説明

伸び計

【課題】±3μm程度の計測精度を持つ自動材料試験機用の伸び計を提供する。
【解決手段】伸び計は、上下一対のレバー装置20U,20Lにより試験片TPの伸びを検出する。上下一対のレバー装置20U,20Lはそれぞれ、先端が試験片TPの一の標点位置に取付けられ、試験片TPの伸びに追従して回動軸の周りに回動するレバー本体を有する。レバー本体の回動量はレバー検出器で検出される。伸び計を試験片TPに着脱する際、レバー本体は前後進装置40U,40Lで試験片TPに対して前進し、後進する。レバー本体の上下動は、レバークランプ装置60U,60Lでクランプされる。レバークランプ装置60U,60Lは、レバー本体の先端と回動軸との間においてレバー本体を上下から挟持する一対のクランプ部材(62,64)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とくに全自動試験機に用いて好適なレバー式伸び計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動材料試験機が知られている。この自動材料試験機では、試験片を試験機に装着し、装着した試験片にレバー式伸び計(例えば特許文献1)を装着して試験片に負荷を与え、試験片の伸びを計測する。レバー式伸び計では、上下一対のレバーが試験片の伸びに追従して開閉する。このとき。上下のレバーが円弧運動を行うため、レバー本体が試験片に接近する。
【0003】
このような自動材料試験機は、レバー伸び計を試験片に対して前進、後進させる前後進装置を備えている。レバー式伸び計を試験片に装着する際にはレバー式伸び計を前進させる。レバー式伸び計を試験片から取り外す際にはレバー式伸び計を後進させる。従来の自動材料試験機に使用されるレバー式伸び計の前後進装置は、前後進兼用シリンダを用い、試験片に伸び計を装着する際はシリンダを前進させ、伸び計を取り外す際はシリンダを後進させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−347375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
±3μm程度の計測精度が要求される引張試験では、レバー支点回りの回転運動抵抗を極力小さくするとともに、試験片の伸びに追従してレバー本体が移動する際の摩擦抵抗も小さくする必要がある。しかし、従来の前後進兼用シリンダを用いた前後進装置では、試験片の伸びに追従して伸び計が前進するとき、その動きに連れてシリンダも伸縮する。したがって、シリンダの摩擦抵抗がレバー開閉運動の抵抗となり、数μmオーダの計測精度を担保することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明は、試験片の伸びに追従して回動軸周りに上下一対のレバー装置を開閉運動させて前記伸びを検出する伸び計において、前記上下レバー装置のそれぞれを独立して試験片に接近する方向に移動させる上下レバー前進手段と、前記上下レバー装置のそれぞれを独立して試験片から離れる方向に移動させる上下レバー後進手段と、前記上下レバー装置の回動量をそれぞれ独立して検出する上下検出手段と、前記試験片の伸びに追従する前記上下レバー装置の運動を前記上下レバー前進手段と上下レバー後進手段にそれぞれ伝達しないようにする非伝達手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1の伸び計において、前記非伝達手段は、前記上下レバー前進手段を前記上下レバー装置のそれぞれと切り離す切り離し手段と、前記上下レバー後進手段を前記上下レバー装置のそれぞれと係合状態および非係合状態のいずれかとする係合/非係合手段とを含むことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2の伸び計において、前記上下レバー前進手段は前進用シリンダを、前記上下レバー後進手段は後進用シリンダをそれぞれ含み、前記伸び計は、前記前進用シリンダによる上下レバー装置の前進運動を所定位置で停止させる上下ストッパ手段をさらに有し、切り離し手段は、前記上下ストッパ手段を前記前進用シリンダから切り離す切り離し用シリンダを含み、前記係合/非係合手段は、前記上下ストッパ手段を前記前進用シリンダから切り離した状態