説明

低い煙密度のポリ(アリーレンエーテル)組成物、方法、及び物品

熱可塑性組成物、及び該組成物を製造する方法を開示する。本熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族化合物)、有機ホスフェートエステル難燃剤、官能化ポリシロキサン、及び有機酸を含む。本熱可塑性組成物は、燃焼した際に驚くほど低い煙密度を生成し、輸送及び建築及び建設産業のための物品を製造するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照:
本出願は、2007年1月10日出願の米国仮出願60/884,335(その内容は全て参照として本明細書中に包含する)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、その優れた耐水性、寸法安定性、及び固有の難燃性に関して知られている1つのタイプのプラスチックである。広範囲の消費者製品、例えば衛生設備、電気ボックス、自動車部品、及び被覆線の要求を満足させるために、それを種々の他のプラスチックとブレンドすることによって、強度、剛性、耐化学薬品性、及び耐熱性のような特性を調整することができる。
【0003】
プラスチック材料は増加する数々の用途において用いられているので、難燃剤を用いることによってそれらの可燃性を低下させることに継続的な関心がある。低下した可燃性に加えて、プラスチック材料は炎に曝露した際により少ない煙を生成することが望ましい。難燃剤であるポリ(アリーレンエーテル)組成物は公知であるが、難燃性を、低い煙発生性と組み合わせて、特に機械特性などの他の特性とのバランスで達成することは難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、低い可燃性及び低い煙密度を有するポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
低い可燃性で低い煙発生性のポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する必要性は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び有機酸;を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度(smoke density)、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度(a corrected maximum smoke density)からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物によって取り組まれる。
【0006】
他の態様は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び有機酸;を溶融混練することによって得られる反応生成物を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物である。
【0007】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜10である)を有する官能化ポリシロキサン;及び0.2〜1重量%のクエン酸;を含み;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物である。
【0010】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)を有する官能化ポリシロキサン;0.2〜1重量%のクエン酸;及び場合によっては5重量%以下の、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤;から構成され;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物である。
【0013】
他の態様は、45〜80重量%のポリ(アリーレンエーテル);1〜40重量%のポリ(アルケニル芳香族化合物);1〜25重量%の有機ホスフェートエステル難燃剤;及び、4〜10重量%の、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物である。
【0014】
他の態様は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び有機酸;を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物を含む物品である。
【0015】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜10である)を有する官能化ポリシロキサン;及び0.2〜1重量%のクエン酸;を含み;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物を含む物品である。
【0018】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;0.2〜1重量%のクエン酸;及び場合によっては5重量%以下の、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤;から構成され;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物を含む物品である。
【0021】
他の態様は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び有機酸;を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物を製造する方法である。
【0022】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);0.2〜1重量%のクエン酸;及び、1.5〜6重量%の、次式:
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む(ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものである);ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物を製造する方法である。
【0025】
これら及び他の態様を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明:
多くの熱可塑性材料は炎に曝露した際に煙を生成する。煙は視界を低下させ、それにより避難及び消防活動を妨げる可能性がある。したがって、炎に曝露した際に所定時間の間により少ない量の煙を生成する(より低い煙密度を有する)熱可塑性材料が、建築内装及び自動車内装のような多数の設備において望ましい。
【0027】
煙密度は、炎への曝露後の所定時間における煙の密度か、又は炎に曝露した後に所定時間(ここでは初期の20分間として記載する)の間に生成する最大煙密度のいずれかによって示すことができる。煙密度は光学法によって測定される。煙密度に関するより低い値は、より少ない量の煙が生成したことを示す。したがってより低い煙値がより望ましい。所定時間での煙の密度は、組成物を炎に曝露した後に煙がいかに速く発達するかの指標である。最大煙密度は、所定時間(例えば点火後の初期の20分間)の間に生成する煙の最大量を示す。幾つかの用途においては、所定時間における煙密度が低いことが特に望ましい。幾つかの用途においては、低い最大煙密度を有することが望ましい。幾つかの用途においては、煙密度の両方の測定値が重要である。
【0028】
静的法及び動的法の両方で材料の煙密度を測定する種々の方法が存在する。これらの試験法は、試料の寸法、形状、試験中の試料の向き、点火源、熱エネルギーの量、検出器のタイプ、及び排気において変化する。ASTM−E662、UIC−564−2、3m立方体煙室試験、XP2煙室試験などの静的試験法とは異なり、ASTM−E84、円錐型熱量計法、ISO−92329−1、及びISO−5660−2などの動的試験法では排気条件を用いる。本材料はこれらの試験法の全てで試験することができ、これらの試験法において同様に減少した煙生成を導くことができる。本出願の実施例に関しては、ASTM−E662の試験法を用いた。
【0029】
本熱可塑性組成物は、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する。本熱可塑性組成物は、これらの煙密度特性の両方を示すことができる。幾つかの態様においては、ここに記載する熱可塑性組成物は、1.5〜3.2mmの厚さ、具体的には3.2mmの厚さを有する試料を用いてASTM−E662によって測定して5〜250の4分における煙密度を有する。この範囲内において、4分における煙密度は、200以下、具体的には150以下、より具体的には100以下であってよい。低い煙密度は、より大きな厚さにおいては達成するのが難しい。したがって、より大きい厚さにおいて所定の煙密度を達成することが望ましい。
【0030】
幾つかの態様においては、本熱可塑性組成物は、1.5〜3.2mmの厚さ、具体的には3.2mmの厚さを有する試料を用いてASTM−E662によって測定して20〜300の点火後の初期の20分間での最大煙密度を有する。この範囲内において、最大煙密度は、200以下、具体的には180以下、より具体的には150以下であってよい。
【0031】
上述したように、可燃性も熱可塑性組成物の重要な特性である可能性がある。可燃性の1つの客観的尺度は、「装置及び器具における部品のためのプラスチック材料の可燃性に関する試験(Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances);UL94、第5版、200改訂と題されたUnderwriter's Laboratory Bulletin 94(以下、「UL94」)の「20mm垂直燃焼試験」である。幾つかの態様においては、本熱可塑性組成物は、1.6〜3.2mm、具体的には1.0〜1.6mmの厚さの厚さにおいて試験してV−1又はV−0のUL94等級を有する。幾つかの態様においては、本熱可塑性組成物は、1.6〜3.2mm、具体的には1.0〜1.6mmの厚さにおいてV−0のUL94等級を有する。
【0032】
低い煙密度、低い可燃性、及びこれらの組み合わせは、特に衝撃強さのような他の物理特性の損失を最小にして達成するのは困難である可能性がある。しかしながら、本熱可塑性組成物は非常に高い衝撃強さを示すことができる。例えば、幾つかの態様においては、本熱可塑性組成物は、ASTM−D256にしたがって23℃において測定して少なくとも180J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する。下記の実施例において示されるように、約350J/m程度の高さのノッチ付きアイゾッド衝撃強さが示された。ノッチ付きアイゾッド衝撃強さは、また、ISO−180/1Aにしたがって測定することもでき、この場合にはkJ/mの単位で表される。
【0033】
本熱可塑性組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族化合物)、有機ホスフェートエステル難燃剤、官能化ポリシロキサン、及び有機酸を含む。本組成物において有用なポリ(アリーレンエーテル)は、次式:
【0034】
【化6】

【0035】
(式中、それぞれの構造単位に関して、それぞれのZは、独立して、ハロゲン、非置換又は置換C〜C12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基はtert−ヒドロカルビルではない)、C〜C12ヒドロカルビルチオ、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、又はC〜C12ハロヒドロカルビルオキシであり、ここでハロゲンと酸素原子とは少なくとも2つの炭素原子によって隔てられており;それぞれのZは、独立して、水素、ハロゲン、非置換又は置換C〜C12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基はtert−ヒドロカルビルではない)、C〜C12ヒドロカルビルチオ、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、又はC〜C12ハロヒドロカルビルオキシであり、ここでハロゲンと酸素原子とは少なくとも2つの炭素原子によって隔てられている)
のアリーレンエーテル繰り返し単位を含む。
【0036】
本明細書において用いる「ヒドロカルビル」という用語は、単独で用いられるにせよ、或いは他の用語の接頭辞、接尾辞、又は一部として用いられるにせよ、炭素及び水素のみを含む残基を指す。残基は、脂肪族又は芳香族で、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和、又は不飽和であってよい。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和、及び不飽和の複数の炭化水素部分の組み合わせを含んでいてもよい。しかしながら、ヒドロカルビル残基が「置換」と記載されている場合には、置換基残基の炭素及び水素構成要素の上に若しくはこれらにわたってヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、置換されていると具体的に記載されている場合には、ヒドロカルビル残基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、スルホキシル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基などを含んでいてもよく、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0037】
ポリ(アリーレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位に配置されている1つ以上のアミノアルキル含有末端基を有する分子を含んでいてよい。また、通常はテトラメチルジフェノキノン副生成物がその中に存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基もしばしば存在する。
【0038】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、又はブロックコポリマー、並びに上記の少なくとも1つを含む組み合わせの形態であってよい。ポリ(アリーレンエーテル)としては、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を場合によっては2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて含むポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0039】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種類又は複数のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造することができる。かかるカップリングのためには一般に触媒系を用い、これらは、銅、マンガン、又はコバルト化合物のような1種類又は複数の重金属化合物を、通常は第2級アミン、第3級アミン、ハロゲン化物、又は上記の2種類以上の組み合わせのような種々の他の物質と組み合わせて含んでいてよい。幾つかの態様においては、ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)又はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0040】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準試料、40℃におけるスチレンジビニルベンゼンゲル、及びクロロホルム1mLあたり1mgの濃度を有する試料を用いるゲル透過クロマトグラフィーによって測定して、3,000〜40,000g/モルの数平均分子量及び5,000〜80,000g/モルの重量平均分子量を有していてよい。ポリ(アリーレンエーテル)又は複数のポリ(アリーレンエーテル)の組み合わせは、クロロホルム中25℃において測定して0.25〜0.60dL/gの初期固有粘度を有していてよい。初期固有粘度は、0.3〜0.55dL/g、具体的には0.35〜0.45dL/gであってよい。初期固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混練する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度として定義される。最終固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混練した後のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度として定義される。当業者に理解されるように、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は、溶融混練の後に30%以下高くなる可能性がある。増加の割合は、[100×(最終固有粘度−初期固有粘度)/初期固有粘度]として算出することができる。正確な比を求めることは、2つの固有粘度を用いる場合、用いるポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理特性にある程度依存する。
【0041】
幾つかの態様においては、ポリ(アリーレンエーテル)は二官能性ポリ(アリーレンエーテル)を含む。個々のポリ(アリーレンエーテル)分子に関しては、「二官能性」という用語は、分子が2つのフェノール性ヒドロキシ基を含むことを意味する。ポリ(アリーレンエーテル)樹脂に関しては、「二官能性」という用語は、樹脂が、ポリ(アリーレンエーテル)分子あたり平均で1.6〜2.4個のフェノール性ヒドロキシ基を含むことを意味する。幾つかの態様においては、二官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)分子あたり平均で1.8〜2.2個のフェノール性ヒドロキシ基を含む。
【0042】
幾つかの態様においては、二官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、次式:
【0043】
【化7】

