説明

低分子化水溶性高分子、その製造方法及び使用方法

本発明は、低分子化水溶性高分子、その製造方法及び使用方法に関するものであり、エネルギー多消費的な方法である高温における重合法や原材料である連鎖移動剤や開始剤を多く使用する重合方法ではなく、酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応するという簡単な操作で経済的に容易に低分子化水溶性高分子とすることができ、また、この低分子化水溶性高分子を印刷物の耐水性や耐光性を高める定着剤として使用することができ、さらにこの低分子化水溶性高分子に水溶性塩及び/又は高分子添加剤を配合して水溶性高分子組成物とすることによりこの低分子化水溶性高分子の液粘性の調節をすることができ取り扱い性などを調節できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、低分子化水溶性高分子、その製造方法及び使用方法に関するものであり、詳しくは水溶性高分子を含有する水溶液あるいは粒状物に酸化剤水溶液を含有させた後、無撹拌化、酸化反応させ重合度を低下させることによって製造した低分子化水溶性高分子に関するものである。またインクジェット定着剤へ応用した前記低分子化水溶性高分子の使用方法に関するものである。
【背景技術】
水溶性高分子物質のうち、特に低重合度高分子は各種印刷用紙の表面コーテイング剤、セメント用添加剤、顔料分散剤、作動液、金属捕集剤あるいは洗剤などのビルダーとして応用され、今後の展開が期待されている。
従来、低重合度高分子は、ビニル化合物の重合あるいは重縮合反応によって合成されている。このうちビニル化合物の重合による方法は、連鎖移動剤や重合開始剤を多量に共存させる、高温で重合するなどの方法が採られていた。一方、重縮合系高分子は、重合度的には、低分子量のものしか生成しないが、イオン性の面からはカチオン性のものが生成しやすく、重合度やイオン性など自由度は選択しにくい。従って、応用面を考慮するとビニル化合物の重合物が最も便利である。
反応温度的に見ると、低重合度高分子は高温で重合するという処方が常識的であったし、重合の理論の一つにはかなっていた。高温で実施する根拠は、重合開始剤の分解速度が速いこと、連鎖移動反応が加速されることに基いている。その結果、重合度が低下する。高温度で重合すると、側鎖の活性基の変性などが起き、その後、目的と応用面に好ましくない場合もある。低重合度高分子を合成する場合、高温で重合するとエネルギー的も多消費であり、経済的ではない。また、連鎖移動剤を多量に添加する方法もコスト高になるだけでなく、生成する高分子に連鎖移動剤断片が結合して、高分子の物性にも微妙に影響し、また、純度にも影響する。
高分子を酸化剤で切断し、低分子化する方法は従来より行なわれてきたが、その場合、溶剤に溶解し溶液とした後、酸化剤溶液を添加し撹拌下、酸化による切断反応を行なってきた。例えば、ポリアクリルアミドの0.4%水溶液に対ポリマー0.5〜5%の過硫酸カリウムを添加して50℃で切断反応させる方法が、文献1[VyscomoleculSoedin、Ser.B、Vol126、No.5、p.340−344(1984)]に開示されている。
本発明の目的は、エネルギー多消費的な方法である高温における重合法や原材料である連鎖移動剤や開始剤を多く使用する重合方法ではなく、簡単な操作で安価に製造可能な低重合度高分子を開発することである。
【発明の開示】
上記課題を解決するため本発明者は鋭意研究した結果、以下のような発明に到達した。
すなわち本発明の請求項1の発明は、酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることによって得た低分子化水溶性高分子。
請求項2の発明は、前記酸化反応を実質的に無撹拌下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。
請求項3の発明は、前記水溶性高分子が、ビニル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。
請求項4の発明は、前記水溶性高分子が下記一般式(1)〜(4)で表されるカチオン性構造単位から選択される一種以上を含有するカチオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。

(式中、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)

(式中、R、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)

(式中、R、R10は水素又はメチル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)

(式中、R11は水素又はメチル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)
請求項5の発明は、前記水溶性高分子が、前記一般式(1)〜(4)で表されるカチオン性構造単位から選択される一種以上と下記一般式(5)で表されるアニオン性構造単位の一種以上とを含有する両性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。

(式中、R12は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、R13は水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表す。)
請求項6の発明は、前記水溶性高分子が、下記一般式(6)で表される非イオン性構造単位から選択される一種以上を含有する非イオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。

