説明

会議用端末装置、会議システム及びコンピュータプログラム

【課題】 複数拠点間で会議を効率的且つ効果的に行う。
【解決手段】 各拠点に設置される会議制御システムは、会議用端末装置100を備えている。会議用端末装置100は、会議制御プログラムに従って会議の進行を制御している。会議制御プログラムには、第1及び第2選択アルゴリズムが含まれており、CPU111は、選択部130を制御し、いずれかの選択アルゴリズムに従って複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する。選択されたマイクロフォンに対応する音声信号のみがCODEC140に入力され、音声データとして通信部150から他の拠点に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の拠点間で会議を行うための会議用端末装置、会議システム及びコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が各種提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたテレビ会議システム(以下、第1の従来技術と称する)によれば、複数のマイクからの音声信号の信号レベルを比較して音声入力動作中のマイクを判別し、音声入力動作中のマイクに対応するカメラ操作パラメータをメモリから読み出してビデオカメラの作動を制御することによって、会議の進行に適した映像を相手側に送出することが可能であるとされている。
【0004】
また、特許文献2に開示された通信会議端末装置(以下、第2の従来技術と称する)によれば、複数のマイクから入力された音声信号のうち、所定のレベルよりも大きい音声信号を増幅する可変利得アンプの利得を大きい値に設定するので、主たる発言者の音声信号を強調することができ、相手端末では主たる発言者の音声を明確に聞き取ることができるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−87470号公報
【特許文献2】特開平8−116353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
会議の参加者が拠点毎に複数存在する場合、これら複数の参加者が同時にマイクに向って発言すると、他の場所に伝達される音声はこれらが入り混じったものとなるから、誰の発言であるかを特定するだけでも困難な作業となる。
【0007】
このような問題に対し、第1及び第2の従来技術は、夫々音声信号のレベルに基づいて発言者を特定している。しかしながら、会議において音声の大小は必ずしも重要性の大小と一致している訳ではなく、また音声の大小は個人差があるから不公平でさえある。即ち、これら従来の技術には、会議を効率的且つ効果的に進行させることが困難であるという技術的な問題点がある。
【0008】
一方で、複数のマイクから入力される音声信号の中から一つの音声信号を手動で選択して、常に明確な音声を他の拠点に伝達させることも考えられるが、選択作業が煩雑となって会議の円滑な進行を妨げかねない。
【0009】
本発明は、例えば、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、会議を効率的且つ効果的に進行させ得る会議用端末装置、会議システム及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、請求項1の会議用端末装置は、複数の拠点間で会議を行うために、該拠点において(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を夫々集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を夫々生成する複数のマイクロフォン及び(ii)少なくとも一つのスピーカと共に設置される会議用端末装置であって、所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決するため、請求項8の会議システムは、複数の拠点間で会議を行うために該拠点に設置され、(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を生成する複数のマイクロフォン、(ii)少なくとも一つのスピーカ及び(iii)会議用端末装置を含み、前記会議用端末装置は、所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、
前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決するため、請求項9のコンピュータプログラムは、コンピュータシステムを、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択手段として機能させることを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決するため、請求項10のコンピュータプログラムは、コンピュータシステムを、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択手段、音声データ生成手段及び制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<会議用端末装置の実施形態>
本発明の会議用端末装置に係る実施形態は、複数の拠点間で会議を行うために、該拠点において(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を夫々集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を夫々生成する複数のマイクロフォン及び(ii)少なくとも一つのスピーカと共に設置される会議用端末装置であって、所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段とを具備する。
【0015】
本発明において、「拠点」とは、会議を行うための一つの場所を指し、例えば、会社、事務所、ホテル若しくは学校などにおける各種会議室、ホール、又は自宅或いは屋外の一空間などを含み、会議を行うことが可能である空間を全て含む概念である。尚、本発明における「会議」とは、参加者の間で行われる、例えば討論、相談、打ち合わせ又は話し合いなどを指す。本発明に係る会議用端末装置は、複数のこれら拠点間で会議を行うために、これら拠点において、複数のマイクロフォン及び少なくとも一つのスピーカと共に設置される。
【0016】
拠点には少なくとも一人の参加者がおり、複数のマイクロフォンは、この参加者に対応付けられる形で設置される。ここで、「参加者に対応付けられる」とは、参加者とマイクロフォンとの間に何らかの対応関係が存在することを表す趣旨であり、例えば参加者とマイクロフォンとが、一対一、一対多、多対一、又は多対多に対応することを表す。参加者は、会議が進行する過程で適宜発言を行う。この際、参加者の音声は、これらマイクロフォンによって集音され、集音された音声に対応する音声信号が生成される。
