説明

低水溶解度の薬剤を含む製剤およびそれの使用方法

医薬組成物が、少なくとも一つのリン脂質および製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の担体中での溶液で低水溶解度の低分子薬剤、例えばN[4(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(ABT−869)および(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素(ABT−102)を有する薬剤−担体系を含む。その薬剤−担体系は、水相と混合すると、代表的には非ゲル化性で実質的に不透明の液体分散液を形成する。前記組成物は、処置を必要とする被験者に対して、好適な経路、例えば経口経路によって投与する上で好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年9月28日出願の米国暫定特許出願第60/848649号および2005年10月25日出願の米国暫定特許出願第60/729834号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、低水溶性薬剤、より詳細には低い水溶解度の低分子薬剤を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
低水溶解度の薬剤、例えば米国薬局方(USP)24(2000)、10頁により「実質的に不溶」または「不溶」と分類されているもの、すなわち約1部/水10000部未満(約100μg/mL未満)の溶解度を有するものは、経口投与用に製剤するのが困難であることが知られている。問題の中でも特に、経口経路によって投与した場合に、そのような薬剤の生物学的利用能は非常に低い傾向にある。
【0004】
低い経口生物学的利用能の問題に対しては、各種の溶液が、特に溶解性の低い薬剤について提案されている。例えば、レーシー(Lacy)らに対する米国特許第5645856号には、(a)オイル、(b)親水性界面活性剤および(c)オイルのイン・ビボ脂肪分解(そのような脂肪分解は、薬剤の生物学的利用能を促進する因子であると言われている)に対する親水性界面活性剤の阻害効果をかなり軽減する新油性界面活性剤を用いて疎水性薬剤を製剤することが提案されている。列挙されている多くの種類の親水性界面活性剤の中に、レシチン類などのリン脂質がある。
【0005】
チェンおよびパテル(Chen & Patel)に対する米国特許第6267985号は、特には(a)トリグリセリド、(b)少なくとも2つの界面活性剤(そのうちの一つは親水性である)を含む担体および(c)トリグリセリド、担体もしくは両方に溶解することができる治療薬を含む医薬組成物に関するものである。それには、所定の条件下で組成物を水溶液と混合した時に透明な水系分散液が得られる量でトリグリセリドおよび界面活性剤が存在しなければならないと記載されている。広範囲の個別の成分例のリストの中で、トリグリセリドとしての「トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル」および界面活性剤としてのホスファチジル−コリンを含むリン脂質が挙げられる。
【0006】
パテルおよびチェン(Patel & Chen)に対する米国特許第6451339号には、そのような組成物中でのトリグリセリドの存在の不利な点について言及されており、トリグリセリドを実質的に含まないが、同様に透明な水系分散液を与える他の点では同様の組成物が提案されている。パテルおよびチェン(Patel & Chen)に対する米国特許第6309663号には、親水性治療薬の生体吸収を促進することが謳われている界面活性剤の組み合わせを含む医薬組成物が提案されている。やはり、ホスファチジルコリンなどのリン脂質が、界面活性剤の例の中に挙げられている。
【0007】
ファナラ(Fanara)らに対する米国特許第6464987号には、活性物質、3〜55重量%のリン脂質、16〜72重量%の溶媒および4〜52重量%の脂肪酸を含む流体医薬組成物が提案されている。場合によってはフォーサル53MCT(商標名)(主として、ホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリド類を含む)とともにフォーサル(Phosal)50PG(商標名)(主として、ホスファチジルコリンおよびプロピレングリコールを含む)を含む組成物が具体的に例示されている。そのような組成物は、水相の存在下に瞬間的にゲル化する特性を有しており、活性物質の徐放が可能であると記載されている。
【0008】
レオナード(Leonard)らに対する米国特許第5538737号には、水溶性薬剤塩を乳濁液の水相に溶解しており、オイル相がオイルおよび乳化剤を含む油中水乳濁液が入ったカプセルが提案されている。言及されているオイルの中では中鎖トリグリセリド類があり、言及されている乳化剤の中ではホスファチジルコリンなどのリン脂質がある。ホスファチジルコリンおよび中鎖トリグリセリド類を含むフォーサル53MCT(商標名)を、その明細書中の各種実施例に従って使用することが報告されている。
【0009】
中鎖トリグリセリドと組み合わせたリン脂質も、局所投与用に水に基づく系で薬剤を製剤するための成分として提案されている。例えば、シュワルツ(Schwarz)らに対する米国特許出願公開第2004/0063794号を参照する。ワラニスおよびレオナード(Waranis & Leonard)に対する米国特許第5536729号には、リン脂質溶液を含む担体中に約0.1〜約50mg/mLの濃度でラパマイシンを含む経口製剤が提案されている。そこでは、リン脂質溶液としてフォーサル50PG(商標名)を用いて好ましい製剤を製造することが可能であると記載されている。言及されている代替のリン脂質溶液は、フォーサル53MCT(商標名)である。
【0010】
ハリソン(Harrison)らに対する米国特許第5559121号には、N,N−ジメチルアセトアミドおよびリン脂質溶液を含む担体中に約0.1〜約100mg/mLの濃度でラパマイシンを含む経口製剤が提案されている。より好ましい実施形態の例が、フォーサル50PG(商標名)を用いて製造されることが示されている。言及されている代替のリン脂質溶液は、フォーサル53MCT(商標名)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ラパマイシンは、高分子量(914.2g/mol)化合物であることから、低分子量を有する小分子薬剤によって生じる問題とは性質的および/または量的に異なった問題を生じる。
