説明

低レベル濃度の殺菌剤を介した領域汚染除去

【課題】領域を汚染除去する方法、およびこれに関連する装置を提供すること。
【解決手段】この方法は、領域に殺菌源から殺菌剤を放出することと、領域中の殺菌剤の濃度を、許容曝露限度を超えない予め定められた濃度に制御することと、領域中の微生物を殺菌剤に接触させて、領域を汚染除去することとを含む。この装置は、放出用機構を具備し、この放出用機構は、殺菌源から殺菌剤を、領域に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域中の殺菌剤の予め定められた濃度が、許容曝露限度を超えないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔分野〕
本開示は、低レベル濃度の殺菌剤を介した領域汚染除去、およびこれを提供するための装置に向けられている。
【0002】
〔背景〕
病院の患者の部屋のような領域の環境表面を汚染する微生物の能力は、よく知られている。したがって、衛生および健康に関わる設備のオペレーターは、消費者、患者、または職員に、これらの表面から微生物が移るのを防止するために、環境汚染を減らすか、または排除する厳密な措置を有している。環境表面から患者または働き手に微生物を移す主たる媒介物は、患者または働き手の手である。このため、標準の環境の清掃は、高度に手に触れる表面、例えばベッドレールに最も関わっており、低度に手に触れる表面、例えば床および天井にはあまり関わっていない。
【0003】
領域汚染に取り組むための標準の手順としては、消毒剤を用いて、あるいは用いないで、低度に手に触れる領域のちりを払うこと、吸引すること、モップを掛けること、および拭き取ることといった処置を含む。高度に手に触れる表面は典型的には、化学薬品を用いて消毒され、この化学薬品は、その表面上に塗りつけられるか、またはスプレー掛けされ、殺菌力を確実にする適切な接触時間が与えられ、その後で拭き取られる。これらの高度に手に触れる表面は、数および複雑さの両方で多様であるため、全ての表面を適切に処理しそびれる機会が高い。消毒剤の有害な性質のため、例えば、病室の患者の占有と占有との間、および手術室での外科手順と外科手順との間に、これらの措置が典型的には生じる。たとえ、ヘルスケア設備が汚染除去問題の取り組みにかなり気を使うとしても、清掃後に残っている汚染が見付かるのは珍しいことではない。これらの処理の代替として、消毒用の蒸気またはミストによる領域汚染除去があり、この蒸気またはミストの中で、領域が排気され、閉じられるか、または封止され、その後、ある期間にわたって蒸気またはミストの消毒に供される。これらの手順は、処理のために、領域をある期間にわたって利用できない(taken out of service)ようにするが、処理される領域で全ての曝露された表面の消毒を確実にすることが必要である。
【0004】
不適切または不完全な清掃および消毒は、環境表面から患者または働き手に感染性の微生物が移る可能性を与える一方で、汚染問題の取り組みを完全なものとする設備の休止時間は、コストがかかり、非効率的である。したがって、種々の設備における生物学的な汚染に取り組むための現行の標準の手順よりも優れた汚染除去処置についての必要性が存在する。
【0005】
本開示の特徴および利点は、添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0006】
〔詳細な説明〕
本開示の実施形態は、領域を利用できないようにする必要がない、低濃度の殺菌剤でこの領域中の微生物を汚染除去する装置、およびこれに関連する方法を提供する。したがって、病室のような領域は、汚染除去が進行中の間、継続して、またはほぼ継続して占有されることができる。
【0007】
作動例(operating examples)以外でも、あるいは、別段はっきりと明記されていない限り、本明細書の下記の部分における、材料の量、反応の時間および温度、量の比率、およびその他といった、数字で表した範囲、量、値、および割合の全ては、たとえ用語「約(about)」が値、量、または範囲にはっきりと付いていない場合でも、単語「約」で前置きされているもとして読むことができる。したがって、相反することが示されていない限り、下記の明細書および添付の請求項に示された数字で表したパラメータは、本開示により得ようとされた所望の特性に依存して変化し得る近似である。少なくとも、請求項の対象範囲(scope)と等しい原則の適用を限定することを意図するものではなく、各数字で表したパラメータは、既報告の有効数字の数を考慮に入れて、また通常の丸め技術を提供することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0008】
本発明の広い対象範囲を示している数で表した範囲およびパラメータが近似であるにもかかわらず、特定の実施例で示されている数で表した値は、できる限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数で表した値も、それらの対応する試験測定値で見付かる標準偏差の結果として必ず生じるいくらかの誤差を本質的に包含する。その上、変化する対象範囲の数で表した範囲が本明細書中で示されているとき、列挙されている値を含めて、これらの値のあらゆる組み合わせが使用されてもよいことが企図されている。本明細書中で使用される用語「1つ(one)」「ある(a)」、または「ある(an)」は、他に示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むものと意図される。
【0009】
本明細書中に参照として組み込まれると言われている、全ての、または一部の特許、公報、またはその他の開示の材料のいずれも、組み込まれた材料が、本開示で示された現存の定義、記載、またはその他の開示の材料と矛盾しない範囲でのみ、本明細書中に組み込まれる。そのように、また、必要な範囲まで、本明細書中で明示的に示された開示は、参照により本明細書中に組み込まれるあらゆる矛盾する材料に取って代わる。本明細書中に参照として組み込まれると言われているが、本明細書中で示される現存する定義、記載、またはその他の開示の材料と矛盾するあらゆる材料、またはその一部は、組み込まれた材料と現存する開示の材料との間に矛盾を生じない範囲で組み込まれるだけであろう。
【0010】
本開示の実施形態は、ある領域を汚染除去する装置および方法を提供する。この方法は、殺菌源(germicidal source)から領域へと殺菌剤を放出することと、許容曝露限度(Permissible Exposure Limit)を超えない予め定められた濃度にこの領域中の殺菌剤濃度を制御することと、この領域を汚染除去するために、殺菌剤をこの領域中の微生物に接触させることとを含んでいる。
