説明

伸縮性配線を有する導電部材

【課題】配線を有する導電部材であって、簡単なプロセスによって製造でき、折り曲げ可能であり、従来よりも大きく伸縮しても破断せずに導電性を保つことができる伸縮性がある導電部材を提供する。
【解決手段】(A)水性ポリウレタン分散液と導電粒子の導電性ペーストを乾燥させて形成されている配線、および(B)可撓性基板を有してなる導電部材;および(1)水性ポリウレタン分散液と導電粒子を混合して導電性ペーストを得る工程、および(2)導電性ペーストを伸縮性基板に塗布し、乾燥させる工程を特徴とする、伸縮性配線を有する導電部材の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性配線を有する導電部材およびその製法に関する。詳細には、可撓性基板の上に形成された、ポリウレタン分散液をバインダーとして導電粒子が結合されている伸縮性配線を有する導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの電子デバイスは、シリコーンやガラス基板などの上に電子部品を搭載していた。そのため、金属配線は電気抵抗や周波数特性が要求され、伸縮性・フレキシビリティといった特性は、フレキシブルケーブルなどごく限られた製品にしか要求されていなかった。しかしこの数年、有機半導体などの柔らかな電子デバイス技術やプラスチック基板を用いた連続的なロール・トゥー・ロールプロセスに注目が集まっており、その結果、伸縮性・フレキシビリティが金属配線に求められるようになってきた。伸縮可能なフレキシブル配線は、ウェアラブルコンピュータ、フレキシブルデバイスなどの電子デバイス分野のみならず、伸縮性が必要な人工筋肉や人工皮膚などメディカル材料分野においても重要な材料である。
【0003】
伸縮可能なフレキシブル配線は、蒸着やめっき、フォトレジスト処理などを行ってシリコーンゴム基板上に金属薄膜を作製することによって形成できる。しかし、金属薄膜は数%の伸縮性しか示さないため、ジグザグ状または連続馬蹄状、波状の金属薄膜、またはプレストレッチさせたシリコーンゴム基板上に皺状の金属薄膜を作製するなどしているが、いずれの材料も数十%伸長させると抵抗値が2桁以上増加するなど、安定した体積抵抗率と高い伸縮性の両立には至っていない。
安定した体積抵抗率と高い伸縮性を有する電気デバイスを提供するために、高いアスペクト比のカーボンナノチューブ(CNT)をポリマーと複合化させる方法(例えば、T. Sekitani, T. Someya: "Stretchable active-matrix organic light-emitting diode display using printable elastic conductors," Nature Materials, 8(6), 494-499, 2009(非特許文献1))などが提案されている。
【0004】
このように伸縮可能なフレキシブル配線の多くは、シリコーンゴムを基板とし、その上に伸縮性導電材料を貼り付けたシステムとなっている。シリコーンゴムは高耐熱性・高耐候性といった特徴を有するが、表面エネルギーが低く、異種材料との密着性が弱い。非特許文献1には、伸縮性配線を大きく伸長させると、導電性が失われる前に、導電体部分が基板から剥離するという課題が報告されている。
その解決策として、シリコーンゴムの表面改質による密着性の向上や、ポリマー系導電体部分の上にカバーコートを施して剥離を防止するなどを行っているが、そのプロセスが非常に煩雑になるという欠点がある。
また、他のバインダー樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂)を使用することも提案されている(例えば、特開平10−162647号公報(特許文献1))。
しかし、伸縮時の導電性については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−162647号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Sekitani, T. Someya: "Stretchable active-matrix organic light-emitting diode display using printable elastic conductors," Nature Materials, 8(6), 494-499, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、配線を有する導電部材であって、簡単なプロセスによって製造でき、折り曲げ可能であり、従来よりも大きく伸縮しても破断せずに導電性を保つことができる伸縮性がある導電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(A)ポリウレタン分散液と導電粒子の混合物を乾燥させて形成されている配線、および
(B)可撓性基板
を有してなる導電部材を提供する。
さらに、本発明は、ポリウレタン分散液と導電粒子を混合し、可撓性基板に塗布し、乾燥させることを特徴とする、導電部材の製造方法をも提供する。
加えて、本発明は、ポリウレタン分散液と導電粒子を混合して、乾燥することにより形成されている伸縮性配線をも提供する。
