説明

会議通信システム

【課題】画像通信端末の役割を担うパーソナルコンピュータ(以下、PC)や音声通信端末に動的に通信アドレスが割り振られる場合でも、音声通信端末とPCとを手軽にペアリングすることを可能にする。
【解決手段】各々が画像通信端末の役割を担う複数のPCおよび複数の音声通信端末との間に通信セッションを確立し、音声データおよび画像データの通信を仲介する多地点接続装置に、何れかのPCから上記複数の音声通信端末の何れかとのペアリングを要求された場合に、その音声通信端末に対して当該PCからペアリングを要求されている旨を通知し、ペアリングを許可する旨の返信があった場合に、両者をペアリングする処理を実行させる。一方、各音声通信端末には、多地点接続装置からのペアリング要求に応じてその旨を報知し、ペアリングを許可する旨の入力操作が為された場合に許可応答を返信する処理を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多地点接続装置(Multi-point Control Unit、以下、MCU)に接続されるパーソナルコンピュータ(以下、PC)に複数の音声通信端末の何れかを対応付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ADSL(Asymmetric Digital
Subscriber Line)や光通信などの高速データ通信技術が一般に利用されている。この種の高速データ通信技術を利用した通信システムの一例としては、会議通信システムが挙げられる。会議通信システムとは、地理的に離れた場所にいる各利用者に会議を行わせるための通信システムである。会議通信システムは、各利用者の使用する音声通信端末をMCUに接続して構成される。音声通信端末は、利用者の音声を収音しその音声を示す音声データをMCUへと送信するとともに、MCUから送信されてくる音声データに応じた音声を出力する。一方、MCUは、複数の音声通信端末の各々から送信されてくる音声データを受信し、その各々に対して他の音声通信端末から受信した各音声データをミキシングして得られる音声データを送信する。これにより、複数の会議参加者の各々に対して他の会議参加者の音声(すなわち、会議における発言を表す音声)が伝達される。また、webカメラなどの撮像手段を備えたPCを画像通信端末として会議通信システムに接続し、会議参加者を撮像して得られる画像データを他のPCへ送信する一方、受信した画像データに応じた画像を表示する処理を実行させ、テレビ会議を実現することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−260384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のテレビ会議においては、各会議参加者の音声とその画像とが他の会議参加者の音声通信端末や画像通信端末で同期して再生されるようにするために、例えば同一の会議参加者により利用される画像通信端末と音声通信端末とをペアにしてMCUに管理させ、互いにペアリングされた画像通信端末や音声通信端末についてのデータ通信が同期するように上記MCUに通信制御を行わせる必要がある。従来、このようなペアリングは、ペアにして管理する音声通信端末と画像通信端末を互いに固定アドレスで対応付けてMCUに記憶させることで行われていた。
【0004】
一方、LAN(Local
Area Network)などの通信回線に接続されるPCや音声通信端末などの通信機器に通信アドレスを割り振る態様としては、予め各通信機器に固有の通信アドレスを割り振っておく態様と、例えばDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)などにより各通信機器の電源投入時にその都度、動的に通信アドレスを割り振る態様とがある。前者の態様では、LANに接続される全ての通信機器についての通信アドレスをネットワーク管理者が管理する必要があるため、LANに接続される通信機器の数が多い場合には、ネットワーク管理者の負担が非常に大きくなるといった問題がある。このため、LANに接続される通信機器の数が多い場合には、後者の態様が用いられることが一般的である。