位置測定方式
【課題】 埋め立て工事現場や広い地すべり地帯において海中や土中の側方移動量と移動方向を正確に捉えることが出来る位置測定方式を提供する。
【解決手段】 地中または海底地盤中に交番磁界を生成する単軸コイル12を有する発信機10が埋設される。交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸S1上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルCA、CCと第一軸と直交する第二軸S2上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルCB、CDとを含む検出コイル系が用意される。信号処理回路系は、バンドパスフィルタ16A〜16D、差動回路17−1、17−2、位相検波回路18−1,18−2を含み、第一から第四のコイルの検出信号を処理し、第一、第二のコイルの検出信号の差信号と第三、第四のコイルの検出信号の差信号から単軸コイルの軸線の位置と検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求める。
【解決手段】 地中または海底地盤中に交番磁界を生成する単軸コイル12を有する発信機10が埋設される。交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸S1上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルCA、CCと第一軸と直交する第二軸S2上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルCB、CDとを含む検出コイル系が用意される。信号処理回路系は、バンドパスフィルタ16A〜16D、差動回路17−1、17−2、位相検波回路18−1,18−2を含み、第一から第四のコイルの検出信号を処理し、第一、第二のコイルの検出信号の差信号と第三、第四のコイルの検出信号の差信号から単軸コイルの軸線の位置と検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置測定方式に関し、特に港湾埋め立て工事において埋め立て土砂の荷重により海底地盤が側方へ移動する現象や、地すべり地帯においてすべり面上側の土塊が移動した際における移動量と移動方向を測定するのに適した位置測定方式に関する。
【背景技術】
【0002】
海上空港の建設においては、海底地盤に多量の土砂を埋め立て、陸地を形成することで地上施設の建設が行われる。これまでの工事では主として海底地盤自体の沈下が問題視されており、主として圧力センサとテレメータを用いることで、水圧の変化から海底地盤の沈下量を測定する方式が用いられていた。
【0003】
この理由として、埋め立て工事における土砂量が工事費用の大半を占めることから、定期的に海底地盤の沈下量を管理することが工事費用を軽減するために重要視されていた。
【0004】
一方、海底地盤の沈下が少ない地域(海底)における埋め立て工事では、埋め立て土砂の荷重によって生じる海底地盤(ヘドロ等)の側方流動が重要視されており、海底地盤の移動量と移動方向を常に管理することが必要とされている。
【0005】
また、地すべり地帯においても、地すべり発生時における土塊の移動量と移動方向を測定する場合、クラック発生箇所のような地表面に明らかな変化が見られる領域においては、地すべり計や歪計といった従来型の測定器による観測を行うことが実施されていた。一方、広域の土塊が移動するような場合、すべり面近くの上側土塊と下側地盤との相対的移動量の変化とその移動方向を測ることは困難であり、すべり面を挟んですべり面の下側にワイヤを固定し地表面におけるワイヤの引き込み量を測定することで相対的移動量を求める方式(例えば、特許文献1参照)が用いられる程度で正確な測定はこれまで行われていない。また、このような地域は植生が多いこともあり光学測量やGPSなどの使用も制約があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−21750号公報
【特許文献2】特開平09−53958号公報
【特許文献3】特開2004−234335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
港湾における埋め立て工事や広範囲の地すべり地帯における地盤(海底)や土塊の移動方向の観測においては、海の場合は海水中における計測であるため、落下してくる土砂、潮の流れ、波浪などの外乱要因が存在する。これらは物理的な構築物を用いた機械的測定手法を用いる場合、多くの問題点を生じるだけでなく工事で用いられる用船の運航にも障害となる。さらに海水中であるため、電波の減衰や音波の反射(泡などによる)の影響もあり、一般的な無線テレメータや超音波を用いた計測手段が使えない環境となっている。この点は陸上の地すべり地帯における条件も似ており、地中内部と地表との測定手段として無線や超音波あるいは光などを用いることが難しい。
【0008】
本発明の目的は上記のような埋め立て工事現場や広い地すべり地帯において海中や土中の側方移動量と移動方向を正確に捉えることが出来る位置測定方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系とを含み、前記第一から第四のコイルの出力から磁界強度を求め、第一から第四のコイルで得た磁界強度に基づいて前記単軸コイルの軸線の位置と前記検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0010】
第1の態様による位置測定方式においては、前記検出コイル系を、前記第一から第四のコイルの軸線が前記単軸コイルの軸線と平行又は垂直となるように配置することが好ましい。
【0011】
第1の態様による位置測定方式においてはまた、前記第一から第四のコイルはそれぞれ、軸線がそれぞれ直交する三成分のコイルからなるものでも良い。
【0012】
第1の態様による位置測定方式においてはさらに、前記第一から第四のコイルをそれぞれ複数のコイルとしても良い。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系と、前記第一から第四のコイルの出力を受ける第一から第四のバンドパスフィルタと、該第一及び第二のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、これら第一及び第二の差動回路の出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四のバンドパスフィルタのいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、前記単軸コイルの上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記単軸コイルの直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0014】
第2の態様による位置測定方式においては、前記検出コイル系がさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された第五のコイルを有し、前記信号処理回路系がさらに、前記第五のコイルの出力を受ける第五のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第五のバンドパスフィルタの出力を用いることが好ましい。
【0015】
第2の態様による位置測定方式においてはまた、前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四のコイルをそれぞれ2個ずつとし、これら2個ずつのコイル出力を切換え回路を用いて対応する前記バンドパスフィルタの入力に接続し、前記第五のコイルの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることができる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され電界を生成する単軸の電極対を有する発信機と、前記電界を検出するために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二の電極と前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四の電極とを含む検出電極系と、前記第一及び第二の電極の出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四の電極の出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、前記第一及び第二の差動回路の出力を受ける第一及び第二のバンドパスフィルタと、これら第一及び第二のバンドパスフィルタの出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四の電極のいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、前記単軸の電極対の上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出電極系の中心位置を前記単軸の電極対の直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0017】
第3の態様による位置測定方式においては、前記検出電極系がさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された対の電極からなる第五の電極を有し、前記信号処理回路系がさらに、前記第五の電極の対の出力を受けて差信号を出力する第三の差動回路と、該第三の差動回路の出力を受ける第三のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第三のバンドパスフィルタの出力を用いることが好ましい。
【0018】
第3の態様による位置測定方式においてはまた、前記検出電極系において前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四の電極をそれぞれ2個ずつとし、前記信号処理回路系においてはこれら2個ずつの電極出力をそれぞれ差動回路に出力し、前記第一軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第一の差動回路に入力し、前記第二軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第二の差動回路に入力し、前記第三のバンドパスフィルタの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることができる。
[発明の作用]
【0019】
上記の測定方式においては、地中あるいは海底地盤側の単軸のコイルあるいは電極対(以下、送信系と呼ぶ)で発生される磁界または電界は単軸の送信系の軸線を中心として線対称に形成される。磁界方式の場合、位置検出信号として磁界成分は水平軸上に配置された複数のコイルによって電圧信号として求まり、電界方式の場合、電界強度(分布)は水平軸上に配置された複数の電極によって電圧信号として求まる。これらの電圧信号は単軸の送信系直上の点を境として電圧信号の位相が異なるため、位相検波(同期検波)を行えば極性の判別する単軸の送信系直上の点からのコイルあるいは電極のずれ量及びその方向が判り、その結果、単軸の送信系直上の水平座標を求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地中地盤に設置した単軸コイルを内蔵した発信機で形成される磁界成分や電界成分をコイルや電極を用いて検出することで、その直上座標を求めることが容易に可能となる。これにより、海上空港工事などの埋設工事における海底地盤の側方移動(流動)測定や陸上の地すべり地帯におけるすべり面上側の土塊の移動量測定などを容易に行うことができることから、工事費用の節減など得られる効果は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による位置測定方式の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(磁界方式)