本発明において、配線は、一般に、伸縮性である。基板および導電性部材のそれぞれは伸縮性であることが好ましい。「伸縮性」とは、力を加えることにより、元の長さに対して、伸び率が、5%以上(元の長さに対して1.05倍以上)、例えば20%以上(元の長さに対して1.2倍以上)、好ましくは50%以上(元の長さに対して1.5倍以上)、より好ましくは100%以上(元の長さに対して2倍以上)、特に好ましくは300%以上(元の長さに対して4倍以上)で伸張可能であり、かつ力を除去すると元の長さに戻ることを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電部材は、簡単なプロセスによって製造できる。基板に配線を接着する接着剤を使用する必要なく、導電部材を製造できる。導電部材は、配線が外側または内側になる状態で湾曲可能であり、特に折り曲げ可能であり、伸縮性がある。導電部材は、折り曲げたとしても、または伸縮したとしても、充分な導電性を保つことができる。折曲または伸縮してさえも、配線が可撓性基板に密着した状態を保つ。本発明の導電部材は、従来の導電部材に比較して、大きな伸縮(例えば、伸び率300%以上、特に、伸び率500%)を行っても、破断せずに、導電性を保つことができる。
本発明においては、導電粒子として、長軸が3μm以下、アスペクト比が10〜200の範囲内の微細な長尺粒子が使用可能であるが、高価であるこのような微細な長尺粒子を使用せずとも、安価であるフレーク形状または粒形状の導電粒子を使用することによって、伸張時の良好な導電性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電部材は、導電粒子とポリウレタン分散液から形成される導電性ペーストを可撓性基板に塗布し、導電性ペーストの膜を乾燥させることによって、形成される。
【0011】
[ポリウレタン分散液]
本発明において、ポリウレタン分散液が乾燥して(分散媒体の水または有機溶媒の除去)、導電粒子を結合するバインダーとして働く。ポリウレタン分散液は、ポリウレタンが水に分散されている水性分散液またはポリウレタンが有機溶媒に分散されている油性分散液である。
ポリウレタン分散液は、一液型または二液型であってよく、特に、一液型である。一液型であることによって、導電粒子の含量を高くすることが可能になる。
ポリウレタンは、ポリイソシアネート、ポリオール、及び必要により鎖伸長剤を反応させた重合体である。
【0012】
本発明に用いるポリウレタン分散液は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを、必要に応じてジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、水中に安定に分散もしくは溶解させたものが好適に使用でき、従来公知のものを広く使用できる。またポリウレタンが水に分散されている水性分散液のほかに、従来公知の方法で製造できるポリウレタンが有機溶媒に分散または溶解されている油性分散液を使用することも可能である。
【0013】
水性ポリウレタン分散液を製造するために、ポリウレタン樹脂を水中に安定に分散もしくは溶解させる方法としては、例えば下記方法が利用できる。
(1)ポリウレタンポリマーの側鎖または末端にイオン性基(例えば、カルボキシル基等のアニオン性基又はアミノ性基等のカチオン性基)を導入し、該イオン性基の一部又は全部を中和することにより親水性を付与し自己乳化により水中に分散または溶解する方法(自己乳化型、イオン性)。
(2)ポリウレタン主原料のポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき親水性ポリオールを使用して水に可溶なポリウレタンとし、水中に分散又は溶解する方法(自己乳化型、ノニオン性)。
(3)外部乳化剤を用いて、ポリウレタン樹脂を水中に分散させる方法(強制乳化型)。
【0014】
イオン性基の量は、ポリウレタン1分子に対して、0.1〜20モル、例えば0.2〜10モルであってよい。イオン性基を中和するために、塩基、例えば、水酸化アルカリ金属(例示すれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、水酸化アルカリ土類金属(例示すれば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム)、アンモニア、アミン(例示すれば、トリエチルアミン)、酸、例えば、無機酸(例示すれば、塩酸、硫酸、硝酸)、有機酸(特に、炭素数1〜10のカルボン酸、例示すれば、酢酸)を使用できる。中和剤の量は、水性分散液100重量部に対して、0.1〜5重量部であってよい。一般に、中和剤の量は、イオン性基の5〜100重量%を中和する様な量であることが好ましい。
【0015】
ポリイソシアネートとしては、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2'−ジフェニルプロパン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシジフェニル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等のいわゆる変性ポリイソシアネートも使用できる。更に、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のような、いわゆるポリメリック体といわれるポリイソシアネートも使用できる。これらのポリイソシアネートは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
