説明

仮想白線設定方法、仮想白線設定装置及びそれを用いた針路変更支援装置

【課題】車両の乗員に不快感や不安を与えないようにする仮想白線設定技術を提供する。
【解決手段】前方カメラ10により、自車両の走行車線の白線及び走行車線上の自車両の走行を妨げる対象物を検出し、対象物が検出されたときに、車載レーダ30で検出した対象物と自車両との間の距離及び対象物の速度及び速度計40で検出した自車両の速度に基づき、下記式1及び式2で示す式にしたがって仮想白線を設定する。仮想白線位置=検出した白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1、対象物の白線からのはみ出し距離をXr、回避マージンをXm、衝突時間をttc、仮想白線曲げ開始時間をttcstart、仮想白線曲げ終了時間をttcend、自車両位置より先の仮想白線を演算するための係数をαとした場合、前記式1における仮想白線曲げ量は、


とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車線の白線上の障害物等を回避するための仮想白線設定技術及びその技術を用いた針路変更支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車線の白線上に走行中の他車両などの障害物が存在する場合に、実際の白線の位置に対して、障害物より内側に仮想の白線を設定し、設定した仮想白線に沿って車両を走行させるように制御することにより、車両の走行安全性を向上させるようにした車両用運転支援装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の仮想白線の設定技術では、自車両が走行したときに、障害物と自車両とを結んで順次得ることができる直線上に回避点を設定し、設定した回避点を直線で結んだ折れ線状の仮想白線を設定するようになっている。
【0005】
したがって、設定した仮想白線に沿うように車両を走行させると、折れ線に沿った動きとなり、特に回避点(折れ点)の部分で車両の横方向の動きがスムーズにならないため、車両の乗員に不快感や不安を与える場合があるという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにする仮想白線設定技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載の仮想白線設定方法は、白線検出工程、対象物検出工程及び白線設定工程により仮想白線を設定することを特徴とする。
白線検出工程は、自車両(70)の走行車線の白線を検出し、対象物検出工程は、走行車線の自車両(70)の走行を妨げる対象物(80)を検出する。
【0008】
また、白線設定工程は、対象物(80)が検出されたときに、検出した白線の内側の領域に、対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物(80)の速度及び自車両(70)の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線を演算し設定する。
【0009】
このような仮想白線設定方法によれば、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。以下説明する。
自車両(70)が走行車線を走行中に走行を妨げる対象物(80)が検出されたときに、検出した白線の内側の領域に仮想白線が設定される。このとき、仮想白線を対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物(80)の速度及び自車両(70)の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線として設定される。
【0010】
このように、仮想白線が曲線状に設定されるので、例えば、従来のように、自車両(70)が走行したときに、対象物(80)と自車両(70)とを結んで順次得ることができる直線上に回避点を設定し、設定した回避点を結んで得られる折れ線状の仮想白線に沿って車両を走行させる場合に比べ、折れ点がなくなるので、車両の横方向の動きがスムーズになる。したがって、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができるのである。
【0011】
なお、「検出した白線の内側の領域」とは、走行車線における白線に対し、自車両(70)の中心方向の領域を意味している。
具体的に例示すると、図8に示すようになる。つまり、自車両(70)の走行方向に向かって左側白線に対象物(80)がある場合には、図8(a)に示すように、車両進行方向の左側白線に対し、自車両(70)の中心方向である左側白線の右側に仮想白線が設定される。
【0012】
逆に、走行車線の右側白線に対象物(80)がある場合には、図8(b)に示すように、車両進行方向の右側白線に対し、自車両(70)の中心方向である、右側白線の左側に仮想白線が設定される。
【0013】
なお、この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0014】
そして、曲線状の仮想白線を設定するためには、請求項2に記載のように、仮想白線設定工程は、対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物(80)の速度及び自車両(70)の速度に基づいて、仮想白線を設定する区間を設定するとともに、設定した区間において曲率が正弦波状に変化する仮想白線を設定するようにすると、容易に曲線状の仮想白線を設定することができる。
【0015】
また、仮想白線を設定するには、請求項3に記載のように、設定する仮想白線位置を、
仮想白線位置=検出した白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1
で設定し、
対象物80の白線からのはみ出し距離をXr、回避マージンをXm、衝突時間をttc、仮想白線曲げ開始時間をttcstart、仮想白線曲げ終了時間をttcend、自車両(70)位置より先の仮想白線を演算するための係数をαとした場合、前述の式1における仮想白線曲げ量を、
【0016】
【数1】

【0017】
により算出するようにすると、仮想白線が容易に正弦波状に設定され、自車両(70)の横方向の動きがスムーズになるため、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。
【0018】
ところで、仮想白線を設定する場合、仮想白線の位置情報だけでも仮想白線を設定することができるが、仮想白線は、位置情報の他に角度情報も有している。つまり、白線の一部がどの方向を向いているかという角度情報も含めて仮想白線を設定すると、設定される仮想白線はより滑らかな曲線となる。
【0019】
そこで、請求項4に記載のように、自車両(70)の速度の、白線検出工程で検出された白線方向の成分を検出する自車速度成分検出工程を有し、白線設定工程は、自車速度成分検出工程により検出された、自車両(70)の速度の、白線検出工程で検出された白線方向の成分と、式2により算出された仮想白線曲げ量と、に基づき、仮想白線が白線検出工程で検出された白線となすヨー角(θ)を、
【0020】
【数2】

