説明

代謝性骨疾患を処置するための骨形成タンパク質を含む経口製剤

骨粗鬆症および他の代謝性骨疾患の処置に使用するための、個体の消化管に沿った任意の部分で骨形成タンパク質(BMP)を投与する方法および製剤を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年4月29日に出願した米国仮出願第60/566242号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に治療用タンパク質の経口投与用製剤の分野に属する。詳細には、本発明は、骨粗鬆症および他の代謝性骨疾患のような代謝性疾患の処置に使用するための、骨形成タンパク質を含む製剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
骨粗鬆症は、低い骨量および骨組織の悪化の結果として骨脆弱性および骨折に対する感受性の増加が生じることを特徴とする全身骨格疾患である。骨粗鬆症は、米国で最もよくみられる種類の代謝性骨疾患であり、骨粗鬆症の状態は、米国で2500万人超を冒している。本疾患は、脊椎骨折500000件、股関節骨折250000件、および手首骨折240000件を含めた毎年130万件を超える骨折を引き起こす。股関節骨折は骨粗鬆症の最も重篤な結果であり、5%〜20%の患者が1年以内に死亡し、生存者の50%超が無能力になる。
【0004】
骨粗鬆症は、文字通り「多孔性の骨」を意味する。骨格における健康な骨は、厚い外側の棚と、コラーゲン(タンパク質)、カルシウム塩および他の無機質で満たされた強固な内部の網目とを有する。健康な骨の内部は、蜂巣状または網状の骨の外見を有し、血管および骨髄が骨の網状構造の小孔を満たしている。古い骨は、破骨細胞と呼ばれる細胞によって普通は分解(すなわち吸収)され、骨芽細胞と呼ばれる骨構築細胞に交代する。この更新過程は骨代謝回転と名付けられている。骨粗鬆症は、骨吸収が優勢なことにより内部蜂巣状または網状構造の小孔が大きくなるが、網状構造に新しい骨が同時に復元しない場合、すなわち骨がより多孔性になり、骨が脆弱になって容易に骨折しやすくなる場合に生じる。骨粗鬆症は、骨格全体を普通は冒すが、手首、脊椎、および股関節の骨に破断(骨折)を引き起こすことが最も一般的である。高齢者は、骨粗鬆症になるリスクが最も大きい。したがって、この問題は、人口の高齢化に伴い顕著に増加すると予測されている。世界の骨折の発生率は、今後60年間で3倍に増加すると予測されている。広く発生している骨粗鬆症以外に、個体での骨成長の喪失を同じく特徴とする骨減少症およびパジェット病のようないくつかの他の代謝性骨疾患が公知である。
【0005】
骨粗鬆症にはいくつかの原因がある。ホルモン欠乏(女性の場合はエストロゲン、男性の場合はアンドロゲン)は主原因である。女性は男性よりも骨粗鬆症のリスクが大きいことは周知である。女性は、閉経以後5年間に骨喪失の急激な加速を経験する。骨粗鬆症のリスクを増加させる他の要因には、喫煙、アルコール乱用、座りがちなライフスタイル、および低いカルシウム摂取がある。
【0006】
閉経後骨粗鬆症の処置に現在採用されている最もよくみられる治療法は、ホルモン補充療法(HRT)、ビスホスホネート、およびカルシトニンである。これらの三つの処置は骨吸収抑制剤として働く。十分なカルシウム摂取、ビタミンD補給、および体重負荷運動を含めた、これらの治療法に対する他の補助手段を推奨することができる。
【0007】
エストロゲンは骨折を低減することが知られており、骨吸収抑制剤の一例である。さらに、Blackら(EP0605193A1)は、特に経口服用した場合に、エストロゲンが低比重リポタンパク質(LDL)の血漿中濃度を低下させ、有益な高密度リポタンパク質(HDL)の濃度を上昇させ、直腸結腸癌を予防することを報告している。しかし、エストロゲンは、確立した骨粗しょう性骨格において骨を若年成人レベルに回復させることに失敗した。さらに、長期エストロゲン療法は、乳癌、脳卒中、および心臓血管梗塞のリスクの増加を含めた様々な障害に最近関係付けられており、多くの女性がこの処置を避ける原因になっている。エストロゲン補充療法に関連する重大な望ましくない作用は、望ましくない副作用も健康リスクも伴わない、骨粗鬆症のための代替療法を開発する必要性を支えている。
【0008】
ビスホスホネートは、破骨細胞の骨吸収活性を「スイッチオフ」して、骨芽細胞を新しい骨の生成に、より効率的に働かせることによって作用する、骨粗鬆症の非ホルモン処置の一形態を提供する。アレンドロン酸ナトリウム(例えば、FOSAMAX(登録商標)、Merck & Co., Inc.、Whitehouse Station、ニュージャージー州)、エチドロン酸二ナトリウムおよび炭酸カルシウム(例えば、DIDRONEL PMO(登録商標)、Procter & Gamble Co.、Cincinnati、オハイオ州)、ならびにリセドロン酸ナトリウム(例えば、ACTONEL(登録商標)、Aventis Pharmaceuticals、Parsippany、ニュージャージー州)を含めた、市場で入手できるビスホスホネート化合物がいくつかある。当該化合物は有益な作用をもたらすことができる。例えば、FOSAMAX(登録商標)ブランドのビスホスホネートで処置された閉経後女性では、脊椎骨折のリスクが50%近く低減することが研究から示されている(例えば、Boneら、N. Engl. J. Med.、350: 1189〜1199(2004)参照)。
【0009】
カルシウムおよびビタミンDの補助食品は、高齢者の骨喪失を低減する有効な処置剤である。大多数の者は食事から十分なカルシウムを得ることができるが、これを困難と考える者にとって、栄養補助食品が代替物となる。カルシウム単独は、骨粗鬆症に対する処置として限られた効果しか有さないが、ビタミンDと併用すると、カルシウムは、自然の太陽光を浴びることができず、粗悪な食事を摂っているおそれのある高齢の外出できない個体に特に有用である。
【0010】
カルシトリオールは、脊椎に骨粗鬆症を有する閉経後女性に与えられる活性型ビタミンDである。ビタミンDなしにカルシウムを吸収することはできないため、カルシトリオールは腸からのカルシウム吸収を改善する。
【0011】
カルシトニンは、骨を分解する破骨細胞が正しく働くことを抑制することによって、骨構築性骨芽細胞の作用を改善する、甲状腺によって作られるホルモンである。この薬物は、骨喪失速度を下げることによって作用し、骨痛を軽減する。しかし、カルシトニンの欠点は、毎日注射しなければならないこと、吐き気を催すおそれがあること、およびエストロゲン補充療法に比べて高価なことである。
【0012】
テストステロンは、この男性ホルモンを欠乏した男性のための処置剤であるが、正常なテストステロン濃度を有する骨粗鬆症の男性の骨密度を増加することもできる。テストステロンは注射剤または植込剤として入手できる。
【0013】
タンパク質同化ステロイドは、骨量および筋量を増加できることから、虚弱な超高齢者および脊椎骨折を有する者にも有用なことがある。副作用があることから、注射が注意深く監視される。
【0014】
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、骨粗鬆症および心疾患のリスクを低減するが、乳癌または子宮内膜癌のリスクを増加させない合成ホルモン補充分子である。一形態であるラロキシフェンは、閉経後女性における骨粗鬆症の予防および処置に承認されている。
【0015】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、利用できる唯一のタンパク質同化薬として、閉経後骨粗鬆症を有する女性の処置に承認された。副甲状腺ホルモンを毎日少量注射すると、新しい骨の形成が増加し、骨密度が増加し、骨折の可能性が減少し得る。
【0016】
特別なサブクラスの形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリータンパク質である骨形成タンパク質(BMP、モルフォゲンとも呼ばれる)が、骨および軟骨の形成だけでなく軟部組織の再生(例えば、腎臓、心臓、眼)にも果たす役割を理解するために、および当該理解を臨床的に有効な治療法に発展させるために、これらのタンパク質は30年以上研究されてきた(例えば、Hoffmannら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、57: 294〜308(2001);Reddi、J. Bone Joint Surg.、83−A(追補1): S1〜S6(2001)米国特許第4968590号;第5011691号;第5674844号;第6333312号参照)。骨折偽関節の修復を促進するために骨折部に外科的に植込んだ骨形成装置での組換えヒトBMP−7の使用が報告されている(Friedlaenderら、J. Bone Joint Surg. Am. 83−A: S151〜S158(2001))。
【0017】
数十年の間、BMPの分野の教示は、BMPが、大部分のタンパク質とは異なり酸に安定で、プロテアーゼに安定で、したがって、哺乳動物の消化系に存在する消化酵素および酸に分解されない経口投与治療薬としての使用に十分に適するというものであった(例えば、米国特許第4968590号;第5674844号;第6333312号参照)。なお、代謝性骨疾患を処置する方法を含めた、様々な治療的処置のためのBMPの使用を記載している米国特許の発行(例えば、米国特許第5674844号;第6333312号)にかかわらず、代謝性疾患を処置するためのBMP経口製剤を含む臨床治療方式は、実際には全く開発または承認されていないようである。これは、BMPが特異的消化管酵素による分解に実際は非常に感受性が高いことが原因のおそれがあり、これは、本明細書において最初に実験的に実証された事実である。
【0018】
骨粗鬆症の処置に進歩がなければ、疾患、骨折、および費用の見積もりは全て増加すると予想される。それは、米国では年齢50歳超の人口が将来にかけて数十年間増加し続けるからである。
【0019】
明らかに、骨粗鬆症と、さらに言えば個体における骨喪失を特徴とする他の代謝性骨疾患とのための有効な治療に関して必要性が残ったままである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書に記載した本発明は、個体に骨形成タンパク質(BMP)を有効に経口投与するための方法および組成物を提供することによって、骨粗鬆症および他の代謝性骨疾患を治療するための上記問題を解決する。本発明は、当技術分野における歴史的な許容された教示とは逆に、BMP分子がヒトおよび他の哺乳動物の消化系に存在する特異的プロテアーゼによるプロテアーゼ分解に感受性であるという発見に基づく。具体的には、BMP−6のようなBMP分子が、プロテアーゼであるペプシンによって哺乳動物の胃で、およびプロテアーゼであるキモトリプシンによって腸で容易に分解されることが今回見出された。本発明の経口(または「経腸」)投与できる製剤は、個体の胃腸管に沿って投与できる組成物を包含する。したがって、個体の口を経由して投与できる、BMPを含む本発明の製剤は、胃内での胃ペプシンによる、および腸管での腸キモトリプシンにもよるBMPの分解を抑制しなければならない。当該製剤は、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤も含む。例えば注射または坐剤により腸に直接投与される製剤は、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤を含有するが、胃が回避されていることから、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤の存在は必要なく、すなわち所望による。本明細書に記載した経口投与できる製剤は、個体の血流中に有効量のBMPが吸収されて、骨塩密度を含めた骨成長を顕著に回復および/または増強させる。骨塩密度は、骨粗鬆症および様々な他の代謝性骨疾患を効果的に処置するのに決定的な、骨成長のパラメータである。本明細書に記載した経口製剤は、代謝性骨疾患以外の疾患または障害を処置するために個体にBMPを経口投与するときにも用途を見出すことができることも認識されている。
【0021】
一実施形態では、本発明は、個体における骨量喪失を特徴とする代謝性骨疾患を処置する方法を提供し、その方法は、
骨誘導性骨形成タンパク質(BMP)または機能的に同等の骨誘導タンパク質と、
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と
を含む製剤をその個体に経口(経腸)投与することを含む。
【0022】
本明細書に記載した方法および製剤に有用な骨誘導性BMPには、BMP−2、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−12、BMP−13、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0023】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活を抑制または阻害するための、本明細書に記載した製剤および方法に有用な薬剤には、pH低下剤、キモトリプシン特異的阻害剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0024】
pH低下剤は、腸内のpHを、または腸管に移行するか、もしくは腸管に投与されたBMP周囲の少なくとも微小環境のpHを効率的に、好ましくはpH5未満に低下させるであろう任意の緩衝薬剤であり得る。
【0025】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性が本発明によるBMPを分解するのを阻害する薬剤には、キモスタチン、Z−L−pheクロロメチルケトン、α2抗プラスミン、アプロチニン(ウシ膵臓トリプシン阻害剤またはBPTIとも呼ばれる)、6−アミノヘキサン酸、α1アンチトリプシン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、ブロモエノールラクトン、ジイソプロピルフルオロリン酸、エコトイン(ecotoin)、N−アセチル−エグリンC(N−acetyl−eglin C)、メシル酸ガベキサート、ロイペプチントリフルオロ酢酸塩、N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、ダイズトリプシン−キモトリプシン阻害剤などがあるが、それに限定されるわけではない。
【0026】
胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害するための、本明細書に記載した製剤および方法に有用な薬剤には、ペプシン阻害剤、腸溶コーティング、胃pH調節剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0027】
ペプシン阻害剤は、ペプシンと結合してそのタンパク質分解活性を阻害する化合物である。本明細書に記載した方法および組成物に有用なペプシン阻害剤には、ペプスタチンA、ペプシノストレプチン(pepsinostreptin)、フェニルメチルスルホニルフルオリドなどがあるが、それに限定されるわけではない。
【0028】
腸溶コーティングは、胃環境の低pHまたは酵素による溶解または分解に対して安定および抵抗性であるが、腸に存在する高pH(例えば5よりも大きい)で容易に溶解するコーティング、フィルム、または他の固体性防御被包を提供するために製剤された一つまたは複数の化合物で作られている。このように、本発明に有用な腸溶コーティングは、BMPのようなコーティングされた治療用化合物が、胃内で胃酵素および酸により分解および/または変性するのを効果的に保護するが、pHがかなり(例えばpH6付近またはそれを超える)アルカリ側の腸に移行すると、血流中に吸収されるために治療用化合物を溶解および放出するであろう。
【0029】
本発明に有用な胃pH調節剤は、有効量のBMPまたは機能的に同等の骨誘導タンパク質が、胃ペプシンによる重大な分解を受けずにさらに高い腸のpH環境に移行するのに十分な時間、胃内のpHを、またはBMPもしくは機能的に同等の骨誘導タンパク質を含む、胃内に存在する製剤周囲の少なくとも微小環境のpHを、典型的なpH3を超えて上昇させる。本発明に有用な胃pH調節剤には、緩衝薬剤(「制酸薬」)、ヒスタミンH2受容体遮断薬(「H2ブロッカー」)、およびプロトンポンプ阻害剤があり得るが、それに限定されるわけではない。
【0030】
別の実施形態では、本発明に記載した方法および経口投与できる製剤は、十二指腸および可能性があることには腸管の他の部分においてBMPのタンパク質分解の制限を仲介できるトリプシン阻害剤をさらに含む。トリプシンは十二指腸で活性なことから、上記の薬剤に類似した、十二指腸キモトリプシンを阻害するための薬剤、すなわち一つまたは複数のpH低下剤(緩衝剤)および/またはトリプシン阻害剤も当該製剤に採用できる。
【0031】
別の実施形態では、本発明の方法および経口投与できる製剤は、腸壁を介した血流中への骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)の吸収を増強する一つまたは複数の薬剤をさらに含む。吸収促進剤は、様々な界面活性剤のうち任意のものまたは界面活性剤の組合せであり得る。本発明に有用な好ましい吸収促進剤には、コレステロール誘導体である陰イオン性薬剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0032】
骨粗鬆症、骨減少症、骨軟化症、パジェット病、薬物誘発性(例えば、ステロイド誘発性)骨減少症、薬物誘発性骨軟化症、栄養性くる病、胃腸障害に関連する代謝性骨疾患、胆道障害に関連する代謝性骨疾患、腫瘍関連骨喪失、低フォスファターゼ血症、および腎性骨ジストロフィーを非限定的に含める、骨成長の喪失を引き起こす様々な代謝性骨疾患を、本明細書に記載した方法および経口製剤を用いて処置することができる。