【0011】
領域は、衛生的な状態を維持することが望ましい、および/または必要とされる、微生物の成長または発生に供される当業者に既知のあらゆる部屋または設備の空気および/または表面であってもよい。例えば、本開示により企図される領域としては、オフィス、家、病院の設備、病院の患者の部屋、集中治療室、救急車、手術室、空港、ヘルスクラブの設備、レストラン、休憩室の設備、実験室、動物用設備(例えば、動物小屋、動物病院、または動物用シェルター)、およびこれらのいずれかの組み合わせを含む。領域は、取り囲まれていてもよいし、あるいは、ドアもしくは窓が少し開いているか、または部分的に少し開いている状況のように、幾分取り囲まれた状態(semi-enclosed)であってもよい。
【0012】
殺菌剤は、ガス、蒸気、ミスト、またはこれらのいずれかの組み合わせの形態で、殺菌源から領域へと放出されてもよい。本明細書中で使用される用語「ガス」は、分子が通常の条件、すなわち標準の温度および圧力の下、液体または固体に凝縮しない物の状態として定義される。用語「蒸気」は、通常の状態で、すなわち標準の温度および圧力で、液体または固体である物質の分子の空気分散として定義される。本明細書中で使用される用語「ミスト」は、液体の小さい液滴をさしている。本明細書中で用いられる用語「ミスト」は、エアロゾル、霧などを含めた、気相成分中に浮遊している液滴の全ての形態を含む包括的な表現として使用される。
【0013】
殺菌剤は、人間または動物が慢性的かつ安全に曝されることができ、空気中および/または領域の表面上の微生物を減らすか、排除するか、または弱らせるのに適している濃度で、領域中に放出され得る。汚染除去のために本開示により企図される微生物としては、ウイルス、植物性細菌(vegetative bacteria)、真菌、ミコバクテリア、細菌性胞子、およびこれらの組み合わせのような種々の感染性の病原体を含み、特には、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant enterococcus)(VRE)、ノロウイルス(Norovirus)、S. aureus、C. difficileなどを含む。
【0014】
殺菌剤は、例えば、過酸化水素またはオゾンであってもよい。過酸化水素が用いられるときには、殺菌源は、例えば液体過酸化水素溶液または固体過酸化物複合体であってもよい。液体過酸化水素溶液は、例えば、HO/H溶液であってもよい。ある実施形態において、過酸化水素溶液は、30重量%の水、ある実施形態では60重量%の水、あるその他の実施形態では90重量%以下の水を含有してもよい。ある実施形態において、過酸化水素溶液は、過酸化水素のガス、蒸気、および/またはミストの実質的に非水系の(すなわち、実質的に無水の)源を生成するために用いられてもよく、これは、例えば減圧下で、蒸発の間に水を除去するように処理される。したがって、水性過酸化水素複合体が使用されるある実施形態において、水性複合体は、全体が本明細書中に参照として組み込まれる米国特許第5,667,753号、同第5,674,450号、および同第5,785,934号に記述されているような処理を行っている間に実質的に非水系の過酸化水素殺菌剤に転化されてもよい。本明細書中で議論されるように、殺菌源は、殺菌剤の放出を促進するために加熱されてもよい。
【0015】
固体過酸化物複合体は、実質的に水を放出せずに、雰囲気中に過酸化物を放出する利点を有する。過酸化水素の実質的に非水系の(すなわち、実質的に無水の)源は、概ね、実質的に非水系の過酸化水素のガスまたは蒸気を放出する。ある実施形態において、実質的に非水系の過酸化水素蒸気は、実質的に非水系の過酸化水素複合体から直接生み出される。種々の固体過酸化物複合体が、本開示により企図されている。ある一つの実施形態においては、例えば、殺菌剤は、尿素過酸化水素複合体から放出される過酸化水素である。尿素過酸化水素複合体は、Fluka Chemical Corp., Ronkonkoma, N.Y.からタブレット形態で入手可能であり、Aldrich Chemical Co., Milwaukee, Wis.から粉末形態で入手可能である。この複合体は、過酸化尿素、過酸化水素尿素複合体、尿素化過酸化物(peroxide urea)、過酸化物尿素付加体(peroxide urea adduct)、尿素過酸化物付加体(urea peroxide adduct)、ペルカルバミド(percarbamide)、カルバミド過水和物(carbamide perhydrate)、および過酸化カルバミドとしても知られている。本明細書中で使用される用語「過酸化尿素」は、先述の用語の全てを包含する。種々のその他の過酸化水素複合体が、本開示において用いられてもよい。例えば、本開示により企図される好適な過酸化水素複合体としては、ポリ(ビニルアルコール)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルエーテル)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルケトン)−過酸化水素複合体、ポリ(アクリル酸)−過酸化水素複合体、ポリ(酢酸ビニル)−過酸化水素複合体、酢酸セルロース過酸化水素複合体、アルギン酸ナトリウム過酸化水素複合体、硫酸セルロース,ナトリウム塩,過酸化水素複合体(cellulose sulfate, sodium salt, hydrogen peroxide complex)、グリシン−過酸化水素複合体、ポリ(4−ビニルピリジン)過酸化水素複合体、ヒスタミン過酸化水素複合体、プロピオンアミド過酸化水素複合体(propionamide hydrogen peroxide complex)、1,3−ジメチル尿素過酸化水素複合体、ビウレット過酸化水素複合体、ポリアクリルアミド過酸化水素複合体、ナイロン6過酸化水素複合体、ナイロン6,6フィルム過酸化水素複合体、ポリエーテルポリウレタン過酸化水素複合体、および炭酸ルビジウム過酸化水素複合体を含む。固体過酸化物複合体が用いられるときには、いくらかの水が系に存在してもよい。いくらかの水は、副産物として水および酸素を形成する過酸化水素の分解に由来することがあり、この水と複合体とのいくらかの水素結合が生じる場合もある。
【0016】
本開示での使用のために好適なその他の過酸化水素溶液または複合体は、米国特許第5,667,753号、同第5,674,450号、および同第5,785,934号に記述されている複合体である。
【0017】
殺菌剤がオゾンであるときには、殺菌源は酸素である。ある実施形態において、酸素は、空気、純酸素源、またはこれらの組み合わせにより供給され得る。