【0044】
(式中、Q及びQのそれぞれは、独立して、メチル又はジ−n−ブチルアミノメチルであり;a及びbのそれぞれは、独立して、0〜200であり、但し、aとbの合計は約150〜200である)
を有する。この構造を有する二官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、ジ−n−ブチルアミンを含む触媒の存在下において2,6−キシレノールと2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを酸化共重合することによって合成することができる。
【0045】
二官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、一価フェノールを、触媒の存在下、対応するポリ(アリーレンエーテル)及び対応するジフェノキノンを形成するのに好適な条件下で酸化重合し;ポリ(アリーレンエーテル)及びジフェノキノンを触媒から分離し;ポリ(アリーレンエーテル)及びジフェノキノンを平衡化して、2つの末端ヒドロキシ基を有するポリ(アリーレンエーテル)を形成する;ことを含むプロセスによって製造することができる。対応するポリ(アリーレンエーテル)の代表例は、2,6−ジメチルフェノールの酸化重合から製造されるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。対応するジフェノキノンの代表例は、2,6−ジメチルフェノールの酸化によって形成される3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジフェノキノンである。
【0046】
また、二官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、単官能性ポリ(アリーレンエーテル)を場合によっては酸化剤の存在下で二価フェノールと平衡化する再分配反応によって製造することもできる。再分配反応は当該技術において公知であり、例えばCooperらの米国特許3,496,236、及びLiskaらの5,880,221に記載されている。
【0047】
本組成物は、熱可塑性組成物の全重量を基準として40〜97重量%の量のポリ(アリーレンエーテル)を含む。具体的には、ポリ(アリーレンエーテル)の量は、50〜85重量%、より具体的には60〜80重量%であってよい。
【0048】
ポリ(アリーレンエーテル)に加えて、本熱可塑性組成物はポリ(アルケニル芳香族化合物)を含む。本明細書において用いる「ポリ(アルケニル芳香族化合物)」という用語は、バルク重合、懸濁重合、及び乳化重合などの当該技術において公知の方法によって製造され、少なくとも25重量%の、式:
【0049】
【化8】

【0050】
(式中、Aは、水素、C〜Cアルキル、又はハロゲンであり;Zのそれぞれは、ビニル、ハロゲン、又はC〜Cアルキルであり;pは、0、1、2、3、4、又は5である)
のアルケニル芳香族モノマーの重合から誘導される構造単位を含むポリマーを包含する。アルケニル芳香族モノマーの代表例としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。ポリ(アルケニル芳香族化合物)としては、アルケニル芳香族モノマーのホモポリマー;スチレンのようなアルケニル芳香族モノマーと、アクリロニトリル、ブタジエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、及び無水マレイン酸のような1種類以上の異なるモノマーとのランダムコポリマー;及び、ラバー変性剤とアルケニル芳香族モノマーのホモポリマーのブレンド及び/又はグラフトを含み、ラバー変性剤がブタジエン又はイソプレンのような少なくとも1種類のC〜C10非芳香族ジエンモノマーの重合生成物であってよく、98〜70重量%のアルケニル芳香族モノマーのホモポリマー及び2〜30重量%のラバー変性剤、具体的には88〜94重量%のアルケニル芳香族モノマーのホモポリマー及び6〜12重量%のラバー変性剤を含むラバー変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂;が挙げられる。代表的なラバー変性ポリ(アルケニル芳香族化合物)は、88〜94重量%のポリスチレン及び6〜12重量%のポリブタジエンを含む耐衝撃性ポリスチレン又はHIPSとしても知られているラバー変性ポリスチレンである。これらのラバー変性ポリスチレンは、例えばGE PlasticsからGEH 1897、及びChevronからBA 5350として商業的に入手することができる。
【0051】
ポリ(アルケニル芳香族化合物)の立体規則性は、アタクチック又はシンジオタクチックであってよい。代表的なポリ(アルケニル芳香族化合物)としては、アタクチック及びシンジオタクチックのホモポリスチレンが挙げられる。好適なアタクチックホモポリスチレンは、例えばChevronからEB 3300、及びBASFからP1800として商業的に入手することができる。
【0052】
本組成物は、熱可塑性組成物の全重量を基準として1〜60重量%、具体的には2〜40重量%、より具体的には5〜15重量%の量のポリ(アルケニル芳香族化合物)を含む。幾つかの態様においては、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族化合物)との重量比は、40:60〜99:1、具体的には70:30〜85:15である。
【0053】
ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族化合物)に加えて、本熱可塑性組成物は有機ホスフェートエステル難燃剤を含む。本熱可塑性組成物において有用な代表的な有機ホスフェートエステル難燃剤としては、フェニル基、置換フェニル基、又はフェニル基と置換フェニル基との組み合わせを含むホスフェートエステル;例えばレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)のようなレゾルシノールをベースとするビス(アリールホスフェート)エステル、並びに例えばビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)のようなビスフェノールをベースとするもの;が挙げられる。幾つかの態様においては、有機ホスフェートエステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えばCAS Reg. No.89492−23−9又はCAS Reg. No.78−33−1)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(例えばCAS Reg. No.57583−54−7)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(例えばCAS Reg. No.181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(CAS Reg. No.115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えばCAS Reg. No.68937−41−7)、及び上記の有機ホスフェートエステルの2以上の混合物から選択される。
【0054】
幾つかの態様においては、有機ホスフェートエステルは、式:
【0055】
【化9】

【0056】
(式中、Rは、それぞれ独立して、C〜C12アルキリデン、具体的にはイソプロピリデンであり;R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、C〜C12ヒドロカルビルであり;R15及びR16は、それぞれ独立して、C〜Cアルキル基であり;gは1〜25であり;s1及びs2は、それぞれ独立して、0、1、又は2である)
のビス(アリールホスフェート)を含む。幾つかの態様においては、OR11、OR12、OR13、及びOR14は、独立して、フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール、又はトリアルキルフェノールから誘導される。
【0057】
当業者に容易に認められるように、ビス(アリールホスフェート)はビスフェノールから誘導される。代表的なビスフェノールとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(所謂ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。幾つかの態様においては、ビスフェノールはビスフェノールAである。
【0058】
有機ホスフェートエステルは、異なる分子量を有する可能性があり、これにより熱可塑性組成物において用いる異なる有機ホスフェートエステルの量を定めることが困難になる。したがって、有機ホスフェートエステルの量は、元素状リンの関連量の観点で規定することができ、これは熱可塑性組成物の全重量に対して0.1重量%〜2.5重量%であってよい。また、有機ホスフェートエステル難燃剤の量は、全有機ホスフェートエステルの重量%として規定することができ、これは熱可塑性組成物の全重量を基準として1〜25重量%であってよい。具体的には、有機ホスフェートエステル難燃剤の量は、2〜20重量%、より具体的には5〜15重量%であってよい。
【0059】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族化合物)、及び有機ホスフェートエステル難燃剤に加えて、本熱可塑性組成物は官能化ポリシロキサンを含む。官能化ポリシロキサンは、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基から選択される少なくとも1つの官能性置換基を含む。官能化ポリシロキサンは複数の官能性置換基を含んでいてよく、この場合においては、それぞれの官能性置換基は、独立して、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基から選択されることが理解されよう。また、異なる官能基を有する2種類以上の官能化ポリシロキサンの混合物を用いることもできる。例えば、メトキシ置換ポリシロキサン及びアミン置換ポリシロキサンを含む混合物、特に約10〜50センチストークスの粘度を有するかかる混合物を用いることができる。本発明において有用な官能化ポリシロキサンとしては、式:
【0060】
【化10】

【0061】
(式中、T、T、T、T、T、T、T、及びTのそれぞれは、独立して、C〜Cアルキル置換基、C〜Cアルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、或いは少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル置換基であり、但し、T、T、T、T、T、T、T、又はTの少なくとも1つは、C〜Cアルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、或いは少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル置換基であり;nは10〜100である)
を有するものが挙げられる。幾つかの態様においては、T及びTの少なくとも1つはC〜Cアルコキシ置換基である。幾つかの態様においては、官能化ポリシロキサンは第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基を含む。具体的には、アミノアルキル基は、式:
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、構造の左端の波線はポリシロキサン骨格への結合点を示す)
を有する3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であってよい。幾つかの態様においては、T及びTの少なくとも1つはC〜Cアルコキシ置換基であり、T及びTの少なくとも1つの少なくとも50%はC〜Cアルコキシ置換基である。幾つかの態様においては、T、T、T、及びTは、C〜Cアルコキシ置換基、具体的にはメトキシ又はエトキシである。幾つかの態様においては、T及びTはメトキシ置換基であり、T及びTの少なくとも50%はメトキシ置換基である。幾つかの態様においては、T、T、T、T、T、T、T、及びTに関するC〜Cアルコキシ置換基の平均合計数は、ポリシロキサン分子あたり1〜20、具体的には1〜10である。幾つかの態様においては、T、T、T、T、T、T、T、及びT置換基の少なくとも75%は、C〜Cアルキル置換基、具体的にはメチルである。
【0064】
官能化ポリシロキサンは、式:
【0065】
【化12】

