説明

位置測定システム

【課題】簡易な設備構成で、かつ正確に位置情報を補正することが可能な位置測定システムを提供する。
【解決手段】位置測定システム1は、レールの変位を計測する変位センサ34と、位置を計測する距離計31と、データ処理装置4と、を移動体2に搭載している。また、位置測定システム1のデータ処理装置4は、各遊間9の位置情報が登録されている遊間位置管理DB43を備える。データ処理装置4の制御部41は、変位センサ34の計測データ及び距離計31の計測位置データを監視している。制御部41は、変位センサ34の計測データが遊間9に固有の特徴的なデータを示した際における計測位置データまたはその近傍にある遊間位置情報を遊間位置管理DB43から抽出し、予測値として保持する。そして、距離計31による計測位置データと、抽出した予測値とを照合し、一致しない場合は、計測した距離を予測値(登録されている遊間位置情報)に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置測定システムにおける位置情報の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、列車の運行の安全を確保するために、レールの継ぎ目(遊間)が適正な間隔を保っているか否かが定期的に測定されている。このような測定を行なうレール変位量測定装置としては、例えば、特許文献1に示すような光学的レール変位量検出器を軌道検測車に搭載して測定する技術等が公知である。
【0003】
一方、検測車自体の位置を計測する技術として、検測車等の車輪にロータリーエンコーダを設け、パルス数を計数して所定の基点からの距離を求めたり、特許文献2に示す移動体自己位置検出方法のようにGPS(Global Positioning System)等を利用するもの等が知られている。特許文献2では、GPSと地上に設けられた地上マーカとを利用して、移動体が地上マーカに到達するごとに、DGPSを用いた測位を行い、位置座標を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−344304号公報
【特許文献2】特開2003−267220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献2では、GPS情報が取得できない箇所に入ってしまうと、位置情報を把握することは困難であった。また、地上に数多くのマーカを設ける必要があるため、その設置や管理、或いはコスト負担が大きいものであった。また、ロータリーエンコーダを用いた場合にも、車輪の空転等が生じることがあり、位置情報を正確に取得することは困難であった。
【0006】
本発明は、前述した問題を鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な設備構成で、かつ正確に位置情報を補正することが可能な位置測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明は、移動体に搭載され、移動体自体の位置を測定する位置測定システムであって、対象物を計測する対象物計測手段と、当該移動体の位置情報を計測する位置計測手段と、各対象物の備えられている位置情報が予め登録されている位置データベースと、前記対象物計測手段にて取得した計測データ及び前記位置計測手段にて取得した計測位置データを監視するデータ処理手段と、を備え、前記データ処理手段は、前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示す際において取得された前記計測位置データまたはその近傍の値である位置情報を、前記位置データベースから対象物の位置の予測値として抽出し、抽出された位置情報と、前記計測位置データとが異なる場合に、該計測位置データを抽出された位置情報に補正する補正手段を備えることを特徴とする位置測定システムである。
【0008】
また、前記データ処理手段は、前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示す際に、その旨を報知するとともに、前記補正手段により補正した計測位置データを表示する第1報知手段を更に備えることが望ましい。
【0009】
また、前記データ処理手段は、前記位置データベースに登録されている各対象物の配置位置において、前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示さない場合は、その旨を報知する第2報知手段を備えることが望ましい。
【0010】
また、前記対象物は、軌道の遊間であり、前記対象物計測手段による計測データは、前記遊間において遊間固有の特徴的なデータを示すことが望ましい。
【0011】
また、前記移動体は、軌道上を走行する車両であることが望ましい。
【0012】
また、前記位置計測手段は、前記移動体に設けられる車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な設備構成で、かつ正確に位置情報を補正することが可能な位置測定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態にかかる位置測定システム1の全体概略図
【図2】位置測定システム1のハードウェア構成図
【図3】遊間位置管理DB43のデータ構成を示す図
【図4】位置補正処理の流れを示すフローチャート
【図5】基点設定画面101の一例
【図6】遊間9の検測を行う際に表示される検測画面5Aの一例