【0018】
領域に放出されるときに、殺菌剤は、人間または動物が慢性的に曝されることができる任意の好適な濃度内に制御され得る。典型的には、殺菌剤の濃度は、領域中で、「低レベル」濃度、または「許容曝露限度」を超えない予め定められたレベルまで制御される。本明細書中で使用される「許容曝露限度(Permissible Exposure Limit)」(PEL)は、政府または国立の衛生公共事業機関により課された、空気中の物質の量または濃度に対する取締り限度(regulatory limits)をさしている。例えば、労働安全衛生局(「OSHA」)は、PELを、危険な物質に対する曝露の衛生的な影響から働き手を保護するように設定している。過酸化水素についOSHAにより設定されたPELは、1.0ppmである。同様に、OSHAにより設定されたオゾンのPELは、0.1ppmである。その他の国における取締り団体(Regulatory bodies)は、異なるPELを有するかも知れない。
【0019】
したがって、対象の適用のあるその他の実施形態において、殺菌剤は、課されたPEL限度以下である種々の予め定められた濃度で、領域中に制御可能に放出され得る。その他の実施形態において、予め定められた濃度は、許容曝露限度の2分の1以下である。さらなるその他の実施形態において、予め定められた濃度は、許容曝露限度の3分の1以下である。例えば、ある実施形態において、過酸化水素についてのOSHAのPELが1.0ppmであれば、殺菌剤は、1.0ppm以下、その他の実施形態では0.75ppm以下、さらなるその他の実施形態であれば0.5ppm以下、およびその他の実施形態であれば0.3ppm以下に制御可能に放出され得る。OSHAのPELが0.1ppmであるオゾンが殺菌剤である実施形態においては、オゾンは、0.1ppm以下、ある実施形態では0.05ppm以下に制御可能に放出される。ある実施形態では、これらの濃度レベルは、装置の標準作動の間(すなわち、従来「スタートアップ」として知られている時間と従来「シャットダウン」として知られている時間との間)、制御および/または維持される。
【0020】
殺菌剤は、慢性レベルでの濃度制御を可能にする種々の頻度で領域中に放出されてもよい。例えば、領域への殺菌剤の放出は、連続的、間欠的、周期的、またはこれらの組み合わせであってよいことが企図されている。連続的で制御された殺菌剤の放出は、汚染除去装置の手動であって、かつ実質的に監督されない作動(unsupervised operation)を可能にする。その他の実施形態において、殺菌剤の放出は、間欠的または周期的であってもよい。間欠的または周期的な殺菌剤の放出は、汚染除去の種々の段階、例えば、連続的な作動の後に予め定められた設定値に低レベル濃度の殺菌剤が到達した後でなされてもよいことが企図されている。本明細書でさらに詳細に記述されているように、領域中の低レベルの殺菌剤を予め定められた濃度に制御することは、種々の方法により、例えば、領域中にオプションでセンサーおよびモニターを設置することにより、実施され得る。この方法において、放出は、例えば、装置内の例えばヒーターの電力供給を止めることにより、および/または装置内のファンまたはブロワといった分配機構をシャットダウンすることにより、殺菌剤の放出を一時的に停止することを可能にするセンサー装置および/またはプログラム可能なモニタリングを介したフィードバック制御に基づき、ある期間にわたって中断されてもよい。間欠的または周期的な放出は、装置に組み込まれてもよい、本明細書中で議論される種々の設定値に基づいてもよい。加えて、動作周期は変化してもよい。例えば、連続的な曝露ではなく、むしろ放出は、日毎のある時間数、週毎の日数、または日のうちの回数が制限されてもよい。たとえば、放出は、一日8時間、あるいは、例えば休憩室において、人間の曝露を最小限にするために夜遅くだけ、生じてもよい。
【0021】
殺菌剤が、予め定められた低濃度レベル内で制御可能に放出され得るように、例えば、運転時間(オン・タイム、オフ・タイム、またはオン/オフ・タイム)、速度(時間単位当たりの放出される量)、殺菌剤濃度、および/または領域サイズまたは条件(シール/閉じられて、排気された領域)、ならびにこれらの組み合わせの選択を提供する種々の設定値が、装置に組み込まれてもよい。この方法では、オペレーターが、領域への殺菌剤の放出を制御する、装置に対する1つ以上の作動設定から選択することができる。種々の設定値は、作動条件を調節することを要求し得る領域内で、装置がより適切に作動されるのを可能にする。
【0022】
ある実施形態において、殺菌剤の濃度をPELよりも上と下とに制御する汚染除去方法が用いられてもよいことが企図されている。例えば、ある一つの実施形態において、領域を汚染除去する方法は、領域が標準作動にある間にPELを超えない予め定められた濃度に領域中の殺菌剤の濃度を制御することと、その後、急性の汚染除去のために、ある時間にわたって、PELを超えるレベルに領域中の殺菌剤の濃度を増加させることとを含む。したがって、装置は、予め定められた濃度で殺菌剤を領域へ放出するように構成されてもよく、標準作動においてはPELを超えないが、急性の汚染除去では短い時間にわたってPELを超えることもあるようになっていてもよい。本明細書中で使用される用語「標準作動(standard operation)」は、領域が人間および/または動物により占有され、意図され、設計された目的のために使用される時間として定義される。標準作動は、例えば、通常の営業時間の間であってもよい。用語「急性の汚染除去(acute decontamination)」は、短い時間にわたってPELを大きく超える濃度にある殺菌剤での汚染除去として定義される。例えば、殺菌剤として過酸化水素が用いられるときには、急性の汚染除去は、典型的には30〜1500ppmの範囲にわたって6〜8時間に至るレベルで行われる。領域が標準作動にない時間の間、領域は、PELを上回る濃度にある殺菌剤で汚染除去されてもよい。この方法では、領域を汚染除去することは、例えば、手順と手順との間、夜間、週末の間、休日閉じている間など、通常の営業時間外の期間、または領域が使用中ではないときに、より効率的になされてもよい。
【0023】
ここで図面を参照すると、図1は、領域150を汚染除去するための、加湿器の形態にある装置100の模式図である。装置100は、ハウジング120内に設置された殺菌源110と、ハウジング120に連絡している放出用機構130とを具備している。放出用機構130は、殺菌源110から殺菌剤140を、予め定められた濃度で領域150に放出するように構成されており、領域150中の予め定められた濃度の殺菌剤140がPELを超えないようになっている。