ポリオールの例は、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等である。ポリオールの分子量は、数平均分子量で300〜10000、好ましくは400〜5000、さらに好ましくは400〜2500であってよい。
【0017】
ポリエステルポリオールは、好ましくは400〜6000、より好ましくは600〜3000の数平均分子量を有する。ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは22〜400、より好ましくは50〜200、最も好ましくは80〜160mgKOH/gである。ポリエステルポリオールは1.5〜6、より好ましくは1.8〜3,特に好ましくは2の数平均OH官能価を有する。
ポリエステルポリオールとしては、ジオール及び所望によりポリ(トリ、テトラ)オール、並びにジカルボン酸及び所望により(トリ、テトラ)カルボン酸又はポリエステルを製造するための低級アルコールとの対応するポリカルボン酸のエステルを使用することもできる。
【0018】
適当なジオールの例には、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、プロパンジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサンー1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール又はヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルが包含され、最後の3つの化合物が好ましい。場合により共に使用されるポリオールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを挙げることができる。
適当なジカルボン酸にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、及び2,2−ジメチルコハク酸、が包含される。これら酸の無水物も、存在するなら使用することができる。本発明にとっては、無水物も「酸」に包含される。モノカルボン酸、例えば安息香酸及びヘキサンカルボン酸も、ポリオールの平均官能価が2より大きいなら、使用することができる。
【0019】
適当なポリカーボネートポリオールの例は、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートなどの炭酸エステルを原料に用いる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどがある。またジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n−ブチルカーボネートなどが、ジアルキレンカーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどがある。そのなかでも、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを用いるのが好ましい。
【0020】
適当なポリエーテルポリオールの例は、反応性水素原子を含有する出発化合物を、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド;プロピレンオキシド;ブチレンオキシド;スチレンオキシド;テトラヒドロフランまたはエピクロロヒドリンと、あるいはこれらのアルキレンオキシドの混合物と反応させることによって、既知の方法で得られる。
【0021】
ポリオールの量は、これに限定されるものではないが、合成されるポリウレタン樹脂中の20〜70重量%、例えば30〜60重量%であってよい。
【0022】
鎖伸長剤を必要に応じて使用する。鎖伸長剤は、ジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である。鎖延長剤の具体例は、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミンおよびピペラジン、アルキレンオキシドジアミンのようなアルキレンジアミン類である。
【0023】
アルキレンオキシドジアミンとしては、
ジプロピルアミンプロピレングリコール、ジプロピルアミンジプロピレングリコール、ジプロピルアミントリプロピレングリコール、ジプロピルアミンポリ(プロピレングリコール)、ジプロピルアミンエチレングリコール、ジプロピルアミンポリ(エチレングリコール)、ジプロピルアミン1,3-プロパンジオール、ジプロピルアミン2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピルアミン1,4-ブタンジオール、ジプロピルアミン1,3-ブタンジオール、ジプロピルアミン1,6-ヘキサンジオールおよびジプロピルアミンシクロヘキサン-1,4-ジメタノールが挙げられる。
【0024】