【図7】遊間9を検出しないで通過した場合に表示される検測画面5Bの一例
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態の位置測定システム1の構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、位置測定システム1は、台車等の移動体2に、当該移動体2の位置を計測する距離計31と、レール7の変位を計測する変位センサ34と、データ処理装置4と、を備えて構成される。移動体2は、作業者8によって押されて移動するもの、或いは自走式のいずれであってもよい。位置測定システム1は、例えば、レール7の遊間9を検測する検測車等に設けられ、対象物の検測を行う一方で、移動体2自体の位置を計測している。
【0018】
ここで、位置測定システム1における「検測」とは、各種センサを用いて、対象物について調査のために計測データを得ることであり、以下、「計測」の語と区別して使用する。例えば変位センサ34及び変位センサヘッド34aによる遊間9の変位の測定、または図示しない温度センサによる温度の測定、その他の物理量の計測等は検測に含まれる。すなわち、変位センサ34は、レール7の変位の「計測」及び遊間9の変位の「検測」のいずれにも利用される。
【0019】
本実施の形態の位置測定システム1では、軌道(レール)7,7,・・・に設けられる遊間9を計測(及び検測)の対象物とする。軌道(レール)7、7の遊間9において、変位センサ34は特徴的な波形データを示す。
移動体2の車輪21には、例えばロータリーエンコーダ等の距離計31(位置計測手段)が設けられている。
【0020】
図2に示すように、変位センサ34(対象物計測手段)及び距離計31(位置情報取得手段)は、インターフェース(I/F)48を介して、データ処理装置4に接続される。
【0021】
距離計31は、例えば、ロータリーエンコーダ等により構成され、移動体2の車輪の回転数に応じたパルス信号を、連続的にデータ処理装置4に出力する。データ処理装置4は、入力されたパルス信号をパルスカウンタ(不図示)にて計数する。
【0022】
変位センサ34は、対象物の変位を計測するセンサであり、例えば、レーザ変位計を用いる。変位センサ34は当該位置測定システム1の移動中、常時レール7,7,・・・の変位を計測しており、その計測データをデータ処理装置4に連続的に出力する。変位センサ34による計測データは、対象物(遊間9)を計測した際、時間的不変性のある特徴量を示すものとする。また、その特徴量は、対象物毎に異なる値、波形等を示すものであってもよいが、少なくともレールの傷等のようなものと、対象物(遊間9)とを区別できるものとする。
ただし、万一、レールの傷等が上述の特徴量と類似し、誤って遊間9と判別された場合にも、後述する位置補正処理を行うことにより、誤認識を避けることが可能である。
【0023】
データ処理装置4は、変位センサ34から入力される計測データ、及び距離計31のパルス数を常時監視する。またデータ処理装置4は、変位センサ34の計測データが対象物に固有の特徴的なデータを示すか否かを判定する。特徴的なデータとは、ここでは、遊間9を計測した際に表れる特徴的な波形データとする。なお、この特徴的なデータの基準(基準特徴量)は、データ処理装置4の記憶部42等に記憶されているものとする。
【0024】
データ処理装置4は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、PC4という)により構成される。
PC4は、制御部41、記憶部42、表示部44、入力部45、通信部46、メディア入出力部47、I/F部48、バス49等により構成される。また、PC4は、遊間位置管理DB(位置データベース)43を備える。
【0025】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部42、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス49を介して接続された各装置を駆動制御する。また、制御部41は、変位センサ34の計測データや距離計31の計測位置データを用いて、後述する位置補正に関する処理(図4参照)を実行する。
【0026】
ROMは、不揮発性メモリであり、PC4のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部42、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部41が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0027】
記憶部42は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部41が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部41により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0028】
また本実施の形態において、記憶部42には、変位センサ34が対象物を計測した際に表れる対象物固有の特徴的なデータの基準(基準特徴量)が予め設定され、格納されているものとする。制御部41は、変位センサ34の計測データが、基準特徴量と一致するか、或いは許容誤差範囲内にある場合に、対象物を検出したと認識するものとする。
【0029】