(式中、R14は水素又はメチル基、R15は水素又は低級アルキル基、QはNHCOR16、R16は水素又は低級アルキル基、COABR17、AはNHまたはO、R17は水素又は低級アルキル基をそれぞれ表す。)
請求項7の発明は、前記水溶性高分子として濃度80質量%以上の水溶性高分子の粉末を用いたことを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。
請求項8の発明は、酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を20〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を20〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子である。
請求項9の発明は、酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることを特徴とする低分子化水溶性高分子の製造方法である。
請求項10の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の低分子化水溶性高分子に、水溶性の塩および/または高分子添加剤を共存させたことを特徴とする水溶性高分子組成物である。
請求項11の発明は、前記の共存させる塩が、有機酸塩または有機塩基塩であることを特徴とする請求項10に記載の水溶性高分子組成物である。
請求項12の発明は、前記の共存させる高分子添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンまたは、前記一般式(1)〜(6)で表される構造単位のうち一種以上を含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項10に記載の水溶性高分子組成物である。
請求項13の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の低分子化水溶性高分子または請求項10から請求項12のいずれかに記載の水溶性高分子組成物をインクジェット印刷媒体に表面処理剤として塗布することを特徴とする低分子化水溶性高分子の使用方法である。
本発明の低分子化水溶性高分子は、水溶性高分子を含有する水溶液あるいは粒状物に酸化剤水溶液を含浸させた後、無撹拌下、酸化反応により重合度を低下させ、流動性の良い水溶液にすることで製造される。
具体的には、水溶性高分子を含有する粒状物として、例えば水溶性単量体の30〜60質量%水溶液を重合後、造粒し粒径0.5〜数ミリメートルとし、容器に投入し、これに例えば過酸化水素水溶液を含浸させ、外部を一定の温度に保ち、無撹拌下、数時間から数日間、酸化反応させ分子を切断する。反応後は、流動性の良い低重合度高分子水溶液として得ることができる。その他の水溶性高分子を含有する粒状物としては、高分子凝集剤などの粉末製品あるいはメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの水溶性の天然多糖類などを用いることができるが、ビニル系高分子に特に有効な方法である。
本発明で使用する酸化剤としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、ペルオクソ二硫酸カリウム、ペルオクソ二硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウあるいは過酸化水素などが挙げられるが、過酸化水素が好ましい。また、反応後、溶液中に残存する酸化剤を消去するため亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムあるいはチオ硫酸ナトリウム、蟻酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸などを添加し酸化反応を停止する。これら還元剤の添加量は、添加した酸化剤に対して5〜25モル%が目安である。また、還元剤による処理は、反応後、溶液pHを4〜7に調節後、還元剤を添加すると効果的である。
反応温度は、反応初期は撹拌ができないので無撹拌であるが、外部からの加熱温度によって反応速度が大きく影響されるので、速く行う場合は、外部からの加熱温度を高めに設定し、ゆっくり行なう場合は、外部からの加熱温度を低めに設定する。
水溶性高分子の組成によっては、酸化反応温度を高くして行なうと副反応を起こし好ましくない場合があるので注意する。外部からの加熱温度としては凡そ5〜60℃、好ましくは20〜50℃である。
また、酸化剤水溶液を混合させた水溶液中の水溶性高分子の反応濃度あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させた粒状物中の水溶性高分子の反応濃度としては撹拌が必要ないので高くすることが可能であり、10〜60質量%であり、好ましくは20〜60質量%、最も好ましくは25〜50質量%である。
本発明の酸化反応で低分子化するする水溶性高分子のうちカチオン性水溶性高分子は、前記一般式(1)〜(4)で表される構造単位から選択される一種以上を含有し、場合によって非イオン性構造単位を含有することもある。
一般式(1)で表される構造単位を含有する高分子としては、(メタ)アクリル系カチオン性高分子である。この高分子は、カチオン性単量体の重合、あるいは非イオン性単量体との共重合によって合成することができる。カチオン性単量体の例としてはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類である(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、あるいはこれら単量体のモノハロゲン化物による四級アンモニウム塩である。その例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物などがあげられる。これらカチオン性単量体は、二種以上を併用して用いることもできる。カチオン性単量体のモル%は、5〜100モル%であり、好ましくは10〜100モル%、最も好ましくは20〜100モル%である。
非イオン性単量体の例としては、アクリルアミドを使用することが最も好ましいが、アクリルアミド以外の非イオン性単量体を共重合しても良い。そのような例としてN,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。非イオン性単量体のモル%は、0〜95モル%であり、好ましくは0〜90モル%、最も好ましくは0〜80モル%である。
一般式(2)で表される構造単位を含有するカチオン性高分子としては、ジアルキルジ(メタ)アリルアンモニウム塩類と非イオン性単量体との共重合によって合成することができる。ジアルキルジ(メタ)アリルアンモニウム塩類の例としては、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウム塩化物、ジエチルジ(メタ)アリルアンモニウム塩化物、メチルベンジルジ(メタ)アリルアンモニウム塩化物などである。非イオン性単量体は、前記非イオン性単量体が使用できる。カチオン性単量体のモル%は、5〜100モル%であり、好ましくは10〜100モル%、最も好ましくは20〜100モル%である。非イオン性単量体のモル%は前記と同様である。
一般式(3)で表される構造単位を含有するカチオン性高分子は、ビニルアミジン系高分子である。この高分子は、N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルとの共重合物の酸による加水分解反応により合成することができる。単量体であるN−ビニルカルボン酸の例としては、N−ビニルホルムアミドやN−ビニルアセトアミドなどを挙げることができる。使用する酸は無機の強酸が好ましく、例えば塩酸、硝酸あるいはp−トルエンスルフォン酸などである。また共重合するビニル系ニトリル類としては、アクリロニトリルが最も一般的である。加水分解後の分子中アミジン基のモル%は、5〜100モル%であり、好ましくは10〜100モル%、最も好ましくは20〜100モル%である。非イオン性構造単位は、未加水分解のカルボン酸アミド基と未反応のニトリル基であり、0〜95モル%であり、好ましくは0〜90モル%、最も好ましくは0〜80モル%である。
