位置検知システムおよび方法
【課題】ハードウェアを増加させることなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得る。
【解決手段】演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算する。
【解決手段】演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検知技術に関し、特に送信端末から送信された電波に関する複数の受信端末での受信状況に基づいて、当該送信端末の位置を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人や物の位置を検知する方法として、電波を発射する無線タグなどの送信端末を人や物に取り付け、電波の発射位置を測定する方法がある。電波を用いた位置検知方式には複数あるが、送信端末から送信された電波の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を用いる方式が一般的に用いられている。RSSI方式は、複数の受信端末において、送信端末から送信された電波のうち、送信端末から受信端末へ直接届いた直接波の受信強度に基づいて送信端末の位置を計算するものとなっている。
【0003】
このような位置検知方法において、位置検知の誤差の主な要因は、送信端末から受信端末へ送信された電波のマルチパスの影響と考えられる。特に、部屋で電波を送信した場合、部屋を構成する壁や天井などのほか、部屋に配置されている柱や間仕切りなどの物体により、電波が複雑に反射し、多数のマルチパスが発生する。
【0004】
このようなマルチパスの影響を抑制する方法として、スペースダイバーシティ方式が一般的に用いられる(例えば、特許文献1など参照)。この方式には、受信端末に複数のアンテナを設けておき、電波の伝搬状態のよい方のアンテナに切り替えて受信する方式のほか、同一箇所に複数の受信端末を併設して動作させ、これら受信端末のうち電波の伝搬状態のよい方の受信端末で得られた受信データを選択する方式がある。
また、このように受信端末側をマルチにする代わりに、送信端末を複数使用して、複数の電波を送信する送信ダイバーシティ方式についても、前述と同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−224489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、マルチパスの影響をある程度抑制できるものの、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアが増加するため、位置検知システム全体の消費電力やコストが増大するという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、ハードウェアを増加させることなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる位置検知技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる位置検知システムは、一定の送信間隔で電波を送信する送信端末と、この送信端末からの電波を受信して受信電界強度を計測する複数の受信端末と、これら受信端末で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末の端末位置を計算する位置計算部とを有する演算装置とを備え、位置計算部で、記憶部で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0009】
この際、演算装置に、対象期間における送信端末の移動有無を判定する移動有無判定部をさらに設け、位置計算部で、移動有無判定部により送信端末の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末の移動ありと判定された場合には、記憶部で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算するようにしてもよい。
【0010】
また、演算装置に、対象期間における送信端末の移動速度を計算し、得られた移動速度に応じて対象期間の長さを変更する対象期間変更部をさらに設けてもよい。
【0011】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから当該対象期間における送信端末の移動距離を計算し、得られた移動距離に基づいて、当該対象期間における送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0012】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから、当該対象期間における送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0013】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、対象期間変更部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから移動速度を計算するようにしてもよい。
【0014】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて対象期間における自己の移動有無を判定し、この判定結果を示す判定データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により判定データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた判定データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している判定データのうち最新の判定データに基づき送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる位置検知方法は、送信端末が、一定の送信間隔で電波を送信するステップと、複数の受信端末が、送信端末からの電波を受信して受信電界強度を計測するステップと、演算装置の記憶部が、受信端末で得られた受信電界強度を順次記憶するステップと、演算装置の位置計算部が、記憶部に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末の端末位置を計算する位置計算ステップとを備え、位置計算ステップで、記憶部で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0016】
この際、演算装置の移動有無判定部が、対象期間における送信端末の移動有無を判定する移動有無判定ステップをさらに設け、位置検出ステップで、移動有無判定ステップにより送信端末の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末の移動ありと判定された場合には、記憶部で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算するようにしてもよい。
【0017】
また、演算装置の対象期間変更部が、対象期間における送信端末の移動速度を計算し、得られた移動速度に応じて対象期間の長さを変更する対象期間変更ステップをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、過去に計測した受信電界強度を用いて、スペースダイバーシティを実現することができるため、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアを追加することなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】受信結果データの構成例である。
【図3】第1の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【図5】第1のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。
【図6】送信端末の変位位置を示す説明図である。
【図7】第1のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【図8】送信端末TX1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】送信端末TX1のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図10】送信端末TX2のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】送信端末TX2のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図12】送信端末TX3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】送信端末TX3のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図14】第2のシミュレーション時の他の端末配置を示す説明図である。
【図15】人体の位置座標である。
【図16】第2のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【図17】第2のシミュレーションでの位置計算動作例を示す説明図である。
【図18】送信端末TX4のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】送信端末TX4のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図20】第2の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図21】第2の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【図22】第2の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【図23】第3の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図24】第3の実施の形態にかかる演算装置での対象期間変更処理を示すフローチャートである。
【図25】対象期間計算モデルを示すグラフである。
【図26】第3の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
この位置検知システム1は、電波を送信する送信端末10から送信された電波を受信して、その電波に関する受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)などの受信結果を得る受信端末20と、これら受信端末20で得られた受信結果を、通信回線40を介して受信し、これら受信結果に基づいて、送信端末10の位置を検知する演算装置30とから構成されている。
【0022】
本実施の形態は、演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0023】
[送信端末の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる送信端末10の構成について詳細に説明する。
この送信端末10は、全体として電波を発射する無線タグなどの一般的な小型無線送信器からなり、位置検知の対象となる人や物に取り付けられる。この送信端末10には、主な構成として、送信制御部11、送信部12、およびアンテナ13が設けられている。
【0024】
送信制御部11は、専用の制御回路からなり、一定の送信間隔を計時する機能と、送信タイミングの到来に応じて、送信端末10識別用の自己の送信IDを含む送信データを生成して、送信部12へ通知する機能とを有している。
【0025】
送信部12は、送信制御部11からの送信データの通知に応じて、例えば2.45GHzなどの搬送波周波数で当該送信データを変調して送信信号を生成し、アンテナ13へ出力する機能を有している。
アンテナ13は、送信部12からの送信信号を電波として送信する機能を有している。
【0026】
[受信端末の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる受信端末20の構成について詳細に説明する。
この受信端末20は、全体として電波を受信する受信装置からなり、主な構成として、アンテナ21、受信部22、および通信処理部23が設けられている。
【0027】
アンテナ21は、送信端末10からの電波を受信するアンテナである。
受信部22は、アンテナ21で受信した電波を復調して送信端末10の送信IDを抽出する機能と、受信した電波の受信電界強度を計測する機能と、時計回路(図示せず)から当該電波の受信時刻、すなわち受信電界強度の計測時刻を取得する機能とを有している。
通信処理部23は、通信回線40を介して演算装置30とデータ通信を行う通信回路からなり、受信部22で得られた送信ID、受信電界強度、および計測時刻の組に、受信端末識別用の自己の受信IDを付加した受信結果データを、演算装置30へ送信する機能を有している。
【0028】
[演算装置の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる演算装置30の構成について詳細に説明する。
演算装置30は、全体としてサーバやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、主な機能部として、端末制御部31、操作入力部32、画面表示部33、記憶部34、および位置計算部35が設けられている。
【0029】
端末制御部31は、通信回線40を介して各受信端末20とデータ通信を行う通信回路からなり、各受信端末20から送信された受信結果データを受信する機能を有している。 操作入力部32は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して各機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部33は、LCDなどの画面表示装置からなり、各受信端末20で得られた受信結果や、送信端末10の位置などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0030】
記憶部34は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、各受信端末20の配置位置などの環境データや、受信端末20から受信した受信電界強度や送信IDなどの受信結果データなど、送信端末10の位置検知に用いる各種処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。
図2は、受信結果データの構成例である。ここでは、受信ID、計測時刻、および受信電界強度が組として登録されている。
【0031】
位置計算部35は、記憶部34で記憶している同一送信IDの受信電界強度のうち、当該計測時刻に基づいて端末位置計算の対象となる対象期間内に計測した受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択する機能と、選択したこれら最大受信電界強度から、例えば加重平均法に基づいて、送信端末10が存在する位置を計算する機能を有している。
【0032】
演算装置30のこれら機能のうち、位置計算部35については、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部34から読み込んだプログラムを実行することにより、各種処理を実行する演算処理部で実現すればよい。
【0033】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作について説明する。図3は、第1の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【0034】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0035】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0036】
演算装置30は、図3の位置計算処理を定期的に実行しており、まず、位置計算部35は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に計測した受信電界強度RSi(iは1以上の整数:受信端末20の番号)を取得する(ステップ100)。この対象期間Tcは一定時間長を有し、記憶部34の受信結果データが更新されるごとに、最新の受信結果データから過去へ遡った期間に設定される。
【0037】
次に、位置計算部35は、取得した対象期間Tc内における受信電界強度RSiから受信端末RXiごとに、その最大値、すなわち最大受信電界強度RSimaxを選択する(ステップ101)。