また2つのイソシアネート反応性基およびイオン性基またはイオン性基を形成し得る基を含有する化合物も鎖伸長剤として用いることができる。イオン性または潜在的イオン性基は、第三級または第四級アンモニウム基、そのような基に変換可能な基、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基およびスルホネート基からなる群から選択され得る。
適当な化合物としては、ジアミノスルホネート、例えばN-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩またはN-(2-アミノエチル)-2-アミノプロピオン酸のナトリウム塩などが挙げられる。また、これら列挙した鎖伸長剤の混合物も使用できる。
【0025】
鎖伸長剤の量は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂中の0.1〜20重量%、例えば0.5〜15重量%であってよい。
【0026】
水性ポリウレタン分散液は、ポリウレタン樹脂に加えて、媒体として水を含有するが、さらにイソシアネート反応基を含有しない有機溶媒、例えば、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン等を含有してもよい。有機溶媒の量は特に限定されるものではないが、ポリウレタン分散液中の水100重量部に対して10〜100重量部であってよい。
【0027】
油性ポリウレタン分散液を製造するために、ポリウレタン樹脂を有機溶媒中に安定に分散させる方法としては、例えば下記方法が利用できる。すなわち、有機溶媒に可溶性の、多価イソシアネート及び多価アルコールを重付加させて得られるウレタン樹脂を含有する前記有機溶媒中で、重合体が前記有機溶媒に不溶性となるビニルモノマーと共に反応させることにより、重合されたポリウレタン樹脂が前記有機溶媒中に分散して成るポリウレタン樹脂分散液を得る方法。
ここで有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタンのような脂肪族炭化水素系溶媒類、シクロヘキサンのような脂環式飽和炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶媒、エチルアルコール、ブチルアルコールの如きアルコール系溶媒及び酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル系溶媒等が使用できる。
【0028】
多価イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが使用できる。
多価アルコールとしては、例えば、アルキレングリコール、単環式及び多環式の多価アルコールを用いることができ、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール及び/又はそのアルキル基、アラルキル基又はアルコキシ基等で置換された誘導体等を使用できる。
【0029】
ビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸又はイタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロ無水フタル酸及びこれらの多塩基酸のモノアルキルエステル、(メタ)アクリロキシエチルホスフェート、p−スルホスチレン、スルホエチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸の2−クロロエチルエステル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルエステル、2,3−ジブロモプロピルエステルの如きカルボキシル基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマー、スルホ基含有ビニルモノマー、ハロゲン原子含有ビニルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基含有ビニルモノマー等が使用できる。
【0030】
水性ポリウレタン分散液および油性ポリウレタン分散液において、ポリウレタン樹脂の量は、約10〜70重量%、特に約30〜50重量%であってよい。
【0031】
水性ポリウレタン分散液および油性ポリウレタン分散液中のポリウレタン樹脂粒子の体積平均粒子径は、好ましくは10〜1000nm、さらに好ましくは50〜500nmである。平均粒子径の測定は、レーザー散乱式粒度分布測定装置(HPPSレーザースペクトロメーター : Malvern Instruments社製)により測定できる。
【0032】
本発明において、ポリウレタン分散液は水性ポリウレタン分散液であることが好ましい。本発明に使用できる水性ポリウレタン分散液としては、例えば、固体を基にして30〜60重量%の固体含量を有するものが利用できるが、好ましくは、必要に応じて分散液中に存在する添加剤を考慮することなく、(1)ポリエステルウレタン、(2)水及び必要に応じた溶媒を基にする水性ポリエステルポリウレタン分散液である。水性ポリエステルポリウレタン分散液は、30〜5000mPa.sの23℃での粘度及び6〜9のpHを有し、分散液中に存在するポリエステルポリウレタンは、1500〜100,000、好ましくは2000〜45,000の重量平均分子量(Mw 、標準としてポリスチレンを使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定して)を有する。
