説明

位置検出システム

【課題】移動体側のアンテナが,複数の無線タグと通信しうる距離関係になった場合にも,上記移動体と無線タグとの相対位置を検知出来るようにした位置検出システムを提供すること。
【解決手段】前記複数の無線タグに対して相対的に移動する移動体に搭載され,各無線タグから発信された前記固有の識別情報を含む電波信号を受信する複数のアンテナを備えており,前記通信手段から上記電波信号発信手段への前記通信要求を含む電波信号の送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出し,検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出する位置検出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,移動体に搭載されたアンテナによって,一定方向に等間隔で設置された無線タグ等の電波信号発信手段から発信される位置情報の信号を受信し,電波信号発信手段と移動体との相対位置を検出するための位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線タグ等のようにその識別情報を無線送信する複数の電波信号発信手段が一定方向に等間隔で並べられていることによって,この電波信号発信手段からの信号電波をアンテナによって受信して移動体の現在位置を検出する位置検出システムが知られている。この場合,上記通信手段は,複数の電波信号発信手段のうち,移動体に設けられたアンテナに接近している取り付け位置が既知である電波信号発信手段から発信された電波信号を受信する。アンテナに接続された位置検出手段は,該電波信号により伝送された識別情報からアンテナに最接近している電波信号発信手段を特定し,アンテナの位置,即ち移動体の現在位置を検出する(例えば,特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−249566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような位置検出システムによれば,アンテナから各電波信号発信手段に向けて送信する電波信号の出力を増大させることによって,各電波信号発信手段から移動体が離れた場合にも該移動体の位置検出が可能となり,また,上記取り付け位置が既知である電波信号発信手段を適切な位置に多数設けることによって,移動体がどこにいても自己の位置を知ることが出来る位置検出システムを提供することが出来る。
【0004】
しかしながら,上記のような取り付け位置が既知である電波信号発信手段を設けてそれを基準に移動体の位置を検出する上記従来のシステムでは,基準となる取り付け位置が既知である電波信号発信手段を多数設けなければならないので費用が掛り,事実上,それほど大きい領域をカバーする位置検出システムを提供することが出来ない。
【0005】
ところで,各電波信号発信手段が受ける電波信号の強度は,各移動体に設けられたアンテナからの送信電力に依存し,また,概ね,通信手段のアンテナから各電波信号発信手段までの距離の2乗に反比例する。
【0006】
即ち,図1のグラフに模式的に示すように,3個のアンテナの送信電力をA,B,Cとしたときに距離の2乗に反比例して到達電力が変化するので,最小動作電力になる距離が最大検出距離であり,送信電力に対応してra,rb,rcとなる。
実際の電波信号発信手段の位置測定は,この最大検出距離とその時の最小作動電力との関係を利用して行い,最小動作電力を測定することで,その時のアンテナと電波信号発信手段との距離を検出する。
しかし,各電波信号発信手段が具備するICチップ特性のバラツキや,各電波信号発信手段の構造(アンテナ形状やアンテナとチップの接合状態等)のバラツキ等により各電波信号発信手段の感度が異なるために,最小動作電力がより大きいもの(感度X)とより小さいもの(感度Y)とがあるとすると,それぞれの最大検出距離は,同じ送信電力AであってもraX,raYと異なってしまい,移動体側のアンテナが同じ電力で送信していても,電波信号発信手段により最大検出距離が異なるので,アンテナと電波信号発信手段との相対位置を確認することが困難である。
【0007】
一方,上記のように電波信号発信手段の受信感度におけるバラツキとは別に,配置された複数の電波信号発信手段に沿ってアンテナを移動させ,電波信号発信手段との通信状態から電波信号発信手段の位置を観測する場合,上記アンテナに複数の電波信号発信手段からの信号が同時に到達してしまうため,アンテナで観測された電波がどの電波信号発信手段から発信されたものかの弁別が出来ず,電波信号発信手段の位置測定が正確に出来ない問題が生じる。
無線タグのような電波信号発信手段を一定距離を置いて直線的に配置し,アンテナを備えた移動体が上記一列に並べられた電波信号発信手段に沿って移動して,検出される電波信号発信手段により両者の相対位置を検出する場合を模式図として示したのが図2である。
移動体が矢印方向に移動した場合,検出領域も移動し,次々と異なる電波信号発信手段(図ではタグと表示する)を検出する。
図の(a),(b),(c)は,アンテナ側の検出領域の大きさが変化した場合を示している。
(a)は,検出領域の大きさが,電波信号発信手段の間隔より大きい場合で,同時に複数の電波信号発信手段が検出されるために,電波信号発信手段とアンテナとの対応関係が曖昧となり,相対的な位置関係を正確に測定することが出来ない。
(b)は,検出領域が電波信号発信手段の間隔と同じ大きさの場合である。この場合には,境界点を除き,同時に1個の電波信号発信手段しか検出しないので,電波信号発信手段とアンテナとの相対位置を測定するには適しているが,境界点において2つの電波信号発信手段を同時に検出してしまうので,その場合に特殊な処理を必要とする問題がある。