この後、選択した受信端末RXiごとの最大受信電界強度RSimaxから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ102)、一連の位置計算処理を終了する。
【0038】
加重平均法の具体例としては、まず、受信電界強度RSiから、それぞれの受信端末20ごとに、予め記憶部34に設定されている受信利得Giを減算して補正することにより、補正受信電界強度RSi’(=RSi−Gi)を計算する。
続いて、得られた補正受信電界強度RSi’をデシベル値(dB)から真値(W)で示されている補正受信電界強度Pi(=10RSI'/10)に変換する。
【0039】
次に、得られた補正受信電界強度Piに関する受信強度比Ri(=Pi/ΣPi)を計算する。
そして、これら受信強度比Riと記憶部34に予め設定されている受信端末20の座標位置Xi,Yiとに基づいて、送信端末10の座標位置X(=ΣXiRi)およびY(=ΣYiRi)を計算すればよい。
【0040】
[第1の実施の形態の動作例]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0041】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図4では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0042】
現在時刻がT5以降である場合、対象期間Tcは、時刻T5に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図4では、時刻T1〜T5の期間に設定されている。
したがって、位置計算部35は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0043】
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS21がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS32がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS21、RS32、RS45から、端末位置を計算する。
【0044】
[第1のシミュレーション結果]
次に、図5および図6を参照して、本実施の形態にかかる位置計算方法の第1のシミュレーション結果について説明する。図5は、第1のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。図6は、送信端末の変位位置を示す説明図である。
【0045】
送信端末10を人が携帯して使用することを想定した場合、オフィスなどでは人は椅子に座っている場合でも全く静止していることはなく、少し移動することが普通である。このため、送信端末10の位置も時間経過とともに変位する。このため、マルチパスの発生状況も変化して、受信端末20で受信電界強度が大きく変化する可能性があり、位置検知の誤差として現れると考えられる。
この第1のシミュレーションでは、送信端末10が変位した際に、計算で得られる送信端末10の端末位置がどのように変化するかをシミュレーションした。
【0046】
図5に示すように、このシミュレーションでは、コンクリート製で大きさが14.8m×7.8m×3m(X×Y×H)の矩形状の部屋50を用い、その天井に4つの受信端末RX1〜RX4を固定し、これら受信端末で計測した受信電界強度により、送信端末TX1〜TX3の位置を検知した。また、送信端末10および受信端末20のアンテナ13,21はそれぞれ無指向性とし、利得は0dBiとし、送信電力は0dBmとした。図5中に記載されている送信端末TX1〜TX3および受信端末RX1〜RX4の座標位置は、部屋50の左下角を原点とする。
【0047】
送信端末TX1,2の位置は、図6に示すように、位置P5を中心として上下左右に6cmずつずれた位置P1〜P9へ変位させた。これら位置P1〜P9の高さは、人の腰あたりの高さに相当する0.75mとした。これら変位が椅子に座った人の変位と見なすことができる。なお、変位距離6cmは、送信端末10からの電波の搬送波周波数2.45GHzのλ/2に相当しており、この部屋50で発生するマルチパスの位相ずれの大きさもこの程度である。これら送信端末TXの変位は、通常の時間経過を伴う送信端末TXの移動と見なすこともできる。また、送信端末TX3の変位距離は、6cmに代えて2cmとした。
【0048】
このような条件下で、送信端末TX1〜TX3をそれぞれ変位させて、受信端末RX1〜RX4での受信電界強度をシミュレーションにより計算した。図7は、第1のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
以下では、送信端末TX1〜TX3のそれぞれについて、位置計算方法の違いとそれぞれの誤差について検証した。
【0049】
まず、図8および図9を参照して、送信端末TX1について検証する。図8は、送信端末TX1のシミュレーション結果を示すグラフである。図9は、送信端末TX1のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図8および図9において、TX11〜TX19は、送信端末TX1を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0050】
送信端末TX1の変位は、X,Y方向に±6cmであるにもかかわらず、送信端末TX11〜TX19の計算位置は、図8に示されているように、X,Y方向に±1.5m程度ばらついており、送信端末TX1の変位が25倍程度にまで拡大されていることになるが、変位の方向と計算位置のばらつき方向とは一致していない。また、真値との距離については、TX13のように真値に極めて近いものもあるが、TX17のように1.9mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.56mである。
【0051】
これに対して、TX11〜TX19で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX12,TX17,TX12,TX13の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.35mまで低減されており、誤差平均から37.5%も誤差が低減されていることがわかる。
【0052】
次に、図10および図11を参照して、送信端末TX2について検証する。図10は、送信端末TX2のシミュレーション結果を示すグラフである。図11は、送信端末TX2のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図10および図11において、TX21〜TX29は、送信端末TX2を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0053】
送信端末TX2の変位は、X,Y方向に±6cmであるにもかかわらず、送信端末TX21〜TX29の計算位置は、図10に示されているように、大きくばらついている。このうち、TX22が真値に最も近いものの誤差は0.61mもあり、TX21のように2.11mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.80mである。
【0054】
これに対して、TX21〜TX29で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX29,TX26,TX28,TX27の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.40mまで低減されており、誤差平均から50%も誤差が低減されていることがわかる。
【0055】
最後に、図12および図13を参照して、送信端末TX3について検証する。図12は、送信端末TX3のシミュレーション結果を示すグラフである。図13は、送信端末TX3のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図12および図13において、TX31〜TX39は、送信端末TX3を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0056】
送信端末TX3の変位は、X,Y方向に±2cmであるにもかかわらず、送信端末TX31〜TX39の計算位置は、図12に示されているように、大きくばらついている。このうち、TX36のように真値に極めて近いものもあるが、TX38のように1.41mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.51mである。
【0057】
これに対して、TX31〜TX39で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX39,TX31,TX39,TX37の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.47mまで低減されており、誤差平均から7.8%程度、誤差が低減されていることがわかる。
【0058】
前述したように、送信端末10の位置が移動した場合、マルチパスの発生状況が変化して、受信端末20で計測される受信電界強度が大きく変化する。例えば、2.45GHz帯の場合、送信端末10の位置が1cm異なるだけで、受信電界強度が10dBの変動を生じることも珍しくなく、このような受信電界強度の変動により、端末位置が数mも異なってしまう。
本方式によれば、前述したシミュレーション結果から、送信端末10が変位してマルチパルスの発生状況が変化しても、位置検知誤差が、9個の変位位置の誤差平均よりさらに低減されており、位置検知におけるマルチパスの影響が抑制されていることがわかる。
【0059】
[第2のシミュレーション結果]
次に、図14および図15を参照して、本実施の形態にかかる位置計算方法の第2のシミュレーション結果について説明する。図14は、第2のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。図15は、人体の位置座標である。
第1のシミュレーションでは、送信端末10が僅かに変位した場合における位置計算への影響について説明した。第2のシミュレーションでは、送信端末10の周囲で人体が移動した場合における位置計算への影響について説明する。
【0060】
送信端末10が取り付けられた人が全く移動しなくても、オフィスなどではその人の周囲に他の人が現れたり、周囲を他の人が通り過ぎたりすることが多い。このような場合には、他の人により送信端末10から受信端末20までの電波伝搬空間の状態が変わり、受信端末20で計測される受信電界強度が変化することが考えられる。
この第2のシミュレーションでは、部屋の中で送信端末10を持たない他の人の位置が変化した場合、計算で得られる送信端末10の端末位置がどのように変化するかをシミュレーションした。
【0061】
図14に示すように、このシミュレーションでは、第1のシミュレーションと同じ部屋50を用い、4つの受信端末RX1〜RX4を第1のシミュレーションと同じ位置に固定し、送信端末TX4は、第1のシミュレーションの送信端末TX3と同じ位置に固定した。
また、大きさが0.5m×0.3m×1.7m(X×Y×H)の直方体形状の人体A1〜A9を、部屋50の中のランダムに選択した位置に配置した。これら人体の材質としては、電気特性が近い「水」を用いた。
【0062】
このような条件下で、これら人体A1〜A9のいずれか1つを選択し、当該人体が存在する場合のそれぞれについて、受信端末RX1〜RX4での受信電界強度をシミュレーションにより計算した。図16は、第2のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【0063】
図17は、第2のシミュレーションでの位置計算動作例を示す説明図である。第2のシミュレーションは、送信端末TX4の位置を固定し、人体位置を時刻T1〜T9ごとに移動させたものと見なすことができる。図17の例では、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T9ごとに、人体位置がA1〜A9と移動した状態で、受信電界強度RSが計測されたことになる。
【0064】
各時刻T1〜T9において、受信端末RX1〜RX4で計測された受信電界強度RSを用いて送信端末TXの位置を計算した結果が、図18および図19におけるTX41〜TX49に相当し、これらを平均した値が図18および図19における平均値である。
【0065】
現在時刻がT9以降である場合、対象期間Tcは、時刻T9に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図17では、時刻T1〜T9の期間に設定されている。
したがって、位置計算部35は、時刻T1〜T9の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0066】
具体的には、受信端末RX1については、RS14がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS23がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS39がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS49がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS14、RS23、RS39、RS49から、端末位置を計算する。
【0067】
次に、図18および図19を参照して、人体A1〜A9のそれぞれについて、位置計算方法の違いとそれぞれの誤差について検証した。図18は、送信端末TX4のシミュレーション結果を示すグラフである。図19は、送信端末TX4のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【0068】
送信端末TX4の位置が変位しないにもかかわらず、周囲の人の移動の影響で、位置計算結果において±30〜40cm程度ばらつきが発生している。真値との距離については、TX44のように真値に近いものもあるが、TX41のように1.2mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.98mである。
【0069】
これに対して、TX41〜TX49で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図16の計算結果からTX44,TX43,TX49,TX49の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.73mまで低減されており、誤差平均から25.5%も誤差が低減されていることがわかる。
【0070】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0071】
これにより、過去に計測した受信電界強度を用いて、スペースダイバーシティを実現することができるため、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアを追加することなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる。特に、シミュレーション結果から分かるように、送信端末10の位置が僅かに変位した場合や、送信端末10の周囲で人が移動した場合など、送信端末10の位置がほとんど変化しないにもかかわらず、マルチパス発生状況が大きく変化するような環境において、位置計算誤差を大幅に低減することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図20は、第2の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0073】
第1の実施の形態の位置計算方法では、送信端末10の位置が変化しない場合、あるいは送信端末10の位置が狭い範囲で変位する場合、すなわち人が着座あるいは起立など、ほとんど静止している場合には有効であるが、人が歩行などで移動している場合、刻々と位置が変化するため、過去と現時点との受信電界強度のずれが大きくなり、前述のような効果が得られない。
本実施の形態では、送信端末10の移動有無を判定し、移動なしの場合には本方式を適用し、移動ありの場合には最新の受信電界強度から端末位置を計算する場合について説明する。
【0074】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、図20に示すように、演算装置30に移動有無判定部36が追加されているとともに、送信端末10に加速度センサ14が追加されている。
演算装置30の移動有無判定部36は、対象期間における送信端末10の移動有無を判定する機能を有している。
位置計算部35は、移動有無判定部36により送信端末10の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末10の移動ありと判定された場合には、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算する機能を有している。