しかし、後者の態様では、ペアリングして管理するべき音声通信端末およびPCの通信アドレスを予めMCUに記憶させておくことはできず、各通信端末にどんな通信アドレスが割り当てられるかわからないため、MCUを用いた会議通信システムには不向きであるといった問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、画像通信端末の役割を担うPCや音声通信端末に動的に通信アドレスが割り振られる場合でも、音声通信端末とPCとを手軽にペアリングすることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、各々利用者の音声を収音しその音声を表す音声データを通信セッションの接続先へ送信する一方、当該通信セッションの接続先から受信した音声データに応じた音を出力する複数の音声通信端末と、各々通信セッションの接続先へ画像データを送信する一方、当該通信セッションの接続先から受信した画像データの表す画像を表示する複数の画像通信端末と、前記複数の音声通信端末および前記複数の画像通信端末の各々との間に通信セッションを確立し、音声データおよび画像データの通信を仲介する多地点接続装置と、を備え、前記複数の音声通信端末および前記複数の画像通信端末の各々には動的に通信アドレスが割り振られ、前記複数の画像通信端末のうち、利用者によって前記複数の音声通信端末の何れかとのペアリングを指示されたものは、当該音声通信端末とのペアリングを要求する旨のペアリング要求に当該画像通信端末の通信アドレスを書き込んで前記多地点接続装置へ送信し、前記多地点接続装置は、前記複数の画像通信端末の何れかから前記ペアリング要求を受信した場合に、当該ペアリング要求にてペアリングを要求されている音声通信端末に対して当該画像通信端末からペアリングを要求されている旨を通知してその可否を問い合わせ、当該音声通信端末からペアリングを許可する旨の許可応答を受信したことを契機に、前記ペアリング要求の送信元と前記許可応答の送信元とのペアリングし、当該ペアリングした音声通信端末との間の音声データの通信および当該ペアリングした画像通信端末との間の画像データの通信を同期させる制御を行い、前記複数の音声通信端末の各々は、前記複数の画像通信端末の何れかからペアリングを要求されたことを前記多地点接続装置から通知された場合にその旨を利用者へ報知し、ペアリングを許可する旨の入力操作が為された場合に前記許可応答を前記多地点音声接続装置へ返信することを特徴とする会議通信システムを提供する。
【0007】
より好ましい態様においては、前記会議通信システムの複数の音声通信端末の各々は、前記複数の画像通信端末の何れかからペアリングを要求された旨の報知を開始してから所定時間が経過するまでに、ペアリングを許可する旨の入力操作が為されなかった場合には、前記ペアリング要求の送信元とのペアリングを拒否する拒否応答を前記多地点接続装置へ返信し、同会議通信システムの多地点接続装置は、前記拒否応答を受信した場合には、前記ペアリング要求の送信元へペアリングが拒否された旨を返信することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ説明する。
(A:構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る会議通信システム1の構成例を示す図である。
この会議通信システム1は、例えば企業の各支店など地理的に離れた複数の拠点(図1では、拠点01〜03)に居る各利用者に通信網10を介したテレビ会議を行わせるための通信システムである。通信網10は例えばインターネットであり、自網に接続されている通信装置間のデータ通信を仲介する。図1に示すように、通信網10にはMCU60が接続されているとともに、例えばルータなどの中継装置20を介して拠点内LAN30が接続されている。図1では、拠点01に敷設されている拠点内LAN30のみが図示されているが、拠点02や拠点03にも、中継装置を介して通信網10に接続される拠点内LANが敷設されている。なお、本実施形態では、MCU60が各拠点内LANとは別個に通信網10に接続されている場合について説明するが、上記各拠点内LANの何れかを介して通信網10に接続される態様であっても勿論良い。
【0009】
図1に示す例では、拠点内LAN30には、音声通信端末40X〜40Z、PC50A〜PC50Cが接続される。以下では、上記3台の音声通信端末の各々を区別する必要がない場合には、「音声通信端末40」と標記し、同様に上記3台のPCについても各々区別する必要がない場合には、「PC50」と標記する。これら音声通信端末40やPC50は、各拠点の会議室等に配置されたハブを介して拠点内LAN30に接続される。図2は、拠点01内における拠点内LAN30の具体的な敷設例を示す図である。図2に示す例では、1つの会議室当たり1台の音声通信端末40が配置されている。例えば、音声通信端末40Xは拠点01内の第1会議室に配置され、音声通信端末40Yは同第2会議室に配置される、といった具合である。また、図2では、PC50Aと50Bは第1会議室に配置され、PC50Cは第2会議室に配置される場合について例示されている。