【0017】
本発明の会議用端末装置に係る実施形態によれば、その動作時には、音声データ生成手段によって所定種類の音声データが生成される。
【0018】
ここで、「所定種類の音声データ」とは、自拠点においてマイクロフォンにより生成される音声信号を他の拠点に伝送するためのデータを総称する概念であり、例えば、アナログ信号である音声信号から音声用のCODEC(COrder/DECorder)などを介して生成されるデジタル音声データなどを指す。
【0019】
生成された音声データは、通信手段により、ネットワークを介して他の拠点に送信される。一方、他の拠点において設置された会議用端末装置においても、同様の動作が行われており、自拠点における会議用端末装置においては、ネットワークを介して他の拠点において生成された音声データが受信される。
【0020】
ここで、本発明に係る「ネットワーク」とは、複数拠点に設置された会議用端末夫々を収容するネットワークであり、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの通信網を指す。これら通信網は、例えば、通常の電話回線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、ISDN回線、光ファイバーなどの一部又は全部を含んでなる有線通信網として、或いは一部が無線通信網として構築される。
【0021】
制御手段は、この受信された音声データに基づいて音声出力を行うようにスピーカを制御する。例えば、音声データ生成手段が前述したCODECなどを含む場合には、デジタルデータとして受信された音声データがデコードされ、アナログの音声信号が取り出される。スピーカからは、係るアナログ音声信号によって規定される音声が出力(放音)される。このような動作が各拠点において実行されることにより、双方向的に会議が進行する。
【0022】
ここで特に、マイクロフォンを介して会議用端末装置に入力される音声信号が複数ある場合、生成される音声データは通常それらを全て含んだものとなる。従って、最終的にスピーカから放音される音声は、複数の参加者の音声が混在したものとなる。これでは、参加者のうち誰が発言しているのかを特定することが困難である。
【0023】
加えてこのような場合、入力される音声信号各々に対して生じる雑音(ノイズ)が音声データに集約される為、最終的な雑音のレベルが無視し得ない程大きくなり易い。即ち、放音される音声の品質が劣化し易い。その結果、会議の円滑な進行は困難となる。
【0024】
そこで、本発明の会議用端末装置に係る実施形態は、選択手段及び音声データ生成手段の作用によって係る問題を解決している。
【0025】
本発明に係る「選択手段」は、複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択することが可能に構成されている。この際、選択手段は、所定種類のアルゴリズムに従って係る選択を行う。ここで、「所定種類のアルゴリズム」とは、参加者の中の一人に対し、有意に(適切に)発言権を付与し得る何らかの規則に基づいたアルゴリズムである限りにおいて、如何なるものであっても構わない。このようなアルゴリズムは、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって適切に決定可能である場合には、そのようなアルゴリズムであってもよい。
【0026】
例えば、会議に際して進行役(議長)に相当する参加者が存在する場合には、係る進行役に対応して設置されたマイクロフォンが他の参加者に対応するマイクロフォンよりも優先的に選択されるようなアルゴリズムであってもよい。或いは、ブレインストーミングのような比較的自由な雰囲気の中で行われる会議において、可能な限り参加者各々に平等に発言権を与えるための、複数のマイクロフォン各々を均等に選択するようなアルゴリズムであってもよい。
【0027】
音声データ生成手段は、複数のマイクロフォンに対応する複数の音声信号から、選択された一つのマイクロフォンにより生成された音声信号に対応する音声データを生成する。ここで「一つのマイクロフォンにより生成された音声信号に対応する音声データ」とは、完全に他の音声信号(選択されたもの以外)がシャットアウトされた音声データ、他の音声信号の音量(レベル)を相対的に小さくした音声データなどを含み、この一つのマイクロフォンにより生成された音声信号が、生成された音声データにおいて支配的である場合を含む概念である。
【0028】
本発明の会議用端末装置に係る実施形態によれば、このように一つのマイクロフォンに対応する音声データが生成されるため、最終的にスピーカから放音される音声の品質が劣化し難い。また、マイクロフォンの選択は選択手段により自動的に行われるため快適である。即ち、会議を効率的且つ効果的に進行させることが可能となるのである。
【0029】
尚、このような選択を手動で行った場合には、音声の品質に関しては同様の効果を期待することができるが、適切なタイミングで適切な発言を常に選択することは困難であり、著しく煩雑な作業となる上、専用の作業員が必要となる為極めて非経済的である。その点において、本発明の会議用端末装置に係る実施形態は明らかに有利に構成されている。
【0030】
尚、上述した本発明に係る効果は、複数拠点の全てに複数のマイクロフォンが設置されている場合に、より顕著に発揮されるものであるが、必ずしも全ての拠点に複数のマイクロフォンが設置されている必要はない。例えば、2拠点間で会議を行う際に、一方の拠点にはマイクロフォン及びスピーカが夫々一個ずつ設置されていてもよい。このような場合であっても、他方の拠点から送信される音声データによって、上述した如き本発明の効果が実現される。従って、上述した説明における、ネットワークを介して受信される他の拠点において生成された音声データとは、典型的には、選択された一つのマイクロフォンに対応する音声データであるが、単一マイクロフォンにより生成された音声信号から生成された音声データであってもよい趣旨である。
【0031】
本発明の会議用端末装置に係る実施形態の一の態様では、前記拠点には、(i)被写体を撮像すると共に該撮像した被写体に対応する映像信号を生成する撮像手段及び(ii)前記被写体に係る映像を表示する表示手段が更に設置され、前記会議用端末は更に、前記生成された映像信号に対応する所定種類の映像データを生成する映像データ生成手段を具備し、前記通信手段は更に、前記他の拠点に対し前記ネットワークを介して前記生成された映像データを送信すると共に前記他の拠点から前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された映像データを受信し、前記制御手段は更に、前記生成された映像データ及び前記受信された映像データのうち少なくとも一方に基づいて映像出力を行うように前記表示手段を制御する。
【0032】