しかしながら、本発明に使用できる水性ポリウレタン分散液は、上記の水性ポリエステルポリウレタン分散液に限られるものではなく、例えば、水性ポリエーテルポリウレタン分散液や水性ポリカーボネートポリウレタン分散液、水性ポリウレア分散液なども使用できる。
【0033】
また、これらの水性分散液においては、付加的にスルホン酸基又はスルホネート基、カルボキシル基などを1分子当たり0.5〜2モル含む二官能性ポリオール成分を介してポリマー主鎖中へ導入されるイオン性基を有する、いわゆるアニオン性分散液やアンモニウムイオン性基を有するカチオン性、イオン性基を持たないノニオン性のものなどが使用できる。
【0034】
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、またはこれらの変性体であることが好ましい。ポリオールは、ポリエステルポリオールであることが好ましい。本発明のポリウレタン分散液から形成された(通常、乾燥により得られる)エラストマー(バインダー)は、変色しにくく、かつ伸び率300%以上(元の長さに対して4倍以上)、特に500%(元の長さに対して6倍)で伸張可能である。導電粒子を含有するエラストマーも、導電粒子を含有しないエラストマーと同様な伸び率で伸張可能である。
【0035】
[導電粒子]
導電粒子は、従来から導電性付与剤として用いられているどのようなものであってもよい。導電粒子の例は、ケッチェンブラックやバルカン等のファーネスブラック、アセチレンブラック,サーマルブラック,チャンネルブラック等のカーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズ、カーボンファイバ等の気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ,カーボンナノファイバ等のカーボン系微粒子等があげられる。また、Ag,Cu,Sn、Pb、Ni、Li、Bi、Inそれらの合金等の金属微粉末、ZnO,SnO,In、CuI、TiO/SnO・Sbドープ等の金属酸化物微粉末、Al等の金属フレーク、Al,Ni,ステンレス等の金属繊維、金属表面コーティングガラスビーズ、金属メッキカーボン等があげられる。これらは、単独で用いても2種以上をブレンドして用いてもよい。
導電粒子の形状は、球状、針状(楕円球状)、フレーク(鱗片)状、不定形状等、特に限定はされない。
【0036】
導電粒子の大きさは、平均粒径約0.1〜10μm、例えば、0.5〜5μmであってよい。導電粒子の形状が粒状のものである場合、平均粒子径が0.5〜5μmであることが好適である。導電粒子の形状が細長いものである場合(カーボンファイバや金属フレークの場合)、その長軸が3μm以下、アスペクト比が10〜200の範囲内の微細な長尺粒子(例えば、ナノチューブおよびナノロッド)が好適である。フレークは、平均粒径1〜10μm、厚さ100〜500nmであってよい。
導電粒子(例えば、金属微粉末)は粒子同士が密着するのを防ぐために高級脂肪酸や天然高分子化合物などの分散剤でコーティングされていてもよい。
導電粒子の量は、導電粒子とポリウレタン(固形分)の合計100重量部に対して、70〜99重量部、例えば80〜97重量部、特に85〜95重量部であってよい。
【0037】
[他の添加剤]
導電粒子と水性ポリウレタン分散液から形成される導電性ペーストは、導電粒子と水性ポリウレタン分散液以外の添加剤を含んでいてもよく、あるいは含んでいなくてもよい。
そのような添加剤には、有機導電材、液状導電材、分散剤、着色剤などが挙げられる。
添加剤の量は、導電粒子とポリウレタン(固形分)の合計100重量部に対して、例えば50重量部以下、特に0.1〜30重量部であってよい。
【0038】
[可撓性基板]
可撓性基板の例としては、紙、布(例えば、綿布、ポリエステル布)、樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリイミド、エラストマー(例えば、伸縮性ポリウレタン)が挙げられる。
可撓性基板は、伸縮可能な材料、特にエラストマーであることが好ましい。可撓性基板は、伸縮性ポリウレタン基板(一般に、エラストマー)であることが好ましい。
【0039】
可撓性基板は、折り曲げ可能であり、面方向に(一軸でまたは二軸で)、伸張可能であることが好ましい。
可撓性基板の形状および寸法(面積および厚さ)は特に限定されない。形状は、四角形、丸などである。寸法は、面積1mm〜300cm、厚さ0.1mm〜1cmであってよい。
【0040】
伸縮性ポリウレタン基板は、組成にこだわることなく、一般に伸び率5%以上を有するウレタンエラストマー材料であれば使用することができる。伸縮性ポリウレタン基板は、好ましくは50%以上、特に200%以上の伸び率を有することが望ましい。
伸縮性ポリウレタン基板におけるポリウレタンを構成する物質は、水性ポリウレタン分散液について説明した物質も使用することができる。伸縮性ポリウレタン基板は、ポリイソシアネート、ポリオール、及び必要により鎖伸長剤を反応させた重合体である。ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、またはこれらの変性体であってよい。ポリオールは、ポリエステルポリオールであってよい。
【0041】
本発明の導電部材は、