表示部44は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してPC4のビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。入力部45は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部45を介して、PC4に対して操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0030】
通信部46は、通信制御装置、通信ポート等を有し、PC4とネットワーク間等の通信を媒介する通信インタフェースであり、例えば、位置測定システム1外部のサーバ機器等との通信接続を媒介する。メディア入出力部47(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0031】
I/F(インタフェース)部48は、PC4にセンサや周辺機器を接続するためのポートであり、I/F部48を介してPC4は変位センサ34、距離計31、その他の周辺機器とのデータの送受信を行う。I/F部48は、上述の周辺機器等との接続を媒介するためのAD変換カードや、通信ケーブル等を含む。周辺機器等との接続形態は有線、無線を問わない。
【0032】
遊間位置管理DB43は、遊間9(対象物)の位置情報を予め登録したものである。
図3は、遊間位置管理DB43のデータ構成を示す図である。図3に示すように、遊間位置管理DB43には、各遊間9の識別情報である遊間IDと、遊間9の位置(以下、遊間位置情報という)とが対応付けて格納されている。遊間位置情報は、ここでは、路線、線路毎に定められている所定の基点からの距離(キロ程)が登録されるものとする。
【0033】
遊間位置管理DB43に登録された遊間位置情報は、後述する位置補正処理において、制御部41により参照される。
PC4の制御部41は、変位センサ34が遊間9に固有の特徴的な計測データを得た際における距離計31の計測位置データまたはその近傍の値(例えば、前後Xcm以内)にある遊間位置情報を、遊間位置管理DB43から抽出し、抽出した値を遊間9(遊間9が複数ある場合は、未計測の遊間9であって、それ以前に計測済みとなった最後の遊間の次にある遊間)の位置の予測値とする。また、制御部41は、予測した遊間9の位置と、上述の計測位置データとを照合し、それらに誤差がある場合に、計測位置データを予測した遊間位置情報の値に補正する。
また、遊間位置管理DB43に登録されている遊間位置情報の位置において、変位センサ34が遊間9に固有の特徴的な計測データを得ない場合には、PC4の制御部41によって、その旨が報知される。
【0034】
バス49は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0035】
次に、本発明に係る位置測定システム1における位置補正処理の流れを、図4のフローチャート、及び図5〜図7の画面例を参照して説明する。
【0036】
図4のフローチャートに示す位置補正処理が開始される前に、作業者8の操作によって、入力部45から遊間9の測定を開始する指示が入力されると、PC4の制御部41は、まず基点設定画面101(図5)に関するデータを記憶部42から読み出し、表示部44に表示する。図5に示す基点設定画面101において、計測路線(路線名)や計測線路(本線、副本線等)、計測方向(起点→終点/終点→起点)等の初期設定が行なわれると、制御部41は、遊間位置管理DB43から設定された路線、線路、方向の遊間位置情報を取得し、RAMに保持するとともに、計測場所指定欄105に一覧表示する。
【0037】
作業者8により、計測場所指定欄105から計測対象とする遊間9(計測場所)が指定され、検測対象(遊間校正または温度校正等)が指定され、「OK」ボタンが押下されると、制御部41は、変位センサ34に対して計測開始を指示する計測トリガ信号を出力するとともに、ロータリーエンコーダ31のパルスカウンタ(不図示)を初期化する。また、記憶部42から図6に示す検測画面5Aを読み出し、表示部44に表示する。
【0038】
ここで、計測場所の指定は、1箇所または複数個所のいずれであってもよい。
図5の例では、「総研線」の「本線」を「起点→終点」方向に移動し、「000km371」地点にある遊間9を検測の対象物とする。
【0039】
位置測定システム1が搭載されている移動体2の移動開始とともに、図4の位置補正処理が開始される。制御部41は、変位センサ34及びロータリーエンコーダ(距離計)31から出力されるデータ(計測データ、パルス数)を取得し(ステップS101)、取得したパルス数をパルスカウンタに記憶する。
【0040】
また制御部41は、常に変位センサ34から出力される計測データを監視している(ステップS102)。制御部41は、取得した計測データが、遊間9に固有の特徴的なデータであるか否かを判定し、特徴的なデータである場合は(ステップS102;Yes)、以下のステップS103〜S105によって遊間位置を決定する。
【0041】
すなわち、制御部41はまず、変位センサ34が特徴的なデータを計測した時点におけるロータリーエンコーダ31のパルス数に基づいて、位置(計測位置データ)を割り出す。
【0042】
制御部41は、RAMに保持した遊間位置情報(遊間位置管理DB43に登録された遊間位置情報)を検索し、割り出した計測位置データから前後Xcmの距離範囲内にある遊間位置情報を抽出して、予測値とする(ステップS103)。Xの値は、予め設定された値であり、レールが熱等の影響により変動する範囲程度の値をとる。
