説明

位置検出構造

【課題】基体48に対して相対移動する移動物体20における互いに離れた2位置への移動を検出する位置検出構造において、互いに離れた2位置への移動物体の移動を単一のセンサで、誤検出なく区別して検出する。
【解決手段】基体(ホルダ)48と移動物体(プラットホーム)20との対向部位の一方で、前記2位置のうちの一つの位置に検出センサ50を設け、該検出センサは、各位置において互いに異なった電気信号を発生する。一つの検出センサが2位置でそれぞれ異なった信号を発生するので、一つのセンサで2位置への移動物体の移動を区別して検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体に対して相対移動する移動物体における互いに離れた2位置への移動を検出する位置検出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる位置検出構造として、2位置に対応させてリミットスイッチをそれぞれ設けて2位置への移動を検出する構造が一般的である。この場合、リミットスイッチが2つ必要となる問題がある。
これに対し、2位置のうちの一つの位置を検出し、その位置を基準として相対移動距離に応じてパルスを発生させ、そのパルス数をカウントして、残りの一つの位置への移動を検出する構造が開発されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−12305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パルス数のカウントには誤検出もあり、上記特許文献1の位置検出法をアクチュエータ制御に適用すると、誤検出に基づいてアクチュエータ制御が行われ、各種トラブルの原因となる。例えば、アクチュエータとしてのモータのロック、不適切な位置でのアクチュエータ動作による不具合というような問題が生じる。
本発明は、このような問題に鑑み、一つの検出センサで2位置で互いに異なる信号を発生させることにより、互いに離れた2位置への移動物体の移動を単一のセンサで、誤検出なく区別して検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1発明は、基体に対して相対移動する移動物体における互いに離れた2位置への移動を検出する位置検出構造であって、前記基体と前記移動物体との対向部位の一方で、前記2位置のうちの一つの位置に検出センサを設け、該検出センサは、各位置において互いに異なった電気信号を発生することを特徴とする位置検出構造である。
第1発明によれば、一つの検出センサが2位置でそれぞれ異なった信号を発生するので、一つのセンサで2位置への移動物体の移動を区別して検出することができる。
【0006】
本発明の第2発明は、上記第1発明の位置検出構造において、前記検出センサは、前記対向部位の他方の形状変化を検出するものであり、前記対向部位の他方には、相対移動の方向に周期的に形状が変化する形状変化部が設けられ、該形状変化部は、前記2位置において相対移動方向の大きさが互いに異なる形状変化部が形成されていることを特徴とする位置検出構造である。
第2発明によれば、2位置間において形状変化部の形状の大きさを互いに異ならせて2位置を区別して検出するので、コストアップなしで誤作動なく位置検出できる。
【0007】
本発明の第3発明は、上記第2発明の位置検出構造において、前記検出センサは、磁気抵抗の変化を検出する磁気センサであり、形状変化部は、磁性体に貫通孔、突起又は穴が形成されたものであり、前記2位置において、相対移動の方向における貫通孔、突起又は穴の大きさが異なっていることを特徴とする位置検出構造である。
第3発明によれば、汎用の磁気センサによって、上記第1及び第2発明と同様の作用効果を達成できる。
【0008】
本発明の第4発明は、上記第3発明の位置検出構造において、前記2位置に設けられた形状変化部である貫通孔、突起又は穴の一方は、相対移動方向の大きさが小さく、しかも複数個が連続して設けられていることを特徴とする位置検出構造である。
第4発明によれば、検出センサによる一つの形状変化部の検出に失敗しても、連続する他の形状変化部を検出できるため、形状変化部の大きさが小さくても検出漏れの可能性を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態の動作説明図である。
【図3】図1の実施形態の動作説明図であり、図2とは別の動作状態を示す。
【図4】図1の実施形態における電動スライド装置を示す説明図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図1の実施形態における電動スライド装置の電気回路ブロック図である。