さらに(c)は,検出領域の大きさが電波信号発信手段の間隔より狭いので,複数の電波信号発信手段を同時に検出することはないが,1個も検出しない状況も生じるため,位置検出の手段としては適していない。
【0008】
即ち,通信手段から発信する電波信号の出力を減少させることによって,同時に起動される電波信号発信手段の数を減らすことができるが,通信手段から発信された電波信号が何れの電波信号発信手段にも受信されず,何れの電波信号発信手段から電波信号が発信され状態が生じる可能性があるために,位置検出手段に何れの無線タグの識別情報も受信されず,このために移動体の位置の検出ができない場合が生じて実用的でない。
【0009】
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,移動体側のアンテナが,複数の電波信号発信手段と通信しうる距離関係になった場合にも,複数の電波信号発信手段との混信を生じることがないように配慮されることで,電波信号発信手段と移動体との相対位置検出を誤りなく行ないうると共に,簡単な手段で正確に相対位置を検出することの出来る位置検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は,
一定の間隔で設けられた複数の電波信号発信手段と,
前記複数の電波信号発信手段に対して相対的に移動する移動体に搭載され,所定の電波信号を受信可能な複数のアンテナを備えた通信手段と,
を具備する位置検出システムであって,
前記電波信号発信手段は,前記通信手段のアンテナから送信された通信要求に応じて各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号を発信するものであり,前記通信手段のアンテナが受信する上記所定の電波信号は,前記各電波信号発信手段から発信された各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号である位置検出システムにおいて,
前記通信手段から上記電波信号発信手段への前記通信要求を含む電波信号の送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出する限界送信電力検出手段と,
前記限界送信電力検出手段により検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出する位置検出手段と,
を備えてなることを特徴とする位置検出システムである。
【0011】
上記本発明の位置検出システムによれば,常に1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出するものであるので,上記1つの電波信号発信手段とアンテナとの位置関係だけを演算することが出来,複数の電波信号発信手段がもつ感度のバラツキなどに影響を受けずに位置を正確に算定できる。
また,前記通信手段上の上記電波信号発信手段への送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出し,検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するものであるから,各アンテナの出力のバラツキなどに影響されることなく,電波信号発信手段との間の相対位置を正確に検出することが出来る。
【0012】
具体的な構成においては,前記位置検出手段が,前記複数のアンテナからの送信電力を同じにしながら順次減少させ,いずれか,あるいは複数の前記アンテナで前記電波信号発信手段との間の通信を検出することが出来なくなった時点における各限界の送信電力の比率から,前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するものが提案される。
このような手法によって確実に上記相対位置が取得される。
【0013】
対象を1つの電波信号発信手段に絞って制御する方法として,電波信号発信手段間の間隔とアンテナ間の間隔をほぼ等しく設定すると共に,前記限界送信電力検出手段が,移動体に設けられた複数のアンテナを切換えながら各限界の送信電力を測定するものが考えられる。
また別の方法としては,前記限界送信電力検出手段が,前記電波信号発信手段ごとに定められた固有の識別情報を確認すると共に,前記通信手段上の上記電波信号発信手段への送信電力を変化させるものが提案される。
【0014】
更に,前記移動体を2次元的に移動させることで,電波信号発信手段の位置を2次元的に検出するものであれば,本発明を2次元位置の検出にも応用出来る。
【0015】
前記電波信号発信手段の適用例として,パッシブ型の無線タグが考えられる。
また必ずしもパッシブ型でなくても,通信手段のアンテナから送信された通信要求に応じて各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号を発信するものであり,前記通信手段のアンテナが受信する上記所定の電波信号は,前記各電波信号発信手段から発信された各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号である無線タグであればよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の位置検出システムによれば,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出するものであるので,上記1つの電波信号発信手段とアンテナとの位置関係だけを演算することが出来,複数の電波信号発信手段がもつ感度のバラツキなどに影響を受けずに位置を正確に算定できる。