【0066】
(式中、R及びRのそれぞれは、独立して、C〜Cアルコキシ置換基であり;Rは、C〜Cアルキル、或いは第1級アミン又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基であり、但し、Rの少なくとも1つは第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基であり;Rのそれぞれは、C〜Cアルキル置換基又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜25である)
を有していてよい。本明細書において用いる「橋架酸素」という用語は、2つのケイ素原子を橋架することによって示されているポリシロキサン分子を他のポリシロキサン分子に結合する酸素原子を指す。幾つかの態様においては、Rの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルである。幾つかの態様においては、R及びRのそれぞれはメトキシであり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルであり、但し、Rの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルであり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である。
【0067】
官能化ポリシロキサンは、場合によっては、23℃において10〜200センチストークス、具体的には10〜150センチストークス、より具体的には10〜100センチストークスの粘度を有していてよい。
【0068】
アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、又はアルコキシとアリールオキシ置換基の組み合わせを含む官能化ポリシロキサンは当該技術において公知であり、室温加硫(RTV)シリコーンラバー組成物において通常的に用いられている。また、有用な官能化ポリシロキサンの製造方法も広く知られている。1つの代表的な方法は、ピリジン、α−ピコリン、又は他の第3級アミンのようなハロゲン化水素受容体の存在下でのハロゲン置換ポリシロキサンとアルコールとの反応を含む。これらの反応は、通常は室温において起こり、好ましくは無水条件下で行う。官能化ポリシロキサンを製造するために広範囲のアルコールを用いることができるが、メタノール及びエタノールを用いてそれぞれメトキシ及びエトキシ置換ポリジメチルシロキサンを形成することが、場合により好ましい。
【0069】
また、ポリアルコキシ末端ポリシロキサンは、静的ミキサー内において、シラノール末端停止ジオルガノポリシロキサン、例えばシラノール末端停止ジメチルポリシロキサンを、公知の末端封鎖触媒と一緒にメチルトリメトキシシランと反応させることによって製造することができる。アミノ基を含む官能性ポリシロキサンは公知である。これらは、例えば、アミノアルキルトリアルコキシシランをヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンと反応させることによるか、或いは水酸化カリウムのような塩基性平衡化触媒を用いてオクタメチルシクロテトラシロキサンとアミノ官能性シロキサンを平衡化することによって製造することができる。官能化ポリシロキサンのこれら及び他の製造方法は、Baileyの米国特許2,909,549、Chungらの4,528,324、Lucasの4,731,411、Crayらの5,925,779、Eversheimらの6,258,968、及びBoudjoukらの6,482,912において見ることができる。
【0070】
好適な官能化ポリシロキサンとしては、全てMomentive Performance Materials, Inc.からGAP-10、89124、SF1705、SF1706、SF1708、SF1921、SF1922、SF1923、SF1925、88918、SF1927、89089;AC3309、OF7747、AI3640、AC3631、AL3683、AC3418、AC3545、AI3635、TSF4702、TSF4703、TSF4704、TSF4705、TSF4706、TSF4707、TSF4708、TP3635、及びTSF4709の商品名で商業的に入手できるものが挙げられる。
【0071】
幾つかの態様においては、本組成物は、熱可塑性組成物の全重量を基準として約0.1〜10重量%の量の官能化ポリシロキサンを含む。具体的には、官能化ポリシロキサンの量は、約0.5〜8重量%、より具体的には約1.5〜6重量%であってよい。
【0072】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族化合物)、有機ホスフェートエステル難燃剤、及び官能化ポリシロキサンに加えて、本熱可塑性組成物は有機酸を含む。本組成物において有用な有機酸としては、広範な種類の酸性を有する有機化合物が挙げられる。特に有用な有機酸は、少なくとも1つのカルボン酸基を含む有機化合物であるカルボン酸である。有機酸は、分子あたり1つ、2つ、又は更に多くのカルボン酸基を有していてよい。また、他の官能性置換基、例えばヒドロキシル、エーテル、及びオレフィン性不飽和が存在していてもよい。有機酸の例としては、C〜C20脂肪族モノカルボン酸、C〜C20脂肪族ポリカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸を含む)、及び芳香族カルボン酸が挙げられる。代表的な有機酸の具体例としては、ステアリン酸、ブタン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、安息香酸、イタコン酸、アコニチン酸;不飽和ジカルボン酸(例えば、アクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸等)、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸、乳酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、グリコール酸、チオグリコール酸、酢酸、ハロゲン化酢酸(例えば、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、及びトリクロロ酢酸)、プロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、上記の無水物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
好適な有機酸としては、更に、少なくとも1つのカルボン酸基を含むポリ(アリーレンエーテル)が挙げられる。かかるポリ(アリーレンエーテル)は、例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、又は無水マレイン酸のような有機酸又は無水物と溶融混練することによって製造することができる。また、好適な有機酸としては、少なくとも1つのカルボン酸基を含むポリオレフィンも挙げられる。かかるポリオレフィンは、例えば、場合によってはペルオキシドのような遊離基開始剤の存在下でポリオレフィンを好適な酸又は無水物でグラフトすることによって製造することができる。少なくとも1つのカルボン酸基を含む多くのポリオレフィンを商業的に入手することができる。
【0074】
無水物及び水和酸、並びに有機酸と種々のアミンとを化合することによって製造される塩などのこれらの塩のような誘導体も、種々の態様において有用である。
有機酸は、異なる分子量及び分子あたり異なる数のカルボン酸基を有する可能性があり、このため熱可塑性組成物において用いる有機酸の量に関して一般化することは困難である。しかしながら、有機酸の量は、通常は熱可塑性組成物の全重量を基準として0.05〜10重量%である。具体的には、有機酸の量は、0.05〜5重量%、より具体的には0.1〜2重量%、更により具体的には0.2〜1重量%であってよい。
【0075】
上記に記載の必要成分に加えて、本熱可塑性組成物には種々の場合によって用いる成分を含ませることができる。1つの場合によって用いる成分はブロックコポリマーである。ブロックコポリマーは、アリールアルキレン繰り返し単位を含むブロック(A)、及びアルキレン繰り返し単位、アルケン繰り返し単位、又はこれらの組み合わせを含むブロック(B)を含む。アルキレン繰り返し単位は2〜15個の炭素を含む。アルケン繰り返し単位は2〜15個の炭素を含む。ブロック(A)及び(B)の配置は、線状構造、テーパー構造、又は分岐鎖を有する所謂放射テレブロック構造であってよい。A−B−Aトリブロックコポリマーは、2つのアリールアルキレン繰り返し単位を含むブロック(A)を有する。A−Bジブロックコポリマーは、1つのアリールアルキレン繰り返し単位を含むブロック(A)を有する。アリールアルキレン単位の懸垂(pendant)アリール部分は、単環式又は多環式であってよく、環式部分上の任意の利用できる位置に置換基を有していてよい。例えば、アリールアルキレン単位は、式:
【0076】
【化13】

【0077】
(式中、Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルケニル基を表し;Q及びQは、それぞれ独立して、水素原子、又はC〜Cアルキル基を表し;Q、Q、及びQは、それぞれ独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルケニル基を表し、或いはQとQは中心の芳香環と一緒にナフチル基を形成し、或いはQとQは中心の芳香環と一緒にナフチル環を形成する)
の構造を有していてよい。具体的なアルケニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレンのようなメチルスチレン、及びp−t−ブチルスチレンが挙げられる。代表的なアリールアルキレン単位は、スチレンの重合によって形成され、下式:
【0078】
【化14】

