説明

低分子量ゼラチン加水分解物の製造法及びゼラチン加水分解物組成物

本発明は、ゼラチン加水分解物の製造法、ゼラチン加水分解物、及びゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物を提供する。より具体的には、本発明は、低架橋性及び改良溶解性を有するゼラチン組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、参考文献として本明細書にその全体が引用される、2005年5月31日に出願されたUSSN 11/140,863号の優先権を請求する。本発明は、一般的に、ゼラチン加水分解物、ゼラチン加水分解物の製造法、及びゼラチン加水分解物を含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、高い第一アミン含量を有する低分子量ゼラチン加水分解物、ゼラチン加水分解物の製造法、及びゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ゼラチンは、材料、例えばブタ皮、ウシ皮膚又は皮及び動物の骨に含まれるコラーゲンの変性により製造される。その元のタンパク質であるコラーゲンと同様に、ゼラチンは、アミノ酸の独特のブレンドを含む特徴的な構造により定義される。天然コラーゲンは、約1050アミノ酸を含むポリペプチド鎖に基づく硬タンパク質である。これらのポリペプチド鎖の内の3つは、一緒になって三重螺旋を形成する。これらの三重螺旋の重ね合わせは、架橋により安定されるコラーゲンの原繊維をつくり、よって、3-次元ネットワーク構造を形成する。この特定の構造は、コラーゲンに不溶性を与える;次いで、ゼラチン又はゼラチン加水分解物として、部分的加水分解による可溶性形態に至る。コラーゲン及びゼラチンのアミノ酸含量は、約3分の1のグリシンであり、更に22%のプロリン及び4-ヒドロキシプロリンである;残りの45%は、17種の異なったアミノ酸を含む。ゼラチンは、特に高い酸性及び塩基性アミノ酸の含量を有する。酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)の内で、変動する量が、ゼラチン製造法において使用される処理条件により、グルタミン及びアスパラギンのようなアミド体で存在する。システインは完全に欠如している;イオウ-含有アミノ酸の内で、メチオニンが唯一存在する。
【0003】
家禽及び魚コラーゲンのデータは、多少難しいが、本発明は、家禽及び魚コラーゲンから得られたゼラチン及び/又はゼラチン加水分解物に同様に適用できる。
【0004】
ゼラチンは、その出発原料及び製造方法により、幅広い用途で利用することができる。これは、ゼラチンの物理化学的挙動は、一方では、そのアミノ酸含量と得られた空間構造との組み合わせにより、他方では、多数の条件、例えばpH、イオン強度及び他の分子との反応により決定されるからである。例えば、ゼラチンの異なった種類は、様々な用途、例えば食品、写真、化粧品及び医薬において利用される。
【0005】
医薬業において、ゼラチンは、硬カプセル剤及び軟カプセル剤の製造において特に使用される。ゼラチンカプセル剤は、胃の酸性内容物に曝露されると迅速に崩壊して、体内に薬物を放出するので、ゼラチンカプセル剤は、経口的に薬物を投与する簡便かつ有効な方法を提供する。ゼラチンカプセル剤は、薬物の投与において医薬的に簡便な方法を提供するが、ゼラチンカプセル剤は、架橋して知られている工程から起こる崩壊及び分解の遅れという問題を被ることがある、という危険性がある。架橋は、ゼラチンにおけるカルボニル基、カプセル剤中のカルボニル-含有充填成分、又はカルボニル基への充填成分の分解物が、ゼラチン中の第一アミン及び他の窒素含有化合物と反応して、架橋を形成するときに生じると考えられる。
【0006】
特に架橋は、長期間保存、及び極度の熱や湿気への曝露のときに、ゼラチンカプセルの性能にひどい結果を与え得る。カプセル製剤中のゼラチン架橋は、通常、薄膜と称される、非常に薄く、強硬かつ水-不溶性のフィルムの形成をもたらすことがある。薄膜は、カプセル剤の内容物の放出を制限し又は抑制する、弾性の、水-不溶性層とし働く。
【0007】
ゼラチンカプセル剤中の架橋を抑制するための、幅広く報告されている1つの方法は、カルボニルスキャベンジャーとして働く生成物に集中している。これは、カルボニル基、例えばアルデヒド基と、ゼラチンカプセルシェルとの相互作用を抑制して、ゼラチン架橋を抑制する。これらの方法は、一般的に、ゼラチンカプセルに含まれる医薬組成物に当該生成物を加えることを示唆する。例えば、ゼラチン硬カプセル中にカプセル化される製剤への、アミノ酸のグリシン及びクエン酸を組み合わせた添加は、硬カプセルの溶解プロファイルを改善したことを明らかにしている(3)。アミノ酸のグリシンのみの添加は、十分な結果を与えたことは明らかになっていない。しかしながら、ゼラチンカプセル剤における架橋を減少させるために必要とされる量での、グリシンのようなカルボニルスキャベンジャー、及びクエン酸のようなカルボン酸の添加は、コストが非常に高い。そのようなわけで、これらの生成物のゼラチンへの添加は、ゼラチンカプセル剤における架橋を減少させるための現実的な解決策ではない。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、ゼラチンの架橋を減少させる、実用的で、コスト効率的な手段を提供する。すなわち、本発明は、より高分子量のゼラチンとブレンドしたときに、ブレンドされたゼラチン生成物中の、遊離のグリシン、他のアミノ酸及び低分子ペプチドの量を増加させることにより、ゼラチンの架橋を減少させ、分解性を改善する、低分子量ゼラチンの加水分解物を包含する。有利なことに、本発明のゼラチン加水分解物及びブレンドされたゼラチン組成物は、クエン酸と混合される単離化合物として、グリシンのような生成物を添加することなく、架橋性を減少させたので、ゼラチンは依然と天然物として市販することができる。
【0009】
それゆえ、本発明のいくつかの局面の中で、本発明は、約100〜約2000 Da、好ましくは約1500 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり、約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2 μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、を有するゼラチン加水分解物を製造する方法である。この方法は、ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物をつくることを含む。次いで、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、典型的に、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させる。一般的に、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼのタンパク質分解性消化は、十分な時間進行し、ゼラチン加水分解物を形成できるような反応条件下で行われる。
【0010】
本発明の別の局面は、ゼラチン加水分解物の製造法を含む。この方法は、ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも3種のタンパク質分解酵素の群と接触させて、エンドエプチダーゼ消化ゼラチン生成物をつくることを含む。典型的には、3つのタンパク質分解酵素は、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)(例えば、コロラーゼ(登録商標)7089)、ブロメライン (例えば、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物)、及びパパイン (例えば、パパイン6000L) 由来のエンドペプチダーゼからなる。次いで、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも2種のタンパク質分解酵素の群と接触させる。一般的に、2種のタンパク質分解酵素は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(例えば、バリダーゼ(登録商標)FPII) 由来のエキソペプチダーゼ、及びアスペルギルス・ソーヤ (例えば、コロラーゼ(登録商標)LAP)由来のエキソペプチダーゼからなる。
【0011】
本発明の更なる局面は、ゼラチン加水分解物を提供する。当該ゼラチン加水分解物は、典型的には、約100〜約2000 Da、好ましくは約1500 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2 μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、を有するだろう。1つの実施態様では、ゼラチン加水分解物は、ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも3種のタンパク質分解酵素の群と接触させて、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物をつくることを含む方法により製造される。典型的には、3種のタンパク質分解酵素は、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)(例えば、コロラーゼ(登録商標)7089)、ブロメライン (例えば、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物)、及びパパイン (例えば、パパイン6000L) 由来のエンドペプチダーゼからなる。次いで、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも2種のタンパク質分解酵素の群と接触させる。一般的に、2種のタンパク質分解酵素は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(例えば、バリダーゼ(登録商標)FPII) 由来のエキソペプチダーゼ、及びアスペルギルス・ソーヤ (例えば、コロラーゼ(登録商標)LAP)由来のエキソペプチダーゼからなる。
