説明

低エネルギー粉砕方法、低結晶性合金、及び負極組成物

ナノ構造体の合金粒子を製造する方法は、粉砕媒体を含有するペブルミルでミルベースを粉砕することを含む。ミルベースは、(i)シリコンと、(ii)少なくとも1つの炭素又は遷移金属とを含み、ナノ構造体の合金粒子は、サイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインが実質的に無い。ナノ構造体の合金粒子を含むリチウムイオン電池用の負極組成物を製造する方法が更に開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、米国エネルギー省により与えられた契約第DE−EE0000650号の下に、アメリカ合衆国政府の支援で為されたものである。政府は本発明に対し特定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、広くは、粉末粉砕技術、その技術によって形成される合金、及びそのような合金のリチウムイオン電池用の電極組成物としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ペブルミルは、水平軸上に回転する円筒形、又は円錐形の容器に特徴を有する一種のボールミルである。ペブルミルは、鋼の内壁を有し得るが、セラミック、ゴム、プラスチック、又は他の材料で内張りされることが多い。ペブルミルは、典型的には鋼又はセラミックの粉砕媒体と併用して使用されるが、他の粉砕媒体を使用することも可能である。
【0004】
ペブルミルは、瓶の一端にある密閉可能なポートから装填される円筒瓶の形状であり得る。粉砕プロセス中に、より小さなペブルミルが、一組の電動のローラー上に置かれることが多い。より大きなペブルミルは、円筒形の容器からなることが多く、長手方向軸に沿ってピンに水平に取り付けられ、シャフト、ギヤ、又はベルトによって動かされる。そのようなペブルミルは通常、粉砕容器を囲う固定したシュラウドを更に含む。シュラウドによって、容器が回転中にミルを放出させることが可能である。ペブルミルの容器は、粉砕容器の水冷却を可能にする二重壁、媒体が容器の内壁で滑るのを防ぐリフタ、及び/又は作動中にガス抜きができるようにポートを有することもある。
【0005】
ペブルミルは、粉末を微粒子の大きさに研削するため、又は溶媒中に粉末若しくは色素を分散させるために通常使用される。従来の乾式研削操作では、ペブルミルは、容量の半分まで、粉砕媒体、及び研削される粉末の混合物(一般にミルベースと呼ばれる)で典型的には充填される。粉砕媒体は通常、球形、円筒形又は不規則の3つの種類がある。球形の粉砕媒体の場合には、粉砕媒体のミルベースに対する容積比は、典型的には30:20である。容器の回転速度は、容器内の媒体が、水平に関して45〜60°の範囲の角度で連続的な小滝を形成するように設定される。これらの条件は、粉末の効率的粉砕に最適であるので、広く使用される。より高い回転速度で、媒体は、容器内の空気中に放たれる傾向があり、大滝を形成する。更に高い回転速度で、媒体は、遠心力によって容器の側面に押さえ付けられてしまう可能性がある。媒体が容器の側面に押さえ付けられてしまう理論的な回転速度(毎分回転数(rpm))はミルの臨界回転数と呼ばれ、以下の式によって与えられる。
rpm臨界回転数=54.2/R0.5
式中、Rは、フィートで表される粉砕容器の内径である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本開示は、粉砕媒体を含有するペブルミルでミルベースを粉砕し、ナノ構造体の合金粒子を用意することを含む、ナノ構造体の合金粒子を製造する方法であって、ミルベースが(i)シリコンと、(ii)少なくとも1つの炭素又は遷移金属とを含み、ナノ構造体の合金粒子が、サイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインが実質的に無い、方法を提供する。
【0007】
更に別の態様において、本開示は、リチウムイオン電池用の負極組成物を製造する方法であって、
(a)粉砕媒体を含有するペブルミルでミルベースを粉砕することを含む方法によってナノ構造体の合金粒子を製造する工程と、
(b)負極組成物を提供するために、重合体結合剤中にナノ構造体の合金粒子を分散させる工程と、を含み、前記ミルベースは、
(i)シリコンと、
(ii)少なくとも1つの炭素又は遷移金属と、を含み、ナノ構造体の合金粒子は、サイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインが実質的に無い、方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、粉砕媒体のミルベースに対する容積比は、1.5:1を超える。いくつかの実施形態では、粉砕媒体のミルベースに対する容積比は、5:1を超える。いくつかの実施形態では、ナノ構造体の合金粒子は非晶質である。いくつかの実施形態では、ペブルミルの粉砕媒体とミルベースとを合わせた容積に対する容積比は、2:1以下である。いくつかの実施形態では、ペブルミルは理論的な臨界回転数を有し、ペブルミルは、理論的な臨界回転数の50〜120パーセントの範囲の回転速度を有する。いくつかの実施形態では、ペブルミルは、0.01〜0.3ジュールの範囲の最大衝撃エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、ペブルミルは、摂氏100度以下に保持される温度を有する封じ込め壁を有する。いくつかの実施形態では、ペブルミルは鋼内壁を有する。