【0021】
により算出するとよい。
このようにすると、位置情報のみで仮想白線を設定するよりも、角度情報(ヨー角(θ))も含めて仮想白線を設定されるので、より滑らかな曲線の仮想白線となる。
【0022】
ところで、通常、走行車線は、平行な2本の白線から構成されているが、設定する仮想白線は、自車両(70)が、それに沿って走行できればよいので、必ずしも平行に設定する必要はない。
【0023】
そこで、請求項5に記載のように、白線設定工程は、白線検出工程で2本の走行車線が検出された場合には、検出された走行車線の2本の白線に対し、それぞれ独立して仮想白線を設定するようにすると、2本の白線に対して、2本の仮想白線が、自車両(70)が走行可能となる異なる条件下で設定されるので、自車両(70)が走行可能となるのに適した2本の仮想白線が設定できる。
【0024】
請求項6に記載の仮想白線設定装置(5)は、白線検出手段(10)、対象物検出手段(10)及び距離検出手段(30)、対象物速度検出手段(30)及び自車速度検出手段(40)の少なくとも1つと、仮想白線演算手段(50)を備えている。
【0025】
白線検出手段(10)は、自車両(70)の走行車線の白線を検出し、対象物検出手段(10)は、走行車線上の自車両(70)の走行を妨げる対象物(80)を検出する。
距離検出手段(30)は、対象物検出手段(10)で検出した対象物(80)と自車両(70)との間の距離を検出し、対象物速度検出手段(30)は、対象物検出手段(10)で検出した対象物(80)の速度を検出し、自車速度検出手段(40)は、自車両(70)の速度を検出する。
【0026】
仮想白線演算手段(50)は、対象物検出手段(10)により対象物(80)が検出されたときに、白線検出手段(10)により検出した白線の内側の領域に、距離検出手段(30)で検出した対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物速度検出手段(30)で検出した対象物(80)の速度及び自車速度検出手段(40)で検出した自車両(70)の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線を演算し設定する。
【0027】
このような仮想白線設定装置(5)では、自車両(70)が走行車線を走行中に走行を妨げる対象物(80)が検出されたときに、検出した白線の内側の領域に仮想白線が設定される。このとき、仮想白線を対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物(80)の速度及び自車両(70)の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線として設定される。
【0028】
したがって、例えば、従来のように、自車両(70)が走行したときに、対象物(80)と自車両(70)とを結んで順次得ることができる直線上に回避点を設定し、設定した回避点を結んで得られる折れ線状の仮想白線に沿って車両を走行させる場合に比べ、折れ点がなくなるので、自車両(70)の横方向の動きがスムーズになる。したがって、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。
【0029】
ところで、曲線状の仮想白線を設定するためには、請求項6に記載のように、仮想白線演算手段(50)は、距離検出手段(30)で検出した対象物(80)と自車両(70)との間の距離、対象物速度検出手段(30)で検出した対象物(80)の速度及び自車速度検出手段(40)で検出した自車両(70)の速度に基づいて、仮想白線を設定する区間を設定するとともに、設定した区間において曲率が正弦波状に変化する仮想白線を設定するようにすると、容易に曲線状の仮想白線を設定することができる。
【0030】
また、仮想白線演算手段(50)において仮想白線を設定するには、請求項8に記載のように、設定する仮想白線位置が、
仮想白線位置=検出した白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1
で設定され、
対象物80の白線からのはみ出し距離をXr、回避マージンをXm、衝突時間をttc、仮想白線曲げ開始時間をttcstart、仮想白線曲げ終了時間をttcend、自車両(70)位置より先の仮想白線を演算するための係数をαとした場合、前述の式1における仮想白線曲げ量が、
【0031】
【数1】

【0032】
により算出されるようにすると、仮想白線が容易に正弦波状に設定され、自車両(70)の横方向の動きがスムーズになるため、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。
【0033】
また、請求項9に記載のように、自車速度検出手段(40)で検出した自車両(70)の速度の、白線検出手段(10)で検出された白線方向の成分を検出する自車速度成分検出手段(10,50)を有し、仮想白線演算手段(50)は、自車速度成分検出手段(10,50)により検出された、自車両(70)の速度の白線方向の成分と、式2により算出された仮想白線曲げ量と、に基づき、仮想白線が白線検出手段(10)で検出された白線となすヨー角(θ)を、
【0034】
【数2】