【0075】
送信端末10の加速度センサ14は、加速度を計測する一般的な加速度センサからなり、送信端末10にかかった加速度を計測して、送信制御部11へ出力する機能を有している。
本実施の形態にかかる位置検知システム1におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0076】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図21を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1の動作について説明する。図21は、第2の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートであり、前述した図3と同じまたは同等部分については同一符号を付してある。
【0077】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、加速度センサ14で計測された加速度データを取得し、この加速度データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDと加速度データとを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0078】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、加速度データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0079】
演算装置30は、図21の位置計算処理を定期的に実行しており、まず、移動有無判定部36は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データACを取得し(ステップ200)、これら加速度データACから対象期間Tcにおける送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算する(ステップ201)。
【0080】
一般に、送信端末10の移動距離Lは、加速度データACを2階積分すれば求められる。また、送信端末10の移動速度Vは、加速度データACを1階積分すれば求められる。この際、第2の実施の形態における移動距離L算出時の2階積分の演算途中で得られた移動速度Vを用いてもよい。なお、各受信端末20では、送信端末10から同一の加速度データを受信するため、移動距離Lや移動速度Vの計算には、いずれの受信端末20で受信した加速データを用いてもよい。
【0081】
次に、移動有無判定部36は、得られた移動距離Lと記憶部34に予め設定されている判定距離Lthとを比較する(ステップ202)。
ここで、移動距離Lが判定距離Lth以下の場合には(ステップ202:YES)、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動なしと判定し、前述した本方式に基づき送信端末10の位置を計算する。判定距離Lthの値については、位置検知システム1をそれぞれの環境で用いた場合における端末位置の計算誤差を用いてもよい。後述するシミュレーション結果によれば、搬送波周波数2.45GHzにおいて、1〜2mであった。
【0082】
以下では、判定要素データとして移動距離Lを用いる場合を例として説明するが、判定要素データとして移動速度Vを用いる場合には、判定距離Lthに代えて判定速度Vthを用いればよい。この場合、例えば水平や垂直など、特定の方向の移動速度Vが、判定速度Vthよりも大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の移動速度Vの平均値など、統計処理を施した後の移動速度Vを判定速度Vthと比較してもよい。判定速度Vthの値については、判定距離Lthを加速度データの取得間隔で除算した値を用いればよい。
【0083】
このようにして、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動なしと判定された場合、位置計算部35は、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に計測した受信電界強度RSi(iは1以上の整数:受信端末20の番号)を取得する(ステップ100)。
次に、位置計算部35は、取得した対象期間Tc内における受信電界強度RSiから受信端末RXiごとに、その最大値、すなわち最大受信電界強度RSimaxを選択する(ステップ101)。
この後、選択した受信端末RXiごとの最大受信電界強度RSimaxから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ102)、一連の位置計算処理を終了する。
【0084】
一方、ステップ202において、移動距離Lが判定距離Lthより大きい場合には(ステップ202:YES)、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動ありと判定する。
この場合、位置計算部35は、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、最新に計測した最新受信電界強度RSinewを取得し(ステップ203)、この最新受信電界強度RSinewから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ204)、一連の位置計算処理を終了する。
【0085】
[第2の実施の形態の動作例]
次に、図22を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図22は、第2の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0086】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図22では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0087】
また、送信端末TX1において加速度データが計測されて受信端末RX1〜RX4へ送信され、時刻T1〜T5において、加速度データAC1〜AC5が受信されている。
現在時刻がT5以降である場合、対象期間Tcは、時刻T5に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図22では、時刻T1〜T5に設定されている。
【0088】
したがって、移動有無判定部36は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に受信された加速度データAC1〜AC5に基づいて、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動距離Lを計算し、判定距離Lthと比較する。
ここで、L≦Lthの場合、移動有無判定部36は、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動なしと判定し、位置計算部35は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0089】
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS21がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS32がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS21、RS32、RS45から、端末位置を計算する。
【0090】
一方、L>Lthの場合、移動有無判定部36は、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動ありと判定し、位置計算部35は、時刻T5に計測された最新受信電界強度RSinew、すなわちRS15,RS25,RS35,RS45から、端末位置を計算する。
【0091】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、送信端末10の位置を計算する際、送信端末10の移動有無に応じて、対象期間Tc内から選択した最大受信電界強度RSimaxを用いるか、最新受信電界強度RSinewを用いるかを選択するようにしたので、送信端末10が停止している場合には、過去に計測した受信電界強度に基づき高い精度で端末位置を計算でき、送信端末10が移動を開始した場合には、過去の受信電界強度に左右されることなく最新の端末位置を計算することが可能となる。
【0092】
また、本実施の形態では、送信端末10で、加速度センサ14により送信間隔で計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末20で、電波により加速度データを受信し、演算装置30の記憶部34で、受信端末20で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部36で、記憶部34で記憶している加速度データのうち、対象期間Tcに得られた加速度データに基づいて、当該対象期間Tcにおける送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、送信端末10の移動有無を正確に判定できる。
【0093】
また、本実施の形態では、演算装置30の移動有無判定部36において、送信端末10から得た加速度データから、送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明したが、送信端末10から得た加速度データそのものを用いて、送信端末10の移動有無を判定してもよい。
【0094】
この場合には、移動有無判定部36において、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データを取得し、これら加速度データのうち特定の方向の加速度データACが、判定加速度ACthより大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の加速度データACの平均値など、統計処理を施した後の加速度データACを判定加速度ACthと比較してもよい。判定加速度ACthの値については、判定速度Vthを加速度データの取得間隔で除算した値、すなわち判定距離Lthを加速度データの取得間隔で2回除算した値を用いればよい。これにより、判定要素データを計算するための処理負担や所要時間を省くことができる。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、図23を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。図23は、第3の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0096】
第1および第2の実施の形態では、過去に計測した受信電界強度のうちから最大受信電界強度RSimaxを選択する対象期間Tcを一定期間長とした場合を例として説明した。本実施の形態では、送信端末10の移動速度に応じて対象期間Tcの期間長を変更する場合について説明する。
【0097】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、図23に示すように、演算装置30に対象期間変更部37が追加されているとともに、送信端末10に加速度センサ14が追加されている。
演算装置30の対象期間変更部37は、対象期間Tcの期間長を変更する機能を有している。
位置計算部35は、移動有無判定部36により送信端末10の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末10の移動ありと判定された場合には、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算する機能を有している。
【0098】
送信端末10の加速度センサ14は、加速度を計測する一般的な加速度センサからなり、送信端末10にかかった加速度を計測して、送信制御部11へ出力する機能を有している。
本実施の形態にかかる位置検知システム1におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0099】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図24を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1の動作について説明する。図24は、第3の実施の形態にかかる演算装置での対象期間変更処理を示すフローチャートである。
【0100】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、加速度センサ14で計測された加速度データを取得し、この加速度データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDと加速度データとを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0101】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、加速度データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0102】
演算装置30は、図24の対象期間変更処理を定期的に実行しており、まず、対象期間変更部37は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データACを取得し(ステップ300)、これら加速度データACから対象期間Tcにおける送信端末10の移動速度Vを計算する(ステップ301)。
【0103】
一般に、送信端末10の移動速度Vは、加速度データACを1階積分すれば求められる。この際、第2の実施の形態における移動距離L算出時の2階積分の演算途中で得られた移動速度Vを用いてもよい。なお、各受信端末20では、送信端末10から同一の加速度データを受信するため、移動速度Vの計算には、いずれの受信端末20で受信した加速データを用いてもよい。
【0104】
次に、対象期間変更部37は、得られた送信端末10の移動速度Vに対応する新たな対象期間Tc’を、記憶部34に予め登録されている対象期間計算モデル、例えば移動速度Vと対象期間Tcとの関係を示す関数やテーブルを参照して計算する(ステップ302)。
【0105】
図25は、対象期間計算モデルを示すグラフである。送信端末10の移動速度Vが大きくなればなるほど、送信端末10の過去の位置が最新位置と大きく乖離し、送信端末10の最新位置の計算に対する過去の受信電界強度の寄与率が小さくなる傾向があると考えられる。このため、移動速度Vと対象期間長Tcとは、図25に示すように、反比例のグラフで示すことができる。このグラフを示す関数やテーブルについては、予め実験的に移動速度Vと対象期間長Tcと変化させて、一定の誤差範囲内で端末位置が計算できる関係を求めておけばよい。
【0106】
この後、対象期間変更部37は、元の対象期間Tcを新たな対象期間Tc’に変更し(ステップ303)、一連の対象期間変更処理を終了する。
これにより、これ以降の位置計算処理や対象期間変更処理において、変更後の対象期間Tc’が用いられる。
【0107】
[第3の実施の形態の動作例]
次に、図26を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図26は、第3の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0108】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図26では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0109】
また、送信端末TX1において加速度データが計測されて受信端末RX1〜RX4へ送信され、時刻T1〜T5において、加速度データAC1〜AC5が受信されている。
現在時刻がT5以降である場合、変更前の対象期間Tcは、時刻T1〜T5に設定されている。
したがって、対象期間変更部37は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に受信された加速度データAC1〜AC5に基づいて、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動速度Vを計算し、新たな対象期間長Tc’に変更する。ここで、移動速度Vが大きくなった場合、元の対象期間Tcより短い、時刻T3〜T5が対象期間Tc’となる。
【0110】
これにより、その後、位置計算部35は、時刻T3〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS24がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS34がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS24、RS34、RS45から、端末位置を計算することになる。
