反応器から回収する。反応器内のエチレンの転化率の値に基づいて、各実施例は、約33重量%のエチレン系ポリマー、およびフリーラジカル重合の間に生成した約67重量%の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーからなる。
【0179】
(比較例2)
如何なるエチレン系ポリマーの添加もない、実施例3〜5に記載のものと同じプロセス条件下でのエチレンのフリーラジカル重合は、4.64グラムの高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー(比較例(CE)2と呼ばれる)を生じる。コモノマーは用いられていないので、比較例2は、エチレンホモポリマーである。フリーラジカル反応の間の275℃への温度上昇が認められる。
【0180】
実施例エチレン性ポリマー3〜5の特性評価
エチレン性ポリマー実施例3〜5を、試験法のセクションにおいて記載のDSC結晶度および高速昇温溶離分別法の両方を用いて試験する。実施例3〜5の試験の結果は、比較例2、ポリマー1〜3、および比較例2とポリマー1〜3との物理的ブレンドについての同様の試験結果と比較される。結果は表7に示す。
【0181】
【表7】

【0182】
表3、4、および7のデータを用いて、実施例1〜5、比較例1および2、市販樹脂1〜30を比較する、ピーク融解温度(T)と融解熱(H)との間の比較プロットが、相関関係、例えば、図7に示すような関係を見出すために作成できる。複数の融解温度を有する材料の場合には、ピーク融解温度は、最高融解温度と定められる。図7は、5つの実施例の全てが、比較例および市販樹脂によって生じるグループとは異なる関数的性質を示すことを明らかにしている。
【0183】
5つのエチレン性ポリマー実施例と、2つの比較例および市販樹脂から形成されるグループとの間の乖離のせいで、相違を強調するための、これらのグループの間の境界画定線が、融解熱の所定の範囲で確立できる。図7に示すように、数値的関係、式15を、このような境界画定線を表すために用いることができる:
(℃)=(0.2143(J/g))+79.643(式15)
このような関係の直線に対して、図7に見られるように、5つのエチレン性ポリマー実施例の全てが、所定の融解熱の値に対して、式15を用いて決められるピーク融解温度より、大きくないとしても、少なくとも等しい、高い融点ピーク(T)を有する。対照的に、比較例および市販樹脂の全ては、その関係の直線の下にあり、それらのピーク融解温度が、所定の融解熱の値に対して、式15を用いて決められるピーク融解温度より低いことを示す。
【0184】
やはり図7に示すように、数値的関係、式16および17もまた、今論じたように、実施例、比較例、および市販樹脂の間の関係に基づいて、このような境界画定線を表すために用いることができる。
(℃)=(0.2143(J/g))+81(式16)、
より好ましくは、T(℃)=(0.2143(J/g))+85(式17)。
【0185】
表4および7は、実施例エチレン性ポリマーの融解熱の範囲を明らかにする。エチレン性ポリマーの融解熱は、約120から約292J/g、好ましくは約130から約170J/gである。
【0186】
表4および7は、また、実施例エチレン性ポリマーのピーク融解温度範囲も示す。エチレン性ポリマーのピーク融解温度は、約100℃以上、好ましくは約100から約130℃である。
【0187】
短鎖分岐の比較事例を示すために、エチレン性ポリマー実施例3〜5、比較例2、およびポリマー1〜3を、試験法のセクションにおいて記載の核磁気共鳴法を用いて試験する。結果は表8に示す。
【0188】
【表8】