【0012】
低水溶解度の低分子薬剤の具体例には、多標的タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害薬である化合物N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(ABT−869)がある。375.4g/molの分子量を有するこの化合物は、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)の国際特許公開WO2004/113304において、例えば化合物をトリフルオロ酢酸塩として製造しているそれの実施例5で開示されている。その明細書では、対象化合物を多ラメラ小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することが可能であり、ホスファチジルコリン類などの各種リン脂質からリポソームを形成することが可能であると記載されている。
【0013】
水溶解度が低い低分子薬剤の別の例には、疼痛治療用の第一選択のTRPV1拮抗薬である化合物(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素)(ABT−102)がある。ABT−102は、分子量348.44g/molを有し、米国特許第7015233号に開示されている。
【0014】
製薬業界においては、経口投与に好適なABT−869およびABT−102などの低水溶解度の低分子薬剤の新規な液体製剤が、現在もなお必要とされている。詳細にはそして限定的ではなく、次に特徴、長所または効果、すなわち許容できる程度に高い薬剤濃度(例えば、少なくとも約50mg/mL);および経口投与した場合の許容される生物学的利用能(例えば、少なくとも約20%)のうちの少なくとも一つを有するそのような製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の担体中の溶液で低水溶解度の低分子薬剤を有する薬剤−担体系を含む医薬組成物が提供される。その薬剤−担体系は、水相と混合すると、非ゲル化性で実質的に不透明の液体分散液を形成する。
【0016】
被験者に対して低水溶解度の低分子薬剤を送達する方法であって、好適な投与経路により、
(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の担体中の溶液で前記薬剤を有する薬剤−担体系を含み、前記薬剤−担体系が水相と混合すると、非ゲル化性で実質的に不透明の液体分散液を形成する医薬組成物を投与する段階を有する方法も提供される。
【0017】
低水溶解度の低分子薬剤の例としては、下記式(I)のPTK阻害性化合物またはその化合物の治療上許容される塩があり得る。
【0018】
【化7】

式中、
Aは、インドリル、フェニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジルおよびチエニルからなる群から選択され;
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシ−アルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)アルキニル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシおよびLRからなる群から選択され、ただしR、RおよびRのうちの少なくとも二つはLR以外であり;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基はAに結合している端部が左となるように描かれており;
は、水素、アリール、シクロアルキル、複素環および1,3−ベンゾジオキソリルからなる群から選択され、前記1,3−ベンゾジオキソリルは独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルコキシ、アリールアルキル、アリールオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、第2の複素環基、複素環アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロ、−NRおよび(NR)アルキルからなる群から選択される1、2または3個の置換基で置換されていても良く;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルケニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニル、シクロアルキル、複素環、複素環アルキルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルおよび複素環からなる群から選択される。
【0019】
式(I)の化合物の1例には、N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素(ABT−869)がある。
【0020】
別の低水溶解度の低分子薬剤は、下記式(III)のTRPV1拮抗薬化合物またはそれの製薬上許容される塩もしくはプロドラッグであることができる。
【0021】
【化8】

式中、
−−−は非存在であるか単結合であり;
はNまたはCRであり;
はNまたはCRであり;
はN、NRまたはCRであり;
は結合、NまたはCRであり;
はNまたはCであり;
ただし、X、X、XおよびXのうちの少なくとも一つがNであり;
はO、NHまたはSであり;
は結合、NHまたはOであり;
Arは、ジヒドロ−1H−インデニル、1H−インデニル、テトラヒドロナフタレニル、またはジヒドロナフタレニルであり、Ar基は独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルから選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていても良く、ZおよびZはそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、ホルミル、アリールまたはアリールアルキルであり;
、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルであり;
およびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)アルキルカルボニル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキル、(NZ)スルホニル、(NZ)C(=NH)−、(NZ)C(=NCN)NH−または(NZ)C(=NH)NH−であり;
は水素またはアルキルであり;
はアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり;
8aは水素またはアルキルであり;
8bは非存在、水素、アルコキシ、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ハロゲンまたはヒドロキシであり;
ただし、XがNの場合はR8bは非存在である。
【0022】
式(III)の化合物の1例は、(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素)(ABT−102)である。
【0023】
さらには、(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系担体中の溶液で式(I)の化合物、例えばABT−869を有する薬剤−担体系を含む医薬組成物が提供される。
【0024】
さらには、(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系担体中の溶液で式(III)の化合物、例えばABT−102を有する薬剤−担体系を含む医薬組成物が提供される。
【0025】
さらには、被験者に対して式(I)の化合物、例えばABT−869を送達する方法であって、好適な投与経路で、(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系担体中の溶液で前記薬剤を有する薬剤−担体系を含む組成物を投与する段階を有する方法が提供される。
【0026】
さらには、被験者に対して式(III)の化合物、例えばABT−102を送達する方法であって、好適な投与経路で、(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系担体中の溶液で前記薬剤を有する薬剤−担体系を含む組成物を投与する段階を有する方法が提供される。
【0027】
さらには、PTK阻害薬が適応である被験者での状態の治療方法であって、前記被験者に対して、好適な投与経路で、実質的に非水系担体中の溶液で式(I)の化合物、例えばABT−869を有する液体の薬剤−担体系を含み、担体が(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む組成物を投与する段階を有する方法が提供される。
【0028】
さらには、TRPV1拮抗薬が適応である被験者での状態の治療方法であって、前記被験者に対して、好適な投与経路で、実質的に非水系担体中の溶液で式(III)の化合物、例えばABT−102を有する液体の薬剤−担体系を含み、担体が(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む組成物を投与する段階を有する方法が提供される。
【0029】
上記のいずれの方法によっても、好ましい投与経路は経口経路である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本明細書において「薬剤−担体系」は、薬剤が均一に分布している担体を包含するものである。本発明の組成物において、薬剤は担体中の溶液状態であり、一部の実施形態では、薬剤−担体系は実質的に組成物全体を構成する。他の実施形態では、薬剤−担体系は、経口投与に好適なカプセルシェル内に封入されている。そのような実施形態では、組成物は薬剤−担体系およびカプセルシェルを含む。
【0031】
担体および薬剤−担体系は代表的には液体であるが、一部の実施形態では、担体および/または薬剤−担体系は固体または半固体であることができる。例えば、薬剤担体系は、例を挙げると、担体の融点または流動点より高い温度で担体に薬剤を溶かし、得られた溶液を前記融点または流動点より低い温度まで冷却して固溶体を得ることで製造できるように、担体中の薬剤の固溶体を含むことができる。あるいはまたはさらに、前記担体は、本明細書に記載の薬剤の溶液が内部または上部で吸着されている固体基材を含むことができる。
【0032】
本発明の組成物は、薬剤送達を必要としている被験者に対して、非経口、経口、舌下、口腔、鼻腔内、肺、局所、経皮、皮内、眼球、耳、直腸、膣、胃内、滑液嚢内および動脈経路など(これらに限定されるものではない)の好適な投与経路によってその送達を行う上で有用であることができる。現在好ましい実施形態では、組成物は経口投与用に作られる。
【0033】
本明細書において「経口投与」および「経口投与される」という用語は、被験者に対する口からの投与、すなわち組成物を直接飲み込む投与を指す。「経口投与」は本明細書において、口内投与(例:舌下もしくは口腔投与)や組成物の直接飲み込みが関与しない歯周組織などの口内組織への局所投与と区別される。
【0034】
本発明で有用な薬剤は、小分子化合物、すなわち塩の場合の対イオンを除いて、約750g/mol以下、代表的には約500g/mol以下の分子量を有する化合物である。
【0035】
さらに、本発明で有用な薬剤は、水中で低溶解度の化合物であり、例えば約100μg/mL未満、ほとんどの場合で約30μg/mL未満の溶解度を有する化合物である。本発明は、水に実質的に不溶である薬剤、すなわち約10μg/mL未満の溶解度を有する薬剤に特に有利となり得る。多くの薬剤の水溶解度がpH依存性であることは明らかであろう。そのような薬剤の場合、本発明で対象となる溶解度は、生理的に関連のあるpH、例えば約1〜約8のpHである。そこで、各種実施形態において、薬剤は約1〜約8のpH範囲内の少なくとも一つの点で、約100μg/mL未満、例えば約30μg/mL未満または約10μg/mL未満の水溶解度を有する。例えばABT−869は、pH1でわずか約1.7μg/mL、pH5でさらに低い約27ng/mLの水溶解度を有しており、ABT−102はpH1.1でわずか約102ng/mL、pH6.8で約57.3ng/mLの溶解度を有する。
【0036】