【0035】
により算出するようにすると、請求項4と同様に、位置情報のみで仮想白線を設定するよりも、角度情報(ヨー角(θ))も含めて仮想白線を設定されるので、より滑らかな曲線の仮想白線となる。
【0036】
ところで、通常、走行車線は、平行な2本の白線から構成されているが、設定する仮想白線は、自車両(70)が、それに沿って走行できればよいので、必ずしも平行に設定する必要はない。
【0037】
そこで、請求項10に記載のように、仮想白線演算手段(50)は、白線検出手段(10)で2本の走行車線が検出された場合には、検出された走行車線の2本の白線に対し、それぞれ独立して仮想白線を設定するようにすると、2本の白線に対して、2本の仮想白線が、自車両(70)が走行可能となる異なる条件下で設定されるので、自車両(70)が走行可能となるのに適した2本の仮想白線が設定できる。
【0038】
さらに、請求項11に記載のように、請求項6〜請求項10の何れか1項に記載の仮想白線設定装置(5)と、自車両(70)の走行位置が、仮想白線設定装置(5)において設定された仮想白線から所定の範囲内となるように、自車両(70)に備えられたステアリング装置(110)のステアリング角を制御する制御手段(60)と、を備えた針路変更支援装置(1)とするとよい。
【0039】
仮想白線設定装置(5)において設定された曲線に沿って自車両(70)が走行するので、自車両(70)の横方向の動きがスムーズになる。したがって、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。
【0040】
ところで、仮想白線演算手段(50)により仮想白線を設定する場合には、仮想白線が隣接する車線に設定されることになる。その場合、隣接車線に他車両(90)が走行している可能性があり、設定された仮想白線に沿って自車両(70)を走行させると隣接車線を走行している車両と接触するなど、安全性に問題が生じる場合がある。
【0041】
そこで、請求項12に記載のように、自車両(70)が走行している車線に隣接する車線を走行する他車両(90)を検出する他車両検出手段(10)を備え、仮想白線演算手段(50)は、他車両検出手段(10)によって自車両(70)が走行している車線に隣接する車線に他車両(90)を検出した場合には、他車両(90)が走行している車線側にはみ出さないように仮想白線を設定するようにするとよい。
【0042】
このようにすると、隣接車線に他車両(90)が走行している場合には、仮想白線に沿って自車両(70)を走行させた場合でも自車両(70)が隣接車線にはみ出すことがない、換言すれば、他車両(90)が走行している隣接車線に自車両(70)を走行させることがなくなるので、走行時の安全を確保することができる。
【0043】
ところで、自車両(70)が走行車線を走行しているとき、自車両(70)の走行方向の左右両側の白線上に対象物(80)が存在することも考えられる。
その場合、請求項13に記載のように、自車両(70)を運転している運転者に対して警報を報知する報知手段(100)を備え、仮想白線演算手段(50)は、対象物検出手段(10)で検出した対象物(80)が、白線検出手段(10)で検出した走行車線のうち、自車両(70)の走行方向の左右両側の白線上に存在する場合で、かつ、左右両側の白線上に存在する車両に対して設定した2本の仮想白線の間の最短距離が自車両(70)の車幅に所定の余裕を付加した値以下の場合には、制御手段(60)は、自車両(70)のステアリング装置(110)のステアリング角を制御する代わりに、報知手段(100)で、運転者に警報を報知させるようにするとよい。
【0044】
このようにすると、設定された仮想白線が2本あり、その間の最短距離が自車両(70)の車幅に所定の余裕を付加した値よりも狭い場合には、自車両(70)のステアリング装置(110)のステアリング角の制御がなされる代わり又はそれに加えて、運転者に警報が報知されるので、運転者は仮想白線に沿って運転してはならないことが分かる。したがって、走行時の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】針路変更支援装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】演算・設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】演算・設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】自車両の走行を妨げる対象物であるか否かの判定方法を説明するための図である。
【図5】仮想白線の設定方法について説明するための図である。
【図6】針路変更支援装置の基本的作動の例について説明するための図である。
【図7】自車両が走行している車線を構成するもう一方の白線に対する仮想白線Y2の設定について説明するための図である。
【図8】対象物の位置によって、針路変更支援装置がどのように作動するかについて説明するための図である。
【図9】隣接車線に他車両が走行している場合の自車両の制御について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0047】
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された針路変更支援装置1の概略の構成を示すブロック図である。
【0048】
針路変更支援装置1は、図1に示すように、仮想白線設定装置5、制御部60及び報知装置100を備えている。
仮想白線設定装置5は、前方カメラ10、後方カメラ20、車載レーダ30、速度計40及び演算・設定部50を備えている。
【0049】
前方カメラ10は、CCDカメラ、撮像管カメラ或いは赤外線カメラであり、自車両70の前方の画像を取得するように、自車両70の車室内又は自車両70の車体前部のボンネットやバンパーに埋め込まれた状態で設置されている。
【0050】
前方カメラ10は、自車両70の走行車線の白線を検出するとともに、走行車線上の自車両70の走行を妨げる対象物80を検出する。また、前方カメラ10は、自車両70が走行している車線(以下、「自車線」とも呼ぶ)に隣接する車線を走行する他車両90のうち、対向車を検出するためにも用いられる。
【0051】
後方カメラ20は、前方カメラ10と同様、CCDカメラ、撮像管カメラ或いは赤外線カメラであり、自車両70の後方の画像を取得するように、自車両70の車室内又は自車両70の車体後部のボンネットやバンパーに埋め込まれた状態で設置されている。
【0052】
後方カメラ20は、自車線に隣接する車線を走行する他車両90のうち、後方から自車両70を追い越したり、追い抜いたりする他車両90を検出するために用いられる。
車載レーダ30は、パルスドップラレーダ又はFMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Waveレーダの略)であり、自車両70の車体前部のボンネットやバンパーに埋め込まれた状態で設置されている。車載レーダ30は、パルスドップラレーダ又はFMCWレーダであるため、前方カメラ10で検出した対象物80と自車両70との間の距離を検出できるとともに、前方カメラ10で検出した対象物80の速度を検出することができる。