【0024】
ハウジング120は、殺菌源110が過酸化水素のときには殺菌源110を保持するための支持体122を具備してもよく、また、例えば、タンク、プレート、または受皿であってもよい。図示されているように、ハウジング120は、例えば、受皿、例えばアルミニウム受皿といった金属支持体を具備してもよい。殺菌剤140は、ガス発生装置、ミスト発生装置、加湿器(図示されている)、ヒーター、およびこれらのいずれかの組み合わせといった種々の機構により、ガス、蒸気、および/またはミストの形態で、殺菌源110から生み出されてもよい。全般的に、本明細書中で使用される「放出用機構(releasing mechanism)」は、殺菌源から領域へ、殺菌剤を移動させるか、または殺菌剤が移動するのを助ける、いかなる装置または機構であってもよい。例えば、放出用機構130は、殺菌剤が領域150へと拡散するのを可能にするガス透過性のスクリーンまたは布を具備してもよい。ある実施形態において、放出用機構130は、領域150全体に殺菌剤140を拡散させるのを助けるファンまたはブロワを取り込んでいてもよい。小さい領域の場合、あるいは装置100が以下に議論されるHVACシステムのような現存の空気循環システムに組み込まれているときには、ファンまたはブロワは必要ではないかも知れない。放出用機構130はまた、Bronkhorst High-Tech B.V., Netherlandsから商業的に入手可能なコントローラといった流動コントローラをも具備してもよい。本明細書中で使用される流動コントローラとは、その成分、幾何学形状(geometry)、または機械的作用により、領域150への殺菌剤140の放出を制御する装置または材料である。
【0025】
領域150中の低レベルの殺菌剤140を予め定められた濃度に制御することは、種々の方法により、例えば、領域150内に1つ以上のオプションのセンサー160を設置することにより、実施され得る。センサー160は、例えば、領域150中の殺菌剤140の濃度レベルのプログラム可能なモニタリングを提供し、また、例えば、領域150中の殺菌剤140の放出および濃度を制御するように構成された流動コントローラにフィードバック制御機構を提供するように、ハウジング120上に設置されてもよいし、あるいは、領域150中の遠隔に設けられてもよい。殺菌剤140の放出は、本明細書中に示されているように、連続的、間欠的、および/または周期的にすることができる。殺菌剤140の放出頻度は、設定値コントローラ170から選択された種々の設定値に基づいてもよい。設定値は、プログラム可能であっても、または手入力(manual)であってもよく、また、例えば、運転時間、殺菌剤濃度、領域サイズ、およびこれらのいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。用いられるセンサー160の数、およびそれらの向きは、領域150全体にわたる殺菌剤濃度の所望の均一性に依存して変更してもよい。装置100の配置、および領域150内での装置100の設置のような因子に依存して、放出用機構130は、マイクロプロセッサーにより制御され、複数の流動コントローラが独立して制御されるように構成されることができ、例えば、領域150の中のある特定の場所に向けられたか、あるいは設備の中のある特定の部屋に設けられた1つ以上の流動コントローラが、殺菌剤140のより優れた均一性を生み出すために、あるいはその代わりにセンサーのフィードバック制御に基づく、特定の選択された場所により高いまたはより低い濃度の殺菌剤を提供するために、異なる量の殺菌剤140を放射するように作動してもよいことが企図されている。
【0026】
図示されているように、装置100は、例えば、ハウジング120中の殺菌源110の量が使い尽くされたときを示すための、使用寿命インジケータ180といった、その他のオプションの特徴部を具備してもよい。使用寿命インジケータは、液体レベルセンサー、遠隔センサーの過酸化水素検出器であってもよい。
【0027】
図2は、領域190を汚染除去するための従来のHVACシステム185に接続されたオゾン発生装置の形態にある、装置180の模式図である。装置180は、ハウジング182と、ハウジング182に連絡している放出用機構184とを具備している。放出用機構184は、殺菌剤を領域190に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域190中の予め定められた濃度の殺菌剤が、PELを超えないようになっている。殺菌剤がオゾンであるときには、放出用機構184は、例えば、アーク放電、コロナ放電、または紫外線放射(UV)源(例えば、UVランプ)といった、オゾン発生装置186を具備してもよい。例えば、本明細書中で示された予め定められ、制御された濃度内にあるオゾンガスは、コロナ放電発生装置を用いて生み出されてもよい。ある一つの実施形態において、コロナ放電発生装置は、ガスが充填された封止されたガラス管を具備してもよい。このガラス管に一端で通された電気導体ロッドが、この管の全長に延びていてもよい。穿孔処理した金属グリッドがこの管を取り囲んでいてもよく、これにより、高電圧がロッドおよびグリッドを通って適用されると、コロナがガラス管とグリッドとの間に発生するようになる。コロナの中を通る酸素が、イオン化され、オゾンを生み出す。コロナにより生み出されたオゾンは、コロナ、および/またはオプションのファンもしくはブロワによって生み出されたイオン風(ion wind)によって、領域へと分散されてもよい。オゾンの濃度は、本明細書中で示されたPEL範囲以下の予め定められた濃度に制御するように、本明細書中で議論されたセンサーおよびプログラム可能なモニターを用いることにより制御されてもよい。本開示のある実施形態において、相対湿度レベルは、20%よりも上に維持され、あるいくつかの実施形態では、70%〜90%の範囲にわたるレベルに維持される。湿度は、加湿器、および湿度センサーにより制御されることができる。
【0028】
ある実施形態において、押込空気、および/または熱風が、現存の換気システム188を介して、現存のHVACシステム185により、装置180に供給されてもよい。したがって、ある実施形態において、所望により、別々の加熱システムおよび分配システムが、現存のHVACシステム185により提供されてもよい。装置180は、オゾンのような殺菌剤を、オゾンガスの形態で領域190へと放出するように構成されてもよい。
【0029】