【0010】
本実施形態では、MCU60には予め固有の通信アドレスが割り振られており、この通信アドレスは音声通信端末40やPC50に予め記憶されている。一方、音声通信端末40およびPC50には、同拠点内LAN30に接続されているDHCPサーバ(図示省略)によって動的に通信アドレス(本実施形態では、IPアドレス)が割り振られる。より詳細に説明すると、音声通信端末40やPC50は、各会議室に設置されているハブの何れかに接続され、かつ、その電源が投入されたことを契機として上記DHCPサーバにアクセスし通信アドレスの割り当てを受ける。このように、本実施形態では、拠点内LAN30に接続される音声通信端末40やPC50については動的に通信アドレスが割り振られるのであるが、音声通信端末40、PC50およびMCU60の各々に本実施形態に特徴的な処理を実行させることによって、音声通信端末40とPC50とのペアリングを可能にしているのである。
【0011】
音声通信端末40は、MCU60との間にSIP(Session Initiation Protocol)に準拠した手順で通信セッションを確立し、MCU60との間でRTP(Real-time Transport Protocol)に準拠した手順で音声データの送受信を行う。音声通信端末40は、利用者の発言を他の拠点に居る他の会議参加者へ伝達するとともに、当該他の会議参加者の発言を自装置の利用者に伝達するためのものである。図3に示すように、音声通信端末40は、通信インタフェース(以下、「I/F」)部42、着信処理部44、および音声入出力部46を有している。
【0012】
通信I/F部42は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、拠点内LAN30に接続される。通信I/F部42は、拠点内LAN30から送信されてくるデータを受信し、そのデータの種類に応じて着信処理部44または音声入出力部46の何れかへ引渡す。より詳細に説明すると、通信I/F部42は、音声データを受信した場合には、音声入出力部46へ引渡し、通信セッションの確立に関する制御メッセージ(例えば、SIPメッセージ)を受信した場合には、着信処理部44へ引渡す。また、通信I/F部42は、着信処理部44や音声入出力部46から引渡されるデータを拠点内LAN30へ送出する処理も実行する。
【0013】
着信処理部44は、他の通信機器から通信セッションの確立を要求する旨の制御メッセージを受信した場合に、所定の着信音を出力することによりその着信を利用者に報知する着信通知処理を実行する。そして、操作部(図示省略)を介してその着信を許可する旨の指示が入力された場合には、通信セッションの確立を許可する旨の応答(以下、許可応答)を上記制御メッセージの送信元へ返信し、逆に、その着信を拒否する旨の指示が入力された場合には、通信セッションの確立を拒否する旨の応答(具体的には、“487 Request Terminated”:以下、拒否応答)を返信する。音声入出力部46は、マイクロホン、スピーカおよび音声コーデック(何れも図示省略)を有している。音声入出力部46は、上記マイクロホンによって周囲の音を収音しその音に応じた音声データを上記音声コーデックによって生成して通信I/F部42へ引渡す一方、通信I/F部42によって受信した音声データを上記音声コーデックによって音声信号に変換して上記スピーカに与え、その音声データに応じた音を出力する。
【0014】