標的が薬剤の全身送達、例えば経口送達を介して到達可能なものであるべき点を除き、その薬剤は、生化学的標的に対するものであり、治療用途を有することができる。好適な薬剤の例には、ABT−869、ABT−102、アセトヘキサミド、アルプラゾラム、ベンツチアジド、カルボコン、セレコキシブ、クロラムブシル、シロスタゾール、デキサメタゾン、ジゴキシン、エストラジオール、エトドラク、エキセメスタン、フェノフィブラート、フェンチコナゾール、フィナステライド、フロセミド、グリセオフルビン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、ヒドロコドン、インドメタシン、イソトレチノイン、ランソプラゾール、ラタノプロスト、レトロゾール、ロピナビル、ロラタジン、ロラゼパム、酢酸メゲストロール、メストラノール、メチルプレドニゾロン、モフェゾラク、ナブメトン、ニトラゼパム、オランザピン、オキサゼパム、パリカルシトール、プロゲステロン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、サルサラート、シンバスタチン、スピロノラクトン、スルファベンズアミド、スリンダク、テトラヒドロカンナビノール、サリドマイド、トレチノイン、バルデコキシブなど、ならびにそのような薬剤の組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
1実施形態において、前記薬剤はPTK阻害性化合物、例えば上記式(I)の化合物である。詳細には、その薬剤は、下記式(II)の化合物またはそれの治療上許容される塩であることができる。
【0038】
【化9】

式中、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキルおよびヒドロキシからなる群から選択され;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基は左端がRおよびRで置換された環に結合して描かれており;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
10およびR11は独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボキシ、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロおよび−NRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環および複素環アルキルからなる群から選択される。
【0039】
式(I)および(II)の化合物ならびにそのような化合物の製造方法が、上記で引用した国際特許公開番号WO2004/113304(参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。本明細書で使用される置換基についての用語は、その刊行物で定義されている通りである。
【0040】
例を挙げると、前記薬剤は、XがNHであり;R、R、RおよびRがそれぞれ水素であり;LがNHC(O)NHである式(II)の化合物であることができる。そのような化合物は、上記のR10およびR11によって指定されているN′−フェニル環上で置換されていても良いN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−フェニル尿素である。
【0041】
そのような化合物におけるR10およびR11は例えば、独立に水素、アルキルおよびハロからなる群から選択されるものであることができる。アルキル(詳細にはC1−3アルキル、例えばメチルまたはエチル)および/またはハロ(例:フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)置換は例えば、N′−フェニル環上の2位および/または5位でのものであるが、他の置換パターンも有用であることができる。ABT−869は、N′−フェニル環上に2−フルオロおよび5−メチル置換を有するそのような化合物の具体例である。
【0042】
1実施形態において、前記PTK阻害性化合物は多標的のものであり、すなわち少なくとも二つの種類のキナーゼ、例えばVEGF(血管内皮増殖因子)受容体チロシンキナーゼおよびPDGF(血小板由来内皮増殖因子)受容体チロシンキナーゼの阻害薬である。ABT−869は例えば、広範囲のVEGFおよびPDGF受容体チロシンキナーゼを阻害する。ABT−869などの多標的PTK阻害薬は、複数の機序によって腫瘍性疾患での腫瘍進行を妨害し得ると考えられている。
【0043】
上記の国際特許公開番号2004/113304に開示されている具体的な化合物を薬剤として有する本明細書で提供される組成物は、明瞭に本発明の実施形態として想到される。
【0044】
別の実施形態において、前記薬剤はTRPV1拮抗薬、例えば上記の式(III)の化合物である。詳細には、前記薬剤は下記式(IV)の化合物であることができる。
【0045】
【化10】

式(III)および(IV)の化合物ならびにそのような化合物の製造方法は、上記で引用した米国特許第7015233号(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている。ABT−102はTRPV1受容体を阻害し、それは膀胱機能障害および尿失禁などの泌尿器障害ならびに神経因性疼痛、炎症性疼痛および片頭痛の治療において有用である。
【0046】
低水溶解度の低分子薬剤は、処置を必要とする被験者に対して、組成物を適切な投与法で投与すると治療上有効となり得る量で組成物中に存在する。代表的には、適切な回数、例えば1日約1〜4回または状況によっては1日1回より少ない回数で投与することができる薬剤の単位用量は、対象の薬剤に応じて約0.01〜約1000mgである。例えば、薬剤がABT−869である場合、単位用量は約1〜約500mg、より代表的には約10〜約300mgまたは約20〜約200mgであることができる。組成物が薬剤−担体系を入れたカプセルシェルを含む場合、単位用量は単一カプセルまたは少なめの複数カプセルで送達可能であり、最も代表的には1〜2個のカプセルである。
【0047】
単位用量が大きくなるほど、中に入る溶液での薬剤濃度を比較的高くできる担体を選択することが望ましくなる。代表的には、薬剤−担体系中の薬剤の濃度は、少なくとも約10mg/mL、例えば約10〜約500mg/mLであるが、具体的な例において、それより低い濃度および高い濃度が許容されたり、達成可能なことがあり得る。例えば、薬剤がABT−869である場合、各種実施形態での薬剤濃度は、少なくとも約10mg/mL、例えば約10〜約400mg/mL、または少なくとも約50mg/mL、例えば約50〜約300mg/mL、または少なくとも約67mg/mL、例えば約67〜約250mg/mL、または少なくとも約100mg/mL、例えば約100〜約200mg/mLである。
【0048】