で、前記後進用シリンダが前記上下レバー装置と非係合となるように構成したことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2の伸び計において、前記上下レバー装置の各レバー本体を挟持する一対の上レバークランプ部材と一対の下レバークランプ部材を別々に有し、前記上下レバークランプ部材のそれぞれを、前記レバー本体の先端と前記回動軸との間に配置したことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項4の伸び計において、前記レバー本体を上下から挟持するように前記上下レバークランプ部材を構成したことを特徴とする。
(6)請求項6の発明は、請求項4または5の伸び計において、前記切り離し手段の切り離し運動に連動して前記上下レバークランプ部材のそれぞれを開いて前記上下レバー本体の挟持を解放するように構成したことを特徴とする。
(7)請求項7の発明は、上下一対のレバー装置により試験片の伸びを検出する伸び計において、前記上下一対のレバー装置はそれぞれ、先端が前記試験片の一の標点位置に取付けられ、前記試験片の伸びに追従して回動軸の周りに回動するレバー本体と、前記レバー本体の回動量を検出するレバー検出器と、前記レバー本体を一対のクランプ部材でクランプするレバークランプ装置と、伸び計を試験片に着脱する際に前記レバー本体を前記試験片に対して前進、後進する前後進装置とを備えことを特徴とする。
(8)請求項8の発明は、請求項7の伸び計において、前記一対のクランプ部材を、前記レバー本体の先端と前記回動軸との間に配置したことを特徴とする。
(9)請求項9の発明は、請求項8の伸び計において、前記レバー本体を上下から挟持するように前記一対のクランプ部材を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明によれば、レバー装置の前後進運動を独立した手段で行うようにしたので、試験片の伸びに追従して伸び計が前進する際の摩擦抵抗を低減することができる。
第2の発明によれば、レバー装置をクランプすることにより移動時の振動を抑制するようにしたので、クランプ時にレバー回動軸に不所望な力が働かない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による伸び計の一実施形態を示す正面図
【図2】図1のレバー装置を示す正面図
【図3】図2の上面断面図
【図4】図2の右側面断面図
【図5】図2のレバー前後進装置を示す正面図
【図6】図2のストッパ装置を示す正面図
【図7】図2の上下クランプ装置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による伸び計の一実施形態について図1〜図7を参照して説明する。この実施形態の伸び計は自動材料試験機に使用するものである。
【0010】
図1において、伸び計100は材料試験機500に装着した試験片TPの伸びを測定する。材料試験機500は、テーブル501に固定された下つかみ具502と、図示しないクロスヘッドに吊持された上つかみ具503との間に試験片TPを把持し、クロスヘッドを上昇して試験片TPに引張力を負荷する。伸び計100は、試験片TPの伸びを計測する。
【0011】
(伸び計全体構成)
図1および図2に示すように。伸び計100は、基台10と、基台10に昇降可能に設けられた上昇降台11Uおよび下昇降台11Lと、昇降台11U,11Lに前後進可能に設置された上レバー装置20Uおよび下レバー装置20Lと、上レバー昇降装置30Uおよび下レバー昇降装置30Lと、上レバー前後進装置40Uおよび下レバー前後進装置40Lと、上レバーストッパ装置50Uおよび下レバーストッパ装置50Lと、上レバークランプ装置60Uおよび下レバークランプ装置60Lとを有する。
【0012】
(レバー装置20)
上下レバー装置20U,20Lは上下昇降台11U,11Lにそれぞれ設置されている。上下レバー装置20U,20Lと上昇降台11U,11Lは同一であり、昇降台11およびレバー装置20として図2および図3も参照して説明する。
【0013】
レバー装置20は、昇降台11に前後進可能に設けられたスライドベース22と、スライドベース22に回転軸23を中心に回動するように設けられているレバー本体24と、レバー本体24の後端にリンク26を介して連結された検出器25と、レバー本体24の先端に設けられたクリップ装置27とを有する。クリップ装置27はクリップシリンダ27Aにより開閉駆動される。