一般式(4)で表される構造単位を含有するカチオン性高分子は、ビニルアミン系高分子である。この高分子は、N−ビニルカルボン酸アミド重合体の酸あるいはアルカリによる加水分解反応によって合成することができる。使用する酸は、無機の強酸が好ましく、例えば塩酸、硝酸あるいはp−トルエンスルフォン酸などである。また、アルカリは苛性アルカリが好ましく、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムなどである。単量体であるN−ビニルカルボン酸の例としては、N−ビニルホルムアミドやN−ビニルアセトアミドなどをあげることができる。加水分解後の分子中カチオン性基のモル%は、5〜100モル%であり、好ましくは10〜100モル%、最も好ましくは20〜100モル%である。非イオン性構造単位は、未加水分解のカルボン酸アミド基であり、0〜95モル%であり、好ましくは0〜90モル%、最も好ましくは0〜80モル%である。
また、本発明で使用する両性高分子は、前記一般式(1)〜(4)で表される構造単位から選択される一種以上を5〜100モル%、前記一般式(5)で表される構造単位から選択されるアニオン性基の一種以上を5〜60モル%及び非イオン性構造単位を0〜90モル%各々含有する。
これら両性高分子は、前記一般式(1)〜(4)で表される構造単位を有するカチオン性高分子の製造時、アニオン性単量体を同時に共重合することにより合成することができる。アニオン性単量体の例としては、スルフォン基、カルボキシル基を有する単量体であってもさしつかいなく、両方を併用しても良い。スルフォン基含有単量体の例は、ビニルスルフォン酸、ビニルベンゼンスルフォン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。これら両性高分子の分子中のカチオン性基のモル%としては、前記一般式(1)〜(4)で表される構造単位から選択される一種以上を5〜100モル%、アニオン性基のモル%は前記一般式(5)で表される構造単位を5〜60モル%及び非イオン性構造単位を0〜90モル%各々含有する。
本発明で使用するアニオン性高分子は、アニオン性単量体の重合、あるいは非イオン性単量体との共重合によって合成されるものである。アニオン性単量体の例としては、スルフォン基、カルボキシル基を有する単量体であってもさしつかいなく、両方を併用しても良い。スルフォン基含有単量体の例は、ビニルスルフォン酸、ビニルベンゼンスルフォン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。これらアニオン性高分子中のアニオン性基のモル%としては、前記一般式(5)で表される構造単位を2〜100モル%及び非イオン性構造単位を0〜98モル%各々含有する。
本発明で使用する非イオン性高分子は非イオン性単量体の単独重合、あるいは他の非イオン性単量体との共重合により合成される。単量体の例としては、アクリルアミドを使用することが最も好ましいが、アクリルアミド以外の非イオン性単量体を共重合しても良い。そのような例としてN,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。また、高分子が水溶性である限り、水不溶性の単量体であるスチレンやオクチルアクリレートなどの共重合体でも良い。
また、原料として使用する非イオン性、カチオン性あるいは両性高分子の分子量としては、1万〜2000万であり、好ましくは100万〜2000万などのような分子量のものが使用できる。本発明において、酸化剤水溶液を混合させた水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する水溶液の粘度は3000mPa・s以上の高粘度となるが、無撹拌下、酸化反応により水溶性高分子の重合度を低下させ、流動性の良い水溶液にすることができる。
また、本発明において、酸化剤水溶液を混合・含浸させた水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により水溶性高分子の重合度を低下させることによって、流動性の良い水溶液にすることができる。
酸化反応後の水溶性高分子の分子量は、1,000〜3,000,000であり、好ましくは1,000〜500,000である。
本発明で合成した低分子化水溶性高分子は、古紙や機械パルプの配合量が高い製紙原料の前処理剤として、インクジェット定着剤として、分散重合用の分散剤として、無機凝結剤の代替として汚泥脱水や排水処理への応用、エマルジョン製品の安定剤、洗剤用その他のビルダー、重合中あるいは重合後反応性基付与し、反応性低重合度高分子の原料として用い各種コーテイング剤などに応用が期待できる。
本発明の低分子化水溶性高分子をインクジェット定着剤として使用する場合、紙などの記録媒体表面に塗工する、あるいは、インク組成物に配合するなどの方法で使用することができる。その際、本発明の方法またはそれ以外の方法で製造されたインクジェット用定着剤を複数併用してもよい。
また塗工して用いる場合は必要に応じて公知のバインダー、顔料、染料、サイズ剤などと配合して用いることができ、塗工量は低分子化水溶性高分子として0.1〜10.0g/mであることが好ましく、0.2〜5.0g/mであることがより好ましい。配合した塗工液やインク組成物の粘性を必要以上に増大させないため、低分子化水溶性高分子の分子量は1000〜100万であり、好ましくは1000〜10万である。
インクジェット記録に用いられる水溶性染料は、通常アニオン性であるため、インクジェット用定着剤としては、一般的にカチオン性の水溶性高分子が使用される。そのため、低分子化の原料となる水溶性高分子の組成としてはポリビニルアミジン系、ポリジアリルアミン系、ポリビニルアミン系、ポリアミノ(メタ)アクリレート系といったカチオン性構造単位を含有しているものが性能上好ましい。
さらに本発明の低分子化水溶性高分子は、低分子化水溶性高分子の水溶液粘性を調節するため、あるいは耐光性を向上させるため、また塗布後紙の黄変を防止する目的で水溶性塩や高分子添加剤を添加した混合物を使用するとさらに効果的である。
このような目的で使用する水溶性塩は、特に限定せず、一種であっても複数を組み合わせてもよいが、低分子化水溶性高分子の濃度、組成、分子量などによって最適な塩の種類、濃度を選定して用いることが好ましい。水溶性塩を共存させる方法としては、塩として添加しても、酸と塩基を別々に添加してもよく、また不純物などとして予め系内に存在する酸または塩基を中和することによって塩を生成させてもよい。
また、水溶性塩を共存させる操作は上記酸化反応の前、反応中、反応後のいずれに行ってもよいが、酸化反応前または反応中に添加する場合は系のpHが酸化反応に適切なpH範囲を逸脱しないことが好ましい。
上記水溶性塩を構成する酸の例としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、n−酪酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸、シュウ酸、安息香酸、ピクリン酸、トリメチル安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、セリン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−四酢酸、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。
上記水溶性塩を構成する塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの無機塩基、アンモニア、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ホルムアミド、アミジン、グアニジン、アミノグアニジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノアリルアミン、ジアリルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2−エチルアミノエタノール、ジエチルエタノールアミン、2−アミノエチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、イソプロパノールアミン、エチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンポリアミン、2アミノチアゾール、イミダゾール、ピコリン、ピペコリン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、ピラジン、ピロリジン、モルホリンなどの有機塩基が挙げられる。