いくつかの実施形態では、ペブルミルはセラミックの、又はセラミックで内張りされた封じ込め壁を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ナノ構造体の合金粒子は、シリコン、錫、及び遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、ミルベースはフェロシリコンを含む。いくつかの実施形態では、(ii)が炭素を含む。いくつかの実施形態では、ペブルミルは、飽和高級脂肪酸又はその塩を含む粉砕助剤を更に含有する。いくつかの実施形態では、粉砕助剤はステアリン酸を含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造体の合金粒子は、リチウムイオン電池の負極組成物の中に活物質として使用するように適合される。いくつかの実施形態では、ナノ構造体の合金粒子は、少なくとも10、20、30、40、50、60重量パーセント、又は更には70重量パーセント、又はそれ以上のシリコンを含む。
【0010】
有利には、出願者らは、本開示による粉砕方法が、50ナノメートルを超えるサイズを有する結晶領域が実質的に無いナノ構造体の合金粒子を製造することを発見した。例えば、ナノ構造体の合金粒子は、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、又は更には0.1重量パーセント未満の50ナノメートルを超えるサイズを有する結晶領域を有してもよい。
【0011】
更に、粉砕方法は、商業生産レベルに容易に拡大縮小できる。対照的に、現在用いられている技術(例えば、高衝撃ミル)は、より大きな結晶領域を形成する傾向がある、及び/又は商業的に有用な量のナノ構造体の合金粒子を製造するために拡大するのに問題がある。リチウムイオン電池の負極で使用するために、ナノ構造体の合金粒子は、非晶質であるべきである、又は少なくとも50ナノメートルを超えるサイズを有する結晶領域が実質的に無存在であるべきであるが、そのような領域を有する物質は、リチウム化/脱リチウム化の繰り返しに一般的に適さないからである。
【0012】
いくつかの実施形態では、出願者らは更に、金属で内張りされた対応するペブルミルの代わりに、セラミックで内張りされた内壁を有するペブルミルを使用することで、金属で内張りされたペブルミルの効率を低下させる粘結の問題を本質的に解消することを発見した。
【0013】
本明細書で使用する場合、
用語「合金」は、1つ以上の金属相を有し、2つ以上の金属元素を含む物質を意味する。
用語「金属化合物」は、少なくとも1つの金属元素を含む化合物を意味する。
用語「合金にする」は、合金を形成するプロセスを意味する。
物質に適用される用語「非晶質」は、X線回折によって観察される結晶質に特有の長距離原子配列が無い物質を意味する。
用語「脱リチウム化」は、電極物質からリチウムを除去するプロセスを意味する。
用語「電気化学的に活性」は、リチウムイオン電池の充放電中に典型的に遭遇する条件下で、リチウムに可逆に反応する物質を意味する。
用語「金属元素」は、すべての元素の金属(錫を含む)、シリコン、及び炭素を意味する。
用語「ミル」は、合金にする、研削する、粉砕する、粉末化する、又は別の方法で物質を小粒子に分解する、装置(実施例としては、ペブルミル、ジェットミル、ボールミル、ロッドミル及びアトライターミルが挙げられる)を意味する。
用語「粉砕」は、ミルに物質を入れ、合金にする、研削する、粉末化する、又は物質を小粒子若しくは微小粒子に分解するためにミルを作動するプロセスを意味する。
用語「ナノ構造体の合金」は、50ナノメートルより大きいサイズの結晶ドメインが実質的に無い合金を意味する。
用語「負極」は、放電プロセス中に電気化学的酸化及び脱リチウム化が起こる、リチウムイオン電池の電極(アノードと呼ばれることが多い)を意味する。
用語「正極」は、放電プロセス中に電気化学的還元及びリチウム化が起こる、電極(カソードと呼ばれることが多い)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ペブルミルは、粉体調製技術において周知である。ペブルミルは、多数の製造業者から広く市販されている。有用なペブルミルは、概して円筒形、概して円錐形、又は他のいくつかの形状であっても、相対的に小さいものであってよく(例えば、最大内径が6インチ(15cm)若しくはそれ以下)、又はより大きい最大内径を有してもよい(例えば、最大6フィート(2m)、若しくはそれ以上)。有利には、本開示の方法は、全範囲のサイズに好適であり、したがって、大量生産に有用である。ペブルミルは、例えば、鋼壁を有し得る、又はセラミック物質で内張りされ得る。当該技術分野において一般的であるように、ペブルミルは二重壁タイプであってもよく、冷却媒体(例えば水)が壁間を循環することができ、それによって、内壁の温度を調整する。例えば、内部(封じ込め)壁の温度は100℃以下に保持されてもよい。
【0015】
正動作で、ペブルミルは、ペブルミルに含まれる粉砕媒体が遠心力によって理論上壁に押さえ付けられ、粉砕の効率が著しく低下する、理論上の臨界回転数を典型的には有する。しかしながら、本出願者らは、少なくともいくつかの場合では、理論上の臨界回転数に近い、又はそれを上回る粉砕速度は、ナノ構造合金を生じさせることが可能であることを予想外に発見した。実験条件はペブルミルのデザイン次第で幾分異なるが、臨界回転数の50〜120パーセントの範囲における回転速度は、非晶質である、又はサイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインを少なくとも実質的に含まない、ナノ構造体の合金粒子を生成するのに典型的には好適であることが判明した。
【0016】