PC50は、例えばノート型パーソナルコンピュータであり、テレビ会議における画像データの送受信を担当する画像通信端末の役割を担う。より詳細に説明すると、このPC50には、その利用者を一意に識別する識別子(ユーザIDやパスワードなど、以下、利用者識別子)と上記画像通信端末としての機能を実現するためのアプリケーションプログラム(以下、会議通信アプリケーション)が予め記憶されている。PC50は、この会議通信アプリケーションを実行することによって、MCU60との間に通信セッションを確立し、webカメラなどの撮像手段により得られた画像データや会議資料を表す画像データをRTPに準拠した手順でMCU60へ送信する。また、PC50は、MCU60から送信されてくる画像データを受信し、その画像データに応じた画像を液晶ディスプレイなどの表示部(図示省略)に表示させる。また、上記会議通信アプリケーションにしたがって作動しているPC50は、このPC50とペアにするべき音声通信端末40のSIP番号およびペアリングの実行指示を利用者に入力させるためのユーザインタフェース(例えばプッシュフォン式の電話機の各種操作子を模した仮想ボタンからなるユーザインタフェース)を提供する処理も実行する。ここで、SIP番号とは、例えば電話通信における電話番号に相当するものであり、RTPなどの所定のデータ通信プロトコルにしたがって音声データや画像データの通信を行うための通信セッションの確立の際にその接続先を一意に識別する識別子としての役割を果たす。
【0015】
MCU60は、音声通信端末40やPC50との間に通信セッションを確立してデータ通信を行い、テレビ会議を実現する電子機器である。図4は、MCU60の構成例を示すブロック図である。図4に示すように、MCU60は、通信I/F部62、通信制御部64、音声データ処理部66、および画像データ処理部68を有している。
【0016】
通信I/F部62は、前述した通信I/F部42と同様にNICであり、通信網10に接続されている。通信I/F部62は、通信網10から送信されてくるデータを受信し、当該受信したデータをその種類に応じて通信制御部64、音声データ処理部66または画像データ処理部68の何れかへ引渡す。より詳細に説明すると、通信I/F部62は、音声データを受信した場合には、音声データ処理部66へ引渡し、画像データを受信した場合には、画像データ処理部68へ引渡し、通信セッションの確立に関する制御メッセージを受信した場合には、通信制御部64へ引渡す。また、通信I/F部62は、通信制御部64、音声データ処理部66および画像データ処理部68から引渡されるデータを通信網10へ送出する処理も実行する。
【0017】
通信制御部64は、音声通信端末40やPC50から送信されてくるレジスト要求に応じてその送信元のレジストを行うレジストラ機能とそのレジスト内容を利用して通信セッションの接続制御を行うSIPサーバ機能とを有している。ここで、レジストとは、音声通信端末40やPC50に予め割り当てられているSIP番号とそれら通信機器の通信アドレスとを対応付けてレジストテーブル(図示省略)に格納することであり、レジスト要求とは上記レジストの実行を要求する旨の制御メッセージである。また、通信制御部64は、PC50からそのPC50と上記3台の音声通信端末40の何れかとをペアにすることを要求する旨の制御メッセージ(以下、ペアリング要求)を受信した場合に、そのペアリング要求にてペアにすることを要求されている音声通信端末40に対してその可否を問い合わせ、許可応答が返信されてきた場合に、両通信機器の通信アドレスを対応付けてペアリング管理テーブル(図示省略)に格納する処理も実行する。
【0018】
音声データ処理部66は、MCU60と通信セッションを確立している1または複数の音声通信端末40との間の音声データの送受信を仲介する処理を実行し、画像データ処理部68は、MCU60と通信セッションを確立している1または複数のPC50との間の画像データの送受信を仲介する処理を実行する。加えて、音声データ処理部66は、所謂ネットワークミキサ(図示省略)を含んでおり、3台以上の音声通信端末40がMCU60との間に通信セッションを確立して音声データの送受信を行う場合には、以下の処理を行う。すなわち、MCU60との間に通信セッションを確立している音声通信端末40の各々に対して、他の音声通信端末40から受信した音声データをミキシングして得られる音声データを送信する処理を実行する。例えば、音声通信端末40X、40Yおよび音声通信端末40ZがMCU60との間に通信セッションを確立している場合、MCU60は、音声通信端末40Xに対しては音声通信端末40Yおよび音声通信端末40Zから受信した音声データをミキシングして得られる音声データを、音声通信端末40Yに対しては音声通信端末40Xおよび音声通信端末40Zから受信した音声データをミキシングして得られる音声データを、音声通信端末40Zに対しては音声通信端末40Xおよび音声通信端末40Yから受信した音声データをミキシングして得られる音声データを、各々送信する。
以上が本実施形態に係る会議通信システム1の構成である。
【0019】
(B:動作)