この態様においては、拠点に撮像手段及び表示手段が更に設置される。ここで、本発明に係る「撮像手段」とは、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどであり、被写体に係る映像信号を生成することが可能であるものを総称する概念である。また、本発明に係る「表示手段」とは、映像を表示するための表示画面を有する装置であり、例えば、大型の表示領域を有するプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ又はCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置などが好適に使用される。この態様においては、これらを使用した、所謂「テレビ会議」と称される形態で会議が進行する。
【0033】
尚、撮像手段によって撮像される被写体は、会議に対し関連性を有する被写体である限りにおいて如何なるものであってもよい。例えば、拠点全体の風景であってもよいし、参加者各々であってもよい。
【0034】
映像データ生成手段は、生成された映像信号に対応する所定種類の映像データを生成する。ここで、本発明に係る「所定種類の映像データ」とは、例えば、自拠点における映像信号を他の拠点に伝送するためのデータ又は自拠点における映像信号に基づいた映像を自拠点の表示手段に表示させるためのデータなどを総称する概念であり、例えば、前者には、映像信号からビデオ用のCODECなどを介して生成される、符号化されて圧縮されたデータなどが含まれる。この映像データは、例えば通信手段を介して他の拠点に送信される。また、他の拠点において生成された映像データが、通信手段を介して自拠点における会議用端末装置で受信される。
【0035】
制御手段は、これら自拠点或いは他の拠点において生成された映像データに基づいて映像出力を行うように表示手段を制御する。ここで、自拠点の映像データに基づいて表示手段が制御される場合には、自拠点における撮像手段により撮像された被写体に関する映像が表示手段に表示される。一方、他の拠点の映像データに基づいて表示が行われる場合、例えば、受信された映像データから前述のビデオ用のCODECなどを介して取り出される映像信号に基づいて、他の拠点における映像が表示手段に表示される。これら二種類の映像は、分割された複数の画面に表示されてもよい。このような表示手段の表示の態様も、制御手段の作用により自由に決定されてよい。この態様によれば、音声の他に映像が加わるため、会議に視覚的な効果を付与することができ、極めて効果的である。
【0036】
尚、この態様においては、前記制御手段は更に、前記選択された一つのマイクロフォンに対応する参加者が前記被写体となるように前記撮像手段を制御してもよい。
【0037】
この態様によれば、選択手段によって一つのマイクロフォンが選択された際、係るマイクロフォンに対応する参加者が撮像されるように制御手段が撮像手段を制御する。この場合には、自拠点において発言している参加者の映像が、自拠点或いは他の拠点における表示手段に表示されることとなり、音声と映像とを効果的に組み合わせることができる。従って、会議を円滑に進行させることが容易にして可能となる。
【0038】
また、表示手段を制御することが可能である本発明の会議用端末装置に係る実施形態の一の態様では、前記選択された一つのマイクロフォンに対応する参加者に関する所定種類の識別データを生成する識別データ生成手段を更に具備し、前記通信手段は更に、前記他の拠点に対し前記ネットワークを介して前記生成された識別データを送信すると共に前記他の拠点から前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された識別データを受信し、前記制御手段は更に、前記生成された識別データ及び前記受信された識別データのうち少なくとも一方に基づいて前記表示手段を制御する。
【0039】
この態様によれば、識別データ生成手段により、選択されたマイクロフォンに対応する参加者に関する識別データが生成される。この識別データは、例えば通信手段によりネットワークを介して他の拠点に送信される。
【0040】
ここで、制御手段は、この生成された識別データ及び他の拠点から受信した識別データのうち少なくとも一方に基づいて表示手段を制御する。前者であれば、自拠点における発言者の識別データに対応する視覚的な情報が表示され、後者であれば、他の拠点における発言者の識別データに対応する視覚的な情報が表示される。いずれにしても、表示内容に付加価値が与えられ、会議をより効果的に行うことができる。
【0041】
尚、ここで、「所定種類の識別データ」とは、例えば参加者の氏名や所属部署など、参加者を識別するためのデータである限りにおいて何ら限定されるものではないが、表示されることによって会議に付加価値を与えることが可能な情報であれば好適である。
【0042】
本発明の会議用端末装置に係る実施形態の他の態様では、前記アルゴリズムは、前記会議の形態に応じて予め複数用意されており、前記選択手段は、前記複数用意されたアルゴリズムのうち一つに従って前記一つのマイクロフォンを選択する。
【0043】
この態様によれば、マイクロフォンを選択するためのアルゴリズムは予め会議の形態に応じて複数用意されている。ここで、「会議の形態」とは、会議の規模、種類又は性質など、会議を特徴付ける要素を広く含む概念である。従って、この態様によれば、その都度適切なアルゴリズムを使用することが容易にして可能となり、会議をより効率的且つ効果的に行うことが可能となる。
【0044】
この態様では、前記複数用意されたアルゴリズムは、前記複数のマイクロフォン各々を巡回的に選択するアルゴリズムを含んでもよい。
【0045】
ここで、本発明において「巡回的に選択する」とは、複数のマイクロフォンのうち少なくとも一部の間で、予め定められた或いは不定期に決定される順序に従って一つのマイクロフォンを選択することを表す概念である。この際、一つのマイクロフォンが選択されている時間の重み付けは、相互に等しくても異なっていてもよい。但し、典型的には、マイクロフォン各々を等しい重み付けで公平に選択することを表す。
【0046】
例えば、複数のアルゴリズムのうち一つがこのようなアルゴリズムである場合、複数のマイクロフォン各々が巡回的に選択されるので、比較的に処理が軽くて済む上、公平に或いは公平とみなし得る程度にマイクロフォンを選択することが可能となる。従って、参加者各々における発言権が概ね等しい場合などに特に効果的である。
【0047】
また、この態様では、前記複数用意されたアルゴリズムは、前記複数のマイクロフォン各々を予め前記複数のマイクロフォン各々に対し付与される優先度に応じて選択するアルゴリズムを含んでもよい。
【0048】
例えば、この場合には、マイクロフォン各々に予め優先度が設定されるので、マイクロフォン各々、即ち、それに対応する参加者各々を相互に差別化することが可能となる。例えば、議長や司会など会議を取りまとめる立場にある参加者に対応するマイクロフォンを優先的に選択することも容易にして可能である。尚、このような優先度は、例えば選択されている期間の長短として与えられていてもよいし、選択される頻度の高低として与えられていてもよい。また、会議開始以前或いは会議中に、優先度を規定するパラメータを自由に設定可能に構成されていてもよい。
【0049】
この態様によれば、会議の規模、種類、又は性質などに適応したマイクロフォンの選択が可能となり、会議を一層円滑に行うことができる。