このような条件下で、ペブルミルに含まれる粉砕媒体の最大衝撃エネルギーは、ナノ構造体の合金粒子の著しい結晶化を誘導するには典型的には不十分である。例えば、理論上及び/又は事実上にかかわらず、最大衝撃エネルギーは、ナノ構造体の合金粒子の著しい結晶化なしで、ミルベースの粉砕中、典型的には0.01〜0.3ジュールの範囲である可能性がある。
【0017】
有用な粉砕媒体は、商業的供給源から容易に利用可能で、鋼、ガラス、及びセラミックの媒体を含むが、他の粉砕媒体が使用されてもよい。粉砕媒体は、球状、棒状、不規則な形状の本体、及びそれらの組み合わせの形状を有してもよい。粉砕媒体の実施例には、クロム鋼ボール、セラミックボール、セラミックシリンダー、鋼長棒、鋼短棒、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ミルベースは、異なる組成物を有する複数の種類の粒子を含む。例えば、ミルベースは、シリコン粒子、錫粒子、炭素粒子、及び遷移金属粒子が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、ミルベースは、1つ以上のシリコン粒子、錫粒子、炭素粒子、及び/又は遷移金属粒子の合金を含む。合金の実施例には、珪素鉄及び1つ以上の遷移金属(希土類金属を含む)の合金、例えば、Fe、Ti、Y、V、Cu、Zr、Zn、Co、Mn、Mo、及びNi等、例えばミッシュメタルが挙げられる。
【0019】
いかなるミルベースの組成物であっても、リチウムイオン電池の負極組成物にナノ構造体の合金粒子を使用する意図がある場合、電池技術において周知のとおり、得られる負極組成物が電気化学的に活物質であるように、比率は一般的に調節されるべきである。
【0020】
ミルベースは粉砕助剤を更に含んでもよい。粉砕助剤の実施例には、1つ以上の飽和高級脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、及びパルミチン酸)、並びにそれらの塩、鉱油、ドデカン、粉末ポリエチレン等の炭化水素が挙げられる。一般に任意の選択的な粉砕助剤の量は、ミルベースの5重量パーセント未満、典型的には、1重量パーセント未満である。
【0021】
必要に応じて、ミルベースの固体成分は、ペブルミルに入れる前に鋳塊又は塊から、粉末として又は粉末化されたものとして得られてもよい。場合によっては、鋳塊又は塊が、ペブルミルに直接使用されてもよく、その場合には、鋳塊又は塊は、粉砕プロセス中に砕かれる。純元素はミルベースの構成成分として使用されてもよく、又はそれらの1つ以上が予備生成された合金によって置換されてもよく、例として、2009年5月14日出願の「METHOD OF MAKING AN ALLOY」という名称の米国特許出願第12/465,865号で一般的に説明される。
【0022】
ミルベースと粉砕媒体との任意の相対量が使用されてもよいが、典型的には粉砕媒体対ミルベースが、1.5:1を超える、又は更には5:1を超える容積比は、相対的に高い生産性及び品質を提供する。
【0023】
ペブルミルの密閉容積の、粉砕媒体及びミルベースに対する任意の容積比を使用することができる。典型的には、ペブルミルの密閉容積を粉砕媒体及びミルベースを合わせたもので除算した比率が2:1以下の範囲であるとき、50ナノメートルを超えるサイズを有する結晶質の領域が実質的に無いナノ構造体の合金粒子が得られる。
【0024】
一般に、粉砕は制御された酸素環境下、例えば、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、及び/又はアルゴン)環境下で行われるべきである。
【0025】
代表的なナノ構造体の合金はシリコン合金を含み、活物質は、約50〜約85モルパーセントのシリコン、約5〜約25モルパーセントの鉄、約0〜約12モルパーセントのチタン、及び約0〜約12モルパーセントの炭素を含む。有用なシリコン合金の更なる実施例としては、米国特許出願公開第2006/0046144(A1)号(Obrovacら)に記載されるもの等のシリコン、銅、及び銀又は銀合金を含む組成物、米国特許第7,498,100号(Christensenら)に記載されるもの等の多相シリコン含有電極、米国特許出願公開第2007/0020521(A1)号、同第2007/0020522(A1)号(すべてObrovacら)に記載されるもの等の錫、インジウム、及びランタニドを含むシリコン合金、アクチニド元素、又はイットリウム、米国特許出願公開第2007/0128517(A1)号(Christensenら)に記載されるもの等の高シリコン含有量を有する非晶質合金、並びに米国特許出願公開第2007/0148544(A1)号(Le)に記載されるもの等のシリコン−錫−金属−カーバイト合金が挙げられる。
【0026】
本開示に従って調製したナノ構造体の合金粒子は、重合体結合剤で分散させて、電池技術において周知の技術を使用して、負極組成物及び/又は正極組成物を形成することができる。例示的な重合体結合剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、及びリチウムポリアクリレート等のオキソ酸とそれらの塩が挙げられる。重合体結合剤の他の実施例としては、エチレン、プロピレン、又はブチレンモノマー類から調製されるようなポリオレフィン類、フッ化ビニリデンモノマー類から調製されるようなフッ素化ポリオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレンモノマーから調製されるような過フッ素化ポリオレフィン類、過フッ素化ポリ(アルキルビニルエーテル類)、過フッ素化ポリ(アルコキシビニルエーテル類)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。他の重合体結合剤としては、芳香性ポリイミド、脂肪族ポリイミド、又は脂環式ポリイミド、及びポリアクリレート等のポリイミドが挙げられる。