【0111】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第2の実施の形態では、送信端末10から通知された加速度データに基づいて、演算装置30で送信端末10の移動距離Lを計算し、この移動距離Lに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。
本実施の形態では、送信端末10で加速度データを計測して移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合について説明する。
【0112】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200およびステップ201と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0113】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを対象期間分だけ保持しておき、これら対象期間Tc分の過去データから対象期間Tcにおける移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0114】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、移動距離L、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから判定要素データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。この判定方法については前述した第2の実施の形態と同様の方法を用いればよい。
【0115】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、より正確に移動距離Lまたは移動速度Vを計算できる。通常、送信端末10の電力消費を抑制するため、電波の送信間隔は秒単位となるため、この送信間隔で得られた加速度データから計算した移動距離には、ある程度の誤差が含まれる。本実施の形態によれば、送信間隔より短い周期で加速度データを取得して移動距離Lを計算できるため、より正確に移動距離Lを計算できる。したがって、移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0116】
また、本実施の形態では、演算装置30の移動有無を判定するために用いる判定要素データとして、送信端末10で加速度データから移動距離を計算して、演算装置30へ通知する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば判定要素データとして、送信端末10で加速度データから移動速度を計算して、演算装置30へ通知するようにしてもよく、前述した判定要素データとして移動距離を通知する場合と同様の効果が得られる。
【0117】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第4の実施の形態では、送信端末10で移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算して電波で送信し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。本実施の形態では、送信端末10で加速度データを計測して、送信端末10自身の移動有無を判定し、その判定結果を電波で送信する場合について説明する。
【0118】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200〜202と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0119】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを対象期間Tc分だけ保持しておき、これら対象期間Tc分の加速度データを取得して(ステップ200)、対象期間Tcにおける送信端末10の判定要素データとして、移動距離Lを計算する(ステップ201)。この後、送信制御部11は、得られた移動距離Lを判定距離Lthと比較することにより、送信端末10の移動有無を判定し(ステップ202)、得られた移動有無判定データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0120】
この際、移動距離Lおよび判定距離Lthに代えて、移動速度Vおよび判定速度Vthを用いてもよい。これら移動距離Lおよび移動速度Vの計算方法や、判定距離Lthおよび判定速度Vthの値については、第2の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0121】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、移動有無判定データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから移動有無判定データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。
これにより、演算装置30の移動有無判定部36での判定処理を簡素化することができる。
【0122】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で移動有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された移動有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、送信端末10の移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0123】
通常、送信端末10から演算装置30へ電波を送信する間隔は、送信端末10での電力消費を抑制するため、加速度データの検出間隔より長い間隔が用いられ、送信端末10から送信するデータ量も制限される。一方、送信端末10では、短い間隔で多くの加速度データを処理することができる。このため、演算装置30で送信端末10の移動有無を判定する場合と比較して、送信端末10で移動有無を判定したほうが、移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0124】
また、本実施の形態では、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データから、送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明したが、これら加速度データそのものを用いて、送信端末10の移動有無を判定してもよい。
【0125】
この場合には、送信制御部11において、得られた加速度データのうち特定の方向の加速度データACが、判定加速度ACthより大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の加速度データACの平均値など、統計処理を施した後の加速度データACを判定加速度ACthと比較してもよい。判定加速度ACthの値については、判定速度Vthを加速度データの取得間隔で除算した値、すなわち判定距離Lthを加速度データの取得間隔で2回除算した値を用いればよい。これにより、判定要素データを計算するための処理負担や所要時間を省くことができる。
【0126】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第2の実施の形態では、送信端末10から通知された加速度データに基づいて、演算装置30で送信端末10の移動距離Lを計算し、この移動距離Lに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。
本実施の形態では、送信端末10が人に取り付けられることを前提として、送信端末10で加速度データを計測して歩行の有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された歩行有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合について説明する。
【0127】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200およびステップ201と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0128】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを、歩行パターンの検出に必要な検出期間分だけ保持しておき、これら検出期間分の過去データから歩行パターンを検索する。一般に、人が歩行した場合、特有のパターンで加速度データが変化することが知られている。送信制御部11は、この歩行パターンの有無に応じて歩行有無を判定し、得られた歩行有無判定データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0129】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、歩行有無判定データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから歩行有無判定データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。
【0130】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で歩行有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された歩行有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、特に送信端末10が人に取り付けられるアプリケーションにおいて、送信端末10の移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0131】
また、本実施の形態では、加速度センサ14で計測した加速度データから歩行有無を判定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、加速度センサ14に代えて、歩行センサを設け、この歩行センサでの検出結果により、送信端末10の移動有無を判定してもよい。この歩行センサは、歩数計などで用いられて、人の歩行の歩数を検出する一般的なものでよい。
【0132】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0133】
1…位置検知システム、10…送信端末、11…送信制御部、12…送信部、13…アンテナ、14…加速度センサ、20…受信端末、21…アンテナ、22…受信部、23…通信処理部、30…演算装置、31…端末制御部、32…操作入力部、33…画面表示部、34…記憶部、35…位置計算部、36…移動有無判定部、37…対象期間変更部、40…通信回線、50…部屋。
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検知技術に関し、特に送信端末から送信された電波に関する複数の受信端末での受信状況に基づいて、当該送信端末の位置を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人や物の位置を検知する方法として、電波を発射する無線タグなどの送信端末を人や物に取り付け、電波の発射位置を測定する方法がある。電波を用いた位置検知方式には複数あるが、送信端末から送信された電波の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を用いる方式が一般的に用いられている。RSSI方式は、複数の受信端末において、送信端末から送信された電波のうち、送信端末から受信端末へ直接届いた直接波の受信強度に基づいて送信端末の位置を計算するものとなっている。
【0003】
このような位置検知方法において、位置検知の誤差の主な要因は、送信端末から受信端末へ送信された電波のマルチパスの影響と考えられる。特に、部屋で電波を送信した場合、部屋を構成する壁や天井などのほか、部屋に配置されている柱や間仕切りなどの物体により、電波が複雑に反射し、多数のマルチパスが発生する。
【0004】
このようなマルチパスの影響を抑制する方法として、スペースダイバーシティ方式が一般的に用いられる(例えば、特許文献1など参照)。この方式には、受信端末に複数のアンテナを設けておき、電波の伝搬状態のよい方のアンテナに切り替えて受信する方式のほか、同一箇所に複数の受信端末を併設して動作させ、これら受信端末のうち電波の伝搬状態のよい方の受信端末で得られた受信データを選択する方式がある。
また、このように受信端末側をマルチにする代わりに、送信端末を複数使用して、複数の電波を送信する送信ダイバーシティ方式についても、前述と同様の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−224489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、マルチパスの影響をある程度抑制できるものの、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアが増加するため、位置検知システム全体の消費電力やコストが増大するという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、ハードウェアを増加させることなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる位置検知技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる位置検知システムは、一定の送信間隔で電波を送信する送信端末と、この送信端末からの電波を受信して受信電界強度を計測する複数の受信端末と、これら受信端末で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末の端末位置を計算する位置計算部とを有する演算装置とを備え、位置計算部で、記憶部で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0009】
この際、演算装置に、対象期間における送信端末の移動有無を判定する移動有無判定部をさらに設け、位置計算部で、移動有無判定部により送信端末の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末の移動ありと判定された場合には、記憶部で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算するようにしてもよい。
【0010】
また、演算装置に、対象期間における送信端末の移動速度を計算し、得られた移動速度に応じて対象期間の長さを変更する対象期間変更部をさらに設けてもよい。
【0011】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから当該対象期間における送信端末の移動距離を計算し、得られた移動距離に基づいて、当該対象期間における送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0012】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから、当該対象期間における送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0013】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により加速度データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた加速度データを順次記憶し、対象期間変更部で、記憶部で記憶している加速度データのうち、対象期間に得られた加速度データから移動速度を計算するようにしてもよい。
【0014】
また、送信端末で、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて対象期間における自己の移動有無を判定し、この判定結果を示す判定データを電波により順次送信し、受信端末で、電波により判定データを受信し、記憶部で、受信端末で得られた判定データを順次記憶し、移動有無判定部で、記憶部で記憶している判定データのうち最新の判定データに基づき送信端末の移動有無を判定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる位置検知方法は、送信端末が、一定の送信間隔で電波を送信するステップと、複数の受信端末が、送信端末からの電波を受信して受信電界強度を計測するステップと、演算装置の記憶部が、受信端末で得られた受信電界強度を順次記憶するステップと、演算装置の位置計算部が、記憶部に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末の端末位置を計算する位置計算ステップとを備え、位置計算ステップで、記憶部で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0016】