【0033】
(図面の簡単な記載)
図1は、実施例1に記載した骨粗鬆症ラットモデルにおいてBMP−6の静脈内(i.v.)投与を用いた研究結果のグラフである。このグラフは、偽手術動物を除き卵巣切除(OVX)前後に12週間の処置過程にわたりスキャンしたSprague−Dawley雌性ラットの後肢に関する選択された骨塩密度(BMD)のデータを示す。処置群1(偽手術、OVXなし、三角)、処置群2(OVX対照、酢酸緩衝液(ビヒクル)のみ、i.v.、3回/週、四角)、および処置群5(体重1kgあたりBMP−6 50μg(μg/kg)で処置されたOVX、i.v.、3回/週、菱形)。上下方向の矢印は、OVXの12か月後(−48週間目)での処置の開始(0週目)を示す。星印2個は、群5(BMP−6で処置したOVX、菱形)のデータ点と、群2(OVX対照、酢酸緩衝液、四角)の対応する点との間の差が統計的に有意であること(P<0.005)を示す。詳細は本文を参照のこと。
【0034】
図2は、処置の開始から12週目での実施例1に記載した研究の全処置群における骨粗鬆症ラットモデルの動物の後肢でのBMD値を示す棒グラフである。群1(偽手術)、群2(OVX対照、酢酸緩衝液のみ、3回/週)、群3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.、3回/週)、群4(BMP−6で処置したOVX、25μg/kg、i.v.、3回/週)、群5(BMP−6で処置したOVX、50μg/kg、i.v.、3回/週)、群6(エストラジオールで処置したOVX、175μg/週、3回に分けた投薬50μg、50μg、および75μg/ラットとして各動物に投与、皮下、s.c.)、群7(エストラジオール+BMP−6で処置したOVX;エストラジオール175μg/週、3回に分けた投薬50μg、50μg、および75μg/ラットとして各動物に投与、s.c.;BMP−6 10μg/kg、i.v.、3回/週)。処置群3、4、5、または7のいずれかと群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)とのBMD値の差(P<0.001)は、群3、4、5、または7と処置群6(エストラジオール単独で処置したOVX)とのBMD値の差(P<0.004)と同様に有意である。詳細は本文を参照のこと。
【0035】
図3は、処置の開始から12週目での実施例1の研究における動物の腰椎に関するBMD値を示す棒グラフである。処置群3、4、5、または7のいずれかと、群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)または群6(エストラジオール単独で処置したOVX)とのBMD値の差は有意である(P<0.001)。詳細は本文を参照のこと。
【0036】
図4は、屠殺後の動物の大腿骨遠位部のex vivo DEXA分析によりBMD値を決定した、実施例1における研究結果の棒グラフである。処置群1(偽手術)、3、4、5、6、または7と群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)とのBMD値の差は、統計的に有意であった(P<0.001)。処置群3、4、5、および7のBMD値は、群6(エストラジオール単独で処置したOVX)とのBMD値よりもずっと高い。詳細は本文を参照のこと。
【0037】
図5は、実施例1に記載した研究における選ばれた処置群の動物の大腿骨遠位部における骨塩面積(BMA)の棒グラフである。皮質BMA値は、BMP−6処置した群3、5、および7の方が処置群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)の動物よりも25%高かった。詳細は本文を参照のこと。
【0038】
図6は、実施例1に記載したように処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg)、6(エストラジオールで処置したOVX)、および7(エストラジオール+BMP−6で処置したOVX)における動物の大腿骨遠位部に関する骨容量/骨梁容量比(BV/TV)に関する棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0039】
図7は、実施例1に記載したように処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg)、6(エストラジオール単独で処置したOVX)、および7(エストラジオール+BMP−6で処置したOVX)における動物に関する骨梁幅(mm)に関する棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0040】
図8は、実施例1に記載した研究の処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物の大腿骨遠位骨幹端部(DFM)の骨髄腔における海綿骨の最大荷重(力、ニュートン単位、「N」)として表現した押込試験に関する棒グラフである。星印は、群3と群2との間の差が統計的に有意(P<0.001)であることを示す。詳細は本文を参照のこと。
【0041】
図9は、実施例1に記載した研究の処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物の仕事(W、ミリジュール単位、「mJ」)として表現した大腿骨骨幹中央部の3点曲げ試験の吸収エネルギーパラメータに関する棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0042】
図10は、実施例1に記載した研究の処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物のミリジュール/m(mJ/m)として表現した大腿骨骨幹中央部の3点曲げ試験の靭性(導変数)に関する棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0043】
図11は、実施例1に記載した研究の処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)、および6(エストラジオール単独で処置したOVX)の動物の大腿骨遠位部の組織形態分析に基づく骨梁骨容量に対する骨容量の比(BV/TV)の棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0044】
図12は、実施例1に記載した研究の処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)、および6(エストラジオール単独で処置したOVX)の動物の大腿骨遠位部の石灰化速度(「MAR」、μm/day)を測定する動的組織形態分析に基づくBV/TV値の棒グラフである。星印は、BMP処置動物(群3)およびエストラジオール+BMP−6で処置した動物(群6)が卵巣切除対照動物(群2)に比べて統計的に有意(P<0.001)であることを示す。詳細は本文を参照のこと。
【0045】
図13は、処置群1(偽手術、OVXなし)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.、3回/週)、4(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.、1回/週)、5(BMP−6で処置したOVX、1μg/kg、i.v.、3回/週)に関して実施例2に記載したような高齢(2歳1か月齢)、卵巣切除(OVX)ラットの後肢に関するBMD値の棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0046】
図14は、処置群1(偽手術、三角)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独、四角)、および5(BMP−6で処置したOVX、1μg/kg、i.v.、3回/週、菱形)に関して実施例2に記載した研究における処置時間(週)の関数としての動物後肢BMD値のグラフである。矢印は処置の開始(0週目)を示す。詳細は本文を参照のこと。
【0047】
図15は、実施例3に記載したように、年齢および経路(すなわち経口)の関数としての、経口投与したBMP−6に対するラットに吸収されたBMP−6の率のグラフを示す。動物は、口により経口で(群1では3日齢、群2では15日齢)、または注射器により十二指腸に(群3では45日齢、群4では75日齢)、99mテクネチウム標識BMP−6の投与を受けた。詳細は本文を参照のこと。
【0048】
図16は、実施例3に記載した動物1(酢酸緩衝液中のBMP−6、pH3)、動物2(BMP−6、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸ナトリウム(1mg)、およびDL−ラウロイルカルニチンクロリド(1mg))、および動物3(BMP−6、0.9%NaCl、pH7、タウロデオキシコール酸ナトリウム(1mg)、およびDL−ラウロイルカルニチンクロリド(1mg))に吸収された、十二指腸投与したBMP−6の率の棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0049】
図17は、実施例5に記載した処置群1(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH4)、2(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸1mg、DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg)、3(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸1mg、DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg、ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg)、4(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg)、および5(BMP−6、i.v.、酢酸緩衝液、pH4)における動物に関する静脈内用量に対する率として表現した、十二指腸内(i.d.)投与したBMP−6の吸収を示す棒グラフである。詳細は本文を参照のこと。
【0050】
図18Aおよび18Bは、実施例6に記載した、非緩衝性インキュベーション培地1(図18A)または緩衝性(pH7.4)インキュベーション培地2(図18B)中で0および90分間インキュベートした、反転腸管系における粘膜(M、外側)から漿膜(S、内側)表面への99mTc標識BMP−6の輸送研究の(1分間あたり100万カウント単位の)結果の棒グラフを示す。詳細は本文を参照のこと。
【0051】
図19は、以下の様々な反応からの消化生成物をジチオトレイトールで還元して、BMP−6モノマーを放出させ、電気泳動し、クマシーブルーで染色したものを示すポリアクリルアミドゲルである:実施例7に記載したように、ペプシン0、10、5、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン1〜4)、ペプシン5および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびウシ血清アルブミン(BSA)(それぞれレーン6および7)、ならびにペプシン5および1μLの存在下でインキュベートしたBSA(それぞれレーン8および9)。レーン5は分子量マーカーを含む。ゲルにおけるBSA、ペプシン、およびBMP−6モノマーの相対位置を左右方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0052】
図20は、以下の様々な反応からの消化生成物をジチオトレイトールで還元してBMP−6モノマーを放出させ、電気泳動し、クマシーブルーで染色したものを示すポリアクリルアミドゲルである:実施例7に記載したように、トリプシン0、1、および0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン1、2、3)、キモトリプシン0.5および0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン5および6)、トリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびBSA(レーン7)、キモトリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびBSA(レーン8)、トリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBSA(レーン9)、ならびにキモトリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBSA(レーン10)。レーン4は分子量マーカーを含む。ゲルにおけるBSAおよびBMP−6モノマーの相対位置を左右方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0053】
図21は、実施例7に記載した様々な反応からの消化生成物を電気泳動し、免疫検出(染色)したものを示すポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。ジチオトレイトールを反応混合物に添加してから電気泳動してBMP−6モノマーを検出するか、または添加を控えて(DTTなし)BMP−6ダイマーを検出した。動物1由来の胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン2、3、4(DTTなし))、動物2由来の胃液10、1、および1μlの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン5、6、7(DTTなし))、熱不活性化胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン8、9、および10(DTTなし))。分子量マーカーをレーン1およびレーン10でも泳動させた。詳細は本文を参照のこと。胃液中のペプシン、BMP−6ダイマー、部分消化された「損傷BMP−6ダイマー」、およびBMP−6モノマーの相対位置を左右方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0054】
図22は、実施例7に記載した様々な反応からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。ジチオトレイトールを反応混合物に添加してから電気泳動してBMP−6モノマーを検出するか、または添加を控えて(DTTなし)BMP−6ダイマーを検出した。動物1(それぞれレーン1、2、3(DTTなし))由来および動物2(それぞれレーン4、5、および6(DTTなし))の胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6、ペプシン阻害剤であるペプシノストレプチンと胃液10、1、および1μLとの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン7、8、および9(DTTなし))、ならびに熱不活性化胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン11、12、および13(DTTなし))。BMP−6モノマーをレーン14で泳動させた。BMP−6ダイマー(DTTなし)をレーン15で泳動させた。分子量マーカーをレーン10で泳動させた。BMP−6ダイマーおよびBMP−6モノマーの相対位置を水平矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0055】
図23は、実施例7に記載した様々な反応からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。ジチオトレイトールを反応混合物に添加してから電気泳動してBMP−6モノマーを検出するか、または添加を控えて(DTTなし)BMP−6ダイマーを検出した。動物1(それぞれレーン1および2)由来および動物2(それぞれレーン3および4)の十二指腸液3および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6、酢酸緩衝液(pH3)と十二指腸液3、1、および1μLとの存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン6、7、および8(DTTなし))、ならびに熱不活性化十二指腸液1μlの存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン9)。BMP−6モノマーをレーン10で泳動させた。BMP−6ダイマー(DTTなし)をレーン11で泳動させた。分子量マーカーをレーン5で泳動させた。BMP−6ダイマー、BMP−6モノマー、および「短縮BMP−6」の相対位置を左右方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0056】