【0027】
重合体結合剤は架橋されてもよい。架橋は結合剤の機械的特性を向上させることができ、活性物質組成物と存在し得る任意の導電性希釈剤との間の接触を改善することができる。
【0028】
電極組成物は、当業者に既知である添加剤が含有され得る。例えば、電極組成物は、粉末物質から集電体への電子移動を促進するための導電性希釈剤を含むことができる。導電性希釈剤としては、炭素(例えば、負極用カーボンブラック及び正極用のカーボンブラック、フレーク状黒鉛など)、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属珪化物(metal suicides)及び金属ホウ化物が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な導電性炭素希釈剤には、Super Pカーボンブラック及びSuper Sカーボンブラック(双方ともMMM Carbon(Belgium)から)などのカーボンブラック、Shawanigan Black(Chevron Chemical Co.(Houston,TX)から)、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、黒鉛、カーボンファイバー及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
有用な電極組成物としては、活物質として作用する黒鉛が更に挙げられる。黒鉛は負極活物質であり、艶出し仕上げプロセス中に電極の多孔性を減少させる際に更に有用である。有用な黒鉛の実施例は、MAG−E(Hitachi Chemical Co.Ltd.(Tokyo,Japan))、並びにSLP30及びSFG−44(双方ともTIMCAL Ltd.(Bodio,Switzerland))である。
【0030】
有用な電極組成物には、粉末材料の接着を促進する粉末材料定着剤(adhesionpromoter)又は結合剤への導電性希釈剤が挙げられる。
【0031】
有用な電極組成物には、被覆溶媒中の電極成分の分散を促進する界面活性剤が挙げられる。
【0032】
負極を作製するには、カルボキシメチルセルロース、及び当業者に既知の他の添加剤等の被覆の粘度変性剤を選択的に含有する負極組成物が、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール又はN−メチルピロリドン等の好適な被覆溶媒中に混合され、被覆分散体又は被覆混合物を形成する。分散体は十分に混合され、次いで、例えば、ナイフコーティング、ノッチ付きバーコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング又はグラビアコーティングなどの任意の適切な分散体被覆技術によって金属箔集電体に塗布される。
【0033】
集電体は、典型的には、例えば、銅、ステンレス鋼、又はニッケル箔などの導電性金属類の薄い箔である。集電体箔上にスラリーが被覆された後、典型的には約80℃〜約300℃に設定した加熱したオーブン内で約1時間乾燥させることで、一般に乾燥させ、溶媒を除去することができる。負極は、当業者に既知の2つのプレート又はローラーの間でプレスすることによって圧縮することができる。負極は、米国特許出願公開第2008/0248386(A1)号(Obrovacら)に開示される隆起したパターンを備えてもよい。
【0034】
正極は、例えば、アルミニウム集電体上に塗布された正極組成物から、負極と似たやり方で形成することができる。例示的な正極組成物としては、重合体結合剤、及びLiV、LiV、LiCo0.2Ni0.8、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn、LiCoO等のリチウム遷移金属酸化物、混合金属酸化物(例えば、コバルト、マンガン、及びニッケルのうちの2つ又は3つ)を含む組成物が挙げられる。
【0035】
正極及び負極は、電解質と混合してリチウムイオン電池を形成する。リチウムイオン電池を作製する方法は、電池技術における通常の専門家に周知である。電池では、電解質が正極組成物及び負極組成物の双方と接触しており、正極及び負極は互いに物理的に接触しておらず、典型的には、電極間にはさまれた重合体分離膜によって分離される。
【0036】
電解質は、液体、固体、又はゲルであってもよい。固体電解質の実施例としては、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素含有コポリマー、及びこれらの混合物のような重合体電解質が挙げられる。液体の電解質の実施例としてはエチレンカーボネート、1−フルオロエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニールカーボネート、プロピレンカーボネート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。電解質にはリチウム電解質塩が備わっている。好適なリチウム電解質塩の実施例としては、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、LiC(CFSO、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
以降の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これら実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0038】