【図7】図1の実施形態における電動スライド装置の制御フローチャートであり、端部検出ルーチンを示す。
【図8】図1の実施形態における電動スライド装置の制御フローチャートであり、モータ制御ルーチンを示す。
【図9】図1の実施形態における電動スライド装置の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
本実施形態に係る電動スライド装置30は、福祉車両Bの後部に設置された車椅子リフタ10において、プラットホーム20を格納位置(原点位置)と使用位置(出端位置)間で水平スライドさせる装置である。
ここで、図中における前後左右及び上下は車椅子リフタ10を備える福祉車両Bの前後左右及び上下に対応している。
【0011】
本実施形態に係る電動スライド装置30について説明する前に福祉車両B及び車椅子リフタ10の概要について説明する。
前記福祉車両Bは、図1等に示すように、ワンボックスタイプの車両で後側開口部Hを備えており、その後側開口部Hがバックドア(図示省略)によって開閉可能に構成されている。そして、前記福祉車両Bの後部に、乗員を車椅子Kで後側開口部Hから乗降させるための車椅子リフタ10が設けられている。
車椅子リフタ10は、車椅子Kを載せる水平なプラットホーム20と、そのプラットホーム20を昇降させる左右一対の昇降リンク機構40と、前記プラットホーム20を前後スライドさせる電動スライド装置30(図4参照)とから構成されている。
【0012】
昇降リンク機構40は、図1から図3に示すように、車室フロアFLの後部両端(左右)に設けられた固定金具41と、左右の前記固定金具41にそれぞれ上下回動可能な状態で連結された四節リンク機構43と、その四節リンク機構43の先端側に同じく上下回動可能な状態で連結された起立状態の昇降アーム44と、前記四節リンク機構43を上下回動させて、昇降アーム44を昇降させる油圧シリンダ(図示省略)とから構成されている。
なお、図1はカバー430に覆われた状態の四節リンク機構43を表しており、図2、図3はカバー430を省略した状態の四節リンク機構43を表している。
四節リンク機構43は、四隅に相対回動可能な連結点(支点)を備えるリンク機構であり、図2、図3に示すように、固定金具41のリンク支持部411と、上部リンク433と、下部リンク434と、昇降アーム44のリンク支持部445とから構成されている。そして、前記油圧シリンダの動作により、四節リンク機構43が上下回動することで、昇降アーム44が起立姿勢のままで昇降するようになる。
【0013】
左右の昇降アーム44の下端部には、図1〜図3に示すように、ホルダ48が設けられており、左右のホルダ48にプラットホーム20が前後スライド可能な状態で支持されている。そして、プラットホーム20の左右両側には土手21が形成されており、前記ホルダ48とプラットホーム20の土手21間に、そのプラットホーム20をホルダ48に対して前後スライドさせる電動スライド装置30(図4参照)が設けられている。
電動スライド装置30は、ラック&ピニオンの噛合作用を利用してプラットホーム20をホルダ48に対して前後スライドさせる装置であり、図4に示すように、モータ31と、減速器33と、ラック34と、ピニオンギヤ35とから構成されている。
モータ31、歯車機構33は、ホルダ48内に配置され、ラック34は土手21内に固定されている。従って、モータ31を回転駆動させて歯車機構33を介してピニオンギヤ35を作動させると、ピニオンギヤ35とラック34との噛合位置が変化し、ホルダ48とプラットホーム20とが相対移動することになる。ここでは、ホルダ48が本発明における基体に相当し、プラットホーム20が移動物体に相当する。
【0014】
図4、5に示すように、ホルダ48の内壁面には検出センサ50としての磁気センサがブラケット481によって設けられ、検出センサ50の検出端が、プラットホーム20の土手21の壁面に対向配置されている。その土手21の壁面にはプラットホーム20の移動方向に一定の間隔を置いて複数の貫通孔211が設けられている。このように検出センサ50と貫通孔211が対向配置されていることにより、ホルダ48とプラットホーム20とが相対移動すると、貫通孔211の有無を検出センサ50が検知して、上記相対移動を検出することができる。ここで、ホルダ48と土手21が、本発明における対向部位の一方と他方に相当し、貫通孔211が形状変化部に相当する。
【0015】
図9のBには、プラットホーム20が原点位置から出端位置まで移動する間の貫通孔211の配置の様子が示されている。原点位置と出端位置の間には一定間隔で同じ大きさの貫通孔が形成され、原点位置には、貫通孔211同士の間隔よりもプラットホーム20の移動方向に約10倍の大きさの貫通孔が開けられ、出端位置には、貫通孔211同士の間隔よりもプラットホーム20の移動方向に約0.1倍の大きさの貫通孔が2個続けて開けられている。なお、図9のBでは貫通孔211の大きさを正確に表示していない。また、図4では図面を見易くするために貫通孔211の一部のみを示している。