また、本発明の製造法による低分子化水溶性高分子水溶液をインクジェット用定着剤として紙の表面に塗工する際、多くの場合、水和力の強い無機塩が共存していると配合した塗工液の物性や乾燥性に悪影響をおよぼしやすい傾向が見られるため、低分子化水溶性高分子水溶液に共存させる塩としては有機酸塩または有機塩基塩がより好ましい。
本発明において低分子化水溶性高分子水溶液に共存させる高分子添加剤の組成は特に限定されず、一種であっても複数を組み合わせてもよいが、主成分である低分子化水溶性高分子の濃度、組成、分子量などによって最適な高分子添加剤の組成、分子量、濃度を選定して用いることが好ましい。
たとえば、主成分である低分子化水溶性高分子がイオン性高分子である場合は、それと同じイオン性ないしはノニオン性の高分子添加剤が好適に使用できる。高分子添加剤の組成は主成分である低分子化水溶性高分子と同じものでもよいが、その場合ある程度以上分子量が異なるものでなければ低分子化水溶性高分子水溶液の粘度を減少または増大させる効果が得られない。また、高分子添加剤が電解質である場合はその塩を用いてもよい。高分子添加剤を共存させる方法としては、水溶性塩を共存させる操作は上記酸化反応の前、反応中、反応後のいずれで添加してもよいが、酸化反応前または反応中に添加する場合は系のpHが酸化反応に適切なpH範囲を逸脱しないことが好ましい。
高分子添加剤の具体的な組成としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンまたは、前記一般式(1)〜(6)で表される構造単位のうち一種以上を含有する高分子化合物であれば好適な分子量のものが容易に得られるため好ましく、またそれ以外でも高分子添加剤の親疎水性を最適化するために、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレンといったノニオン性構造単位を含有していてもよい。
上記高分子添加剤の重量平均分子量は、1,000〜100万であり、好ましくは1,000〜50万である。100万より高いと混合物の粘性が増加し、インクジェット定着剤としての用途に支障をきたす。またこれら水溶性の塩及び高分子添加剤の低分子化水溶性高分子への配合割合としては、液全量に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
なお、%は質量%を示す。
【実施例1】
ビーカー中に35%過酸化水素水87g、蒸留水470.2gを入れ均一溶液とし、粉末状アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物/アクリルアミド共重合物(平均分子量約1000万)300gを投入し、おおよそ均一に分散した状態になるように撹拌すると、間もなくゲル状の塊となった。これをウォーターバス中で50℃に15日間保温すると均一な高分子水溶液となった。この未調整の高分子水溶液のうち171.4gを取り出して、水溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム1.9gを加えて未反応過酸化水素を消去し、蒸留水を添加してポリマーの濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。
この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPCにより測定したところ約4万であった。また、この高分子水溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ460mPa・sであった。結果を表1に示す。
[GPC測定条件]
機器構成:日本分光 HPLC(BIP−1,DG−3310),昭和電工SE−51,東ソー、TSKgel、GMPW、溶離液:0.5M酢酸+0.5M酢酸ナトリウム、流速:1.0ml/min.、分子量標準物質:ポリエチレングリコール。
【実施例2】
ビーカー中に35%過酸化水素水87g、蒸留水280.2gを入れ均一溶液とし、さらに粉末状ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(平均分子量約80万)300gを投入し、撹拌して均一な水溶液とした。水溶液中の水溶性高分子の濃度は45%、粘度は5,600mPa・sである。この水溶液をウォーターバス中で40℃、15日間保温すると明らかな液粘性の低下が観測された。この未調整の高分子水溶液のうち171.4gを取り出して、水溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム1.9gを加えて未反応過酸化水素を消去し、蒸留水を添加してポリマーの濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。
この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定したところ約4万であった。また、この高分子水溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ400mPa・sであった。結果を表1に示す。
【実施例3】
ビーカー中に35%過酸化水素水13.0g、蒸留水98.4gを入れ均一溶液とし、さらに粉末状ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(平均分子量約80万)60gを投入し、撹拌して粘凋な水溶液とした。これをウォーターバス中で50℃に15日間保温すると明らかな液粘性の低下が見られた。水溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム1.4gを加えて未反応過酸化水素を消去し、蒸留水を添加してポリマーの濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。
この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定したところは約20万、であった。結果を表1に示す。
【実施例4】
ビーカー中に35%過酸化水素水43.5g、蒸留水513.7gを入れ均一溶液とし、さらに粉末状ポリアミジン(平均分子量約300万)300gを投入し、凡そ均一に分散した状態になるように撹拌すると、間もなくゲル状の塊となり、これをウォーターバス中で50℃に5日間保温すると均一溶液となった。結果を表1に示す。
この未調整の高分子水溶液のうち171.4gを取り出して、溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム0.9gを加えて未反応過酸化水素を消去し、更に蒸留水を添加してポリマー濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPCにより測定したところ約3万であった。
また、この高分子水溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ196mPa・sであった。結果を表1に示す。
【実施例5】
ビーカー中に35%過酸化水素水4.3g、蒸留水107.1gを入れ均一溶液とし、さらに粉末状ポリアミジン(平均分子量約300万)60gを投入し、おおよそ均一に分散した状態になるように撹拌すると、間もなくゲル状の塊となり、これをウォーターバス中で50℃に5日間保温すると均一溶液となった。この溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム0.5gを加えて未反応過酸化水素を消去し、更に蒸留水を添加してポリマー濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPCにより測定したところ約15万であった。結果を表1に示す。
【実施例6】
ビーカー中に35%過酸化水素水17.4g、蒸留水93g、35%塩酸1gを入れ均一溶液とし、さらに粉末状ポリアクリルアミド(平均分子量約1400万)60gを投入し、おおよそ均一に分散した状態になるように撹拌すると、間もなくゲル状の塊となった。これをウォーターバス中で50℃に20日間保温すると均一な高分子水溶液となった。さらに水溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム1.9gを加えて未反応過酸化水素を消去し、蒸留水を添加してポリマーの濃度を30%に調整し、目的の高分子水溶液200gを得た。この水溶液中のポリマーの平均分子量をGPCにより測定したところ約5万であった。結果を表1に示す。