【0017】
また,前記通信手段上の上記電波信号発信手段への送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出し,検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するものであるから,各アンテナの出力のバラツキなどに影響されることなく,電波信号発信手段との間の相対位置を正確に検出することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は,電波信号発信手段の受信電力と,電波信号発信手段と移動体のアンテナとの距離との関係を示すグラフ,図2は,移動する移動体の検出領域と電波信号発信手段の位置との関係を示す図,図3は,本発明の一実施形態に係るシステムの原理を説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図,図4は,本発明の一実施形態に係るシステムの動作説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図,図5は,本発明の一実施形態に係るシステムの動作説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図,図6は,本発明の一実施形態に係るシステムを2次元平面における位置検出装置に適用した場合のアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図である。
【0019】
本発明に係る以下の実施形態の位置検出システムは,基本的に,固有の識別情報を含む電波信号を発信する複数の電波信号発信手段が一定の間隔で設けられ,この電波信号発信手段に対して相対的に移動する移動体に,各前記電波信号発信手段から発信された前記固有の識別情報を含む電波信号を受信可能な複数のアンテナを備えた通信手段が設けられてなる位置検出システムに関するものであり,前記通信手段から上記電波信号発信手段への送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出し,検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するものである。
以下,この実施形態に係る位置検出原理を詳しく説明する。
【0020】
この実施形態にかかる位置検出システムは,図3のように固有の識別情報を含む電波信号を発信する複数の電波信号発信手段(■で示す)が一定の間隔で設けられ,この電波信号発信手段に対して相対的に移動する移動体(不図示)に,各前記電波信号発信手段から発信された前記固有の識別情報を含む電波信号を受信可能な複数のアンテナ(アンテナ1,アンテナ2)を備えた通信手段が設けられてなる位置検出システムである。
上記のように移動体に設けられた通信手段から上記電波信号発信手段への送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出する。このような限界の送信電力を検出するのが限界送信電力検出手段の一例である。
そのためには,同一の電波信号発信手段と,移動体に設けられた複数のアンテナとの間で通信する必要がある。この場合,前記したように,各々のアンテナから電波信号発信手段までの距離が異なれば,検出の状態,特にアンテナから電波信号発信手段に届く送信電力が変化する。
この距離の相違によって変化する「アンテナから電波信号発信手段に届く送信電力」を計測するために,上記送信電力を電波信号発信手段が検出している状態で徐々に送信電力を低下させ,各アンテナが電波信号発信手段を検出できる限界までそれぞれ下げる。この時の移動体側で測定される送信電力を限界送信電力PWn(nはアンテナの番号)と呼ぶことにする。
この限界の状態では,各アンテナが同じ1つの電波信号発信手段に通信要求などの電波信号を送信しているのであれば,各アンテナの限界上体でタグに到達している電力は同じのはずである。この電波信号発信手段に到達している限界電力を最小動作電力PWminと呼ぶことにする。
一方,電波信号発信手段に到達する電力は距離の2乗に反比例するので,複数のアンテナの限界送信電力PWn(PW1,PW2,PW3,…),各アンテナから上記1つの電波信号発信手段までの距離Ln(L1,L2,L3,…),電波信号発信手段の最小動作電力PWminの間には,以下の関係が成り立つ。
PW1/(L12)=PW2/(L22)=PW3/(L32)=…=PWmin
これより,
L1=√(PW1/PWmin),L2=√(PW2/PWmin),L3=√(PW3/PWmin)… (1)
が成り立つ。
【0021】
PWminは,同一の電波信号発信手段に送信している状態では一定であり,(1)式の各項に共通に含まれ,またPW1,PW2,PW3,…は,それぞれ検出される値であるので,上記(1)式からL1,L2,L3,…の比率が求まる。
移動体に設けられているアンテナ間の距離は既知であるので,1つの電波信号発信手段についての各アンテナの上記限界送信電力PWn(PW1,PW2,PW3,…)を検出すれば,上記L1,L2,L3,…の比率が求まり,アンテナ間の距離は既知であるので,それによって既知のアンテナ間距離を上記L1,L2,L3,…の比率で按分することで,アンテナ−電波信号発信手段間の距離が分かる。
このように検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するのが,本発明における位置検出手段の一例である。
【0022】
簡略化された手法として,次のようなものでも一応の目的は達成される。