次いで、会議通信システム1における各装置の動作について、PC50Aと音声通信端末40Xとをペアにする場合を例にとって説明する。
【0020】
PC50Aの利用者は、このPC50Aと音声通信端末40Xとをペアにしようとする場合、まず、PC50Aにインストールされている会議通信アプリケーションを起動し、前述したプッシュフォン式の電話機を模したユーザインタフェースにより音声通信端末40XのSIP番号をダイヤルして、ペアリング処理の実行を指示するための操作子(例えば、発信ボタン:図示省略)を押下する。すると、PC50AのCPU(Central Processing Unit:図示省略)は、予め記憶している利用者識別子、上記SIP番号、およびDHCPサーバにより割り振られた通信アドレスを書き込んだペアリング要求M001を生成し、MCU60へ送信する(図5参照)。
【0021】
MCU60の通信制御部64は、通信I/F部62を介して制御メッセージを受信すると、図5に示すように、要求内容判別処理SA01を実行する。この要求内容判別処理SA01は、SIPサーバとしてどのような処理を行うことを要求されているのかを上記受信した制御メッセージを解析して判別し、その要求内容に応じた処理を実行する処理である。例えば、レジストを要求する旨の制御メッセージであれば、その制御メッセージの送信元の要求内容はレジストの実行であると判別し、その要求内容に応じた処理(すなわち、レジスト)を実行する。また、受信したメッセージがペアリング要求である場合には、通信制御部64は、そのペアリング要求に書き込まれているSIP番号を発呼先としてSIP発信を行い、その発呼先へペアリングの可否を問い合わせる処理を実行する。
【0022】
ペアリング要求を受信した場合に通信制御部64が実行する処理の詳細は以下の通りである。すなわち、通信制御部64は、まず、受信したペアリング要求に書き込まれているSIP番号に対応する通信アドレスをレジストテーブル(図示省略)から読み出すことにより、SIP発信の発呼先となる通信機器を特定する。なお、通信制御部64は、受信したペアリング要求に書き込まれているSIP番号がレジストテーブルに登録されていない場合は、そのレジスト要求を無視(或いは拒否)する。本実施形態では、PC50Aから送信されてくるペアリング要求M001には、音声通信端末40XのSIP番号が書き込まれているため、通信制御部64は、SIP発信の発呼先として音声通信端末40Xを特定する。次いで、通信制御部64は、ペアリング要求があったこと、およびその要求元を上記発呼先へ通知しペアリングの可否を問い合わせる制御メッセージ(例えば、INVITEメッセージ、以下、ペアリング可否問い合わせ)M002を生成し、上記発呼先へ宛てて送信する(図5参照)。ただし、上記ペアリング可否問い合わせM002には、通常のSIP発信に係るINVITEメッセージとの区別をその送信先ができるようにするために、専用ヘッダが付加される。この専用ヘッダには、ペアリング要求M001に内包されていた利用者識別子とその送信元の通信アドレス(本動作例では、PC50Aの通信アドレス)とが書き込まれる。
このようにしてMCU60から送信されるペアリング可否問い合わせM002は通信網10および拠点内LAN30を介して音声通信端末40Xに到達する。
【0023】
音声通信端末40Xの着信処理部44は、制御メッセージを受信しSIP着信を検出すると、その制御メッセージがペアリング処理に関するものであるのか、それとも、通常のSIP発信に関するものであるのかをそのヘッダ部を参照して判定し、その判定結果に応じた着信通知処理SB01を実行する(図5参照)。この着信通知処理SB01では、着信音の放音によりSIP着信が報知されるのであるが、ペアリング処理に関する制御メッセージを受信した場合と、通常のSIP着信の場合とで異なる着信音が放音される。また、着信処理部44は、受信した制御メッセージがペアリング処理に関するものである場合には、そのヘッダ部に書き込まれている利用者識別子やペアリングの要求元の通信アドレスを表示部(図示省略)に表示させる。
【0024】