図1は本発明を磁界方式に適用した場合の第一実施例におけるコイルの配置を示す図である。発振器11及び単軸コイル(送信コイル)12を内蔵した発信機10が地中に埋設される。発信機10に内蔵されたバッテリ等の電源(図示せず)に接続した発振器11から出力される交流電力を単軸コイル12に印加することで単軸コイル12が励磁され、誘導磁界(交番磁界)が形成される。特に、電源、発振器、及び単軸コイルの組合せにより1kHz〜10kHz程度の低周波磁界信号と呼ばれる磁界信号を生成し、送信アンテナを通して送信することが好ましい。低周波磁界信号は、地中、水中、岩盤等、電磁波や超音波の伝送しにくい伝送媒体でも伝搬するという特徴を持つ。これは以降で述べられる磁界方式の実施例すべてについて適用することができる。
【0023】
一方、上記低周波磁界信号を検出するために、地表又は海面近くに第一〜第四の検出コイルCA〜CDが配置される。これら第一〜第四の検出コイルCA〜CDは、第一軸S1上に間隔をおいて検出コイルCAとCCが同心状に配置され、第二軸S2上に同じ間隔をおいて検出コイルCBとCDが同心状に配置される。これら第一軸S1及び第二軸S2と単軸コイル12の延長軸は互いに直交する配置を取ることが望ましい。第一軸S1及び第二軸S2を形成する素材には非磁性材の棒材又は中空素材が用いられる。尚、検出コイルCA、CCは特許請求の範囲に記載された第一、第二のコイルに対応し、検出コイルCB、CDは特許請求の範囲に記載された第三、第四のコイルに対応する。以降のすべての実施例の説明では、このような複数の検出コイルをまとめて検出コイル系と呼ぶことがある。
【0024】
図2は図1の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。検出コイルCA〜CDの出力はそれぞれ増幅器15A〜15Dで増幅された後、バンドバスフィルタ16A〜16Dにより発振器11の発振周波数と同じ単一の周波数成分が取り出される。続いて、第一軸S1上の検出コイルCAとCC間の差信号と第二軸S2上の検出コイルCBとCD間の差信号とをそれぞれ差動回路17−1、17−2で作り、位相検波回路18−1、18−2に入力する。ここで、位相検波回路18−1、18−2における検波信号は検出コイル系におけるいずれかの検出コイルの出力を用いることが可能である。図2では検出コイルCAの系統からの信号を検波信号として用いているが、切換えスイッチにより4つの検出コイルの何れかを任意に選択できるようにしても良い。バンドパスフィルタ、差動回路、位相検波回路はアナログ回路で構成する方式以外にA/Dコンバータ、FFT演算といったデジタル演算を用いるコンピュータ処理で同様の結果が得られることは言うまでもない。
【0025】
図3は本発明の第一実施例における発信機と検出コイルの配置を断面図で示す。発信機の埋設時にその位置が初期位置としてあらかじめ計測される。地中に埋設された単軸コイル12により形成された誘導磁界成分は地表または海面上にも拡がり、検出コイル系の第一軸S1上に形成された二つの検出コイル(CAとCCの組合せ、またはCBとCDの組合せ)に鎖交すると検出コイルに交流電圧が誘起される。ここで、二つの検出コイルCAとCCの組合せについて言えば、これらの間隔が一定に保たれた状態で水平方向に移動させると、二つの検出コイルに誘起する交流電圧の振幅に変化が生じる。仮に、単軸コイル12の直上に二つの検出コイル(CAとCC)の中間点が来た場合、これら二つの検出コイルに誘起される交流電圧は極性が異なるものの同じ振幅となるので、位相検波器18−1の出力は最小値となる。このとき、単軸コイル12直上の一次元座標は、二つの検出コイル(CAとCC)の中間点を通る紙面に直交する座標として求まることになる。他の一次元座標についても第二軸S2上に設置された二つの検出コイル(CBとCD)によって同様に求まることになる。
【0026】
上記初期位置の設定は、以下の2つの方法で行われる。第1の方法は、例えば後述する地すべりの移動量を測定する場合に適用され、発信機10を埋設した地盤が移動しないことを前提とする場合である。この場合、地すべり地帯において予測される地すべり部分よりも深い地盤中に発信機10を埋設し、埋設した地表面にマーキングを施しておく。地すべりが発生するとマーキングされている地表面が移動するが、発信機10の位置は変化しない。そこで、上記の検出コイル系をマーキングされている場所から移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。探索された位置は発信機10の直上の位置であり、この位置と地すべり発生後のマーキング位置との間の距離がずれ量(移動量)、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0027】
第2の方法は、例えば後述する海底地盤の側方移動量を測定する場合に適用され、発信機10を埋設した地盤が移動することを前提とする場合である。この場合、側方移動が予測される海底地盤中に発信機10を埋設し、埋設場所の直上位置(海面における直上位置)をGPS等の方法で初期位置として計測しておく。海底地盤に側方移動があると発信機10の位置が変化する。そこで、上記の検出コイル系を海面近傍で上記初期位置から移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。探索された位置は発信機10の直上の位置であり、この位置をGPS等の方法で計測すれば、この計測位置と初期位置との間の距離が移動量、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0028】
何を測定するかに応じて、上記のような設定方法が以降で説明されるすべての実施例に適用される。
【0029】
以上の動作原理から、単軸コイル12はその軸線が鉛直方向となるように設置されることが必要であり、検出コイル系は第一軸S1、第二軸S2、つまり各検出コイルの軸線がこの鉛直方向に垂直な水平面上にある状態で検出動作を実行するようにされることが好ましい。また、発信機10の構成要素は水密構造のケースに収容され、外部電源でなくバッテリ電源の場合はその長寿命化を実現するために、発振器11は連続発振ではなく、タイマー等の手段により間欠的に動作するようにされることが好ましいことは言うまでも無い。これらの点は、後述するいずれの実施例でも同様である。
【0030】
図4は本発明の第二実施例におけるコイル配置を示す図である。地中に埋設された発信機10の発振器11から出力される交流出力を単軸コイル12に印加することで単軸コイル12が励磁され、誘導磁界が形成される。地表又は海面近くに配置される第一〜第四の検出コイルCA〜CDは図1に示されたものと同じである。一方、図4では第一軸S1と第二軸S2に直交する第三軸S3が設けられ、この第三軸S3に第五の検出コイルCEが配置された検出コイル系が構成されている。
【0031】
第五の検出コイルCEを備える理由は以下の通りである。図中の第一〜第四の検出コイルCA〜CDは地表又は海面近くに置かれ、その位置によっては検出コイルに対して単軸コイル12で作られた磁界が全く鎖交しない配置となることがある。つまり、図1のコイル配置及び図2で示されたブロック図の回路構成で測定を行った場合、検出コイルCAから検出信号が全く得られない状態が発生する場合が想定される。この問題を解決することを目的として4個の検出コイルCA〜CDとは感度軸が異なる第三軸S3に第五の検出コイルCEを設け、この検出コイルCEから得られる信号を検波信号として用いることで、上記のような検波信号の欠如が生じることを防止することが可能となる。
【0032】
図5は図4の検出コイル系のための信号処理回路系を示すブロック図である。検出コイルCA〜CDの出力はそれぞれ増幅器15A〜15Dで増幅された後、バンドパスフィルタ16A〜16Dにより発振器11の周波数と同じ単一の周波数成分が取り出される。続いて、第一軸S1上の検出コイルCAとCC間の差信号と第二軸S2上の検出コイルCBとCD間の差信号をそれぞれ差動回路17−1、17−2で作り、位相検波回路18−1、18−2に被検波信号として入力する。図2で示したブロック図では位相検波回路18−1、18−2の検波信号は検出コイルCA〜CDのいずれかから得ていたが、図5では第五の検出コイルCEからの信号を検波信号として用いている。
【0033】
図6は本発明の第二実施例におけるコイル配置を示す断面図である。図3のコイル配置と異なる点は第一〜第四の検出コイルCA〜CDとは感度軸が90度異なる第五の検出コイルCEを配置することで、この第五の検出コイルCEは単軸コイル(送信コイル)12の上方領域においてその位置によらず常に磁気信号が受信されることを示している。
【0034】
図7は本発明の第三実施例におけるコイルの配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の単軸コイル12によって磁界が形成される点については図1と同様である。地表又は海面近くに配置される検出コイルを、第一軸S1に4個(CA1、CA2、CC1、CC2)、第二軸S2に4個(CB1、CB2、CD1、CD2)とし、さらに第一軸S1および第二軸S2と直交する第三軸S3に1個(CE)の計9個用いる配置となっている。勿論、検出コイルCA1とCA2の間隔、検出コイルCC1とCC2の間隔、検出コイルCB1とCB2の間隔、検出コイルCD1とCD2の間隔は同じにされ、検出コイルCA1、CA2の組と検出コイルCC1、CC2の組の間隔、検出コイルCB1、CB2の組と検出コイルCD1、CD2の組の間隔も同じにされる。尚、図では検出コイルをCA1、CA2と2個ずつの組合せとして示しているが、CA1、CA2、CA3のように3個ずつの組合せを用いることも可能であり、検出コイルの数を増やせば各コイル間隔も広くとることができるため、測定上は有利となる。
【0035】
図8は図7の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。図8の信号処理回路系では増幅器が受け持つ検出コイルが2系統となることから増幅器15A〜15Dの入力側にそれぞれ切換え回路19A〜19Dを配置している。但し、これらの切換え回路19A〜19Dは、ばらばらに切換えを行うのではなく、検出コイルCA1、CB1、CC1、CD1の組か、あるいは、検出コイルCA2、CB2、CC2、CD2の組のいずれかを選択するように用いられるのが好ましい。増幅器以降の回路及び動作は図5の信号処理回路系とまったく同じである。尚、切換え回路を用いない場合は検出コイルと同数の増幅器、バンドパスフィルタ等を並列に使用することでも同様の結果が得られる。
【0036】
図9は本発明の第三実施例におけるコイル配置を示す断面図である。図6と図9で異なる点は、水平方向に感度軸を持つ検出コイルCA1〜CD1に、同じく水平方向に感度軸を持つ検出コイルCA2〜CD2を追加したことである。鉛直方向に感度軸を持つ検出コイルCEの両側にそれぞれ2箇所に検出コイルを配置することで単軸コイル12直上の水平方向の座標を求めることが容易になる利点を有する。特に単軸コイル12と各検出コイルとの距離が離れている場合において、測定作業を開始してから単軸コイル12直上座標の方向性を早く見つけられる点で効果がある。
【0037】
(電界方式)
図10は本発明を電界方式に適用した第四実施例における電極の配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の発振器11から出力される交流出力を単軸の2つの電極E1、E2間に印加することで単軸の電極E1、E2間に電界が形成される(電流が流れる)。地表又は海面近くに配置される第一〜第六の検出電極EA、EB、EC、ED、EE、EFは、電極E1、E2による電界の電位を検出するためのものであり、第一軸S1上に間隔をおいて検出電極EAとEC、第二軸S2上に同じ間隔をおいて検出電極EBとEDがそれぞれ配置され、さらに第一軸S1及び第二軸S2と直交する第三軸S3上に検出電極EEとEFが配置される。ここで、磁界方式の場合と同様に、発信機10は単軸の電極E1、E2の軸線が鉛直方向になるように設置し、第一軸S1と第二軸S2も互いに直交する配置を取ることが望ましい。さらに、第一軸S1〜第三軸S3を形成する素材には絶縁性の棒又は中空素材が用いられる。検出電極EA〜EDは単軸の2つの電極E1、E2直上の座標や方向を検出するために用いられ、検出電極EEとEFは位相検波に使用する検出信号を得るために用いられる。尚、検出電極EA、ECは特許請求の範囲に記載された第一、第二の電極に対応し、検出電極EB、EDは特許請求の範囲に記載された第三、第四の電極に対応する。以降の説明では、このような複数の検出電極をまとめて検出電極系と呼ぶことがある。