本明細書中に示されているように、オゾンガスの濃度は、領域190中、低レベルで、オプションのセンサー192を使用することにより、予め定められた濃度に制御されてもよく、このセンサーは、領域190中のオゾンガスの放出を制御するためのフィードバック制御機構を提供するものである。オゾンガスの放出は、本明細書中で議論された方法で、設定値コントローラ194により、連続的、間欠的、および/または周期的にされてもよい。
【0030】
図3は、領域250を汚染除去するための、用が済んだら捨てる使い捨ての壁掛システムまたは再利用可能な壁掛システムの形態にある、装置200の模式図である。装置200は、ハウジング220内に設置された殺菌源210と、ハウジング220と連絡している放出用機構230とを具備している。放出用機構230は、殺菌源210から殺菌剤240を、領域250に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域250中の殺菌剤240の予め定められた濃度は、PELを超えないようになっている。
【0031】
ハウジング220は、殺菌源210が固体過酸化物複合体または液体過酸化水素溶液であるときには、殺菌源210を保持するための支持体222を具備してもよく、また、例えば、タンク、プレート、または受皿であってもよい。図示されているように、ハウジング220は、例えば、受皿、例えばアルミニウム受皿といった金属支持体、および、オプションで、殺菌源210を加熱して、ガス、蒸気、および/またはミストの形態で殺菌剤を放出させるためのヒーター290を具備してもよい。オプションのヒーター290が用いられるときには、温度計といった温度モニターが、支持体の温度をモニターし、制御するためにハウジング220に連絡していてもよい。殺菌源210は、支持体222上または支持体222内に直接設けられてもよい。その代わり、オプションとして、殺菌源が固体過酸化物複合体である場合には、固体過酸化物複合体の均一な加熱を提供するために、過酸化物複合体が、支持体222上に位置づけられた(図示されていない)2つまたはそれ以上のアルミニウムスクリーンの相互間に位置づけられることができる。過酸化物複合体は、DuPont de Nemours & Co., Wilmington, DEから商業的に入手可能な医療用グレードのTYVEK、またはKimberly-Clark Co., Dallas, TXから商業的に入手可能なSPUNGUARDといったガス透過性層でカバーされていてもよく、殺菌源210から放出される殺菌剤240が、放出用機構230により領域250へと拡散する前にそのカバーを通過し得るようになっている。
【0032】
本明細書中で示されているように、殺菌剤240の濃度は、本明細書中で議論されているように、殺菌剤240の放出を制御するフィードバック制御機構を提供するオプションのセンサー260の使用により、領域250中、低レベルで、予め定められた濃度に制御されてもよい。殺菌剤240の放出は、本明細書中で議論されている方法で、設定値コントローラ270により、連続的、間欠的、および/または周期的にされてもよい。図示されているように、装置200は、使用寿命インジケータ280といったその他のオプションの特徴部を有してもよい。
【0033】
図示されているように、装置200は、断熱性ハウジング(図示されていない)を含んでもよく、このハウジングから、標準の120ボルトの壁付きコンセントといった壁付きコンセントの接合ソケットに差し込まれることができる、標準の壁掛けされたプラグ224の端子部分226,228が延びてもよい。装置200を電力供給源の接合ソケットに差し込む行為は、殺菌源210を加熱して、殺菌剤240を放出するために、電力供給源を作動させる。ある実施形態において、装置の電圧は、装置200が電力供給源に差し込まれたときだけ適用される。所望により、装置200は、好適な位置合わせネジまたは取付け部品により適所に固定されることができる。本開示のその他の実施形態において、装置は、電池式であってもよい。装置200は、殺菌源210が使い尽くされると、例えば交換カートリッジの形態にある、支持体222が取り外され、交換され得るといったように、再利用可能であってもよいことが企図されている。その代わりに、装置200は、殺菌源210が尽きると、処分される使い捨ての装置であってもよい。
【0034】
図4は、単一の部屋といった領域350を汚染除去するための、従来のHVACシステム305に接続された部屋ユニットの形態にある装置300の模式図である。装置300は、ハウジング320内に設置された殺菌源310と、ハウジング320に連絡している放出用機構330とを具備している。放出用機構330は、殺菌剤340を殺菌源310から、領域350に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域350中の殺菌剤340の予め定められた濃度は、PELを超えないようになっている。
【0035】
ハウジング320は、固体過酸化物複合体または液体過酸化水素溶液であり得る殺菌源310を保持するための支持体322、殺菌源を加熱するための本明細書中で議論されているようなオプションのヒーター390、または本明細書中で示されている装置のようなオゾン発生用装置を具備してもよい。支持体322は、殺菌源310を包み込むためのガス透過性のエンクロージャを含んでもよい。ある実施形態において、押込空気および/または熱風が、現存の換気システムを介して、現存のHVACシステム305により、装置300に供給されてもよい。したがって、ある実施形態においては、所望により、別々の加熱システムおよび分配システムが、現存のHVACシステム305により提供されてもよい。図示されているように、ハウジング320は、ガス、蒸気、および/またはミストの形態で領域350に殺菌剤を放出するために、直接空気を流すための複数の制御可能な開口324を具備してもよい。したがって、放出用機構330は、例えば、開口324と、HVACシステム305の押込空気とを備えてもよい。
【0036】
本明細書中に示されているように、殺菌剤340の濃度は、オプションのセンサー360を使用することにより、領域350中、低レベルで、予め定められた濃度に制御されてもよく、このセンサーは、例えば、開口324を通る殺菌剤の放出、および領域350中の殺菌剤340の濃度を制御するように構成されている流動コントローラを介して、殺菌剤340の放出を制御するフィードバック制御機構を提供するものである。殺菌剤340の放出は、本明細書中で議論されている方法で、設定値コントローラ(図示されていない)により、連続的、間欠的、および/または周期的にされてもよい。
【0037】