特に記載が無い限り、実施例及びこれ以降の明細書における部、割合、比率などはいずれも重量基準である。
【0039】
実施例全体を通して以下の略記を用いる。
【0040】
【表1】

【0041】
X線測定
銅ターゲットX線管及び回折光線モノクロメーターを備えたSiemens Model KRISTALLOFLEX 805 D500回折計を用いて、X線回折図形を収集した。ステップ0.05度[2θ]で20〜60度[2θ]の散乱角を使用してX線回折図形を収集した。結晶ドメインのサイズは、シェラーの式を使用してX線回折ピークの幅から計算した。
【0042】
比較例A
SiFeTi1合金粉末(957.444g)及び42.556gの黒鉛1を、20リットルチャンバのミル(Zoz GmbH(Maltoz−Strasse,Wenden,Germany)から入手可能なSimoloyer,モデルCM20−20lm)に加えた。直径0.476cm(0.1875インチ)を有する25kgのクロム鋼ボールをチャンバに加えた。毎分回転数650(rpm)のチャンバの回転速度で、アルゴン雰囲気中で1時間粉砕を行った。このプロセスは、高エネルギーボールミル粉砕プロセスであるとみなされる。粉砕後、約66.4モルパーセントのシリコン、11.2モルパーセントの鉄、11.2モルパーセントのチタン、及び11.2モルパーセントの炭素を含有するSi/Fe/Ti/C合金粉末、粉末Aが得られた。
【0043】
出発物質のX線回折図形は、黒鉛、結晶性Si、結晶性FeSi及び結晶性FeTiSiに特有のピークを含んだ。粉末AのX線回折図形は、ナノ結晶性FeTiSi及びナノ結晶性Siに特有のピークを含んだ。FeTiSi及びSi結晶子の粒子サイズは、それぞれ約12nm及び19nmであると判明した。
【0044】
(実施例1)
SiFeTi1合金粉末(95.94g)、及び4.26gの黒鉛1を、鋼製ペブルミルの5リットルの鋼チャンバ(U.S.Stoneware(Youngstown,OH)から入手可能なモデル611、瓶の寸法1)に入れた。チャンバは、内径約18.8cm(7.4インチ)及び長さ約17.1cm(6.75インチ)の円筒の形状であった。大粒子の合金粉末に加えて、直径1.27cm(0.5インチ)のクロム鋼ボール10kg、長さ23.2cm(9.125インチ)×直径1.27cm(0.5インチ)の円筒形の棒鋼1本、及び長さ21.5cm(8.625インチ)×直径1.27cm(0.5インチ)の円筒形の棒鋼2本を、チャンバに加えた。チャンバはNでパージされ、毎分回転数85rpmで6日間粉砕を行った。粉砕後、約66.4モルパーセントのシリコン、11.2モルパーセントの鉄、11.2モルパーセントのチタン、及び11.2モルパーセントの炭素を含有するSi/Fe/Ti/C合金粉末、粉末1が得られた。上記の粉砕プロセスは低エネルギーボールミル粉砕プロセス(LEBM)であるとみなされた。このプロセスは他の実施例で参照される。
【0045】
粉末1のX線回折図形は、粒子サイズ約9nmを有するナノ構造体FeTiSiに特有のピークを示した。粉末1のX線図は、Siに特有のピークを示さず、粉末1中のSiの相が非晶質であることを示す。
【0046】
(実施例2)
120.277グラム(g)のSi1、及び79.723gのFe1をアーク溶融することで、大粒子SiFe合金を調製した。約75モルパーセントのシリコン、及び25モルパーセントの鉄を含有するSi75Fe25合金鋳塊を破砕し、150マイクロメートル未満の大きさにして、実施例1に記述される手順によって粉砕した。粉砕後、約75モルパーセントのシリコン、及び25モルパーセントの鉄を含有するSi/Fe合金粉末、粉末2が得られた。出発物質Si75Fe25のX線回折図形は、結晶性Si、及びFeSiの相に特有のピークを示した。粉末2のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを示した。粉末2のX線回折図形は、Siに特有のピークが含まれず、粉末2中のSiの相が非晶質であることを示す。
【0047】
(実施例3)
90.155gのSi1、57.159gのFe1、33.130gのSn2、及び19.556gのMm1をアーク溶融することで、大粒子Si69Fe22SnMmを製造した。合金鋳塊を破砕し、500マイクロメートル未満の大きさにした。得られた粉末(90g)を実施例1に記述される手順を使用して粉砕し、約69モルパーセントのシリコン、22モルパーセントの鉄、6モルパーセントの錫、及び3モルパーセントのMmを含有するSi/Fe/Sn/Mm合金粉末、粉末3が得られた。出発物質の合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Si、結晶性Sn、及び結晶性CeSiの相に特有のピークを示した。粉末3のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性CeSiに特有のピークを示した。粉末3のX線回折図形は、Si又はSnからのピークが含まれず、これらの相が非晶質であることを示す。
【0048】
(実施例4)
130.70gのSi1、及び69.30gのFe1をアーク溶融することで、大粒子Si75Fe20を製造した。合金鋳塊を破砕し、150マイクロメートル未満の大きさにした。得られた粉末(98.27g)及び1.73gの黒鉛1を実施例1に記述される手順を使用して同時に粉砕し、約75モルパーセントのシリコン、20モルパーセントの鉄、及び5モルパーセントの炭素を含有するSi/Fe/C合金粉末、粉末4を得た。出発物質の合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Si、及びFeSiの相に特有のピークを含んだ。粉末4のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを含んだ。化学量論から、この合金はSi、及びSiCの相を更に含むが、粉末4のX線回折図形は、Si又はSiCからのピークが含まれず、これらの相が非晶質であることを示す。