【0189】
表8で、「Cx」は、分岐数/全炭素数1000個における分岐長を示す(C1=メチル、C5=アミル分岐など)。「ND」は、所定の検出限界で、何も検出または観察されない結果を表す。
【0190】
エチレン系ポリマーP1〜3は、試験したが、P1〜3はC1〜C6+分岐を示さないので、表8の結果には含めていない。このことは、P1〜3が、試験した範囲の短鎖分岐を生じると思われる如何なるコモノマー含量も有さない高結晶性エチレン系ポリマーであるので、予想される。
【0191】
表8に認められるように、エチレン性ポリマー実施例3〜5は、検知できるC1(メチル)またはC3(プロピル)分岐を全く示さず、C2,C4,およびC5分岐は、比較例2と同じ程度である。「検知できる」は、特定の分岐タイプが、試験法のセクションにおいて記載の核磁気共鳴法を用いる検出限界(約0.1個の分岐/炭素1000個)を超えて、観察されないことを意味する。比較例2(フリーラジカル分岐の生成物)は、全ての範囲でかなりの分岐を示す。ある実施形態のエチレン性ポリマーでは、エチレン性ポリマーは、「検知できる」プロピル分岐を全く有さない。ある実施形態のエチレン性ポリマーでは、エチレン性ポリマーは、「検知できる」メチル分岐を全く有さない。ある実施形態のエチレン性ポリマーでは、炭素原子1000個当たり、少なくとも0.1単位のアミル基が存在する。ある実施形態のエチレン性ポリマーでは、炭素原子1000個当たり、2.0単位以下のアミル基が存在する。
【0192】
実施例3〜5の試料を、試験法のセクションにおいて記載の分取昇温溶離分別法を用い、サブフラクションに分割する。サブフラクションは、溶媒が除去され、ポリマーが回収される前に、4つのフラクション(フラクションA〜D)に纏められる。図8は、実施例3〜5に前記方法を用いる、フラクションA〜Dについての温度分割を示す。
【0193】
前記フラクションは、求められる重量およびそれらの重量平均温度について分析する。表9は、実施例3〜5、さらには比較例2の重量分率分布を要約し、各フラクションにその呼称A〜Dを与える。
【0194】
【表9】

【0195】
表9に見られるように、実施例3〜5は、90℃を超える重量平均温度で溶離するかなりの量のポリマーを含む。3つのエチレン性ポリマー実施例の全てで、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクション(フラクションAおよびフラクションB)が存在する。3つのエチレン性ポリマー実施例の全てで、エチレン性ポリマーの全重量に対して少なくとも7.5%のエチレン性ポリマーが、90℃以上温度で溶離する(実施例3:22.59重量%、実施例4:28.29重量%、実施例5:25.69重量%)。3つのエチレン性ポリマー実施例の全てで、少なくとも1つの分取TREFフラクションは95℃以上で溶離する(フラクションA)。3つのエチレン性ポリマー実施例の全てで、エチレン性ポリマーの全重量に対して少なくとも5.0%のエチレン性ポリマーが、95℃以上の温度で溶離する(実施例3:11.27重量%、実施例4:15.76重量%、実施例5:17.90重量%)。
【0196】
前記フラクションのいくつかを、3種の検出器のGPCによって分析し、g’およびgpcBRの値を、試験法のセクションにおいて記載の3D−GPCによるg’および3D−GPCによるgpcBR分岐指数法を用いて求める。比較例2、ポリマー1〜3、および代表的な重量比(実施例3〜5についての、ポリマー1〜3のそれぞれと比較例2との概算の組成に基づく)の物理的ブレンドを分析する。結果は表10に示す。
【0197】
【表10】

【0198】
表10は、エチレン系ポリマーP1〜3と、エチレン性ポリマー実施例3〜5を生成させるために反応器において生成した高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマーとの間の結合について有力な証拠を示す。これは、絶対GPC分子量に見られる。表10に列挙されている、実施例の通常および絶対GPCの両方からの分子量平均を、それらのそれぞれの物理ブレンドと比較すると、実施例の検出平均分子量が、ブレンドよりずっと大きいことが示され、化学結合が示される。
【0199】
反応の証拠は、また、長鎖分岐指数によっても強く裏付けられる。実施例に対するgpcBRの全ての値は、高温P−TREFフラクション(フラクションAおよびB)における長鎖分岐の存在を示すが、これらは、通常、高結晶性で、LCBの不在を反映した温度域であると思われる。エチレン系ポリマーP1〜3では、それらが全く長鎖分岐をもたないので、gpcBRの値は、ゼロかまたはゼロに近い。さらに、P1〜3のようなエチレン系ポリマーは、通常、1.0に近いg’指数、および0.72に近いMH冪指数を与える。長鎖分岐のレベルが増すにつれて、g’指数は1.0の値から減少し、MH冪指数は、0.72から低下し、またgpcBR指数は0の値から増加する。通常の高度に長鎖分岐したエチレン系ポリマー、例えばCE2は、高結晶性と高レベルの長鎖分岐の両方を有するフラクションを生じない。
【0200】
炭素1000個当たりのメチルについて試料を分析するのに、試験法のセクションにおいて記載のP−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定手順を実施するために、試料サイズが小さいせいで、フラクションを、フラクションABおよびCDへと一緒にすることが必要である。フラクションABを得るためにフラクションAおよびBを一緒にし、フラクションCDを得るためにフラクションCおよびDを一緒にする。フラクションABおよびCDの新しい重量平均温度は、式3に従って計算する。
【0201】
図9は、実施例3〜5の一緒にしたフラクションABおよびCDに対する温度分割を示す。図10および表11は、2つの大きなフラクション、および全ポリマーのパーセンテージとしてそれらの重量分率を示す。表11および図11は、炭素1000個当たりのメチルの結果を示す。
【0202】
【表11】