【実施例7】
実施例1の未調整高分子水溶液171.4gを取り出して、溶液pHを5.5に調節した後、粉末の亜硫酸水素ナトリウム1.9gを加えて未反応過酸化水素を消去し、トリメチルアミン塩酸塩2.5gを加えた後、蒸留水を加えてポリマー濃度を30%に調整して目的の高分子水溶液200gを得た。この溶液粘度を回転粘度計で測定したところ436mPa・sであり、トリメチルアミン塩酸塩未添加の実施例1で作成した高分子水溶液よりも低くなっていることが確認された。結果を表2に示す。
【実施例8〜15】
実施例7と同様な操作により実施例1〜6で合成した低分子化高分子に種々の添加剤を配合し、その場合の溶液粘度を測定した。結果を表2に示す。

【実施例16〜20】
[インクジェット記録用紙の作成]
微粉末シリカ(日本シリカ工業製HD−2)、ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−103)および定着剤として実施例1〜5で得られた高分子水溶液を、それぞれ固形分質量比で50:47:3の割合で純水中に投入、均一に混合し、固形分濃度23%の塗料液を作成し、それを市販のPPC用紙(ステキヒトサイズ度約20秒)にワイヤーバーによりポリマー固形分塗工量で約2g/m塗布したあと、回転式ドラムドライヤーにより100℃で2分間乾燥を行い、インクジェット記録用紙を作成した。
[インクジェット記録用紙の評価]
作成した塗工紙に、エプソン製インクジェットプリンターPM−750Cを用いてブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のベタ印刷を行い、以下の評価を行った。なお表中の数値は、印刷後の数値に対する減少率を表し、全て大きいほど効果が良好であることを表している。結果を表3に示す。
色濃度:濃度計(マクベスRD−918)による色濃度の測定値
耐水性:ベタ印字した塗工紙を3リットル/分の流水中に20分間浸漬した後の色濃度の変化率
耐光性:フェードメーター(東洋精機製作所 サンテストCPS+)により温度50℃照射強度500W/mで24時間照射後の色濃度変化率
(比較例1〜3)
定着剤としてポリアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド20%水溶液(従来の水溶液重合法、重量平均分子量35万)(比較例1)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(従来の水溶液重合法、重量平均分子量20万)(比較例2)、ポリアミジン水溶液(従来の水溶液重合法、重量平均分子量50万)(比較例3)を用いて実施例16〜20と同様にインクジェット記録用紙の作成と評価を行った。結果を表3に示す。
【実施例21〜29】
定着剤として実施例7〜15で得られた高分子水溶液を用いて、実施例16〜20と同様にインクジェット記録用紙の作成と評価を行った。なお表4中の数値は、印刷後の数値に対する減少率を表し、全て大きいほど効果が良好であることを表している。結果を表4に示す。
(比較例4〜6)
比較試験として、添加剤の配合していない実施例1〜2及び4の未調整の高分子水溶液を用いて、実施例16〜20と同様にインクジェット記録用紙の作成と評価を行った。結果を表4に示す。