【0012】
本発明の追加の局面は、ゼラチン組成物に関する。当該組成物は、ゼラチン加水分解物及びゼラチンを含む。典型的には、当該組成物は、ゼラチン加水分解物の約1重量%〜約20重量%、及びゼラチンの約80重量%〜約99重量%を含むだろう。
【0013】
本発明の他の対象及び特徴は、以下において、部分的に明らかであり、部分的に指摘されるだろう。
【0014】
好ましい実施態様の説明
本発明は、新規なゼラチン加水分解物、ゼラチン加水分解物の製造法、及びゼラチン加水分解物を含むゼラチン組成物を提供する。低分子量ゼラチン加水分解物、特に本発明のゼラチン加水分解物とゼラチンとのブレンドは、ブレンドされたゼラチン生成物中の遊離のグリシン、他のアミノ酸及び低分子ペプチドを増加させることにより、ゼラチンの架橋性を減少させ、そして分解性を改善すること、ことが発見された。有利なことに、本発明は、ゼラチンの元のアミノ酸組成を維持するという利益を有しながら、クエン酸のような非-ゼラチン由来の化合物を加える必要なく、ゼラチン架橋を減少させるコスト効率のよい手段を提供する。そういうわけで、本発明のゼラチン加水分解物組成物は、依然として天然物として市販することができる。
【0015】
I.ゼラチン加水分解物の製造法
本発明の1つの局面は、約100〜約2000 Da、好ましくは約1500 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2 μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、を有するゼラチン加水分解物を製造する方法を含む。当該方法は、ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物をつくることを含む。次いで、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、典型的には、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させる。一般的に、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼのタンパク質分解消化は、十分な時間進行し、ゼラチン加水分解物を形成できるような反応条件下で行われる。
【0016】
本発明の方法で使用されるゼラチン出発原料は、典型的には、いくつかの好適な原料から入手可能な、コラーゲン又はコラーゲン豊富な組織から得られる。コラーゲン豊富組織は、動物、例えば魚、家禽、ブタ又はウシ由来の皮膚及び骨を含む。一般的に、コラーゲン由来の2つの主な種類、すなわち製造法が異なるA型及びB型、のゼラチンがある。1つの実施態様では、ゼラチン出発原料は、A型ゼラチンである。A型は、7〜10.0の等張点を有し、当該分野で一般的に知られている方法により、専ら酸の予備処理でコラーゲンから得られる。代替的な実施態様では、ゼラチン出発原料はB型ゼラチンである。B型は、4.8〜5.8の等張点を有し、コラーゲンのアルカリ予備処理の結果であり、当該分野で一般的に知られている方法により製造される。
【0017】
別の代替的な実施態様では、ゼラチン出発原料は、A型及びB型の混合物である。A型及びB型ゼラチンの各々の量は、製造されたゼラチン加水分解物の性質に対して不利な効果を与えることなく、大きく変動させることができる。
【0018】
原則的に、A型及びB型ゼラチンのいずれかの1つは、酵素的に製造されたゼラチンにより完全に又は部分的に交換することができる。しかしながら、ゼラチンの酵素的製造法は、今日まで、広く使用されていない。
【0019】
その実施態様とは無関係に、ゼラチン出発原料は、通常、約80重量%〜約90重量%のタンパク質、約0.1重量%〜約2重量%の鉱物塩(廃分に対応)及び約10重量%〜約15重量%の水を含むだろう。
【0020】
ゼラチン出発原料の物理的性質は、ゼラチン加水分解物の所望の使用により変動することができ、変動するだろう、ことも企画される。ゼラチン出発原料は、典型的には、約50,000 Da〜約200,000 Daの平均分子量を有するだろう。特に好ましい実施態様では、ゼラチン出発原料は、約150,000 Da未満の平均分子量を有するだろう。
【0021】
1つの実施態様では、ゼラチン出発原料のブルーム強度は、約50〜約300であり、pHは、約3.8〜約7.5であり、等張点は、約4.7〜約9.0であり、粘度は、約15〜約75 mPであり、灰分は、約0.1〜約2.0%であろう。
【0022】
代替的実施態様では、ゼラチン出発原料が実質的にA型ゼラチンであるときに、ブルーム強度は、約50〜約300であり、pHは、約3.8〜約5.5であり、等張点は、約7.0〜約9.0であり、粘度は、約15〜約75 mPであり、灰分は、約0.1〜約2.0%であろう。
【0023】
代替的実施態様では、ゼラチン出発原料が実質的にB型ゼラチンであるときに、ブルーム強度は、約50〜約300であり、pHは、約5.0〜約7.5であり、等張点は、約4.7〜約5.4であり、粘度は、約20〜約75 mPであり、灰分は、約0.5〜約2.0%であろう。
【0024】
ゼラチン加水分解物が硬カプセル医薬品の製造に使用される1つの好ましい実施態様では、ゼラチン出発原料は、約200〜約300のブルーム強度、約40〜約60 mPの粘度、及び約4.5〜約6.5のpH.0を有するであろう。ゼラチン加水分解物が軟シェルカプセル医薬品の製造に使用される更に別の好ましい実施態様では、ゼラチン出発原料は、約125〜約200のブルーム強度、約25〜約45 mPの粘度、及び約4.5〜約6.5のpH.0を有するであろう。
【0025】
本発明の方法では、ゼラチン出発原料は、典型的には、膨潤として知られている方法により、水中で混合又は溶解され、約10重量%〜約60重量%のゼラチンを含む溶液を形成する。1つの好ましい実施態様では、溶液は、約10重量%〜約50重量%のゼラチンを有する。
【0026】
更なる好ましい実施態様では、溶液は、約20重量%〜約50重量%のゼラチンを有する。なお更に好ましい実施態様では、溶液は、約35重量%〜約40重量%のゼラチンを有する。
【0027】
様々な粒子サイズを有するゼラチンは、出発原料として本発明において利用することができる、ことが企画される。例えば、ゼラチン粒子サイズは、約0.1 mm〜約10 mmで変化することがある。1つの実施態様では、ゼラチン粒子サイズは、約0.1〜約0.3 mmの平均粒子サイズを有する細粒子でよい。別の実施態様では、ゼラチン粒子サイズは、約0.3〜約0.8 mmの平均粒子サイズを有する中程度粒子でよい。なお別の実施態様では、ゼラチン粒子サイズは、約0.8 mm超の平均粒子サイズを有する大粒子でよい。一般的に言えば、ゼラチン出発原料の粒子サイズは、ゼラチンが溶液中に溶解するために必要とされる時間量に影響を与えるだろう。膨潤法では、冷水中でその重量の10倍までを吸収するゼラチンの能力が利用される。細粒子サイズを有するゼラチンは、数分内に膨潤し、中程度の粒子サイズを有するゼラチンは、約8〜約12分内に膨潤し、大粒子サイズを有するゼラチンは、約1次時間内に膨潤する。典型的には、低濃度ゼラチン溶液、例えば、約10重量%〜約20重量%のゼラチンを有する溶液は、すべての粒子サイズを用いて調製することができる。高濃度溶液、すなわち、例えば、約30重量%〜約35重量%のゼラチンを有する溶液については、粗粒子は、処理されるときに凝集せ、ほとんど気泡を生じない傾向があるので、典型的には粗粒子が使用される。
【0028】
ゼラチンが膨潤法により溶液中に投入された後、典型的には、タンパク質分解酵素の添加前に、pH、温度及び溶液の酸化還元状態は、典型的には、加水分解反応を最適化するように、特に加水分解反応において利用されるシステイン-含有タンパク質分解酵素がほぼその最適活性レベルで機能するように、ゼラチンの製造法由来の、ゼラチン中に存在する残りの少量の過酸化物を処理するように調整される。ゼラチン溶液のpHは、約5〜約7に調整され、維持される。特に好ましい実施態様では、ゼラチン溶液のpHは、約6.0〜約6.5に調整され、維持される。このpHにおいて、以下に詳述するタンパク質分解酵素は、最適活性レベル近くにある。ゼラチン溶液のpHは、当該分野で一般的に知られている方法に従い調整し、監視することができる。例えば、ゼラチン溶液のpHを下げるには、酸、例えば塩酸が典型的に加えられる。代替的には、ゼラチン溶液のpHを上げるには、塩基、例えば水酸化ナトリムが典型的に加えられる。ゼラチン溶液の温度は、当該分野で公知の方法に従う加水分解反応中、好ましくは、約40℃〜約65℃に調整され、維持される。特に好ましい実施態様では、ゼラチン溶液の温度は、加水分解中、約50℃〜約60℃に調整され、維持される。一般的に、この範囲を超える温度は、タンパク質分解酵素を失活させることがあるが、一方、この範囲未満の温度は、タンパク質分解酵素の活性を遅くする傾向がある。加水分解反応において使用されるタンパク質分解酵素により、ゼラチン溶液の酸化還元状態は、典型的には、還元する側に、僅かに中性であるように調整され、維持される。高レベルの酸化剤は、加水分解反応において使用されるシステイン-含有タンパク質分解酵素のいくつかを失活させる傾向があるが、一方、低レベルの還元剤は、タンパク質分解酵素のいくつか、例えばパパインを、失活するまでは活性に維持するように働くことがある。