【0014】
(検出器)
図2および図3を参照して検出器25を説明する。検出器25は、リンク26と連結された基板25aと、基板25aに設置された透過型レーザヘッド25bと、スライドベース22に設置されたガラススケール25cとを有する。レーザヘッド25bの発光部から出射するレーザ光はガラススケール25cを透過して受光部で受光される。
【0015】
基板25aは、リニアガイド機構28を介してスライドベース22上を上下方向に直線移動するように構成されている。軸23を中心としてレバー本体24が回動するとき、リンク26とリニアガイド機構28の作用により、基板25a、すなわちレーザヘッド25bがスライドベース22上を上下直線運動する。したがって、レーザヘッド25bは、ガラススケール25cに対して上下方向に移動し、受光部の出力信号によりレバーの変位量が計測される。
【0016】
(レバー昇降装置30)
上レバー昇降装置30Uおよび下レバー昇降装置30Lは同一であり、レバー昇降装置30として図1および図3を参照して説明する。レバー昇降装置30は、ステッピングモータ31と、ボールネジ32と、エンコーダ33と、リニアガイド機構34とを有する。ボールネジ32は各昇降台11に設けたナット(不図示)に螺合し、リニアガイド機構34は、基台10に上下方向に所定間隔を空けて延設されるレール34aと、昇降台11の裏面に設けたガイド34bとを有し、両者が係合している。ステッピングモータ31によりボールネジ32を駆動すると、各昇降台11はリニアガイド機構34によって上下方向に案内されて直線運動する。
【0017】
なお、図3に示すように、基台10の側面には光検出器71が設けられ、昇降台11の背面に突設した遮蔽版が光検出器71を遮蔽検出した位置を、昇降台11の原点位置として検出される。この原点位置とエンコーダ33の信号により昇降台高さ検出器を構成する。
【0018】
(レバー前後進装置40)
上レバー前後進装置40Uおよび下レバー前後進装置40Lは同一であり、レバー前後進装置40として図3〜図5も参照して説明する。レバー前後進装置40は、昇降台11に設置された前進用シリンダ41と、昇降台11に設置された後進用シリンダ42と、スライダベース22の前後進運動を案内するリニアガイド機構43(図4)とを有する。リニアガイド機構43は、昇降台11に設けた前後進リニアレール43bと、スライドベース22の裏面に設けた前後進ホイール43aとを有し、両者が係合している。前後進用シリンダ41,42の伸縮動作により、スライドベース22がリニアガイド機構43によって前後進方向に案内される。
【0019】
図5に示すように、昇降台11に設置された前進用シリンダ41が伸縮する経路上には、スライドベース22の背面に当たり面22aが突設されており、前進用シリンダ41を伸長させると押動部材41aが当たり面22aを押動してスライドベース22、すなわちレバー本体24を前進させる。一方、後進用シリンダ42のロッド42Rは、スライドベース22の背面に突設された引張係合部材22bを挿通して延在し、その先端には引張部材42aが固定されている。後進用シリンダ42を収縮させると、引張部材42aが引張用係合部材22bに係合してスライドベース22,すなわちレバー本体24を後進させる。
【0020】
このように、前後進用シリンダ41,42はスライドベース22に対して連結されず、前後進用シリンダ41,42はスライドベース22と当接して前後進させるように構成されている。そのため、後で詳細に説明するが、クリップ装置27を試験片TPに装着して引張試験が行われているとき、前後進用シリンダ41,42はスライドベース22と非接触である。試験片TPが伸びてレバー本体24が円弧運動を行うと、レバー本体24は伸びに追従して前進する。このとき、前進用シリンダ41は伸縮運動を行わないので抵抗成分にならない。一方、後進用シリンダ42についても、レバー装置20を試験片TPから取り外すとき、引張部材42aが所定位置まで後退して引張係合部材22bと係合するように構成している。その結果、試験片TPの伸びに追従してスライドベース22,すなわちレバー本体24が前進しても後進用シリンダ42は伸縮せず抵抗成分にならない。