図24は、実施例7に記載した様々な反応混合物からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。ジチオトレイトールを反応混合物に添加してから、電気泳動してBMP−6モノマーを検出する(レーン8、9、10、および11)か、または添加を控えて(DTTなし)BMP−6ダイマーを検出した(レーン2、3、4、および5)。十二指腸液1μlの存在下でBMP−6をインキュベートし(レーン2および8)、十二指腸液1μLおよびキモトリプシン阻害剤であるキモスタチン1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン3および9)、十二指腸液1μLおよびダイズトリプシン阻害剤1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン4および10)、ならびに十二指腸液1μLおよびアプロチニン1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン5および11)。BMP−6ダイマー(DTTなし)をレーン1で泳動させた。BMP−6モノマーをレーン7で泳動させた。分子量マーカーをレーン6で泳動させた。BMP−6ダイマーおよびBMP−6モノマーの相対位置を水平方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0057】
図25は、実施例7に記載した様々な反応混合物からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。ジチオトレイトールを反応混合物に添加してから電気泳動してBMP−6モノマーを検出する(レーン2、3、4、および5)か、または添加を控えて(DTTなし)BMP−6ダイマーを検出した(レーン6、7、8、および9)。十二指腸液1μLおよびpH7緩衝液の存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン3および7)、十二指腸液1μLおよびpH4緩衝液の存在下でインキュベートしたBMP−6(それぞれレーン4および8)、ならびに十二指腸液1μLおよびpH5緩衝液の存在下でインキュベートしたBMP−6(レーン5および9)。BMP−6モノマーをレーン2で泳動させた。BMP−6ダイマー(DTTなし)をレーン6で泳動させた。BMP−6モノマーおよびBMP−6ダイマーの相対位置を左右方向の矢印で示す。詳細は本文を参照のこと。
【0058】
図26は、実施例8に記載した骨粗鬆症ラットモデルにおけるBMP−6の経腸投与を用いた研究の結果のグラフである。このグラフは、偽手術動物を除き、卵巣切除(OVX)の前後にスキャンした、Sprague−Dawley雌性ラットの後肢に関する選択された骨塩密度(BMD)データを示す。処置群1(偽手術、OVXなし、n=15、黒菱形)、処置群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独pH3.5、十二指腸内、i.d.、n=10、小四角)、処置群3(500μg/kg BMP−6で処置したOVX、キモトリプシン20μg、アプロチニン20μg、pH7.0、i.d.、週1回、n=14、三角)、処置群4(500μg/kg BMP−6で処置したOVX、キモトリプシン20μg、アプロチニン20μg、pH3.5、i.d.、週1回、n=14、大四角)、および処置群5(300μg/kg BMP−6で処置したOVX、キモトリプシン50μg、アプロチニン50μg、ペプスタチン50μg、pH3.5、胃管を用いた経口デリバリー、週3回、n=14、白菱形)。上下方向の矢印は、OVXの6か月後に処置を開始したことを示す(時間0)。星印2個は、群3(三角)のデータ点と、群2(OVX対照、酢酸緩衝液、小四角)の対応する点との間の差が統計的に有意であることを示す(P<0.005)。星印1個は、群4(大四角)のデータ点と対照群2(小四角)の対応するデータ点との間の差が統計的に有意であることを示す(P<0.05)。詳細は本文を参照のこと。
【0059】
図27は、図26(実施例8)関する上記研究の処置群についての3週間処置を受けた後の3週目での、骨粗鬆症のラットモデル動物の後肢におけるBMD値を示す棒グラフである。処置群1(偽手術)、群2(OVX対照、酢酸緩衝液単独pH3.5、十二指腸内、i.d.)、群3(500μg/kg体重のBMP−6、キモトリプシン20μg、アプロチニン20μg、pH7.0、i.d.、週1回)、および処置群4(500μg/kg BMP−6、キモトリプシン20μg、アプロチニン20μg、pH3.5、i.d.、週1回)。星印2個は、処置群3のBMDと、群2(OVX対照、酢酸緩衝液、四角)のBMDとの間の差が統計的に有意であることを示す(P<0.005)。星印1個は、処置群4または群5のBMDと対照群2のBMDとの間の差が統計的に有意であることを示す(P<0.05)。詳細は本文を参照のこと。
【0060】
(発明の詳細な説明)
本発明は、骨粗鬆症および個体における骨成長喪失または骨量喪失を特徴とする他の代謝性骨疾患のための経口投与処置として使用するための、骨形成タンパク質(BMP)または機能的に同等の骨誘導タンパク質を含む組成物を提供する。BMPの当該経口製剤は、胃ペプシンおよび腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害することにより有効量のBMPが胃から腸管内に移行して、最終的に個体の血流中に吸収されることができる一つまたは複数の薬剤を含み得る。
【0061】
本発明をより明確に理解するために、以下の用語を下記に定義したように使用する。
【0062】
「骨形成タンパク質」、「BMP」、および「モルフォゲン」は同義語であり、特定サブクラスの形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリータンパク質の任意のメンバーを指す(例えば、Hoffmannら、Appl. Microbiol. Biotechnol.、57: 294〜308(2001);Reddi、J. Bone Joint Surg.、83−A(追補1): S1〜S6(2001);米国特許第4968590号;第5011691号;第5674844号;第6333312号参照)。全てのBMPはシグナルペプチド、プロドメイン、およびカルボキシ末端(成熟)ドメインを有する。カルボキシ末端ドメインは、成熟型BMPモノマーであり、システインノットを形成する7個のシステインを特徴とする高度に保存された領域を含む(Griffithら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、93: 878〜883(1996)参照)。
【0063】
BMPは、タンパク質精製法(例えば、Uristら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、173: 194〜199(1983);Uristら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81: 371〜375(1984);Sampathら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84: 7109〜7113(1987);米国特許第5496552号参照)を用いて哺乳動物の骨から本来単離された。しかし、BMPは、腎臓、肝臓、肺、脳、筋肉、歯、および腸を含めた他の哺乳動物組織および器官からも検出または単離されている。BMPは、原核または真核細胞培養で発現させるための標準in vitro組換えDNA技法を用いて生産することもできる(例えば、Wangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87: 2220〜2224(1990);Wozneyら、Science、242: 1528〜1534(1988)参照)。一部のBMPは、そのうえ局所使用用に商業的に入手でき(例えば、BMP−7は、Stryker−Biotech(Hopkinton、マサチューセッツ州、米国)によって長骨骨折偽関節の処置用に製造販売されており、BMP−2はWyeth(Madison、ニュージャージー州、米国)によって長骨急性骨折用に、およびMedtronic, Inc.、Minneapolis、ミネソタ州、米国)によって脊椎固定用にも製造販売されている。
【0064】
BMPは、疎水性相互作用および少なくとも一つの鎖間(モノマー間)ジスルフィド結合によって繋がった同一のモノマーポリペプチドのダイマー(ホモダイマー)として普通は存在する。しかし、BMPはヘテロダイマーを形成することもでき、そのヘテロダイマーは、異なるプロセシング度(長さ)のモノマー(例えば完全長のプロセシングされていないモノマーがプロセシングされた成熟モノマーと会合したもの)または異なるBMPからのモノマー(例えば、BMP−6モノマーがBMP−7モノマーと会合したもの)を組み合わせることによる。プロセシングされていないモノマーのBMPダイマーまたはプロセシングされたBMPモノマー1個とプロセシングされていないBMPモノマー1個とのBMPヘテロダイマーは、水溶液中で概して可溶であるが、二つの完全にプロセシングされた(成熟)モノマーから成るBMPホモダイマーは、低pHの水溶液(例えば、酢酸緩衝液、pH4.5)中でのみ可溶である(例えば、Jonesら、Growth Factors、11: 215〜225(1994))。
【0065】
本発明に有用なBMPは、骨誘導活性、すなわち骨形成を刺激する能力を有するものである。骨誘導(または「骨形成」)活性を、様々な標準アッセイのうち任意のものを用いて検出できる。当該骨誘導アッセイには、異所性骨形成アッセイがあり、そのアッセイでは、コラーゲンおよびBMPを含む担体マトリックスをげっ歯動物の異所性部位に植込み、次に骨形成についてその植込み物を監視する(SampathおよびReddi、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、78: 7599〜7603(1981))。当該アッセイの変形では、マトリックスを異所性部位に植込んで、BMPをその部位に、例えば静脈内注射によりげっ歯動物に投与できる(下記実施例4および9も参照)。BMPの骨誘導活性をアッセイする別の方法は、BMPと共に培養線維芽細胞前駆細胞をインキュベートして、次に軟骨細胞および/または骨芽細胞への分化についてそれらの細胞を監視することである(例えば、Asahinaら、Exp. Cell. Res. 222: 38〜47(1996)参照)。骨誘導活性を有し、したがって本発明に有用なBMPには、天然起源から精製されたか、組換え生成されたか、または全体もしくは部分的にin vitroタンパク質合成法により生産されたかのいずれにせよ、BMP−6、BMP−2、BMP−4、BMP−7、BMP−9、BMP−12、BMP−13、およびそのヘテロダイマーがあるが、それに限定されるわけではない。骨誘導活性を有するBMPは、損傷した軟部組織または器官、例えば虚血腎を回復または再生する能力のような、一つまたは複数の他の有益な薬理学的活性も保有することがある(Vukicevicら、J. Clin. Invest.、102: 202〜214(1998))。
【0066】
本明細書に記載したBMPを含む組成物および方法は、公知の骨誘導性BMP以外のタンパク質が、上記のような標準骨誘導アッセイ(例えば線維芽細胞前駆細胞から軟骨細胞および/または骨芽細胞への分化のアッセイ)によって示される骨誘導活性を有する点で当該タンパク質がBMPに機能的に同等であるという条件で、そのタンパク質を代替的に含み得ることも了解されている。本発明のために、当該代替骨誘導タンパク質は胃腸での分解に対して等しい感受性を表すであろうから、本発明による経口製剤を作成するときに保護剤の存在から利益を得るであろうと推定される。しかし、当該骨誘導タンパク質がそのような酵素分解に対してBMPほど感受性をもたない程度まで酵素中和剤を減少させるか、または除去して、有効な経口製剤を作成するのが可能なことがある。機能的に同等のタンパク質には、種々なBMPホモログ、すなわち公知の骨誘導性BMPに相同なアミノ酸配列を有するタンパク質と、ペプシンおよびキモトリプシンによる分解に感受性のタンパク質とが含まれ得る。当該BMP相同体は、天然であるか、組換え生成されたか、または全体もしくは部分的に合成生産されたものであり得る(例えば、米国特許第5674844号;第6333312号参照)。
【0067】
別に述べない限り、用語「障害」および「疾患」は同義語であり、原因または原因因子にかかわらず、任意の病理学的状態を指す。
【0068】
「薬物」は、薬理活性を有する任意の化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、有機分子)または組成物を指す。このように、「治療薬」は、疾患の一つまたは複数の症状を改善することを含めて、疾患を処置するために個体に投与して所望の薬理活性を提供できる化合物または組成物である。「予防薬」は、個体に投与して個体における疾患の発現を予防または防御できる化合物または組成物である。薬物は予防的使用も治療的使用も有することがある。例えば、本発明による組成物を経口投与して、個体の骨粗鬆症または他の代謝性骨疾患を処置することは、健康な骨成長を促進し、それは順番に骨折、骨格変形、ならびに進行段階の骨粗鬆症および他の代謝骨疾患に関連する他の合併症に対して高まった感受性を発現することからその個体を防御する。したがって、別に示さない限り、本発明による疾患の「処置」(または「処置すること」)は、個体に本明細書に記載した製剤を経腸投与して、その個体に治療および/または予防有益性を提供することを含む。
【0069】
用語「組成物」、「処方(formulation)」、「製剤(preparation)」などは同義語であり、一つまたは複数の化合物から成り得る組成物を指す。骨粗鬆症または他の代謝性骨疾患を処置するための、本明細書に記載したBMPを含む経口製剤は、胃ペプシンおよび/または十二指腸キモトリプシンによるBMPのタンパク質分解を抑制または阻害するために特異的に製剤される。
【0070】
「代謝性骨疾患(または障害)」は、直接的には身体外傷の結果ではない、骨成長の任意の病理を指す。代謝性骨疾患には、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病(変形性骨炎)、および骨軟化症があるが、それに限定されるわけではない。本発明により処置されうる他の骨障害には、薬物誘導性(例えばステロイド誘導性)骨減少症、栄養性くる病、胃腸障害に関連する代謝性骨疾患、胆道障害に関連する代謝性骨疾患、腫瘍関連骨喪失、低フォスファターゼ血症、薬物誘導性骨軟化症、および腎性骨ジストロフィーがあるが、それに限定されるわけではない。
【0071】
「骨粗鬆症」は、医学および代謝性骨疾患の分野で公知の意味を有する。上述のように、骨粗鬆症は、低い骨量および骨組織の悪化の結果として骨脆弱性および骨折感受性の増加が生じることを特徴とする全身骨格疾患である。骨粗鬆症は、骨吸収が優勢なことにより正常な骨の内部蜂巣状または網状構造の小孔が大きくなるが、網状構造に新しい骨が同時に復元しないことによって、骨が脆弱になり容易に骨折しやすくなる場合に生じる。骨粗鬆症は、普通は骨格全体を冒すが、手首、脊椎、および股関節の骨に破損(骨折)を起こすことが最も多い。
【0072】
「薬学的に許容できる」により、生物学的、化学的、または他のいかなる方法でも身体化学的性質および代謝に不適合性ではなく、本発明による障害(例えば、骨粗鬆症または他の代謝性疾患)を処置または予防するために個体に投与できる組成物中の骨形成タンパク質または他の任意の構成要素の所望の有効活性に有害な影響も与えない物質を意味する。
【0073】
本明細書に記載した製剤を、「経口」、「経口投与できる」、「経腸」、「経腸投与できる」、「非経腸」、「非経腸投与できる」などと称して、消化管に沿ったどこかで個体に有効量のBMPをもたらすためにその製剤を投与する経路または様式を示すことができる。当該「経口」または「経腸」投与経路の例は、経口、例えば固体(例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤)または液体(例えばシロップ剤)の化合物または組成物を嚥下すること;舌下(舌下での吸収);経鼻空腸管または経鼻胃管(胃内);十二指腸内(i.d.)投与(例えば、個別の注射によるか、またはポンプを介する);および直腸投与(例えば、吸収のために下部消化管に化合物または組成物を投与するための坐剤)があるが、それに限定されるわけではない。本発明において一つまたは複数の経口(経腸)投与経路を採用できる。個体における代謝性骨障害を処置するために特に好ましいBMPの投与経路は、BMPと、胃ペプシンおよび十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤とを含む、本明細書に記載した製剤を、個体に嚥下させることである。このように、本明細書に記載した特定の種類の「経口」製剤を特定するか、または状況もしくはその特定の成分の記載により別に示さない限り、「経口」製剤は「経腸」製剤と同じであり、消化管に沿った一つまたは複数の部分で個体に投与することができる製剤を広く包含する。
【0074】
「非経口」および「非経口的に」のような用語は、消化管に沿った以外に、個体に化合物または組成物を投与する経路または様式を指す。非経口投与経路の例には、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、動脈内(i.a.)、腹腔内(i.p.)、経皮(皮膚または皮層を介した吸収)、鼻腔内または肺内(例えば、呼吸器粘膜または肺を介して吸収するための吸入または噴霧による)、体腔または器官への直接注射または注入、あるいは身体へ化合物または組成物を能動または受動放出させる任意の様々な装置を体内に植込むことによるものがあるが、それに限定されるわけではない。
【0075】
アミノ酸残基は、正式名称、または当技術分野で公知の対応する標準3文字もしくは1文字略語で呼ぶことができる。
【0076】
他の用語の意味は、使用の状況から明らかであろうし、別に示さない限り、医学、代謝性骨障害、および薬理学の分野の技術者に了解される意味に一致する。
【0077】