【0029】
一般的に、加水分解反応は、タンパク質分解酵素をゼラチン溶液に添加することにより行われる。数種類のタンパク質分解酵素は、本発明の方法での使用に好適である。好ましい実施態様では、タンパク質分解酵素は、約5〜約7のpHで及び約40℃〜約65℃の温度で、エンドペプチダーゼ又はエキソペプチダーゼ活性を有する食品用酵素であろう。特に好ましい実施態様では、タンパク質分解酵素は、約6〜約6.5のpHで及び約50℃〜約60℃の温度で、エンドペプチダーゼ又はエキソペプチダーゼ活性を有する食品用酵素であろう。
【0030】
1つの実施態様では、エンドペプチダーゼは、EC 3.4.21に属する、食品用セリンプロテイナーゼであろう。この実施態様の1つの代替では、セリンプロテイナーゼは、キモトリプシンプロテイナーゼである。この実施態様の更なる代替では、セリンプロテイナーゼは、スブチリシンプロテイナーゼである。別の実施態様では、エンドペプチダーゼは、EC 3.4.22に属する、食品用システインプロテイナーゼであろう。更に別の実施態様では、エンドペプチダーゼは、EC 3.4.23に属する、食品用アスパラギン酸プロテイナーゼであろう。別の実施態様では、エンドペプチダーゼは、EC 3.4.24に属する、食品用メタロプロテイナーゼであろう。本発明の方法で利用することができる食品用エンドペプチダーゼの具体的な非-限定的例は、バリダーゼ(登録商標)AFP、バリダーゼ(登録商標)FP 500、アルカリプロテアーゼ濃縮物、バリダーゼ(登録商標)TSP、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物、コロラーゼ(登録商標)7089、パパイン600L、及びパパイン濃縮物亜硫酸塩無しのバリダーゼ(登録商標)を含む。
【0031】
更なる実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.11に属する、食品用アミノペプチダーゼであろう。別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.13に属する、食品用ジペプチダーゼであろう。なお別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.14に属する、食品用ペプチジルジ又はトリペプチダーゼであろう。更に別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.15に属する、食品用ペプチジルジペプチダーゼであろう。別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.16に属する、食品用セリン-系カルボキシペプチダーゼであろう。更に別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.17に属する、食品用メタロカルボキシペプチダーゼであろう。別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.18に属する、食品用システイン-系カルボキシペプチダーゼであろう。別の実施態様では、エキソペプチダーゼは、EC 3.4.19に属する、食品用オメガペプチダーゼであろう。本発明の方法において利用することができる食品用エキソペプチダーゼの具体例は、バリダーゼ(登録商標)FP II又はコロラーゼLAP(登録商標)を含む。
【0032】
本発明の方法において利用することができる食品用加水分解酵素の別の例は、バリダーゼ(登録商標)FP濃縮物である。他の好適なタンパク質分解食品用酵素の例を、表Aに示す。
【0033】
【表1】

【0034】
典型的に、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼとの組み合わせは、加水分解反応を触媒するために使用されるだろう。タンパク質分解酵素は、好ましくは、酵素のプロテアーゼ活性を考慮し、ゼラチン出発原料におけるペプチド結合の開裂を最大限にするだろう酵素を選択することにより、選択される。好ましい実施態様では、選択的なエンドペプチダーゼ活性を有する酵素が先ず、ゼラチン溶液に添加され、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を形成する。次いで、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物は、エンドペプチダーゼ(複数)を失活することなく、選択的なエキソペプチダーゼ活性を有する酵素と接触される。ある実施態様では、エキソペプチダーゼ活性を有する酵素は、エンドペプチダーゼ活性を有する酵素の前に、又は当該酵素と同時に添加することができる。
【0035】
1つの好ましい実施態様では、エンドペプチダーゼは、コロラーゼ(登録商標)7089、バリダーゼ(登録商標)AFP、バリダーゼ(登録商標)FP 500、アルカリプロテアーゼ濃縮物、バリダーゼ(登録商標)TSP、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物、パパイン6000L、及びパパイン濃縮物亜硫酸塩無しのバリダーゼ(登録商標)からなる群より選ばれ;エキソペプチダーゼは、バリダーゼ(登録商標)FP II又はコロラーゼ(登録商標)LAPである。更に別の実施態様では、エンドペプチダーゼは、コロラーゼ(登録商標)7089、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物及びパパイン6000Lからなる群より選ばれ;エキソペプチダーゼは、バリダーゼ(登録商標)FP II及びコロラーゼ(登録商標)LAPからなる群より選ばれる。好ましい実施態様では、各タンパク質分解酵素は、以下の順:コロラーゼ(登録商標)7089、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物、パパイン6000L、バリダーゼ(登録商標)FPII及びコロラーゼ(登録商標)LAPに、ゼラチン出発原料に順次添加される。この実施態様の1つの代替では、各タンパク質分解酵素は、次のタンパク質分解酵素の添加前の約0.5〜約2時間の間、ゼラチン出発原料を消化する。
【0036】
加水分解反応に加えられるタンパク質分解酵素の量は、所望の低度のゼラチン加水分解及び加水分解反応の時間によって、変動することができ、また変動するだろう。一般的に、約5時間から約24時間までの時間続く加水分解反応のために、エンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素の約0.025%〜約0.15% (w/w)が加えられ、エキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素の約0.025%〜約0.15% (w/w)が加えられる。好ましい実施態様では、コロラーゼ(登録商標)7089の約0.05%〜約0.15% (w/w)、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物の約0.025%〜約0.075% (w/w)、パパイン6000Lの約0.05%〜約0.15% (w/w)、バリダーゼ(登録商標)FPIIの約0.025%〜約0.075% (w/w)、及びコロラーゼ(登録商標)LAPの約0.05%〜約0.15% (w/w)が、ゼラチン出発原料に加えられる。
【0037】
加水分解反応は、典型的には、最高約24時間、進行するだろう。典型的には、約24時間後に、ゼラチン加水分解物の量は、色彩及びにおいの点から、顕著に減少し始めるだろう。別の実施態様では、加水分解反応は、約1時間から約24時間まで進行するだろう。更に別の実施態様では、加水分解反応は、約3時間から約15時間まで進行するだろう。更により好ましい実施態様では、加水分解反応は、約5時間から約12時間まで進行するだろう。この時間内に、ゼラチン加水分解物の、高度に経済的な反応条件及び一定の量が容易に達成され得る。加水分解反応を終了するために、加水分解されたゼラチン溶液は、タンパク質分解酵素を失活させるために、約90℃まで加熱することができる。システインプロテアーゼを失活させる追加のステップを必要としてもよい。必要であるならば、一般的に、1000 ppmを越えないように、過酸化水素又は他の酸化剤の添加を行ってもよい。次いで、ゼラチン加水分解物は、当該分野で一般的に公知の任意の手段、例えば精密濾過法により、加水分解溶液から精製することができる。
【0038】
典型的には、本発明の方法における出発ゼラチン原料の加水分解度(DH)は、約13%超である。ある実施態様では、DHは、約10%〜約20%である。他の実施態様では、DHは、約20%〜約30%である。別の実施態様では、DHは、約30%〜約40%である。更に別の実施態様では、DHは、約40%〜約50%である。更に別の実施態様では、DHは、約50%〜約60%である。別の実施態様では、DHは、約60%〜約70%である。更に別の実施態様では、DHは、約70%〜約80%である。更に別の実施態様では、DHは、約80%〜約90%である。更に別の実施態様では、DHは、約90%超である。DHは、タンパク質分解酵素により加水分解されたゼラチン出発原料のペプチド結合の総数の割合である。DHは、当該分野で一般的に公知の方法、例えばAdler-Nissen法(19)によって、計算することができる。
【0039】