【0049】
(実施例5)
121.64gのSi1、及び78.38gのFe1をアーク溶融することで、大粒子Si71Fe23を製造した。242.86gのSn2、及び57.14gのFe1をアーク溶融することで、大粒子サイズSnFeを製造した。次に、SnFe鋳塊を490℃のアルゴンで48時間焼きなました。合金鋳塊を破砕し、500マイクロメートル未満の大きさにした。Si71Fe23(110.27g)及び19.73gのSnFeを実施例1に記述される手順を使用して同時に粉砕し、約71モルパーセントのシリコン、25モルパーセントの鉄、及び4モルパーセントの錫を含有するSi/Fe/Sn合金粉末、粉末5を得た。出発物質のSi71Fe23合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Si、及びFeSiの相に特有のピークを含む。出発物質のSnFe合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Sn、及びSnFeの相に特有のピークを含む。粉末5のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを含んだ。粉末5のX線回折図形は、Si又はSnからのピークを含まず、これらの相が非晶質であることを示す。
【0050】
比較例B
容器を85rpmの代わりに10rpmで回転し、粉砕時間が6日間の代わりに12日間であることを除いては、実施例5の手順を繰り返し、71モルパーセントのシリコン、25モルパーセントの鉄、及び4モルパーセントの錫を含有するSi/Fe/Sn合金粉末、粉末Bを得た。出発物質のSi71Fe23合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Si、及びFeSiの相に特有のピークを含んだ。出発物質のSnFe合金鋳塊のX線回折図形は、結晶性Sn、及びSnFeの相に特有のピークを含んだ。粉末BのX線回折図形は、Si及びSnからのピークを含み、これらの相が、Siの相は粒子サイズ195nm、及びSnの相は58nmを有する結晶質であることを示す。これは、Siの相及びSnの相の双方が非晶質である粉末5(実施例5を参照)と対照的であった。
【0051】
(実施例6)
FerroSi75(46.21g)、69.06gのFerroSi50、及び15.97gのSn1を実施例1に記述される手順を使用して粉砕し、約71モルパーセントのシリコン、25モルパーセントの鉄、及び4モルパーセントの錫を含有するSi/Fe/Sn合金粉末、粉末6を得た。粉末6のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを示した。粉末6のX線回折図形は、Si及びSnからのピークを含まず、粉末6中のSi及びSnの相が非晶質であることを示す。
【0052】
(実施例7)
FerroSi75(64.29g)、42.77gのFerroSi50、16.14gのSn1、及び8.14gのTi1を粉砕時間が13日間であることを除いては、実施例1に記述される手順を使用して粉砕した。粉砕後に、約71モルパーセントのシリコン、20モルパーセントの鉄、4パーセントの錫、及び5パーセントのチタンを含有するSi/Fe/Sn/Ti合金粉末、粉末7を得た。粉末7のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを示した。粉末7のX線回折図形は、Si、Sn、及びTiSi(及び/又はFeTiSi)からのピークを含まず、Si、Sn、及びTiSi(及び/又はFeTiSi)の相が非晶質であることを示す。
【0053】
合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順
合金粉末(1.84g)、及び1.6gのPAA−Liを、45ミリリットルのステンレス鋼容器内で、1.27cm(0.5インチ)の炭化タングステンボール4つを使用して、混合した。Fritsch(Germany)からのPlanetary Micro Mill Pulverisette 7で速度2で1時間混合した。得られた溶液を、ダイギャップ(典型的には3ミル(0.076mm)のギャップ)を使用して、厚さ10マイクロメートルのCu箔上に手で延ばした。次に、試料を真空炉で120℃で1〜2時間乾燥させて、合金電極膜を製造した。次に、直径16mmの円状を合金電極膜から打ち抜いて、セル用の電極として使用した(以下を参照)。
【0054】
2325ボタンセルを使用して半分のコインセルを調製した。すべての構成要素は、組立前に乾燥させ、セルの調製は露点−70℃の乾燥室内で行った。セルは、次の構成要素から、セルの底部/Cuスペーサ/Li金属膜/セルグロメット/セパレータ/合金電極/Cuスペーサ/セルの上部の順番で、下から上へと組み立てた。セルはそれぞれ、2325ボタンセルのハードウェア、直径20ミリメートル(mm)×厚さ0.762mm(30ミル)の円盤のCuスペーサ、直径16mmの円盤の合金電極、直径20mmの微孔セパレータ(Separation Products,Hoechst Celanese Corp.(Charlotte,North Carolina)から入手可能なCELGARD 2400p)、直径18mm×厚さ0.38mmの円盤のLi金属膜(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)から入手可能なリチウムリボン)、及び直径20mm×0.762mm(30ミル)の円盤の銅スペーサからなる。電解質は、90重量パーセントのEC/DEC溶液(容量で2/1)、及び10重量パーセントのFECを含有する溶液で、LiPFを導電性塩として1M濃度で用いた。LiPFを加える前に、溶剤溶液をモレキュラーシーブ(3Aタイプ)上で12時間乾燥させた。100マイクロリットルの電解質溶液を用いて、セルを満たした。セルは、試験前にクリンプシールした。