図5は、1つ以上の領域450を汚染除去するための、従来のHVACシステム405に接続された複数の部屋ユニットの形態にある、1つ以上の装置400、500の模式図である。装置400は、ハウジング420内に設置された殺菌源410と、ハウジング420に連絡している放出用機構430とを具備してもよい。放出用機構430は、殺菌剤440を殺菌源410から、領域450に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域450中の殺菌剤440の予め定められた濃度は、PELを超えないようになっている。
【0038】
ハウジング420は、固体過酸化物複合体または液体過酸化水素溶液であり得る殺菌源410を保持するための支持体422、殺菌源を加熱するための本明細書中で議論されているようなオプションのヒーター490、または本明細書中で示されている装置のようなオゾン発生用装置を具備してもよい。図示されているように、放出用機構430は、ガス、蒸気、および/またはミストの形態で、領域450に殺菌剤440を放出し得る。所望により、加熱空気、および押込空気が、上述で議論されているように現存するHVACシステム405により供給されることができる。
【0039】
図示されているように、領域450の1つ以上の区域はまた、あるいは代替的に、領域450の第2の区域を汚染除去するために、HVACシステム405に接続されたオゾン発生装置500を備えていてもよい。装置500は、オゾンガスといった殺菌剤540を、領域450に予め定められた濃度で放出するように構成されており、領域450中の殺菌剤540の予め定められた濃度は、ここで示された方法で、PELを超えないようになっている。ある実施形態において、押込空気および/または熱風が、現存の換気システムを介して、現存のHVACシステム405により装置500に供給されてもよい。したがって、ある実施形態において、所望により、別々の加熱システムおよび分配システムが、現存のHVACシステム405により供給されてもよい。
【0040】
ある実施形態において、図示されているように、領域450は、1つ以上の区域を含んでいてもよく、そのうちの少なくとも1つの区域は、1つ以上の装置400、500を具備しており、装置400および装置500が、領域450中の殺菌剤のレベルを制御するように、独立して、または協働して働くようになっている。例えば、1つの区域は、加湿器のような、本明細書中で提供されるような過酸化水素といった殺菌剤のレベルを制御する装置400のみを含んでいてもよい。第2の区域は、オゾン発生装置のような、本明細書中で提供されるようなオゾンガスのレベルを制御する、装置400と同じでも、あるいは異なっていてもよい装置500のみを含んでいてもよい。第3の区域は、例えば、加湿器およびオゾン発生装置といった、同じでも、または異なっていてもよい2つ以上(more than one)の装置400、500を含んでいてもよい。第3の区域において、加湿器は、殺菌剤440のレベルを制御し、オゾン発生装置は、領域中の殺菌剤540のレベルを制御する。この方法において、複数の同じまたは異なる装置400、500は、領域の中のある区域で共存してもよく、この区域で相乗効果を生み出し得ることが企図されている。
【0041】
殺菌剤440、540の濃度は、オプションのセンサー460、470を使用することにより、領域450中、低レベルで、予め定められた濃度に制御されてもよく、これらセンサーは、それぞれ殺菌剤440、540の放出を制御するフィードバック制御機構を提供するものである。例えば、センサー460は、過酸化水素センサーであってもよく、センサー470は、オゾンセンサーであってもよい。本明細書中で議論されているように、用いられるセンサー460、470の数およびそれらの向きは、領域450の全体にわたる殺菌剤の濃度の所望の均一性に依存して変化し得る。領域450内の装置400の配置および設置のような因子に依存して、放出用機構430、530は、マイクロプロセッサーにより制御され、例えば、領域450の各部屋内の流動リストリクタが独立して制御され得るように構成されることができ、殺菌剤440、540がセンサーフィードバック制御に基づいて特定の選択された場所でより高いまたはより低い濃度で提供され得るようになることが企図されている。さらに、本明細書中で議論されているように、殺菌剤440、540の放出は、本明細書中で議論されている方法で、設定値コントローラ(図示されていない)により、本明細書中で示されているように、連続的、間欠的、および/または周期的にされてもよい。
【0042】
図6は、従来のHVACシステムに接続された複数の部屋ユニットの形態にある、本開示の領域650を汚染除去するための装置600の模式図である。装置600は、ハウジング620内に設置されている殺菌源610と、ハウジング620と連絡している放出用機構630とを具備していてもよい。放出用機構630は、殺菌源610から殺菌剤640を、領域650に予め定められた濃度で放出するように構成されてもよく、領域650中の殺菌剤640の予め定められた濃度が、PELを超えないようになっていてもよい。
【0043】
ハウジング620は、例えば、固体過酸化物複合体、液体過酸化水素溶液、またはオゾン発生用装置であり得る、本明細書中で議論されているような、殺菌源610を備えていてもよい。図示されているように、放出用機構630は、ガス、蒸気、および/またはミストの形態で、領域650に殺菌剤640を放出してもよい。所望により、加熱空気および押込空気が、上述で議論されているように、現存のHVACシステム605により供給されることができる。図示されているように、装置600は、領域650内に必ずしも設置されなくてもよいが、その代わりに、現存の換気システムと直列形に(in-line with)設置されてもよい。
【0044】
殺菌剤640の濃度は、殺菌剤640の放出を制御するフィードバック制御機構を提供するオプションのセンサー660を使用することにより、領域650中、本明細書で示されたPEL範囲内で、予め定められた濃度に制御されてもよい。本明細書中で議論されているように、用いられるセンサー660の数およびそれらの向きは、領域660の全体にわたる殺菌剤の濃度の所望の均一性に依存して変化してもよい。図示されているように、センサー660は、殺菌源の近くで、現存の換気システムと直列形に設置されていてもよく、殺菌剤濃度が、領域650の種々の区域に均一に分布されるようになっている。装置600の配置および設置のような因子に依存して、放出用機構630は、マイクロプロセッサーにより制御されることができ、また、例えば、流動リストリクタが、センサーフィードバック制御に基づいて、領域650により高いまたはより低い濃度で殺菌剤640を放出するよう、独立して制御され得るように構成されることができることが企図されている。さらに、本明細書中で議論されているように、殺菌剤640の放出は、本明細書中で議論されている方法で、設定値コントローラ670により、ここで示されているように連続的、間欠的、および/または周期的にされてもよい。図5および図6に示されている実施形態は、所望の殺菌濃度が全領域で達成されることを確実にするために、組み合わせられてもよい。