より低い平均分子量を有するゼラチン加水分解物は、架橋工程を避ける点でより有効である、ことが観察されている。結果として、ゼラチン調合物中の加水分解物の量は、減じることができ、これはコストを最適化する。
【0040】
II.ゼラチン加水分解物
本発明の更に別の局面は、本発明の方法により製造されるゼラチン加水分解物を包含する。一般的に言えば、ゼラチン加水分解物は、ゼラチン出発原料に比べて、グリシン、他のアミノ酸及び小ペプチドの量が増えた、異なった長さのペプチドの混合物を含むだろう。ゼラチン加水分解物は、ゼラチン出発原料に比べて、より低い平均分子量を有し、より高い第一アミン含量を有するだろう。
【0041】
ゼラチン加水分解物は、典型的には、少なくとも約100 Daの平均分子量を有するだろう。他の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、典型的には、約2000 Daを超えない平均分子量を有するだろう。ある実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約100 Da〜約2,000 Daの平均分子量を有するだろう。他の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約700 Da〜約1800 Daの平均分子量を有するだろう。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約700 Da〜約1500 Daの平均分子量を有するだろう。更に他の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約800 Da〜約1200 Daの平均分子量を有するだろう。
【0042】
平均分子量は、エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィー質量分析(ESI-LC/MS)により測定される、ゼラチン加水分解物の重量である。例えば、ゼラチン加水分解物は、約1200 Daの平均分子量を有するゼラチン加水分解物は、約75 Da〜8000 Daの分子量範囲を有すればよい。
【0043】
一般的に、ゼラチン加水分解物は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3μMol以上の第一アミンの平均第一アミン含量を有するだろう。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.5 x 10-3μMol以上の第一アミンの平均第一アミン含量を有するだろう。更に別の実施態様では、ゼラチン加水分解物のμg当たり約2.0 x 10-3μMol以上の第一アミンの平均第一アミン含量を有するだろう。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの第一アミンの平均第一アミン含量を有するだろう。ゼラチン加水分解物の第一アミン含量は、「実施例」に示すように、誘導体化及びその後のUV吸収(6〜8)により測定される。
【0044】
本発明のゼラチン加水分解物は、典型的には、最高約75アミノ酸長、好ましくは最高50アミノ酸長のポリペプチドを含む。1つの実施態様において、ゼラチン加水分解物を含む平均ポリペプチドは、約6〜約18アミノ酸長である。別の実施態様では、本発明のゼラチン加水分解物中に含まれる平均ポリペプチドは、約9〜約20アミノ酸長である。ポリペプチド鎖の長さは、サイズ排除クロマトグラフィーによる/高速液体クロマトグラフィー(SEC/HPLC)により間接的に決定することができる。
【0045】
1つの実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約100 Da〜約2,000 Daの平均分子量、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、及び最高約20アミノ酸の平均ポリペプチド長を有するだろう。更に別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約700 Da〜約1500 Daの平均分子量、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約2.0 x 10-3μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、及び最高約18アミノ酸の平均ポリペプチド長を有するだろう。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約800 Da〜約1200 Daの平均分子量、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約2.0 x 10-3μMolの第一アミンの平均第一アミン含量、及び約4〜約18アミノ酸の平均ポリペプチド長を有するだろう。
【0046】
III.ゼラチン組成物
本発明の別の局面は、低分子量のゼラチン加水分解物及びゼラチンを含む、ゼラチン組成物を包含する。驚くべきことに、「実施例」から明らかなように、低分子量のゼラチン加水分解物をより高分子量のゼラチンとブレンドすると、このことが、ブレンドされたゼラチン生成物中の、遊離のグリシン、他のアミノ酸及び小ペプチドの量を増加させることにより、ゼラチンの架橋を減少させ、分解性を改善する、ことを見出した。
【0047】
多数の異なったゼラチン加水分解物は、ゼラチン組成物における使用に好適である。1つ実施態様では、ゼラチン加水分解物は、酵素的に-消化された加水分解物であろう。非-限定的な例により、本発明のゼラチン加水分解物は、上で詳述するように、酵素的加水分解法により製造される。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、酸消化加水分解物であろう。例えば、酸加水分解物は、ゼラチン出発原料を、約110℃の温度で、約24時間、約6 N塩酸で消化することにより行うことができる。更に別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、塩基消化加水分解物であろう。非-限定的な例により、塩基加水分解物は、ゼラチン出発原料を、強塩基、例えば水酸化ナトリウムで消化することにより行うことができる。酸及び塩基加水分解は、典型的には、遊離のアミノ酸を有する加水分解物を生じるだろう。各実施態様(すなわち、酵素的、酸及び塩基加水分解)において、好適なゼラチン出発原料は、本発明の方法で使用されるゼラチン出発原料の構造的及び機能的性質を説明する、上記セクションIにおいて詳述される。
【0048】
典型的には、ゼラチン加水分解物は、低分子量を有するだろう。1つの実施態様では、平均分子量は、約400 Da〜約2000 Daであろう。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物は、約700 Da〜約1500 Daであろう。加えて、ゼラチン加水分解物は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの範囲の第一アミンの平均第一アミン含量も有するだろう。
【0049】
別の実施態様では、平均第一アミン含量は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約2.0 x 10-3μMolの範囲の第一アミンの平均第一アミン含量も有するだろう。
【0050】
更に別の実施態様では、平均第一アミン含量は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約2.0 x 10-3〜約4.0 x 10-3μMolの範囲の第一アミンの平均第一アミン含量も有してもよい。なお更に別の実施態様では、平均第一アミン含量は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約4.0 x 10-3〜約6.0 x 10-3μMolの範囲の第一アミンの平均第一アミン含量も有してもよい。更に別の実施態様では、平均第一アミン含量は、ゼラチン加水分解物のμg当たり約6.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの範囲の第一アミンの平均第一アミン含量も有してもよい。
【0051】
ゼラチン加水分解物は、一般的に、約4〜約50アミノ酸の平均ポリペプチド長も有するだろう。1つの実施態様では、ゼラチン加水分解物を含む平均ポリペプチドは、最高約30アミノ酸長である。別の実施態様では、ゼラチン加水分解物を含む平均ポリペプチドは、約9〜約20アミノ酸長である。平均分子量、平均第一アミン含量及び平均ポリペプチド鎖長は、セクションIIで詳述したように決定される。
【0052】
好ましい実施態様では、組成物中に使用されるゼラチン加水分解物は、セクションIIで詳述した本発明の加水分解物であろう。組成物中で使用することができる他の具体的なゼラチン加水分解物の例は、表Bに記載されている。前述のゼラチン加水分解物の混合物も使用することができる。
【0053】
【表2】

【0054】
ゼラチン加水分解物は、広範囲の物理的及び機能的性質を有する数種類のゼラチンとブレンドすることができる。特定のゼラチンの選択は、意図したゼラチン組成物の使用によって大幅に変動することができ、変動するだろう。一般的に言えば、実施態様又は意図した使用に関係なく、ゼラチンは、典型的に、数種類の好適な原料、例えば動物の皮膚及び骨、から入手できるコラーゲン又はコラーゲン豊富組織から得られる。1つの実施態様では、ゼラチンはA型ゼラチンである。別の実施態様では、ゼラチンはB型ゼラチンである。更に別の実施態様では、ゼラチンはA型及びB型ゼラチンの混合物である。更に、酵素的方法において調製されたゼラチンは、A型及び/又はB型ゼラチンの代わりに使用することができる。