30年間を超える研究、何冊もの参考文献、および骨粗鬆症を処置する方法を含めた、様々な治療的処置のためのBMPの潜在的使用を目的とした米国特許の発行(例えば、米国特許第5674844号;第6333312号参照)にかかわらず、代謝性骨疾患を処置するための有効な経口製剤も、BMPの経口投与を含む有効な臨床治療方式も得られていない。本明細書に最終的に示すように、BMPが哺乳動物の消化系中の消化酵素および酸による分解に抵抗性であり、したがって、経口製剤および経口治療に容易に従う(同上)という、当技術分野において以前に受け入れられていた教示は、明らかに正しくない。特に、経口投与された有効量のBMPが体内に吸収されて有効な治療結果を生み出すために、腸の特異的タンパク質分解活性、特に胃のペプシンおよび十二指腸のキモトリプシンからBMPを防御しなければならない(例えば、下記実施7および8参照)。BMPの特異的タンパク質分解感受性が解明されたことから、代謝性疾患および損傷した組織を処置するための、これらの化合物の新しく有用な治療用経口製剤に関する基礎が今回提供される。本明細書に特に記載したように、BMPを含む経口製剤は、骨粗鬆症および他の代謝性骨疾患のような代謝性疾患を治療するために有用である。
【0078】
胃ペプシンは、胃の酸性(pH3)環境でタンパク質分解が活性である。キモトリプシンは、十二指腸および腸管で一般にみられるように、それよりも高いpH範囲(例えばpH7)で活性である。下記にさらに詳細に説明したように、本発明の経口製剤は、BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)と、BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)に対する胃ペプシンおよび/もしくは腸キモトリプシンの接触を抑制し、かつ/または哺乳動物消化管(腸)におけるこれらの酵素のタンパク質分解活性を阻害することによって、経口投与したBMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)の有効量を、胃を通過して、血流中に吸収されるために腸に移行させる一つまたは複数の薬剤とを含む。
【0079】
胃ペプシンによるBMPの分解を抑制する薬剤
ペプシンは、(胃内のような)pH3で活性であり、6を超えるpHで不可逆的に不活性化される胃酵素である。ペプシンは、感受性タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのアミノ酸配列におけるフェニルアラニン(Phe)、ロイシン(Leu)、またはグルタミン酸(Glu)残基のカルボキシル側でそのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを選択的に開裂する。この酵素は、バリン(Val)、アラニン(Ala)、またはグリシン(Gly)を含む結合を開裂しない。本発明によるBMPの経口投与用組成物は、BMPが胃内にある間に胃ペプシンにより分解されるのを抑制する一つまたは複数の薬剤を含むことがある。
【0080】
BMPの経口投与用の本発明の製剤は、様々な腸溶コーティングのうち任意のものを用いて包むか、または別なように胃酵素および酸から隔離することができる。当該腸溶コーティングは、低pHまたは胃環境の酵素による溶解または分解に安定および抵抗性であるが、腸に存在するような高い(例えば5よりも大きい)pHで容易に溶解するコーティング、フィルム、または他の固体性防御被包を概して提供する。このように、本発明に有用な腸溶コーティングは、胃でペプシンまたは他の任意の胃酵素により分解されることから有効量のBMPを保護して、pHがかなり高い腸内に移行した場合、腸溶コーティングは溶解して血流中に吸収されるためにBMPを放出するであろう。本発明による経口投与用BMPを調製するのに有用な腸溶コーティングは、胃の酵素および/または酸による分解または変性から、経口送達された治療剤を防御するのに必要な性質を有する、任意の様々な薬学的に許容できる化合物を含むことがある。非限定的に酢酸フタル酸セルロース(「CAP」)、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチルコポリマー、およびその組合せを非限定的に含めた様々な薬学的に許容できる化合物が、当該腸溶コーティングを調製するために公知である。腸溶コーティングした製剤を、薬学的に許容できる溶解可能な様々な種類のシェルにさらに被包することができる。
【0081】
胃内のpHを、または胃内に存在するBMP周囲の少なくとも微小環境のpHを、BMPが胃を通過して腸管に移行するのに十分な時間、ペプシンによる重大なタンパク質分解活性に関する至適pHを超えたレベルに上昇させる胃pH調節剤を用いて、胃ペプシンによる分解からBMPを防御することができる。ペプシン介在性タンパク質分解活性は、pH4で顕著に低く、5を超えるpHでは本質的に不活性である。したがって、本明細書に記載した製剤に有用な胃pH調節剤は、様々な緩衝薬剤のうち任意のもののことがあり、胃pHを4から7の範囲に一過性に上昇させる胃「制酸薬」とも称される。好ましくは、胃pH調節剤は胃pHを少なくとも5に上昇させる。本明細書に記載した製剤に胃pH調節剤として使用できる制酸薬には、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸アルミニウムゲルなどがあるが、それに限定されるわけではない。ヒスタミンH2受容体を遮断する化合物(「H2ブロッカー」)も、本明細書に記載した組成物および方法に胃pH調節剤として使用することができる。当該H2ブロッカーには、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジンなどがあるが、それに限定されるわけではない。本明細書に記載した方法および組成物に胃pH調節剤として働くことができるなお別の種類の化合物は、プロトンポンプを阻害する化合物である。当該プロトンポンプ阻害剤には、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、アベプラゾール(abeprazole)などがあるが、それに限定されるわけではない。本明細書に記載した製剤に使用する胃pH調節剤の適切な量は、胃制酸薬、H2ブロッカー、またはプロトンポンプ阻害剤を調製するための当業者の常法に従い容易に決定される。BMPの経口製剤は、一つを超える胃pH調節剤も含むことができる。
【0082】
BMPの胃ペプシン介在性タンパク質分解は、ペプシンに結合して酵素のタンパク質分解活性を阻害する一つまたは複数のペプシン特異的阻害剤化合物を用いて抑制することもできる。当該ペプシン阻害剤には、ペプスタチンA、ペプシノストレプチン、フェニルメチルスルホニルフルオリドなどがあるが、それに限定されるわけではない。
【0083】
ペプシン阻害剤、pH調節剤、またはその組合せがペプシンのタンパク質分解活性を阻害する有効性は、ペプシン介在性タンパク質分解活性に関する標準in vitroアッセイで最初は試験することができる(例えば、下記実施例7および8参照)。
【0084】
キモトリプシンによるBMPの分解を抑制する薬剤
キモトリプシンは、ペプチド結合のカルボキシル側で(アミノ酸Tyr、Trp、Phe、Metのように)芳香族または大きな疎水性側鎖を有するペプチド結合を加水分解するセリンプロテアーゼである。キモトリプシンは、タンパク質分解活性に関して至適pH7.8を有する腸酵素である。本発明によるBMPを経口投与するための組成物は、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する一つまたは複数の薬剤を含むことがあり、これによって腸管に存在する有効量のBMPが血流中に吸収され得る。
【0085】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性は、腸内のpHを、または腸、例えば十二指腸に存在するBMP周囲の少なくとも微小環境のpHを、BMPが血流中に吸収されている時間に重大なタンパク質分解活性が生じない程度に低下させることによって阻害できる。様々な薬学的に許容できるpH低下剤(緩衝剤、緩衝薬剤)のうち任意のものを使用して、例えば本発明による製剤が胃から十二指腸に移行するか、または十二指腸内もしくは直腸に注射されたときに、好ましくはpH5未満に、少なくとも腸管の十二指腸でのpH低下に作用させることができる。嚥下された、本発明によるBMPの経口製剤は、好ましくはBMPが十二指腸に移行して初めてpH低下剤を放出する。十二指腸に移行したBMPの少なくとも微小環境のpHを低下させるのに有用な緩衝剤には、酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸、グルタル酸、ピルビン酸、グリセリン酸、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。酸の塩形態により緩衝剤を参照することは、特定のpHで存在し得る対応する酸形態も包含することが了承されている。
【0086】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害する別の手段は、キモトリプシンと結合して阻害する一つまたは複数の化合物を採用することである。本明細書に記載した経口製剤に使用できる当該キモトリプシン阻害剤には、キモスタチン、Z−L−pheクロロメチルケトン、α2抗プラスミン、アプロチニン(「ウシ膵臓トリプシン阻害剤」または「BPTI」とも呼ばれる)、6−アミノヘキサン酸、α1アンチトリプシン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、ブロモエノールラクトン、ジイソプロピルフルオロリン酸、エコトイン、N−アセチル−エグリンC、メシル酸ガベキサート、ロイペプチントリフルオロ酢酸塩、N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、ダイズトリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0087】
キモトリプシンを阻害する薬剤は、様々な食用穀物およびダイズを含めたある種の植物にもみられる。したがって、植物、例えばコメ、ダイズ、オートムギ、およびコムギの抽出物、生成物、または亜画分も、本明細書に記載した製剤に存在することもあるし、また、その製剤と共に投与されることがあり、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を特異的に抑制または阻害する。
【0088】
一つもしくは複数のキモトリプシン阻害剤、または一つもしくは複数の緩衝薬剤がキモトリプシンを阻害するの有効性を、キモトリプシン介在性タンパク質分解活性に関する任意の標準in vitro酵素アッセイで最初は試験できる(例えば、下記実施例7および8参照)。
【0089】
腸トリプシンによるBMPの分解を抑制する薬剤
トリプシンは、リシン(Lys)およびアルギニン(Arg)のカルボキシル結合でペプチド、アミド、およびエステルを特異的に加水分解する。トリプシンは至適pH7.6を有する腸酵素でもある。十二指腸に存在するトリプシンは、所望の骨誘導薬理活性に大きく影響せずにBMP−6モノマーポリペプチドのわずかな短縮を引き起こすことができるようである(例えば、下記実施例7および図20参照)。それにもかかわらず、BMPを含む経口製剤にトリプシンのタンパク質分解活性を阻害または抑制する薬剤を含ませるのが理想的なことがある。例えば、BMPの限られた分解でさえも、変性またはさらなる分解に対する感受性がさらに大きくなるリスクを冒すおそれがあることから、BMPが例えば持続放出製剤または受動ポンプ製剤の形で腸管に比較的ゆっくりと放出され、腸管から吸収される見込みの場合は、腸トリプシンのタンパク質分解活性を阻害または抑制するために一つまたは複数の薬剤を使用するのが好ましいことがある。トリプシンは十二指腸に存在することから、キモトリプシンを阻害するための上記薬剤に類似した薬剤、すなわち一つまたは複数のpH低下剤(緩衝剤)および/またはトリプシン阻害剤も当該製剤に採用できる。
【0090】
トリプシンタンパク質分解活性を阻害する様々な化合物が公知である。本発明の製剤および方法に使用できる当該トリプシン阻害剤には、アプロチニン(「ウシ膵臓トリプシン阻害剤」または「BPTI」とも呼ばれる)、α2抗プラスミン、抗トロンビンIII、α1アンチトリプシン、アンチパイン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、p−アミノベンズアミジン二塩酸塩、デリン、ベンズアミジン塩酸塩、ジイソプロピルフルオロリン酸、3,4−ジクロロイソクマリン、エコチン(ecotin)、メシル酸ガベキサート、ロイペプチン、α2マクログロブリン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、N−α−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、トリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0091】
経口(経腸)投与のためのBMPの製剤
BMPの有効な経口(経腸)投与、すなわち口または消化管に沿った任意の部分による投与を可能にする様々な組成物(製剤)を生産できる。一般に、嚥下される組成物は、胃ペプシンおよび腸キモトリプシンによる分解からBMPを防御する一つまたは複数の薬剤を含有しなければならない。任意の単一の組成物に限定することを意図するわけではないが、本発明に有用な経口製剤の一例は、十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害する薬剤と共に、BMPを包むか、被包するか、または別なように隔離する腸溶コーティングを採用できる。様々な薬学的に許容できる溶解できるシェルのうち任意のものの中に、腸溶コーティングされた製剤をさらに被包することができる。例として、当該シェルは、ゼラチン、色素、二酸化チタン、アルキルアルコール、水酸化ナトリウム、プロピレングリコール、セラック、およびピリビニルピロリドンのような一つまたは複数の不活性成分を含有することがある。腸溶コーティングされた製剤は、胃を通過する間は無傷なままであり、胃ペプシンおよび酸がBMPを分解または変性するのを抑制する。上記のような特異的ペプシン阻害剤および/または(例えば胃pHを上昇させるための)制酸薬を含ませて胃ペプシンによる分解に対して追加の防御をもたらすことも理想的であり得る。(例えば、満杯の胃、他の薬物療法の作用などが原因で)胃の通過が通常よりも遅いおそれがあるならば、胃ペプシンに対する当該追加の防御は特に好ましいことがある。十二指腸に移行するときに、製剤の腸溶コーティングは腸管のさらに高いpHで溶解して、キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する一つまたは複数の薬剤と共にBMPを放出する。上述のように、キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害する薬剤は、pH低下剤(例えば緩衝剤)、キモトリプシンの特異的阻害剤、キモトリプシンを阻害する植物抽出物もしくは亜画分、またはその組合せであり得る。本明細書に記載した経口製剤に有用なpH低下剤は、酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸、グルタル酸、ピルビン酸、グリセリン酸、およびその組合せから成る群から選択されるもののような緩衝剤であり得る。腸でのBMPの吸収が普通よりも長いと予想される(例えば遅延または長期放出製剤、満杯の腸管、他の薬物療法の作用などの場合であり得る)ならば、pH低下剤と、一つまたは複数のキモトリプシン特異的阻害剤との両方を含ませることが特に理想的なことがある。さらに、pH低下剤はトリプシンのような他の腸プロテアーゼを阻害すると予想されるが、特に腸から血流中へのBMPの吸収が異常に長いまたは遅延していると予想されるならば、トリプシン特異的阻害剤も同様に含ませることが理想的なことがある。
【0092】
製剤が胃を回避する方法で個体に経腸投与されるならば、胃ペプシンタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤は、その製剤の必要構成要素ではない(すなわち所望による構成要素である)ことも了承されている。当該製剤の例には、骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)を(例えば直腸に挿入したときに)腸に放出する坐剤および十二指腸または結腸に(例えば、単回注射により、またはポンプで連続的に)直接注射できる製剤があるが、それに限定されるわけではない。そのような場合には、懸念は、腸プロテアーゼ、特にキモトリプシンによる分解から骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)を防御することに関し、血流中への有効量の骨誘導性BMPの吸収を増強することにも関する。したがって、骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)に追加して、当該製剤は、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する一つまたは複数の薬剤も好ましくは含み、トリプシンのような他の腸プロテアーゼのタンパク質分解活性を抑制または阻害する一つまたは複数の薬剤も含み得る。
【0093】