<会議システムの実施形態>
本発明の会議システムに係る実施形態は、複数の拠点間で会議を行うために該拠点に設置され、(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を生成する複数のマイクロフォン、(ii)少なくとも一つのスピーカ及び(iii)会議用端末装置を含み、前記会議用端末装置は、所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段とを具備する。
【0050】
本発明の会議システムに係る実施形態によれば、前述した如き会議用端末装置、マイクロフォン及びスピーカ各々における相互作用により、複数拠点間において効率的且つ効果的に会議を行うことが可能となる。
<コンピュータプログラムの第1実施形態>
本発明のコンピュータプログラムに係る第1実施形態は、コンピュータシステムを、上記いずれかの選択手段として機能させる。
【0051】
本発明のコンピュータプログラムに係る第1実施形態によれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、例えば、通信手段等を介してコンピュータシステムにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の会議用端末装置に係る実施形態における選択手段を比較的簡単に実現可能である。
【0052】
尚、上述した本発明の会議用端末装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラムに係る第1実施形態も各種態様を採ることが可能である。
<コンピュータプログラムの第2実施形態>
本発明のコンピュータプログラムに係る第2実施形態は、コンピュータシステムを、上記いずれかの選択手段、音声データ生成手段及び制御手段として機能させる。
【0053】
本発明のコンピュータプログラムに係る第2実施形態によれば、当該コンピュータプログラムを格納するROM、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを、例えば、通信手段等を介してコンピュータシステムにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の会議用端末装置に係る実施形態における選択手段、音声データ生成手段及び制御手段を比較的簡単に実現可能である。
【0054】
尚、上述した本発明の会議用端末装置に係る実施形態における各種態様に対応して、本発明のコンピュータプログラムに係る第2実施形態も各種態様を採ることが可能である。
【0055】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
【実施例】
【0056】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
【0057】
<1:第1実施例>
<1.1:実施例の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施例に係る会議システムの概要について説明する。ここに、図1は、会議システム10の概念図である。
【0058】
図1において、会議システム10は、拠点A、拠点B及び拠点Cの複数の拠点間でネットワーク20を介して会議を行うためのシステムである。
【0059】
拠点A、拠点B及び拠点Cは、例えば、夫々相互に離れた場所に存在する会議室などであり、ネットワーク20は、それら拠点間を結ぶLAN又はWANなどのデータ通信網である。尚、ネットワーク20は、一部又は全体が有線又は無線通信ネットワークとして構成されていてもよい。
【0060】
次に、図2を参照して、拠点の詳細について説明する。ここに、図2は、拠点Aの模式図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。また、本実施例において、拠点A、拠点B及び拠点Cは夫々同一の構成を有しており、従って、拠点Aの説明をもって他の拠点の説明も同時に行うものとする。
【0061】
図2において、拠点Aには、複数の参加者A1、A2及びA3がおり、更に会議制御システム10Aが設置されている。会議制御システム10Aは、複数のマイクロフォン(以降、適宜「マイク」と称する)MA1、MA2及びMA3、スピーカSPA並びに会議用端末装置100を備えた、本発明に係る「会議システム」の一例である。
【0062】
参加者A1、A2及びA3は夫々拠点Aにおける会議の参加者である。各参加者には、夫々マイクMA1、MA2及びMA3が割り当てられている。マイクMA1、MA2及びMA3は、夫々参加者A1、A2及びA3の音声を集音すると共に、該集音した音声に対応する音声信号を生成することが可能な、本発明に係る「マイクロフォン」の一例である。スピーカSPAは、後述する制御部110の制御に従って、会議に関する音声を放音することが可能に構成された、本発明に係る「スピーカ」の一例である。
【0063】
会議用端末装置100は、制御部110、接続ポート121、122及び123、選択部130、CODEC140並びに通信部150を備えた、本発明に係る「会議用端末装置」の一例である。
【0064】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112及びRAM(Random Access Memory)113を備える。
【0065】
CPU111は、会議用端末装置100の動作を制御する制御ユニットである。ROM112は、会議用端末装置100において実行される会議制御プログラムが格納された不揮発性メモリである。RAM113は、会議用端末装置100が会議制御プログラムを実行する過程で生じるデータを一時的に格納するための揮発性のメモリである。
【0066】
接続ポート121、122及び123は、夫々マイクMA1、MA2及びMA3と電気的に接続された入力インターフェイスである。夫々のマイクにおいて生成された音声信号は、各接続ポートを介して会議用端末装置100に入力される。
【0067】
選択部130は、会議制御用プログラムに従って、接続ポート121、122及び123のうち一つの接続ポートを選択することが可能に構成されており、制御部110と共に、本発明に係る「選択手段」の一例として機能する。
【0068】
CODEC140は、選択部130を介して入力されるアナログ音声信号をデジタル信号に変換することが可能に構成された、本発明に係る「音声データ生成手段」の一例である。
【0069】
通信部150は、ネットワーク20を介して制御部110及びCODEC140から入力される各種データを他の拠点(ここでは拠点B及び拠点C)に送信すると共に、ネットワーク20を介して他の拠点から送信される当該各種データを自拠点(ここでは拠点A)において受信することが可能に構成された、本発明に係る「通信手段」の一例である。
【0070】
<1.2:実施例の動作>
<1.2.1:会議の進行>
引き続き、図2を参照して、拠点Aにおける会議の進行について説明する。
【0071】
CPU111は、ROM112に格納される会議制御プログラムを実行することによって会議用端末装置100の前述した各部の動作を制御し、会議の進行を制御している。