【0038】
図11は図10の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。検出電極EA〜EFで検出された各々の電位は各軸上に配置された電極の組合せ毎(EAとECの組、EBとEDの組、EEとEFの組)に差動回路20−1、20−2、20−3によって差電位として検出される。これらの差信号から検出電極EA〜EDによって被検波信号が作られ、検出電極EEとEFによって検波信号が作られる。差動回路20−1〜20−3の差信号はバンドパスフィルタ21−1〜21−3により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出される。位相検波回路22−1、22−2はバンドパスフィルタ21−1、21−2の信号を受け、バンドパスフィルタ21−3の信号を検波信号として同期検波を行い、第一軸S1方向と第二軸S2方向の電位差を出力する。磁界方式の場合と同様に、検出電極系の中心が単軸の電極E1、E2の軸線上に位置した時に、電位差が最小値となる。尚、これらの回路もアナログ回路で構成する方法以外にA/Dコンバータによってデジタル値に変換することによりコンピュータ処理することでも同様の効果が得られる。
【0039】
図12は本発明の第四実施例における電極配置を示す断面図である。地中に埋設された単軸の電極E1−E2により形成された電界(電流)成分は地表または海面付近で大きく曲げられ単軸の電極E1−E2直上を始点として、表面上を放射状に拡がる。これらの成分は表面下に配置された複数の検出電極によって電位が検出され、同一軸上で離れた2点間の検出電極の差信号を求めることで電位差として検出される。このことから交叉する二軸上に各々間隔が等しい検出電極を配置すると二次元上の電位差が検出され、その電位差が最小となる場合、二つの検出電極の中間点が単軸の電極E1−E2の直上に一致することになる。位相検波を用いていることから単軸の電極で形成される交流電界と同じ周波数成分を検波信号として利用することで雑音成分の除去も同時に行うことができる。
【0040】
尚、第三軸S3及び検出電極EEとEFは省略されても良く、この場合、検波信号は、検出電極EA〜EDのいずれかの出力を用いる。
【0041】
図13は本発明を地すべり移動量の測定に適用する場合の第五実施例を示す図である。地すべり発生が予測される地帯にボーリングを行い、予想されるすべり面より下側の深さに、発振器11と単軸コイル12等を内蔵する発信機10を設置する。ここで、ボーリング孔45の跡は、前述した初期位置設定における第1の設定方法のマーキングとして利用することができる。前述したように発信機10は内蔵のタイマーによって所定の時刻に発振器11を起動して単軸コイル12から磁界を発生させることにより、同じく内蔵のバッテリの消耗を防止することが可能となる。さらに、磁界方式の場合には、発信機10に組み込まれている磁界発生用の単軸コイル12を受信コイルとしても用い、単軸コイル12には受信回路を組合せ、地表から磁気信号によって起動信号を与えることにより発振器11を起動させることも可能である。これらの方法についての詳細は、例えば特許文献2、3に開示されている。
【0042】
発信機10埋設以後の地すべり移動量の測定は以下のようにして行われる。地上には非磁性材料で作られた移動台41によって地表面に側線が設定され、この側線に沿って検出コイル系40を移動可能とする。この移動台41は水平が維持されるように構築することが好ましい。
【0043】
第一実施例の場合について言えば、マーキング場所を基準として検出コイル系40を水平移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。もし、地すべりが無ければ位相検波器18−1、18−2の出力はマーキング場所で最小値となる。一方、地すべりによる移動が発生していれば、マーキング場所から水平方向に移動したある場所、つまり発信機10の直上の位置で位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる。この探索位置と地すべり発生後のマーキング位置との間の距離がずれ量(移動量)、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0044】
検出コイル系40及び信号処理回路系には、前述したすべての実施例を適用することができる。但し、電界方式の場合、図10及び図11の検出電極系及び信号処理回路系の形態をとることは言うまでも無い。
【0045】
図14は本発明を港湾等の埋め立て工事に適用する場合の第六実施例を示す図である。海上空港の建設工事では、陸地近くの港湾の土砂埋め立てを行って形成した人工地盤の上に空港施設の建設が行われる。この土砂埋め立てを行う場合、埋め立て領域の近くの海底地盤では埋め立て荷重による側方移動が発生する。この移動量を測定するため、海底地盤内に交流磁界発生用の発信機10を設置して海中に磁界を発生させる。一方、海面近くにフロート50等を用いて海水中に検出コイル系40を配置し、フロート50にはGPS受信機51を設置する。GPS受信機51の位置はGPSや光学測量によって容易に求めることができ、既に実用化されている。
【0046】
本第六実施例においても、検出コイル系(検出電極系)及び信号処理回路系は前述の第一〜第五実施例のいずれを適用しても良い。尚、フロート50と検出コイル系40をつなぐワイヤ部分にはバネや板等(図示せず)を用いて波面の動きを伝えないようにする工夫が併用されることは言うまでもない。また、検出コイル系(検出電極系)は常時配置する形態でも良いが、測定を行わない場合には引き上げておき、測定に際して海上に投棄する形態でも良い。いずれにしても、各検出コイル(検出電極)からの検出信号はフロート50を経由してケーブルにより船上の信号処理回路系に入力されるが、増幅器はフロート50側に備えるようにしても良い。
【0047】
本第六実施例では、あらかじめGPS受信機51を用いて発信機10を埋設した時の初期位置が測定される。以後、定期的に発信機10を起動させ、検出コイル系40を移動させて発信機10の位置を二次元的に測定する作業を行う。例えば、第一実施例による検出コイル系及び信号処理回路系を用いる場合、仮に、海底地盤に側方移動が発生していると、位相検波器18−1、18−2の出力が最小となる位置も初期位置からずれることになる。GPS受信機51によれば、初期位置からずれた現在の位置を知ることができるので、2軸座標面上での初期位置と現在位置とから海底地盤の水平方向の移動量及び移動方向を容易に算出することができる。
【0048】
図15は本発明の第七実施例における電極の配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の発振器11から出力される交流(電圧)出力を単軸の電極E1、E2に印加することで電極E1、E2間に電界が形成される。ここでは、検出電極系が対の電極を等間隔に配置して構成され、第一〜第五の検出電極対EG〜EKが地表又は海面近くに配置される。具体的には、第一軸S1上に第一、第三の電極対EG、EI、第二軸S2上に第二、第四の電極対EH、EJ、さらに第一軸S1及び第二軸S2と直交する第三軸S3に第五の電極対EKが配置される。前述したように、電極E1、E2の軸線が鉛直方向となり、第一軸S1と第二軸S2は互いに直交する配置とすることが望ましい。
【0049】
図16は図15の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。各検出電極対EG〜EKで検出された各々の対の電位から、はじめに差動回路61G〜61Kで差電位が取り出される。次に、差動回路62−1、62−2により第一の電極対EGの差電位と第三の電極対EIの差電位との差電位、第二の電極対EHの差電位と第四の電極対EJの差電位との差電位がそれぞれ取り出され、各軸の差電位として検出される。第一軸S1、第二軸S2の差電位からバンドパスフィルタ63−1、63−2により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出され、差動回路61Kの差電位からバンドパスフィルタ63−3により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出される。このようにして、第一の電極対EG〜第四の電極対EJによって被検波信号が作られ、第五の電極対EKによって検波信号が作られる。二組の位相検波回路64−1、64−2はこれらの信号を受けて同期検波を行い、第一軸S1方向と第二軸S2方向の電位差を出力する。
【0050】
図17は本発明の第七実施例における検出電極系の電極配置を示す断面図である。地中に埋設された単軸の電極E1、E2により形成された電界(電流)成分は地表または海面付近で大きく曲げられ、単軸の電極直上を始点として表面上を放射状に拡がる。これらの電界成分は水面下(近傍)に配置された検出電極系によって電位が検出され、同軸上の離れた2領域間の電極対同士の差信号を求めることで電位差として検出される。このことから、交叉する二軸上に各々間隔が等しい電極対を配置すると、二次元上の電位差が検出され、この電位差が最小となる場合に一軸上の2つの電極対の中間点が単軸の電極E1、E2の直上に位置することになる。
【0051】
図18は本発明を港湾等の海上埋め立て工事に適用する際の第八実施例を示す図である。海面近くに検出コイル系(あるいは検出電極系)を配置する場合、船舶から吊り下げると波浪による船舶の動きが検出コイル系(あるいは検出電極系)に伝わり、常に移動(変位)が伝わることになり安定した計測(測定)が難しい。この問題を解決するため、本実施例ではフロート50と検出コイル系40(あるいは検出電極系)との間にバネ等の伸縮性部材55を1つ以上(ここでは2つ)介在させると共に、2つの伸縮性部材55の間に水の抵抗を受ける板56を併用させている。これにより検出コイル系40(あるいは検出電極系)を水中で安定に維持することができ、波浪の影響を低減させる効果が得られる。尚、検出コイル系や検出電極系を固定するフレームを移動させる手段として、船で曳航しても良いが、フロート50にモーターとスクリュー及び舵を取付け、船上からリモートコントロールを行うようにしても良い。尚、リモートコントロールを容易に行うため、フロート50にはGPS受信機51や方位計等を取付け、フロート50の座標情報を船上で常にモニターしながら作業を行うことで作業性を高めることが容易となる。この実施例も、前述した第一〜第四、第七の実施例のいずれを適用しても良い。
【0052】
図19は本発明に使用される検出コイルから得られる磁界信号の検出出力が、単軸コイルに対する検出コイルの方向性と相対位置によって変化することを説明するための図である。図19において、送信側の単軸コイルは零点の直下で距離eの場所に配置されているものとして検出コイルの出力から磁界強度を求めている。図19の特性(a)は検出最大感度軸が垂直方向となる検出コイルを水平方向に移動させた際に測定される磁界強度分布を示し、単軸コイルの直上で最大となることは明らかである。一方、図19の特性(b)は検出最大感度軸が水平方向となる検出コイル(本発明の各実施例に相当)を移動させた際に測定される磁界強度分布を示している。ここで、特性(b)が図中左半分で負となる領域は受信信号の位相成分を加味した演算を行っているために生じている。図19の横軸は送信側の単軸コイルの中心までの距離eを用いて表している。なお、このような磁界強度分布あるいは磁界の分布(拡がり)は計算によって求めることも可能である。
【0053】
図20は本発明に使用される検出コイルが検出した磁界信号の出力を微分した結果を示す図である。図19で求められた特性(a)、(b)に対し、微分演算処理を行うと、図19の特性(a)は図20の特性(c)となり、同じく図19の特性(b)は図20の特性(d)として示される。ここで注目すべき点は、特性(c)と(d)が図中左側の位置で交叉し、その交点座標が0.21eすなわち、送信側の単軸コイルの中心までの距離eの21%に相当することである。このことは、水平軸に最大感度を持つ検出コイルと垂直軸に最大感度を持つ検出コイルの両方を併用し、信号レベルが大きい方を選択する切換え位置として上記の値0.21eを利用することで、測定上の利点となる。