本発明による製剤は、腸壁を介した血流中への骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)の吸収を増強する一つまたは複数の薬剤も含み得る。吸収促進剤は、様々な界面活性剤のうち任意のものまたは界面活性剤の組合せであり得る。例えば、腸管に直接投与される、本発明の製剤に有用な吸収促進剤には、コレステロール誘導体である陰イオン性薬剤、陽イオン界面活性剤、、非イオン界面活性剤、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。コレステロール誘導体である陰イオン性薬剤には、胆汁酸、例えばコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、フシジン酸、グリコール酸、デヒドロコール酸、リトコール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸などがある。陽イオン界面活性剤には、アシルカルニチン、アシルコリン、ラウロイルコリン、塩化セチルピリジニウム、陽イオン性リン脂質などがある。非イオン界面活性剤には、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、BRIJ非イオン洗剤)、p−t−オクチルフェノールポロキシエチレン(例えば、TRITON X−100非イオン洗剤)、ノニルフェノキシポロキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどがある。
【0094】
消化管に沿った投与部位に応じて、本発明の製剤は、重大な濃度のキモトリプシンがみられる十二指腸を特にその製剤が通過するであろうならば、上記のようなpH低下剤および/または腸プロテアーゼ一つもしくは複数の特異的阻害剤も含み得る。結腸下部(すなわち直腸を介して)に投与された坐剤も、pH低下剤ならびに/または十二指腸キモトリプシンおよび所望により他のプロテアーゼ(例えばトリプシン)に有効な一つもしくは複数の特異的阻害剤を含む。それは、当該酵素が個体の結腸に移行するか、または別なようにみられることがあるからである。
【0095】
代謝性骨障害患者の骨の評価
上述のように、骨粗鬆症のような代謝性骨障害の証拠は、骨折、例えば手首、脊椎、または股関節の骨折が臨床的に現れた部分に、障害が進行して初めて認められることが多い。従来のX線、放射線吸収法、磁気共鳴画像法(MRI)、および最近開発された二重エネルギーX線吸収(DEXA)分析を非限定的に含めた、当技術分野で公知のいくつかの標準法のうち任意のものによって、個体の骨、骨塩密度(BMD)、および/または骨塩含量(BMC)の状態を評価できる。DEXA分析は、個体の骨のBMDに関する特に精度の高い、非侵襲分析を提供し、したがって骨減少症および骨粗鬆症のような進行性代謝性骨疾患を比較的初期段階でも診断して、本明細書に記載した方法および組成物を用いてBMDの増強または回復を監視する特に好ましい方法である(例えば、下記実施例1および図4参照)。
【0096】
治療用組成物および方法に関する追加の考察
骨成長喪失を特徴とする代謝性骨疾患を治療する本発明の方法は、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制もしくは阻害する一つもしくは複数の薬剤および/または十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制もしくは阻害する一つもしくは複数の薬剤と共に、有効量の骨誘導性BMPを個体に投与することを含み得る。好ましくは、BMPと、特定の腸酵素のタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤とを含む経口製剤は、個体によって嚥下され、胃を通過して腸管に移行して、そこで血流中に吸収されるために有効量のBMPが放出される。しかし、一部の状況、例えば坐剤または胃もしくは腸管に組成物もしくは薬剤(類)を局所的に注射できる能動もしくは受動ポンプでは、当該薬剤および/またはBMPを消化管に沿った部分に直接投与することができる。本発明の製剤の経口投与は、個体に挿入した経鼻空腸管または胃造ろう管のような機械的装置の助けを借りて投与することもできる。
【0097】
上述のように、一つまたは複数の腸酵素のタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤は、BMPと同じ組成物中に存在することがあるが、腸酵素によるタンパク質分解からのBMPの所望の防御が、有効量のBMPが腸に達して血流中に吸収されるのに十分であるという条件で、当該薬剤を別々の組成物として連続して、または同時に当該薬剤を送達できる可能性もある。
【0098】
本発明の経口製剤が、その製剤に存在するBMPの骨誘導活性に追加して一つまたは複数の追加の薬理学的有益性または薬理活性を提供する一つまたは複数の追加の治療用化合物をさらに含み得ることも了承されている。当該追加の治療法化合物は、経口投与されたBMPの所望の骨誘導活性を大きく減少させてはならない。
【0099】
本明細書に記載した製剤に存在する、様々な腸酵素のタンパク質分解活性を阻害または抑制する薬剤の至適量は、薬学的製剤の分野の専門家によって採用される日常的な分析手順によって決定することができる。
【0100】
骨粗鬆症のような代謝性骨障害を有するか、有する疑いがあるか、または有するリスクがある特定の個体(患者)のための投薬は、その患者を特徴付ける様々な臨床パラメータ、例えば嚥下能力、年齢、性別、体重、可能性のある遺伝的要因、一つまたは複数の他の疾患の証拠などを考慮して、熟練した担当医療提供者によって決定されるであろう。非限定的な例として、0.5mg/日から5mg/日の範囲の用量で、BMP−6のようなBMPを個体に経口投与することができる。このように、0.5mg/日から5mg/日の用量を本明細書に記載した組成物および方法に使用することができる。処置を開始するために特に有用で、処置過程の間にも維持できる用量は、BMP0.5mg/日である。さらに、定期的または周期的にBMPを個体に投与でき、例えば、ある期間個体に投与し、ある期間停止し、次に再開できる。投薬過程または投薬の繰り返しに関する制限は、概して担当医療提供者が当該投薬もしくは繰り返しが特定の個体にさらなる有益性をもたらすことができるかどうか、および/または特定用量の使用もしくは個体にBMPを経口投与する期間を制限するであろう急性もしくは慢性副作用の証拠が何かあるかどうかに基づくであろう。
【0101】
当業者は、質量、例えば、1日に投与される薬物のマイクログラム(μg)またはミリグラム(mg)により、BMPのような薬理学的活性化合物の用量を表現できるだけでなく、個体の体重または質量1キログラムあたりのBMPの量(例えば、μg/kg、mg/kg)、表面積あたりの量(例えば、μg/m、mg/m)、製剤の単位容量あたりのmg(例えば、mLあたり)などを非限定的に含めた他の単位でも表現できるのを承知していることも了承されている。本明細書に使用するmg/日による、ヒトに対する投薬量の論考は、個体あたり1日あたりのmgを指し、通常使用される標準である70kgのヒト男性患者に基づく。同様に、体重(質量)1kgあたりの化合物のmgによる、ヒトに対する投薬の論考は、70kgのヒト男性を仮定している。したがって、特定の個体または個体集団に対して用量を修飾しなければならないことがあると了承されている。例えば、これは骨粗鬆症の場合に特に関連する。骨粗鬆症を有すると診断された個体の約80%が閉経後の女性であり、彼女らの多くが体重70kg未満であり、健康な個体(男性または女性)に比べて体重および骨の構造が比較的ひ弱なことがある。よって、70kgを超えるかまたは70kg未満の個体を処置するときは、標準的な薬理学的調整により用量を適切に修飾できることが了承されている。したがって、本明細書に記載した用量の様々な例は、本明細書に記載した、BMPを含む特定の経口製剤で特異的な個体または個体集団を処置するために必要な様々な他の投薬単位(およびその逆)に当業者によって容易に変換される。
【0102】
本発明の本記載にわたり挙げたように、個体の胃に嚥下または別なように投与されるBMPの経口製剤は、胃ペプシンおよび腸キモトリプシンによるBMPのタンパク質分解を抑制する一つまたは複数の薬剤も含まねばならない。当該製剤は、腸トリプシンも同様に阻害する薬剤をさらに含むことができる。製剤が腸、例えば坐剤または腸への注射を介して個体に直接投与されるならば、胃ペプシン活性を阻害する薬剤は必要なく、すなわち所望による構成要素である。
【0103】
胃および腸におけるBMPの分解を抑制する、上に挙げた有用な薬剤に追加して、さらに一般には、標準的な薬学のプロトコールおよび教科書(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、Alfonso R. Gennaro編(Mack Publishing Co.、Easton、ペンシルベニア州、1990))により、経腸経路により個体に投与するために本発明の組成物を製剤できる。錠剤、ミニ錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、発泡性固体、チュアブル固体錠剤、ソフトゲル剤、カプレット剤、水溶液剤、懸濁剤、乳剤、マイクロエマルション、シロップ剤、またはエリキシル剤を非限定的に含めた様々な投薬剤形のうち任意のものに、骨誘導性BMP(または機能的に同等の骨誘導タンパク質)を含む経口(経腸)投与のための本発明の組成物を調製できる。経口使用用の錠剤の場合、通常使用される担体には、乳糖およびコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も添加できる、カプセル剤、錠剤、丸剤、およびカプレット剤を非限定的に含めた一部の剤形は、個体の腸管へのBMPの遅延、延長、または徐放をもたらす製剤にも特によく適することがある。望むならば、ある種の甘味料および/または着香料および/または着色料を添加することもできる。
【0104】
このように、BMPと胃ペプシンおよび/または十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害または抑制する一つまたは複数の薬剤とを含む組成物は、当技術分野で公知の多数の様々な薬学的に許容できる緩衝剤もしくは担体、賦形剤、または佐剤のうち任意のものも含むことができる。それらは、個体へのさらに効率的であるか、もしくは痛みのない(例えば成分の組合せ、嚥下の容易さ、注射の容易さ、挿入の容易さを増強するための)投与、個体の腸管へのBMPのさらに効率的な、もしくは持続放出デリバリー、および/または組成物をより長く保存するための安定性(例えば保存寿命の延長)を非限定的に含めた一つまたは複数の有益な性質をもたらすことができる。したがって、本発明の医薬組成物は、経腸デリバリー用製剤に採用できるいくつかの化合物のうち任意のものをさらに含むことができる。その化合物には水、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、緩衝化合物(例えば、酢酸、リン酸、グリシン)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、および塩または他の電解質(例えば、塩化ナトリウム、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸エステル、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、脂肪、およびその組合せがあるが、それに限定されるわけではない。
【0105】
本発明の追加の実施形態および特性は、以下の非限定的な実施例から明らかになるであろう。
【0106】
(実施例)
下記研究において動物に投与したBMP−6の用量を、「キログラムあたり」(「/kg」)の特定量として表示する場合、当該表示は、個別の動物の「体重1キログラムあたり」を意味するものとする。
【0107】
実施例1. 高齢卵巣切除ラットに静脈内投与した骨形成タンパク質−6(BMP−6)の用量反応および有効性
本研究は、BMP−6の静脈内投与が骨粗鬆症ラットモデルにおいて骨成長の促進に有効なことを示す。
【0108】
材料および方法
動物および研究プロトコール。 4月齢Sprague−Dawley雌性ラット160匹を本研究に使用した。動物の体重は約300グラムであった。研究中は、標準条件(24℃および12時間/12時間の明/暗サイクル)で20×32×20cmのケージに入れて、これらのラットを飼育した。全ての動物が、水と、1キログラムあたり1.00%カルシウム、0.65%リン、および2.40KIUビタミンD3を含有する市販の固形飼料(Harlan Teklad、Borchen、ドイツ)とを自由に摂取できるようにした。エストラジオールとしてエストロゲンを投与した。トランスフェクトしたCHO細胞から標準的な手順に従って組換えBMP−6を調製した。
【0109】
−14および−4日目に、カルセイングリーン標識方式(15mg/kg、腹腔内、i.p.)を動物に施行し、それによって活動性の骨形成表面に二重蛍光色素標識の沈着が生じた。
【0110】
動物40匹に偽手術を行い、残りには経腹的到達法により両側の卵巣切除(OVX)を行った。卵巣切除の12か月後に以下のように処置を開始した。
群1. 偽手術
群2. ビヒクル(酢酸緩衝液、週3回、i.v.)で処置したOVX対照
群3. BMP−6(週3回、10μg/kg、静脈内、i.v.)で処置したOVX
群4. BMP−6(週3回、25μg/kg、i.v.)で処置したOVX
群5. BMP−6(週3回、50μg/kg、i.v.)で処置したOVX
群6. エストラジオール−E2(175μg/週、週3回、50、50、および75μg/ラットの用量で投与、皮下、s.c.)で処置したOVX
群7. エストラジオール+BMP−6(エストラジオール:175μg/週、週3回、50、50、および75μg/ラット、s.c.投与。およびBMP−6を10μg/kgで投与、i.v.)で処置したOVX
動物を12週間処置した。
【0111】
骨塩のin vivo監視。 卵巣切除前、卵巣切除の3か月後、治療中に2回、処置の6週間後、および処置の12週間後に、Small Animalソフトウェアを備える二重エネルギー吸収法(DXA、HOLOGIC QDR−4000、Hologic Inc.、Waltham、マサチューセッツ州、米国)を用いて動物をスキャンした。スキャンの前に、チオペンタールバルビツール酸系薬(Nycomed Pharma GmbH、Ismaning、ドイツ)で動物を麻酔した。
【0112】
全身スキャンを行った。腰椎、後肢、全身、および頭を除く全身の骨塩密度(BMD)および骨塩含量(BMC)を決定した。
【0113】
分析のために動物を屠殺する前に採尿した。採尿のために動物を代謝ケージに入れて、一晩18時間絶食させた。治療開始の12週間後にエーテル麻酔によって屠殺を開始した。
【0114】
ex vivo骨塩測定。 屠殺後に大腿骨、脛骨、および腰椎を摘出して、左大腿骨全体、大腿骨遠位骨幹端部(大腿骨遠位端から0.5cm)、および大腿骨近位端(大腿骨骨頭、大腿骨頚部、および大転子を含める)のスキャンしたBMDおよびBMCを測定した。
【0115】
大腿骨のpQCT分析。 コンピュータ断層撮影に基づく精密な定量分析を可能にするpQTCスキャナー(Stratec−Norland、Medizintechnik、Pforzheim、ドイツ)を用いて、ラットの骨を追加的に分析した。皮質骨の測定にpQCT分析を主に使用した。
【0116】
大腿骨のマイクロCT分析。 厚さ4μmのスライスの三次元画像を再構成するマイクロCT機(Skyscan、Aartsclaar、ベルギー)で大腿骨をスキャンした。マイクロCT測定は骨梁骨およびその微小構築の分析を可能にする。
【0117】
生体工学試験。 大腿骨遠位骨幹端部(DFM)の押込試験および大腿骨骨幹の3点曲げ試験により、骨の機械的性質に及ぼすBMP−6の効果を検討した。DFMの骨髄腔における海綿骨の機械的性質を決定するために、押込試験を使用した。大腿骨骨幹中央部の機械的性質を決定するために、3点曲げ試験を使用した。
【0118】
大腿骨の組織形態計測。 右大腿骨、脛骨、および腰椎を組織形態計測用に摘出した。大腿骨を70%アルコール中で固定して、メタクリレートに包埋した。大腿骨遠位部(顆部へ4mmの距離)の切片にゴールドナー染色を行った。これらの切片に静的および動的組織形態計測を行った。
【0119】
結果
in vivo骨塩密度(BMD)
卵巣切除の12か月後に、ラットの後肢骨は偽処置動物に比べて約6%のBMDが減少した(図1参照)。全てのBMP−6用量(すなわち10、25、50μg/kg、i.v.)は減少したBMDの回復に効力があり、50μg/kg(i.v.)のBMP−6はBMDの最も顕著な回復をもたらした(図1の群5参照)。6週間以内の処置で、BMP−6を投与したラットは減少したBMDを取り戻し、処置の12週間後に群2(未処置の卵巣切除動物)(P<0.0001)および群1(偽手術動物)(P<0.02)の両方に比べて有意に高いBMDを有した(図1参照)。偽処置ラットは、BMD−6で治療後に同期間である12週間以内にBMDが約2%減少した。エストラジオール単独で処置したラット(群6)ではBMD値が増加したが、卵巣切除した対照動物に比べて有意ではなかった(図2の群6を群2と比較)。エストロゲン処置ラットにBMP−6を与えた場合(群7)、BMD値は6週間後にすでに改善して、治療の12週間後には有意に高いBMD値に達したが、その値は、BMD−6単独で処置したどの群よりも有意に低かった(図2参照)。
【0120】
脊椎レベルでは、全用量のBMP−6が有効であったが、後肢のように偽手術のBMD値には達さなかった。用量50μg/kgで投与したBMP−6は、群2の卵巣切除対照動物に比べて6および12週間の処置の両方でBMD値を増加させた(P<0.0001)。12週間目に、データは、減少したBMDの約50%が取り戻されたことを示した(図3参照)。椎骨エンベロープで減少した骨を回復するにはより長い処置期間が必要であろう。エストロゲン単独で処置したラット(群6)は、エストロゲンおよびBMP−6で処置したラット(群7)に類似した範囲の増加したBMD値を6週間目に示した。12週間目に、エストロゲン処置ラット(群6)のBMD値は、ビヒクル(酢酸)緩衝液のみで処置した卵巣切除動物(群2、図3参照)と異ならなかった。これらの結果から、BMP−6と組み合わせない限り、エストロゲン単独はBMDの増加を維持できなかったことが示された。