速度計40は、自車両70の速度を検出する装置であり、演算・設定部50は、図示しないCPU、ROM、RAM及びI/Oを備えており、ROMに格納されたプログラムにより、以下の(ア)〜(カ)に示す処理を実行する。
【0053】
(ア)前方カメラ10により取得した画像から走行車線の白線を抽出する。
(イ)前方カメラ10により取得した画像から対象物80が検出されたか否かを判定する。
【0054】
(ウ)対象物80が検出された場合、前方カメラ10により取得した画像から抽出した白線の内側の領域に、車載レーダ30で検出した対象物80と自車両70との間の距離、車載レーダ30で検出した対象物80の速度及び速度計40で検出した自車両70の速度に基づいて仮想白線の単位時間当たりの仮想白線曲げ量を算出する。
【0055】
(エ)速度計40で検出した自車両70の速度と(ア)において抽出した前方画像中の白線の位置、及び(ウ)で算出した仮想白線の単位時間当たりの仮想白線曲げ量に基づいて、仮想白線の白線に対するヨー角(θ)を算出する。
【0056】
(オ)ただし、後方カメラ20によって自車線に隣接する車線に他車両90を検出した場合には、他車両90が存在する車線側に仮想白線がはみ出さないように仮想白線を設定する。
【0057】
(カ)自車両70が走行している車線を構成する左右両側の白線に対し、仮想白線を設定した場合、左右両側の仮想白線間の最短距離が自車両70の車幅に回避マージンの2倍を加算した値より小さい場合には、報知装置100により警報を発する。
【0058】
制御部60は、図示しないCPU、ROM、RAM及びI/Oを備えており、演算・設定部50で設定された仮想白線及びヨー角(θ)に基づいて自車両70のステアリング装置110のステアリング角を制御したり、演算・設定部50からの指令により報知装置100に警報を報知させたりする。
【0059】
報知装置100は、自車両70を運転している運転者に対して警報を報知するものであり、アンプ及びスピーカによりビープ音や音声などの音響を発生することにより報知したり、LED、LCDパネルあるいは有機ELパネルなどで表示する画像により報知したりする。
【0060】
(演算・設定処理の説明)
次に、図2及び図3に基づき、演算・設定部50において実行される演算・設定処理について説明する。図2及び図3は、演算・設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
演算・設定処理は、自車両70のACCスイッチがオンされたときに処理が開始され、まずS100において、前方カメラ10及び後方カメラ20から画像が取得され、続くS105では、S100において取得された前方カメラ10の画像及び後方カメラ20の画像から、自車両70の走行車線に隣接する車線において、自車両70の斜め前方及び斜め後方の他車両90が抽出される。他車両90の抽出は、公知の画像処理によって行われるため、画像処理方法についての説明は省略する。
【0062】
続くS110では、S100において取得された前方カメラ10の画像から、走行車線上の自車両70の走行を妨げる対象物80が、公知の画像処理により抽出される。
続くS115では、S110において対象物80が自車両70の走行方向に向かって左側の白線上に抽出されたか否か、つまり、走行車線上の自車両70の走行を妨げる対象物80が左側白線上に存在するか否かが判定される。
【0063】
そして、対象物80が左側白線上に存在すると判定された場合(S115:Yes)、処理がS120へ移行され、対象物80が存在しないと判定された場合(S115:No)には、処理がS155へ移行される。
【0064】
自車両70の走行を妨げる対象物80であるか否かは、図4に示すようにして判定される。つまり、図4(a)に示すように他車両90が隣接車線にあり、隣接車線と自車両70の走行車線とを分ける白線(図4中、自車両70の進行方向に向かって左側の白線)に近接している場合は、対象物80とは判定されない。
【0065】
また、図4(c)に示すように他車両90が、自車線内にある場合も対象物80とは判定されない。
一方、図4(b)に示すように、自車両70の車線を形成する2本の白線のうち一方の白線(図4中、自車両70の進行方向に向かって左側の白線)に対し、0〜1.3[m]自車線内に飛び出している場合には対象物80と判定される。
【0066】
ここで、飛び出し量を1.3[m]とするのは、道路構造令により、路肩は幅を最低0.5[m]程度設ける必要があり、路肩端から0.1[m]の場所に1.8[m]幅の車両を停車させると、車線に飛び出す量は1.3[m]となるからである(ただし、車線の線幅を0.1[m]としている)。なお、飛び出し量や路肩の幅を道路の状況等に応じて変更してもよい。
【0067】
S120では、対象物80までの距離が車載レーダ30から取得され、続くS125において、対象物80の相対速度が車載レーダ30から取得され、続くS130において、自車速度が速度計40から取得される。
【0068】