(1)水性ポリウレタン分散液と導電粒子を混合して導電性ペーストを得る工程、
(2)導電性ペーストを可撓性基板に塗布し、乾燥させる工程
を特徴とする方法によって製造できる。
導電粒子と水性ポリウレタン分散液からなる導電性ペーストを可撓性基板に塗布し、導電性ペーストの膜を乾燥させることによって、導電性ペーストから形成された伸縮性配線が形成される。
【0042】
基板(伸縮性基板)を伸張した状態で、導電性ペーストを塗布してもよい(伸張配線)。伸張は、一軸方向であっても、(直交する)二軸方向であってもよい。伸張の程度は、元の長さ(非伸張時の長さ)に対して、例えば、5〜500%、特に10%〜300%であってよい。
【0043】
通常配線では、再伸縮させたときの導電性低下が大きいが、伸張配線では、導電性粒子の重なり度合いを大きくすることで、配線を再伸縮させたときの導電性低下を抑えることができる。伸張させて導電性ペーストを塗布した後、導電性ペーストを乾燥させる。これにより、導電性部材を大きく伸張可能であり、伸張状態でも導電性の低下が少ない。例えば、基板を一軸方向に少なくとも2倍(例えば2倍または3倍)に伸張した状態で導電性ペーストを塗布してよい。
【0044】
導電性ペーストを基板上に塗布する工程は、基板表面に本発明の導電性ペーストを塗布することが可能であれば特に限定されない。例えば、印刷法、コーティング法等により行ってもよい。前記印刷法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ−ジ印刷、シルクスクリ−ン印刷、噴霧、刷毛塗り等が挙げられる。塗布された導電性ペーストの厚さは、例えば、0.01〜1000μmである。
【0045】
塗布された基板を加熱する工程は、不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気などの非酸化性雰囲気下、大気下、真空雰囲気下、酸素もしくは混合ガス雰囲気下、気流中などの雰囲気下等で行ってもよい。加熱温度は、20℃〜100℃であってよく、加熱時間は0.1〜50時間、例えば0.2〜5時間であってよい。
加熱して得られた配線の厚さおよび幅は限定されない。配線の厚さは、例えば、0.01〜1000μm、特に、0.05〜400μmであってよい。配線の幅は、0.01〜10mmであってよい。
加熱により、水性ポリウレタン分散液が、水を含まないポリウレタンエラストマーとなり、導電粒子を結合するバインダーとして働く伸縮性配線が形成される。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
以下の実施例においては、すべてのパーセントは、特記しない限り、重量によるパーセントである。
【0047】
実施例1
平均粒径2〜3μmのフレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業(株)製 AgC-239)とバインダーを真空下2000rpmで3分間攪拌し(THINKY社製ARV-310)、導電性ペーストを作製した。その際の混合比率は、銀粒子91wt%とバインダー(含水状態)9wt%とした。
バインダーには、水性ポリウレタン分散液であるディスパコールU42(自己乳化型アニオン性、脂肪族イソシアネート/ポリエステルポリオール、ポリウレタン固形分50wt%、粘度約500mPa・s/23℃、pH約7、Mw約20,000、平均粒子径約200nm、バイエルマテリアルサイエンスAG社製)を使用した。
【0048】
導電性ペーストの基板へのスクリーン印刷を行った。印刷後、70℃で3時間乾燥し、幅3mm、長さ20mm、厚さ0.36mmの配線を作製した。基板としてポリウレタン(寸法:15mm x60mm x 厚さ1mm)を用いた。体積抵抗率は、4端子プローブ(三菱化学社製Loresta-GP MCP-T610、ASP端子)を用いて測定した。
ポリウレタン基板は、ディスパコールU42(バイエルマテリアルサイエンスAG社製)を用いて基板とした。
伸縮性ポリウレタン基板を用いて得られた導電部材を、一軸方向(配線に平行な方向)に20%、40%、60%、80%または600%まで伸張した。伸張した状態で体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
バインダーと基板として、ポリクロロプレン(バイエルマテリアルサイエンスAG社製ポリクロロプレン水懸濁液、ディスパコールC74、ポリクロロプレン固形分58wt%)を用いる以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
ポリクロロプレン配線が60%程度の伸張に限界があるのに対して、ポリウレタン配線では600%まで伸張可能であり、導電性も確保できていた。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2(2倍伸張配線による方法)
以下の工程によりサンプルの作成を行った。
(i) ポリウレタン基板(15X60mm) を2倍の長さに伸張した。テープでポリウレタン基板を固定した。
(ii)導電性ペースト作成の混合比率を、銀粒子83.1wt%とバインダー(含水状態)16.9wt%とする以外は実施例1と同様の操作を行い、ポリウレタン基板の上に、幅3mmのサイズに塗布した(長さ50mmおよび厚さ0.18mm)。
(iii) サンプルを伸張させたまま1時間維持し、導電性ペーストを風乾させた。