音声通信端末40Xの操作者(例えば、図2に示す第1会議室にて音声通信端末40Xの最も近くに居る会議参加者)は、音声通信端末40Xに対するSIP着信が、通常の発呼によるものか、それとも、ペアリング処理に関するものであるのかを着信音から判別することができる。そして、ペアリング処理に関する着信である場合には、音声通信端末40Xの利用者は、音声通信端末40Xの表示部に表示される利用者識別子および通信アドレスから、その発呼元と当該音声通信端末40Xとをペアリングするべきか否かを判断し、その判断結果に応じた指示を音声通信端末40Xに与えることができる。具体的には、ペアリングを許可する場合は、音声通信端末40Xのオフフックボタン(図示省略)を押下して許可指示を与え、逆に、ペアリングを許可しない場合には、音声通信端末40Xのオンフックボタン(図示省略)を押下して拒否指示を与える。
以下、音声通信端末40Xの操作者が許可指示を与える場合と拒否指示を与える場合とに分けて各装置が実行する動作について説明する。
【0025】
(B−1:ペアリングを許可する旨の入力操作が為された場合の動作)
音声通信端末40Xの着信処理部44は、MCU60からの着信に対して、図5に示すように、“100 Trying”および“180 Ringing”の各SIPメッセージを送信し、入力操作待ちであることをその発信元へ通知する。そして、着信処理部44は、許可指示の入力(例えば、オフフックボタンの押下)を検出(図5:SB02)すると、図5に示すように、許可応答(本実施形態では、“200 OK”)M003を返信する。これにより音声通信端末40XとMCU60との間に通信セッションが確立される。
【0026】
MCU60の通信制御部64は、音声通信端末40から送信されてくる許可応答M003を受信し、音声通信端末40Xとの間に通信セッションが確立されると、図5に示すように、直ちに“Bye”メッセージを送信し、上記通信セッションを切断する。ペアリング可否問い合わせM002の送信によるSIP発信は、ペアリングの可否を問い合わせることが目的であり、音声通信端末40Xとの間の音声データの送受信のための通信セッションは、テレビ会議の開始の際に別途確立されるからである。
【0027】
上記通信セッションの切断を完了すると、通信制御部64は、図5に示すように、登録処理SA02を実行し、ペアリングが完了したことを通知するペアリング完了通知M004をPC50Aに送信する。この登録処理SA02は、ペアリング要求M001の送信元の通信アドレス(すなわち、PC50Aの通信アドレス)と許可応答M003の送信元の通信アドレス(すなわち、音声通信端末40Xの通信アドレス)とを対応付けて対応管理テーブルに書き込む処理である。PC50AのCPUは、ペアリング完了通知M004を受信すると、ペアリング処理が完了した旨を利用者に報知する(例えば、処理完了を示すメッセージの表示部への出力)。これにより、PC50Aと音声通信端末40Xのペアリングは完了する。
【0028】
上記のようにPC50Aと音声通信端末40Xとのペアリングが完了した状態でテレビ会議が開始されると、MCU60の通信制御部64は、互いに対応付けて対応管理テーブルに通信アドレスが格納されている音声通信端末40およびPC50(本動作例では、音声通信端末40XとPC50A)とのデータ通信が同期して行われるように、音声データ処理部66および画像データ処理部68の作動制御を行う。また、上記のようにPC50Aと音声通信端末40Xとがペアリングされている状態で、音声通信端末40XとペアにするPCをPC50AからPC50Bに変更する場合には、PC50Bにて会議通信アプリケーションを起動し、音声通信端末40XのSIP番号をダイヤルして発信ボタンを押下すれば良い。すると、図5に示すシーケンスフローチャートにしたがった通信がPC50B、MCU60および音声通信端末40Xの各々によって実行され、音声通信端末40Xにてペアリングを許可する旨の入力操作(すなわち、オフフックボタンの押下)が為されれば、以上に説明した動作と同一の動作がこれら装置で実行され、音声通信端末40XとペアになるPCがPC50Bへ切り替えられるのである。
【0029】
(B−2:ペアリングを拒否する旨の入力操作がなされた場合の動作)
一方、着信処理部44は、拒否指示の入力(例えば、オンフックボタンの押下)を検出(図6:SB03)すると、図6に示すように、拒否応答M005をMCU60へ返信する。なお、拒否応答の返信を行うことなく、音声通信端末40Xからの通信セッションの切断により、ペアリングを拒否する旨をMCU60に通知しても良い。MCU60の通信制御部64は、拒否応答M005を受信した場合(或いは音声通信端末40Xからの通信セッションの切断を検出した場合)には、前述した登録処理SA02を実行することなく、ペアリング要求M001の送信元へペアリング拒否通知M006を返信する。このペアリング拒否通知M006を受信したPC50のCPUは、ペアリングが拒否された旨を報知し、本ペアリング処理を終了する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、音声通信端末40やPC50の通信アドレスがDHCPによって動的に割り振られる場合であっても、音声通信端末40とPC50とをペアリングして管理することが可能になる。また、PC50に割り振られている通信アドレスを変更することなく、音声通信端末40とペアにして管理するPC50を手軽に変更することも可能になる。