この際、演算装置の移動有無判定部が、対象期間における送信端末の移動有無を判定する移動有無判定ステップをさらに設け、位置検出ステップで、移動有無判定ステップにより送信端末の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末の移動ありと判定された場合には、記憶部で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算するようにしてもよい。
【0017】
また、演算装置の対象期間変更部が、対象期間における送信端末の移動速度を計算し、得られた移動速度に応じて対象期間の長さを変更する対象期間変更ステップをさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、過去に計測した受信電界強度を用いて、スペースダイバーシティを実現することができるため、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアを追加することなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図2】受信結果データの構成例である。
【図3】第1の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【図5】第1のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。
【図6】送信端末の変位位置を示す説明図である。
【図7】第1のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【図8】送信端末TX1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】送信端末TX1のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図10】送信端末TX2のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】送信端末TX2のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図12】送信端末TX3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】送信端末TX3のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図14】第2のシミュレーション時の他の端末配置を示す説明図である。
【図15】人体の位置座標である。
【図16】第2のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【図17】第2のシミュレーションでの位置計算動作例を示す説明図である。
【図18】送信端末TX4のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図19】送信端末TX4のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【図20】第2の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図21】第2の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【図22】第2の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【図23】第3の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図24】第3の実施の形態にかかる演算装置での対象期間変更処理を示すフローチャートである。
【図25】対象期間計算モデルを示すグラフである。
【図26】第3の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
この位置検知システム1は、電波を送信する送信端末10から送信された電波を受信して、その電波に関する受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)などの受信結果を得る受信端末20と、これら受信端末20で得られた受信結果を、通信回線40を介して受信し、これら受信結果に基づいて、送信端末10の位置を検知する演算装置30とから構成されている。
【0022】
本実施の形態は、演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0023】
[送信端末の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる送信端末10の構成について詳細に説明する。
この送信端末10は、全体として電波を発射する無線タグなどの一般的な小型無線送信器からなり、位置検知の対象となる人や物に取り付けられる。この送信端末10には、主な構成として、送信制御部11、送信部12、およびアンテナ13が設けられている。
【0024】
送信制御部11は、専用の制御回路からなり、一定の送信間隔を計時する機能と、送信タイミングの到来に応じて、送信端末10識別用の自己の送信IDを含む送信データを生成して、送信部12へ通知する機能とを有している。
【0025】
送信部12は、送信制御部11からの送信データの通知に応じて、例えば2.45GHzなどの搬送波周波数で当該送信データを変調して送信信号を生成し、アンテナ13へ出力する機能を有している。
アンテナ13は、送信部12からの送信信号を電波として送信する機能を有している。
【0026】
[受信端末の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる受信端末20の構成について詳細に説明する。
この受信端末20は、全体として電波を受信する受信装置からなり、主な構成として、アンテナ21、受信部22、および通信処理部23が設けられている。
【0027】
アンテナ21は、送信端末10からの電波を受信するアンテナである。
受信部22は、アンテナ21で受信した電波を復調して送信端末10の送信IDを抽出する機能と、受信した電波の受信電界強度を計測する機能と、時計回路(図示せず)から当該電波の受信時刻、すなわち受信電界強度の計測時刻を取得する機能とを有している。
通信処理部23は、通信回線40を介して演算装置30とデータ通信を行う通信回路からなり、受信部22で得られた送信ID、受信電界強度、および計測時刻の組に、受信端末識別用の自己の受信IDを付加した受信結果データを、演算装置30へ送信する機能を有している。
【0028】
[演算装置の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムで用いる演算装置30の構成について詳細に説明する。
演算装置30は、全体としてサーバやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、主な機能部として、端末制御部31、操作入力部32、画面表示部33、記憶部34、および位置計算部35が設けられている。
【0029】
端末制御部31は、通信回線40を介して各受信端末20とデータ通信を行う通信回路からなり、各受信端末20から送信された受信結果データを受信する機能を有している。 操作入力部32は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して各機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部33は、LCDなどの画面表示装置からなり、各受信端末20で得られた受信結果や、送信端末10の位置などの各種情報を画面表示する機能を有している。
【0030】
記憶部34は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、各受信端末20の配置位置などの環境データや、受信端末20から受信した受信電界強度や送信IDなどの受信結果データなど、送信端末10の位置検知に用いる各種処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。
図2は、受信結果データの構成例である。ここでは、受信ID、計測時刻、および受信電界強度が組として登録されている。
【0031】
位置計算部35は、記憶部34で記憶している同一送信IDの受信電界強度のうち、当該計測時刻に基づいて端末位置計算の対象となる対象期間内に計測した受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択する機能と、選択したこれら最大受信電界強度から、例えば加重平均法に基づいて、送信端末10が存在する位置を計算する機能を有している。
【0032】
演算装置30のこれら機能のうち、位置計算部35については、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部34から読み込んだプログラムを実行することにより、各種処理を実行する演算処理部で実現すればよい。
【0033】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作について説明する。図3は、第1の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートである。
【0034】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0035】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0036】
演算装置30は、図3の位置計算処理を定期的に実行しており、まず、位置計算部35は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に計測した受信電界強度RSi(iは1以上の整数:受信端末20の番号)を取得する(ステップ100)。この対象期間Tcは一定時間長を有し、記憶部34の受信結果データが更新されるごとに、最新の受信結果データから過去へ遡った期間に設定される。
【0037】
次に、位置計算部35は、取得した対象期間Tc内における受信電界強度RSiから受信端末RXiごとに、その最大値、すなわち最大受信電界強度RSimaxを選択する(ステップ101)。
この後、選択した受信端末RXiごとの最大受信電界強度RSimaxから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ102)、一連の位置計算処理を終了する。
【0038】
加重平均法の具体例としては、まず、受信電界強度RSiから、それぞれの受信端末20ごとに、予め記憶部34に設定されている受信利得Giを減算して補正することにより、補正受信電界強度RSi’(=RSi−Gi)を計算する。
続いて、得られた補正受信電界強度RSi’をデシベル値(dB)から真値(W)で示されている補正受信電界強度Pi(=10RSI'/10)に変換する。
【0039】
次に、得られた補正受信電界強度Piに関する受信強度比Ri(=Pi/ΣPi)を計算する。
そして、これら受信強度比Riと記憶部34に予め設定されている受信端末20の座標位置Xi,Yiとに基づいて、送信端末10の座標位置X(=ΣXiRi)およびY(=ΣYiRi)を計算すればよい。
【0040】
[第1の実施の形態の動作例]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0041】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図4では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0042】
現在時刻がT5以降である場合、対象期間Tcは、時刻T5に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図4では、時刻T1〜T5の期間に設定されている。
したがって、位置計算部35は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0043】
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS21がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS32がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS21、RS32、RS45から、端末位置を計算する。
【0044】
[第1のシミュレーション結果]
次に、図5および図6を参照して、本実施の形態にかかる位置計算方法の第1のシミュレーション結果について説明する。図5は、第1のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。図6は、送信端末の変位位置を示す説明図である。
【0045】
送信端末10を人が携帯して使用することを想定した場合、オフィスなどでは人は椅子に座っている場合でも全く静止していることはなく、少し移動することが普通である。このため、送信端末10の位置も時間経過とともに変位する。このため、マルチパスの発生状況も変化して、受信端末20で受信電界強度が大きく変化する可能性があり、位置検知の誤差として現れると考えられる。
この第1のシミュレーションでは、送信端末10が変位した際に、計算で得られる送信端末10の端末位置がどのように変化するかをシミュレーションした。
【0046】
図5に示すように、このシミュレーションでは、コンクリート製で大きさが14.8m×7.8m×3m(X×Y×H)の矩形状の部屋50を用い、その天井に4つの受信端末RX1〜RX4を固定し、これら受信端末で計測した受信電界強度により、送信端末TX1〜TX3の位置を検知した。また、送信端末10および受信端末20のアンテナ13,21はそれぞれ無指向性とし、利得は0dBiとし、送信電力は0dBmとした。図5中に記載されている送信端末TX1〜TX3および受信端末RX1〜RX4の座標位置は、部屋50の左下角を原点とする。
【0047】
送信端末TX1,2の位置は、図6に示すように、位置P5を中心として上下左右に6cmずつずれた位置P1〜P9へ変位させた。これら位置P1〜P9の高さは、人の腰あたりの高さに相当する0.75mとした。これら変位が椅子に座った人の変位と見なすことができる。なお、変位距離6cmは、送信端末10からの電波の搬送波周波数2.45GHzのλ/2に相当しており、この部屋50で発生するマルチパスの位相ずれの大きさもこの程度である。これら送信端末TXの変位は、通常の時間経過を伴う送信端末TXの移動と見なすこともできる。また、送信端末TX3の変位距離は、6cmに代えて2cmとした。
【0048】
このような条件下で、送信端末TX1〜TX3をそれぞれ変位させて、受信端末RX1〜RX4での受信電界強度をシミュレーションにより計算した。図7は、第1のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
以下では、送信端末TX1〜TX3のそれぞれについて、位置計算方法の違いとそれぞれの誤差について検証した。
【0049】
まず、図8および図9を参照して、送信端末TX1について検証する。図8は、送信端末TX1のシミュレーション結果を示すグラフである。図9は、送信端末TX1のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図8および図9において、TX11〜TX19は、送信端末TX1を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0050】
送信端末TX1の変位は、X,Y方向に±6cmであるにもかかわらず、送信端末TX11〜TX19の計算位置は、図8に示されているように、X,Y方向に±1.5m程度ばらついており、送信端末TX1の変位が25倍程度にまで拡大されていることになるが、変位の方向と計算位置のばらつき方向とは一致していない。また、真値との距離については、TX13のように真値に極めて近いものもあるが、TX17のように1.9mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.56mである。
【0051】
これに対して、TX11〜TX19で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX12,TX17,TX12,TX13の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.35mまで低減されており、誤差平均から37.5%も誤差が低減されていることがわかる。
【0052】