【0016】
図6には検出センサ50及びモータ31の制御回路60が示されており、検出センサ50は公知のホールICから成り、プラットホーム20の移動に伴って貫通孔211を検知して制御回路60の入力端子611に図9のAに示すパルス信号を供給する。制御回路60の入力回路61は、入力端子611から受けたパルス信号をインピーダンス変換等の処理をしてコンピュータ(CPU)62に供給する。CPU62は、予め格納されたプログラムに基づいてモータ出力回路64を通じてモータ31を作動させる。内部電源63はバッテリ(+BATT)からの電圧を制御回路60内の各回路に必要な一定電圧に変換して各回路に電源として供給する。
【0017】
CPU62による処理プログラムを図7、8に基づいて説明する。
図7は、プラットホーム20が原点位置及び出端位置にあるか否かを検出する端部検出ルーチンを示している。ステップS11では、入力端子611に表れる検出センサ50の出力がハイ(Hi)レベルにあるか否かが判定される。検出センサ50の出力がハイレベルであり、ステップS11が肯定判断されると、ステップS12において検出センサ50の出力がハイレベルを維持している時間をカウントする。同時にステップS12では、検出センサ50の出力がロウ(Lo)レベルを維持している時間をカウントするカウンタのカウント値をクリアする。一方、検出センサ50の出力がロウレベルであり、ステップS11が否定判断されると、ステップS13において、検出センサ50の出力がロウレベルを維持している時間をカウントすると同時に、検出センサ50の出力がハイレベルを維持している時間をカウントするカウンタのカウント値をクリアする。
ステップS14では、検出センサ50の出力がロウレベルからハイレベルに変化したか否かが判定される。検出センサ50の出力がロウレベルからハイレベルに変化したときには、ステップS14は肯定判断され、検出センサ50の出力がロウレベルを維持している時間の割合が次の数式1に基づいて算出される。
【数1】


次のステップS16では、検出センサ50の出力がハイレベル、及びロウレベルを維持している時間をカウントするカウンタが共にリクアされる。ステップS17、18では、上述のように算出されたロウレベルを維持していた時間の割合が10%未満か否か、或いは90%を超えているか否かが判定され、10%未満である場合は、ステップS17が肯定判断され、ステップS19においてプラットホーム20の移動位置を表す位置カウンタのカウント値Cを、出端位置に相当する所定値Dとする。また、90%を超えている場合は、ステップS18が肯定判断され、ステップS20において位置カウンタのカウント値Cを原点位置に相当するゼロとする。
ステップS19、S20の処理が終了すると、端部検出ルーチンの処理は終了する。また、検出センサ50の出力がロウレベルからハイレベルに変化したとき以外で、ステップS14が否定判断された場合、及び検出センサ50の出力がロウレベルを維持していた時間の割合が10%〜90%の間でステップS17、S18が共に否定判断された場合も、端部検出ルーチンの処理は終了する。
【0018】
図8は、モータ31の制御を行うモータ制御ルーチンを示している。ステップS31では、検出センサ50の出力がロウレベルからハイレベルに変化したパルスエッジ、又はハイレベルからロウレベルに変化したパルスエッジか否かが判定される。いずれかのパルスエッジのタイミングであり、ステップS31が肯定判断されると、ステップS32では、プラットホーム20を含む車椅子リフタ10を福祉車両B内へ格納させるための格納スイッチ(図示省略)が操作されているか否か判定される。格納スイッチが操作されており、ステップS32が肯定判断されると、格納中であるためステップS33においてプラットホーム20の位置カウンタのカウント値Cをデクリメントする。また、格納スイッチが操作されておらず、従って、プラットホーム20を含む車椅子リフタ10を福祉車両B内から展開させる展開スイッチ(図示省略)が操作されていてステップS32が否定判断されるときは、展開中であるためステップS34においてプラットホーム20の位置カウンタのカウント値Cをインクリメントする。
図7及び図8のフローチャートのように位置カウンタのカウント値Cが処理されることにより、カウント値Cは原点位置でゼロ、出端位置でD、両位置間で原点位置から出端位置に向かうに従って大きな値となる。
次のステップS35では、位置カウンタのカウント値Cに応じて予め決められたデューティ比でモータ31を制御する。かかる制御は、図9のCに示されるように、プラットホーム20が原点位置付近、或いは出端位置付近では、10%程度のデューティ比でモータ31が制御され、プラットホーム20が原点位置付近、或いは出端位置付近から離れるに従って徐々にデューティ比が大きくされるように制御される。