2台のアンテナを備えた移動体を想定する。2台のアンテナの並びの方向と,電波信号発信手段の並びの方向が一致している図3のような状態では,アンテナ1とアンテナ2の間隔Pを√(PW1/PWmin):√(PW2/PWmin)の比に按分することで,アンテナ1及び2と,その間にある電波信号発信手段との距離(電波信号発信手段の並びに沿った方向の距離)L1及びL2を算出することが出来る。
【0023】
上の(1)式が成立するためには,前提として1つの電波信号発信手段に対して複数のアンテナが電波を送信することが必要である。即ち,複数の電波信号発信手段が存在する状態では,アンテナは,隣接する電波信号発信手段との間でも通信が同時に成立してしまい,正確に距離を計測することが出来ない。
上記のように,位置が検出できないという事態を回避するためには,電波信号発信手段間隔がアンテナの検出領域の大きさ以下の必要がある(電波信号発信手段間隔≦検出領域:条件1)。電波信号発信手段間隔≦検出領域 であれば,2個電波信号発信手段が同時に検出される場合が生じる。2個の電波信号発信手段が同時に検出される領域の大きさは,(検出領域−電波信号発信手段間隔)であるので,これを小さくするには検出領域を小さくする必要があるが,上記の条件1の制約から,
電波信号発信手段間隔=検出領域
が限界となる。この場合,2個の電波信号発信手段の真ん中でのみ電波信号発信手段が2個検出される。しかしその場合,そこへ移動するまでは他の電波信号発信手段を検出していたはずで,その経過からどの電波信号発信手段の場所からどの電波信号発信手段の場所へ移動体が移動したかは分かるので,移動体の移動軌跡が分からなくなること,つまり迷子になることはない。
即ち,同時に2個検出された時点まではその1個前のタグ(1,2とあって1→1&2→2,ならば,1&2は1とする),あるいは次のタグ(1,2とあって1→1&2→2,ならば,1&2は2とする)と定義すればよく(四捨五入の切り上げをどこからするかと類似),2個検出される領域は非常に限定されるので問題はない。
【0024】
この原理にならってこの実施形態では,2台のアンテナの間隔を,図3に示すように,電波信号発信手段の間隔に等しくする。
前記したように,あまり離しては同一の電波信号発信手段を検出できない。また,電波信号発信手段の間隔より狭いといずれのアンテナも電波信号発信手段と通信できない状態が生じて,検出不可能になる。
このような不都合を回避するために,2台のアンテナの間隔は,図3に示すように,電波信号発信手段の間隔に等しくする。
この場合,例外的に,同時に2つの電波信号発信手段からの電波を検出してしまうことがあり得るが,前記のように移動体の移動軌跡は連続しているので,途中で迷子になることはない。
【0025】
また1つの電波信号発信手段からの信号のみを検出対象とするための別の方法として,電波信号発信手段と各アンテナの間で,各アンテナから各電波信号発信手段への送信電力を変化させて,電波信号発信手段と各アンテナとの間で通信するときに,前記電波信号発信手段ごとに定められた固有の識別情報を確認すると共に,前記通信手段上の上記電波信号発信手段への送信電力を変化させるようにしてもよい。このように,通信中に相手の固有の識別情報(ID)を確認して特定の固有の識別情報を備えた電波信号発信手段との間でのみ上記電波信号発信手段への送信電力を変化させるようにするので,通信相手が1つの電波信号発信手段に絞られ,前記(1)式が成立することになる。
このようにして,上記複数のアンテナに対する上記1個の電波信号発信手段の位置が確定する。これを他の電波信号発信手段についても繰り返すことで,電波信号発信手段がいくつあっても簡単にその1次元的,2次元的,場合によっては3次元的配置を測定することが出来る。
【0026】
また送信電力を変化させる点について,簡単には以下のような方法でも実施可能である。
2台のアンテナの間に電波信号発信手段があるとする。
両アンテナを同一の送信電力で動作させ,徐々に送信電力を低下させる。電波信号発信手段での受信電力の差により,電波信号発信手段までの距離が遠いアンテナ側で先に電波の検出が出来なくなる。電波信号発信手段が2つのアンテナのちょうど真ん中にあれば,同時に検出できなくなる。
このようにしてどちらのアンテナが先に検出できなくなるかで,電波信号発信手段の位置がどちらのアンテナに近い位置にあるかを判定できる。即ち,電波信号発信手段がどちらのアンテナの近く(アンテナ間隔の半分の距離内)にあるかどうかが少なくとも判定出来る。
図4に示すように,アンテナ間隔を電波信号発信手段間隔Pに等しくすれば,特定の電波信号発信手段が特定のアンテナから両側P/2の範囲内にあるかを判定でき,あるアンテナに近い位置にある電波信号発信手段が一義的に決定できる。
【0027】
アンテナ2台では,電波信号発信手段がアンテナ間になければ,電波信号発信手段を特定出来ないように見えるが,電波信号発信手段が等間隔に並んでいるので,図5に示すように,隣接する電波信号発信手段どちらかが(左右に並んでいるとして,右隣,あるいは左隣の意味)アンテナ間にあり,それより特定の電波信号発信手段がアンテナのP/2の範囲内にあるかを判定できる。
もちろん,3台のアンテナを間隔Pずつで並べ,真ん中のアンテナと別のアンテナどちらかとの2通りの組み合わせで判定し,真ん中のアンテナから±P/2にある電波信号発信手段を確定することも出来る。
以上述べたすべての場合について,2つのアンテナの測定情報に混乱を生じないように,検出系での演算や判定が完了するまで,移動体に設けられた複数のアンテナを切換えながら各限界の送信電力を測定することが望ましい。
【0028】