【0031】
また、本実施形態によれば、音声通信端末40の操作者は、着信通知処理SB01にて音声通信端末40の表示部に表示される利用者識別子および通信アドレスを参考に、ペアリングを許可するか否かを選択することができるため、誤ってペアリングされてしまうことや悪意のある者のPCとペアリングされてしまうことを防止することができる。例えば、図1の拠点01は東京にあり、拠点02は大阪にある状況下で、何らかのミスにより音声通信端末40Xに対して拠点02に配置されているPCからペアリング要求があった場合には、音声通信端末40Xの操作者はオンフックボタンを押下して拒否指示を入力することで、そのペアリング要求を拒否することができる。
【0032】
(C:変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、かかる実施形態に以下に述べる変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した場合には、通常とは異なる着信音の放音によりペアリング要求が為されたことを報知した後、操作部を介して入力される指示内容に応じて許可応答M003または拒否応答M005を返信する処理を着信処理部44に実行させた。しかし、上記報知を開始してから所定時間(例えば、ワンコール)以内に許可指示が入力されなければ、無条件に拒否応答M005を返信させるようにしても良い。このような制約を設けることで、音声通信端末40の操作者とPC50の操作者との間に事前の同意がなければペアリングがされにくい状態となり、より確実に目的のペアリングを行うことが可能になる。
【0033】
(2)上述した実施形態では、ペアリング可否問い合わせM002を受信した場合に、通常のSIP着信とは異なる着信音を放音するとともに、ペアリングの要求元であるPC50の通信アドレスおよびそのPC50の利用者の利用者識別子を表示部に表示する着信通知処理SB01を音声通信端末40の着信処理部44に実行させ、操作部を介して入力される指示内容に応じて許可応答M003または拒否応答M005を返信する処理を同着信処理部44に実行させた。しかし、音声通信端末40X、40Yおよび40Zの各々について、その利用を許可する利用者を予め定めておき、当該利用者の利用者識別子が内包されたペアリング可否問い合わせM002を受信した場合には、無条件に許可応答M003を返信する処理を着信処理部44に実行させても良い。
【0034】
具体的には、各音声通信端末40の着信処理部44に、当該音声通信端末40の利用を許可された1または複数の利用者の利用者識別子のリストを記憶させておく。そして、MCU60から受信したペアリング可否問い合わせM002に内包されている利用者識別子が上記リストに含まれているか否かを判定し、含まれている場合には許可応答M003を返信する処理を、逆に、含まれていない場合には拒否応答M005を返信する処理を、着信処理部44に実行させるようにすれば良い。このような態様によれば、音声通信端末40の利用者の手を煩わせることなく、自動的に予め定められた利用者の使用するPC50についてのみ、そのPC50とペアリングすることが実現される。
【0035】
ただし、このような態様においては、何れかのPC50とのペアリングが為されている状況下で、他のPC50の通信アドレスおよび利用者識別子が書き込まれたペアリング可否問い合わせM002が送信されてきた場合には、ペアリングの対象が上記他のPC50に無条件に切り替えられるといった不具合がある。そこで、何れかのPC50とのペアリングが為されている場合には、ペアリング可否問い合わせM002を受信しても無条件に拒否応答M005を返信するよう着信処理部44を設定し、上記ペアリングを維持する必要がなくなった時点でその設定を解除するようにしても良い。また、何れかのPC50とのペアリングが為されている状況下で、ペアリング可否問い合わせM002を受信した場合にのみ、その受信を報知し、操作者の操作内容に応じて許可応答M003または拒否応答M005の何れかを送信する処理を着信処理部44に実行させても良い。