次に、図10および図11を参照して、送信端末TX2について検証する。図10は、送信端末TX2のシミュレーション結果を示すグラフである。図11は、送信端末TX2のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図10および図11において、TX21〜TX29は、送信端末TX2を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0053】
送信端末TX2の変位は、X,Y方向に±6cmであるにもかかわらず、送信端末TX21〜TX29の計算位置は、図10に示されているように、大きくばらついている。このうち、TX22が真値に最も近いものの誤差は0.61mもあり、TX21のように2.11mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.80mである。
【0054】
これに対して、TX21〜TX29で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX29,TX26,TX28,TX27の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.40mまで低減されており、誤差平均から50%も誤差が低減されていることがわかる。
【0055】
最後に、図12および図13を参照して、送信端末TX3について検証する。図12は、送信端末TX3のシミュレーション結果を示すグラフである。図13は、送信端末TX3のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。図12および図13において、TX31〜TX39は、送信端末TX3を、図6の位置P1〜P9に変位させた場合の計算位置を示している。
【0056】
送信端末TX3の変位は、X,Y方向に±2cmであるにもかかわらず、送信端末TX31〜TX39の計算位置は、図12に示されているように、大きくばらついている。このうち、TX36のように真値に極めて近いものもあるが、TX38のように1.41mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.51mである。
【0057】
これに対して、TX31〜TX39で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図7の計算結果からTX39,TX31,TX39,TX37の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.47mまで低減されており、誤差平均から7.8%程度、誤差が低減されていることがわかる。
【0058】
前述したように、送信端末10の位置が移動した場合、マルチパスの発生状況が変化して、受信端末20で計測される受信電界強度が大きく変化する。例えば、2.45GHz帯の場合、送信端末10の位置が1cm異なるだけで、受信電界強度が10dBの変動を生じることも珍しくなく、このような受信電界強度の変動により、端末位置が数mも異なってしまう。
本方式によれば、前述したシミュレーション結果から、送信端末10が変位してマルチパルスの発生状況が変化しても、位置検知誤差が、9個の変位位置の誤差平均よりさらに低減されており、位置検知におけるマルチパスの影響が抑制されていることがわかる。
【0059】
[第2のシミュレーション結果]
次に、図14および図15を参照して、本実施の形態にかかる位置計算方法の第2のシミュレーション結果について説明する。図14は、第2のシミュレーション時の端末配置を示す説明図である。図15は、人体の位置座標である。
第1のシミュレーションでは、送信端末10が僅かに変位した場合における位置計算への影響について説明した。第2のシミュレーションでは、送信端末10の周囲で人体が移動した場合における位置計算への影響について説明する。
【0060】
送信端末10が取り付けられた人が全く移動しなくても、オフィスなどではその人の周囲に他の人が現れたり、周囲を他の人が通り過ぎたりすることが多い。このような場合には、他の人により送信端末10から受信端末20までの電波伝搬空間の状態が変わり、受信端末20で計測される受信電界強度が変化することが考えられる。
この第2のシミュレーションでは、部屋の中で送信端末10を持たない他の人の位置が変化した場合、計算で得られる送信端末10の端末位置がどのように変化するかをシミュレーションした。
【0061】
図14に示すように、このシミュレーションでは、第1のシミュレーションと同じ部屋50を用い、4つの受信端末RX1〜RX4を第1のシミュレーションと同じ位置に固定し、送信端末TX4は、第1のシミュレーションの送信端末TX3と同じ位置に固定した。
また、大きさが0.5m×0.3m×1.7m(X×Y×H)の直方体形状の人体A1〜A9を、部屋50の中のランダムに選択した位置に配置した。これら人体の材質としては、電気特性が近い「水」を用いた。
【0062】
このような条件下で、これら人体A1〜A9のいずれか1つを選択し、当該人体が存在する場合のそれぞれについて、受信端末RX1〜RX4での受信電界強度をシミュレーションにより計算した。図16は、第2のシミュレーションで得られた受信電界強度計算結果である。
【0063】
図17は、第2のシミュレーションでの位置計算動作例を示す説明図である。第2のシミュレーションは、送信端末TX4の位置を固定し、人体位置を時刻T1〜T9ごとに移動させたものと見なすことができる。図17の例では、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T9ごとに、人体位置がA1〜A9と移動した状態で、受信電界強度RSが計測されたことになる。
【0064】
各時刻T1〜T9において、受信端末RX1〜RX4で計測された受信電界強度RSを用いて送信端末TXの位置を計算した結果が、図18および図19におけるTX41〜TX49に相当し、これらを平均した値が図18および図19における平均値である。
【0065】
現在時刻がT9以降である場合、対象期間Tcは、時刻T9に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図17では、時刻T1〜T9の期間に設定されている。
したがって、位置計算部35は、時刻T1〜T9の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0066】
具体的には、受信端末RX1については、RS14がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS23がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS39がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS49がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS14、RS23、RS39、RS49から、端末位置を計算する。
【0067】
次に、図18および図19を参照して、人体A1〜A9のそれぞれについて、位置計算方法の違いとそれぞれの誤差について検証した。図18は、送信端末TX4のシミュレーション結果を示すグラフである。図19は、送信端末TX4のシミュレーション結果を示す位置計算結果である。
【0068】
送信端末TX4の位置が変位しないにもかかわらず、周囲の人の移動の影響で、位置計算結果において±30〜40cm程度ばらつきが発生している。真値との距離については、TX44のように真値に近いものもあるが、TX41のように1.2mも離れたものもあり、全体としては、真値との誤差平均が0.98mである。
【0069】
これに対して、TX41〜TX49で得られた受信電界強度から最大受信電界強度を選択して端末位置を計算する本方式によれば、RX1〜RX4について、図16の計算結果からTX44,TX43,TX49,TX49の最大受信電界強度が選択されて位置計算が行われた。結果として真値との誤差が0.73mまで低減されており、誤差平均から25.5%も誤差が低減されていることがわかる。
【0070】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、演算装置30に、受信端末20で得られた受信電界強度を順次記憶する記憶部34と、この記憶部34に記憶されている受信電界強度に基づいて送信端末10の端末位置を計算する位置計算部35とを設け、位置計算部35で、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末20ごとに選択し、これら最大受信電界強度から端末位置を計算するようにしたものである。
【0071】
これにより、過去に計測した受信電界強度を用いて、スペースダイバーシティを実現することができるため、アンテナ、受信端末、あるいは送信端末などのハードウェアを追加することなく、マルチパスの影響を抑制して高い検知精度を得ることができる。特に、シミュレーション結果から分かるように、送信端末10の位置が僅かに変位した場合や、送信端末10の周囲で人が移動した場合など、送信端末10の位置がほとんど変化しないにもかかわらず、マルチパス発生状況が大きく変化するような環境において、位置計算誤差を大幅に低減することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
次に、図20を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる位置検知システム1について説明する。図20は、第2の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0073】
第1の実施の形態の位置計算方法では、送信端末10の位置が変化しない場合、あるいは送信端末10の位置が狭い範囲で変位する場合、すなわち人が着座あるいは起立など、ほとんど静止している場合には有効であるが、人が歩行などで移動している場合、刻々と位置が変化するため、過去と現時点との受信電界強度のずれが大きくなり、前述のような効果が得られない。
本実施の形態では、送信端末10の移動有無を判定し、移動なしの場合には本方式を適用し、移動ありの場合には最新の受信電界強度から端末位置を計算する場合について説明する。
【0074】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、図20に示すように、演算装置30に移動有無判定部36が追加されているとともに、送信端末10に加速度センサ14が追加されている。
演算装置30の移動有無判定部36は、対象期間における送信端末10の移動有無を判定する機能を有している。
位置計算部35は、移動有無判定部36により送信端末10の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末10の移動ありと判定された場合には、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算する機能を有している。
【0075】
送信端末10の加速度センサ14は、加速度を計測する一般的な加速度センサからなり、送信端末10にかかった加速度を計測して、送信制御部11へ出力する機能を有している。
本実施の形態にかかる位置検知システム1におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0076】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図21を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1の動作について説明する。図21は、第2の実施の形態にかかる演算装置での位置計算処理を示すフローチャートであり、前述した図3と同じまたは同等部分については同一符号を付してある。
【0077】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、加速度センサ14で計測された加速度データを取得し、この加速度データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDと加速度データとを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0078】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、加速度データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0079】
演算装置30は、図21の位置計算処理を定期的に実行しており、まず、移動有無判定部36は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データACを取得し(ステップ200)、これら加速度データACから対象期間Tcにおける送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算する(ステップ201)。
【0080】
一般に、送信端末10の移動距離Lは、加速度データACを2階積分すれば求められる。また、送信端末10の移動速度Vは、加速度データACを1階積分すれば求められる。この際、第2の実施の形態における移動距離L算出時の2階積分の演算途中で得られた移動速度Vを用いてもよい。なお、各受信端末20では、送信端末10から同一の加速度データを受信するため、移動距離Lや移動速度Vの計算には、いずれの受信端末20で受信した加速データを用いてもよい。
【0081】
次に、移動有無判定部36は、得られた移動距離Lと記憶部34に予め設定されている判定距離Lthとを比較する(ステップ202)。
ここで、移動距離Lが判定距離Lth以下の場合には(ステップ202:YES)、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動なしと判定し、前述した本方式に基づき送信端末10の位置を計算する。判定距離Lthの値については、位置検知システム1をそれぞれの環境で用いた場合における端末位置の計算誤差を用いてもよい。後述するシミュレーション結果によれば、搬送波周波数2.45GHzにおいて、1〜2mであった。
【0082】
以下では、判定要素データとして移動距離Lを用いる場合を例として説明するが、判定要素データとして移動速度Vを用いる場合には、判定距離Lthに代えて判定速度Vthを用いればよい。この場合、例えば水平や垂直など、特定の方向の移動速度Vが、判定速度Vthよりも大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の移動速度Vの平均値など、統計処理を施した後の移動速度Vを判定速度Vthと比較してもよい。判定速度Vthの値については、判定距離Lthを加速度データの取得間隔で除算した値を用いればよい。
【0083】
このようにして、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動なしと判定された場合、位置計算部35は、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に計測した受信電界強度RSi(iは1以上の整数:受信端末20の番号)を取得する(ステップ100)。
次に、位置計算部35は、取得した対象期間Tc内における受信電界強度RSiから受信端末RXiごとに、その最大値、すなわち最大受信電界強度RSimaxを選択する(ステップ101)。
この後、選択した受信端末RXiごとの最大受信電界強度RSimaxから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ102)、一連の位置計算処理を終了する。
【0084】
一方、ステップ202において、移動距離Lが判定距離Lthより大きい場合には(ステップ202:YES)、対象期間Tcにおいて送信端末10の移動ありと判定する。
この場合、位置計算部35は、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、最新に計測した最新受信電界強度RSinewを取得し(ステップ203)、この最新受信電界強度RSinewから、例えば加重平均法に基づいて、当該送信IDを持つ送信端末10の位置を計算し(ステップ204)、一連の位置計算処理を終了する。
【0085】
[第2の実施の形態の動作例]
次に、図22を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図22は、第2の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0086】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図22では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0087】
また、送信端末TX1において加速度データが計測されて受信端末RX1〜RX4へ送信され、時刻T1〜T5において、加速度データAC1〜AC5が受信されている。