【0054】
図21は本発明に用いられる検出コイル系の具体例を示す。固定部100に、軸S1−1と軸S1−2とを取り付けて第一軸を構成し、軸S2−1と軸S2−2とを取り付けて第二軸を構成している。固定部100及び各軸は塩化ビニール、アクリル等の非磁性材料でかつ非導電性の素材を用いて作られる。検出コイルCA〜CDは、各軸を固定部100に取り付けた後に後加工で設置することができるので、防水加工も含めて製作上のメリットが大きい。本例は、図1に示した検出コイル系に適しているが、固定部100を中空にして検出コイルを内蔵させ、このコイルの軸線を検出コイルCA、CCの軸線、検出コイルCB、CDの軸線に直交するように配置することで図4に示す検出コイル系を実現することができる。勿論、各軸に複数の検出コイルを設置することで図7に示す検出コイル系を実現できる。
【0055】
図22は、本発明に用いられる検出コイル系の他の例を示す。本例では立方格子状の枠体110を用い、その各コーナー部分に検出コイルC1、C2、C3を設置するようにしている。枠体110の材料は、上述した図21の例と同様、塩化ビニール、アクリル等の非磁性材料でかつ非導電性の素材を用いることが好ましい。1つのコーナーについて言えば、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の三軸に検出コイルが設置された三成分のコイルと見なすことができる。コーナー毎にこれらの三成分のコイルの切換えを行う切換え手段を備えることでどの検出コイルを検出に用いるかを任意に選択することができる。図の上部又は下部の検出コイルを用いれば平面的な検出コイル系を構成することができ、上部及び下部の検出コイルの両方を用いれば立体的な検出コイル系を構成することができる。このような立方格子状の枠体110を用いることで、水中以外に地上での設置に際しても安定性を確保することが容易となる。なお例として、図中、一点鎖線で示すように、枠体110を形成している四角形の枠の中に更に交差する枠を設け、交差する枠に検出コイルを設置することで図1に示されるような検出コイル系をも兼ねる検出コイル系を実現できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明を磁界方式に適用した場合の第一実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図2】図2は図1の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は本発明の第一実施例における発信機とコイルの配置を断面図で示す。
【図4】図4は本発明を磁界方式に適用した場合の第二実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図5】図5は図4の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は本発明の第二実施例における発信機とコイルの配置を示す断面図である。
【図7】図7は本発明を磁界方式に適用した場合の第三実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図8】図8は図7の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は本発明の第三実施例における発信機とコイルの配置を示す断面図である。
【図10】図10は本発明を電界方式に適用した場合の第四実施例における電極の配置を示す図である。
【図11】図11は図10の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は本発明の第四実施例における発信機と電極の配置を示す断面図である。
【図13】図13は本発明を地すべり移動量の測定に適用する場合の第五実施例を示す図である。
【図14】図14は本発明を港湾等の埋め立て工事に適用する場合の第六実施例を示す図である。
【図15】図15は本発明を電界方式に適用した場合の第七実施例における電極の配置を示す図である。
【図16】図16は図15の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第七実施例における発信機と電極の配置を示す断面図である。
【図18】図18は本発明を港湾等の海上埋め立て工事に適用する際の第八実施例を示す図である。
【図19】図19は本発明に使用される検出コイルから得られる磁界信号の検出出力が、単軸コイルに対する検出コイルの方向性と相対位置によって変化することを説明するための図である。
【図20】図20は図19に示された磁界信号の出力を微分した結果を示す図である。
【図21】図21は本発明に用いられる検出コイル系の具体例を示した図である。
【図22】図22は本発明に用いられる検出コイル系の他の例を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
CA、CB、CC、CD、CE 検出コイル
S1、S2、S3 第一軸、第二軸、第三軸
EA、EB、EC、ED、EE、EF 検出電極
15A〜15E 増幅器
16A〜16E バンドパスフィルタ
17−1、17−2 差動回路
18−1、18−2 位相検波器
【技術分野】
【0001】
本発明は位置測定方式に関し、特に港湾埋め立て工事において埋め立て土砂の荷重により海底地盤が側方へ移動する現象や、地すべり地帯においてすべり面上側の土塊が移動した際における移動量と移動方向を測定するのに適した位置測定方式に関する。
【背景技術】
【0002】
海上空港の建設においては、海底地盤に多量の土砂を埋め立て、陸地を形成することで地上施設の建設が行われる。これまでの工事では主として海底地盤自体の沈下が問題視されており、主として圧力センサとテレメータを用いることで、水圧の変化から海底地盤の沈下量を測定する方式が用いられていた。
【0003】
この理由として、埋め立て工事における土砂量が工事費用の大半を占めることから、定期的に海底地盤の沈下量を管理することが工事費用を軽減するために重要視されていた。
【0004】
一方、海底地盤の沈下が少ない地域(海底)における埋め立て工事では、埋め立て土砂の荷重によって生じる海底地盤(ヘドロ等)の側方流動が重要視されており、海底地盤の移動量と移動方向を常に管理することが必要とされている。
【0005】
また、地すべり地帯においても、地すべり発生時における土塊の移動量と移動方向を測定する場合、クラック発生箇所のような地表面に明らかな変化が見られる領域においては、地すべり計や歪計といった従来型の測定器による観測を行うことが実施されていた。一方、広域の土塊が移動するような場合、すべり面近くの上側土塊と下側地盤との相対的移動量の変化とその移動方向を測ることは困難であり、すべり面を挟んですべり面の下側にワイヤを固定し地表面におけるワイヤの引き込み量を測定することで相対的移動量を求める方式(例えば、特許文献1参照)が用いられる程度で正確な測定はこれまで行われていない。また、このような地域は植生が多いこともあり光学測量やGPSなどの使用も制約があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−21750号公報
【特許文献2】特開平09−53958号公報
【特許文献3】特開2004−234335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
港湾における埋め立て工事や広範囲の地すべり地帯における地盤(海底)や土塊の移動方向の観測においては、海の場合は海水中における計測であるため、落下してくる土砂、潮の流れ、波浪などの外乱要因が存在する。これらは物理的な構築物を用いた機械的測定手法を用いる場合、多くの問題点を生じるだけでなく工事で用いられる用船の運航にも障害となる。さらに海水中であるため、電波の減衰や音波の反射(泡などによる)の影響もあり、一般的な無線テレメータや超音波を用いた計測手段が使えない環境となっている。この点は陸上の地すべり地帯における条件も似ており、地中内部と地表との測定手段として無線や超音波あるいは光などを用いることが難しい。
【0008】
本発明の目的は上記のような埋め立て工事現場や広い地すべり地帯において海中や土中の側方移動量と移動方向を正確に捉えることが出来る位置測定方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系とを含み、前記第一から第四のコイルの出力から磁界強度を求め、第一から第四のコイルで得た磁界強度に基づいて前記単軸コイルの軸線の位置と前記検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0010】
第1の態様による位置測定方式においては、前記検出コイル系を、前記第一から第四のコイルの軸線が前記単軸コイルの軸線と平行又は垂直となるように配置することが好ましい。
【0011】
第1の態様による位置測定方式においてはまた、前記第一から第四のコイルはそれぞれ、軸線がそれぞれ直交する三成分のコイルからなるものでも良い。
【0012】
第1の態様による位置測定方式においてはさらに、前記第一から第四のコイルをそれぞれ複数のコイルとしても良い。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系と、前記第一から第四のコイルの出力を受ける第一から第四のバンドパスフィルタと、該第一及び第二のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、これら第一及び第二の差動回路の出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四のバンドパスフィルタのいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、前記単軸コイルの上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記単軸コイルの直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0014】
第2の態様による位置測定方式においては、前記検出コイル系がさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された第五のコイルを有し、前記信号処理回路系がさらに、前記第五のコイルの出力を受ける第五のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第五のバンドパスフィルタの出力を用いることが好ましい。
【0015】
第2の態様による位置測定方式においてはまた、前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四のコイルをそれぞれ2個ずつとし、これら2個ずつのコイル出力を切換え回路を用いて対応する前記バンドパスフィルタの入力に接続し、前記第五のコイルの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることができる。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、地中または海底地盤中に埋設され電界を生成する単軸の電極対を有する発信機と、前記電界を検出するために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二の電極と前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四の電極とを含む検出電極系と、前記第一及び第二の電極の出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四の電極の出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、前記第一及び第二の差動回路の出力を受ける第一及び第二のバンドパスフィルタと、これら第一及び第二のバンドパスフィルタの出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四の電極のいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、前記単軸の電極対の上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出電極系の中心位置を前記単軸の電極対の直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式が提供される。