【0045】
下記の実施例で示されるように、低濃度の殺菌剤の領域への連続的で慢性的な流動を提供することにより、微生物が発生しやすい領域における微生物による汚染が、設備の休止時間の必要性を減らすか、または排除することなく、減らされるか、あるいは実質的に排除され得る。本開示の実施形態は、殺菌剤の濃度を、本明細書中で示されている慢性的な低濃度からPELを上回る濃度へと大幅に増加させ、ある時間にわたる領域の急性処理を提供するオプションを提供することにより、本汚染除去システムに関する柔軟性および効率を増加させることもできる。この場合、領域は、急性処理の持続時間の間、使えなくすることが必要であろう。その後、このシステムは再び、低い慢性的な濃度レベルで運転されることができる。
したがって、本開示の実施形態は、領域を使えなくする必要がない、低濃度の殺菌剤で、領域中の微生物を汚染除去する装置およびこれに関連する方法を提供する。したがって、病室といった領域は、汚染除去が進行中の間、連続的に、あるいはほぼ連続的に占有されることができる。
【0046】
本発明は、下記の実施例を参照することによりさらに説明される。下記の実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。特に示さない限り、全ての部(parts)は重量に基づいている。
【0047】
〔実施例〕
<実施例1>
ステンレス鋼表面上において生存可能なG. stearothermophilus胞子の減少を実証するために、公称レベル(nominal level)0.6ppmの尿素複合体から放出された過酸化水素蒸気を用いて、以下のように実験を行った。6x10胞子を含む接種材料10μLをステンレス鋼メス刃に接種した。その後、接種材料を刃表面上で乾燥させた。9つの接種された刃を、アクリルで構成された1ft(28.32L)の封止されたチャンバーに配置した。チャンバーにおいて、チャンバー中の過酸化物の濃度が制御されるようにする流動制限が設けられたガラス管に、尿素複合体を封じ込めた。3つの等しく接種された刃を、カバーが設けられたペトリ皿(petrie dish)の中に配置し、対照として役立つチャンバーの近くに配置した。3日間おいて、3つの刃をチャンバーから回収すると共に、1つの対照も回収した。これらの刃を標準の回復、プレーティング、およびインキュベーションの手順に供した。かかる手順から、生存可能な胞子数および対数減少値(log reduction)を決定することができた。曝露の間の、対数減少値、ならびに、平均、高、および低過酸化物濃度を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1についての結果は、公称濃度0.6ppmの過酸化水素を用いたときの、一日当たりのG. stearothermophilus胞子に対する、約0.5対数減少値を実証している。G. stearothermophilus胞子は、過酸化水素に対する最も高い既知の耐性を有している。S. aureusのような胞子を形成しない微生物だけでなく、胞子を形成するC. difficileにさえも、この方法の有効性はより高いものと予期される。
【0050】
<実施例2>
過酸化物濃度に対するG. stearothermophilus胞子の対数減少値の依存性を実証するために、実施例1で説明されたように準備したメス刃を公称H濃度0.35ppmに曝露した。この場合、接種された刃を連続的に曝露したので、結果として、曝露期間の間、平均過酸化物濃度においていくらかの変動が生じた。3日間、6日間、および9日間の曝露後の対数減少値、ならびに、曝露の間の平均、高、および低過酸化物濃度を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
上記に示された濃度は、全曝露時間にわたる平均値である。実証されているように、0.35ppm公称濃度においていくらかの変動はあるが、表中のデータは、濃度が高いほど、微生物の死滅速度が高くなることを示している。
【0053】
上述した実施形態に対して、その広い発明概念を逸脱しない限り、変更がなされ得ることが当業者により認識されるであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項により定義される発明の精神および対象範囲内にある改変を包含することが意図されると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、加湿器の形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。
【図2】図2は、オゾン発生装置の形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。
【図3】図3は、用が済んだら捨てる使い捨てのシステム、または再利用可能なシステムの形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。
【図4】図4は、従来のHVACシステムに接続された単一の部屋ユニットの形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。
【図5】図5は、従来のHVACシステムに接続された複数の部屋ユニットの形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。
【図6】図6は、従来のHVACシステムに接続された複数の部屋ユニットの形態にある本開示の領域を汚染除去するための装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
領域を汚染除去する方法において、
前記領域に殺菌源から殺菌剤を放出することと、
前記領域中の前記殺菌剤の濃度を、許容曝露限度を超えない予め定められた濃度に制御することと、
前記領域中の微生物を前記殺菌剤に接触させて、前記領域を汚染除去することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記放出することは、ガス、蒸気、ミスト、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される形態で生じる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記殺菌剤は、過酸化水素、およびオゾンからなる群より選択される、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記殺菌剤は、過酸化水素であり、