【0055】
セルは、0.005V〜0.90V、100mA/g−合金の一定速度、放電(合金のリチウム化)終了時、トリクル電流10mA/gで第1のサイクルを実施した。次からは、セルは、同範囲の電圧、200mA/g−合金の速度、放電終了時、トリクル電流20mA/g−合金でサイクルを実施した。セルは、ハーフサイクルごとの終わりで開回路にて15分間休止させた。
【0056】
(実施例8)
粉末1を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例9)
粉末2を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例10)
粉末4を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例11)
粉末5を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例12)
粉末6を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例13)
粉末7を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例14)
FerroSi75(261.24g)、390.47gのFerroSi50、90.29gのSn1、及び2.23gのステアリン酸(粉砕助剤として)をセラミックペブルミルのチャンバ(Paul Abbe(Bensenville、IL)から入手可能な3.9ガロン(14,76リットル)磁器瓶)に入れた。チャンバは、内径30.5cm(12インチ)、及び長さ約25.4cm(10インチ)の円筒の形状であった。大粒子の合金粉末及びステアリン酸に加えて、直径1.27cm(0.5インチ)のクロム鋼ボール37.1kgを、チャンバに加えた。チャンバはNでパージされ、毎分回転数77rpmで120時間粉砕を行った。粉砕後、約71モルパーセントのシリコン、4モルパーセントの錫、及び25モルパーセントの鉄を含有するSi/Sn/Fe合金粉末、粉末14が得られた。
【0063】
粉末14のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを示した。粉末14のX線回折図形は、Si及びSnからのピークを含まず、粉末14中のSi及びSnの相が非晶質であることを示す。
【0064】
(実施例15)
ステアリン酸の代わりに0.742gのステアリン酸リチウム(粉砕助剤として)を使用し、粉砕時間が140時間(120時間の代わりに)であることを除いては、実施例14の手順を繰り返した。粉砕後、約71モルパーセントのシリコン、4モルパーセントの錫、及び25モルパーセントの鉄を含有するSi/Sn/Fe合金粉末、粉末15が得られた。
【0065】
粉末15のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSiに特有のピークを示した。粉末15のX線回折図形は、Si及びSnからのピークを含まず、粉末15中のSi及びSnの相が非晶質であることを示す。
【0066】
(実施例16)
FerroSi75(3.838kg)、5.736kgのFerroSi50、1.326kgのSn1、及び0.109kgのステアリン酸(粉砕助剤として)をセラミックで内張りされたペブルミルのチャンバ(Paul Abbe(Bensenville、IL)から入手可能な60ガロン(227.1リットル)、セラミック内張りのペブルミル、モデル8B)に入れた。チャンバは、内径73.7cm(29インチ)の円筒の形状であった。大粒子の合金粉末及びステアリン酸に加えて、直径1.27cm(0.5インチ)のクロム鋼ボール545kgを、チャンバに加えた。チャンバは密閉する前にNでパージされ、48rpmで96時間粉砕を行った。粉砕中、ミルの二重壁を通して水道水を流すことでミルを冷却した。粉砕後、約71モルパーセントのシリコン、4モルパーセントの錫、及び25モルパーセントの鉄を含有するSi/Sn/Fe合金粉末、粉末16が得られた。
【0067】
粉末16のX線回折図形は、粒子サイズ50nm未満を有するナノ結晶性FeSi、及び粒子サイズ50nm未満を有する新しいFeSiの相(低温相)に特有のピークを示した。粉末16のX線回折図形は、Si及びSnからのピークを含まず、粉末16中のSi及びSnの相が非晶質であることを示す。
【0068】
(実施例17)
粉末14を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例18)
粉末15を使用して、合金電極膜及び3つのコインセルを、合金電極の調製、セルの組み立て、及びセル試験の手順によって調製し試験を行った。結果を表1(以下)に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表1(上記)において、効率=サイクル50の容量/サイクル2の容量。
【0072】
上述のように調製した合金粉末は、電極に組み立てられ、更にセルに組み立てられるとき、多数のサイクルに対して安定した容量を示し、充電式リチウムイオン電池の応用を含む電池の応用において、アノード活物質としての使用に適していることを、表1が示す。