表3および表4の結果から、本発明の低分子化水溶性高分子はインクジェット定着剤として、従来の水溶液重合によるものよりも特に耐光性において優れた性能を示すことがわかる。インクジェット記録紙の耐光性には定着剤として使用する水溶性高分子中の不純物が悪影響を及ぼすと言われており、本発明の製造法による水溶性高分子は望ましくない不純物が少ないため耐光性が向上したと考えられる。また、添加剤を加えた試料は、耐光性が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
エネルギー多消費的な方法である高温における重合法や原材料である連鎖移動剤や開始剤を多く使用する重合方法ではなく、酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応するという簡単な操作で経済的に容易に低分子化水溶性高分子とすることができ、また、この低分子化水溶性高分子を印刷物の耐水性や耐光性を高める定着剤として使用すことができ、さらにこの低分子化水溶性高分子に水溶性塩及び/又は高分子添加剤を配合して低分子化水溶性高分子組成物とすることにより、この低分子化水溶性高分子の液粘性の調節をすることができ取り扱い性などを調節できるので、その産業上の利用価値は甚だ大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることによって得た低分子化水溶性高分子。
【請求項2】
前記酸化反応を実質的に無撹拌下で行なうことを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、ビニル系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。
【請求項4】
前記水溶性高分子が下記一般式(1)〜(4)で表されるカチオン性構造単位から選択される一種以上を含有するカチオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。