【0036】
(3)上述した実施形態では、音声通信端末40やPC50をハブを介して拠点内LAN30に接続したが、ハブの代わりに無線アクセスポイント装置を用い、この無線アクセスポイント装置によって音声通信端末40やPC50を収容し拠点内LAN30に接続しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る会議通信システム1の構成例を示す図である。
【図2】同会議通信システム1を構成する拠点内LAN30の敷設例を示す図である。
【図3】同拠点内LAN30に含まれる音声通信端末40の構成例を示す図である。
【図4】同会議通信システム1に含まれるMCU60の構成例を示す図である。
【図5】同会議通信システム1における各装置間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【図6】同会議通信システム1における各装置間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…会議通信システム、10…通信網、20…中継装置、30…拠点内LAN、40,40X、40Y、40Z…音声通信端末、42…通信I/F部、44…着信処理部、46…音声入出力部、50,50A、50B、50C…PC、60…MCU、62…通信I/F部、64…通信制御部、66…音声データ処理部、68…画像データ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々利用者の音声を収音しその音声を表す音声データを通信セッションの接続先へ送信する一方、当該通信セッションの接続先から受信した音声データに応じた音を出力する複数の音声通信端末と、
各々通信セッションの接続先へ画像データを送信する一方、当該通信セッションの接続先から受信した画像データの表す画像を表示する複数の画像通信端末と、
前記複数の音声通信端末および前記複数の画像通信端末の各々との間に通信セッションを確立し、音声データおよび画像データの通信を仲介する多地点接続装置と、
を備え、
前記複数の音声通信端末および前記複数の画像通信端末の各々には動的に通信アドレスが割り振られ、
前記複数の画像通信端末のうち、利用者によって前記複数の音声通信端末の何れかとのペアリングを指示されたものは、当該音声通信端末とのペアリングを要求する旨のペアリング要求に当該画像通信端末の通信アドレスを書き込んで前記多地点接続装置へ送信し、
前記多地点接続装置は、
前記複数の画像通信端末の何れかから前記ペアリング要求を受信した場合に、当該ペアリング要求にてペアリングを要求されている音声通信端末に対して当該画像通信端末からペアリングを要求されている旨を通知してその可否を問い合わせ、当該音声通信端末からペアリングを許可する旨の許可応答を受信したことを契機に、前記ペアリング要求の送信元と前記許可応答の送信元とのペアリングし、当該ペアリングした音声通信端末との間の音声データの通信および当該ペアリングした画像通信端末との間の画像データの通信を同期させる制御を行い、
前記複数の音声通信端末の各々は、
前記複数の画像通信端末の何れかからペアリングを要求されたことを前記多地点接続装置から通知された場合にその旨を利用者へ報知し、ペアリングを許可する旨の入力操作が為された場合に前記許可応答を前記多地点音声接続装置へ返信する
ことを特徴とする会議通信システム。
【請求項2】
前記複数の音声通信端末の各々は、
前記複数の画像通信端末の何れかからペアリングを要求された旨の報知を開始してから所定時間が経過するまでに、ペアリングを許可する旨の入力操作が為されなかった場合には、前記ペアリング要求の送信元とのペアリングを拒否する拒否応答を前記多地点接続装置へ返信し、
前記多地点接続装置は、
前記拒否応答を受信した場合には、前記ペアリング要求の送信元へペアリングが拒否された旨を返信する
ことを特徴とする請求項1に記載の会議通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−246886(P2009−246886A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94067(P2008−94067)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】