【0072】
拠点Aにおいて、参加者A1、A2及びA3は、適宜発言を行う。発言が行われた際には、その音声は、夫々に対応するマイクMA1、MA2及びMA3によって集音される。この集音された音声は、夫々のマイクにおいて音声信号に変換され、各マイクに対応する接続ポート121、122及び123を介して会議用端末装置100に入力される。
【0073】
本来、これら会議用端末装置100に入力された音声信号は、CODEC140によってデジタルデータである音声データに変換され、通信部150を介して他の拠点における会議用端末装置に送信される。また、他の拠点における音声データは、通信部150を介して受信される。CPU111は、受信した音声データを一時的にRAM113に格納すると共に、CODEC140を介して係る音声データを再び音声信号に変換する。CPU111は、この変換された音声信号をスピーカSPAに入力する。こうしてスピーカSPAからは、他の拠点における音声が放音される。各拠点において同様の動作が行われることにより会議が進行する。
【0074】
ここで、複数の参加者が同時に発言を行った場合、会議用端末装置100に入力される音声信号も複数であり、CODEC140によって生成される音声データは、それらが混在した音声データとなる。これでは、他の拠点において、拠点Aで誰が発言を行っているのかを特定し辛い。更に、各マイクにおいて音声信号を生成する時点で、相応のノイズが発生するため、それらが集約される音声データにおけるノイズは大きくなって、音声データの劣化が進行し易い。
【0075】
そこで、会議用端末装置100においては、選択部130が複数のマイクMA1、MA2及びMA3のうちいずれか一つを選択することによって、常にCODEC140に入力される音声信号を一つに制限している。具体的に、選択部130は、選択するマイク以外のマイクに対応する接続ポートからの入力信号を無視するようにCPU111によって制御されている。従って、CODEC140に入力される音声信号は一つに制限され、各拠点においては、常に一人の発言者の音声に基づいて会議が進行する。尚、選択部130が一つのマイクを選択する際の手法は上述した効果が担保される限りにおいて特に限定されない。例えば、各接続ポートと選択部130との間に、可変式のアッテネータを介在させ、選択されたもの以外の信号減衰量を大きくすることによって、実質的に一つの音声信号がCODEC140に入力されるように構成されていてもよいし、単純に、選択されたもの以外の電源を切断してもよい。
【0076】
一方、選択部130はCPU111が実行する会議制御プログラムの中に予め複数設定されている選択アルゴリズムに従って接続ポートの選択を行っている。この選択アルゴリズムは、会議の趣旨、規模、又は性質などに応じて最適化されたアルゴリズムであり、予め複数のアルゴリズムのうち一が参加者などによって選択されている。
【0077】
<1.2.2:選択アルゴリズムの詳細>
次に、図3及び図4を参照して、選択アルゴリズムの詳細について説明する。ここに、図3は、第1選択アルゴリズムのフローチャートであり、図4は、第2選択アルゴリズムのフローチャートである。
【0078】
図3において、始めに、マイクMA1に音声入力が有るか否かが判別される(ステップA10)。マイクMA1に音声入力が有るか否かは、接続ポート121に入力される音声信号のレベルが所定値以上であるか否かの判断に従って行われる。尚、係る所定値は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどによって適正なレベルに設定されている。
【0079】
マイクMA1に音声入力が有る場合(ステップA10:YES)、CPU111は、選択部130を制御して接続ポート121を選択する(ステップA11)。ここで、接続ポートを「選択する」とは、係る接続ポートからの入力のみをCODEC140に出力する処理が実行されることを意味する。即ち、本実施例において、選択されていない接続ポートから入力された音声信号は、会議の進行に影響を与えない。ステップA11において接続ポート121が選択された時点から、マイクMA1から出力された音声信号のみがCODEC140に入力され、他の拠点においては、マイクMA1に入力された音声が放音される。
【0080】
接続ポート121が選択されると、CPU111は、マイクMA1に音声入力が有るか否かを判別する(ステップA12)。マイクMA1に音声入力が有る場合(ステップA12:YES)、即ち、マイクMA1への音声入力が継続している場合には、CPU111は、所定の待機時間が経過するまで待機する(ステップA13)。この待機期間においては、マイクMA1が選択された状態が継続する。尚、係る待機期間の長さは、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって、適切な値に定められている。
【0081】
待機期間が経過すると、CPU111は、再びステップA12に処理を戻し、マイクMA1への音声入力の有無を判別する。このように、CPU111は、マイクMA1への音声入力が継続している限り、ステップA12及びステップA13を繰り返す。これらがループ処理されている期間中は、参加者A1の音声(マイクMA1に入力される音声)に対応する音声信号がCODEC140に入力される。
【0082】
一方、ステップA10又はステップA12において、マイクMA1への音声入力が無いと判別された場合(ステップA10又はステップA12が「NO」の場合)、CPU111はマイクMA2への音声入力の有無を判別する(ステップA14)。
【0083】
マイクMA2に音声入力が有る場合(ステップA14:YES)、CPU111は選択部130を制御して接続ポート122を選択し(ステップA15)、マイクMA2への音声入力の有無を再度判別する(ステップA16)。ここで、マイクMA2への音声入力が継続している場合(ステップA16:YES)、CPU111は、所定の経過時間が経過するまで待機する(ステップA17)。所定の待機時間が経過すると、CPU111は処理をステップA16に戻し、再びマイクMA2への音声入力の有無を判別する。そして、マイクMA2への音声入力が継続している限りステップA16及びステップA17が繰り返され、参加者A2の音声(マイクMA2に入力される音声)に対応する音声信号がCODEC140に入力される。
【0084】
一方、ステップA14又はステップA16において、マイクMA2への音声入力が無いと判別された場合(ステップA14又はステップA16が「NO」の場合)、CPU111はマイクMA3への音声入力の有無を判別する(ステップA18)。
【0085】
マイクMA3に音声入力が有る場合(ステップA18:YES)、CPU111は選択部130を制御して接続ポート123を選択し(ステップA19)、マイクMA3への音声入力の有無を再度判別する(ステップA20)。ここで、マイクMA3への音声入力が継続している場合(ステップA20:YES)、CPU111は、所定の経過時間が経過するまで待機する(ステップA21)。所定の待機時間が経過すると、CPU111は処理をステップA20に戻し、再びマイクMA3への音声入力の有無を判別する。そして、マイクMA3への音声入力が継続している限りステップA20及びステップA21が繰り返され、参加者A3の音声(マイクMA3に入力される音声)に対応する音声信号がCODEC140に入力される。