【0017】
第3の態様による位置測定方式においては、前記検出電極系がさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された対の電極からなる第五の電極を有し、前記信号処理回路系がさらに、前記第五の電極の対の出力を受けて差信号を出力する第三の差動回路と、該第三の差動回路の出力を受ける第三のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第三のバンドパスフィルタの出力を用いることが好ましい。
【0018】
第3の態様による位置測定方式においてはまた、前記検出電極系において前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四の電極をそれぞれ2個ずつとし、前記信号処理回路系においてはこれら2個ずつの電極出力をそれぞれ差動回路に出力し、前記第一軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第一の差動回路に入力し、前記第二軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第二の差動回路に入力し、前記第三のバンドパスフィルタの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることができる。
[発明の作用]
【0019】
上記の測定方式においては、地中あるいは海底地盤側の単軸のコイルあるいは電極対(以下、送信系と呼ぶ)で発生される磁界または電界は単軸の送信系の軸線を中心として線対称に形成される。磁界方式の場合、位置検出信号として磁界成分は水平軸上に配置された複数のコイルによって電圧信号として求まり、電界方式の場合、電界強度(分布)は水平軸上に配置された複数の電極によって電圧信号として求まる。これらの電圧信号は単軸の送信系直上の点を境として電圧信号の位相が異なるため、位相検波(同期検波)を行えば極性の判別する単軸の送信系直上の点からのコイルあるいは電極のずれ量及びその方向が判り、その結果、単軸の送信系直上の水平座標を求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地中地盤に設置した単軸コイルを内蔵した発信機で形成される磁界成分や電界成分をコイルや電極を用いて検出することで、その直上座標を求めることが容易に可能となる。これにより、海上空港工事などの埋設工事における海底地盤の側方移動(流動)測定や陸上の地すべり地帯におけるすべり面上側の土塊の移動量測定などを容易に行うことができることから、工事費用の節減など得られる効果は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による位置測定方式の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(磁界方式)
図1は本発明を磁界方式に適用した場合の第一実施例におけるコイルの配置を示す図である。発振器11及び単軸コイル(送信コイル)12を内蔵した発信機10が地中に埋設される。発信機10に内蔵されたバッテリ等の電源(図示せず)に接続した発振器11から出力される交流電力を単軸コイル12に印加することで単軸コイル12が励磁され、誘導磁界(交番磁界)が形成される。特に、電源、発振器、及び単軸コイルの組合せにより1kHz〜10kHz程度の低周波磁界信号と呼ばれる磁界信号を生成し、送信アンテナを通して送信することが好ましい。低周波磁界信号は、地中、水中、岩盤等、電磁波や超音波の伝送しにくい伝送媒体でも伝搬するという特徴を持つ。これは以降で述べられる磁界方式の実施例すべてについて適用することができる。
【0023】
一方、上記低周波磁界信号を検出するために、地表又は海面近くに第一〜第四の検出コイルCA〜CDが配置される。これら第一〜第四の検出コイルCA〜CDは、第一軸S1上に間隔をおいて検出コイルCAとCCが同心状に配置され、第二軸S2上に同じ間隔をおいて検出コイルCBとCDが同心状に配置される。これら第一軸S1及び第二軸S2と単軸コイル12の延長軸は互いに直交する配置を取ることが望ましい。第一軸S1及び第二軸S2を形成する素材には非磁性材の棒材又は中空素材が用いられる。尚、検出コイルCA、CCは特許請求の範囲に記載された第一、第二のコイルに対応し、検出コイルCB、CDは特許請求の範囲に記載された第三、第四のコイルに対応する。以降のすべての実施例の説明では、このような複数の検出コイルをまとめて検出コイル系と呼ぶことがある。
【0024】
図2は図1の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。検出コイルCA〜CDの出力はそれぞれ増幅器15A〜15Dで増幅された後、バンドバスフィルタ16A〜16Dにより発振器11の発振周波数と同じ単一の周波数成分が取り出される。続いて、第一軸S1上の検出コイルCAとCC間の差信号と第二軸S2上の検出コイルCBとCD間の差信号とをそれぞれ差動回路17−1、17−2で作り、位相検波回路18−1、18−2に入力する。ここで、位相検波回路18−1、18−2における検波信号は検出コイル系におけるいずれかの検出コイルの出力を用いることが可能である。図2では検出コイルCAの系統からの信号を検波信号として用いているが、切換えスイッチにより4つの検出コイルの何れかを任意に選択できるようにしても良い。バンドパスフィルタ、差動回路、位相検波回路はアナログ回路で構成する方式以外にA/Dコンバータ、FFT演算といったデジタル演算を用いるコンピュータ処理で同様の結果が得られることは言うまでもない。
【0025】
図3は本発明の第一実施例における発信機と検出コイルの配置を断面図で示す。発信機の埋設時にその位置が初期位置としてあらかじめ計測される。地中に埋設された単軸コイル12により形成された誘導磁界成分は地表または海面上にも拡がり、検出コイル系の第一軸S1上に形成された二つの検出コイル(CAとCCの組合せ、またはCBとCDの組合せ)に鎖交すると検出コイルに交流電圧が誘起される。ここで、二つの検出コイルCAとCCの組合せについて言えば、これらの間隔が一定に保たれた状態で水平方向に移動させると、二つの検出コイルに誘起する交流電圧の振幅に変化が生じる。仮に、単軸コイル12の直上に二つの検出コイル(CAとCC)の中間点が来た場合、これら二つの検出コイルに誘起される交流電圧は極性が異なるものの同じ振幅となるので、位相検波器18−1の出力は最小値となる。このとき、単軸コイル12直上の一次元座標は、二つの検出コイル(CAとCC)の中間点を通る紙面に直交する座標として求まることになる。他の一次元座標についても第二軸S2上に設置された二つの検出コイル(CBとCD)によって同様に求まることになる。
【0026】
上記初期位置の設定は、以下の2つの方法で行われる。第1の方法は、例えば後述する地すべりの移動量を測定する場合に適用され、発信機10を埋設した地盤が移動しないことを前提とする場合である。この場合、地すべり地帯において予測される地すべり部分よりも深い地盤中に発信機10を埋設し、埋設した地表面にマーキングを施しておく。地すべりが発生するとマーキングされている地表面が移動するが、発信機10の位置は変化しない。そこで、上記の検出コイル系をマーキングされている場所から移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。探索された位置は発信機10の直上の位置であり、この位置と地すべり発生後のマーキング位置との間の距離がずれ量(移動量)、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0027】
第2の方法は、例えば後述する海底地盤の側方移動量を測定する場合に適用され、発信機10を埋設した地盤が移動することを前提とする場合である。この場合、側方移動が予測される海底地盤中に発信機10を埋設し、埋設場所の直上位置(海面における直上位置)をGPS等の方法で初期位置として計測しておく。海底地盤に側方移動があると発信機10の位置が変化する。そこで、上記の検出コイル系を海面近傍で上記初期位置から移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。探索された位置は発信機10の直上の位置であり、この位置をGPS等の方法で計測すれば、この計測位置と初期位置との間の距離が移動量、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0028】
何を測定するかに応じて、上記のような設定方法が以降で説明されるすべての実施例に適用される。
【0029】
以上の動作原理から、単軸コイル12はその軸線が鉛直方向となるように設置されることが必要であり、検出コイル系は第一軸S1、第二軸S2、つまり各検出コイルの軸線がこの鉛直方向に垂直な水平面上にある状態で検出動作を実行するようにされることが好ましい。また、発信機10の構成要素は水密構造のケースに収容され、外部電源でなくバッテリ電源の場合はその長寿命化を実現するために、発振器11は連続発振ではなく、タイマー等の手段により間欠的に動作するようにされることが好ましいことは言うまでも無い。これらの点は、後述するいずれの実施例でも同様である。
【0030】
図4は本発明の第二実施例におけるコイル配置を示す図である。地中に埋設された発信機10の発振器11から出力される交流出力を単軸コイル12に印加することで単軸コイル12が励磁され、誘導磁界が形成される。地表又は海面近くに配置される第一〜第四の検出コイルCA〜CDは図1に示されたものと同じである。一方、図4では第一軸S1と第二軸S2に直交する第三軸S3が設けられ、この第三軸S3に第五の検出コイルCEが配置された検出コイル系が構成されている。
【0031】
第五の検出コイルCEを備える理由は以下の通りである。図中の第一〜第四の検出コイルCA〜CDは地表又は海面近くに置かれ、その位置によっては検出コイルに対して単軸コイル12で作られた磁界が全く鎖交しない配置となることがある。つまり、図1のコイル配置及び図2で示されたブロック図の回路構成で測定を行った場合、検出コイルCAから検出信号が全く得られない状態が発生する場合が想定される。この問題を解決することを目的として4個の検出コイルCA〜CDとは感度軸が異なる第三軸S3に第五の検出コイルCEを設け、この検出コイルCEから得られる信号を検波信号として用いることで、上記のような検波信号の欠如が生じることを防止することが可能となる。
【0032】
図5は図4の検出コイル系のための信号処理回路系を示すブロック図である。検出コイルCA〜CDの出力はそれぞれ増幅器15A〜15Dで増幅された後、バンドパスフィルタ16A〜16Dにより発振器11の周波数と同じ単一の周波数成分が取り出される。続いて、第一軸S1上の検出コイルCAとCC間の差信号と第二軸S2上の検出コイルCBとCD間の差信号をそれぞれ差動回路17−1、17−2で作り、位相検波回路18−1、18−2に被検波信号として入力する。図2で示したブロック図では位相検波回路18−1、18−2の検波信号は検出コイルCA〜CDのいずれかから得ていたが、図5では第五の検出コイルCEからの信号を検波信号として用いている。
【0033】
図6は本発明の第二実施例におけるコイル配置を示す断面図である。図3のコイル配置と異なる点は第一〜第四の検出コイルCA〜CDとは感度軸が90度異なる第五の検出コイルCEを配置することで、この第五の検出コイルCEは単軸コイル(送信コイル)12の上方領域においてその位置によらず常に磁気信号が受信されることを示している。
【0034】