現在時刻がT5以降である場合、対象期間Tcは、時刻T5に計測された最新の受信電界強度から過去に遡った、一定時間長の期間に設定され、図22では、時刻T1〜T5に設定されている。
【0088】
したがって、移動有無判定部36は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に受信された加速度データAC1〜AC5に基づいて、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動距離Lを計算し、判定距離Lthと比較する。
ここで、L≦Lthの場合、移動有無判定部36は、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動なしと判定し、位置計算部35は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
【0089】
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS21がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS32がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS21、RS32、RS45から、端末位置を計算する。
【0090】
一方、L>Lthの場合、移動有無判定部36は、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動ありと判定し、位置計算部35は、時刻T5に計測された最新受信電界強度RSinew、すなわちRS15,RS25,RS35,RS45から、端末位置を計算する。
【0091】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、送信端末10の位置を計算する際、送信端末10の移動有無に応じて、対象期間Tc内から選択した最大受信電界強度RSimaxを用いるか、最新受信電界強度RSinewを用いるかを選択するようにしたので、送信端末10が停止している場合には、過去に計測した受信電界強度に基づき高い精度で端末位置を計算でき、送信端末10が移動を開始した場合には、過去の受信電界強度に左右されることなく最新の端末位置を計算することが可能となる。
【0092】
また、本実施の形態では、送信端末10で、加速度センサ14により送信間隔で計測した加速度データを電波により順次送信し、受信端末20で、電波により加速度データを受信し、演算装置30の記憶部34で、受信端末20で得られた加速度データを順次記憶し、移動有無判定部36で、記憶部34で記憶している加速度データのうち、対象期間Tcに得られた加速度データに基づいて、当該対象期間Tcにおける送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、送信端末10の移動有無を正確に判定できる。
【0093】
また、本実施の形態では、演算装置30の移動有無判定部36において、送信端末10から得た加速度データから、送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明したが、送信端末10から得た加速度データそのものを用いて、送信端末10の移動有無を判定してもよい。
【0094】
この場合には、移動有無判定部36において、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データを取得し、これら加速度データのうち特定の方向の加速度データACが、判定加速度ACthより大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の加速度データACの平均値など、統計処理を施した後の加速度データACを判定加速度ACthと比較してもよい。判定加速度ACthの値については、判定速度Vthを加速度データの取得間隔で除算した値、すなわち判定距離Lthを加速度データの取得間隔で2回除算した値を用いればよい。これにより、判定要素データを計算するための処理負担や所要時間を省くことができる。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、図23を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。図23は、第3の実施の形態にかかる位置検知システムの構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0096】
第1および第2の実施の形態では、過去に計測した受信電界強度のうちから最大受信電界強度RSimaxを選択する対象期間Tcを一定期間長とした場合を例として説明した。本実施の形態では、送信端末10の移動速度に応じて対象期間Tcの期間長を変更する場合について説明する。
【0097】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態では、図23に示すように、演算装置30に対象期間変更部37が追加されているとともに、送信端末10に加速度センサ14が追加されている。
演算装置30の対象期間変更部37は、対象期間Tcの期間長を変更する機能を有している。
位置計算部35は、移動有無判定部36により送信端末10の移動なしと判定された場合には最大受信電界強度に基づき端末位置を計算し、送信端末10の移動ありと判定された場合には、記憶部34で記憶している受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき端末位置を計算する機能を有している。
【0098】
送信端末10の加速度センサ14は、加速度を計測する一般的な加速度センサからなり、送信端末10にかかった加速度を計測して、送信制御部11へ出力する機能を有している。
本実施の形態にかかる位置検知システム1におけるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0099】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図24を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システム1の動作について説明する。図24は、第3の実施の形態にかかる演算装置での対象期間変更処理を示すフローチャートである。
【0100】
送信端末10は、一定の送信間隔あるいは任意のイベントが発生した時点で、加速度センサ14で計測された加速度データを取得し、この加速度データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
受信端末20の受信部22は、アンテナ21を介して送信端末10からの電波を受信し、その電波を復調して送信IDと加速度データとを抽出するとともに、当該電波の受信電界強度を計測し、さらにその計測時刻を取得する。
【0101】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、加速度データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
【0102】
演算装置30は、図24の対象期間変更処理を定期的に実行しており、まず、対象期間変更部37は、各受信端末20からの受信結果データが揃った送信IDを選択し、当該送信IDに関する各受信端末20の受信結果データのうちから、対象期間Tc内に受信した加速度データACを取得し(ステップ300)、これら加速度データACから対象期間Tcにおける送信端末10の移動速度Vを計算する(ステップ301)。
【0103】
一般に、送信端末10の移動速度Vは、加速度データACを1階積分すれば求められる。この際、第2の実施の形態における移動距離L算出時の2階積分の演算途中で得られた移動速度Vを用いてもよい。なお、各受信端末20では、送信端末10から同一の加速度データを受信するため、移動速度Vの計算には、いずれの受信端末20で受信した加速データを用いてもよい。
【0104】
次に、対象期間変更部37は、得られた送信端末10の移動速度Vに対応する新たな対象期間Tc’を、記憶部34に予め登録されている対象期間計算モデル、例えば移動速度Vと対象期間Tcとの関係を示す関数やテーブルを参照して計算する(ステップ302)。
【0105】
図25は、対象期間計算モデルを示すグラフである。送信端末10の移動速度Vが大きくなればなるほど、送信端末10の過去の位置が最新位置と大きく乖離し、送信端末10の最新位置の計算に対する過去の受信電界強度の寄与率が小さくなる傾向があると考えられる。このため、移動速度Vと対象期間長Tcとは、図25に示すように、反比例のグラフで示すことができる。このグラフを示す関数やテーブルについては、予め実験的に移動速度Vと対象期間長Tcと変化させて、一定の誤差範囲内で端末位置が計算できる関係を求めておけばよい。
【0106】
この後、対象期間変更部37は、元の対象期間Tcを新たな対象期間Tc’に変更し(ステップ303)、一連の対象期間変更処理を終了する。
これにより、これ以降の位置計算処理や対象期間変更処理において、変更後の対象期間Tc’が用いられる。
【0107】
[第3の実施の形態の動作例]
次に、図26を参照して、本実施の形態にかかる位置検知システムの動作例について説明する。図26は、第3の実施の形態にかかる位置計算動作の動作例を示す説明図である。
ここでは、4つの受信端末RX1,RX2,RX3,RX4が設置されており、時刻T1〜T5ごとに、受信電界強度RSが計測されている。
【0108】
具体的には、受信端末RX1では、時刻T1〜T5において、RS11〜RS15が計測され、受信端末RX2では、時刻T1〜T5において、RS21〜RS25が計測され、受信端末RX3では、時刻T1〜T5において、RS31〜RS35が計測され、受信端末RX4では、時刻T1〜T5において、RS41〜RS45が計測されている。特に、図26では、受信電界強度の大小が円の大きさで示されている。
【0109】
また、送信端末TX1において加速度データが計測されて受信端末RX1〜RX4へ送信され、時刻T1〜T5において、加速度データAC1〜AC5が受信されている。
現在時刻がT5以降である場合、変更前の対象期間Tcは、時刻T1〜T5に設定されている。
したがって、対象期間変更部37は、時刻T1〜T5の対象期間Tc内に受信された加速度データAC1〜AC5に基づいて、対象期間Tcにおける送信端末TX1の移動速度Vを計算し、新たな対象期間長Tc’に変更する。ここで、移動速度Vが大きくなった場合、元の対象期間Tcより短い、時刻T3〜T5が対象期間Tc’となる。
【0110】
これにより、その後、位置計算部35は、時刻T3〜T5の対象期間Tc内に計測された受信電界強度RSのうち、受信端末RXiごとに、最大受信電界強度RSimaxを選択する。
具体的には、受信端末RX1については、RS13がRS1maxとして選択され、受信端末RX2については、RS24がRS2maxとして選択され、受信端末RX3については、RS34がRS3maxとして選択され、受信端末RX4については、RS45がRS4maxとして選択される。
位置計算部35は、このようにして選択したRS13、RS24、RS34、RS45から、端末位置を計算することになる。
【0111】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第2の実施の形態では、送信端末10から通知された加速度データに基づいて、演算装置30で送信端末10の移動距離Lを計算し、この移動距離Lに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。
本実施の形態では、送信端末10で加速度データを計測して移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合について説明する。
【0112】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200およびステップ201と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0113】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを対象期間分だけ保持しておき、これら対象期間Tc分の過去データから対象期間Tcにおける移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0114】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、移動距離L、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから判定要素データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。この判定方法については前述した第2の実施の形態と同様の方法を用いればよい。
【0115】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、より正確に移動距離Lまたは移動速度Vを計算できる。通常、送信端末10の電力消費を抑制するため、電波の送信間隔は秒単位となるため、この送信間隔で得られた加速度データから計算した移動距離には、ある程度の誤差が含まれる。本実施の形態によれば、送信間隔より短い周期で加速度データを取得して移動距離Lを計算できるため、より正確に移動距離Lを計算できる。したがって、移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0116】
また、本実施の形態では、演算装置30の移動有無を判定するために用いる判定要素データとして、送信端末10で加速度データから移動距離を計算して、演算装置30へ通知する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば判定要素データとして、送信端末10で加速度データから移動速度を計算して、演算装置30へ通知するようにしてもよく、前述した判定要素データとして移動距離を通知する場合と同様の効果が得られる。
【0117】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第4の実施の形態では、送信端末10で移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算して電波で送信し、演算装置30で送信端末10から通知された判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。本実施の形態では、送信端末10で加速度データを計測して、送信端末10自身の移動有無を判定し、その判定結果を電波で送信する場合について説明する。
【0118】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200〜202と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0119】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを対象期間Tc分だけ保持しておき、これら対象期間Tc分の加速度データを取得して(ステップ200)、対象期間Tcにおける送信端末10の判定要素データとして、移動距離Lを計算する(ステップ201)。この後、送信制御部11は、得られた移動距離Lを判定距離Lthと比較することにより、送信端末10の移動有無を判定し(ステップ202)、得られた移動有無判定データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0120】
この際、移動距離Lおよび判定距離Lthに代えて、移動速度Vおよび判定速度Vthを用いてもよい。これら移動距離Lおよび移動速度Vの計算方法や、判定距離Lthおよび判定速度Vthの値については、第2の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0121】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、移動有無判定データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから移動有無判定データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。
これにより、演算装置30の移動有無判定部36での判定処理を簡素化することができる。
【0122】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で移動有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された移動有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、送信端末10の移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0123】