【0086】
ステップA18又はステップA20において、マイクMA3への音声入力が無いと判別された場合(ステップA18又はステップA20が「NO」の場合)、CPU111は、処理を再びステップA10に戻し、これまで説明した各ステップが繰り返される。
【0087】
第1選択アルゴリズムは、このように、参加者A1、参加者A2及び参加者A3を公平に、且つ巡回的に選択するアルゴリズムであり、例えば、ブレインストーミングなど、参加者間に発言上の序列が無い場合などに有効なアルゴリズムとなっている。
【0088】
次に図4を参照して、第2選択アルゴリズムの詳細について説明する。尚、図4において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0089】
図4に示される第2選択アルゴリズムは、図3においてステップA16、ステップA17、ステップA20及びステップA21を削除したものとなっている。
【0090】
即ち、ステップA14においてマイクMA2に音声入力が無いか、又はステップA15において接続ポート122が選択された場合に、処理はステップA18に移行する。同様に、ステップA18でマイクMA3に音声入力が無いか、又はステップA19において接続ポート123が選択された場合に、処理はステップA10に復帰する。ステップA10からステップA13に至る一連処理は第1選択アルゴリズムと同様に実行される。
【0091】
第2選択アルゴリズムにおいては、ステップA15において接続ポート122が選択されたとしても、マイクMA3に音声入力が有る場合には、選択される接続ポートは即座に接続ポート123に切り替わる。同様に、接続ポート123が選択されたとしても、マイクMA1に音声入力がある場合には、選択される接続ポートは即座に接続ポート121に切り替わる。接続ポート121が選択されている場合のみ、マイクMA1に音声が入力されている限り接続ポート121の選択が継続される。
【0092】
即ち、参加者A1は、参加者A2及び参加者A3に較べて高い優先度を与えられている。このようなアルゴリズムは、例えば、議長などの進行役(即ち、参加者A1に相当する)が存在し、参加者の少なくとも一部に発言上の序列が存在する会議などに有効なアルゴリズムとなっている。
【0093】
尚、図3に係る第1選択アルゴリズムにおいて、ステップA17及びステップA21に係る経過時間を「ゼロ」又はそれに準じるような極めて小さい値に設定した場合、マイクMA2への音声入力が一瞬途切れた時点でマイクMA3への入力があれば、マイクMA3へと選択が切り替わることとなり、図4に係る第2選択アルゴリズムと類似したアルゴリズムを実現することも可能である。この場合、会議用端末装置100において、係る待機時間が外部入力可能に構成されていれば、接続ポート122及び接続ポート123に対応する経過時間を短く設定することによって容易にこのような制御を実現することも可能である。また、この場合には、参加者各々に対し、優先度或いは発言の重要度などに応じて適切な経過時間を設定し、会議毎に最適なアルゴリズムを形成することも容易にして可能である。
【0094】
次に、図5を参照して、これら2種類のアルゴリズムを視覚的に説明する。ここに、図5は、選択されるマイクロフォンの時間経過を表すチャートである。
【0095】
図5において、「音声入力レベル」とは、各マイクロフォンにおいて生成される音声信号を2値化して得られるレベルであり、「H」又は「L」のいずれかの値を採る。「H」レベルとは、対応するマイクロフォンに音声入力があることを表しており、「L」レベルとは、対応するマイクロフォンに音声入力がないことを表している。また、「選択結果」とは、選択部130による選択結果を表し、CODEC140に入力される音声信号の種類と等価である。即ち、「マイク○○」と表記されている期間は、マイク○○への入力音声に対応する音声信号がCODEC140に入力される。尚、「(マイク○○)」と表記されている期間は、いずれのマイクへも音声入力が行われていない状態であり、単にマイクロフォンが選択されているのみの状態を表している。
【0096】
図5において、第1アルゴリズムに従った場合、マイクロフォンの選択結果は、時刻T0においてマイクMA1、時刻T2においてマイクMA2、時刻T5においてマイクMA3、そして時刻T8においてマイクMA1へと切り替わる。即ち、選択されているマイクロフォンへの音声入力が継続している期間(音声入力レベルが「H」である期間)は、選択されるマイクロフォンが切り替わることはない。従って、総じて長い周期で発言者(他の拠点において発言者と見なされる音声)が切り替わることになる。
【0097】
一方、第2選択アルゴリズムに従った場合、時刻T0においてマイクMA1、時刻T2においてマイクMA2、時刻T3においてマイクMA3、時刻T4においてマイクMA1、時刻T6においてマイクMA3、そして時刻T8においてマイクMA1へと選択結果が切り替わる。即ち、マイクMA2及びマイクMA3に関しては、例え音声入力中であったとしても、他のマイクロフォンからの音声入力がある場合にはマイクロフォンの切換えが生じる。従って、総じて短い周囲で発言者が切り替わることになる。
【0098】
このように、本実施例に係る会議用端末装置100によれば、会議の規模、目的、或いは性質などに応じて適宜アルゴリズムを切替えることによって、如何なる形態の会議であっても効率的且つ効果的に進行させることが可能となる。従って、会議制御システム10Aによって、会議を効率的且つ効果的に進行させることが可能となるのである。
【0099】
<2:第2実施例>
上記第1実施例においては、本発明に係る会議用端末装置を音声会議に適用した場合について説明したが、更に本発明に係る会議用端末装置は、映像を含めた会議にも効果的に作用する。以下、そのような本発明の第2実施例について説明する。
【0100】
<2.1:第2実施例の概要>
図6は、本発明の第2実施例に係る拠点Aの模式図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
図6において、拠点Aには図2における会議制御システム10Aの代わりに会議制御システム10AAが設置されている。会議制御システム10AAは、カメラ30及び表示装置40を備える点で会議制御システム10Aと構成が異なる、本発明に係る「会議システム」の他の一例である。
【0102】
カメラ30は、例えば、デジタルビデオカメラであり、拠点Aにおける会議の様子を撮影することが可能に構成された、本発明に係る「撮像手段」の一例である。カメラ30には三脚、可動式アタッチメント及びアタッチメント駆動部など(いずれも不図示)が備わっている。カメラ30は、三脚に固定されると共に、可動式アタッチメントがアタッチメント駆動部によって駆動されて三次元的に回動するのに伴い、被写体を自由に変えることが可能に構成されている。アタッチメント駆動部を駆動するための制御信号は、制御部110から送信されている。