本発明の組成物において、薬剤は担体中の「溶液状態」である。これは、薬剤の実質的に全てが溶液状態にあること、すなわち例えば懸濁液の形態で分散しているか否かを問わず、固体(例:結晶)形態の薬剤が実質的に存在しないことを意味するものと理解すべきである。実際の問題としてはそれは、薬剤を通常は、担体中での溶解度の限度以下の濃度で製剤すべきであることを意味している。溶解度の限度が温度によって決まり得ることから、好適な濃度の選択は、組成物が通常の貯蔵、輸送および使用において曝露されると考えられる温度範囲を考慮すべきであることは明らかであろう。
【0049】
担体は「実質的に非水系」、すなわち水を含まないものであるか、実際の問題として、組成物の性能や特性にほとんど害を与えないだけの少ない水の量である。代表的には担体は、0〜約5重量%未満の水を含む。本発明で有用なある種の成分は、その分子または超分子構造上またはその内部で少量の水と結合し得ることは明らかであろう。そのような結合した水が存在しても、本明細書で定義の担体の「実質的非水系」特性には影響しない。
【0050】
上記で示したように、担体は2つの必須成分、すなわち少なくとも一つのリン脂質およびその少なくとも一つのリン脂質用の製薬上許容される可溶化剤を含む。可溶化剤または可溶化剤とリン脂質の組み合わせも薬剤を可溶化するが、状況によっては、担体中に存在しても良い界面活性剤などの他の担体成分が、薬剤の可溶化を促進し得る。
【0051】
製薬上許容されるリン脂質またはリン脂質の混合物を用いることができる。概してそのようなリン脂質は、加水分解でリン酸、脂肪酸、アルコールおよび窒素含有塩基を生じるリン酸エステルである。製薬上許容されるリン脂質は、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類およびホスファチジルエタノールアミン類などがあり得るが、これらに限定されるものではない。1実施形態において、組成物は、例えば天然レシチン由来のホスファチジルコリンを含む。いずれのレシチン源も使用可能であり、それには卵黄などの動物源があるが、植物源も好ましい。大豆は、本発明で使用されるホスファチジルコリンを提供し得る特に豊富なレシチン源である。
【0052】
例えば、リン脂質の好適な量は、担体の重量基準で約15%〜約75%、例えば約30%〜約60%であるが、特定の状況では、それより多い量または少ない量が有用である可能性がある。
【0053】
可溶化材の構成要素として有用な成分には特に限定はなく、ある程度は特定の薬剤や薬剤およびリン脂質の所望の濃度によって決まる。1実施形態において、可溶化剤は1以上のグリコールおよび/または1以上のグリセリド材料を含む。
【0054】
好適なグリコールには、分子量が約200〜約1000g/molを有するプロピレングリコール類およびポリエチレングリコール類(PEG類)などがあり、例えば平均分子量が約400g/molであるPEG400がある。そのようなグリコール類は薬剤の比較的高い溶解度を与え得るが、場合によっては薬剤、特には加水分解、加溶媒分解もしくは酸化に対する不安定性の傾向を有する薬剤が、そのようなグリコールを含む担体中の溶液である場合にある程度の化学分解を示す可能性がある。これは、経時的な薬剤溶液の色変化によって明らかになる場合がある。担体のグリコール含有量が高くなるほど、化学的に不安定な薬剤の分解傾向が高くなる可能性がある。従って1実施形態では、1以上のグリコールが、担体の重量基準で少なくとも約1%であって約50%未満、例えば約30%未満、約20%未満、約15%未満もしくは約10%未満の総グリコール量で存在する。別の実施形態では、担体は実質的にグリコールを含まない。
【0055】
好適なグリセリド材料には、中鎖ないし長鎖のモノ、ジおよびトリグリセリドなどがあるが、それらに限定されるものではない。本明細書において「中鎖」という用語は、個々に約6より多く約12未満の炭素原子を有する炭化水素鎖(例えば、C〜C10鎖など)を指す。従って、カプリリル鎖およびカプリル鎖を含むグリセリド材料、例えばカプリン酸/カプリル酸モノ、ジおよびトリグリセリドが、本発明における「中鎖」グリセリド材料の例である。本明細書における「長鎖」という用語は、個々に少なくとも約12、例えば約12〜約18の炭素原子を有する炭化水素鎖を指し、例えばラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイルおよびリノレニル鎖などがある。グリセリド材料における中鎖ないし長鎖のヒドロカルビル基は、飽和、1価不飽和もしくは多価不飽和であることができる。
【0056】
別の実施形態において、担体はゲルシア(Gelucire;登録商標)44/14を含む。ゲルシア(登録商標)44/14は、20%のモノ、ジおよびトリグリセリドならびに72%のPEG1500のモノおよびジ脂肪剤エステルならびに8%の遊離PEG1500からなる半固体賦形剤である。それは、多くの薬剤用の乳化剤および溶媒として働き、溶解度を高めることで、生物学的利用能を高めるのに用いられる。
【0057】
1実施形態では、担体は可溶化剤の主要成分として、中鎖および/または長鎖トリグリセリド材料を含む。中鎖トリグリセリド材料の好適な例としては、例えばアビテック社(Abitec Corp.)のカプテックス(Captex)355EP(商標名)などのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド製品およびそれと実質的に等価な製品がある。長鎖トリグリセリド類の好適な例には、例えば菜種油、ヤシ油、トウモロコシ油、亜麻油、紅花油、大豆油およびヒマワリ油ならびにそれらの混合物のような製薬上許容される植物油などがある。
【0058】
1以上のグリセリド材料が可溶化剤の主要成分として存在する場合、グリセリド類の好適な総量は、リン脂質を可溶化するのに有効であって、担体の他の成分と組み合わせて薬剤を溶液状態に維持するのに有効な量である。例えば、中鎖および/または長鎖トリグリセリドなどのグリセリド材料は、担体の重量基準で約5%〜約70%、例えば約15%〜約60%または約25%〜約50%の総グリセリド量で存在することができる。グリコール類やグリセリド材料以外の別の可溶化剤を、所望に応じて含めることができる。これら薬剤の一部、例えばビニルピロリドン二量体(1,3−ビス−(ピロリドン−1−イル)−ブタンまたはVP二量体)は、水溶性の低い化合物用の溶媒として用いられることが多い新たな合成賦形剤である。そのような物質の他の例、例えばジメチルホルムアミド(DMF)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)などのN置換アミド溶媒を、具体的な例において用いて、担体中での薬剤の溶解度限界を上昇させることで、薬剤負荷量を高めることが可能である。しかしながら、DMFおよびDMAなどのN置換アミド類は、製剤で使用可能な溶媒の量に制限を加える規則上および/または毒性上の問題を生じる可能性がある。さらに、本発明で有用な担体は通常、そのような追加物質を加えなくとも、対象とする低分子薬剤の十分な溶解度を提供する。従って、1実施形態において、少なくとも約67mg/mLの薬剤負荷が、N−置換アミド溶媒を実質的に含まない担体、例えばそのような溶媒が約2mg/mL未満または約1mg/mL未満である担体で得られる。