なお、計測位置データの前後Xcmの距離範囲内に遊間位置情報が登録されていない場合は、その計測データはレール傷等であるとして無視する。
図5の例では、「000km371」が予測値となる。
【0043】
制御部41は、抽出した遊間位置情報(予測値)と、計測位置データとを照合する。このとき、車輪の空転等により計測位置データが実際の距離とは異なることがある。この場合、距離計31に計測誤差が有るとして(ステップS104;Yes)、計測位置データを、ステップS103にて抽出した遊間位置情報(予測値)に補正する(ステップS105)。計測誤差がない場合は(ステップS104;No)、計測位置データをそのまま遊間9の位置データとする。
【0044】
上述の処理の実行中、制御部41は、計測位置データ、または補正した位置データを表示部44に表示する。また、制御部41は、変位センサ34が対象物に固有の特徴的なデータを取得した際は、その旨を表示または音声等により報知する。
作業者8は、遊間9のある地点に到達すると、レール温度の測定や遊間9の変位(遊間量)等の検測を行なう。
また、位置測定システム1で計測または補正された位置データ、検測データ等は、表示部44に表示される他、記憶部42に記憶され、安全度の確認等の別の処理に活用される。
【0045】
ここまでの処理について、図6の検測画面5Aを参照して具体的に説明する。
【0046】
検測画面5Aには、図6に示すように、検測データ表示欄51、センサ位置報知欄52、過去データ表示欄55、今回データ表示欄56、センサ値参照ウィンドウ57、検測の開始ボタン58及び終了ボタン59、データの登録ボタン60及び破棄ボタン61、波形表示ボタン62、工程終了ボタン63、「戻る」ボタン64等が表示される。
【0047】
検測データ表示欄51は、指定された計測場所についてのキロ程(遊間位置情報)と、その計測場所にある対象物についての検測値(遊間量、レール温度)、安全度等が表示される。
センサ位置報知欄52には、変位センサ34が遊間9に固有の特徴的なデータを計測した際に点灯する等、その旨を報知する遊間検知マーク53や、キロ程54(ロータリーエンコーダ31により取得した、現在の計測位置データ)等が表示される。
【0048】
過去データ表示欄55には、検測している対象物についての過去の検測データが表示され、今回データ表示欄56には、検測している対象物について、現在計測中の検測データが表示され、センサ値参照ウィンドウ57には、各センサ(不図示)から入力された生データ(電圧やパルス数)等が表示される。
【0049】
例えば、図6の検測画面5Aでは、センサ位置報知欄52の現在のキロ程54には、「000km370」が表示されている。
この地点で変位センサ34の計測データが、遊間9を示す特徴的なデータを示した場合には、図4のフローチャートのステップS103によって、この計測位置データの近傍の値を示す遊間位置情報「000km371」が遊間位置管理DB43から抽出され、予測値とされる。この場合、制御部41は、抽出した遊間位置情報(000km371)と計測位置データ(000km370)とが一致しないため、測定誤差があると判断して(ステップS104;Yes)、計測位置データを遊間位置情報(予測値)の値「000km371」に補正する(ステップS105)。補正を行う際、表示部44に補正を行うメッセージ等を表示してもよい。以降、ロータリーエンコーダ31から取得したパルス数に対応する対応距離は、補正された位置情報に基づいて算出される。
【0050】
また、図4のステップS102において、変位センサ34が遊間9に固有の特徴的なデータを計測しない場合は、更に、制御部41は、ロータリーエンコーダ31によって計測された現在の計測位置データが、次に出現すべき遊間9(計測場所として指定された遊間9のうち、未計測のものであって、それ以前に計測済みとなった最後の遊間9の次の遊間9)の遊間位置情報をYcm以上通過したか否かを監視する(ステップS106)。次に出現すべき遊間9を、変位センサ34が検出しないまま(すなわち、計測データが特徴的な値を示さないまま)、Ycm以上通過している場合には(ステップS106;Yes)、制御部41は、次に出現すべき遊間9の位置を通過した旨のメッセージ65を表示部44に表示したり、音声を出力したりする(ステップS107)。Yの値は、予め設定された値である。
【0051】
図7の検測画面5Bでは、指定された計測場所「000km371」において、変位センサ34の計測データが遊間9に固有の特徴的なデータを示さないまま通過してしまい、「000km383」に到達した状況を示している。通過した旨のメッセージとして、「遊間通過 戻って計測」のような内容のメッセージ65が表示される。
【0052】
全ての対象物の地点において、位置補正処理が行われ、工程終了等の指示が作業者8によって入力されると、一連の位置補正処理を終了する。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態の位置測定システム1では、変位センサ34によって対象物の計測データを監視するとともに、ロータリーエンコーダ31によって移動体2の位置を計測している。また、各対象物の設置位置情報が遊間位置管理DB43に予め登録されている。データ処理装置4の制御部41は、変位センサ34の計測データが、ある対象物(遊間9)に固有の特徴的なデータを示した場合に、その位置をロータリーエンコーダ31のパルス数から割り出し、計測位置データとする。また、計測位置データの前後Xcmにある遊間位置情報を遊間位置管理DB43から抽出して、この抽出した値を対象物(遊間9)の備えられている位置の予測値とする。そして計測位置データと、予測値とを照合し、誤差がある場合は、計測位置データを予測値(遊間位置管理DB43に登録されている遊間位置情報)に補正する。