【0079】
で示されるフェニルエチレンである。ブロック(A)は、更に、アリールアルキレン単位の重量%がアルキレン単位及び/又はアルケン単位の重量%の合計を超える限りにおいて、2〜15個の炭素を有するアルキレン単位又は2〜15個の炭素を有するアルケン単位或いはそれらの組み合わせを更に含んでいてよい。ブロック(A)のそれぞれは、ブロック(A)の他のものと同一か又は異なる分子量を有していてよい。
【0080】
幾つかの態様においては、ブロック(B)は、エチレン、プロピレン、ブチレン、又は上記の2以上の組み合わせのような2〜15個の炭素を有するアルキレン繰り返し単位を含む。ブロック(B)は、アルキレン単位の重量%がアリールアルキレン単位の重量%を超える限りにおいて、アリールアルキレン単位を更に含んでいてよい。ブロック(B)繰り返し単位は、ブタジエン又はイソプレンのようなジエンを重合し、場合によっては次に水素化して(脂肪族)不飽和を部分的か又は完全に還元することにより誘導される。ブロック(B)のそれぞれは、ブロック(B)の他のものと同一か又は異なる分子量を有していてよい。
【0081】
幾つかの態様においては、ブロック(B)は2〜15個の炭素を有するアルケン繰り返し単位を含む。ブロック(B)は、アルケン単位の量がアリールアルキレン単位の量を超える限りにおいて、アリールアルキレン単位を更に含んでいてよい。ブロック(B)繰り返し単位は、ブタジエン又はイソプレンのようなジエンの重合から誘導される。ブロック(B)のそれぞれは、ブロック(B)の他のものと同一か又は異なる分子量を有していてよい。
【0082】
好適なA−B及びA−B−Aコポリマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン(SB)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)(SEP)、ポリスチレン−ポリイソプレン(SI)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、並びにこれらの選択的水素化形態などが挙げられる。上述のブロックコポリマーの混合物も有用である。かかるA−B及びA−B−Aブロックコポリマーは、SOLPRENEの商品名でPhillips Petroleumから、KRATONの商品名でKraton Polymersから、VECTORの商品名でDexcoから、FINACLEARの商品名でTotal Petrochemicalから、SEPTONの商品名でKurarayからなどの多数の供給元から商業的に入手することができる。幾つかの態様においては、ブロックコポリマーは非水素化である。代表的な非水素化ブロックコポリマーとしては、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)が挙げられる。非水素化ブロックコポリマーを用いることにより、水素化ブロックコポリマーを含む類似の組成物の煙密度よりも少ない煙密度(最大値、4分時点、又は両方)を得ることができる。熱可塑性組成物が非水素化ブロックコポリマーを含む幾つかの態様においては、組成物は水素化ブロックコポリマーを含まない。
【0083】
熱可塑性組成物中に存在させる場合には、ブロックコポリマーは、熱可塑性組成物の全重量を基準として1〜20重量%の量で用いることができる。具体的には、ブロックコポリマーの量は、2〜10重量%、より具体的には3〜8重量%であってよい。
【0084】
場合によって用いる他の成分は、水素化炭化水素樹脂を含む離型剤である。水素化炭化水素樹脂は、500〜2000原子質量単位の重量平均分子量を有していてよい。かかる水素化炭化水素樹脂は、ArakawaからARKONの商品名で商業的に入手することができる。組成物中に水素化炭化水素樹脂を含ませることにより、水素化炭化水素樹脂を含まない類似の組成物に対して組成物の溶融粘度を低下させることができる。水素化炭化水素樹脂は、熱可塑性組成物の全重量を基準として2〜8重量%の量で存在させることができる。8重量%よりも多い量で存在させると、組成物の煙密度が、8重量%未満の水素化炭化水素樹脂を含む組成物に対して増加する可能性がある。幾つかの態様においては、少なくとも2重量%の水素化炭化水素樹脂を含む組成物は、水素化炭化水素樹脂を含まない類似する組成物に対して低下した溶融粘度を有する。2〜8重量%の範囲内の水素化炭化水素樹脂を含む組成物が許容しうる低い最大煙密度をなお有することができることは予期しなかったことである。2重量%のポリエチレンを加えると通常は非常に高い最大煙密度を与えるので、これらの結果は特に予期しなかったことである。
【0085】
場合によって用いる他の成分は、組成物の全重量を基準として0.1〜3重量%の量のポリオレフィンである。具体的には、ポリオレフィンの量は、0.2〜2重量%、より具体的には0.3〜1重量%であってよい。下記の実施例において示されるように、過剰に多いポリオレフィンは、熱可塑性組成物の所望の煙密度特性を損なう可能性がある。しかしながら、少量のポリオレフィンは、熱可塑性組成物の所望の特性を損なうことなく、離型剤として有用である可能性がある。ポリオレフィンは、一般構造:C2nのポリマーであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリイソブチレンが挙げられる。代表的なホモポリマーとしては、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及びアイソタクチックポリプロピレンが挙げられる。この一般構造のポリオレフィン樹脂及びそれらの製造方法は当該技術において周知である。また、ポリオレフィンはオレフィンコポリマーであってもよい。かかるコポリマーとしては、エチレンと、オクテン、プロピレン、及び4−メチルペンテン−1などのα−オレフィンとのコポリマー、並びにエチレンと1種類以上のラバーとのコポリマー、及びプロピレンと1種類以上のラバーとのコポリマーが挙げられる。本明細書においてEPDMコポリマーと呼ぶエチレンとC〜C10モノオレフィンと非共役ジエンのコポリマーもまた好適である。EPDMコポリマーのための好適なC〜C10モノオレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセンなどが挙げられる。好適なジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、並びに単環式及び多環式のジエンが挙げられる。エチレンと他のC〜C10モノオレフィンモノマーとのモル比は95:5〜5:95の範囲であってよく、ジエン単位は0.1〜10モル%の量で存在する。EPDMコポリマーは、アシル基、又はLaughnerらの米国特許5,258,455に開示されているようなポリフェニレンエーテル上にグラフトするための求電子基によって官能化することができる。オレフィンコポリマーは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を更に含む。
【0086】
組成物には、場合によって、合計で5重量%以下の、充填剤、強化剤、離型剤、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせなどの当該技術において公知の種々の熱可塑性添加剤を更に含ませることができる。かかる添加剤の合計量は、通常、熱可塑性組成物の全重量を基準として5重量%以下である。
【0087】
幾つかの態様においては、組成物は、必要であるか又は場合によって用いると上記で記載されているもの以外の成分を排除するか又は実質的に含まないものであってよい。例えば、本組成物は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレート、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、及びポリオレフィンのような他の熱可塑性材料を実質的に含まないものであってよい。本明細書において用いる「実質的に含まない」という用語は、組成物が熱可塑性組成物の全重量を基準として0.5重量%未満の規定の成分を含むことを意味する。より具体的には、本組成物は0.1重量%未満の規定の成分を含んでいてよく、或いは規定の成分のいずれも意図的に加えない。
【0088】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0089】
【化15】

【0090】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜10である)を有する官能化ポリシロキサン;及び0.2〜1重量%のクエン酸;を含み;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物である。本熱可塑性組成物は、また、ASTM−D256にしたがって23℃において測定して180〜350J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有することができる。
【0091】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);1.5〜6重量%の、次式:
【0092】
【化16】

【0093】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)を有する官能化ポリシロキサン;0.2〜1重量%のクエン酸;及び場合によっては5重量%以下の、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤;から構成され;ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物である。本熱可塑性組成物は、ASTM−D256にしたがって23℃において測定して180〜350J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有することができる。
【0094】
他の態様は、45〜80重量%、具体的には50〜80重量%のポリ(アリーレンエーテル);1〜40重量%のポリ(アルケニル芳香族化合物);1〜25重量%の有機ホスフェートエステル難燃剤;及び、4〜10重量%の、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物である。この組成物は有機酸を必要としないことに留意されたい。これは、ポリ(アリーレンエーテル)の量が少なくとも45重量%であり、官能化ポリシロキサンの量が少なくとも4重量%である場合には、有機酸を用いなくても、可燃性、煙密度、及び物理特性の優れたバランスを達成することができるという本発明者らの観察結果を反映するものである。有機酸含有熱可塑性組成物に関して場合によって用いると教示されている成分は、この熱可塑性組成物中において用いることができる。
【0095】
本発明は、また、任意の上記記載の組成物を含む物品にも拡張される。本組成物は、輸送及び建築及び建設産業において有用な物品を製造するために特に好適である。輸送用途としては、航空機、列車、及び自動車(自家用車、レクリエーション用自動車、及びトラック)における内装品及び構造物品が挙げられる。建築用途としては、配線導管、家具、オフィスパーティションなどが挙げられる。物品は、フィルム及びシート押出、射出成形、ブロー成形、及び圧縮成形などの当該技術において公知の熱可塑性処理技術を用いて製造することができる。
【0096】
当業者であれば、本熱可塑性組成物を形成するために用いる成分を、熱可塑性組成物を形成するのに用いる溶融混練条件下で反応させることができることを認識する。特に、有機酸及び官能化ポリシロキサンは溶融混練中に他の成分と反応すると思われる。したがって、本発明は溶融混練中に形成される反応生成物にも拡張される。したがって、一態様は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び有機酸;を溶融混練することによって得られる反応生成物を含み;ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物である。
【0097】
本発明は熱可塑性組成物を製造する方法を包含する。したがって、一態様は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリ(アルケニル芳香族化合物);有機ホスフェートエステル難燃剤;有機酸;及び、アルコキシ置換基、及びアリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、及び、ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物を製造する方法である。幾つかの態様においては、溶融混練は、押出機の下流の1/3に真空排気口を含む押出機で行い、真空排気口は30〜76cm−Hgの真空度に保持する。押出機の全長を押出機スクリューの軸に沿ってフィードスロートの中央点からダイの外表面へ至るものと定義し、押出機の全長を3つの同等のセグメントに分割し、ダイの外表面で終わる押出機の下流の1/3内で排気の中心点が形成されるかどうかを求めることによって、真空排気が「押出機の下流の1/3」で行われているかどうかを求めることができる。30〜76cm−Hgの真空度は0〜0.61気圧又は0〜61kPaの絶対圧に相当する。本発明者らは、処理中に真空を用いることによって、得られる組成物の煙密度が予期しなかったことに大きく減少することを認めた。50cm未満の真空度。同様に予期しなかったことに、他の物理特性に関する標準偏差が減少した。言い換えれば、真空排気を用いることによって、予期しなかったことに、生成物である熱可塑性組成物のコンシステンシー及び均一性が向上した。
【0098】
他の態様は、60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);0.2〜1重量%のクエン酸;及び、1.5〜6重量%の、次式:
【0099】
【化17】

【0100】
(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む(ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものである)、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度、ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度、及び、1.6mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級を有する熱可塑性組成物を製造する方法である。幾つかの態様においては、溶融混練は、押出機の下流の1/3に真空排気口を含む押出機で行い、真空排気口は30〜76cm−Hgの真空度に保持する。
【0101】
溶融混練中においては成分の種々の添加順番を用いることができる。組成物の全ての成分を同時に加えて溶融混合することができる。また、ポリ(アリーレンエーテル)、有機酸、及び官能化ポリシロキサンを溶融混合して第1の混合物を形成し、次に有機ホスフェートエステルを第1の混合物と溶融混合することができる。第1の混合物は、有機ホスフェートと溶融混合する前にペレット化することができる。他の別法においては、ポリ(アリーレンエーテル)及び有機酸を溶融混合して第1の混合物を形成し、次に第1の混合物を官能化ポリシロキサンと溶融混合して第2の混合物を形成し、これを次に有機ホスフェートエステル難燃剤と溶融混合する。
【0102】
以下の非限定的な実施例によって本組成物及び製造方法を更に示す。
【実施例】
【0103】
実施例1〜28:
表1に列記する材料を用いて以下の実施例の試料を調製した。表3〜17における材料の量は、熱可塑性組成物の全重量を基準とする重量%である。
【0104】
【表1−1】