【0059】
リン脂質を可溶化するのに十分な量のグリコールまたはグリセリド材料が存在する場合であっても、得られる担体溶液および/または薬剤−担体系はかなり粘稠で、取り扱いが困難であったり不便である可能性がある。そのような場合には、許容できる程度に低い粘度を与える上で有効な量で担体中に粘度低下剤を含有させることが望ましいことが認められる場合がある。そのような物質の例にはエタノールがあり、好ましくは水を実質的に含まない形態で導入し、例えば99%エタノールまたは純粋エタノールとする。しかしながら、エタノールの過度に高濃度は回避すべきである。エタノール濃度が高いとカプセルが物理的に破損する傾向が生じるため、それは特に、例えば薬剤−担体系をゼラチンカプセルで投与する場合に当てはまるものである。概して、エタノールの好適な量は、担体の重量基準で0%〜約25%、例えば約1%〜約20%または約3%〜約15%である。適宜に、担体はさらに、製薬上許容される非リン脂質系界面活性剤を含む。当業者であれば、本発明の組成物で使用される好適な界面活性剤を選択することができる。例えば、ポリソルベート80などの界面活性剤を、担体の重量基準で0%〜約5%、例えば0%〜約2%または0%〜約1%の量で含有させることができる。さらに、ポリソルベート20などの界面活性剤を、担体の重量基準で0%〜約25%、例えば0%〜約10%、例えば0%〜約5%または0%〜約2%の量で含有させることができる。
【0060】
本発明で含有される非リン脂質系界面活性剤の別の例には、天然のビタミンEの水溶性誘導体であるビタミンETPGS、すなわちd−α−トロフェニルポリエチレングリコール1000スクシネートがある。構造的にそれは、界面活性剤と同様の親油性および親水性の二重性質を有する。新油性化合物に対する可溶化能力および界面活性剤様特性のため、それは乳化剤、可溶化剤および吸収促進剤として製剤で用いることが推奨される。
【0061】
例えば酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤およびそれらの組み合わせなどの従来の製剤成分から選択される他の成分を、担体中に存在させても良い。上記で示したように、担体は、薬剤溶液を内部または表面に吸着させる固体もしくは半固体の基材を含むこともできる。そのような基材の例には、乳糖、デンプン類、二酸化ケイ素などの粒子状希釈材、ならびにポリアクリレート類、高分子量PEG類などのポリマー、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体などがある。固溶体が望ましい場合、ロウなどの高融点成分を含有させることができる。固体の薬剤−担体系は、カプセル封入するか、所望に応じて錠剤の形態で投与しても良い。一部の実施形態では、薬剤−担体系は薬剤送達機器に吸着させたり、含浸させることができる。
【0062】
簡便には、本発明の組成物で用いるために、好適なリン脂質+可溶化剤の組み合わせを含む前混合製品が利用可能である。強調すべき点として、そのような製品を含む組成物を本発明は包含するが、そのような組成物に限定されるものではない。前混合リン脂質+可溶化剤製品は、本発明の組成物の製造を容易にする上で有利なものとなり得る。
【0063】
前混合リン脂質+可溶化剤製品の例としては、重量基準で50%以上のホスファチジルコリン、6%以下のリソホスファチジルコリン、約35%のプロピレングリコール、約3%のヒマワリ油からのモノおよびジグリセリド、約2%の大豆脂肪酸、約2%のエタノールおよび約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含むフォーサル50PG(商標名)(アメリカン・レシチン社(American Lecitin Co., Oxford, CT)から入手可能)がある。
【0064】
別の例には、やはりアメリカン・レシチン社から入手可能な重量基準で、53%以上のホスファチジルコリン、6%以下のリソホスファチジルコリン、約29%の中鎖トリグリセリド、3〜6%(代表的には約5%)のエタノール、約3%のヒマワリ油からのモノおよびジグリセリド、約2%のオレイン酸および約0.2%のパルミチン酸アスコルビルを含むフォーサル53MCT(商標名)がある。
【0065】
さらに別の例には、やはりアメリカン・レシチン社から入手可能な紅花油および他の成分を含む可溶化系中に重量基準で50%以下のホスファチジルコリンおよび6%以下のリソホスファチジルコリンを含むフォーサル50SA+(商標名)がある。
【0066】
これら各前混合製品のホスファチジルコリン成分は大豆レシチン由来のものである。他の供給者から、実質的に等価な製品を入手することができる。
【0067】
一部の実施形態では、フォーサル50PG(商標名)、フォーサル53MCT(商標名)またはフォーサル50SA+(商標名)などの前混合製品は、実質的に低水溶解度の薬剤用の担体系全体を構成することができる。他の実施形態では、例えばエタノール(前混合製品中に存在していても良いものに加えて)、ポリソルベート80、ポリエチレングリコールおよび/または他の成分などの非リン脂質系界面活性剤などの別の成分を存在させる。そのような別の成分が存在する場合、それは代表的にはごく少量で含有させる。例えば、フォーサル53MCT(商標名)またはそれと実質的に等価な前混合製品を、担体の重量基準で約50%〜100%、例えば約80%〜100%の量で担体に含有させることができる。
【0068】