続くS135において、左側白線対象物存在フラグがセットされ、処理がS140へ移行される。また、S155においては、左側白線対象物存在フラグがリセットされる。
S140では、S105において隣接車線のうち自車両70の進行方向に対して右側の車線に他車両90が抽出されたか、つまり、右側車線に他車両90が存在するか否かが判定される。
【0069】
そして、右側車線に他車両90が存在すると判定された場合(S140:Yes)、処理がS145へ移行され、右側車線他車両存在フラグがセットされ、他車両90が存在しないと判定された場合(S140:No)には、処理がS150へ移行され、右側車線他車両存在フラグがリセットされる。右側車線他車両存在フラグがセット又はリセットされた後、処理がS160へ移行される。
【0070】
S160(図3参照)では、S110において対象物80が自車両70の走行方向に向かって右側白線上に抽出されたか否か、つまり、走行車線上の自車両70の走行を妨げる対象物80が右側白線上に存在するか否かが、S115における判定方法と同様にして判定される。
【0071】
そして、対象物80が右側白線上に存在すると判定された場合(S160:Yes)、処理がS165へ移行され、対象物80が存在しないと判定された場合(S160:No)には、処理が195へ移行される。
【0072】
S165では、対象物80までの距離が車載レーダ30から取得され、続くS170において、対象物80の相対速度が車載レーダ30から取得される。
続くS175において、右側白線対象物存在フラグがセットされ、処理がS180へ移行される。また、S195においては、右側白線対象物存在フラグがリセットされる。
【0073】
S180では、S105において隣接車線のうち自車両70の進行方向に対して左側の車線に他車両90が抽出されたか、つまり、左側車線に他車両90が存在するか否かが判定される。
【0074】
そして、左側車線に他車両90が存在すると判定された場合(S180:Yes)、処理がS185へ移行され、左側車線他車両存在フラグがセットされ、他車両90が存在しないと判定された場合(S180:No)には、処理がS190へ移行され、左側車線他車両存在フラグがリセットされる。左側車線他車両存在フラグがセット又はリセットされた後、処理がS200へ移行される。
【0075】
S200において、以下のようにして、仮想白線が設定される。
(a)左側白線上に対象物80が存在せず(左側白線対象物存在フラグ:リセット)、右側白線上にも対象物80が存在しない(右側白線対象物存在フラグ:リセット)場合、仮想白線を設定しない。
【0076】
(b)左側白線上に対象物80が存在し(左側白線対象物存在フラグ:セット)、右側白線上に対象物80が存在しない(右側白線対象物存在フラグ:リセット)場合、左側仮想白線を式1、式2及び式3に従って設定し、右側仮想白線は、左側仮想白線と平行に設定する。
【0077】
(c)左側白線上に対象物80が存在せず(左側白線対象物存在フラグ:リセット)、右側白線上に対象物80が存在する(右側白線対象物存在フラグ:セット)場合、右側仮想白線を式1、式2及び式3に従って設定し、左側仮想白線は、右側仮想白線と平行に設定する。
【0078】
(d)左側白線上に対象物80が存在し(左側白線対象物存在フラグ:セット)、右側白線上にも対象物80が存在する(右側白線対象物存在フラグ:セット)場合、左側仮想白線及び右側白線ともに式1、式2及び式3に従って設定する。この場合、左右両側の仮想白線は共に自車両70の走行車線の内側に設定されることになる。
【0079】
(e)(b)〜(d)において、右側車線に他車両90が存在する場合(右側車線他車両存在フラグ:セット)は、左右両側の仮想白線が右側白線よりも右側車線側にはみ出さないように変形させて設定する。
【0080】
(f)(b)〜(d)において、左側車線に他車両90が存在する場合(左側車線他車両存在フラグ:セット)は、左右両側の仮想白線が左側白線よりも左側車線側にはみ出さないように変形させて設定する。
【0081】
ここで、式1、式2及び式3に従って仮想白線を設定する方法について説明する。図5に基づき仮想白線の設定について説明する。
仮想白線Y1の設定は、白線位置に仮想曲げ量を加算することにより行われる。つまり、下記に示す式1に従って算出される。
【0082】
仮想白線位置=白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1
また、仮想白線曲げ量は、図5に示すように、
r:対象物80の白線からのはみ出し距離
m:回避マージン
ttc:衝突時間(対象物80との距離÷対象物80との相対速度)
ttcstart:仮想白線曲げ開始地点
ttcend:仮想白線曲げ終了地点
α:自車両70位置より先の仮想白線を演算するための係数であり、具体的なアプリケーションに応じて設定される値である。
【0083】
とした場合に、下記に示す式2に従って算出される。
【0084】
【数1】