通常、送信端末10から演算装置30へ電波を送信する間隔は、送信端末10での電力消費を抑制するため、加速度データの検出間隔より長い間隔が用いられ、送信端末10から送信するデータ量も制限される。一方、送信端末10では、短い間隔で多くの加速度データを処理することができる。このため、演算装置30で送信端末10の移動有無を判定する場合と比較して、送信端末10で移動有無を判定したほうが、移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0124】
また、本実施の形態では、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データから、送信端末10の移動距離Lまたは移動速度Vからなる判定要素データを計算し、この判定要素データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明したが、これら加速度データそのものを用いて、送信端末10の移動有無を判定してもよい。
【0125】
この場合には、送信制御部11において、得られた加速度データのうち特定の方向の加速度データACが、判定加速度ACthより大きければ、移動ありと判定すればよい。この際、誤差やばらつきを考慮して、複数の加速度データACの平均値など、統計処理を施した後の加速度データACを判定加速度ACthと比較してもよい。判定加速度ACthの値については、判定速度Vthを加速度データの取得間隔で除算した値、すなわち判定距離Lthを加速度データの取得間隔で2回除算した値を用いればよい。これにより、判定要素データを計算するための処理負担や所要時間を省くことができる。
【0126】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態にかかる位置検知システムについて説明する。
第2の実施の形態では、送信端末10から通知された加速度データに基づいて、演算装置30で送信端末10の移動距離Lを計算し、この移動距離Lに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合を例として説明した。
本実施の形態では、送信端末10が人に取り付けられることを前提として、送信端末10で加速度データを計測して歩行の有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された歩行有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定する場合について説明する。
【0127】
本実施の形態にかかる位置検知システム1の構成は、前述した図20と同様である。また、本実施の形態にかかる位置検知システム1の位置計算処理は、前述した図21と同様であるが、ステップ200およびステップ201と同等の処理が送信端末10で実行される。
【0128】
すなわち、送信端末10の送信制御部11において、加速度センサ14で計測した加速度データを、歩行パターンの検出に必要な検出期間分だけ保持しておき、これら検出期間分の過去データから歩行パターンを検索する。一般に、人が歩行した場合、特有のパターンで加速度データが変化することが知られている。送信制御部11は、この歩行パターンの有無に応じて歩行有無を判定し、得られた歩行有無判定データと自己に固有の送信IDを含む電波を送信する。
【0129】
受信端末20の通信処理部23は、これら送信ID、歩行有無判定データ、受信電界強度、および計測時刻の組に、自己の受信IDを付加した受信結果データを、通信回線40から演算装置30へ送信する。
演算装置30の端末制御部31により、各受信端末20からの受信結果データを受信し、記憶部34へ順次格納する。
この後、移動有無判定部36は、記憶部34の受信結果データから歩行有無判定データを取得し、送信端末10の移動有無判定を行う。
【0130】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、送信端末10で歩行有無を判定し、演算装置30で送信端末10から通知された歩行有無判定データに基づいて送信端末10の移動有無を判定するようにしたので、特に送信端末10が人に取り付けられるアプリケーションにおいて、送信端末10の移動有無を精度良く判定でき、結果として位置検知精度を改善できる。
【0131】
また、本実施の形態では、加速度センサ14で計測した加速度データから歩行有無を判定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、加速度センサ14に代えて、歩行センサを設け、この歩行センサでの検出結果により、送信端末10の移動有無を判定してもよい。この歩行センサは、歩数計などで用いられて、人の歩行の歩数を検出する一般的なものでよい。
【0132】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0133】
1…位置検知システム、10…送信端末、11…送信制御部、12…送信部、13…アンテナ、14…加速度センサ、20…受信端末、21…アンテナ、22…受信部、23…通信処理部、30…演算装置、31…端末制御部、32…操作入力部、33…画面表示部、34…記憶部、35…位置計算部、36…移動有無判定部、37…対象期間変更部、40…通信回線、50…部屋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の送信間隔で電波を送信する送信端末と、
この送信端末からの前記電波を受信して受信電界強度を計測する複数の受信端末と、
これら受信端末で得られた前記受信電界強度を順次記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている前記受信電界強度に基づいて前記送信端末の端末位置を計算する位置計算部とを有する演算装置と
を備え、
前記位置計算部は、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検知システムにおいて、
前記演算装置は、前記対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する移動有無判定部をさらに有し、
前記位置計算部は、前記移動有無判定部により前記送信端末の移動なしと判定された場合には前記最大受信電界強度に基づき前記端末位置を計算し、前記送信端末の移動ありと判定された場合には、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記演算装置は、前記対象期間における前記送信端末の移動速度を計算し、得られた前記移動速度に応じて前記対象期間の長さを変更する対象期間変更部をさらに有する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項4】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから当該対象期間における前記送信端末の移動距離または移動速度からなる判定要素データを計算し、得られた判定要素データに基づいて、当該対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項5】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから、当該対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項6】
請求項3に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記対象期間変更部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから前記移動速度を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項7】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて前記対象期間における自己の移動距離または移動速度からなる判定要素データを計算し、得られた前記判定要素データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記判定要素データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記判定要素データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記判定要素データに基づき前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項8】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて前記対象期間における自己の移動有無を判定し、この判定結果を示す判定データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記判定データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記判定データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記判定データのうち最新の判定データに基づき前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項9】
送信端末が、一定の送信間隔で電波を送信するステップと、
複数の受信端末が、前記送信端末からの前記電波を受信して受信電界強度を計測するステップと、
演算装置の記憶部が、前記受信端末で得られた前記受信電界強度を順次記憶するステップと、
前記演算装置の位置計算部が、前記記憶部に記憶されている前記受信電界強度に基づいて前記送信端末の端末位置を計算する位置計算ステップとを備え、
前記位置計算ステップは、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知方法。
【請求項10】
請求項9に記載の位置検知方法において、
前記演算装置の移動有無判定部が、前記対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する移動有無判定ステップをさらに備え、
前記位置検出ステップは、前記移動有無判定ステップにより前記送信端末の移動なしと判定された場合には前記最大受信電界強度に基づき前記端末位置を計算し、前記送信端末の移動ありと判定された場合には、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の位置検知方法において、
前記演算装置の対象期間変更部が、前記対象期間における前記送信端末の移動速度を計算し、得られた前記移動速度に応じて前記対象期間の長さを変更する対象期間変更ステップをさらに備えることを特徴とする位置検知方法。
【請求項1】
一定の送信間隔で電波を送信する送信端末と、
この送信端末からの前記電波を受信して受信電界強度を計測する複数の受信端末と、
これら受信端末で得られた前記受信電界強度を順次記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている前記受信電界強度に基づいて前記送信端末の端末位置を計算する位置計算部とを有する演算装置と
を備え、
前記位置計算部は、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検知システムにおいて、
前記演算装置は、前記対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する移動有無判定部をさらに有し、
前記位置計算部は、前記移動有無判定部により前記送信端末の移動なしと判定された場合には前記最大受信電界強度に基づき前記端末位置を計算し、前記送信端末の移動ありと判定された場合には、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記演算装置は、前記対象期間における前記送信端末の移動速度を計算し、得られた前記移動速度に応じて前記対象期間の長さを変更する対象期間変更部をさらに有する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項4】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから当該対象期間における前記送信端末の移動距離または移動速度からなる判定要素データを計算し、得られた判定要素データに基づいて、当該対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項5】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから、当該対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項6】
請求項3に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記加速度データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記加速度データを順次記憶し、
前記対象期間変更部は、前記記憶部で記憶している前記加速度データのうち、前記対象期間に得られた加速度データから前記移動速度を計算する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項7】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて前記対象期間における自己の移動距離または移動速度からなる判定要素データを計算し、得られた前記判定要素データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記判定要素データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記判定要素データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記判定要素データに基づき前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項8】
請求項2に記載の位置検知システムにおいて、
前記送信端末は、加速度センサにより計測した加速度データを順次保持し、これら加速度データに基づいて前記対象期間における自己の移動有無を判定し、この判定結果を示す判定データを前記電波により順次送信し、
前記受信端末は、前記電波により前記判定データを受信し、
前記記憶部は、前記受信端末で得られた前記判定データを順次記憶し、
前記移動有無判定部は、前記記憶部で記憶している前記判定データのうち最新の判定データに基づき前記送信端末の移動有無を判定する
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項9】
送信端末が、一定の送信間隔で電波を送信するステップと、
複数の受信端末が、前記送信端末からの前記電波を受信して受信電界強度を計測するステップと、
演算装置の記憶部が、前記受信端末で得られた前記受信電界強度を順次記憶するステップと、
前記演算装置の位置計算部が、前記記憶部に記憶されている前記受信電界強度に基づいて前記送信端末の端末位置を計算する位置計算ステップとを備え、
前記位置計算ステップは、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち、端末位置計算の対象となる対象期間内に得られた受信電界強度の最大受信電界強度を当該受信端末ごとに選択し、これら最大受信電界強度から前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知方法。
【請求項10】
請求項9に記載の位置検知方法において、
前記演算装置の移動有無判定部が、前記対象期間における前記送信端末の移動有無を判定する移動有無判定ステップをさらに備え、
前記位置検出ステップは、前記移動有無判定ステップにより前記送信端末の移動なしと判定された場合には前記最大受信電界強度に基づき前記端末位置を計算し、前記送信端末の移動ありと判定された場合には、前記記憶部で記憶している前記受信電界強度のうち最新の受信電界強度に基づき前記端末位置を計算する
ことを特徴とする位置検知方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の位置検知方法において、
前記演算装置の対象期間変更部が、前記対象期間における前記送信端末の移動速度を計算し、得られた前記移動速度に応じて前記対象期間の長さを変更する対象期間変更ステップをさらに備えることを特徴とする位置検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−32152(P2012−32152A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169023(P2010−169023)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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