上記で記載の本発明の実施形態において、薬剤−担体系は水相に分散させて、非ゲル化性で実質的に不透明の液体分散液を形成することができる。この特性は、例えば室温で攪拌しながら約20部の水に1部の薬剤−担体系を加え、得られた分散液のゲル化挙動および透明性を評価することで、当業者であれば容易に調べることができる。本明細書で示した相対量で成分を有する組成物は、そのような試験に合格する、すなわちゲル化せず実質的に不透明な液体分散液を形成するであろう。「非ゲル化」挙動についての本発明における要件により、本明細書に記載されている成分に加えて、ゲル促進の点で有効な量でゲル促進剤を含む組成物は本発明の範囲から除かれる。水相と混合する際の「実質的に不透明な」分散液についての本発明における要件は、いずれか実質的な量のリン脂質成分を有する上記の組成物によって満足されると考えられるが、明瞭を期すため強調すべき点として、実質的に非水系であるその組成物自体は透明である。この点に関して留意すべき点として、リン脂質は、水系環境に置かれると2ラメラおよび多ラメラ凝集体を形成する傾向を有しており、そのような凝集体は透過光を散乱させるだけの大きさを有していることから、不透明で例えば濁った分散液を与える。フォーサル53MCT(商標名)の場合、例えば水系環境での分散液は、代表的には多ラメラ凝集体だけではなく、粗い水中油型乳濁液も形成する。多ラメラ凝集体の存在は多くの場合、偏光存在下での顕微鏡検査によって確認することができ、そのような凝集体は複屈折を示す傾向、すなわち特徴的な「マルタ十字架」パターンを発生させる傾向がある。
【0069】
理論に拘束されるものではないが、水相との混合時における本発明の組成物の薬剤−担体系の挙動は、その組成物が被験者への経口投与後に消化液とどのように相互作用するかを示していると考えられる。ゲル形成は、例えば上記で引用した米国特許第6464987号で言及した口の周囲領域への薬剤の局所徐放送達には有用となり得るが、ゲル化は効率的な消化管吸収には悪影響を与える可能性があると考えられる。そのため、上記の本発明の実施形態には、水相と混和した時にゲル化しない薬剤−担体系を含む組成物が記載されている。さらに、やはり理論に拘束されるものではないが、薬剤−担体系を水相と混和した時に形成される分散液の不透明性によって明らかなように、消化液中での2ラメラおよび多ラメラ凝集体形成は、経口投与した場合に本発明のある種の組成物の比較的高い生物学的利用能を提供する上で重要な要素となり得ると考えられる。
【0070】
例えば、薬剤がABT−869である場合、担体成分およびそれの量は、担体中の薬剤の溶解度が、約25℃で少なくとも約10mg/mL、例えば少なくとも約50mg/mL、少なくとも約67mg/mLまたは少なくとも約100mg/mLとなるように選択する。別の例として、薬剤がABT−102である場合、担体成分およびそれの量は、担体中での薬剤の溶解度が約25℃で少なくとも約10mg/mL、例えば少なくとも約50mg/mL、少なくとも約100mg/mL、少なくとも約150mg/mL、または少なくとも約200mg/mLとなるように選択する。
【0071】
ある種の実施形態において、担体成分およびそれの量は、経口投与した場合に、薬剤の標準溶液、例えばPEG400中での溶液と比較して高い生体吸収を与えるように選択する。そのような高い生体吸収は、AUC、例えばAUC0−24またはAUC0−∞によって測定されるQmax上昇、Tmax短縮または生物学的利用能増加のうちの1以上を有する薬物動態プロファイルによって確認することができる。
【0072】
例えば、生物学的利用能は、経口用量とIV用量の間の差を考慮して、好適な溶媒中の薬剤の静脈(IV)送達についてのAUCのパーセントとして被験組成物の経口送達のAUCを計算する、例えばパラメータFを用いたパーセントとして表すことができる。
【0073】
生物学的利用能は、ヒトまたはいずれか好適なモデル生物種での薬物動態試験によって確認することができる。それに関しては、下記の実施例5で例示的に説明しているように、イヌモデルが好適である。各種の例示的実施形態において、薬剤がABT−869である場合、本発明の組成物はイヌモデルにおいて、少なくとも約20%、例えば少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%または少なくとも約50%の経口生物学的利用能を示す。
【0074】
1例において組成物は、ABT−869ならびに(a)約25℃で少なくとも約50mg/mLのABT−869溶解度;および(b)少なくとも約25%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分およびそれの量を含む担体を含むものである。
【0075】
別の例において組成物は、ABT−869ならびに(a)約25℃で少なくとも約67mg/mLのABT−869溶解度;および(b)少なくとも約30%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分およびそれの量を含む担体を含むものである。
【0076】
さらに別の例において組成物は、ABT−869ならびに(a)約25℃で少なくとも約100mg/mLのABT−869溶解度;および(b)少なくとも約50%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分およびそれの量を含む担体を含むものである。
【0077】
別の例において組成物は、ABT−102ならびにイヌモデルでの組成物の経口投与時に少なくとも30%の生物学的利用能を示す薬物動態プロファイルを与えるよう選択される成分およびそれの量を含む担体を含むものである。
【0078】
本発明は、本明細書に包含または記載されている組成物の製造に用いられる方法によって限定されるものではない。いずれか好適な製薬方法を用いることができる。例えば、本発明の組成物は、記載されている成分を単に混合することで(その場合の添加順序はあまり重要ではない)薬剤−担体系を形成する段階を有する方法によって製造することができる。しかしながら、留意すべき点として、リン脂質成分を固体状態で用いる場合、例えば大豆レシチンの形態で用いる場合、最初に可溶化剤成分またはそれの一部でリン脂質を可溶化することが望ましい。その後、存在する場合には担体の他の成分と薬剤を、適宜に攪拌しながら簡単に混合することで加えることができる。上記のようにして、リン脂質および可溶化剤を含む前混合製品を使用することが組成物の製造を簡単にすることができる。そのような製品(この場合フォーサル53MCT(商標名))を用いる方法の例を、下記の実施例3に示してある。適宜に、下記の実施例4に示したように、薬剤−担体系をカプセル充填用のプレミックスとして用いることができる。本明細書においてカプセル関連で使用される「充填」という用語は、カプセルシェル中に所望の量の組成物を入れることを意味し、カプセル内の全てのスペースを必ず組成物によって占有させることを意味するものと解釈すべきではない。
【0079】