【0203】
実施例3〜5は、メチル/1000の値によって示されるように、高温フラクション(フラクションAB)で、比較的高いレベルの分岐を示す。図11は、実施例3〜5のフラクションABおよびCDのP−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定分析によって求めた、表11のデータを用いる、炭素1000個当たりのメチル(末端基またはメチルについて補正)vs.重量平均溶離温度のプロットである。エチレン性ポリマー実施例の高温フラクションは、予想より大きな炭素1000個当たりのメチル−単なる線状エチレン系ポリマーから予想されるより大きな数値−を有する。
【0204】
表12に示す高速昇温溶離分別試験の結果もまた、実施例3〜5における長鎖分岐およびグラフトの有力な証拠を示す。これは、示されるLS−90測定Mに見られる。実施例のMを、それらのそれぞれのブレンドと比較すると、それぞれの実施例のMは、全て、それぞれのブレンドより大きい。
【0205】
【表12】

【0206】
図13(a)および13(b)は、それぞれ、試験法のセクションにおいて記載のTREFによるクロス分別法に基づいて、ポリマー3と比較例2との33:67の重量比の物理的ブレンドについてのクロス分別の結果である、3Dおよび2DIR応答曲線を示す。図13(c)および13(d)は、実施例5(これは、ポリマー3を組み込んでいる)について、同じ方法を用いたIR応答曲線を示す。図13(a)、(c)、および(d)は、格子線(3D図だけ)によって表されるだけでなく、カラーバンド(3Dおよび2D図の両方)によっても表される、0.02ずつ増加するz軸(重量分率)を有する。図13(b)での重量分率のz軸の増分は、2D表示を見る助けになるように、0.05に設定されている。
【0207】
2組のグラフを比較すると、図13(a)および13(b)のブレンド成分は、温度溶離 vs.分子量での明瞭に区別される2つの「島」に、よく分解されていることが明瞭に見られ、ブレンドの双峰性を示している。図13(c)および13(d)は、実施例5、およびエチレン性ポリマーが如何に完全に分解されないかを示し、単一のポリマー材料であることを示している。やはり注目すべきは、ブレンドの成分の分子量が、実施例5の対応する構成成分よりかなり低いことであり、これは、図13(b)を図13(d)と比較することによって、認められる。
【0208】
実施形態が、詳しく説明されたが、様々な他の修正が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであり、当業者によって容易になされ得ることが理解される。したがって、特許請求の範囲が記載された実施例および説明に限定されることは意図されておらず、むしろ、特許請求の範囲は、本発明が関係する当業者によって等価物と扱われると思われる全ての特徴を含めて、本発明に存する特許性のある新規性の全ての特徴を包含すると解釈される。
【0209】
開示の組成物および方法のいずれか1つに関する、好ましいまたは望ましい、より好ましいまたはより望ましい、非常に好ましいまたは非常に望ましい、あるいは、最も好ましいまたは最も望ましい置換、範囲、最終用途、プロセス、または組合せの開示は、何らかの他の具体的な置換、範囲、用途、プロセスまたは組合せがどのようなものであるかには無関係に、開示の組成物および方法の、先行するまたは後に続く任意の他の実施形態にも適用可能である。
【0210】
特に断りがある、前後の関係から言外に含まれる、または当技術分野において一般的であるのでなければ、全ての部数およびパーセンテージは重量に基づく。
【0211】
全ての出願、公開、特許、試験手順、および引用された他の文献は、優先権文献を含めて、このような開示が、開示の組成物および方法に矛盾しない範囲で、またこのような組み込みが許される全ての法域で、参照によって全体として組み込まれる。
【0212】
このような値が記載されている前後関係に応じて、また特に断らなければ、このような値は、1パーセント、2パーセント、5パーセント、または、時には10から20パーセントずつ変化し得る。下限(RL)、および上限(RU)を有する数値範囲が開示されている時は常に、その範囲内にある任意の数値は、限界値自体を含めて、明確に開示されている。特に、範囲内の次の数値は明確に開示されている:R=RL+k(RU−RL)、式中、kは、0.01ずつ増加する、0.01から1.00の範囲の変数である、すなわち、kは、0.01または0.02から0.99または1.00である。さらに、Rの2つの数値によって定められる任意の数値範囲もまた、明確に開示されている。