図7は本発明の第三実施例におけるコイルの配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の単軸コイル12によって磁界が形成される点については図1と同様である。地表又は海面近くに配置される検出コイルを、第一軸S1に4個(CA1、CA2、CC1、CC2)、第二軸S2に4個(CB1、CB2、CD1、CD2)とし、さらに第一軸S1および第二軸S2と直交する第三軸S3に1個(CE)の計9個用いる配置となっている。勿論、検出コイルCA1とCA2の間隔、検出コイルCC1とCC2の間隔、検出コイルCB1とCB2の間隔、検出コイルCD1とCD2の間隔は同じにされ、検出コイルCA1、CA2の組と検出コイルCC1、CC2の組の間隔、検出コイルCB1、CB2の組と検出コイルCD1、CD2の組の間隔も同じにされる。尚、図では検出コイルをCA1、CA2と2個ずつの組合せとして示しているが、CA1、CA2、CA3のように3個ずつの組合せを用いることも可能であり、検出コイルの数を増やせば各コイル間隔も広くとることができるため、測定上は有利となる。
【0035】
図8は図7の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。図8の信号処理回路系では増幅器が受け持つ検出コイルが2系統となることから増幅器15A〜15Dの入力側にそれぞれ切換え回路19A〜19Dを配置している。但し、これらの切換え回路19A〜19Dは、ばらばらに切換えを行うのではなく、検出コイルCA1、CB1、CC1、CD1の組か、あるいは、検出コイルCA2、CB2、CC2、CD2の組のいずれかを選択するように用いられるのが好ましい。増幅器以降の回路及び動作は図5の信号処理回路系とまったく同じである。尚、切換え回路を用いない場合は検出コイルと同数の増幅器、バンドパスフィルタ等を並列に使用することでも同様の結果が得られる。
【0036】
図9は本発明の第三実施例におけるコイル配置を示す断面図である。図6と図9で異なる点は、水平方向に感度軸を持つ検出コイルCA1〜CD1に、同じく水平方向に感度軸を持つ検出コイルCA2〜CD2を追加したことである。鉛直方向に感度軸を持つ検出コイルCEの両側にそれぞれ2箇所に検出コイルを配置することで単軸コイル12直上の水平方向の座標を求めることが容易になる利点を有する。特に単軸コイル12と各検出コイルとの距離が離れている場合において、測定作業を開始してから単軸コイル12直上座標の方向性を早く見つけられる点で効果がある。
【0037】
(電界方式)
図10は本発明を電界方式に適用した第四実施例における電極の配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の発振器11から出力される交流出力を単軸の2つの電極E1、E2間に印加することで単軸の電極E1、E2間に電界が形成される(電流が流れる)。地表又は海面近くに配置される第一〜第六の検出電極EA、EB、EC、ED、EE、EFは、電極E1、E2による電界の電位を検出するためのものであり、第一軸S1上に間隔をおいて検出電極EAとEC、第二軸S2上に同じ間隔をおいて検出電極EBとEDがそれぞれ配置され、さらに第一軸S1及び第二軸S2と直交する第三軸S3上に検出電極EEとEFが配置される。ここで、磁界方式の場合と同様に、発信機10は単軸の電極E1、E2の軸線が鉛直方向になるように設置し、第一軸S1と第二軸S2も互いに直交する配置を取ることが望ましい。さらに、第一軸S1〜第三軸S3を形成する素材には絶縁性の棒又は中空素材が用いられる。検出電極EA〜EDは単軸の2つの電極E1、E2直上の座標や方向を検出するために用いられ、検出電極EEとEFは位相検波に使用する検出信号を得るために用いられる。尚、検出電極EA、ECは特許請求の範囲に記載された第一、第二の電極に対応し、検出電極EB、EDは特許請求の範囲に記載された第三、第四の電極に対応する。以降の説明では、このような複数の検出電極をまとめて検出電極系と呼ぶことがある。
【0038】
図11は図10の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。検出電極EA〜EFで検出された各々の電位は各軸上に配置された電極の組合せ毎(EAとECの組、EBとEDの組、EEとEFの組)に差動回路20−1、20−2、20−3によって差電位として検出される。これらの差信号から検出電極EA〜EDによって被検波信号が作られ、検出電極EEとEFによって検波信号が作られる。差動回路20−1〜20−3の差信号はバンドパスフィルタ21−1〜21−3により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出される。位相検波回路22−1、22−2はバンドパスフィルタ21−1、21−2の信号を受け、バンドパスフィルタ21−3の信号を検波信号として同期検波を行い、第一軸S1方向と第二軸S2方向の電位差を出力する。磁界方式の場合と同様に、検出電極系の中心が単軸の電極E1、E2の軸線上に位置した時に、電位差が最小値となる。尚、これらの回路もアナログ回路で構成する方法以外にA/Dコンバータによってデジタル値に変換することによりコンピュータ処理することでも同様の効果が得られる。
【0039】
図12は本発明の第四実施例における電極配置を示す断面図である。地中に埋設された単軸の電極E1−E2により形成された電界(電流)成分は地表または海面付近で大きく曲げられ単軸の電極E1−E2直上を始点として、表面上を放射状に拡がる。これらの成分は表面下に配置された複数の検出電極によって電位が検出され、同一軸上で離れた2点間の検出電極の差信号を求めることで電位差として検出される。このことから交叉する二軸上に各々間隔が等しい検出電極を配置すると二次元上の電位差が検出され、その電位差が最小となる場合、二つの検出電極の中間点が単軸の電極E1−E2の直上に一致することになる。位相検波を用いていることから単軸の電極で形成される交流電界と同じ周波数成分を検波信号として利用することで雑音成分の除去も同時に行うことができる。
【0040】
尚、第三軸S3及び検出電極EEとEFは省略されても良く、この場合、検波信号は、検出電極EA〜EDのいずれかの出力を用いる。
【0041】
図13は本発明を地すべり移動量の測定に適用する場合の第五実施例を示す図である。地すべり発生が予測される地帯にボーリングを行い、予想されるすべり面より下側の深さに、発振器11と単軸コイル12等を内蔵する発信機10を設置する。ここで、ボーリング孔45の跡は、前述した初期位置設定における第1の設定方法のマーキングとして利用することができる。前述したように発信機10は内蔵のタイマーによって所定の時刻に発振器11を起動して単軸コイル12から磁界を発生させることにより、同じく内蔵のバッテリの消耗を防止することが可能となる。さらに、磁界方式の場合には、発信機10に組み込まれている磁界発生用の単軸コイル12を受信コイルとしても用い、単軸コイル12には受信回路を組合せ、地表から磁気信号によって起動信号を与えることにより発振器11を起動させることも可能である。これらの方法についての詳細は、例えば特許文献2、3に開示されている。
【0042】
発信機10埋設以後の地すべり移動量の測定は以下のようにして行われる。地上には非磁性材料で作られた移動台41によって地表面に側線が設定され、この側線に沿って検出コイル系40を移動可能とする。この移動台41は水平が維持されるように構築することが好ましい。
【0043】
第一実施例の場合について言えば、マーキング場所を基準として検出コイル系40を水平移動させ、位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる位置を探索する。もし、地すべりが無ければ位相検波器18−1、18−2の出力はマーキング場所で最小値となる。一方、地すべりによる移動が発生していれば、マーキング場所から水平方向に移動したある場所、つまり発信機10の直上の位置で位相検波器18−1、18−2の出力が最小値となる。この探索位置と地すべり発生後のマーキング位置との間の距離がずれ量(移動量)、両者を結ぶ線分の方向が移動方向となる。
【0044】
検出コイル系40及び信号処理回路系には、前述したすべての実施例を適用することができる。但し、電界方式の場合、図10及び図11の検出電極系及び信号処理回路系の形態をとることは言うまでも無い。
【0045】
図14は本発明を港湾等の埋め立て工事に適用する場合の第六実施例を示す図である。海上空港の建設工事では、陸地近くの港湾の土砂埋め立てを行って形成した人工地盤の上に空港施設の建設が行われる。この土砂埋め立てを行う場合、埋め立て領域の近くの海底地盤では埋め立て荷重による側方移動が発生する。この移動量を測定するため、海底地盤内に交流磁界発生用の発信機10を設置して海中に磁界を発生させる。一方、海面近くにフロート50等を用いて海水中に検出コイル系40を配置し、フロート50にはGPS受信機51を設置する。GPS受信機51の位置はGPSや光学測量によって容易に求めることができ、既に実用化されている。
【0046】
本第六実施例においても、検出コイル系(検出電極系)及び信号処理回路系は前述の第一〜第五実施例のいずれを適用しても良い。尚、フロート50と検出コイル系40をつなぐワイヤ部分にはバネや板等(図示せず)を用いて波面の動きを伝えないようにする工夫が併用されることは言うまでもない。また、検出コイル系(検出電極系)は常時配置する形態でも良いが、測定を行わない場合には引き上げておき、測定に際して海上に投棄する形態でも良い。いずれにしても、各検出コイル(検出電極)からの検出信号はフロート50を経由してケーブルにより船上の信号処理回路系に入力されるが、増幅器はフロート50側に備えるようにしても良い。
【0047】
本第六実施例では、あらかじめGPS受信機51を用いて発信機10を埋設した時の初期位置が測定される。以後、定期的に発信機10を起動させ、検出コイル系40を移動させて発信機10の位置を二次元的に測定する作業を行う。例えば、第一実施例による検出コイル系及び信号処理回路系を用いる場合、仮に、海底地盤に側方移動が発生していると、位相検波器18−1、18−2の出力が最小となる位置も初期位置からずれることになる。GPS受信機51によれば、初期位置からずれた現在の位置を知ることができるので、2軸座標面上での初期位置と現在位置とから海底地盤の水平方向の移動量及び移動方向を容易に算出することができる。
【0048】
図15は本発明の第七実施例における電極の配置を示す図である。地中に埋設された発信機10内の発振器11から出力される交流(電圧)出力を単軸の電極E1、E2に印加することで電極E1、E2間に電界が形成される。ここでは、検出電極系が対の電極を等間隔に配置して構成され、第一〜第五の検出電極対EG〜EKが地表又は海面近くに配置される。具体的には、第一軸S1上に第一、第三の電極対EG、EI、第二軸S2上に第二、第四の電極対EH、EJ、さらに第一軸S1及び第二軸S2と直交する第三軸S3に第五の電極対EKが配置される。前述したように、電極E1、E2の軸線が鉛直方向となり、第一軸S1と第二軸S2は互いに直交する配置とすることが望ましい。
【0049】
図16は図15の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。各検出電極対EG〜EKで検出された各々の対の電位から、はじめに差動回路61G〜61Kで差電位が取り出される。次に、差動回路62−1、62−2により第一の電極対EGの差電位と第三の電極対EIの差電位との差電位、第二の電極対EHの差電位と第四の電極対EJの差電位との差電位がそれぞれ取り出され、各軸の差電位として検出される。第一軸S1、第二軸S2の差電位からバンドパスフィルタ63−1、63−2により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出され、差動回路61Kの差電位からバンドパスフィルタ63−3により発振器11の発振周波数と同じ周波数成分が取り出される。このようにして、第一の電極対EG〜第四の電極対EJによって被検波信号が作られ、第五の電極対EKによって検波信号が作られる。二組の位相検波回路64−1、64−2はこれらの信号を受けて同期検波を行い、第一軸S1方向と第二軸S2方向の電位差を出力する。
【0050】