【0021】
(レバーストッパ装置50)
上レバーストッパ装置50Uおよび下レバーストッパ装置50Lは同一であり、レバーストッパ装置50として図6を参照して説明する。レバーストッパ装置50は、昇降台11に取り付けられたストッパシリンダ51と、ストッパシリンダ51のピストンロッドに取り付けられ先端にストッパ板52aが設けられているストッパ部材52と、スライドベース22の先端に設けられたストッパボルト53とを有している。スライドベース22が前進してストッパボルト53がストッパ板52aに当接すると、スライドベース22の前進が規制される。この規制位置では、クリップ装置27の試験片取付部が試験片TPの標点位置に対向する。試験開始時、ストッパシリンダ51を収縮してストッパ板52aをストッパボルト53から離し、スライドベース22、すなわち、試験片TPの伸びに追従したレバー本体24の前進運動を妨げないようにする。
【0022】
(レバークランプ装置60)
上レバークランプ装置60Uおよび下レバークランプ装置60Lは同一であり、レバークランプ装置60として図6および図7を参照して説明する。レバークランプ装置60は、レバー本体24を上下方向から挟持してレバー本体24の移動時の揺動を抑制するものである。レバークランプ装置60は、昇降台11に設けられ、昇降台11に軸支された軸61を中心として回動する上クランプレバー62と、ストッパ部材52に軸支された軸63を中心として回動する下クランプレバー64とを有する。
【0023】
上クランプレバー62は略L字形状を呈し、一端側にガイドローラ62aが、他端側にクランプローラ62bが設けられている。ガイドローラ62aは、ストッパ部材52の溝52bに嵌合している。下クランプレバー64は、基端側で回転軸63により軸支され、その先端に2つの転がりローラ64aが設けられている。この下クランプレバー64には、自重により軸63回りに反時計回転方向の回転力が与えられ、先端の転がりローラ64aがスロープ台65の傾斜面で支持されている。スロープ台65は昇降台11の先端に取り付けられている。したがって、レバーストップ装置50が前進すると、ローラ64aがスロープ台65の上面を試験片方向に滑動し、下クランプレバー64が反時計回転方向に回動する。
【0024】
図6および図7を参照してクランプ装置60についてさらに説明する。
ストッパ部材52がストッパ用シリンダ51の収縮運動により前進するとき、ストッパ部材52の溝52bにローラ62bが嵌合している上クランプレバー62は、軸61を中心として時計回転方向に回動してアンクランプ操作される。また、ストッパ部材52の前進により下クランプレバー64も前進する。下クランプレバー64は、その前端のローラ64aがスロープ台65の上面を滑動し、軸63を中心として反時計回転方向に回動してアンクランプ操作される。すなわち、図7は、上クランプレバー62および下クランプレバー64がクランプ操作位置にあり、レバー本体24の上面に固定したクランプ板24a(図3および図6参照)が上クランプレバー62および下クランプレバー64により上下方向に挟持され、これによりレバー本体24の上下方向の揺動が阻止されている。
【0025】
ストッパボルト53をストッパ板52aに当接させ、レバー本体24の前進位置を決定し、クリップシリンダ27aを駆動してクリップ装置27を試験片TPに取り付ける。その後、ストッパ用シリンダ51を収縮させてストッパ板52aをストッパボルト53から離すように操作する。このとき、上述したように、上クランプレバー62および下クランプレバー64がアンクランプ操作されるから、クランプ板24aを介したレバー本体24のクランプが解放される。ストッパ板52aをストッパボルト53から離すことにより、試験片TPの伸びに追従してレバー本体24が軸23を支点として回動することを妨げない。
【0026】
(伸び計動作)
図1〜図7を適宜参照しながら伸び計の動作を説明する。
レバー装置20を試験片TPに装着する際、前進用シリンダ41を伸長して、スライドベース22、すなわちレバー装置20を試験片TPに向けて前進させる。レバー装置20は、スライドベース22のストッパボルト53がスライドストッパ板52aに当接してその移動が規制されるまで前進する。ストッパ板52aにストッパボルト53が当接したとき、レバー先端のクリップ装置27の標点取付部は、試験片TPの標点位置となる。クリップシリンダ27aによりクリップ装置27を閉じてレバー装置20を標点に装着し、その後、前進用シリンダ41を後退する。