【0085】
ここで、ttcstartは、S125において取得された対処物80までの距離をS130において取得された対象物80の相対速度で除した値が、仮想白線の設定を開始する時間として予め設定した時間になった点(A点)であり、ttcendは、S125において取得された対処物80までの距離をS130において取得された対象物80の相対速度で除した値が、仮想白線の設定を終了する時間として予め設定した時間になった点(B点)である。
【0086】
さらに、仮想白線が白線となす角であるヨー角(θ)が設定される。ヨー角(θ)は、下記に示す式3に従って算出される。
つまり、速度計40で検出した自車両70の速度と、S110において抽出した前方画像中の白線の位置に基づいて、単位時間当たりの自車両移動距離の白線方向成分を算出し、算出した単位時間当たりの自車両移動距離の白線方向成分と式2で算出した仮想白線の単位時間当たりの仮想白線曲げ量に基づいて、下記式3に従って算出されるのである。
【0087】
【数2】

【0088】
続くS205では、S200において設定された左右両側の白線に対する仮想白線の最短距離が所定の値以下であるか否かが判定される。仮想白線間の最短距離が所定の値以下であると判定された場合(S205:Yes)、処理がS220へ移行され、所定の値より大きいと判定された場合(S205:No)には、処理がs210へ移行される。
【0089】
なお、本第1実施形態では、所定の値は、回避マージン(Xm)の2倍である1.0[m]とする。
S210では、S200において設定された左右両側の仮想白線の位置に基づいて、自車両70のステアリング角(φ)が設定される。
【0090】
具体的には、進行方向の左右両側に設定された仮想白線から自車両70が等距離を通るようにステアリング角(φ)が設定される。
続くS215では、S200において設定された仮想白線の位置及びS210で設定されたステアリング角(φ)が制御部60へ出力された後、処理がS100へ移行され、本演算・設定処理が繰り返される。
【0091】
S220では、警告指令が制御部へ出力された後、処理がS100へ移行され、本演算・設定処理が繰り返される。
なお、演算・設定処理は、自車両70のACCスイッチがオフされたときに処理が終了される。
【0092】
(針路変更支援装置1の作動)
[基本的作動]
次に、図6に基づき針路変更支援装置1の基本的作動の例について説明する。図6に示す場合、自車両70は、時速50[km/h]で走行車線を図6中上方向に走行している。対象物80は、自車両70の走行方向(自車両70の前方)の図6中左側の白線上に停車している。
【0093】
対象物80の白線からのはみ出し距離Xrを1.3[m]、回避マージンXmを0.5[m]、仮想白線曲げ開始地点(A点)を対象物80まで2.5[秒]の地点、仮想白線曲げ終了地点(B点)を対象物80まで0.4[秒]の地点、係数αを0とすると、仮想白線曲げ開始地点(A点)からttc[秒]経過した時点における仮想曲げ量は、下記の式4に示すようになる。
【0094】
【数3】