【0121】
要約すると、BMP−6およびエストロゲンを静脈内投与した治療の3か月目のin vivo後肢BMDは、3用量全てが有効であり、減少したBMDを取り戻すことができることを示し、最高用量はBMDの最大増加をもたらした(群5、図2)。エストロゲン単独(群6)は、(群7のように)BMP−6と組み合わせない限り効果を有さなかった。さらに、BMP−6は脊椎では10μg/kgでエストロゲン単独の値と相乗的であった(図3の群7を群6と比較)。研究の終了後にex vivo子宮重量を記録して、BMP−6の標的として子宮を除外した。予想通り、エストロゲン単独またはエストロゲンおよびBMP−6で処置したラットだけが増加した子宮重量を有した。
【0122】
ex vivo BMD。 ラットの脛骨、大腿骨、および脊椎のBMD値をex vivoで決定した。使用した用量とは無関係に、BMP−6で処置したラットの大腿骨および脛骨で高度に顕著なBMD増加が記録され(例えば、図4の大腿骨データを参照)、P値は10−6から10−9の範囲であった。エストロゲン単独の投与(群6)もBMD値を増加させたが、BMP−6処置動物に比べて2分の1から3分の1のレベルであった。
【0123】
pQCT分析。 大腿骨のpQCT分析は、総BMDが卵巣切除した対照動物に比べて全てのBMP−6処置ラットで高かったことを示した。さらに、エストロゲンの投与を受けているラットは、卵巣切除対照(群1、OVX)動物に比べて約8%高いBMD値を有した。BMP−6 10μgで処置したラット(群3)は、対照動物よりも13.8%高いBMDを示した。総大腿骨骨塩含量は、BMP−6処置ラットで約18%、エストロゲン処置ラットで11.5%高かった。これは、厳密なANOVA/Dunnett検定解析を用いて統計的に有意であった。
【0124】
さらなる個別の骨構成要素を細分すると、データは、BMP−6が主に骨面積および皮質領域の塩含量に影響したことを示した。皮質骨塩含量は、卵巣切除した対照動物に比べて全BMP−6処置ラットで24%高く(P<0.0001)、皮質骨塩面積(mm)は対照値を約21%上回った(図5参照)。
【0125】
マイクロCT分析。 大腿骨のマイクロCT分析から、骨容量/骨梁容量比(BV/TV)が、卵巣切除対照動物(群2)、エストロゲン処置ラット(群6)、およびエストロゲン+BMP−6処置ラット(群7)に比べてBMP−6処置ラット(群3〜5)で有意に高かったことが示された。さらに、BMP−6 10μgで処置したラット(群3)は、卵巣切除対照動物(群2)に比べてBV/TV値の82.3%の増加を、エストロゲンの投与を受けているラット(群6)に比べて46.9%の増加を有した(図6参照)。骨梁数は、卵巣切除対照ラットよりもBMP−6処置ラットで34.8%高く、エストロゲン処置ラットより14.3%高かった。これは厳密なANOVA/Dunnett検定解析を用いて統計的に有意であった。骨梁幅は、卵巣切除対照動物(群2)、エストロゲン処置ラット(群6)、およびエストロゲン+BMP−6処置ラット(群7)に比べてBMP−6処置処置ラット(例えば、群3、BMP−6 10μg)の値の統計的に有意な増加を示した。群3のBMP−6処置動物でさえも、群1の偽手術動物よりも10.5%高い骨梁幅を有した(図7参照)。
【0126】
生体工学試験。 大腿骨遠位骨幹端部(DFM)の骨髄腔における海綿骨の機械的性質を決定するために押込試験を使用した。直接パラメータである最大荷重、剛性、および吸収されたエネルギーは、卵巣切除対照動物(群2)に比べてBMP−6処置ラット(例えば、群3の動物)で3倍増加し、これは統計的に有意であった(図8参照)。極限強度(導変数)は同じ傾向を示した。
【0127】
3点曲げ試験を使用して、大腿骨骨幹中央部の機械的性質を決定した。最大荷重および剛性は、卵巣切除対照動物(群2)に比べてBMP−6処置動物(例えば群3)で有意に高かった。BMP−6処置動物からの骨は、偽手術動物(群1)よりも33.4%大きいエネルギー(すなわち仕事「W」、ミリジュール単位で表現)を吸収した(P<0.05)(図9参照)。BMP−6処置動物の剛性(ミリジュール(mJ)/mとして測定した導変数)は、偽手術動物(群1)に比べて22.3%増加して統計的な有意性を示した(図10参照)。
【0128】
組織形態計測。 組織形態計測(顕微鏡観察により組織切片における骨パラメータを測定するコンピュータ法)によりpQCTおよびマイクロCT分析を確認した。大腿骨遠位部の骨容量/骨梁容量(BV/TV)は、ビヒクルである緩衝液で処置した卵巣切除ラット(群2、図11参照)に比べて、BMP−6処置動物(例えば、群3)の方が有意に高かった。動的組織形態計測(蛍光顕微鏡を用いて骨へのテトラサイクリンの取込みを測定する方法)は、BMP−6処置ラット(例えば群3)またはエストロゲン+BMP−6で処置したラット(群6)で増加した石灰化速度(「MAR」、μm/日)を示し、これは、ビヒクルである緩衝液で処置した群2卵巣切除対照ラットに比べて統計的に有意であった(P<0.001)(図12参照)。
【0129】
結論
静脈内投与したBMP−6は、高齢卵巣切除ラットにおいてin vivoおよびex vivoの両方で12週間にわたりBMDを有意に増加させた。pQCT分析は、皮質骨にBMP−6が大きな影響を与えたことを示した。さらに、マイクロCT分析は、BMP−6処置ラットで偽手術の値に達する骨梁幅の増加を示した。高齢卵巣切除ラットで減少した骨を完全に回復すると以前に報告された公知の薬剤が存在しないことから、これは特に関心深い。骨同化作用を有すると以前に報告された唯一の薬剤は、副甲状腺ホルモンであり、それは骨梁骨および皮質骨の両方に作用するが、皮質に対するその作用は骨吸収トンネルも生み出す。当該吸収トンネルは、骨の機械的特性を弱め、長期間にはその機械的性質に有害作用を及ぼし得るであろう。生体工学試験は、卵巣切除対照動物に比べてBMP−6処置動物の骨の機械的性質が統計的に有意に改善して、偽手術動物の骨よりも靱性が高くさえあることを示した。
【0130】
実施例2. 高齢卵巣切除ラットにおいて骨に及ぼす低用量BMP−6の効果
上記のように7か月齢Sprague−Dawleyラットを卵巣切除(OVX)し、約20か月そのままにして骨塩密度(BMD)を減少させた。このように、卵巣切除の72週間後に2年1か月齢で治療を開始し、3か月継続してから分析のために屠殺を行った。動物を以下の群に分けた。
群1 偽手術(n=8)
群2 OVX対照(n=8)
群3 BMP−6、10μg/kg、週3回で処置したOVX(n=8)
群4 BMP−6、10μg/kg、週1回で処置したOVX(n=12)
群5 BMP−6、1μg/kg、週3回で処置したOVX(n=12)
【0131】
in vivo BMD。 In vivo BMDを6週間毎に監視した。治療の開始の6週間後に、全てのBMP−6処置動物はOVX対照動物に比べて統計的に有意に高い後肢BMD値を示し、偽手術動物よりも高いBMDさえ有した。BMP−6処置群の間に統計的有意差は存在しなかった。BMP−6、用量1μg/kg、週3回(群5)では、OVX動物(群2)に比べて後肢のBMDが11.2%増加したが、BMP−6、用量10μg/kg、週1回(群4)および3回(群3)では、BMDが7.6%増加した(図13参照)。治療開始の12週間後に、BMP−6処置動物(群5)は偽手術動物(群1)と比べたときでさえも高いBMD値を有したが、初期の6週目での測定値に比べて骨が幾分減少した。この現象は動物の加齢により説明できた。それは、実験が終了した時点の2年7か月までは少数の動物しか生存できないからである。(図14参照)。
【0132】
結論
静脈内投与した低用量(例えば、1μg/kg、週3回、i.v.)のBMP−6は、減少した骨の回復に高用量よりも12週間にわたりなおさらに有効である。さらに、BMP−6、用量10μg/kg、週1回は、週3回投与したBMP−6と同様にBMDに対して有効である。
【0133】
実施例3. 99mテクネチウムで標識したBMP−6の十二指腸での吸収および生体分布
本研究は、個体における骨形成を誘導するために経口投与されたBMP−6の有効性が個体の年齢に依存し得ることを示す。特に、成体に存在するが、概して幼仔には存在しないことが知られている胃酵素の影響で骨形成タンパク質は分解する。したがって、経口(口を介する)および十二指腸投与したBMPのうち幼仔および成体の個体に吸収された量を比較するために本研究を実施した。具体的には、3日齢、15日齢、45日齢、および75日齢のラットで標識BMP−6の吸収を比較した。
【0134】
BMP−6の標識。 成熟BMP−6をメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(MAG3)とキレートさせた。BMP−6−MAG3複合体を放射性99mテクネチウム−過テクネチウム酸(99mTc)で標識した。クロマトグラフィーから、97%を超える99mTcがその複合体に連結したことが明らかになった。
【0135】
動物および治療プロトコール。 動物を以下の処置群に分けた:
群1. 3日齢。99mTcで標識した100μg/kg BMP−6をピペットで口に直接適用。
群2. 15日齢。99mTcで標識した100μg/kg BMP−6をピペットで口に直接適用。
群3. 45日齢。99mTcで標識した100μg/kg BMP−6を注射器で十二指腸に直接適用。
群4. 75日齢。99mTcで標識した100μg/kg BMP−6を注射器で十二指腸に直接適用。
【0136】
十二指腸内適用。 動物をチオペンタールで麻酔して腹部手術に供した。腹部臓器を露出させて十二指腸を分離した後で、99mTcで標識したBMP−6を針付き注射器で十二指腸に直接注射した。
【0137】
ガンマカウンターを用いた放射能の測定。 手術の60分後に動物を屠殺した。血液および全ての臓器を測定用に採取した。ガンマカウンターで全ての試料の放射能量を測定し、1分間あたりの計数(cpm)として表した。測定放射能を、全適用線量と同じ放射能を有した標準の放射能と比較して、適用した線量の率として結果を表した。半減係数に依存して全ての値を補正した。
【0138】
結果
3日齢の動物は適用した用量の9%を吸収したが、15日齢の動物は適用した用量の0.5%しか吸収しなかった。それよりも高齢の動物、すなわち45日齢および75日齢の動物は、適用した用量の0.1%だけを吸収した(図15)。これらの結果は、胃酵素を発現していない幼仔は、経口適用した場合に成体よりも多量のBMP−6を吸収できることを示唆している。
【0139】
BMP−6の十二指腸吸収に及ぼすpH低下剤および促進剤の作用
上記結果に照らして、成ラットおよび胃腸環境を修飾することが公知である薬剤を用いてさらなる研究を行った。ラットは60日齢で、体重約200gであり、以下の物質の十二指腸内(i.d.)適用に供された。
動物1. 「pH3」
(BMP−6−MAG−3)=166μL
(酢酸緩衝液0.1M、pH2.5)=498μL
総容量=664μL
Sigmaブランド(St. Louis、ミズーリ州)のpH試験ストリップで測定したとき終pH3、pH範囲=0.0〜6.0
動物2. 「pH3+促進剤」
(BMP−6−MAG−3)=166μL
(酢酸緩衝液0.1M、pH2.5)=498μL
総容量=664μL
pH試験ストリップで測定したとき終pH3
促進剤の添加:
タウロデオキシコール酸ナトリウム1mg
DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg
動物3. 「促進剤」
(BMP−6−MAG−3)=166μL
(0.9%NaCl、pH7)=498μL
総容量=664μL
促進剤の添加:
タウロデオキシコール酸ナトリウム1mg
DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg
【0140】
手術の60分後に動物を屠殺して、放射能の測定のために試料を採取した。
【0141】
結果
BMP−6への酢酸緩衝液(pH3)の添加(動物1)は、適用した用量の0.38%のBMP−6の吸収、すなわち酢酸緩衝液不在下よりも約4倍高い吸収を招いた。酢酸緩衝液(pH3)と、吸収促進剤、すなわちタウロデオキシコール酸ナトリウムおよびDL−ラウロイルカルニチンクロリドとの両方の適用(動物2)により、BMP−6の十二指腸吸収が0.94%増加したが、吸収促進剤単独の添加(動物3)により、適用した用量の0.16%だけの吸収が可能であった(図16)。これらの結果は、妥当な条件でBMP−6が胃腸系を介して吸収され得ることを示唆している。比較的低用量のBMP−6は、高用量と同程度効果的に骨誘導に作用することから(上記参照)、このデータは、成体の十二指腸を介して通過するBMP−6の率にわずかでも改善を可能にする投薬製剤が、骨形成に全身作用を及ぼすのに十分であり得ることを示唆している。
【0142】
実施例4. 皮下の骨ペレット(マトリックス)での骨形成に及ぼすBMP−6の十二指腸適用の効果
本研究は、十二指腸に適用し吸収されたBMP−6が骨形成の誘導に活性であることを示す。脱塩して抽出した骨マトリックスを皮下に植込んだものを骨形成の代理マーカーとして使用する。特定部位(例えば十二指腸)にBMPのような成長因子を投与後の植込骨マトリックスにおける局所骨形成の証拠が、特定製剤の構成要素の存在下でその成長因子がその部位から全身に作用できる一表示としてみなされることが、このアッセイの価値および限界である。
【0143】
骨ペレット。 骨ペレット調製のためのドナーは、20週齢Sprague−Dawleyラットであった。屠殺後に大腿骨および脛骨の骨幹を採取してペレットを作成した。塩素酸および尿素を添加して骨を調製した。皮下に植込んだ骨ペレットでは、新骨は自然形成しない。
【0144】
動物および処置プロトコール。 体重約200gのSprague−Dawleyラットを手術に供した。骨ペレットを皮下の腋窩領域に植込んだ。動物を以下の処置群に分け、1群あたり4個のペレットを植込んだ。
群1. 対照動物
群2. 用量5μg/kgでBMP−6の十二指腸内(i.d.、上記の通り)投与を受けている動物
群3. 用量50μg/kgでBMP−6のi.d.投与を受けている動物
群4. 用量500μg/kgでBMP−6のi.d.投与を受けている動物
群5. 用量1000μg/kgでBMP−6のi.d.投与を受けている動物
群6. 用量10μg/kgでBMP−6のi.v.投与を受けている動物
【0145】
処置群2〜5の動物に、上記の適切な用量のBMP−6を十二指腸に2回、すなわち骨ペレットの植込みの6時間および25時間後に直接注射した。静脈内(i.v.)適用を手術の6、12、24、および42時間後に行った。手術の15日後に動物を屠殺して、組織分析のために骨ペレットを採取した。
【0146】
組織分析。 骨ペレットを70%アルコール中で固定し、脱灰し、パラフィンに包埋した。切片をトルイジンブルーで染色した。新骨の形成の存在下でペレットを陽性とみなした。
【0147】
結果
下の表1に結果を示す。BMP−6の十二指腸内(i.d.)投与を受けている動物は、皮下骨ペレットに新骨の形成(骨誘導)を示した。これは、妥当な条件でBMP−6が骨形成に全身作用を及ぼすのに十分な量で胃腸系を通過できることを示唆している。対照動物は骨ペレットに骨誘導の徴候を示さなかった。
【0148】
【表1】

【0149】
実施例5. 静脈内適用したBMP−6と比較した、99mTcで標識したBMP−6の十二指腸吸収
本研究は、十二指腸および静脈投与の関数としてのBMP−6の吸収を比較する。
【0150】
BMP−6の標識。 成熟BMP−6をメルカプトアセチル−3−グリシン(MAG3)でキレートした。BMP−6−MAG3複合体を放射性99mテクネチウム−過テクネチウム酸(99mTc)で標識した。クロマトグラフィーから、97%を超える99mTcがその複合体に連結したことが明らかとなった。
【0151】
動物および治療プロトコール。体重約200gのSprague−Dawleyラット6匹を実験に参入させた。以下の治療方式を有する処置群に動物を分けた。
群1(n=1)
容量(BMP−6−MAG−3)=200μL
容量(酢酸緩衝液20mM、pH4.0)=400μL
総容量=600μL
投与経路:十二指腸内(i.d.)
群2(n=2)
容量(BMP−6−MAG−3)=200μL
容量(酢酸緩衝液0.1M、pH3.0)=400μL
総容量=600μL
促進剤の添加:タウロデオキシコール酸ナトリウム1mg
DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg
投与経路:i.d.
群3(n=1)
容量(BMP−6−MAG−3)=200μL
容量(酢酸緩衝液0.1M、pH3.0)=400μL
総容量=600μL
促進剤の添加:タウロデオキシコール酸ナトリウム1mg
DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg
ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg
投与経路:i.d.
群4(n=1)
容量(BMP−6−MAG−3)=200μL
容量(酢酸緩衝液0.1M、pH3.0)=400μL
総容量=600μL
促進剤の添加:ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg
投与経路:i.d.
群5(n=1)
容量(BMP−6−MAG−3)=200μL
容量(酢酸緩衝液20mM、pH4.0)=400μL
総容量=600μL
投与経路:静脈内(i.v.)