【0103】
表示装置40は、例えば、プラズマディスプレイ装置などの比較的大型の表示装置であり、画面部41に、拠点間で行われる会議に関する映像を表示することが可能に構成された、本発明に係る「表示手段」の一例である。画面部41に表示されるべき映像に関する映像表示用信号は、カメラ30及び制御部110から入力される。
【0104】
一方、会議用端末装置100には、予め参加者A1、A2及びA3の個人的な情報(即ち、本発明に係る「識別データ」の一例)を登録しておくことができる。このような個人情報の登録は、例えば、キーボードやマウスなどの入力手段(不図示)を介して実行されている。尚、ここで述べられる「個人情報」とは、氏名、年齢、所属部署又は役職名などを含み、会議の参考となり得る情報を広く規定するものである。登録された個人情報は、RAM113に格納される。また、それとは別に、会議用端末装置100には、参加者A1、参加者A2及び参加者A3の位置情報も登録される。この登録された位置情報もRAM113に格納される。尚、本実施例において格納される位置情報とは、カメラ30が三脚に固定され、基本構図(拠点Aを俯瞰する構図)が設定された状態で、参加者A1を撮像可能な位置にカメラ30を動かした(パン、ティルト又はズームなどの動作を行った)際の、制御量の変化量である。但し、カメラ30にGPS(Global Positioning System) などの測位システムが備わる場合には、各参加者の絶対位置であってもよい。
【0105】
<2.2:カメラ30及び表示装置40の詳細動作>
引き続き、図6を参照して、本実施例におけるカメラ30及び表示装置40の動作について説明する。本実施例において、制御部110が実行する会議制御プログラムには、カメラ30及び表示装置40を夫々制御するための映像制御プログラムが含まれている。カメラ30及び表示装置40は、この映像制御プログラムに従ってその動作が制御されている。尚、拠点B及び拠点Cも同様の構成を採ることにより、これら各拠点間においては、所謂「テレビ会議」が実現されている。
【0106】
カメラ30は、基本的に、前述した基本構図に従って、拠点Aの俯瞰映像を撮影している。この映像に関する映像信号(ビデオ信号)は、表示装置40及びCODEC140に入力される。CODEC140では、入力された映像信号を符号化して圧縮する。即ち、CODEC140は、第1実施例に係る音声用のCODEC機能と本実施例に係るビデオ用のCODEC機能とを併せもっており、本発明に係る「映像データ生成手段」の一例としても機能するように構成されている。
【0107】
CODEC140により符号圧縮化された映像データ(即ち、本発明に係る「映像データ」の一例)は、通信部150から他の拠点に送信される。一方、他の拠点において撮影された映像に関する映像データは、通信部150を介して受信され、CODEC140に入力される。CODEC140に入力された他の拠点における映像データは、表示装置40による表示が可能な映像信号に復号化され、RAM113に一時的に格納されつつ、表示装置40に入力される。
【0108】
一方、自拠点の映像に関しては、カメラ30から表示装置40に入力される映像信号が直接的に入力される。従って、この場合、カメラ30は、本発明に係る「映像データ生成手段」の他の一例としても機能している。
【0109】
また、CPU111は、RAM113から、会議の資料となるアプリケーションソフトウェアのデータファイル(資料データ)を読み出し、表示装置40による表示が可能な映像信号を生成して表示装置40に入力している。即ち、表示装置40には、自拠点(拠点A)の映像信号、他の拠点における映像信号及び資料データに関する映像信号の3種類の映像信号が入力されている。
【0110】
ここで、図7を参照して、表示装置40における画面部41の詳細について説明する。ここに、図7は、画面部41の模式図である。
【0111】
図7において、画面部41は、メイン画面41a、サブ画面41b、サブ画面41c及び識別情報画面41dの計4画面に分割されている。
【0112】
メイン画面41aには、資料データに基づいた資料映像が表示される。会議の参加者は、係るメイン画面41aに表示される資料映像に基づいて議論を行う。
【0113】
サブ画面41bには、自拠点の映像が表示される。これは、カメラ30から直接的に入力された、自拠点に関する映像信号に基づいて表示される映像である。
【0114】
サブ画面41cには、他の拠点の映像が表示される。これは、通信部150を介して得られた他の拠点における映像データから、CODEC140を介して得られる映像信号に基づいて表示される映像である。識別情報画面41dについては後述する。
【0115】
一方、CPU111は会議制御プログラムを実行する過程において、前述の選択アルゴリズムに基づいた発言者の選択を行っている。ここで、本実施例において、CPU111は、現在選択されているマイクに対応する参加者をカメラ30によって撮像し、画面部41におけるサブ画面41bに表示することが可能に構成されている。
【0116】
具体的には、CPU111は、選択された接続ポート(マイク或いは参加者でも等価である)に対応する位置情報をRAM113から読み出し、この読み出した位置情報に対応する制御信号を生成して、カメラ30に送信する。尚、この制御信号とは、前述した制御量の変化量に対応して生成される信号であり、カメラ30の構図を、基本構図から選択された参加者へと変化させるための信号である。
【0117】
カメラ30ではこの制御情報に基づいて、アタッチメント駆動部を駆動し、カメラ30の構図を、現在発言を行っている参加者に対応する構図に変化させる。こうして、画面部41bには、その時点で選択されている(発言を行っている)参加者が刻々と映し出されることとなる。
【0118】
更に、CPU111は、カメラ30の動作を制御すると同時に、現在選択されている参加者に対応する個人情報をRAM113から読み出す。CPU111は、この読み出した個人情報を識別情報画面41dに表示するための表示用信号を生成し、表示装置40に入力する。表示装置40は、この個人情報に関する表示用信号に基づいて、識別情報画面41dに現在選択されている参加者の個人情報を表示する。図7における識別情報画面41dには、この様子が示されている。尚、この読み出された個人情報は、通信部150を介して他の拠点にも送信される。他の拠点においては、この送信された個人情報に基づいて、サブ画面41cに拠点Aにおける発言者の映像が表示される。
【0119】
以上説明したように、第2実施例に係る会議制御システム10AAでは、音声に映像を伴った、一層充実した会議を行うことが可能となっている。この際、カメラ30は、音声(マイク)の選択結果と連動して、常に発言を行っている参加者が撮影されるように制御されるので、非常に効果的である。また、更に選択された参加者の個人情報も表示可能に構成されることによって、会議を一層円滑に進行させることが可能となっている。即ち、複数拠点間で会議を効率的且つ効果的に行うことが容易にして可能となっているのである。