【0027】
レバー装置20を前進させてストッパ板52aにストッパボルト53が当接するまでの間は、上下クランプレバー62,64は図7のレバークランプ操作位置に設定されている。そのため、レバー本体24はクランプ板24aを介して上下クランプレバー62,64で上下から挟持されている。その結果、レバー装置20を前進させるとき、レバー本体24の揺れを防止することができる。
【0028】
試験に先立って、ストッパシリンダ51を収縮させ、ストッパ板52aがレバー装置20から切り離されるようにストッパ板52を前進させる。このとき、上クランプレバー62が時計回転方向にアンクランプ位置まで揺動するとともに、下クランプレバー64が反時計回転方向にアンクランプ位置まで揺動する。その結果、試験片TPの伸びに追従してレバー本体24が開閉可能となる。
【0029】
材料試験機500を起動してクロスヘッドを上方に移動させると試験片TPに引張負荷が作用し、試験片TPが伸びる。試験片TPの伸びに追従してレバー本体24が軸23を中心に回動する。レバー本体24の後端のリンク26を介して基板25a、すなわちレーザヘッド25bが上下方向に直線移動する。レーザヘッド25bはレバー本体24の回動量に依存した信号を出力する。図示しない制御装置はこの出力信号を用いて試験片TPの伸びを演算する。
【0030】
レバー本体24がその先端の標点位置を固定したまま円弧運動する際、レバー装置20、すなわちスライドベース22が前進移動する。
引張試験が終了したことが検出されると、クリップシリンダ27aによりクリップ装置27を解放してレバー装置20を試験片TPから取り外す。後進用シリンダ42を収縮すると、引張部材42aが引張係合部材22bに当接し、スライドベース22、すなわちレバー装置20が後進する。その後、ストッパシリンダ51を初期位置まで伸長する。この伸長動作に連動して、上下クランプレバー62,64がクランプ操作位置へ復帰する。
【0031】
以上説明した自動材料試験機の動作は、図示しない制御装置によって全自動で制御され、数十、数百の試験片に対して予め設定した試験条件により順次引張試験が行われる。より詳細には、自動材料試験機は、スタッカに積層されている試験片を一枚づつ吸着する工程と、吸着した試験片を採寸する工程と、上下つかみ具の間に試験片をセットする工程と、試験片に試験力を与え、試験力と伸び量を計測して記憶する工程と、試験片の破断を検知して試験を停止し、試験片を上下つかみ具から取り外す工程とを、予め設定した枚数繰り返し行う試験機である。
【0032】
以上のように構成された伸び計によれば次のような作用効果を奏することができる。
(1)本発明の一実施形態の伸び計では、前進用シリンダ41と後退シリンダ42を別々に設けている。前進用シリンダおよび後進用シリンダを一つのシリンダで兼用する場合、試験片の伸びに追従してレバーが前進する際にシリンダが伸長するのでピストンの摩擦抵抗が発生する。±3μm程度の計測精度が要求される試験では、レバー支点回りの回転運動抵抗を極力小さくするとともに、レバー装着時の前後進用シリンダの直線移動に伴う摩擦抵抗も小さくする必要がある。
【0033】
そこで、上記実施形態では、前進用シリンダ41と後進シリンダ42を別々に設け、レバー本体24,すなわちスライドベース22を当接して前進、後進させるようにし、これにより、試験片TPの伸びに伴うレバー前進時にシリンダのピストン摩擦抵抗が発生しないようにした。この実施形態の伸び計では、レバー本体24、すなわちスライドベース22が前進する際にリニアガイド機構34の摺動による摩擦抵抗は存在するが、その摩擦抵抗は従来の前後進兼用シリンダの摩擦抵抗に比べて格段に小さくすることができる。
【0034】
換言すると、本発明による伸び計は、試験片TPの伸びに追従する上下レバー装置20U,20Lの運動を前進用シリンダ41と後進用シリンダ42にそれぞれ伝達しないように構成している。このような構成を非伝達手段と呼ぶ。
【0035】