【0152】
群1の動物は、標準酢酸緩衝液(20mM、pH4.0)に入れて100μg/kgの用量で十二指腸内(i.d.)注射したBMP−6の投与を受けた。群2、3、および4の動物は酢酸緩衝液(0.1M、pH3.0)および種々の組合せの促進剤(例えば、タウロデオキシコール酸ナトリウム、DL−ラウロイルカルニチンクロリド、および/またはジヘプタノイルホスファチジルコリン)に入れて100μg/kgの用量で十二指腸内注射したBMP−6の投与を受けた。群5の動物は、酢酸緩衝液(20mM、pH4.0)に入れて100μg/kgの用量で静脈内(i.v.)注射したBMP−6の投与を受けた。
【0153】
十二指腸内(i.d.)適用。 動物をチオペンタールで麻酔して腹部手術に供した。腹部臓器を露出させて十二指腸を分離した後で、99mTcで標識したBMP−6を針付き注射器で十二指腸に直接注射した。手術の60分後に動物を屠殺して、血液および全ての臓器を測定のために採取した。
【0154】
ガンマカウンターを用いた放射能の測定。 全ての試料の放射能量をガンマカウンターで測定し、1分間あたりの計数(cpm)として表した。静脈内注射した動物(群5)の血液から手術後同時に測定した放射能に比べた、十二指腸内注射した動物の血液から測定した放射能の率として結果を表した。全ての値を半減係数に依存して補正した。
【0155】
結果
結果を図17に示す。pHの低下も促進剤の添加もなしにBMP−6単独の投与を受けた動物1などの動物は、静脈内適用した動物の血液で測定されたBMP−6の1.6%を血中に有した。酢酸緩衝液(0.1M、pH3.0)ならびにタウロデオキシコール酸ナトリウム1mgおよびDL−ラウロイルカルニチンクロリド1mgと共にBMP−6の投与を受けている動物は、静脈内用量の35%(群2の動物の平均を図17に示す)まで増加したBMP−6の十二指腸吸収を有し、これは、適用したBMP−6の35%をこれらの動物が吸収したことを示唆している。酢酸緩衝液(0.1M、pH3.0)およびジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mgと共に様々な組合せでBMP−6の投与を受けた動物は、静脈内用量の約6%の吸収を有した(図17の群3および4参照)。
【0156】
実施例6. 反転腸管法による99mTc標識BMP−6のin vitro十二指腸吸収
BMP−6の標識。 成熟BMP−6をメルカプトアセチル−3−グリシン(MAG3)でキレートした。BMP−6−MAG3複合体を放射性99mテクネチウム−過テクネチウム酸(99mTc)で標識した。クロマトグラフィーから、97%を超える99mTcがその複合体に連結したことが明らかとなった。
【0157】
反転腸管法。 Sprague−Dawleyラットを屠殺し、幽門弁に対して遠位の腸の最初の10cmを切離した。等張塩化ナトリウム溶液でこの組織を直ちに洗浄した。洗浄後に多量の腸間膜を切除し、その区域の遠位末端を反転用の棒に結び付けたままで腸を反転させた(粘膜側は外側になり、漿膜側は内側になる)。次に、その腸を幽門弁に対して遠位で結紮糸で結び、前回と同様に洗浄した。次に、その腸の水分を吸い取り、長さ5.5cmに短縮して、鈍針を取り付けた注射器を用いてインキュベーション培地0.5mlを満たした。次に、同インキュベーション培地10mLを含む25mLエルレンマイヤーフラスコに腸管を配置して、37℃で90分間インキュベートした。実験を通してインキュベーション培地に酸素を連続的に通気させた。
【0158】
インキュベーション培地
二つのインキュベーション培地を採用した:
培地1: 154mmol/L NaCl、16.6mmol/Lグルコース
培地2: 125mM NaCl、10mMグルコース、30mMトリス−Cl緩衝液(pH7.4)、0.25mM CaCl
【0159】
プロトコール
99mTcで標識したBMP−6(8.64μg)を酢酸緩衝液70μL(20mM、pH4.0)に溶解させ、in vivo吸収が腸の粘膜側から漿膜側に起こることから、腸の外部の粘膜側にインキュベーション用培地10mLを添加した。腸の粘膜側のインキュベーション培地に酢酸緩衝液(70μL、20mM、pH4.0)単独を添加して、対照として使用した。in vitro反転腸系は以下の通りであった。
1. 99mTcで標識したBMP−6 8.64μg+酢酸緩衝液70μL(20mM、pH4.0)+培地1 10ml
2. 99mTcで標識したBMP−6 8.64μg+20mM酢酸緩衝液(pH4.0)70μL+培地210ml
3. 対照:20mM酢酸緩衝液(pH4.0)70μL+培地110ml
【0160】
ガンマカウンターを用いた放射能の測定。 90分間インキュベートした後で、外側および内側の培地の放射能量をガンマカウンターで測定して、1分間あたりの計数(cpm)として表した。粘膜側の外側培地で測定された放射能に比べた、漿膜側の内側培地で測定された放射能の率としても結果を表現した。半減係数に依存して全ての値を補正した。
【0161】
化学パラメータの測定。 比色法によりグルコースおよび乳酸を、市販のキットを使用してNa、Cl、およびCaを測定した。
【0162】
結果
図18A(培地1のデータ)および18B(培地2のデータ)に棒グラフとして結果を示す。培地1(緩衝系なし)に関して、90分間インキュベーション後に標識BMP−6の17.7%が腸の粘膜側(M)から漿膜側(S)表面に移動した(図18Aの90分目のデータ参照)。対照的に、(pH7.4の緩衝液およびカルシウムを含む)培地2を用いると、標識BM−6の32.2%が培地中の腸の粘膜側から漿膜側表面に移動した(図18Bの90分目のデータ参照)。初発溶液中のグルコースの平均99.8%が90分間のインキュベーション時間の間に代謝された。対照系に比べてBMP−6を含む反転腸系では乳酸生成が4倍増加した。これは、BMP−6の移動がより大きいエネルギーの生成を必要としたことを示唆している(下記表2参照)。
【0163】
【表2】

【0164】
実施例7. 特異的胃酵素および腸酵素によるBMP−6の分解
上記研究は、十二指腸内に存在する場合にBMP−6が体内に効果的に吸収され得ることを示した。本研究は、胃酵素および腸酵素による分解に対するBMP−6の感受性を調べた。
【0165】
ペプシンのタンパク質分解に対する感受性。 ペプシン0、1、5、または10μL(2500〜3500IU/mg)と共にBMP−6(10μg)をインキュベートした。ペプシン分解活性に関する陽性対照としてウシ血清アルブミン(BSA)(5μg)を使用した。還元条件(ジチオトレイトール「DTT」)でポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により消化反応生成物を調べた。この条件は、BMP−6モノマーの追跡を可能にする。可視化するためにクマシーブルーでゲルを染色した。ペプシン0、10、5、または1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、図19のゲルのそれぞれレーン1〜4に示す。図19のレーン6および7は、それぞれペプシン5および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびBSAの反応生成物を含む。図19のレーン8および9は、それぞれペプシン5および1μLの存在下でインキュベートしたBSAの反応生成物を含む。図19のレーン5は分子量標準を含む。
【0166】
図19に示すように、ペプシンはBSAおよびBMP−6の両方を分解した(例えば、図19のレーン1〜4でのBMP−6の分解ならびにレーン8および9でのBSAの分解参照)。BSAの存在下では、反応混合物にBMP−6のみが存在する場合よりも少量のBMP−6が分解した(例えば、図19のレーン6および7を、レーン3および4と比較)。ペプシンによるBSAの分解は、最初に約47キロダルトン(kDa)の短いポリペプチドを、最終的にはより小さい断片をもたらすと思われた。結果から、ペプシンが用量特異的にBMP−6を速やかに分解したことが示された(図19のレーン1〜4)。
【0167】
トリプシンおよびキモトリプシンのタンパク質分解に対する感受性。 上記ペプシンによる分解に対する感受性を試験したのと同様の方法で、腸酵素であるトリプシン(6000〜12000IU/mg)またはキモトリプシン(40〜60IU/mg)と共にBMP−6(10μg)または陰性対照としてBSA(5μg)をインキュベートした。上記のように還元条件でポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により消化生成物を分析した。図20のゲルに結果を示す(レーン4は分子量標準)。トリプシン0、1、および0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、図20のゲルのそれぞれレーン1、2、および3に示す。キモトリプシン0.5および0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、それぞれレーン5および6に示す。図20のレーン7は、トリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびBSAの反応生成物を示し、レーン8はキモトリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBMP−6およびBSAの反応生成物を示す。図20のレーン9は、トリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBSAの反応生成物を示し、レーン10は、キモトリプシン0.2μLの存在下でインキュベートしたBSAの反応生成物を示す。
【0168】
トリプシンは、BMP−6モノマーポリペプチドのわずかな短縮を引き起こしただけであった(図20のレーン2および3参照)が、キモトリプシンは、用量特異的に効果的にBMP−6を分解できた(図20のレーン5および6参照)。さらに少量のキモトリプシン(例えば0.2μL)は、BMP−6モノマーの最初の短縮を示した(図20のレーン6)。BSAはトリプシンによる分解(図20のレーン7および9参照)にも、キモトリプシンによる分解(図20のレーン8および10参照)にも抵抗性であった。
【0169】
胃液によるBMP−6の消化。 胃液の別々の試料を絶食Sprague−Dawleyラット2匹から収集した。BMP−6(0.5μg)を、様々な量(1μL、10μL)の胃液試料と共にインキュベートした。還元(+DTT)条件で電気泳動したウェスタン免疫ブロットにより消化生成物を分析して、BMP−6モノマーを追跡するか、または非還元(DTTなし)条件でBMP−6ダイマーを追跡した。抗BMP−6抗体(SV−17、ウサギプール血清)を使用してBMP−6を検出した。図21のウェスタン免疫ブロットに結果を示す(レーン1および10は標準分子量マーカーを示す)。動物1の胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、図21のそれぞれレーン2、3、および4(DTTなし)に示し、動物2の胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物をそれぞれレーン5、6、および7(DTTなし)に示す。熱不活性化(90℃、1分間)胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、レーン8、9、および10(DTTなし、分子量標準を含む)に示す。
【0170】
ラット胃液の両試料は、BMP−6ダイマー(図21のレーン4および7参照)またはモノマー(例えば、図21のレーン2、3、5、および6参照)の減少が示すように、BMP−6を分解した。非還元条件では、胃液試料中のペプシンは35kDaの位置に泳動するが、それはBMP−6ダイマーの泳動位置に類似している(例えば、図21のレーン4および7)。タンパク質分解活性を破壊するのに十分な程度、胃液試料を加熱(90℃、1分)した場合にのみBMP−6モノマーが検出された(図21のレーン8および9参照)。特異的抗BMP−6抗体(N−19、Santa Cruz Biotechnology, Inc.、Santa Cruz、カリフォルニア州)で検出した、約28kDaに泳動しているわずかに短縮した(すなわち部分分解した)BMP−6ダイマー種(図21のレーン7参照)という、BMP−6と動物2の胃液との反応生成物の外観から明らかなように、動物1の胃液試料は動物2の胃液試料よりも活性が高かった。
【0171】
ペプシン阻害剤であるペプシノストレプチンの存在下および不在下での胃液による消化。 様々な量(1μL、10μL)の上記胃液試料と共にであるが、ペプシン阻害剤であるペプシノストレプチン(Roche Diagnostics, Corp.、Indianapolis、インディアナ州)の存在下および不在下でBMP−6(0.5μg)をインキュベートした。還元条件および非還元(DTTなし)条件で流したゲルのウェスタン免疫ブロットにより、上記のように反応生成物を分析して、BMP−6モノマーおよびダイマーをそれぞれ追跡した。図22のウェスタン免疫ブロットに結果を示す(レーン10は標準分子量マーカーを示し、レーン14はBMP−6モノマーを含み、レーン15(DTTなし)はBMP−6ダイマーを含む。動物1の胃液10、1、および1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、図22のそれぞれレーン1、2、および3(DTTなし)に示し、動物2の胃液10、1、および1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物をレーン4、5、6(DTTなし)に示す。ペプシン阻害剤であるペプシノストレプチンおよび胃液10、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、それぞれレーン7、8、および9(DTTなし)に示す。熱不活性化胃液10、1、1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、それぞれレーン11、12、および13に示す。
【0172】
ペプシノストレプチンは、還元条件でのBMP−6モノマー(図22のレーン7および8参照)または非還元条件でのBMP−6ダイマー(図22のレーン9参照)の保存によって示されるように、BMP−6に及ぼす胃液のタンパク質分解活性を完全に阻害した(図22のレーン9参照)。結果は上記のように熱不活性化胃液と共にインキュベートしたBMP−6を含む陰性対照に類似していた(図22のレーン11〜13参照)。
【0173】
上記データは、ペプシンが胃内でのBMP−6のタンパク質分解の主な原因であることを示す。
【0174】
十二指腸液によるBMP−6の消化。 絶食Sprague−Dawleyラット2匹から十二指腸液の試料を収集した。様々な量(1μL、3μL)の十二指腸液と共にBMP−6(0.5μg)をインキュベートし、上記のような還元条件および非還元条件(DTTなし)でポリアクリルアミドゲルのウェスタンブロットにより消化生成物を分析した。結果を図23のウェスタン免疫ブロットに示す。図23のレーン11(DTTなし)に非還元条件でBMP−6のダイマーを示し、図23のレーン10に還元条件(+DTT)でBMP−6モノマーを示す。標準分子量マーカーを図23のレーン5に示す。動物1の十二指腸液3および1μLと共にインキュベートしたBMP−6反応生成物を、図23のそれぞれレーン1および2に示し、動物2の十二指腸液3および1μLと共にインキュベートしたBMP−6反応生成物を、それぞれレーン3および4に示す。図23のレーン6、7、および8(DTTなし)は、酢酸緩衝液(pH3)および十二指腸液3、1、および1μLの存在下でインキュベートしたBMP−6の反応生成物を示す。レーン9は、熱不活性化十二指腸液1μLと共にインキュベートしたBMP−6の生成物を示す。
【0175】
両動物の十二指腸液は、用量特異的に効果的にBMP−6を分解した(図23のレーン1〜4参照)。pH3酢酸緩衝液の存在下での反応物をインキュベートすることにより、十二指腸液による分解からの部分的防御がもたらされた(図23のレーン6〜8参照)。加熱によって十二指腸液のタンパク質分解活性を破壊できた(図23のレーン9参照)。
【0176】
十二指腸タンパク質分解活性に及ぼすプロテアーゼ阻害剤の効果。 十二指腸液がBMP−6を分解する能力にいくつかのプロテアーゼ阻害剤が及ぼす効果を試験した。様々な他のプロテアーゼ阻害剤の存在下および不在下であることを除いては上記のように、十二指腸液と共にBMP−6をインキュベートした。上記のように、非還元条件(DTTなし)でポリアクリルアミドゲルを用いて反応生成物を電気泳動してBMP−6ダイマーを追跡し、還元条件(+DTT)でBMP−6モノマーを追跡した。次に、ウェスタン免疫ブロットによりゲルを分析した。図24のウェスタン免疫ブロットに結果を示す(レーン1はBMP−6ダイマーを示し、レーン7はBMP−6モノマーを示し、レーン6は標準分子量マーカーを示す)。図24のレーン1〜5は、非還元条件(DTTなし)での結果を示し、レーン9〜11は還元条件(+DTT)での結果を示す。十二指腸液1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物をそれぞれレーン2および8に示す。十二指腸液1μLおよびキモスタチン(キモトリプシン特異的阻害剤、1μL、Roche Diagnostics Corp.、Indianapolis、インディアナ州、米国)1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物を、それぞれレーン3および9に示す。十二指腸液1μLおよびダイズトリプシン阻害剤1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物をレーン4および10に示し、十二指腸液1μLおよびアプロチニン(ウシ膵臓トリプシン阻害剤またはBPTIとも呼ばれる、広域スペクトルプロテアーゼ阻害剤、Roche Diagnostics Corp.、Indianapolis、インディアナ州)1μLと共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物をレーン5および11に示す。BMP−6ダイマー(レーン3)またはBMP−6モノマー(レーン9)の保存により示されるように、図24の結果は、キモスタチンだけがBMP−6のタンパク質分解を防御したことを示す。
【0177】
データは、キモトリプシンが十二指腸におけるBMP−6のタンパク質分解の主な原因であることを示す。
【0178】
十二指腸キモトリプシン介在性のBMP−6分解に及ぼすpH改変の効果。 上記研究は、キモトリプシンが十二指腸液と共にインキュベートしたときのBMP−6の分解を主に担う酵素であることを示している。十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性に及ぼすpHの効果も試験した。様々なpH値でインキュベーションを実施したことを除いて上記のように、十二指腸液と共にBMP−6をインキュベートした。ポリアクリルアミドゲルを用いて反応生成物を電気泳動させ、それを次に上記のようにウェスタン免疫ブロットにより分析した。図25のウェスタン免疫ブロットに結果を示す(レーン1は分子量標準を示し、レーン2はBMP−6モノマー単独を示し、レーン6はBMP−6ダイマー単独を示す)。図25のレーン2〜5を還元条件(+DTT)で流してBMP−6モノマーを追跡し、レーン6〜9は非還元条件(DTTなし)で流してBMP−6ダイマーを追跡した。pH7で十二指腸液と共にインキュベートしたBMP−6の反応生成物を図25のレーン3および7に示す。pH4で実施した類似のインキュベーションからの反応生成物をレーン4および8に示し、pH5で実施したインキュベーションからの反応生成物をレーン5および9に示す。結果は、十二指腸液によるBMP−6(モノマーおよびダイマー)のタンパク質分解が、pHが7(レーン3および7)から5(レーン5および9)から4(レーン4および8)に減少するにつれ反応混合物中で漸減したことを明らかに示す。これは、十二指腸キモトリプシンの公知のpH感受性と一致する。
【0179】
実施例8. 高齢卵巣切除ラットにおける骨に及ぼすBMP−6および酵素阻害剤の経口および十二指腸適用のin vivo効果
胃ペプシンおよび十二指腸キモトリプシンによる分解から防護した場合に、ラット骨粗鬆症モデルにおいてBMP−6が消化管に沿って効果的に吸収されて骨塩密度(BMD)を回復および改善するかどうかを決定するために、本研究を行った。
【0180】
6か月齢Sprague−Dawleyラットを卵巣切除(OVX)し、6か月間そのままにして、BMDを減少させた。十二指腸内(i.d.)投与または胃管により動物にBMP−6の投与を受けさせた。以下の処置群に従って、卵巣切除の6か月後の12月齢で治療を開始して3週間継続した。
群:
群1. 偽手術(n=15)
群2. OVX対照、酢酸緩衝液、pH3.5、i.d.(n=10)
群3. 500μg/kg BMP−6、キモスタチン20μg、アプロチニン20μg、pH7.0、i.d.注射、週1回で処置したOVX(n=14)
群4. 500μg/kg BMP−6、キモスタチン20μg、アプロチニン20μg、pH3.5、i.d.注射、週1回で処置したOVX(n=14)
群5. 300μg/kg(b.w.)BMP−6、キモスタチン50μg、アプロチニン50μg、ペプスタチン50μg、pH3.5、胃管を用いたosデリバリー、週3回で処置したOVX(n=14)
【0181】
in vivo骨塩密度(BMD)
上記プロテアーゼ阻害研究に基づき、本研究におけるアプロチニンの存在は、胃または十二指腸のタンパク質分解からBMP−6を防御するのに重大な役割を果たさないとみなされた。治療の開始時および治療後3週間目にin vivo BMDを監視した。BMP−6で処置した全ての動物が、治療の3週間後にOVX動物に比べて高い後肢BMD値を示した。
【0182】
処置群1〜5に関するBMDの変化を図26および27に示す。図26は、3週間の処置期間の過程にわたる結果を示す。図27は、処置期間の終了までの様々な処置群の動物で達成された最終BMD値を比較したものである。処置群3、4、および5で同様の結果が観察された。pH3.5でプロテアーゼ阻害剤と共にBMP−6のi.d.投与を受けた群4の動物は、酢酸緩衝液単独の投与を受けた群2のOVX対照動物よりも7.1%高い後肢BMD値を有した。群3、4、および5の動物は、群1の偽手術動物よりも幾分高いBMD値も示した。3週間目に、プロテアーゼ阻害剤と組み合わせてBMP−6の投与を受けた全ての群(すなわち群3、4、5)は、酢酸緩衝液単独の投与を受けた群2のOVX動物に比べて後肢のBMD値に統計的に有意な増加を示し、例えば群3についてはP<0.005であり、群4および5についてはP<0.05であった(図26および27参照)。
【0183】
胃ペプシンおよび十二指腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害した場合に、経口投与したBMP−6が消化管に沿って効果的に吸収され、重大な骨での骨塩密度を顕著に回復させ、増加さえさせて、骨粗鬆症を効果的に処置することをデータは示している。
【0184】
実施例9. 皮下骨ペレット(マトリックス)における骨形成に及ぼす他の骨形態形成タンパク質の十二指腸適用の効果
本研究は、上記実施例4の皮下植込み骨ペレット(マトリックス)アッセイを使用して、骨形成に及ぼすBMP−7および軟骨由来形態形成タンパク質−2(CDMP−2、BMP−13)の十二指腸適用の効果を調べた。本アッセイでは、脱塩および抽出した骨マトリックスを骨形成の代用マーカーとして皮下に植込む。
【0185】
骨ペレット。 骨ペレット調製のためのドナーは、20週齢Sprague−Dawleyラットであった。屠殺後に大腿骨および脛骨の骨幹を採取してペレットを作成した。塩素酸および尿素を添加して骨を調製した。皮下に植込んだ骨ペレットでは、新骨は自然形成しない。
【0186】
動物および処置プロトコール。 体重約200gのSprague−Dawleyラットを手術に供した。骨ペレットを皮下の腋窩領域に植込んだ。動物を以下の群に分け、1群あたり4個のペレットを植込んだ。
群1. 対照動物(n=4)