【0120】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う会議用端末装置、会議システム及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施例に係る会議システムの概念図である。
【図2】図1の会議システムにおける一拠点の模式図である。
【図3】図2の会議制御システムにおいて会議用端末装置により行われる会議制御プログラムに関する第1選択アルゴリズムのフローチャートである。
【図4】図2の会議制御システムにおいて会議用端末装置により行われる会議制御プログラムに関する第2選択アルゴリズムのフローチャートである。
【図5】図4及び図5の各アルゴリズムについて、選択されるマイクロフォンの時間経過を表すチャートである。
【図6】本発明の第2実施例に係る一拠点の模式図である。
【図7】図6の会議制御システムに備わる表示装置における、画面部の模式図である。
【符号の説明】
【0122】
10…会議システム、10A…会議制御システム、10AA…会議制御システム、20…ネットワーク、30…カメラ、40…表示装置、100…会議用端末装置、110…制御部、121、122、123…接続ポート、130…選択部、140…CODEC、150…通信部、SPA…スピーカ、MA1、MA2、MA3…マイクロフォン、A1、A2、A3…参加者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の拠点間で会議を行うために、該拠点において(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を夫々集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を夫々生成する複数のマイクロフォン及び(ii)少なくとも一つのスピーカと共に設置される会議用端末装置であって、
所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、
前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、
前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、
前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段と
を具備することを特徴とする会議用端末装置。
【請求項2】
前記拠点には、(i)被写体を撮像すると共に該撮像した被写体に対応する映像信号を生成する撮像手段及び(ii)前記被写体に係る映像を表示する表示手段が更に設置され、
前記会議用端末は更に、前記生成された映像信号に対応する所定種類の映像データを生成する映像データ生成手段を具備し、
前記通信手段は更に、前記他の拠点に対し前記ネットワークを介して前記生成された映像データを送信すると共に前記他の拠点から前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された映像データを受信し、
前記制御手段は更に、前記生成された映像データ及び前記受信された映像データのうち少なくとも一方に基づいて映像出力を行うように前記表示手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の会議用端末装置。
【請求項3】
前記制御手段は更に、前記選択された一つのマイクロフォンに対応する参加者が前記被写体となるように前記撮像手段を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の会議用端末装置。
【請求項4】
前記選択された一つのマイクロフォンに対応する参加者に関する所定種類の識別データを生成する識別データ生成手段を更に具備し、
前記通信手段は更に、前記他の拠点に対し前記ネットワークを介して前記生成された識別データを送信すると共に前記他の拠点から前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された識別データを受信し、
前記制御手段は更に、前記生成された識別データ及び前記受信された識別データのうち少なくとも一方に基づいて前記表示手段を制御する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の会議用端末装置。
【請求項5】
前記アルゴリズムは、前記会議の形態に応じて予め複数用意されており、
前記選択手段は、前記複数用意されたアルゴリズムのうち一つに従って前記一つのマイクロフォンを選択する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の会議用端末装置。
【請求項6】
前記複数用意されたアルゴリズムは、前記複数のマイクロフォン各々を巡回的に選択するアルゴリズムを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の会議用端末装置。
【請求項7】
前記複数用意されたアルゴリズムは、前記複数のマイクロフォン各々を予め前記複数のマイクロフォン各々に対し付与される優先度に応じて選択するアルゴリズムを含む
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の会議用端末装置。
【請求項8】
複数の拠点間で会議を行うために該拠点に設置され、(i)前記会議の参加者に対応付けられて設置され、音声を集音すると共に該集音した音声に対応する音声信号を生成する複数のマイクロフォン、(ii)少なくとも一つのスピーカ及び(iii)会議用端末装置を含み、
前記会議用端末装置は、
所定種類のアルゴリズムに従って、前記複数のマイクロフォンの中から一つのマイクロフォンを選択する選択手段と、
前記複数のマイクロフォンに対応する複数の前記音声信号から、前記選択された一つのマイクロフォンにより生成された前記音声信号に対応する音声データを生成する音声データ生成手段と、
前記複数の拠点のうち自拠点を除く他の拠点に対し、ネットワークを介して前記生成された音声データを送信すると共に、前記ネットワークを介して前記他の拠点において生成された音声データを受信する通信手段と、
前記受信された音声データに基づいて音声出力を行うように前記スピーカを制御する制御手段と
を具備する
ことを特徴とする会議システム。
【請求項9】
コンピュータシステムを、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータシステムを、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択手段、音声データ生成手段及び制御手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−211504(P2006−211504A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23239(P2005−23239)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】