【0105】
【表1−2】

【0106】
【表1−3】

【0107】
【表1−4】

【0108】
表1において言及した官能化ポリシロキサンに関する更なる構造情報を、下式:
【0109】
【化18】

【0110】
を参照して表2に与える。
【0111】
【表2】

【0112】
「プラスチック材料の可燃性に関する試験(Tests for Flammability of Plastic Materials)と題されたUnderwriter's Laboratory Bulletin 94, UL94, 2006(「UL94」)にしたがって難燃性を測定した。具体的には、下記の表に示す試料厚さによる「20mm垂直燃焼試験」を用いた。
【0113】
ASTM−E662−06にしたがって、炎焼モード、及び2.5W/cm(25kW/m)の放射パネルからのエネルギー投入を用いて煙密度を測定した。試料を射出成形し、1.5mmの厚さを有していた。試験の前に、試料を23℃及び50%の相対湿度において24時間コンディショニングした。結果は3回の測定値の平均である。4分において比光学密度(D)を測定した。また、最大光学密度(Dmax)、並びにDmaxに到達するのに必要な時間(Dmax時間)(分)も測定した。値が「補正」と示されている場合は、その値は、光学窓上への粒状物の付着を算入するように補正したものである。
【0114】
表3〜5に要約する組成を用いて実施例1〜28の試料を調製した。組成物の成分をヘンシェルミキサー内でブレンドし、25.5:1の長さ/直径比を有する内径25mmの二軸押出機のフィードスロートにおいて加えた。260〜290℃のバレル温度及び250〜300rpmのスクリュー回転速度で押出機を運転した。供給速度は25〜50ポンド/時(11〜22kg/時)であった。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。ペレット化された組成物を試験片に射出成形した。但し、実施例5においてはペレットが滑性であるために成形できなかった。組成物を表3〜5に列記した物理特性に関して試験した。
【0115】
表3〜5のデータは、実施例1の基配合物が、ASTM−E662−06にしたがって測定すると、1.5mmの試料厚さにおいて、4分において443の煙密度、及び初期の20分間において467.3の最大煙密度を有することを示す。実施例2において示されるように、この配合物にクエン酸を加えると、煙密度に対する効果は非常に僅かであった。しかしながら、実施例3、4、及び6〜9において示す幾つかの異なるポリシロキサンを加えると、4分における煙密度が287〜363の値に、及び初期の20分間での最大煙密度が272.3〜338に、更に減少した。更に、クエン酸又はコハク酸のような有機酸と、アミノ基、メトキシ基、及び10〜50センチストークスの範囲の粘度を有するポリシロキサン流体であるSF1706を組み合わせると、4分における煙密度が、実施例12、16、及び20に関してそれぞれ182、105.3、及び134に大きく減少した。また、初期の20分間での最大煙密度は、それぞれ256.5、270、及び219.3の値に減少した。この向上した煙特性は、Dmaxへの時間が、例えばクエン酸のみか又はポリシロキサンのみか又はSF1706以外のポリシロキサンとクエン酸との組み合わせを含む実施例に関して3〜6.5分の間の値であるのと比較して、9.9、16.8、及び13.7分に遅延したことにも反映されている。実施例10〜20から分かるように、SF1706と類似するアミノ含量又は粘度を有するものを含む全てのポリシロキサンが、煙密度を減少させる能力において有効な訳ではない。また、実施例12、16、及び20は、実施例1〜11、13〜15、及び17〜19と同等か又はこれより良好な炎等級(V−0)を示す。
【0116】
表5において示す実施例21〜28の試料は、ポリシロキサンのより高い装填量のために成形するのがより困難であったが、これらにより、より高いポリシロキサンの装填量において、SF1706はクエン酸を加えることなく煙の発生を減少させる同等の有効性を有していることが示される。しかしながら、SF1706は試験した他のポリシロキサン流体よりも有効である。したがって、ポリシロキサンのレベルを増加させることにより、煙を減少させる好適な有機酸の欠落を補填することができる。しかしながら、レベルを増加させると、成形特性に悪影響を与え、それらの商業的有用性が制限される。
【0117】
【表3−1】

【0118】
【表3−2】

【0119】
【表4−1】

【0120】
【表4−2】

【0121】
【表5】

【0122】
実施例29〜34:
表6に要約する組成を用いて実施例29〜34の試料を調製した。組成物の成分をヘンシェルミキサー内でブレンドし、25.5:1の長さ/直径比を有する25mmの二軸押出機のフィードスロートにおいて加えた。260〜290℃のバレル温度及び250〜300のrpmで押出機を運転した。供給速度は25〜50ポンド/時(11〜22kg/時)であった。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。ペレット化された組成物を試験片に射出成形した。組成物を表6に記載した特性に関して試験した。
【0123】
表6において、実施例29はポリシロキサン流体又は有機酸相乗剤を有しない比較組成物である。3.2mmの厚さにおいて試験すると、この配合物は、364の4分での煙密度及び476の初期の20分間での最大煙密度を示す。実施例30におけるようにポリシロキサン流体及びクエン酸を加えると、両方の煙密度値が劇的に減少し、Dmaxに到達する時間が、実施例29に関する6.4分から19.8分に大きく増加した。実施例33は、SF1706と比較して同様にアミノポリシロキサンであり同等の粘度を有するが分子あたりより高いアミン基の濃度及びより低いメトキシ基の濃度を有するTP3635(表2参照)の使用を示す。
【0124】
実施例31は、ポリシロキサン流体として、SF1706又はTP3635(50センチストークス)と比較してより高い粘度(300〜800センチストークス)を有するOF7747を用いる。OF7747は、また、表2に示されるようにポリシロキサンのケイ素原子に結合したアルコキシ基を含むが、分子あたりのアルコキシ基の数はより少ない。実施例32及び34に示されるように、TP3635を用いることは、実施例31と比較して煙密度が更に減少することと関係する。また、実施例31は、実施例32及び34(V−0)と比較して低下した難燃性等級(V−1)を有していた。これは、メトキシ基、含有アミン、及び30〜100センチストークスの粘度を有機酸と組み合わせて有するポリシロキサン流体は、煙密度を減少させるのに非常に有効であることを示す。
【0125】
【表6】

【0126】
実施例35〜38:
実施例35〜38は、樹脂マトリクスの流動特性を増大させることにおける水素化炭化水素樹脂の効果を示す。実施例36、37、及び38は、対照実施例35と比較して増加した量の水素化炭化水素樹脂であるArkon P-125を有しており、毛細管流量測定法によって測定される溶融粘度が低下することによって示されるように流量の増加を示す。毛細管流量測定法においては、剪断をかけて粘度を剪断速度の関数として測定する前に、試料を320℃に加熱し、240秒間保持する。興味深いことに、煙特性は、2.91%及び4.86%のArkon P-125の装填量においては比較的影響を受けていないが、実施例38における9.86%の最も高い装填量においてはDmaxの増加が観察される。増加した装填量のArkon P-125を有する試料は、また、ASTM−D648によって測定される低下した熱撓み温度、及びASTM−D256によって測定されるノッチ付きアイゾッド衝撃強さの低下を示す。
【0127】
【表7】

【0128】
実施例39〜61:
表8〜10に示す組成を用いて実施例39〜61の試料を調製した。組成物の成分をヘンシェルミキサー内でブレンドし、25.5:1の長さ/直径比を有する25mmの二軸押出機のフィードスロートにおいて加えた。260〜290℃のバレル温度及び250〜300rpmの速度で押出機を運転した。供給速度は25〜50ポンド/時(11〜22kg/時)であった。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。次にペレットを、煙密度、可燃性、及び機械的試験のための適当な寸法の部品に成形した。
【0129】
実施例39は、PPE I、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、衝撃性改良剤(SBS II)、及び難燃剤(BPADP)を含むが、ポリシロキサンも有機酸も含まない基配合物である。実施例40は、3.5重量%の装填量の官能化ポリシロキサン:SF1706を有するが、有機酸相乗剤を含まない配合物である。実施例41は、官能化ポリシロキサン:SF1706及びクエン酸を含み、これらをいずれも押出機のフィードスロートにおいて他の成分と一緒に加えたものである。実施例42は、クエン酸の代わりに無水マレイン酸を含み、マレイン酸をフィードスロートにおいて他の成分と共に加えた配合物である。実施例42は、また、高熱PPE IVを用いる。実施例42Aは、フィードスロートにおいて0.40のIVのPPE Iと共に無水マレイン酸を加えた配合物である。したがって、実施例42A及び43は、PPE中に無水マレイン酸を予め配合することの効果を、それを他の成分と一緒に加えることの効果と対比して示す。実施例42及び42Aは、特性に対する異なるタイプのPPEの効果を示す。
【0130】
実施例43の試料は2段階プロセスで製造した。第1段階は、70.1:1.4の重量比のPPE IIIと無水マレイン酸を二軸押出機のフィード中に予め混合して配合し、溶融混合し、ストランド化し、ペレット化して、「MA−g−PPE」と製造することを含む。次に、これを粉砕し、表8に示す他の成分と配合し、表8の他の配合物と同様に、押出機に供給し、ストランド化し、ペレット化する。したがって、実施例43は実施例42Aと対比することができるが、2つの間には2つの相違点がある。実施例42Aは1段階プロセスであり、これに対して実施例43は2段階プロセスであり、更には実施例42Aは0.40のIVのPPEを用い、これに対して2段階プロセスは0.33のIVのPPEを用いる。実施例44は、実施例41の装填量の2倍のクエン酸を用いることを示す。実施例45、47、49、50は、実施例41において用いた0.5%中に含まれているものと同量の酸性基を含む装填量で異なる有機酸を用いる。実施例46、48、51は、実施例44における1%のクエン酸と同等の装填量で異なる酸を含む。
【0131】
【表8−1】