【0055】
ゼラチンは、実施態様に関係なく、好ましくは、約80重量%〜約90重量%のタンパク質、約0.1重量%〜約2重量%の鉱物塩(灰含量)及び約10重量%〜15重量%の水を含むだろう。
【0056】
ゼラチンは、典型的には、高い平均分子量を有するだろう。1つの実施態様では、ゼラチンは、約200,000 Da超の平均分子量を有するだろう。別の実施態様では、ゼラチンは、約150,000 Da超の平均分子量を有するだろう。更に別の実施態様では、ゼラチンは、約100,000 Da〜約200,000 Daの平均分子量を有するだろう。
【0057】
1つの実施態様では、ゼラチンのブルーム強度は約50〜約300であり、pHは約3.8〜約7.5であり、等電点は約4.7〜約9.0であり、粘度は約15〜約75 mPであり、及び灰分は約0.1〜約2.0%であろう。
【0058】
代替的な実施態様では、ゼラチンが実質的にA型であるときには、ゼラチンのブルーム強度は約50〜約300であり、pHは約3.8〜約5.5であり、等電点は約7.0〜約10.0であり、粘度は約15〜約75 mPであり、及び灰分は約0.1〜約2.0%であろう。
【0059】
代替的な実施態様では、ゼラチンが実質的にB型であるときには、ゼラチンのブルーム強度は約50〜約300であり、pHは約5.0〜約7.5であり、等電点は約4.8〜約5.8であり、粘度は約20〜約75 mPであり、及び灰分は約0.5〜約2.0%であろう。
【0060】
ゼラチン組成物が硬カプセル医薬品の製造に使用される1つの好ましい実施態様では、ゼラチンは、約200〜約300のブルーム強度、約40〜約60 mPの粘度及び約4.5〜約6.5のpHを有するだろう。
【0061】
ゼラチン組成物が軟シェルカプセル医薬品の製造に使用される更に別の実施態様では、ゼラチンは、約125〜約200のブルーム強度、約25〜約45 mPの粘度及び約4.5〜約6.5のpHを有するだろう。
【0062】
本発明のゼラチン組成物は、一般的に、約1重量%〜約20重量%のゼラチン加水分解物、及び約80重量%〜約99重量%のゼラチンを含むだろう。別の実施態様では、ゼラチン組成物は、約1重量%〜約5重量%のゼラチン加水分解物、及び約95重量%〜約99重量%のゼラチンを含むだろう。更に別の実施態様では、ゼラチン組成物は、約5重量%〜約10重量%のゼラチン加水分解物、及び約90重量%〜約95重量%のゼラチンを含むだろう。別の実施態様では、ゼラチン組成物は、約10重量%〜約15重量%のゼラチン加水分解物、及び約85重量%〜約90重量%のゼラチンを含むだろう。更なる実施態様では、ゼラチン組成物は、約15重量%〜約20重量%のゼラチン加水分解物、及び約80重量%〜約85重量%のゼラチンを含むだろう。典型的な実施態様では、ゼラチン組成物は、約1:4〜約1:99 (w/w)のゼラチン加水分解物対ゼラチン比を含むだろう。
【0063】
好ましい実施態様では、ゼラチン組成物は、本発明のゼラチン加水分解物及びより高分子量の医薬用ゼラチンを含むだろう。1つの実施態様では、ゼラチン組成物は、約5重量%〜約10重量%のゼラチン加水分解物、及び約90重量%〜約95重量%の医薬用ゼラチンを含むだろう。別の実施態様では、ゼラチン組成物は、約10重量%〜約15重量%のゼラチン加水分解物、及び約85重量%〜約90重量%の医薬用ゼラチンを含むだろう。
【0064】
有利なことに、本発明及び本実施態様のゼラチン組成物は、典型的には、攪拌(vortex)硬化試験及び粘度試験により測定される、減少した架橋を有する。本実施態様のゼラチン組成物は、典型的には、約200〜約300秒の攪拌硬化時間を有する。別の実施態様では、攪拌硬化時間は、約300秒超である。攪拌硬化時間を決定する方法は、「実施例」に記載されている。本実施態様のゼラチン組成物はまた、典型的には、約10〜約15 cPの平均初期粘度を有し、約60℃の反応温度で約2時間、約0.5重量%未満の[2-(4-ジメチル-カルバモイル-ピリジノ)-エタン-1-スルホネート] (H. W. Sands CorporationのOB1207(登録商標)H. W. Sands Corporation)のゼラチン組成物への添加後に、ゼラチン組成物は、約15〜約50 cPの平均粘度を有する。粘度を測定する方法は、「実施例」に記載されている。
【0065】
1つの実施態様では、分離化合物としてのグリシンは、本発明のゼラチン組成物に添加することができる。グリシンは、約0.5重量%〜約5重量%の量でゼラチン組成物に添加することができる。より典型的な実施態様では、グリシンの量は、約1.5重量%〜約2.5重量%であろう。更に別の実施態様では、クエン酸は、ゼラチン組成物に添加することができる。クエン酸は、約0.5重量%〜約5重量%の量で添加することができる。より典型的な実施態様では、クエン酸は、約0.5重量%〜約1.5重量%の量でゼラチン組成物に添加することができる。
【0066】
本発明のゼラチン組成物は、例えば食品成分、化粧品成分及び写真成分を含む数種類の用途において採用することができる。ゼラチン組成物の減少した架橋傾向及びゼラチン組成物の改良された分解性のため、好ましい実施態様では、ゼラチン組成物は、医薬品の製造において使用される。
【0067】
1つの好ましい実施態様では、ゼラチン組成物は、硬ゼラチンカプセル剤の製造に使用される。上で詳述したように、ゼラチン組成物が硬カプセル医薬品の製造において使用されるときには、ゼラチンは、約200〜約300のブルーム強度、約40〜約60 mPの粘度、及び約4.5〜約6.5のpHを有するだろう。典型的な硬カプセル製剤は、約30重量%の本発明のゼラチン組成物、約65重量%の水、約5重量%の好適な色素を含むだろう、また必要ならば顔料を含むだろう。硬ゼラチンカプセル剤は、当該分野で一般的に知られている任意の方法に従って製造することができる。
【0068】
更に別の好ましい実施態様では、ゼラチン組成物は、軟カプセルゼラチンの製造において使用される。上で詳述したように、ゼラチン組成物が軟シェルカプセル医薬品の製造に使用されるとき、ゼラチンは、約125〜約200のブルーム強度、約25〜約45 mPの粘度、及び約4.5〜約6.5のpHを有するだろう。典型的な軟カプセルゼラチン製剤は、約40重量%〜約45重量%の本発明のゼラチン組成物、約15重量%〜約35重量%の可塑剤、及び約20重量%〜約45重量%の水を含むだろう。軟ゼラチンカプセル剤は、当該分野で一般的に知られている任意の方法に従って製造することができる。可塑剤の典型的な例は、グリセロール(通常、85重量%水溶液の形態で使用される)及びソルビトール(通常、70重量%水溶液の形態で使用される)及びそれらの混合物である。
【0069】
全ての刊行物、特許、特許出願及び本願に引用された他の参考文献は、あたかも、各々の文献、特許、特許出願又は他の参考文献が参考文献により引用されるように具体的にかつ個々に示される場合には、本明細書にはその全体が参照により引用される。
【0070】
定義
「両性」とは、性質がカチオン性及びアニオン性である得る物質、例えばタンパク質である。
【0071】
「ブルーム値」は、グラムで測定されるゲルの固さの程度である。ブルーム値は、特定の形態及び大きさの穿孔機が、6.7重量%のゼラチン溶液の表面に4 mmの深さで貫通するのに必要な力である。商業的に入手可能なゼラチンのブルーム値は、80〜280である。
【0072】
「骨チップ」は、小片化され、脱脂された乾燥骨であり、脱塩(浸漬を参照のこと)するとゼラチンが製造される。
【0073】
「架橋」とは、例えば、薄膜が医薬的軟カプセル剤上に形成されるメカニズムを称する。典型的には、架橋は、カプセル剤の分解性を減少させる。
【0074】
「Da」は、ダルトンの略である。
【0075】
「EC」は、酵素分類の略である。典型的には、酵素の数値の前に使用される。
【0076】
「エンドペプチダーゼ」は、典型的にはサブクラスEC 3.4である、オリゴペプチド又はポリペプチドの非終端ペプチド結合を加水分解するペプチドヒドロラーゼに属し、任意のサブクラスEC 3.4.21-99の酵素を含む、酵素である。
【0077】
「エキソペプチダーゼ」は、オリゴペプチド又はポリペプチドの末端アミノ基又はカルボキシル基に隣接するペプチド結合の加水分解を触媒する、サブクラスEC 3.4内のペプチドヒドロラーゼの群の酵素である。当該群は、典型的には、サブクラス3.4.11-3.4.19の酵素を包含する。
【0078】
「食品用酵素」は、典型的には、遺伝的に改変されていない生物体であり、生物体、例えばヒトにより消費されるときに安全である、酵素である。典型的には、酵素及び酵素が得られる生成物は、適用可能なFDAガイドラインに従って製造される。
【0079】
「硬カプセル剤」は、色素を添加した又は添加しない純水なゼラチンからつくられる様々な大きさの中空カプセル剤である。それらは、上部及び下部を含み;一旦充填が完了すると結合される。
【0080】
「インスタントゼラチン」は、冷水中で膨潤することができる粉末ゼラチンである。
【0081】
「マイクロゲル」は、300,000 Da超の分子量を有するゼラチンであると考えられる。
【0082】
「硬タンパク質」は、体内で支持機能を提供するタンパク質である。それらは、水中で不溶性であり、繊維状構造を有する。これらのタンパク質は、例えば、髪及び爪内に生じるケラチン、支持及び結合組織、皮膚、骨及び軟骨組織内に生じるエラスチン及びコラーゲンを含む。
【0083】
「軟カプセル剤」は、活性成分/賦形剤の混合物で充填するためのゼラチンからつくられる弾力性カプセル剤である。それらは、異なった壁厚を有し、継ぎ目があったり又はなかったりしてつくられる。
【0084】