図17は本発明の第七実施例における検出電極系の電極配置を示す断面図である。地中に埋設された単軸の電極E1、E2により形成された電界(電流)成分は地表または海面付近で大きく曲げられ、単軸の電極直上を始点として表面上を放射状に拡がる。これらの電界成分は水面下(近傍)に配置された検出電極系によって電位が検出され、同軸上の離れた2領域間の電極対同士の差信号を求めることで電位差として検出される。このことから、交叉する二軸上に各々間隔が等しい電極対を配置すると、二次元上の電位差が検出され、この電位差が最小となる場合に一軸上の2つの電極対の中間点が単軸の電極E1、E2の直上に位置することになる。
【0051】
図18は本発明を港湾等の海上埋め立て工事に適用する際の第八実施例を示す図である。海面近くに検出コイル系(あるいは検出電極系)を配置する場合、船舶から吊り下げると波浪による船舶の動きが検出コイル系(あるいは検出電極系)に伝わり、常に移動(変位)が伝わることになり安定した計測(測定)が難しい。この問題を解決するため、本実施例ではフロート50と検出コイル系40(あるいは検出電極系)との間にバネ等の伸縮性部材55を1つ以上(ここでは2つ)介在させると共に、2つの伸縮性部材55の間に水の抵抗を受ける板56を併用させている。これにより検出コイル系40(あるいは検出電極系)を水中で安定に維持することができ、波浪の影響を低減させる効果が得られる。尚、検出コイル系や検出電極系を固定するフレームを移動させる手段として、船で曳航しても良いが、フロート50にモーターとスクリュー及び舵を取付け、船上からリモートコントロールを行うようにしても良い。尚、リモートコントロールを容易に行うため、フロート50にはGPS受信機51や方位計等を取付け、フロート50の座標情報を船上で常にモニターしながら作業を行うことで作業性を高めることが容易となる。この実施例も、前述した第一〜第四、第七の実施例のいずれを適用しても良い。
【0052】
図19は本発明に使用される検出コイルから得られる磁界信号の検出出力が、単軸コイルに対する検出コイルの方向性と相対位置によって変化することを説明するための図である。図19において、送信側の単軸コイルは零点の直下で距離eの場所に配置されているものとして検出コイルの出力から磁界強度を求めている。図19の特性(a)は検出最大感度軸が垂直方向となる検出コイルを水平方向に移動させた際に測定される磁界強度分布を示し、単軸コイルの直上で最大となることは明らかである。一方、図19の特性(b)は検出最大感度軸が水平方向となる検出コイル(本発明の各実施例に相当)を移動させた際に測定される磁界強度分布を示している。ここで、特性(b)が図中左半分で負となる領域は受信信号の位相成分を加味した演算を行っているために生じている。図19の横軸は送信側の単軸コイルの中心までの距離eを用いて表している。なお、このような磁界強度分布あるいは磁界の分布(拡がり)は計算によって求めることも可能である。
【0053】
図20は本発明に使用される検出コイルが検出した磁界信号の出力を微分した結果を示す図である。図19で求められた特性(a)、(b)に対し、微分演算処理を行うと、図19の特性(a)は図20の特性(c)となり、同じく図19の特性(b)は図20の特性(d)として示される。ここで注目すべき点は、特性(c)と(d)が図中左側の位置で交叉し、その交点座標が0.21eすなわち、送信側の単軸コイルの中心までの距離eの21%に相当することである。このことは、水平軸に最大感度を持つ検出コイルと垂直軸に最大感度を持つ検出コイルの両方を併用し、信号レベルが大きい方を選択する切換え位置として上記の値0.21eを利用することで、測定上の利点となる。
【0054】
図21は本発明に用いられる検出コイル系の具体例を示す。固定部100に、軸S1−1と軸S1−2とを取り付けて第一軸を構成し、軸S2−1と軸S2−2とを取り付けて第二軸を構成している。固定部100及び各軸は塩化ビニール、アクリル等の非磁性材料でかつ非導電性の素材を用いて作られる。検出コイルCA〜CDは、各軸を固定部100に取り付けた後に後加工で設置することができるので、防水加工も含めて製作上のメリットが大きい。本例は、図1に示した検出コイル系に適しているが、固定部100を中空にして検出コイルを内蔵させ、このコイルの軸線を検出コイルCA、CCの軸線、検出コイルCB、CDの軸線に直交するように配置することで図4に示す検出コイル系を実現することができる。勿論、各軸に複数の検出コイルを設置することで図7に示す検出コイル系を実現できる。
【0055】
図22は、本発明に用いられる検出コイル系の他の例を示す。本例では立方格子状の枠体110を用い、その各コーナー部分に検出コイルC1、C2、C3を設置するようにしている。枠体110の材料は、上述した図21の例と同様、塩化ビニール、アクリル等の非磁性材料でかつ非導電性の素材を用いることが好ましい。1つのコーナーについて言えば、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の三軸に検出コイルが設置された三成分のコイルと見なすことができる。コーナー毎にこれらの三成分のコイルの切換えを行う切換え手段を備えることでどの検出コイルを検出に用いるかを任意に選択することができる。図の上部又は下部の検出コイルを用いれば平面的な検出コイル系を構成することができ、上部及び下部の検出コイルの両方を用いれば立体的な検出コイル系を構成することができる。このような立方格子状の枠体110を用いることで、水中以外に地上での設置に際しても安定性を確保することが容易となる。なお例として、図中、一点鎖線で示すように、枠体110を形成している四角形の枠の中に更に交差する枠を設け、交差する枠に検出コイルを設置することで図1に示されるような検出コイル系をも兼ねる検出コイル系を実現できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明を磁界方式に適用した場合の第一実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図2】図2は図1の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は本発明の第一実施例における発信機とコイルの配置を断面図で示す。
【図4】図4は本発明を磁界方式に適用した場合の第二実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図5】図5は図4の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は本発明の第二実施例における発信機とコイルの配置を示す断面図である。
【図7】図7は本発明を磁界方式に適用した場合の第三実施例におけるコイルの配置を示す図である。
【図8】図8は図7の検出コイル系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は本発明の第三実施例における発信機とコイルの配置を示す断面図である。
【図10】図10は本発明を電界方式に適用した場合の第四実施例における電極の配置を示す図である。
【図11】図11は図10の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は本発明の第四実施例における発信機と電極の配置を示す断面図である。
【図13】図13は本発明を地すべり移動量の測定に適用する場合の第五実施例を示す図である。
【図14】図14は本発明を港湾等の埋め立て工事に適用する場合の第六実施例を示す図である。
【図15】図15は本発明を電界方式に適用した場合の第七実施例における電極の配置を示す図である。
【図16】図16は図15の検出電極系のための信号処理回路系の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第七実施例における発信機と電極の配置を示す断面図である。
【図18】図18は本発明を港湾等の海上埋め立て工事に適用する際の第八実施例を示す図である。
【図19】図19は本発明に使用される検出コイルから得られる磁界信号の検出出力が、単軸コイルに対する検出コイルの方向性と相対位置によって変化することを説明するための図である。
【図20】図20は図19に示された磁界信号の出力を微分した結果を示す図である。
【図21】図21は本発明に用いられる検出コイル系の具体例を示した図である。
【図22】図22は本発明に用いられる検出コイル系の他の例を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
CA、CB、CC、CD、CE 検出コイル
S1、S2、S3 第一軸、第二軸、第三軸
EA、EB、EC、ED、EE、EF 検出電極
15A〜15E 増幅器
16A〜16E バンドパスフィルタ
17−1、17−2 差動回路
18−1、18−2 位相検波器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系とを含み、
前記第一から第四のコイルの出力から磁界強度を求め、第一から第四のコイルで得た磁界強度に基づいて前記単軸コイルの軸線の位置と前記検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記検出コイル系を、前記第一から第四のコイルの軸線が前記単軸コイルの軸線と平行又は垂直となるように配置することを特徴とする位置測定方式。
【請求項3】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記第一から第四のコイルはそれぞれ、軸線がそれぞれ直交する三成分のコイルからなることを特徴とする位置測定方式。
【請求項4】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記第一から第四のコイルをそれぞれ複数のコイルとしたことを特徴とする位置測定方式。
【請求項5】
地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、
前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系と、
前記第一から第四のコイルの出力を受ける第一から第四のバンドパスフィルタと、該第一及び第二のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、これら第一及び第二の差動回路の出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、
前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四のバンドパスフィルタのいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、
前記単軸コイルの上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記単軸コイルの直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項6】
請求項5に記載の位置測定方式において、前記検出コイル系はさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された第五のコイルを有し、前記信号処理回路系はさらに、前記第五のコイルの出力を受ける第五のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第五のバンドパスフィルタの出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項7】
請求項6に記載の位置測定方式において、前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四のコイルをそれぞれ2個ずつとし、これら2個ずつのコイル出力を切換え回路を用いて対応する前記バンドパスフィルタの入力に接続し、前記第五のコイルの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項8】
地中または海底地盤中に埋設され電界を生成する単軸の電極対を有する発信機と、
前記電界を検出するために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二の電極と前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四の電極とを含む検出電極系と、