【0054】
したがって、車輪の空転等により位置が正確に計測できなかった場合にも、対象物(遊間9)の計測位置データが常に正確な位置に補正される。そのため、地上に特別な位置識別子(地上マーカ)を設ける必要もなくなる。その結果、簡易な設備構成で、かつ正確な位置情報を得ることが可能となる。
【0055】
また、位置測定システム1は、計測データが、対象物に固有の特徴量を示す際に、表示または音声によって、その旨を報知したり、計測位置データや、補正した位置データ等を表示するので、作業者8にとってより有意義な支援を行なえる。
【0056】
更に、制御部41は、遊間位置管理DB43に登録されている各対象物の配置位置において、変位センサ34の計測データが特徴的なデータを示すか否かを監視しており、特徴的なデータを示すべき位置でそのデータを示さない場合は、対象物を通過した旨を表示または音声で報知する。そのため、対象物の計測ミスの防止に貢献できる。
【0057】
なお、本実施の形態では、検測及び計測の対象物を遊間9としているが、本発明に係る位置測定システムはこれに限定されるものではなく、走行路上または走行路沿いに設けられた設備、その他のものとしてもよい。また、上述の実施の形態では、対象物9を軌道7の遊間9としているため、位置情報は、基点からの距離(1次元)をしたが、位置情報には、2次元、3次元の位置情報を含むものとしてもよい。また、距離ではなく、緯度・経度情報としてもよい。その場合、位置情報を計測する手段としてGPS等を含むものとしてもよい。また、変位センサ34を用いて遊間9(対象物)を計測するものとしたが、これに限定されるものではなく、その他の装置、手法を用いてもよい。例えば、超音波センサを用いたり、対象物をカメラ等によって撮像し、画像解析によって特徴的な画像を得たと判定した場合に、対象物を検出したものとしてもよい。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1・・・位置測定システム
2・・・移動体
21・・車輪
31・・距離計(ロータリーエンコーダ)
34・・変位センサ
4・・・データ処理装置
41・・・・・・制御部
42・・・・・・記憶部
43・・・・・・遊間位置管理DB
44・・・・・・表示部
48・・・・・・I/F部
7・・・軌道
9・・・遊間(対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、移動体自体の位置を測定する位置測定システムであって、
対象物を計測する対象物計測手段と、
当該移動体の位置を計測する位置計測手段と、
各対象物の備えられている位置情報が予め登録されている位置データベースと、
前記対象物計測手段にて取得した計測データ及び前記位置計測手段にて取得した計測位置データを監視するデータ処理手段と、を備え、
前記データ処理手段は、
前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示す際において取得された前記計測位置データまたはその近傍の値である位置情報を、前記位置データベースから対象物の位置の予測値として抽出し、抽出された位置情報と、前記計測位置データとが異なる場合に、該計測位置データを抽出された位置情報に補正する補正手段を備えることを特徴とする位置測定システム。
【請求項2】
前記データ処理手段は、
前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示す際に、その旨を報知するとともに、前記補正手段により補正した計測位置データを表示する第1報知手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記データ処理手段は、
前記位置データベースに登録されている各対象物の配置位置において、前記対象物計測手段による計測データが対象物固有の特徴的なデータを示さない場合は、その旨を報知する第2報知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記対象物は、軌道の遊間であり、
前記対象物計測手段による計測データは、前記遊間において遊間固有の特徴的なデータを示すことを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記移動体は、軌道上を走行する車両であることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記位置計測手段は、前記移動体に設けられる車輪の回転数を検出するロータリーエンコーダであることを特徴とする請求項1に記載の位置測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237002(P2010−237002A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84684(P2009−84684)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(500519987)株式会社ジェイアール総研情報システム (14)
【Fターム(参考)】