「分割線(split)」は、ゼラチン原料、すなわちウシの皮の結合組織の中間-層である。
【0085】
「三重ヘリックス」は、3つのタンパク質鎖からなるコラーゲンの基本的構造である。これらは、通常、多少異なったアミノ酸配列を有する。
【0086】
「A型ゼラチン」は、酸消化ゼラチンである。
【0087】
「B型ゼラチン」は、アルカリ(塩基)消化ゼラチンである。
【0088】
「LBSH型」は、ゼラチンのタンパク質分解的消化により製造される、本発明の牛-骨加水分解物である。
【0089】
「LHSH型」は、ゼラチンのタンパク質分解的消化により製造される、本発明の牛-皮加水分解物である。
【0090】
本発明の範囲を逸脱することなく、上記の化合物、生成物及び方法において様々な変更をすることができるので、上の説明及び以下の「実施例」に含まれる全ての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきでない。
【実施例】
【0091】
以下の実施例は、本発明を例証する。
【0092】
実施例1
本発明のゼラチン加水分解物は、以下の方法に従って製造することができる。1.0 kgの脱イオン化処理ゼラチンに1.94 kgの水を加えることにより、34重量%のゼラチンの溶液(B型牛-骨ゼラチン、ブルーム= 100)を製造した。ゼラチンを1時間水和させ、次いで、55℃の水浴に入れて溶解させた。完全に溶解した後直ちに、ゼラチン溶液のpHを水酸化ナトリウム水溶液で6.0〜6.5に調整した。当該ゼラチン溶液に、溶液中のゼラチン量で0.037% w/wの量で((約10重量%の水分を有する)CDG-Commercial Dry Gelatine、本方法における全ての添加はこの量に基づいた)、塩化カルシウムを加えた。アリコートをとり、溶液の酸化還元状態を試験するために5重量%に希釈した。過酸化物試験紙(EM Science)を用いて、過酸化物の量を手早く測定した。過酸化物が存在する場合には、フェルムコラーゼ(登録商標)1000F(Genencor International Inc.)を0.5 mlを追加した。各々添加後に、過酸化物測定を繰り返す前に、当該溶液を30分間反応させた。過酸化物濃度がゼロに近づくまで、フェルムコラーゼ(登録商標)1000Fの添加を繰り返した。
【0093】
コロラーゼ(登録商標)7089(AB Enzymes)を0.1% w/wの量で溶液に加えた。1-時間の反応時間のほぼ最後及び次の酵素の添加前に、試料を少し取り、分子量を分析した。この工程を酵素の添加の各々について繰り返した。1-時間の反応時間の後、0.05% w/wのエンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物(Enzyme Development Corp.)を加え、溶液を更に1時間反応させた。次いで、液体パパイン6000L(Valley Research)を0.1% w/wで加えた。1時間後、0.05% w/wのバリダーゼ(登録商標)FPII(Valley Research)をこの溶液に加え、更に1時間反応させた。最後の酵素の添加は、0.1% w/wのコロラーゼ(登録商標) LAP (AB Enzymes)であった。1時間後、溶液を90℃に加熱し、残りの機能性酵素を失活させた。場合により、パパイン6000Lが確実に失活するように、更に30〜40 ppmの過酸化水素を加えた。加熱失活後の酵素活性の証拠は見られなかった。加水分解中に用いた5種の酵素の詳細を記載する概要を表1に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
本実施例で得られたゼラチン加水分解物を、以下の実施例においてLHSH型加水分解物として使用した。平均分子量は、約1500 Daであると決定した。
【0096】
実施例2
以下の方法は、様々なゼラチン組成物の架橋中の減少度を定量するために使用した。対照実験では、10.0±0.1 gのゼラチンを250 mlのビーカーに加え、これを90.0±0.5 gの脱-イオン水に加えた。ビーカー上に時計皿を置き、30〜60分間膨潤させた。15〜30分間又はゼラチンの全てが溶解するまで、膨潤させたゼラチンを60±0.1℃の水浴に入れた。ゼラチン溶液に磁気攪拌子を入れ、磁気攪拌子を除いた後に、pHを、攪拌プレート上で、希NaOH又はH2SO4で7.00±0.05のpHに調整した。溶液を40±0.1℃の水浴に15〜60分間入れて、冷却した。4-刃ミキサーを備えたデジタル攪拌モーター(Heidolph Brinkman 2102)を750±10 RPMで攪拌するために使用した。直ちに、20±0.5 mlのpH 7のリン酸緩衝10%ホルマリン溶液(Fisher Scientific)を加えた。架橋ゼラチン溶液が4-刃ミキサーのシャフト上に落ちる時間である、攪拌硬化時間を(秒で)記録した。
【0097】
添加剤を含むゼラチン組成物を含む実験では、ゼラチンの割合を所望添加剤と置き換えた(例えば、10 %加水分解物添加試料は、9.0 gのゼラチン及び1.0 gの加水分解物を含んだ)。より長い攪拌硬化時間を示すゼラチンは、ホルムアルデヒドによって生じる架橋への傾向を減少させると考えられる。
【0098】
表2から明らかなように、攪拌硬化試験は、グリシンとクエン酸との組み合わせがゼラチン架橋の量を減少させることができる、という前の発見を確認する。より重要なことには、グリシンのみの添加は、この特定の牛-骨ゼラチン試料の攪拌硬化時間に与える劇的な効果を有する。クエン酸塩の添加は、架橋を減少させなかった。珍しいことに、1.5%のクエン酸塩の添加は、この特定の試料の架橋を促進した。これらの結果は、このモデル系でのアルデヒドスキャベンジャーとしてのグリシンの役割の位置を強めるために役立つことがある。クエン酸塩のみを含む試料の1つが直面する架橋に与える不利な効果は、容易に説明できない。
【0099】
攪拌硬化試験は、本明細書では、ゼラチン組成物の架橋挙動に対する添加剤の影響の迅速なスクリーニングのための分析ツールとして使用される。
【0100】
【表4】

【0101】
図1は、LHSH型加水分解物、実施例1に類似の方法で得られる牛-皮ゼラチン加水分解物(MWが約1200 Da)及び、BH-3型ゼラチン加水分解物(MWが2200 Da)の、260 gのブルーム及び45 mPの6.67%粘度を有する典型的な牛-皮ゼラチンであるLH-1への添加効果を詳述する。用語6.67%粘度は、6.67% CDG水溶液を用いて観察される粘度の略として使用される。結果は、添加された2つの加水分解物についての攪拌硬化時間の増加を示す。しかしながら、この能力は、本発明の加水分解物、すなわちLHSH型、の添加においてより優れていた。いくつかの皮ゼラチンは、60 mP近くの6.67%粘度を有する牛-骨ゼラチンにおいて先に見られたにすぎない、非常に速い架橋を示した。
【0102】
表3は、分子量の異なった性質に関連して、いくつかの牛-皮ゼラチンの攪拌硬化時間を示す。マイクロゲルの増加した割合と、増加した架橋及び攪拌硬化時間の次の減少との可能性のある関係を除いて、何の結論も推論することができない。
【0103】
【表5】

【0104】
表4は、実施例1の10%のLBSH型加水分解物(平均MW=1500)、BB-4型ゼラチン加水分解物、及びグリシンの、240 gのブルーム及び64 mPの6.67%粘度を有する高粘性牛-骨ゼラチンへの添加の結果を示す。この高粘性抽出物は、非常に低い粘度を有する牛-皮ゼラチンと類似の架橋性を示す。このゼラチンは、3つの添加物全ての存在において架橋の顕著な減少を示した。しかしながら、LBSH型加水分解物は、BB-4型と比べて、攪拌硬化時間を約30 %、長くした。表4から明らかなように、グリシンは、最大の架橋の減少、及び攪拌硬化時間のその後の増加を示した。
【0105】
【表6】

【0106】
表5は、攪拌硬化試験により測定される、中程度の粘度の牛骨医薬用ゼラチン(ブルーム=244、6.67%粘度=47.0 TnP)に加える場合に、グリシンの性能に適合することが要求される、低分子量加水分解物の量を決定するための実験の結果を示す。LBSH型の4〜5 %は、2.5 %のグリシンの性能に適合することが必要であるが、BB-4型では5〜6 %が必要である、ことを結果は示す。同様に、10 % LBSH型及び11〜12% BB-4型は、5.0 %グリシンにより得られる架橋の減少に適合することが必要である。
【0107】
【表7】

【0108】
実施例3
ゼラチン硬化剤OB1207(登録商標)[2-(4-ジメチルカルバモイル-ピリジノ)-エタン-1-スルホン酸塩]をH. W. Sands Corporationから入手した。OB1207(登録商標)は、写真エマルジョン中のホルムアルデヒドに代わるものとして知られている。反応1は、OB1207(登録商標)とゼラチンとの架橋を記載している。OB1207(登録商標)との反応によるゼラチン鎖間のアミド及びエステル結合の形成は、極度の熱及び湿度への曝露に因り老化し及び/又はくたくたになっているゼラチン試料中に見られる架橋種をほとんどまねることができる。
【0109】
【化1】

【0110】
対照実験では、15.0±0.1 gのゼラチン(B型牛-骨ゼラチン、ブルーム=200)を250 mlフラスコに加えた。ここに、95.0±0.5 gの脱イオン水及び磁気攪拌子を加えた。ゼラチンをパラフィルムで覆い、30〜60分間膨潤させた。15〜20分間、又はゼラチンの全てが溶解するまで、フラスコを60±1.0℃の水浴に入れた。この溶液の粘度を、50 RPM及び60.0±0.1℃で、Brookfield DV-III及びレオメーターを用いて測定した。10.0 gの脱-イオン水に溶解した0.30 gのOB1207(登録商標)からなる溶液を攪拌プレート上で攪拌しながら、フラスコ中のゼラチンにゆっくりと加えた。フラスコを水浴に戻した。溶液の粘度を2時間後に測定した。加水分解物の添加を含む実験では、対照ゼラチンの割合を、所望の加水分解物に置き換えた(すなわち、10 %加水分解物を添加した試料は、13.5 gのゼラチン及び1.5 gの加水分解物を含んだ)。