【0132】
【表8−2】

【0133】
【表9−1】

【0134】
【表9−2】

【0135】
【表10−1】

【0136】
【表10−2】

【0137】
実施例52〜54は、異なるポリシロキサン流体(OF7747、TP3635、及びSF9750)をクエン酸と組み合わせて用いることを示す。実施例55〜59は、それぞれ、酸なし(実施例55)、クエン酸(実施例56)、フマル酸(実施例57)、コハク酸(実施例58)、及びステアリン酸(実施例59)をTSF4706と組み合わせて用いることを示す。TSF4706は、SF1706と同等のアミン含量及び粘度を有するポリシロキサン流体であるが、メトキシ(OMe)基の代わりにメチル基を有する点でSF1706と異なる。実施例60は、非官能化ポリシロキサン流体:SF50をクエン酸と組み合わせる実施例である。実施例61は、SF1706及び1%のクエン酸を用いる実施例44の繰り返し実験である。
【0138】
実施例39〜54に関する4分における煙密度の分析により、比較実施例39は294の煙密度を有しており、これは、実施例40〜52において示されるように、SF1706を単独か或いは異なる程度で加える複数の酸と組み合わせて添加することによって減少させることができることが示される。異なるタイプのポリ(アリーレンエーテル)を用いる実施例42及び42Aはこの試験において大きな差を示さない。また、アミン及びメトキシ基を有するがSF1706よりも高い粘度を有するポリシロキサン流体:OF7747を加えることも、実施例52によって示されるようにクエン酸と組み合わせて有効であるが、4分における煙密度は、SF1706及び異なる酸に関する14〜75の範囲と比較して126までしか減少しない。更に、SF1706と粘度が同等であるが、アミン官能基もメトキシ官能基も有しないポリジメチルシロキサン流体:SF9750の場合には、煙密度は174までしか減少しない。他方、その粘度、メトキシ基含量、及びアミン基含量がSF1706と同等であるポリシロキサン流体:TP3635は、4分における煙密度を18まで減少させる(実施例53)のに非常に有効である。また、シリコーン流体:TSF4706も、4分における煙密度を146まで減少させるのに有効である(実施例55)が、それを19まで減少させるSF1706(実施例40)ほどは有効ではない。更に、クエン酸を加えると(実施例56)、TSF4706の場合には4分における煙密度が僅かに増加する(実施例56と実施例55を対比)。更に、TSF4706の場合には、実施例55〜59を個々にそれぞれ実施例40、41、45、47、及び50と比較することによって理解されるように、異なる酸と組み合わせて、SF1706と比較してより高い煙密度を示す。したがって、幾つかの態様においては、SF1706におけるメトキシ基は、4分における煙密度を減少させる点で、TSF4706におけるメチル基よりも有効である。実施例60は、煙密度に関してSF9750と比較して同等のシリコーン流体:SF50による特性を示す。実施例61及び44は繰り返し実験であり、同等の特性を示す。
【0139】
3.2mmの厚さにおけるDmaxの計量値(補正)(「補正煙密度」)に関して、実施例39〜54は、SF1706を単独で加えると(実施例40)、補正煙密度が比較実施例39に関する477に対して199に減少することを示す。0.5%のクエン酸を加えると、これが127に更に減少する(実施例41)。増加したレベルのクエン酸は、0.5%のクエン酸の試料(実施例41)と比較して補正煙密度を認められるほどには変化させない(実施例44)。また、SF1706と組み合わせて1.43%の装填量の無水マレイン酸を用いることも非常に有効であり、これは、初期の20分での補正煙密度が102に減少する(実施例42A)ように、SF1706と組み合わせて0.5%のクエン酸を用いる場合よりも僅かに有効である。また、SF1706と組み合わせた無水マレイン酸のマスターバッチを用いても、補正煙密度が114に減少するように非常に有効である。2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマーであるポリ(アリーレンエーテル)を用いると(実施例42)、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマーであるポリ(アリーレンエーテル)(実施例42A)と比較して272のより高い値を与える。SF1706と組み合わせて0.45%の装填量のフマル酸を用いると、補正煙密度を88に減少させるのに非常に有効である(実施例45)が、(SF1706と組み合わせて)0.9%のより高い装填量においては、128の若干高い値を示す(実施例46)。同様にSF1706と組み合わせてコハク酸を用いると、0.46%のより低い装填量においては127の補正煙密度を有し(実施例47)、これは0.92%のより高い装填量においては155に増加する(実施例48)という同様の傾向を示す。他方、一酸である安息香酸は368の比較的高い補正煙密度の値を示す(実施例49)ように有効ではなく、一方、2.22%及び4.44%のステアリン酸(それぞれ実施例50及び51)を用いると、補正煙密度は、SF1706と組み合わせてもそれぞれ564及び468の非常に高い値である。したがって、SF1706と組み合わせて酸を加えると効果を促進するが、過剰に多い酸は悪影響を与える可能性がある。0.5%の装填量のクエン酸と組み合わせてOF7747、TP3635、及びSF9750を用いた実験(実施例52〜54)を実施例39〜41と比較すると、OF7747は若干有効ではなく、SF9750は全く有効ではなく、一方SF1706は非常に有効であることが分かる。ポリシロキサン流体:TSF4706は、比較例(実施例39)に対して補正煙密度に関して中程度の効果を有し(実施例55)、それを約100単位減少させる。クエン酸を加えると(実施例56)、補正煙密度がTSF4706の場合の対照試料と同等のレベルに増加する(実施例56と55を対比)。更に、実施例55〜59をそれぞれ実施例40、41、45、47、及び50と比較することによって理解されるように、TSF4706はSF1706と比較して異なる酸との組み合わせでより高い煙密度を示す。したがって、SF1706上のメトキシ官能基は、TSF4706中に存在するメチル基よりもより有効に煙特性の減少に寄与する。実施例60は、シリコーン流体:SF50による煙密度に関してSF9750と比較して同等の特性を示す。実施例61及び44は繰り返し実験であり、同等の特性を示す。
【0140】
より高い値がより望ましいDMaxへの時間の計量値に関し、実施例39〜51は、SF1706を加えると、初期の20分間で最大煙密度に到達するのに必要な時間が、8.3分(実施例39、SF1706を用いず)から16.6分(実施例40、SF1706を用いる)に増加することを示す。しかしながら、SF1706と組み合わせて0.5%のクエン酸を用いると、それが19.5分に更に増加する(実施例41)。しかしながら、クエン酸の装填量を1%に増加させると、この時間は15.9に減少する(実施例44)。同様に、添加剤(実施例42)又はポリ(アリーレンエーテル)とのマスターバッチ(実施例43)として無水マレイン酸、いずれかの装填量のフマル酸(実施例45及び46)、いずれかの装填量のコハク酸(実施例47及び48)、及びいずれかの装填量のステアリン酸(実施例50及び51)をSF1706と組み合わせると、いずれもDmaxへの時間が増加する。0.5%のクエン酸と組み合わせて用いる場合、ポリシロキサン流体:OF7747(実施例52、DMaxへの時間=8.2)及びSF9750(実施例54、DMaxへの時間=9.6)は、SF1706(実施例41、DMaxへの時間=19.5)ほど有効ではない。しかしながら、0.5%のクエン酸と組み合わせてTP3635を用いると(実施例53、DMaxへの時間=19.6)、0.5%のクエン酸と組み合わせてSF1706を用いる場合(実施例41、DMaxへの時間=19.5)とちょうど同程度に有効である。ポリシロキサン流体:TSF4706では、比較例(実施例39)に対してDMax時間が8.3から14.2分に増加し(実施例55)、これにより燃焼プロセスが長くなる。更に、TSF4706にクエン酸を加えると(実施例56、DMaxへの時間=13.6)、DMax時間が比較例(実施例55、DMaxへの時間=14.2)のものと同等のレベルに減少する。また、実施例55〜59をそれぞれ実施例40、41、45、47、及び50と比較することによって理解されるように、異なる酸と組み合わせてTSF4706を用いると、同じ酸と組み合わせてSF1706を用いた場合よりも遙かに低いDMax時間を有する。したがって、SF1706上のメトキシ官能基は、TSF4706中に存在するメチル基よりも遙かに有効に煙生成の遅延に寄与することができる。Dmaxへの時間に関しては、ポリシロキサン流体:SF50(実施例60)はSF9750(実施例54)のものと同等の特性を示す。
【0141】
衝撃強さの測定規準であるノッチ付きアイゾッド衝撃強さに関して、実施例39〜54は、SF1706を加えると衝撃強さが8.2kJ/m(実施例39)から15.5kJ/m(実施例40)に増加することを示す。TSF4706をベースとする実施例55〜59は、対照試料に対してノッチ付きアイゾッド衝撃強さの僅かな減少を示す。
【0142】
可燃性の測定規準である1.6mmの厚さにおけるUL94消炎時間(「消炎時間」)に関して、比較実施例39は7.6秒の消炎時間を示し、これはSF1706を加えることによって4.0に減少させることができる(実施例40)ことを示す。SF1706及びクエン酸を加えると、これが4.9秒に僅かに増加する(実施例41)。また、SF1706と組み合わせて無水マレイン酸を用いると、4.2秒の少ない消炎時間を有する(実施例42A)。2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマーであるポリ(アリーレンエーテル)を有する無水マレイン酸ベースのバッチ(実施例42)は、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマーであるポリ(アリーレンエーテル)を有する配合物(実施例42A、4.2秒)よりも相当に長い9.3秒の消炎時間を有する。0.40dL/gのポリ(アリーレンエーテル)を有するマスターバッチのアプローチ(実施例43)は、4.3秒の消炎時間を与えるように非常に有効である。0.45及び0.9%のフマル酸(実施例45及び46)、0.46及び0.92%のコハク酸(実施例47及び48)、並びに0.95%の安息香酸(実施例49)をSF1706と組み合わせて用いると、消炎時間が4.6〜6.1秒に減少する。SF1706と組み合わせて2.22%のステアリン酸を用いると(実施例50)消炎時間が5.8秒に減少するが、SF1706と組み合わせて4.41%のステアリン酸を用いると(実施例51)これが9.2秒に増加する。0.5%のクエン酸と組み合わせてOF7747を用いると(実施例52)消炎時間が9.2秒に増加する。0.5%のクエン酸と組み合わせてポリシロキサン流体:TP3635を用いると(実施例53)消炎時間が3.7秒に減少する。TSF4706を加えると、消炎時間が比較実施例39に関する7.6秒から実施例55に関する4.2秒に減少する。この利益は、クエン酸(実施例56)、フマル酸(実施例57)、及びコハク酸(実施例58)を加えた場合でも保たれる。しかしながら、TSF4706と組み合わせてステアリン酸を加えること(実施例59)は、この点に関してはより有益ではない。
【0143】
実施例62〜64:
表11に示す組成を用いて実施例62〜64の試料を調製した。実施例62〜64は、また、1.3重量%の添加剤も含んでいた。実施例1〜28に関して上記に記載したようにして、但しRDPをフィードスロートではなく下流で加えて実施例62〜64の試料を調製した。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。ペレット化された組成物を試験片に射出成形した。組成物を、上記に記載の表10において列記した物理特性に関して試験した。データを表11に示す。
【0144】
【表11】

【0145】
実施例62〜64は、異なる固有粘度を有する種々のポリ(アリーレンエーテル)を用いて優れた煙密度の結果を得ることができることを示す。
実施例65〜68:
表12に示す組成を用いて実施例65〜68の試料を調製した。実施例62〜64に関して上記に記載のようにして実施例65〜68の試料を調製した。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。ペレット化された組成物を試験片に射出成形した。
【0146】
【表12】