【0073】
本明細書に引用したすべての特許及び刊行物は、その全文を参照することにより本明細書に組み込むこととする。特に指定されない限り、本明細書に記載した実施例はすべて非限定的であるとみなされる。当業者は、本開示の様々な修正及び変更を、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく行うことができ、また、本開示は、上記で説明した例示的な実施形態に過度に限定して理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕媒体を含有するペブルミルでミルベースを粉砕し、ナノ構造体の合金粒子を用意することを含む、ナノ構造体の合金粒子を製造する方法であって、
前記ミルベースが(i)シリコンと、(ii)少なくとも1つの炭素又は遷移金属とを含み、前記ナノ構造体の合金粒子が、サイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインが実質的に無い、方法。
【請求項2】
前記粉砕媒体の前記ミルベースに対する容積比が、5:1を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ構造体の合金粒子が非晶質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ペブルミルの前記粉砕媒体と前記ミルベースとを合わせた容積に対する容積比が、2:1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペブルミルが理論的な臨界回転数を有し、前記ペブルミルが、前記理論的な臨界回転数の50〜120パーセントの範囲の回転速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペブルミルが、0.01〜0.3ジュールの範囲の最大衝撃エネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペブルミルが、摂氏100度以下に保持される温度を有する封じ込め壁を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ構造体の合金粒子が、シリコン、錫、及び遷移金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ミルベースがフェロシリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(ii)が炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペブルミルがセラミックの封じ込め壁を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ペブルミルが、飽和高級脂肪酸又はその塩を含む粉砕助剤を更に含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕助剤がステアリン酸を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ構造体の合金粒子が、リチウムイオン電池の負極組成物の中に活物質として使用するように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
リチウムイオン電池用の負極組成物を製造する方法であって、
(a)粉砕媒体を含有するペブルミルでミルベースを粉砕することを含む方法によってナノ構造体の合金粒子を製造する工程と、
(b)前記負極組成物を提供するために、重合体結合剤中に前記ナノ構造体の合金粒子を分散させる工程と、を含み、
前記ミルベースは、
(i)シリコンと、
(ii)少なくとも1つの炭素又は遷移金属と、を含み、前記ナノ構造体の合金粒子は、サイズが50ナノメートルより大きい結晶ドメインが実質的に無い、方法。
【請求項16】
前記ナノ構造体の合金粒子が非晶質である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ構造体の合金粒子が、シリコン、錫、及び遷移金属を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ構造体の合金粒子が、シリコン、錫、及び鉄を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ構造体の合金粒子が炭素を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ペブルミルが、セラミックの封じ込め壁を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ペブルミルが、飽和高級脂肪酸又はその塩を含む粉砕助剤を更に含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記粉砕助剤がステアリン酸を含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2012−526920(P2012−526920A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510865(P2012−510865)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/033955
【国際公開番号】WO2010/132279
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】