群2. CDMP−2(BMP−13)、500μg/kg+酢酸緩衝液(20mM、pH=3.5)、20μgキモスタチン、20μgアプロチニン、i.d.(500μL)(n=3)
群3. BMP−7、500μg/kg+酢酸緩衝液(20mM、pH=3.5)、20μgキモスタチン、20μgアプロチニン、i.d(500μL)(n=3)
【0187】
骨ペレット植込みの6時間(h)および25h後の2回、動物の十二指腸に直接注射した。手術の15日後に動物を屠殺して、組織分析用に骨ペレットを採取した。
【0188】
組織分析。 骨ペレットを70%アルコール中で固定し、脱灰し、パラフィンに包埋した。切片をトルイジンブルーで染色した。新骨の形成の存在下でペレットを陽性とみなした。
【0189】
結果
下記表3に示すように、CDMP−2(BMP−13)およびBMP−7のi.d.投与を受けている動物は皮下骨ペレットに新骨形成を示した。これは、腸キモトリプシン分解から防御した場合に、両タンパク質が骨形成に全身作用を及ぼすのに十分な量で胃腸系を通過することができることを示唆している。対照動物は骨ペレットにおける骨誘導の徴候を示さなかった。
【0190】
【表3】

【0191】
上記本文で引用した全ての特許、出願、および参考文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0192】
本明細書に記載した他の変形形態および実施形態は、本発明の開示または添付の特許請求の範囲から逸脱することなしに、当業者に今や明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】骨粗鬆症ラットモデルにおけるBMP−6の静脈内(i.v.)投与を用いた研究結果のグラフである。
【図2】処置の開始から12週目での全処置群における骨粗鬆症ラットモデル動物の後肢でのBMD値を示す棒グラフである。
【図3】処置の開始から12週目での動物の腰椎に関するBMD値を示す棒グラフである。
【図4】屠殺後の動物の大腿骨遠位部のex vivo DEXA分析によりBMD値を決定した研究結果の棒グラフである。
【図5】選ばれた処置群の動物の大腿骨遠位部における骨塩面積(BMA)の棒グラフである。
【図6】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg)、6(エストラジオールで処置したOVX)、および7(エストラジオール+BMP−6で処置したOVX)における動物の大腿骨遠位部における骨容量/骨梁容量比(BV/TV)に関する棒グラフである。
【図7】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg)、6(エストラジオール単独で処置したOVX)、および7(エストラジオール+BMP−6で処置したOVX)における動物に関する骨梁幅(mm)に関する棒グラフである。
【図8】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物の大腿骨遠位骨幹端部(DFM)の骨髄腔における海綿骨の最大荷重(「N」)として表現した押込試験に関する棒グラフである。
【図9】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物の仕事(「W、ミリジュールmJ」)として表現した大腿骨骨幹中央部の3点曲げ試験の吸収エネルギーパラメータに関する棒グラフである。
【図10】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、および3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)の、動物のミリジュール/m(mJ/m)として表現した大腿骨骨幹中央部の3点曲げ試験の靭性(導変数)に関する棒グラフである。
【図11】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)、および6(エストラジオール単独で処置したOVX)の動物の大腿骨遠位部の組織形態分析に基づく骨梁容量に対する骨容量の比(BV/TV)の棒グラフである。
【図12】処置群1(偽手術)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.)、および6(エストラジオール単独で処置したOVX)の動物の大腿骨遠位部の石灰化速度(「MAR」、μm/day)を測定する動的組織形態分析に基づくBV/TV値の棒グラフである。
【図13】処置群1(偽手術、OVXなし)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独)、3(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.、3回/週)、4(BMP−6で処置したOVX、10μg/kg、i.v.、1回/週)、5(BMP−6で処置したOVX、1μg/kg、i.v.、3回/週)における高齢(2歳1か月齢)、卵巣切除(OVX)ラットの後肢に関するBMD値の棒グラフである。
【図14】処置群1(偽手術、三角)、2(OVX対照、酢酸緩衝液単独、四角)、および5(BMP−6で処置したOVX、1μg/kg、i.v.、3回/週、菱形)における処置時間(週)の関数としての動物後肢BMD値のグラフである。
【図15】年齢および経路(すなわち経口)の関数としての、経口投与したBMP−6に対するラットに吸収されたBMP−6の率を示すグラフである。
【図16】動物1(酢酸緩衝液中のBMP−6、pH3)、動物2(BMP−6、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸ナトリウム(1mg)、およびDL−ラウロイルカルニチンクロリド(1mg))、および動物3(BMP−6、0.9%NaCl、pH7、タウロデオキシコール酸ナトリウム(1mg)、およびDL−ラウロイルカルニチンクロリド(1mg))に吸収された、十二指腸投与したBMP−6の率の棒グラフである。
【図17】処置群1(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH4)、2(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸1mg、DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg)、3(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、タウロデオキシコール酸1mg、DL−ラウロイルカルニチンクロリド1mg、ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg)、4(BMP−6、i.d.、酢酸緩衝液、pH3、ジヘプタノイルホスファチジルコリン1.5mg)、および5(BMP−6、i.v.、酢酸緩衝液、pH4)における動物に関する静脈内用量に対する率として表現した、十二指腸内(i.d.)投与したBMP−6の吸収を示す棒グラフである。
【図18】非緩衝性インキュベーション培地1(図18A)または緩衝性(pH7.4)インキュベーション培地2(図18B)中で0および90分間インキュベートした、反転腸管系における粘膜(M、外側)から漿膜(S、内側)表面への99mTc標識BMP−6の輸送研究の(1分間あたり100万カウント単位の)結果を示す棒グラフである。
【図19】様々な反応からの消化生成物をジチオトレイトールで還元して、BMP−6モノマーを放出させ、電気泳動し、クマシーブルーで染色したものを示すポリアクリルアミドゲルである。
【図20】様々な反応からの消化生成物をジチオトレイトールで還元して、BMP−6モノマーを放出させ、電気泳動し、クマシーブルーで染色したものを示すポリアクリルアミドゲルである。
【図21】様々な反応からの消化生成物を電気泳動し、免疫検出(染色)したものを示すポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。
【図22】様々な反応からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。
【図23】様々な反応からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。
【図24】様々な反応混合物からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。
【図25】様々な反応混合物からの消化生成物を電気泳動して免疫検出(染色)したものを示す、ポリアクリルアミドゲルのウェスタン免疫ブロットである。
【図26】骨粗鬆症ラットモデルにおけるBMP−6の経腸投与を用いた研究の結果のグラフである。
【図27】3週間処置を受けた後の3週目での、骨粗鬆症のラットモデル動物の後肢におけるBMD値を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨誘導性骨形成タンパク質(BMP)または機能的に同等の骨誘導タンパク質と、
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、腸トリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、吸収促進剤と
を含む製剤を個体に経口投与することを含む、前記個体における骨量喪失を特徴とする代謝性骨疾患を処置する方法。
【請求項2】
前記骨誘導性BMPが、BMP−2、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−12、BMP−13、およびその組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨誘導性BMPが、精製された天然タンパク質または精製された組換えタンパク質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が、pH低下剤、キモトリプシン特異的阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記pH低下剤が、酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸、グルタル酸、ピルビン酸、グリセリン酸、およびその組合せから成る群から選択される緩衝剤である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キモトリプシン特異的阻害剤が、キモスタチン、Z−L−pheクロロメチルケトン、α2抗プラスミン、アプロチニン、6−アミノヘキサン酸、α1アンチトリプシン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、ブロモエノールラクトン、ジイソプロピルフルオロリン酸、エコトイン、N−アセチル−エグリンC、メシル酸ガベキサート、ロイペプチントリフルオロ酢酸塩、N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、ダイズトリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が、コムギ、コメ、オートムギ、ダイズ、およびその組合せから調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が存在する場合に、前記薬剤が、腸溶コーティング、胃pH調節剤、ペプシン特異的阻害剤化合物、およびその組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記腸溶コーティングが、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチルコポリマー、およびその組合せから成る群から選択される化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記胃pH調節剤が、制酸薬、ヒスタミンH2受容体を遮断する化合物、プロトンポンプ阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記制酸薬が、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸アルミニウムゲル、およびその組合せから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒスタミンH2受容体を遮断する前記化合物が、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン、およびその組合せから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プロトンポンプ阻害剤が、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、アベプラゾール(abeprazole)、およびその組合せから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプシン特異的阻害剤化合物が、ペプスタチンA、ペプシノストレプチン、およびその組合せから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
腸トリプシンのタンパク質分解活性を阻害する前記薬剤が存在する場合に、前記薬剤が、アプロチニン、α2抗プラスミン、抗トロンビンIII、α1アンチトリプシン、アンチパイン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、p−アミノベンズアミジン二塩酸塩、デリン、ベンズアミジン塩酸塩、ジイソプロピルフルオロリン酸、3,4−ジクロロイソクマリン、エコチン、メシル酸ガベキサート、ロイペプチン、α2マクログロブリン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、N−α−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、トリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が、十二指腸において前記製剤から放出されて、前記骨誘導性BMPまたは機能的に同等の骨誘導タンパク質が腸から血流中に吸収されるのに十分な時間、腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記吸収促進剤が存在する場合に、前記吸収促進剤が、コレステロール誘導体である陰イオン性薬剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびその組合せから成る群から選択される界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
コレステロール誘導体である前記陰イオン性薬剤が胆汁酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記胆汁酸が、コール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、フシジン酸、グリコール酸、デヒドロコール酸、リトコール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、およびその組合せから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記陽イオン界面活性剤が、アシルカルニチン、アシルコリン、ラウロイルコリン、塩化セチルピリジニウム、陽イオン性リン脂質、およびその組合せから成る群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテル、p−t−オクチルフェノールポロキシエチレン、ノニルフェノキシポロキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびその組合せから成る群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記製剤が、口を介して、注射により腸を介して、または直腸的に前記個体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
骨誘導性骨形成タンパク質(BMP)と、
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、腸トリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する薬剤と、
所望により、吸収促進剤と
を含む、個体に対する骨誘導性BMPの経口デリバリーのための製剤。
【請求項24】
前記骨誘導性BMPが、BMP−2、BMP−6、BMP−7、BMP−9、BMP−12、BMP−13、およびその組合せから成る群から選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
前記骨誘導性BMPが、精製された天然タンパク質または精製された組換えタンパク質である、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が、pH低下剤、キモトリプシン特異的阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項27】
前記pH低下剤が、酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、シュウ酸、リンゴ酸、フマル酸、2−ケトグルタル酸、グルタル酸、ピルビン酸、グリセリン酸、およびその組合せから成る群から選択される緩衝剤である、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記キモトリプシン特異的阻害剤が、キモスタチン、Z−L−pheクロロメチルケトン、α2抗プラスミン、アプロチニン、6−アミノヘキサン酸、α1アンチトリプシン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、ブロモエノールラクトン、ジイソプロピルフルオロリン酸、エコトイン、N−アセチル−エグリンC、メシル酸ガベキサート、ロイペプチントリフルオロ酢酸、N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、ダイズトリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項26に記載の製剤。
【請求項29】
腸キモトリプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が、コムギ、コメ、オートムギ、ダイズ、およびその組合せから調製される、請求項23に記載の製剤。
【請求項30】
胃ペプシンのタンパク質分解活性を抑制または阻害する前記薬剤が存在する場合に、前記薬剤が、腸溶コーティング、胃pH調節剤、ペプシン特異的阻害剤化合物、およびその組合せから成る群から選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項31】
前記腸溶コーティングが、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸トリメリト酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチルコポリマー、およびその組合せから成る群から選択される化合物を含む、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記胃pH調節剤が、制酸薬、ヒスタミンH2受容体を遮断する化合物、プロトンポンプ阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項30に記載の製剤。
【請求項33】
前記制酸薬が、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸アルミニウムゲル、およびその組合せから成る群から選択される、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
ヒスタミンH2受容体を遮断する前記化合物が、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン、およびその組合せから成る群から選択される、請求項32に記載の製剤。
【請求項35】
前記プロトンポンプ阻害剤が、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、アベプラゾール、およびその組合せから成る群から選択される、請求項32に記載の製剤。
【請求項36】
前記ペプシン特異的阻害剤化合物が、ペプスタチンA、ペプシノストレプチン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、およびその組合せから成る群から選択される、請求項30に記載の製剤。
【請求項37】
前記腸トリプシン特異的阻害剤化合物が存在する場合に、前記化合物が、アプロチニン、α2抗プラスミン、抗トロンビンIII、α1アンチトリプシン、アンチパイン、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、p−アミノベンズアミジン二塩酸塩、デリン、ベンズアミジン塩酸塩、ジイソプロピルフルオロリン酸、3,4−ジクロロイソクマリン、エコチン、メシル酸ガベキサート、ロイペプチン、α2マクログロブリン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、N−α−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン、トリプシン−キモトリプシン阻害剤、およびその組合せから成る群から選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項38】
前記吸収促進剤が、コレステロール誘導体である陰イオン性薬剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、およびその組合せから成る群から選択される界面活性剤である、請求項23に記載の製剤。
【請求項39】
コレステロール誘導体である前記陰イオン性薬剤が胆汁酸である、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
前記胆汁酸が、コール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、フシジン酸、グリコール酸、デヒドロコール酸、リトコール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸、およびその組合せから成る群から選択される、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
前記陽イオン界面活性剤が、アシルカルニチン、アシルコリン、ラウロイルコリン、塩化セチルピリジニウム、陽イオン性リン脂質、およびその組合せから成る群から選択される、請求項38に記載の製剤。
【請求項42】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテル、p−t−オクチルフェノールポロキシエチレン、ノニルフェノキシポロキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、およびその組合せから成る群から選択される、請求項38に記載の製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公表番号】特表2007−535546(P2007−535546A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510922(P2007−510922)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/014410
【国際公開番号】WO2005/110465
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】