実施形態の伸び計では、非伝達手段は、ストッパ板52をストッパボルト53から切り離すストッパシリンダ51を含む。さらに非伝達手段は、後進用シリンダ42を収縮して上下レバー装置20U,20Lのそれぞれを後進させるときに後進用シリンダ42のロッド42が係合部材22b(図5参照)と係合状態を保持し、試験中は後進用シリンダ42のロッド42が係合部材22bと非係合状態を保持する係合/非係合手段とを含む。
【0036】
(2)レバー本体24は、回転支点23回りの回転モーメントが釣り合うようにバランスウエイト24Wを有している。±3μm程度の伸び計測精度が要求される試験では、バランスウエイト24Wに起因してレバー前進時にレバー本体24が揺れて、クリップ装置27の標点取付位置が設定した標点上からずれ、標点間距離の精度が悪くなる。
【0037】
そこで、レバー前進時に、レバー本体24の揺れを防止する必要がある。従来は、回転支点の前後の上部2点を押圧してレバーの揺れを防止している。しかし、回転支点の回動抵抗を極力低減した軸機構にとっては、無用な押圧力は軸機構の耐久性を悪化させる一因となる。上記一実施形態の伸び計では、レバー本体24を上下クランプレバー62,64によって上下方向から挟持してレバー本体24の揺れを防止し、回転軸機構に不所望が荷重が作用しないようにし、もって、耐久性を向上させた。上記実施形態では回動軸23とレバー先端との間の位置でクランプしているので、回動軸23に作用する負荷をより低減できる。
【0038】
(3)ストッパ装置50をレバー前後進装置40と切り離す際、ストッパシリンダ51を収縮してストッパ板52aを縮退させる。この縮退運動に連動して、レバークランプ装置60によるレバークランプを解除するように構成した。その結果、上述したように、クランプ操作とアンクランプ操作を別途行う必要がなくなり、操作性が向上する上に、試験時間も短縮できる。反対に、試験機終了後にストッパ装置50を初期位置へ復帰させるべくストッパシリンダ51を伸長させる動作に連動して、上下クランプレバー62,64がレバー本体24を上下方向から挟持する。このため、次の試験に際してレバー装置20を前進させる際のレバー本体24の振動を確実に防止することができる。
【0039】
(4)上下レバー装置20U、20Lの先端クリップの間隔、すなわち標点距離の設定は、上下レバー装置20U,20Lを独立して昇降する昇降装置30により行うようにした。その結果、チャック端面からの伸び計クリップまでの距離の設定範囲が広がり、長さの異なる試験片に適応しやすくなるといった作用効果を奏することができる。
【0040】
以上説明した伸び計を以下のように変形することができる。
(1)上下一対のレバークランプ62,64を設け、試験開始時におけるストッパ装置50の退避運動に連動してレバークランプ62,64をアンクランプ操作するようにした。レバークランプ62,64のアンクランプ装置はストッパ装置50の動作に連動させる必要はない。
【0041】
(2)上記実施形態の伸び計では、前進用シリンダ41と後進用シリンダ42を別々に設けた。上下一対のレバークランプ62,64を設けた伸び計にあっては、前進用シリンダ41と後進用シリンダ42を一つのシリンダで兼用しても、回動軸23の軸受に対する負荷を低減できる。
【0042】
(3)上記実施形態の伸び計では、上下一対のレバークランプ62,64でレバー本体24の振動を抑制するようにした。前進用シリンダ41と後進用シリンダ42を別々に設けた伸び計にあっては、上下一対のレバークランプ62,64でレバー本体24の振動を抑制する構成は必須の構成ではない。
【0043】
(4)上下レバー装置20U,20Lを上下から挟持してクランプするようにしたが、回動軸23に負荷が働かないような構成であれば、左右から挟持してもよい。また、レバー先端と回動軸23との間にクランプ部材62,64を配置したが、回動軸23に負荷が働かないような構成であれば、回動軸23と検出器25との間でもよい。
(5)上下レバー装置20U,20Lを昇降装置30により独立に昇降するように構成したが、独立に昇降することは必須ではない。
【0044】
以上の実施形態は一例を示すものであり、本発明は実施形態に限定されず、本発明の特徴的な構成以外の構成は種々変形してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:基台 11:昇降台
20:レバー装置 20U:上レバー装置
20L:下レバー装置 22:スライドベース
24:レバー本体 25:検出器