【0095】
仮想曲げ量を算出したら、式3に従って、仮想白線が白線となすヨー角(θ)を算出する。
そして、仮想白線曲げ終了地点(B点)に到達すると、自車両70の進行方向に15[m]の長さの直線の仮想白線を設定し、その後、前方カメラ10から取得した画像から抽出される白線に対し、仮想白線曲げ開始地点(A点)から仮想白線曲げ終了地点(B点)まで設定した仮想白線と逆の仮想白線を設定する。この式から得られる仮想白線を図6中に破線Y1で示す。
【0096】
また、図7に基づき、自車両70が走行している車線を構成するもう一方の白線に対する仮想白線Y2の設定について説明する。
破線Y2は、図7中に示す破線Y1と平行に設定するが、この際、Y2の仮想曲げ量が、仮想白線Y1の仮想白線終了地点(B点)における仮想曲げ量に対し2.7[m]となった時点で仮想曲げ量を一定(2.7[m])とする。
【0097】
このようにして、設定される仮想白線が隣接車線(図7においては自車両70の進行方向に向かって右側の車線)に飛び出し過ぎないようにする。
[対象物80の位置による作動]
次に、図8に基づき、対象物80が自車両70に対してどの位置に存在するかによって、針路変更支援装置1がどのように作動するかについて説明する。
【0098】
まず、図8(a)に示すように、走行車線の進行方向に向かって左側の白線上に対象物80が存在する場合には、自車両70の走行車線側である、進行方向に向かって左側の白線の右側に、図中破線で示す仮想白線Y1が設定され、Y1と対になるように仮想白線Y2が設定される。
【0099】
また、図8(b)に示すように、走行車線の進行方向に向かって右側の白線上に対象物80が存在する場合には、自車両70の走行車線側である、進行方向に向かって右側の白線の左側に、図中破線で示す仮想白線Y1が設定され、Y1と対になるように仮想白線Y2が設定される。
【0100】
さらに、図8(c)に示すように、走行車線の進行方向に向かって左右両側の白線上に対象物80が存在する場合には、左右両側の白線から自車両70の走行車線側に仮想白線Y1が2本設定(右側の仮想白線をY1’とする)されることになる。
【0101】
その2本の仮想白線Y1及びY1’の間隔が自車両70の車幅に車幅方向の左右の回避マージンを加えた値より小さくなる場合には、演算・設定部50において、自車両70のステアリング装置110のステアリング角が制御される代わりに、報知装置100で、運転者に警報が報知される。
【0102】
(針路変更支援装置1の特徴)
以上に説明した針路変更支援装置1では、自車両70が走行車線を走行中に走行を妨げる対象物80が検出されたときに、検出した白線の内側の領域に仮想白線が設定される。このとき、仮想白線を対象物80と自車両70との間の距離、対象物80の速度及び自車両70の速度に基づいて、式1に従って曲率が変化する曲線状の仮想白線として設定される。
【0103】
したがって、従来のように、自車両70が走行したときに、対象物80と自車両70とを結んで順次得ることができる直線上に回避点を設定し、設定した回避点に基づいて、折れ線状の仮想白線を設定する場合に比べ、設定した仮想白線に沿うように車両を走行させると、車両の横方向の動きがスムーズになるため、車両の乗員に不快感や不安を与えないようにすることができる。
【0104】
また、仮想白線の設定の際、単位時間当たりの自車両70移動距離(自車両70の速度)の白線方向成分と、単位時間当たりの仮想白線曲げ量に基づいて、白線に対する仮想白線のヨー角(θ)が設定される。
【0105】
そして、白線からの仮想白線の位置と白線に対する仮想白線のヨー角(θ)に基づいて、自車両70を仮想白線から所定の距離を保ちつつ、仮想白線に沿うように、自車両70のステアリング装置110のステアリング角(φ)が制御されるので、仮想白線の白線からの位置情報のみでステアリング角(φ)を制御するより、よりスムーズな針路変更を行うことができる。
【0106】
さらに、自車線に隣接する車線に他車両90を検出した場合には、仮想白線がその車線にはみ出さないように仮想白線を設定している。したがって、図9(a)に示すように、隣接車線に他車両90が自車両70を追い抜くように走行している場合、あるいは、図9(b)に示すように、隣接車線に他車両90が自車両70に対向して走行している場合には、仮想白線に沿って自車両70を走行させない、換言すれば、他車両90が走行している隣接車線に飛び出して自車両70を走行させることがなくなるので、走行時の安全を保つことができる。
【0107】
また、設定された左右両側の仮想白線間の最短距離が自車両70の車幅に回避マージンを加えた値より小さい場合には、自車両70のステアリング装置110のステアリング角が制御される代わりに、運転者に警報が報知されるので、運転者は仮想白線に沿って運転してはならないことが分かる。したがって、走行時の安全を保つことができる。
【0108】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態における針路変更支援装置の構成は、第1実施形態における針路変更支援装置1の構成と同じであるので、その説明は省略する。
【0109】
第1実施形態では、対象物80と自車両70との間の距離、対象物80の速度、自車両70の速度に基づいて仮想白線を設定していたが、第2実施形態では、対処物80と自車両70との距離に基づいて仮想白線を設定する。
【0110】
この場合には、式2において、Xr、Xm、ttcend及び仮想白線の設定を開始する車間距離を予め定めておき、車載レーダ30から取得した対象物80と自車両70との距離が予め定めた値になった場合に、その地点をA地点とし、仮想白線の設定を開始(ttcstart=0)し、仮想白線の設定を終了する地点をB点(ttcend)とする。そして、開始時間からの時間経過をttcとして仮想白線曲げ量を演算する。
【0111】
このようにしても、仮想白線を設定することができる。
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、設定された左右両側の仮想白線間の最短距離が自車両70の車幅に回避マージンを加えた値より小さい場合には、警報を報知しているが、その代わり又はそれに加えて、ブレーキ制御を行ってもよい。
【0112】
つまり、設定された左右両側の仮想白線間の最短距離が自車両70の車幅に回避マージンを加えた値より小さい場合に、制御部60から図示しないブレーキ制御部に対し、ブレーキを作動させる旨の指令信号を出力し、自車両70の速度を減少させたり、自車両70を停止させたりするのである。
【0113】
(2)また、上記実施形態において、仮想白線から車両が逸脱した場合、若しくは、自車と仮想白線の位置・角度、自車速度やドライバのステアリング切り角度等から、逸脱が予期される場合に、逸脱警報をドライバに報知し、車両が仮想白線から逸脱することを回避するようにしてもよい。
【0114】
つまり、前方カメラ10で取得した白線の位置から自車両70の位置を特定し、ステアリング装置110からステアリング切り角度を取得し、速度計から自車両70の速度を取得する。そして、取得した自車両70の位置、速度及びステアリング切り角度と、設定した仮想白線の位置、角度とから自車両70が仮想白線を逸脱する可能性があるか否かを判定するのである。
【符号の説明】
【0115】
1…針路変更支援装置、5…仮想白線設定装置、10…前方カメラ、20…後方カメラ、30…車載レーダ、40…速度計、50…演算・設定部、60…制御部、70…自車両、80…対象物、90…他車両、100…報知装置、110…ステアリング装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行車線の白線を検出する白線検出工程と、
前記走行車線の前記自車両の走行を妨げる対象物を検出する対象物検出工程と、
前記対象物が検出されたときに、前記検出した白線の内側の領域に、前記対象物と前記自車両との間の距離、前記対象物の速度及び前記自車両の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線を演算し設定する白線設定工程と、
により仮想白線を設定することを特徴とする仮想白線設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の仮想白線設定方法において、
前記白線設定工程は、
前記対象物と前記自車両との間の距離、前記対象物の速度及び前記自車両の速度に基づいて、前記仮想白線を設定する区間を設定するとともに、該設定した区間において前記曲率が正弦波状に変化する仮想白線を設定することを特徴とする仮想白線設定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の仮想白線設定方法において、
前記白線設定工程は、
設定する仮想白線位置を、
仮想白線位置=検出した白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1
で設定し、
対象物の白線からのはみ出し距離をXr、回避マージンをXm、衝突時間をttc、仮想白線曲げ開始時間をttcstart、仮想白線曲げ終了時間をttcend、自車両位置より先の仮想白線を演算するための係数をαとした場合、前記式1における仮想白線曲げ量を、
【数1】