【0147】
実施例65〜68は、ブロックコポリマーのタイプ、即ち水素化ラバーブロックであるか又は非水素化ラバーブロックであるかは組成物の煙密度に対して驚くべき効果を有する可能性があることを示す。幾つかの態様においては、4分における煙密度及び/又は20分までのDmax(補正)は、水素化ブロックコポリマーを用いて製造した同じ組成物の煙密度の75%未満である。他の態様においては、煙密度は、4分におけるD又は20分までのDmax(補正)の少なくとも1つにおいて、60%未満、他の態様においては50%未満低い。実施例65を実施例66と比較すると、非水素化ブロックコポリマー(この場合にはSBS)を含む組成物は、水素化ブロックコポリマーを含む組成物よりも低い煙密度を有することが示される。実施例67と実施例68を比較することから同様の結論が引き出される。
【0148】
実施例69〜78:
表13に要約する組成を用いて実施例69〜78の試料を調製した。組成物の成分をヘンシェルミキサー内でブレンドし、25.5:1の長さ/直径比を有する25mmの二軸押出機のフィードスロートにおいて加えた。260〜290℃のバレル温度及び250〜300rpmの速度で押出機を運転した。供給速度は25〜50ポンド/時(11〜22kg/時)であった。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。次にペレットを、煙密度、可燃性、及び機械的試験のための適当な寸法の部品に成形した。
【0149】
フマル酸グラフトポリ(アリーレンエーテル)のマスターバッチを用いて実施例69の試料を調製した。このマスターバッチは、98:2の重量比のPPE I及びフマル酸を溶融混合することによって調製した。次に、別の段階においてマスターバッチを他の成分と配合した。実施例73は、その代わりに単一段階プロセスでフマル酸をポリ(アリーレンエーテル)粉末に直接加えて配合する対照例である。実施例70及び74は、フマル酸と類似のクエン酸をそれぞれマスターバッチ及び一段階プロセスで用いる実施例であり、実施例69及び73は、クエン酸グラフトポリ(アリーレンエーテル)(CA−g−PPE)を用いるものであり、98:2の重量比のPPE I及びクエン酸を溶融混合することによって調製したものである。実施例71及び72は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマーであるポリ(アリーレンエーテル)を用い、これらはそれぞれ実施例73及び74と対比できる。実施例75〜78は、SF1706のものと同等の粘度を有し、同様にメトキシ基を有するが、アミン基を有さず、ジメチルシロキサン単位に加えてジフェニルシロキサン単位を含む点でSF1706と相違するポリシロキサン流体:89893(SE4029)を用いる。実施例76は、ポリシロキサン流体:81893に加えてクエン酸を用い、89893に代えてSF1706を用いる同様の配合物である実施例41と対比できる。実施例77は0.5%のフマル酸を含み、フマル酸の僅かに低いレベル(0.45%)を有する実施例45との大まかな対比を与える。実施例78は0.5%のコハク酸を含んでおり、コハク酸の僅かに低いレベル(0.45%)を有する実施例47との大まかな対比を与える。
【0150】
【表13−1】

【0151】
【表13−2】

【0152】
実施例69、70、73、及び74の分析により、ポリ(アリーレンエーテル)−酸のマスターバッチを用いることと酸の1段階配合を用いることとでは、機械特性、炎特性、及び煙特性に対して大きな差は与えないことが示される。更に、クエン酸及びフマル酸を用いる試料は同等の有効性を有するように思われる。ポリ(アリーレンエーテル)−クエン酸のマスターバッチを含む実施例70は、残りのものよりも僅かに高いノッチ付きアイゾッド衝撃強さを示す。また、実施例69及び70のマスターバッチは、1段階配合の実施例73及び74と比較して僅かに高い消炎時間を示す。実施例71、72、73、及び74を比較すると、炎及び煙特性は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマーであるPPE IVに関して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマーであるPPE Iと比較して非常に悪いことが明らかである。したがって、実施例71及び72は、より高い消炎時間、4分での煙密度、及びDmaxを示す。しかしながら、Dmaxが得られる時間は実施例71〜74の全てに関して同等であると思われる。
【0153】
実施例75〜78と実施例40、41、45、及び47を比較すると、シリコーン流体:81893(SE4029)は、4分での煙密度又はDmaxを減少させる点でSF1706ほどには有効ではなく、4分におけるDに関する値は、実施例40、41、45、及び47に関して14〜19の範囲であるのに比較して実施例75〜78に関しては154〜178の範囲である。同様に、81893(SE4029)を用いる試料に関するDmax(補正)値も非常に大きく、実施例40、41、45、及び47に関して88〜199であるのに対して444〜642の範囲である。相応して、Dmaxへの時間も、実施例75〜78に関しては実施例40、41、45、及び47と比較してより低く、これにより、81893(SE4029)の場合にはSF1706の場合に対して試料が若干速く煙を生成することが示される。
【0154】
実施例79〜85:
表14に示す組成を用いて実施例79〜85の試料を調製した。全ての成分をフィードスロートにおいて加えたが、BPADPは下流で注入した液体であった。ブレンドをストランドに押出し、ペレット化した。ペレット化された組成物を試験片に射出成形した。実施例79は、シリコーン流体又はクエン酸を加えない比較実施例である。実施例80は3.5%のSF1706を含み、実施例81は3.5%のSF1706及び0.5%のクエン酸を含む。実施例82〜85は、SF1706と同等の粘度を有し、また末端メトキシ基も有するポリシロキサン:81904LTを含む。しかしながら、これはSF1706とは異なりアミン官能基は有しない。実施例82はクエン酸を含まないが、実施例83〜85は異なるレベルの81904LTを含むことに加えて0.5%のクエン酸を含む。
【0155】
これらの試料の成形中に目立って観察されたことは、SF1706の試料が良好に成形されたのに対して、81904LTの成形中においては、成形部品に変形が起こって層間剥離した樹脂を示したのに加えて激しいスクリューの滑りがあったことである。したがって、81904LTは、SF1706よりも非常に小さい配合物の残りとの限定された相溶性を有する。
【0156】
機械特性は、SF1706単独、及びSF1706をクエン酸と組み合わせて用いる場合にノッチ付きアイゾッド衝撃強さが増加するのに対して、81904LTは81904LT単独による中程度の増加しか示さず、クエン酸を加えるとノッチ付きアイゾッド衝撃強さが大きく増加することを示す。
【0157】
SF1706を加えることにより消炎時間の減少が観察され、更なる減少はクエン酸の添加と関係する。81904LTの場合においては、3.5%の81904LTにおいて消炎時間の大きな減少があり、これはクエン酸を加えることにより僅かに増加する。しかしながら、0.5%のクエン酸と組み合わせて81904LTの装填量を2.5%から3.5%、更に4.5%に増加させることは、消炎時間の段階的な増加と関係する。4分での煙密度及びDmax(補正)値は、SF1706を加えると、両方の煙密度が、比較実施例79から、D4分値に関しては265からそれぞれ21及び20へ、Dmax(補正)値に関しては504からそれぞれ105及び119へ大きく減少することを示す。81904LTを加えても、煙密度D4分値が265(比較実施例79)から129(実施例82)へ減少する。クエン酸を加えると(実施例83)、煙密度D4分値はほぼ変化せずに保たれる。より低い量及びより高い量の81904LT(実施例84に関しては2.5%、実施例85に関しては4.5%)において、78及び77のより低いD4分値が見られる。また、Dmax(補正)は、実施例82に関し、比較例79に対して504から297への減少を示す。しかしながら、クエン酸を加えると悪影響があると思われ、Dmax(補正)が、0.5%のクエン酸を用いる配合物に関しては477、2.5%の81904LT及び0.5%のクエン酸を用いる配合物に関しては535、並びに4.5%の81904LT及び0.5%クエン酸を用いる配合物に関しては352に増加する。
【0158】
したがって、SF1706と比較して同等の粘度及びメトキシ含量を有するが含有アミンを有しないシリコーン流体:81904LTは、SF1706よりも、煙の抑止剤として効果が低く、調べたマトリクスとの相溶性がより低い。これは、SF1706を用いて得られる驚くべき結果を示す。
【0159】
【表14−1】

【0160】
【表14−2】

【0161】
実施例86〜88:
表15に要約する組成を用いて実施例86〜88の試料を配合した。HIPS及びBPADP以外の全ての成分を配合ボウル内で一緒に混合し、58mmの二軸押出機のフィードスロートに供給した。HIPSペレットは別にフィードスロートにおいて供給し、一方BPADPはフィードスロートの少し下流においてポンプで加えた。溶融物を混合し、ストランド化し、ペレット化した。次に、試験のためにペレットから部品を成形した。D4分値及びDmax(補正)の値から分かるように、線状低密度ポリエチレンを加えると、少量であっても煙密度に対して悪影響を与える可能性がある。したがって、0.49重量%のLLDPEを用いる実施例86は34のD4分値及び104のDmax(補正)を有する。LLDPEの量を0.98重量%に増加させると(実施例87)、D4分値は大きくは増加しない(41)が、Dmax(補正)は204へ大きく増加する。1.93重量%の装填量のLLDPEを用いると、D4分値は100へ相当に増加し、Dmax(補正)も318へ劇的に増加する。したがって、少量以下のLLDPEを組成物中に含ませることが好ましい。
【0162】
【表15】

【0163】
実施例89〜92:
表16に示す組成を用いて実施例89〜92の試料を配合した。53mmの押出機を用い、全ての材料をフィードスロートにおいて加え、但し難燃剤であるRDPは下流で加えた。配合条件は表16に示すようなものである。D4分及びDmax(補正)の値から分かるように、より高い真空度で配合を行うとより低い煙密度が導かれる。したがって、25in−Hgの真空度で配合した配合物90及び92は、10in−Hgの真空度で配合し、より高いD4分(それぞれ99及び94)並びにDmax(補正)(それぞれ359及び325)の値を有していた配合物89及び91と比較してより低いD4分(それぞれ77及び83)並びにDmax(補正)(それぞれ270及び267)の値を示す。したがって、幾つかの態様においては、少なくとも15in−Hg(50.8kPa)の真空度を有する排気口を含む押出機を用いて組成物を製造する。
【0164】
【表16】

【0165】
実施例93〜96:
表17に示す組成を用いて実施例93〜96の試料を配合した。HIPS又はBPADP以外の全ての成分をヘンシェルミキサー内で一緒に混合し、30mmの二軸押出機のフィードスロートに加えた。また、HIPSは別のフィーダーを通してフィードスロートに加え、BPADPは下流で加えた。配合物をストランド化し、ペレット化し、試験のために成形した。実施例96及び94は離型剤のタイプの効果を示す。実施例96はポリエポキシド離型剤:Pluronic F88を用い、これに対して実施例94は線状低密度ポリエチレンを用いる。実施例96は、実施例94(242)と比較して遙かに低いDmax(補正)の値(123)を有する。実施例93は、実施例95(91)と比較してより高いDmax(補正)値(277)を示す。これはおそらくは、より低いポリ(アリーレンエーテル)含量を用い、その代わりにより多い量のArkon P125及びBPADPを用いたためである。しかしながら、実施例93は、4分におけるDに関して、実施例95に関する23と比較して40の非常に低い値をなお示す。Dmaxへの時間を見ると、実施例93は実施例95に関する19.5に対して15.7の値を有することが示される。
【0166】
【表17】