26:リンク 27:クリップ装置
30:昇降装置 30U:上レバー昇降装置
30L:下レバー昇降装置 31:ステッピングモータ
32:ボールネジ 33:エンコーダ
40:前後進装置 41:前進用シリンダ
42:後進用シリンダ 50:レバーストッパ装置
50U:上レバーストッパ装置 50L:下レバーストッパ装置
51:ストッパシリンダ 52:ストッパ部材
52a:ストッパ板 53:ストッパボルト
60:クランプ装置 60U:上レバークランプ装置
60L:下レバークランプ装置 62:上レバークランプ
62a,62b:ローラ 64:下レバークランプ
64a:ローラ 65:スロープ台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の伸びに追従して回動軸周りに上下一対のレバー装置を開閉運動させて前記伸びを検出する伸び計において、
前記上下レバー装置のそれぞれを独立して試験片に接近する方向に移動させる上下レバー前進手段と、
前記上下レバー装置のそれぞれを独立して試験片から離れる方向に移動させる上下レバー後進手段と、
前記上下レバー装置の回動量をそれぞれ独立して検出する上下検出手段と、
前記試験片の伸びに追従する前記上下レバー装置の運動を前記上下レバー前進手段と上下レバー後進手段にそれぞれ伝達しないようにする非伝達手段とを備えることを特徴とする伸び計。
【請求項2】
請求項1の伸び計において、
前記非伝達手段は、
前記上下レバー前進手段を前記上下レバー装置のそれぞれと切り離す切り離し手段と、
前記上下レバー後進手段を前記上下レバー装置のそれぞれと係合状態および非係合状態のいずれかとする係合/非係合手段とを含むことを特徴とする伸び計。
【請求項3】
請求項2の伸び計において、
前記上下レバー前進手段は前進用シリンダを、前記上下レバー後進手段は後進用シリンダをそれぞれ含み、
前記伸び計は、前記前進用シリンダによる上下レバー装置の前進運動を所定位置で停止させる上下ストッパ手段をさらに有し、
切り離し手段は、前記上下ストッパ手段を前記前進用シリンダから切り離す切り離し用シリンダを含み、
前記係合/非係合手段は、前記上下ストッパ手段を前記前進用シリンダから切り離した状態で、前記後進用シリンダが前記上下レバー装置と非係合となるように構成したことを特徴とする伸び計。
【請求項4】
請求項2の伸び計において、
前記上下レバー装置の各レバー本体を挟持する一対の上レバークランプ部材と一対の下レバークランプ部材を別々に有し、
前記上下レバークランプ部材のそれぞれを、前記レバー本体の先端と前記回動軸との間に配置したことを特徴とする伸び計。
【請求項5】
請求項4の伸び計において、
前記レバー本体を上下から挟持するように前記上下レバークランプ部材を構成したことを特徴とする伸び計。
【請求項6】
請求項4または5の伸び計において、
前記切り離し手段の切り離し運動に連動して前記上下レバークランプ部材のそれぞれを開いて前記上下レバー本体の挟持を解放するように構成したことを特徴とする伸び計。
【請求項7】
上下一対のレバー装置により試験片の伸びを検出する伸び計において、
前記上下一対のレバー装置はそれぞれ、
先端が前記試験片の一の標点位置に取付けられ、前記試験片の伸びに追従して回動軸の周りに回動するレバー本体と、
前記レバー本体の回動量を検出するレバー検出器と、
前記レバー本体を一対のクランプ部材でクランプするレバークランプ装置と、
伸び計を試験片に着脱する際に前記レバー本体を前記試験片に対して前進、後進する前後進装置とを備えことを特徴とする伸び計。
【請求項8】
請求項7の伸び計において、
前記一対のクランプ部材を、前記レバー本体の先端と前記回動軸との間に配置したことを特徴とする伸び計。
【請求項9】
請求項8の伸び計において、
前記レバー本体を上下から挟持するように前記一対のクランプ部材を構成したことを特徴とする伸び計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−95063(P2011−95063A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248146(P2009−248146)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】