このようにデューティ制御されることにより、プラットホーム20が原点位置から出端位置、或いは反対に出端位置から原点位置へ移動するとき、移動し始めはモータ31、プラットホーム20は低速で動き始め、移動するに従って高速となり、移動終了位置付近では再び低速作動となる。そのため、プラットホーム20に乗った車椅子利用者がプラットホーム20の急な動きで不安定に揺れ動かされることがなくなる。
ステップS35の処理が終了したとき、及び検出センサ50の出力がロウレベルからハイレベルに変化したパルスエッジ、又はハイレベルからロウレベルに変化したパルスエッジのいずれでもなく、ステップS31が否定判断されたとき、モータ制御ルーチンの処理は終了する。
【0019】
以上の実施形態では、プラットホーム20が原点位置にあるとき、及び出端位置にあるときが、検出センサ50のロウレベル時間の割合によってそれぞれ区別して検出され、車椅子リフト10を展開中に出端位置が検出されたときには、その位置でプラットホーム20を停止させ、車椅子リフト10の四節リンク機構43が格納位置にあるときに出端位置が検出されているときには、その位置からプラットホーム20を格納位置に動作させ、その後プラットホーム20が原点位置に達すると、プラットホーム20の格納動作が停止される。このようにプラットホーム20の原点位置と出端位置とが区別して検出されることによってプラットホーム20を適切に制御することができる。しかも、2位置を検出するにも関わらず、検出センサ50は一つのみで済み、2位置を区別するための構成は貫通孔の大きさを変えるのみで良く、コストをかけずに簡単に実施できる。
なお、出端位置の検出のため、貫通孔211同士の間隔に対しプラットホーム20の移動方向に約0.1倍の大きさの貫通孔を2個続けて設けているが、これは貫通孔の大きさが小さいことにより検出センサ50による検出漏れが発生する可能性があるため、予備の貫通孔を設けているものである。
【0020】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.検出センサとして、光センサ、圧力センサを採用して構成することもできる。
2.各位置における互いに異なった電気信号として、信号レベルが異なる電気信号、信号波形が異なる電気信号を採用して構成することもできる。
3.形状変化部としては、検出センサ50に向けて突出した突起、或いはその反対に窪んだ穴を採用することもできる。
【符号の説明】
【0021】
10 車椅子リフタ
20 プラットホーム(移動物体)
21 土手
211 貫通孔(形状変化部)
30 電動スライド装置
31 モータ
34 ラック
35 ピニオンギヤ
40 昇降リンク機構
43 四節リンク機構
44 昇降アーム
48 ホルダ(基体)
50 検出センサ
60 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して相対移動する移動物体における互いに離れた2位置への移動を検出する位置検出構造であって、前記基体と前記移動物体との対向部位の一方で、前記2位置のうちの一つの位置に検出センサを設け、該検出センサは、各位置において互いに異なった電気信号を発生することを特徴とする位置検出構造。
【請求項2】
請求項1の位置検出構造において、前記検出センサは、前記対向部位の他方の形状変化を検出するものであり、前記対向部位の他方には、相対移動の方向に周期的に形状が変化する形状変化部が設けられ、該形状変化部は、前記2位置において相対移動方向の大きさが互いに異なる形状変化部が形成されていることを特徴とする位置検出構造。
【請求項3】
請求項2の位置検出構造において、前記検出センサは、磁気抵抗の変化を検出する磁気センサであり、形状変化部は、磁性体に貫通孔、突起又は穴が形成されたものであり、前記2位置において、相対移動の方向における貫通孔、突起又は穴の大きさが異なっていることを特徴とする位置検出構造。
【請求項4】
請求項3の位置検出構造において、前記2位置に設けられた形状変化部である貫通孔、突起又は穴の一方は、相対移動方向の大きさが小さく、しかも複数個が連続して設けられていることを特徴とする位置検出構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−193973(P2012−193973A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56284(P2011−56284)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】