【0167】
この記載は、ベストモードを含む本発明を開示し、また当業者が本発明を製造及び使用することができるような例を用いている。発明の特許範囲は特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到する他の例を含むことができる。かかる他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか、或いは特許請求の範囲の文言から大きくは異ならない等価の構造要素を含むならば、特許請求の範囲内に含まれると意図される。
【0168】
全ての引用された特許、特許出願、及び他の参照文献は、その全てを参照として本明細書中に包含する。しかしながら、本出願における用語が、包含された参照文献中の用語と反するか又は対立する場合には、本出願からの用語は、包含された参照文献からの対立する用語に優先する。
【0169】
本明細書において開示する全ての範囲は、端点を包含するものであり、端点は独立して互いに組み合わせることができる。
発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)用語「a」、及び「an」、及び「the」、及び同様の指示詞を用いることは、本明細書において他に示すか又は記載によって明確に反しない限りにおいて、単数及び複数の両方を包含すると解釈すべきである。更に、本明細書における「第1」、「第2」などの用語は、順番、量、又は重要性を示すものではなく、1つの要素を他から区別するために用いるものであることを注意すべきである。量に関して用いる修飾語「約」は、示した値を包含するものであり、文脈によって定まる意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関係する誤差の程度を包含する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリーレンエーテル);
ポリ(アルケニル芳香族化合物);
有機ホスフェートエステル難燃剤;
アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び
有機酸;
を含み、
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;及び
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;
からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物。
【請求項2】
熱可塑性組成物がASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
熱可塑性組成物がASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
熱可塑性組成物が1.6〜3.2mmの試料厚さでV−1又はV−0のUL94等級を更に有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
熱可塑性組成物が1.0〜1.6mmの試料厚さでV−1又はV−0のUL94等級を更に有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
熱可塑性組成物が1.6〜3.2mmの試料厚さでV−0のUL94等級を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
熱可塑性組成物が1.0〜1.6mmの試料厚さでV−0のUL94等級を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
熱可塑性組成物がASTM−D256にしたがって23℃において測定して少なくとも180J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
熱可塑性組成物がASTM−D256にしたがって23℃において測定して180〜350J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
官能化ポリシロキサンが、次式:
【化1】

(式中、T、T、T、T、T、T、T、及びTのそれぞれは、独立して、C〜Cアルキル置換基、C〜Cアルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、或いは少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル置換基であり、但し、T、T、T、T、T、T、T、又はTの少なくとも1つは、C〜Cアルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、或いは少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル置換基であり;nは10〜100である)
を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
及びTの少なくとも1つがC〜Cアルコキシ置換基である、請求項10に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
官能化ポリシロキサンが第1級又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
官能化ポリシロキサンが3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
官能化ポリシロキサンが、次式:
【化2】

(式中、R及びRのそれぞれは、独立して、C〜Cアルコキシ置換基であり;Rは、C〜Cアルキル、或いは第1級アミン又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基であり、但しRの少なくとも1つは第1級アミン又は第2級アミンを含むC〜C10アミノアルキル基であり;Rのそれぞれは、C〜Cアルキル置換基又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜25である)
を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
の少なくとも1つが3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルである、請求項14に記載の熱可塑性組成物。
【請求項16】
及びRのそれぞれがメトキシであり;Rのそれぞれが、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルであり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピルであり;Rが橋架酸素又はメチルであり;yが1〜10である、請求項14に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
官能化ポリシロキサンが23℃において10〜200センチストークスの粘度を有する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
ポリ(アリーレンエーテル)がクロロホルム中25℃において測定して0.30〜0.55dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項19】
ポリ(アルケニル芳香族化合物)がラバー変性ポリスチレンである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項20】
有機ホスフェートエステル難燃剤が、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項21】
有機酸が、C〜C20脂肪族モノカルボン酸、C〜C20脂肪族ポリカルボン酸、芳香族カルボン酸、少なくとも1つのカルボン酸基を含むポリ(アリーレンエーテル)、少なくとも1つのカルボン酸基を有するポリオレフィン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項22】
有機酸が、クエン酸、フマル酸、及び少なくとも1つのカルボン酸基を含むポリ(アリーレンエーテル)からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項23】
ポリ(アリーレンエーテル)が40〜97重量%の量で存在し、ポリ(アルケニル芳香族化合物)が1〜60重量%の量で存在し、有機ホスフェートエステル難燃剤が1〜25重量%の量で存在し、官能化ポリシロキサンが0.1〜10重量%の量で存在し、有機酸が0.05〜5重量%の量で存在し、ここで全ての重量%は熱可塑性組成物の全重量を基準とするものである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項24】
熱可塑性組成物が、アリールアルキレン繰り返し単位を含むブロック(A);及びアルキレン繰り返し単位、アルケン繰り返し単位、又はこれらの組み合わせを含むブロック(B);を含むブロックコポリマーを更に含み;ブロックコポリマーが熱可塑性組成物の全重量を基準として1〜20重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項25】
ブロックコポリマーが非水素化ブロックコポリマーである、請求項24に記載の熱可塑性組成物。
【請求項26】
ブロックコポリマーが、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、又はこれらの組み合わせである、請求項24に記載の熱可塑性組成物。
【請求項27】
0.1〜3重量%のポリオレフィンを更に含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項28】
0.1〜3重量%のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーを更に含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項29】
熱可塑性組成物が、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレート、ポリエーテルイミド、及びポリカーボネートを実質的に含まない、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項30】
ポリ(アリーレンエーテル);
ポリ(アルケニル芳香族化合物);
有機ホスフェートエステル難燃剤;
アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び
有機酸;
を溶融混練することによって得られる反応生成物を含み、
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;及び
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;
からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物。
【請求項31】
60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);
5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;
2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;
5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);
1.5〜6重量%の、次式:
【化3】

(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;及び
0.2〜1重量%のクエン酸;
を含み、
ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;及び
1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級;
を有する熱可塑性組成物。
【請求項32】
熱可塑性組成物がASTM−D256にしたがって23℃において測定して180〜350J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する、請求項31に記載の熱可塑性組成物。
【請求項33】
60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);
5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;
2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;
5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);
1.5〜6重量%の、次式:
【化4】

(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;
0.2〜1重量%のクエン酸;及び
場合によっては5重量%以下の、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤;
から構成され、
ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;及び
1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級;
を有する熱可塑性組成物。
【請求項34】
熱可塑性組成物がASTM−D256にしたがって23℃において測定して180〜350J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃強さを有する、請求項33に記載の熱可塑性組成物。
【請求項35】
45〜80重量%のポリ(アリーレンエーテル);
1〜40重量%のポリ(アルケニル芳香族化合物);
1〜25重量%の有機ホスフェートエステル難燃剤;及び
4〜10重量%の、アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;
を含み、
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;及び
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;
からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物。
【請求項36】
ポリ(アリーレンエーテル);
ポリ(アルケニル芳香族化合物);
有機ホスフェートエステル難燃剤;
アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び
有機酸;
を含み、
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;及び
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;
からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項37】
60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);
5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;
2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;
5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);
1.5〜6重量%の、次式:
【化5】

(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rのそれぞれは、独立して、メチル又は橋架酸素であり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;及び
0.2〜1重量%のクエン酸;
を含み、
ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;及び
1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級;
を有する熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項38】
60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);
5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;
2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;
5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);
1.5〜6重量%の、次式:
【化6】

(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;
0.2〜1重量%のクエン酸;及び
場合によっては5重量%以下の、安定剤、加工助剤、ドリップ抑制剤、成核剤、染料、顔料、酸化防止剤、静電防止剤、発泡剤、金属失活剤、抗ブロッキング剤、香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤;
から構成され、
ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものであり;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;及び
1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級;
を有する熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項39】
ポリ(アリーレンエーテル);
ポリ(アルケニル芳香族化合物);
有機ホスフェートエステル難燃剤;
アルコキシ置換基、アリールオキシ置換基、及び少なくとも1つの第1級又は第2級アミンを含むアミノアルキル置換基からなる群から選択される官能性置換基を含む官能化ポリシロキサン;及び
有機酸;
を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む、
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;及び
ASTM−E662によって1.5〜3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;
からなる群から選択される少なくとも1つの煙密度特性を有する熱可塑性組成物を製造する方法。
【請求項40】
押出機の下流の1/3に真空排気口を含む押出機で溶融混練を行い;真空排気口を30〜76cm−Hgの真空度に保持する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
60〜80重量%の、クロロホルム中25℃において測定して0.35〜0.45dL/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル);
5〜15重量%のラバー変性ポリスチレン;
2〜10重量%のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー;
5〜15重量%のビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート);
1.5〜6重量%の、次式:
【化7】

(式中、Rのそれぞれは、独立して、メチル又は3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり、但しRの少なくとも1つは3−[(2−アミノエチル)アミノ]プロピル基であり;Rは橋架酸素又はメチルであり;xは10〜100であり;yは1〜10である)
を有する官能化ポリシロキサン;及び
0.2〜1重量%のクエン酸;
を溶融混練して熱可塑性組成物を形成することを含む(ここで全ての重量%は組成物の全重量を基準とするものである)、
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して5〜250の4分における煙密度;
ASTM−E662によって3.2mmの試料厚さで測定して20〜300の初期の20分間での補正最大煙密度;及び
1.6〜3.2mmの試料厚さにおいてV−0のUL94等級;
を有する熱可塑性組成物を製造する方法。
【請求項42】
押出機の下流の1/3に真空排気口を含む押出機で溶融混練を行い;真空排気口を30〜76cm−Hgの真空度に保持する、請求項41に記載の方法。

【公表番号】特表2010−515803(P2010−515803A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545534(P2009−545534)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015143
【国際公開番号】WO2008/085190
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】