により算出することを特徴とする仮想白線設定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の仮想白線設定方法において、
前記自車両の速度の、前記白線検出工程で検出された白線方向の成分を検出する自車速度成分検出工程を有し、
前記白線設定工程は、
前記自車速度成分検出工程により検出された、前記自車両の速度の白線方向の成分と、
前記式2により算出された仮想白線曲げ量と、
に基づき、
仮想白線が前記白線検出工程で検出された白線となすヨー角を、
【数2】

により算出することを特徴とする仮想白線設定方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の仮想白線設定方法において、
前記白線設定工程は、
前記白線検出工程で2本の走行車線が検出された場合には、検出された走行車線の2本の白線に対し、それぞれ独立して仮想白線を設定することを特徴とする仮想白線設定方法。
【請求項6】
自車両の走行車線の白線を検出する白線検出手段と、
前記走行車線上の前記自車両の走行を妨げる対象物を検出する対象物検出手段と、
前記対象物検出手段で検出した前記対象物と前記自車両との間の距離を検出する距離検出手段と、
前記対象物検出手段で検出した対象物の速度を検出する対象物速度検出手段と、
前記自車両の速度を検出する自車速度検出手段と、
前記対象物検出手段により前記対象物が検出されたときに、前記白線検出手段により検出した白線の内側の領域に、前記距離検出手段で検出した前記対象物と前記自車両との間の距離、前記対象物速度検出手段で検出した前記対象物の速度及び前記自車速度検出手段で検出した前記自車両の速度に基づいて曲率が変化する曲線状の仮想白線を設定する仮想白線演算手段と、
を備えたことを特徴とする仮想白線設定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の仮想白線設定装置において、
前記仮想白線演算手段は、
前記距離検出手段で検出した前記対象物と前記自車両との間の距離、前記対象物速度検出手段で検出した前記対象物の速度及び前記自車速度検出手段で検出した前記自車両の速度に基づいて、前記仮想白線を設定する区間を設定するとともに、該設定した区間において前記曲率が正弦波状に変化する仮想白線を設定することを特徴とする仮想白線設定装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の仮想白線設定装置において、
前記仮想白線演算手段は、
設定する仮想白線位置が、
仮想白線位置=検出した白線位置+仮想白線曲げ量・・・式1
で設定され、
対象物の白線からのはみ出し距離をXr、回避マージンをXm、衝突時間をttc、仮想白線曲げ開始時間をttcstart、仮想白線曲げ終了時間をttcend、自車両位置より先の仮想白線を演算するための係数をαとした場合、前記式1における仮想白線曲げ量が、
【数1】

により算出されることを特徴とする仮想白線設定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の仮想白線設定装置において、
前記自車速度検出手段で検出した自車両の速度の、前記白線検出手段で検出された白線方向の成分を検出する自車速度成分検出手段を有し、
前記仮想白線演算手段は、
前記自車速度成分検出手段により検出された、前記自車両の速度の白線方向の成分と、
前記式2により算出された仮想白線曲げ量と、
に基づき、
仮想白線が前記白線検出手段で検出された白線となすヨー角を、
【数2】

により算出することを特徴とする仮想白線設定装置。
【請求項10】
請求項6〜請求項9の何れか1項に記載の仮想白線設定装置において、
前記仮想白線演算手段は、
前記白線検出手段で2本の走行車線が検出された場合には、検出された走行車線の2本の白線に対し、それぞれ独立して仮想白線を設定することを特徴とする仮想白線設定装置。
【請求項11】
請求項6〜請求項10の何れか1項に記載の仮想白線設定装置と、
自車両の走行位置が、前記仮想白線設定装置において設定された仮想白線から所定の範囲内となるように、前記自車両に備えられたステアリング装置のステアリング角を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする針路変更支援装置
【請求項12】
請求項11に記載の針路変更支援装置において、
前記自車両が走行している車線に隣接する車線を走行する他車両を検出する他車両検出手段を備え、
前記仮想白線演算手段は、
前記他車両検出手段によって前記自車両が走行している車線に隣接する車線に前記他車両を検出した場合には、前記他車両が走行している車線側にはみ出さないように前記仮想白線を設定することを特徴とする針路変更支援装置。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の針路変更支援装置において、
前記自車両を運転している運転者に対して警報を報知する報知手段を備え、
前記仮想白線演算手段は、
前記対象物検出手段で検出した対象物が、前記白線検出手段で検出した前記走行車線のうち、前記自車両の走行方向の左右両側の白線上に存在する場合で、かつ、前記左右両側の白線上に存在する車両に対して設定した2本の仮想白線の間の最短距離が前記自車両の車幅の所定の余裕を付加した値以下の場合には、
前記制御手段は、前記自車両のステアリング装置のステアリング角を制御する代わり又はそれに加えて、前記報知手段で、前記運転者に警報を報知させることを特徴とする針路変更支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−134071(P2011−134071A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292492(P2009−292492)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】