前記殺菌源は、過酸化水素溶液、および固体過酸化物複合体からなる群より選択される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記殺菌剤は、オゾンであり、
前記殺菌源は、酸素である、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記制御することは、連続的、間欠的、周期的、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される頻度で生じる、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
プログラム可能な、および手動で選択可能な設定値の少なくとも一方により、前記頻度を調節すること、
をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記領域は、部屋、オフィス、家、空港、病院の設備、病院の患者の部屋、集中治療室、救急車、手術室、ヘルスクラブの設備、レストラン、実験室、休憩室の設備、動物用設備、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記微生物は、ウイルス、植物性細菌、真菌、ミコバクテリア、細菌性胞子、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
領域を汚染除去する方法において、
領域に殺菌源から殺菌剤を放出することと、
前記領域中の前記殺菌剤の濃度を、標準作動中、許容曝露限度を超えない予め定められたレベルに制御することと、
ある時間にわたり、急性の汚染除去のために前記許容曝露限度を超えるレベルにまで、前記領域中の前記殺菌剤の前記濃度を増加させることと、
前記領域中の微生物を前記殺菌剤に接触させて、前記領域を汚染除去することと、
を含む、方法。
【請求項11】
領域を汚染除去する装置において、
放出用機構であって、殺菌源から殺菌剤を予め定められた濃度で前記領域に放出するように構成されており、前記領域中の殺菌剤の前記予め定められた濃度が、許容曝露限度を超えないようになっている、放出用機構、
を具備する、装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、
前記殺菌剤は、過酸化水素、およびオゾンからなる群より選択される、装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置において、
前記殺菌剤は、過酸化水素であり、
前記殺菌源は、過酸化水素溶液、および固体過酸化物複合体からなる群より選択される、装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置において、
前記殺菌剤は、オゾンであり、
前記殺菌源は、酸素である、装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置において、
前記殺菌剤は、ガス、蒸気、ミスト、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの形態で放出される、装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、
前記殺菌剤は、ガス発生装置、ミスト発生装置、加湿器、ヒーター、UV放射装置、アーク放電、およびコロナ放電、ならびにこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される機構により生み出される、装置。
【請求項17】
請求項11に記載の装置において、
前記装置の作動を、連続的、間欠的、周期的、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される頻度に調節するように構成されたコントローラ、
をさらに具備する、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、
前記コントローラは、プログラム可能な、および手動で選択可能な設定値のうちの少なくとも一方により前記頻度を調節するように構成されている、装置。
【請求項19】
請求項11に記載の装置において、
フィードバック制御を提供するように構成されたセンサー、
をさらに具備する、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、
前記センサーは、前記装置上に設けられるか、または前記領域中の遠隔に設けられる、装置。
【請求項21】
請求項11に記載の装置において、
前記領域は、部屋、オフィス、家、空港、病院の設備、病院の患者の部屋、集中治療室、救急車、手術室、ヘルスクラブの設備、レストラン、実験室、休憩室の設備、動物用設備、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される、装置。
【請求項22】
請求項11に記載の装置において、
前記微生物は、ウイルス、植物性細菌、真菌、ミコバクテリア、細菌性胞子、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される、装置。
【請求項23】
請求項11に記載の装置において、
前記領域中の前記殺菌剤の前記濃度を制御するように構成された流動コントローラ、
をさらに具備する、装置。
【請求項24】
請求項11に記載の装置を具備するHVACシステム。
【請求項25】
請求項11に記載の装置において、
ファン、またはブロワ、
をさらに具備する、装置。
【請求項26】
請求項11に記載の装置において、
使用寿命インジケータ、
をさらに具備する、装置。
【請求項27】
領域を汚染除去する装置において、
放出用機構であって、殺菌源から殺菌剤を予め定められた濃度で前記領域に放出するように構成されており、標準作動中、許容曝露限度を超えないようになっている、放出用機構、
を具備し、
前記放出用機構は、ある時間にわたり、急性の汚染除去のために前記許容曝露限度を超える濃度で、前記殺菌源から殺菌剤を放出するようにさらに構成されている、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−254832(P2009−254832A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−100646(P2009−100646)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】