前記第一及び第二の電極の出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四の電極の出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、前記第一及び第二の差動回路の出力を受ける第一及び第二のバンドパスフィルタと、これら第一及び第二のバンドパスフィルタの出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、
前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四の電極のいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、
前記単軸の電極対の上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出電極系の中心位置を前記単軸の電極対の直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項9】
請求項5に記載の位置測定方式において、前記検出電極系はさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された対の電極からなる第五の電極を有し、前記信号処理回路系はさらに、前記第五の電極の対の出力を受けて差信号を出力する第三の差動回路と、該第三の差動回路の出力を受ける第三のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第三のバンドパスフィルタの出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項10】
請求項9に記載の位置測定方式において、前記検出電極系において前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四の電極をそれぞれ2個ずつとし、前記信号処理回路系においてはこれら2個ずつの電極出力をそれぞれ差動回路に出力し、前記第一軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第一の差動回路に入力し、前記第二軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第二の差動回路に入力し、前記第三のバンドパスフィルタの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項11】
請求項5から7の何れかに記載の位置測定方式を用いて陸上の地すべりによる移動量及び移動方向を測定する方法であって、
前記発信機を、予想される地すべり面よりも下側の深さに埋設し、
埋設された発信機の直上の地表面に初期位置としてマーキングを施しておき、
以後、定期的に前記発信機を起動させると共に、前記検出コイル系を地表面上を移動させて、前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記発信機の直上の位置として検出し、
前記マーキングお施された初期位置と前記検出された位置との間の距離及び線分から移動量及び移動方向を計測するようにしたことを特徴とする地すべりによる移動量及び移動方向の測定方法。
【請求項12】
請求項5から7の何れかに記載の位置測定方式を用いて海底地盤の側方移動量及び移動方向を測定する方法であって、
前記発信機を、側方移動が予想される海底地盤に埋設し、
埋設された発信機の直上の海面上の位置をあらかじめ初期位置として計測しておき、
以後、定期的に前記発信機を起動させると共に、前記検出コイル系を海面あるいは海面近傍で移動させて、前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を海面上での前記発信機の直上の位置として検出し、
前記初期位置と前記検出された位置との間の距離及び線分から側方移動量及び移動方向を計測するようにしたことを特徴とする海底地盤の側方移動量及び移動方向の測定方法。
【請求項1】
地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系とを含み、
前記第一から第四のコイルの出力から磁界強度を求め、第一から第四のコイルで得た磁界強度に基づいて前記単軸コイルの軸線の位置と前記検出コイル系中心の相対位置を二次元的に求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記検出コイル系を、前記第一から第四のコイルの軸線が前記単軸コイルの軸線と平行又は垂直となるように配置することを特徴とする位置測定方式。
【請求項3】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記第一から第四のコイルはそれぞれ、軸線がそれぞれ直交する三成分のコイルからなることを特徴とする位置測定方式。
【請求項4】
請求項1に記載の位置測定方式において、前記第一から第四のコイルをそれぞれ複数のコイルとしたことを特徴とする位置測定方式。
【請求項5】
地中または海底地盤中に埋設され交番磁界を生成する単軸コイルを内蔵した発信機と、
前記交番磁界を受けるために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二のコイルと前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四のコイルとを含む検出コイル系と、
前記第一から第四のコイルの出力を受ける第一から第四のバンドパスフィルタと、該第一及び第二のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四のバンドパスフィルタの出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、これら第一及び第二の差動回路の出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、
前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四のバンドパスフィルタのいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、
前記単軸コイルの上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記単軸コイルの直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項6】
請求項5に記載の位置測定方式において、前記検出コイル系はさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された第五のコイルを有し、前記信号処理回路系はさらに、前記第五のコイルの出力を受ける第五のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第五のバンドパスフィルタの出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項7】
請求項6に記載の位置測定方式において、前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四のコイルをそれぞれ2個ずつとし、これら2個ずつのコイル出力を切換え回路を用いて対応する前記バンドパスフィルタの入力に接続し、前記第五のコイルの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項8】
地中または海底地盤中に埋設され電界を生成する単軸の電極対を有する発信機と、
前記電界を検出するために地表または海面近傍に配置される第一軸上に間隔をおいて設置された第一及び第二の電極と前記第一軸と直交する第二軸上に間隔をおいて設置された第三及び第四の電極とを含む検出電極系と、
前記第一及び第二の電極の出力を受けて差信号を出力する第一の差動回路と、前記第三及び第四の電極の出力を受けて差信号を出力する第二の差動回路と、前記第一及び第二の差動回路の出力を受ける第一及び第二のバンドパスフィルタと、これら第一及び第二のバンドパスフィルタの出力をそれぞれ受ける第一及び第二の位相検波回路とを含む信号処理回路系とを含み、
前記第一及び第二の位相検波回路は、前記第一から第四の電極のいずれかの出力を検波信号として受けて同期検波を行い、
前記単軸の電極対の上方領域において前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出電極系の中心位置を前記単軸の電極対の直上の位置として求めることを特徴とする位置測定方式。
【請求項9】
請求項5に記載の位置測定方式において、前記検出電極系はさらに、前記第一軸及び第二軸と直交する第三軸に設置された対の電極からなる第五の電極を有し、前記信号処理回路系はさらに、前記第五の電極の対の出力を受けて差信号を出力する第三の差動回路と、該第三の差動回路の出力を受ける第三のバンドパスフィルタを有し、前記第一及び第二の位相検波回路の検波信号として前記第三のバンドパスフィルタの出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項10】
請求項9に記載の位置測定方式において、前記検出電極系において前記第一軸及び第二軸にそれぞれ間隔をおいて設置される前記第一から第四の電極をそれぞれ2個ずつとし、前記信号処理回路系においてはこれら2個ずつの電極出力をそれぞれ差動回路に出力し、前記第一軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第一の差動回路に入力し、前記第二軸上の2個ずつの電極出力の2つの差信号を前記第二の差動回路に入力し、前記第三のバンドパスフィルタの出力を検波信号として同期検波を行うことで、一軸あたり2種類の出力を用いることを特徴とする位置測定方式。
【請求項11】
請求項5から7の何れかに記載の位置測定方式を用いて陸上の地すべりによる移動量及び移動方向を測定する方法であって、
前記発信機を、予想される地すべり面よりも下側の深さに埋設し、
埋設された発信機の直上の地表面に初期位置としてマーキングを施しておき、
以後、定期的に前記発信機を起動させると共に、前記検出コイル系を地表面上を移動させて、前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を前記発信機の直上の位置として検出し、
前記マーキングお施された初期位置と前記検出された位置との間の距離及び線分から移動量及び移動方向を計測するようにしたことを特徴とする地すべりによる移動量及び移動方向の測定方法。
【請求項12】
請求項5から7の何れかに記載の位置測定方式を用いて海底地盤の側方移動量及び移動方向を測定する方法であって、
前記発信機を、側方移動が予想される海底地盤に埋設し、
埋設された発信機の直上の海面上の位置をあらかじめ初期位置として計測しておき、
以後、定期的に前記発信機を起動させると共に、前記検出コイル系を海面あるいは海面近傍で移動させて、前記第一及び第二の位相検波回路の出力が最小となる時の前記検出コイル系の中心位置を海面上での前記発信機の直上の位置として検出し、
前記初期位置と前記検出された位置との間の距離及び線分から側方移動量及び移動方向を計測するようにしたことを特徴とする海底地盤の側方移動量及び移動方向の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−255986(P2007−255986A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78613(P2006−78613)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(390027177)坂田電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(390027177)坂田電機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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