上記実施形態に係る装置を2次元平面上の電波信号発信手段に適用することも可能である。
例えば,図6に示すように,3台のアンテナ(1,2,3)を直線上に並ばないように配置し,上記3台のアンテナを一体として2次元平面に沿って移動させる。この時に,3台のアンテナの内の2台について前記したように固有情報によって1個の電波信号発信手段に絞って限界動作電力を検出し,上記2台のアンテナからの距離を測定し,続けて,上記2台のアンテナの並びに対して直角の方向に並んでいる2台のアンテナについて先に測定した電波信号発信手段との距離を同様に測定すれば,アンテナに対する上記1個の電波信号発信手段の位置が確定する。これを他の電波信号発信手段についても繰り返すことで,電波信号発信手段がいくつあっても簡単にその2次元的配置を測定することが出来る。
【0029】
前記電波信号発信手段は,種々の形式が考えられるが,例えば,パッシブ型の無線タグや共振型の無線タグに本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は,無線タグ等の電波発信手段を用いた移動体の位置検出,或いは倉庫における収納位置の検出等に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】電波信号発信手段の受信電力と,電波信号発信手段と移動体のアンテナとの距離との関係を示すグラフ。
【図2】移動する移動体の検出領域と電波信号発信手段の位置との関係を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係るシステムの原理を説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係るシステムの動作説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係るシステムの動作説明するためのアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係るシステムを2次元平面における位置検出装置に適用した場合のアンテナと電波信号発信手段の関係を示す図。
【符号の説明】
【0032】
P…電波信号発信手段の間隔
L1,L2…電波信号発信手段とアンテナの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔で設けられた複数の電波信号発信手段と,
前記複数の電波信号発信手段に対して相対的に移動する移動体に搭載され,所定の電波信号を受信可能な複数のアンテナを備えた通信手段と,
を具備する位置検出システムであって,
前記電波信号発信手段は,前記通信手段のアンテナから送信された通信要求に応じて各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号を発信するものであり,前記通信手段のアンテナが受信する上記所定の電波信号は,前記各電波信号発信手段から発信された各電波信号発信手段に固有の識別情報を含む電波信号である位置検出システムにおいて,
前記通信手段から上記電波信号発信手段への前記通信要求を含む電波信号の送信電力を変化させることによって,1つの電波信号発信手段と上記アンテナとの間で通信可能な限界の送信電力を検出する限界送信電力検出手段と,
前記限界送信電力検出手段により検出された1つの電波信号発信手段と各々のアンテナとの間で通信可能な限界の送信電力から演算される各々のアンテナと上記1つの電波信号発信手段との距離の比率から前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出する位置検出手段と,
を備えてなることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記位置検出手段が,前記複数のアンテナからの送信電力を同じにしながら順次減少させ,いずれか,あるいは複数の前記アンテナで前記電波信号発信手段との間の通信を検出することが出来なくなった時点における各限界の送信電力の比率から,前記アンテナと前記電波信号発信手段との相対位置を検出するものである請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
電波信号発信手段間の間隔とアンテナ間の間隔をほぼ等しく設定すると共に,前記限界送信電力検出手段が,移動体に設けられた複数のアンテナを切換えながら各限界の送信電力を測定するものである請求項1あるいは2のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記限界送信電力検出手段が,前記電波信号発信手段ごとに定められた固有の識別情報を確認すると共に,前記通信手段上の上記電波信号発信手段への送信電力を変化させるものである請求項1あるいは2のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記移動体を2次元的に移動させることで,電波信号発信手段の位置を2次元的に検出する請求項1〜4のいずれかに記載の位置検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−75032(P2009−75032A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246506(P2007−246506)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月26日に社団法人発明協会より発行された発明協会公開技報にて発表
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】