(iv) その後サンプルの伸張を解き、ポリウレタン基板の長さを回復させた。5分ほどで50mm長に塗布した導電性ペーストが30mm(これを初期長さとする)まで回復した。
(v) このサンプルを70℃で1時間乾燥した。
(vi) 初期長さ30mmで、伸張とリリースを繰り返し、体積抵抗率を測定した。
伸張とリリースの操作と測定は、次のように行った。
【0052】
操作番号
1. 初期抵抗測定(伸び0%)
2. 2倍長さ(伸び100%)に伸張、抵抗測定
3. 伸張を解いた状態で1時間放置し、長さ回復後(伸び0%)、抵抗測定
4. 3倍長さ(伸び200%)に伸張、抵抗測定
5. 伸張を解いた状態で1時間放置し、長さ回復後(伸び0%)、抵抗測定
結果(2倍配線)を表2に示す。
【0053】
実施例3(通常配線)
実施例2において、工程(i)、(iii)および(iv)を省く(すなわち、基板を伸張せずに導電性ペーストを塗布する)以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。
結果(通常配線)を表2に示す。
通常配線では、再伸縮(操作番号4)させた際に体積抵抗率(Ωcm)が大きく増加しているのに比較して、2倍配線による方法では、その増加率はより小さいことが分かる。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例4
基板として紙、コットン布、ポリイミド(PI)、PET、塩化ビニル(PVC)(全ての寸法: 15mm x60mm x 厚さ50μm)を用い、実施例1で作成した導電性ペーストを使って、実施例1と同様な方法により配線を印刷した。
配線が外側になるように、かつ配線方向に対して垂直に曲げを形成するように、導電部材の折り曲げ試験を行った。折り曲げ前と180度で折り曲げ中の抵抗値を2端子法によって、デジタルマルチメータ(アジレント・テクノロジー社製 Agilent 34410A)を用いて測定した。折り曲げ前後の抵抗変化比率として計算した結果を表3に示す。比較例2として配線のバインダーとしてクロロプレンを用いた結果も示す。
ポリウレタン配線ではクロロプレン配線に比べ、どの基板種類を用いても、折り曲げ前後の抵抗変化比率は小さいことが分かる。
【0056】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の導電性部材は、軟質かつ伸縮性であり、種々の電子デバイス、例えば、センサー(特に医療用センサーおよびロボット用センサー)、ディスプレー、人工筋肉やコンピューターの部品として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリウレタン分散液と導電粒子の導電性ペーストを乾燥させて形成されている配線、および
(B)可撓性基板
を有してなる導電部材。
【請求項2】
ポリウレタン分散液は、ポリウレタンが水に分散されている水性分散液またはポリウレタンが有機溶媒に分散されている油性分散液である請求項1に記載の導電部材。
【請求項3】
ポリウレタン分散液が一液型である請求項1または2に記載の導電部材。
【請求項4】
水性ポリウレタン分散液がポリエステルポリオールと脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートからなる自己乳化型のアニオン性ポリウレタンを水に分散させたものである請求項2に記載の導電部材。
【請求項5】
導電粒子が金属粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の導電部材。
【請求項6】
金属粒子が銀粒子である請求項5に記載の導電部材。
【請求項7】
可撓性基板(B)が、紙、布、樹脂、またはエラストマーである請求項1〜6のいずれかに記載の導電部材。
【請求項8】
可撓性基板(B)が、伸縮性を有する基板である請求項1〜7のいずれかに記載の導電部材。
【請求項9】
可撓性基板(B)が、伸縮性ポリウレタン基板である請求項1〜7のいずれかに記載の導電部材。
【請求項10】
伸縮性ポリウレタン基板がポリエステルポリオールと脂肪族ジイソシアネートからなる自己乳化型のアニオン性ポリウレタンを水分散させた水性分散液から得られたものである請求項1に記載の導電部材。
【請求項11】
配線(A)が伸縮性である請求項1〜10のいずれかに記載の導電部材。
【請求項12】
(1)水性ポリウレタン分散液と導電粒子を混合して導電性ペーストを得る工程、および
(2)導電性ペーストを伸縮性基板に塗布し、乾燥させる工程
を特徴とする、伸縮性配線を有する導電部材の製法。
【請求項13】
伸縮性基板を伸張させた状態で塗布を行う請求項12に記載の製法。
【請求項14】
水性ポリウレタン分散液と導電粒子を混合して、乾燥することにより形成されている伸縮性配線。

【公開番号】特開2012−54192(P2012−54192A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197771(P2010−197771)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(510238904)バイエル マテリアルサイエンス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】