【0111】
OB1207(登録商標)による架橋後の、中程度のブルーム及び粘性ゼラチン(LB-1)を含むゼラチン組成物を含む実験の結果を表6に示す。対照A LB-1は、添加された加水分解物又はOB1207(登録商標)はなかったが、一方、対照B LB-1は、加水分解物はなかったが、OB1207(登録商標)により架橋した。2時間後に、対照Bは、粘性が高すぎて、非常に高架橋度を示すBrookfieldレオメーターで読めなかった。加水分解物を含む試料は、増加した架橋度を示し、本発明の加水分解物であるLBSH型で得られた最も良い結果であり、特に10%レベルであった。
【0112】
【表8】

【0113】
実施例4
以下の方法は、ゼラチン加水分解物中の第一アミンの含量を測定するために使用した。第一アミンの量を測定するためのトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)の使用は、Alder-Nissenにより記載されている(6)。この方法の修正版は、ゼラチン加水分解物中の第一アミンの相対的量を測定するために使用した。反応2は、TNBSによる第一アミンの誘導体化を記載する。
【0114】
【化2】

【0115】
2.000±0.002 gの量のグリシン(Acros)を250 mlのビーカーに加え、1 %ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」,Aldrich)溶液(G-1と称されるグリシン溶液)を用いて200.00±0.01 gの重量にした。4.000±0.002 gの量のゼラチン加水分解物を250 mlのビーカーに加え、1 % SDS溶液(H-1と称される加水分解物溶液)を用いて100.00±0.01 gの重量にした。G-1及びH-1溶液を含むビーカーをホットプレート上に置き、80〜85℃の温度に加熱して、固体を完全に溶解、分散した。溶液を室温まで冷却し、次いで、1.00 gのG-1を250 mlのビーカーに加え、1 % SDS溶液(G-2)を用いて200.00±0.01 gの重量にした。G-2の50、37.5、25、12.5、5及び0.5 mlを各々加えることにより、50 ml容フラスコ中に、G-2の希釈(G-3標準)を作製した。フラスコを1 % SDS溶液を用いてマークまで合わせた。1.00 gのH-1を加え、1 % SDS溶液を用いて250 mlビーカー中で200.00±0.01 gの重量まで合わせることにより、H-2をつくるために、溶液H-1を希釈した。15 ml試験管に、2 mlの0.2125 Mリン酸緩衝液(8.20±0.02のpHになるまで、0.2125 M NaH2PO4を0.2125 M Na2HPO4に加えることにより作製される)、及び250 μLのG-3標準を加えた。これは、各々、0.1667、0.1250、0.0833、0.0417、0.0167及び0.0017μモル/試料の第一アミンを含む、6つの-標準グリシンキャリブレーションに対応する。同様に、15 ml試験管に250 μlの各H-2溶液(50 μgの試料に対応する)及び2 mlのリン酸緩衝液を加えた。対照試料は、250 μlの1% SDS溶液を、15 ml試験管に2 ml緩衝液と共に加えることにより作製した。170±2 μlの1 M TNBS溶液(Sigma)を50 ml溶液のフラスコに加え、脱-イオン水でマークまで合わせることにより、0.1%トリニトロベンゼン溶液を作製し、TNBSが光感受性であるので、アルミニウムフォイルで直ちに覆った。
【0116】
以下のステップは、写真用暗室で全て行った。試験管に、2 mlの1% TNBS溶液を加えた。次いで、試験管を5秒間、攪拌した(Fisher Scientific Vortex Genie 2)。次いで、試料を50.0±0.1℃の水浴に30分間入れた。次いで、試料を更に5秒間攪拌し、30分間、水浴中に再度入れた。試料を水浴から出し、4 mlの0.100 N HCl溶液を加え、TNBS反応を終了させた。溶液を5秒間攪拌し、10分間冷却した(より長い冷却は、SDSに因る濁度をもたらすことがある)。各試料の吸収を、水ブランクに対する340 nm (Beckman DU-7 Spectrophotometer)で読んだ。グリシン標準の吸収-型直線回帰計算を用いて、試料中の第一アミンの量を計算した。
【0117】
乳タンパク質のタンパク質分解を測定するための、第一アミンのo-フタルジアルデヒド(OPA)により誘導体化は、Church et alにより記載されている(7)。Nielsen et al (8) は、ゼラチンを含む他の食品タンパク質の加水分解度を測定するためにOPAを使用した。Nielsen法の利点は、イオウ-含有還元剤としてのβ-メルカプトエタノールに代わる、より環境的に優しいジチオスレイトール(DTT-クレランド試薬)である。本方法は、Nielson et alの研究をアレンジしている。反応3は、DTTの存在下、第一アミンとOPAとの反応を記載する。
【0118】
【化3】

【0119】
OPA試薬は、7.620 gの四ホウ化ナトリウム十二水塩(Fisher Scientific)及び200 mg SDSを200 ml容のフラスコに加えることにより調製した。約150 mlの量の脱イオン水を加え、完全に溶解するまで溶液を攪拌した。160 mgの量のOPA (Aldrich)を4 mlのエタノール (Fisher Scientific)の溶解し、脱イオン水を用いて容量フラスコに定量的に移した。176 mg量のDTT(Aldrich)を加え、溶液全体を脱イオン水で容積まで合わせた。50 mgのグリシンを500 ml容フラスコに加え、脱イオン水でマークまで満たすことにより、グリシン標準を作製した。100、75、50、25及び5 mlのグリシン溶液を100 ml容フラスコに加え、脱イオン水でマークまで満たすことにより希釈を作製し、5つのグリシン標準を作製した。0.500 gの加水分解物を100 ml容フラスコに加え、脱イオン水をマークまで加えることにより、ゼラチン加水分解物試料を調製した。別の100 ml容フラスコに、10 mlの加水分解物溶液を加え、脱イオン水でマークまで満たした。15 ml試験管に、3.0 mlのOPA試薬を加え、400 μLのグリシン標準(40、30、20、10及び2μgのグリシンを生じる)又はゼラチン加水分解物試料(200 μgの加水分解物)のいずれかを加えた。400 μLの水を用いる対照試料はまた、OPA単独の吸収を測定するために使用した。試料は、5秒間攪拌した。水ブランクに対する試料の添加後の正確に2分で、吸収を読んだ。2-分という要件からのズレは、著しく、吸収に影響を与える。次いで、2分間隔で各試料又は標準を試験した。グリシン標準の吸収-型直線回帰計算を用いて、試料中の第一アミンの量を計算した。
【0120】
表7及び8は、6つのゼラチン加水分解物、第一-抽出ゼラチン、グリシントリマー及びリシンモノマーにおける第一アミンのTNBS及びOPA誘導体化の結果を示す。加水分解物度は、第一アミンの量をHCl加水分解試料(110℃、24時間、6N HCl処理)中の第一アミン数により割ったものとして報告されている。TNBS及びOPA由来の分子量は、第一アミン量/試料量の逆である。TNBS及びOPA由来の分子量は、定性的であるにすぎないと考えられ、真髄は、試料の各々における第一アミンの測定量である。第一アミン由来の分子量は、リシン及びヒドロキシリシンの二重誘導体化を考慮せず、また、第二アミンがいずれかの誘導体化試薬により誘導体化されないという事実を考慮しない。しかしながら、これらの因子がすべてのゼラチン加水分解物について比較的一定であると仮定すると、第一アミン由来の分子量は、ゼラチン加水分解物の異なった種類の中で相対的加水分解度を比較する有用な手段である。本発明に従う、LBSH型及びLHSH型の牛-骨加水分解物及び牛-皮加水分解物は、他の酵素的消化加水分解物を超えて、第一アミンにおいて約30〜130%の平均増加を示した。SEC/HPLC法により測定される平均分子量も示す。リシン及びグリシントリマーの平均分子量は、公知の分子量値とはかけ離れている、ことに留意されたい。TNBS及びOPA由来の分子量はまた、HCl加水分解ゼラチン試料の予想された結果に非常に類似している、しかし、HPLC/SECデータは、この量のほとんど5倍である。これは、一般的にゼラチン加水分解物の分子量を測定するために使用される、低分子量SEC/HPLC法の相対的誤りを証明するものである。TNBS及びOPA由来の分子量は、ゼラチン向きとは考えられない。OPA誘導体化は、TNBSによる誘導体化と比べて、第一アミン含量を測定するより信頼性のある手段であることが判った。
【0121】
【表9】

【0122】
【表10】

【0123】
参考文献
本明細書に記載の参考文献に例示的な、手続き上の又は他の詳細な補足を提供する程度の、特許出願の先のテキスト又は以下の参考文献リストに記載の全ての参考文献は、各刊行物又は特許出願が参考文献により引用されるように特別にかつ個々に指示されるのと同程度に、参考文献により特別に引用される。
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19. "Enzymic Hydrolysis of Food Proteins"; Elsvier Applied Science Publishers Ltd. (1986), page 122.