(式中、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基を表わす、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)

(式中、R、Rは水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。)

(式中、R、R10は水素又はメチル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)

(式中、R11は水素又はメチル基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)
【請求項5】
前記水溶性高分子が、前記一般式(1)〜(4)で表されるカチオン性構造単位から選択される一種以上と下記一般式(5)で表されるアニオン性構造単位の一種以上とを含有する両性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。

(式中、R12は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、R13は水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表す。)
【請求項6】
前記水溶性高分子が、下一般式(6)で表される非イオン性構造単位から選択される一種以上を含有する非イオン性水溶性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。

(式中、R14は水素又はメチル基、R15は水素又は低級アルキル基、QはNHCOR16、R16は水素又は低級アルキル基、COABR17、AはNHまたはO、R17は水素又は低級アルキル基をそれぞれ表す。)
【請求項7】
前記水溶性高分子として濃度80質量%以上の水溶性高分子の粉末を用いたことを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。
【請求項8】
酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を20〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を20〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の低分子化水溶性高分子。
【請求項9】
酸化剤水溶液を混合させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する3000mPa・s以上の水溶液あるいは酸化剤水溶液を混合・含浸させ水溶性高分子を10〜60質量%の範囲で含有する粒状物を、酸化反応により前記水溶性高分子の重合度を低下させることを特徴とする低分子化水溶性高分子の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の低分子化水溶性高分子に、水溶性の塩および/または高分子添加剤を共存させたことを特徴とする水溶性高分子組成物。
【請求項11】
前記の共存させる塩が、有機酸塩または有機塩基塩であることを特徴とする請求項10に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項12】
前記の共存させる高分子添加剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンまたは、前記一般式(1)〜(6)で表される構造単位のうち一種以上を含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項10に記載の水溶性高分子組成物。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の低分子化水溶性高分子または請求項10から請求項12のいずれかに記載の水溶性高分子組成物をインクジェット印刷媒体に表面処理剤として塗布することを特徴とする低分子化水溶性高分子の使用方法。

【国際公開番号】WO2004/074331
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502767(P2005−502767)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001896
【国際出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】