【特許請求の範囲】
【請求項1】
核磁気共鳴によって求めて、炭素原子1000個当たり少なくとも0.1個のアミル分岐、ならびに、DSC結晶度により求めて、最高ピーク融解温度、T(℃)、および融解熱、H(J/g)の両方を有し、ここで、TおよびHの数値が、関係式:
≧(0.2143)+79.643、
に相応する、エチレン性ポリマーであって、約1モルパーセント未満のヘキセンコモノマー、および約0.5モルパーセント未満のブテン、ペンテン、もしくはオクテンコモノマーを有するエチレン性ポリマー。
【請求項2】
約0.1モルパーセント未満のブテン、ペンテン、もしくはオクテンコモノマーを有する、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項3】
融解熱が約170J/g未満である、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項4】
ピーク融解温度が126℃未満である、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項5】
核磁気共鳴により求めて、検知できるメチル分岐を含まない、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項6】
核磁気共鳴により求めて、検知できるプロピル分岐を含まない、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項7】
核磁気共鳴により求めて、炭素原子1000個当たり2.0単位以下のアミル基を含む、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項8】
およびHの数値が、関係式:
≧(0.2143)+81
に相応する、請求項1に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項9】
分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定により求めて、炭素原子1000個当たり約2個のメチルを超える分岐レベルを有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項10】
分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるg’により求めて、1未満のg’値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項11】
g’値が0.95未満である、請求項10に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項12】
分取昇温溶離分別法を用い、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、95℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるgpcBR分岐指数により求めて、0.05を超え、5未満のgpcBR値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも5重量パーセントが、95℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項13】
分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、P−TREFフラクションでの、炭素1000個当たりのメチルの決定により求めて、炭素原子1000個当たり約2個のメチルを超える分岐レベルを有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項14】
分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるg’により求めて、1未満のg’値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項15】
g’値が0.95未満である、請求項14に記載のエチレン性ポリマー。
【請求項16】
分取昇温溶離分別法を用い、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションを含み、90℃以上で溶離する少なくとも1つの分取TREFフラクションが、3D−GPCによるgpcBR分岐指数により求めて、0.05を超え、5未満のgpcBR値を有し、エチレン性ポリマーの全重量に対して、エチレン性ポリマーの少なくとも7.5重量パーセントが、90℃以上の温度で溶離する、エチレン性ポリマー。
【請求項17】
A)第1反応器または多部分反応器の第1部分において、触媒の存在下でエチレンを重合して、DSC結晶度により求めて少なくとも50%の結晶度を有する線状エチレン系ポリマーを生成させるステップ;および
B)前記線状エチレン系ポリマーを、少なくとも1つの別の反応器または多部分反応器の後の部分において、フリーラジカル開始剤の存在下で、さらなるエチレンと反応させて、エチレン性ポリマーを生成させるステップ
を含む、方法。
【請求項18】
ステップ(B)の反応がグラフト重合によって起こる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(A)の触媒がメタロセン触媒である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
極性化合物が、第1反応器または多部分反応器の第1部分に存在しても、メタロセン触媒の活性を阻害しない、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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【図13(d)】
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【公表番号】特表2011−514928(P2011−514928A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550852(P2010−550852)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036902
【国際公開番号】WO2009/114661
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】