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、攪拌硬化方法によって測定される、2種のゼラチン加水分解物である、BH-3型及びLHSH型の添加による、LH-1すなわち牛-皮ゼラチン、のホルムアルデヒドにより生じる架橋の減少を示す。BH-3型加水分解物は、本発明の低分子量の牛-皮加水分解物であり、LHSH型は本発明の牛-皮加水分解物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン加水分解物の製造法であって、当該ゼラチン加水分解物が、約100〜約2000 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3μMol〜約1.0 x 10-2μMolの第一アミンの平均第一アミン含量を有し、以下のステップ:
(a) ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させて、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を形成し;並びに
(b) 当該エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも1つのタンパク質分解酵素と接触させること、ここで、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼのタンパク質分解消化が、十分な時間進行し、ゼラチン加水分解物を形成するような反応条件下で行われる、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記タンパク質分解酵素が、約5〜約7のpH、かつ約40℃〜約65℃の温度で、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼ活性を有する食品用酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質分解酵素が、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)(例えば、コロラーゼ(登録商標)7089)、ブロメライン (例えば、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物)、パパイン (例えば、パパイン6000L) 由来のエンドペプチダーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(例えば、バリダーゼ(登録商標)FPII) 由来のエキソペプチダーゼ、及びアスペルギルス・ソーヤ (例えば、コロラーゼ(登録商標)LAP)由来のエキソペプチダーゼからなる群より選ばれる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
エンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素の約0.025%〜約0.15% (w/w)を、ゼラチン出発原料と接触させ、そしてエキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素の約0.025%〜約0.15% (w/w)を、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物と接触させる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ゼラチン加水分解物の製造法であって、以下のステップ:
(a) ゼラチン出発原料を、エンドペプチダーゼ活性を有する少なくとも3種のタンパク質分解酵素の群と接触させて、エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を形成し、ここで、当該3種のタンパク質分解酵素は、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)(例えば、コロラーゼ(登録商標)7089)、ブロメライン (例えば、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物)、及びパパイン (例えば、パパイン6000L) 由来のエンドペプチダーゼからなる;並びに
(b) エンドペプチダーゼ消化ゼラチン生成物を、エキソペプチダーゼ活性を有する少なくとも2種のタンパク質分解酵素の群と接触させ、ここで、当該2種のタンパク質分解酵素は、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(例えば、バリダーゼ(登録商標)FPII) 由来のエキソペプチダーゼ及びアスペルギルス・ソーヤ (例えば、コロラーゼ(登録商標)LAP)由来のエキソペプチダーゼからなる、
を含む、前記方法。
【請求項6】
各タンパク質分解酵素を、以下の順:バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)(例えば、コロラーゼ(登録商標)7089)、ブロメライン (例えば、エンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物)、パパイン (例えば、パパイン6000L) 由来のエンドペプチダーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)(例えば、バリダーゼ(登録商標)FPII) 由来のエキソペプチダーゼ、及びアスペルギルス・ソーヤ (例えば、コロラーゼ(登録商標)LAP)由来のエキソペプチダーゼでゼラチン出発原料に連続して加え;各タンパク質分解酵素は、次のタンパク質分解酵素の添加前の約0.5〜約2時間、ゼラチン出発原料を消化する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質分解消化が、約5〜約12時間進行する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ゼラチン出発原料が、約60℃及び6.67重量%のゼラチン濃度で、約150未満のブルーム強度及び約30 mP未満の粘度を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ゼラチン出発原料の約10%〜約50% (w/w)を含む水性溶液を、タンパク質分解酵素と接触させる、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ゼラチン出発原料が医薬用ゼラチンである、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
約0.05%〜約0.15% (w/w)のコロラーゼ(登録商標)7089、約0.025%〜約0.075% (w/w)のエンゼコ(登録商標)ブロメライン濃縮物、約0.05%〜約0.15% (w/w)のパパイン6000L、約0.025%〜約0.075% (w/w)のバリダーゼ(登録商標)FPII、及び約0.05%〜約0.15% (w/w)のコロラーゼ(登録商標)LAPを、ゼラチン出発原料に加える、請求項5〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質分解消化を、約5〜約7のpH及び約40℃〜約65℃の温度で行う、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が、約100〜約1500 Daの範囲にある、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が、約400〜約1200 Da、より好ましくは約700〜約1200 Daの範囲にある、請求項13記載の方法。
【請求項15】
約100〜約2000 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの第一アミンの平均第一アミン含量を有する、ゼラチン加水分解物。
【請求項16】
約13%超の加水分解度を有する、請求項15記載のゼラチン加水分解物。
【請求項17】
前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が、約100〜約1500 Daの範囲にある、請求項15又は16記載のゼラチン加水分解物。
【請求項18】
平均分子量が、約400〜約1200 Da、より好ましくは約700〜約1200 Daである、請求項17記載のゼラチン加水分解物。
【請求項19】
前記ゼラチン加水分解物中の平均ポリペプチドが、約4〜約18アミノ酸長である、請求項15〜18のいずれか1項記載のゼラチン加水分解物。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1項記載の方法によって製造されたゼラチン加水分解物。
【請求項21】
ゼラチン加水分解物の約1重量%〜約20重量%、及びゼラチンの約80重量%〜約99重量%を含む、ゼラチン組成物。
【請求項22】
ゼラチン加水分解物の約5重量%〜約10重量%、及びゼラチンの約90重量%〜約95重量%を含む、請求項21記載のゼラチン組成物。
【請求項23】
約1:4〜約1:99 (w/w)のゼラチン加水分解物対ゼラチンの比を含む、請求項21又は22記載のゼラチン組成物。
【請求項24】
前記ゼラチンが、約150,000 Da超の平均分子量を有する、請求項21〜23のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項25】
前記ゼラチンが、約100,000〜約150,000 Daの平均分子量を有する、請求項21〜23のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項26】
前記ゼラチンが医薬用ゼラチンである、請求項21〜25のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項27】
前記ゼラチンが、B型ゼラチンである、請求項21〜26のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項28】
前記ゼラチンが、A型ゼラチンである、請求項21〜26のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項29】
前記ゼラチン加水分解物が、約100〜約2000 Da、好ましくは100〜約1500 Da、より好ましくは400〜約1200 Da、更により好ましくは約700〜約1200 Daの平均分子量を有する、請求項21〜28のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項30】
前記ゼラチン加水分解物が、約100〜約1500 Daの平均分子量、及びゼラチン加水分解物のμg当たり約1.0 x 10-3〜約1.0 x 10-2μMolの第一アミンの平均第一アミン含量を有する、請求項29記載のゼラチン組成物。
【請求項31】
前記ゼラチン加水分解物が請求項1〜14のいずれか1項記載の方法において得られたタンパク質分解的に加水分解されたゼラチン、又は請求項15〜20のいずれか1項記載のゼラチン加水分解物である、請求項21〜28のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項32】
前記ゼラチン加水分解物が、酸性の加水分解ゼラチンである、請求項21〜30のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項33】
グリシンを更に含む、請求項21〜32のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項34】
グリシンの量が、約0.5重量%〜約5重量%である、請求項33記載のゼラチン組成物。
【請求項35】
クエン酸を更に含む、請求項33又は34記載のゼラチン組成物。
【請求項36】
クエン酸の量が、約0.5重量%〜約5重量%である、請求項35記載のゼラチン組成物。
【請求項37】
前記の添加されたグリシンの量が約1.5重量%〜約2.5重量%であり、かつ前記の添加されたクエン酸の量が約0.5重量%〜約1.5重量%である、請求項33記載のゼラチン組成物。
【請求項38】
約200〜約300秒の攪拌(vortex)硬化時間を有する、請求項21〜27のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項39】
約300秒超の攪拌硬化時間を有する、請求項21〜37のいずれか1項記載のゼラチン組成物。
【請求項40】
約10〜約15 cPの平均粘度を有し、そして、約0.5重量%の[2-(4-ジメチルカルバモイル-ピリジノ)-エタン-1-スルホン酸塩]の組成物への添加、及び約60℃の反応温度で約2時間、これを反応させた後、組成物が約15〜約50 cPの平均粘度を有する、請求項21〜30のいずれか1項記載のゼラチン組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−541743(P2008−541743A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514009(P2008−514009)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005179
【国際公開番号】WO2006/128685
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】