本明細書において一般的に記述されるか具体的に記載されている組成物を含む、本発明に包含される組成物は、被験者に対して低水溶解度の薬剤を経口的に送達する上で有用である。従って、被験者に対して低水溶解度の薬剤を送達するための本発明の方法は、本明細書に記載の組成物を経口投与する段階を有する。被験者は、ヒトまたはヒト以外の動物(例:家畜、動物園の動物、労働用動物またはペット)であることができるが、代表的には薬剤が適応である疾患、障害または状態を予防または治療するために薬剤を必要とするヒト患者である。
【0080】
組成物は、薬剤の治療上有効な用量を与える量で投与することができる。何が治療上有効な用量を構成するかは、特定の薬剤、被験者(被験者の生物種および体重を含む)、予防もしくは治療する疾患、障害もしくは状態ならびに他の要素によって決まるものであり、それに応じて広い範囲内、例えば約0.01〜約1000mgで変動し得る。本明細書における「治療上有効な」用量と記載している場合、それは単一のそのような用量のみを投与する場合にその薬剤が治療上有効であることを必ずしも必要とするわけではないことは明らかであり、代表的には、治療効力は、投与の十分な頻度および期間が関与する投与法に従って繰り返し投与される組成物によって決まる。
【0081】
組成物が「半固体カプセル」である場合、それは薬剤担体系が半固体であって、カプセル中に充填されることを意味する。これらの半固体充填カプセルは、代表的には水その他の飲むことが可能な液体の助けを得て全体を飲み込むことができる。「飲むことが可能」とは消費可能であることを意味することは明らかである。
【0082】
組成物が「半固体製剤」である場合、それは、薬剤担体系が半固体であり、投与前にカプセルに充填されるか、約37℃の温度で溶融および強制経口投与によって投与される必要があることを意味している。「強制経口投与」とは、管によって胃に導入されることを意味することは明らかである。
【0083】
組成物がカプセル化液体の形態である場合、組成物は無希釈で飲み込むことができるが、組成物を最初に好適な飲むことができる液体に希釈すると投与はより簡便かつ楽になる。好適な液体希釈剤には、水、牛乳、果汁(例:リンゴ果汁、ブドウ果汁、オレンジ果汁など)、炭酸飲料、経腸栄養処方、エネルギー飲料、茶またはコーヒーなどの水系飲料などがあるが、これらに限定されるものではない。液体希釈剤を用いる必要がある場合、組成物は、組成物を希釈剤中に十分に分散させるだけの攪拌を用いて(例えば、振盪および/または攪拌によって)希釈剤と混和し、その後直ちに投与すべきであることから、組成物は飲み込み前に希釈剤から分離されない。いずれか簡便な希釈率を用いることができ、例えば希釈剤1容量部当たり組成物を約1〜約100または約5〜約50容量部とする。
【0084】
組成物がカプセルの形態である場合、1ないし少数の複数カプセルを、代表的には飲み込みプロセスを助けるための水その他の飲むことができる液体の補助を用いて全体を飲み込むことができる。好適なカプセルシェル材料には、ゼラチン(硬ゼラチンカプセルまたは軟弾性ゼラチンカプセルの形態で)、デンプン、カラギーナンおよびHPMCなどがあるが、これらに限定されるものではない。薬剤−担体系が液体である場合、軟弾性ゼラチンカプセルが通常は好ましい。
【0085】
低水溶解度の低分子薬剤が上記の式(I)または式(II)の化合物、例えばABT−869である場合、薬剤担体系が上記で定義の水相中で分散した際に実質的に非ゲル化性であって、実質的に不透明であるという特性を有することが好ましいが、それが必須というわけではない。
【0086】
本発明の各種実施形態において、PTK阻害薬が適応である被験者での状態の治療方法が提供される。そのような方法は、上記式(I)の化合物を低水溶解度の薬剤として有する本明細書で一般的または具体的に記載された組成物を、好適な投与経路によって被験者に投与する段階を有する。その薬剤は、例えばXがNHであり;R、R、RおよびRがそれぞれ水素であり;LがNHC(O)NHであり;R10およびR11が独立に水素、アルキルおよびハロからなる群から選択されるものなどの上記式(II)の化合物であることができる。1実施形態において、薬剤はABT−869である。
【0087】
好ましい投与経路は経口である。経口投与は、特には上記で記載のように薬剤−担体系が液体、またはカプセル、例えば液体を充填したカプセルの場合には、無希釈または希釈薬剤−担体系のものであることができる。
【0088】
本方法によって治療される状態には、PTK阻害薬が適応である疾患または障害などが可能であり、例えば黄斑変性または異常増殖が関与する状態などがある。そのような状態の例としては、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および腎臓癌などがある。
【0089】
ABT−869の好適な用量は、約1回/週〜約4回/日の回数で投与して、通常は約1〜約500mg、より代表的には約10〜約300mgまたは約20〜約200mg、例えば約50〜約100mgである。ほとんどの場合、約1〜約2回/日の投与回数が好適である。
【0090】
低水溶解度の低分子薬剤が上記の式(III)または式(IV)の化合物、例えばABT−102である場合、薬剤担体系が上記で定義の水相中で分散した際に実質的に非ゲル化性であって、実質的に不透明であるという特性を有することが好ましいが、それが必須というわけではない。
【0091】
本発明の各種実施形態において、TRPV1拮抗薬が適応である被験者での状態の治療方法が提供される。そのような方法は、上記式(III)の化合物を低水溶解度の薬剤として有する本明細書で一般的または具体的に記載された組成物を、好適な投与経路によって被験者に投与する段階を有する。その薬剤は、例えばABT−102などの上記の式(IV)の化合物であることができる。
【0092】
好ましい投与経路は経口である。経口投与は、特には上記で記載のように薬剤−担体系が液体、またはカプセル、例えば液体を充填したカプセルの場合には、無希釈または希釈薬剤−担体系のものであることができる。
【0093】
本方法によって治療される状態には、TRPV1拮抗薬が適応である疾患または障害などが可能であり、例えば泌尿器障害または疼痛が関与する状態などがある。そのような状態の例としては、泌尿器機能障害、膀胱過活性、尿失禁、神経因性疼痛、炎症状態関連の疼痛および片頭痛などがある。
【0094】
実施例
下記の実施例は例示に過ぎず、いかなる形でも本開示を限定するものではない。実施例で使用されている商標成分は、他の供給者からの同等の成分に置き換えることができる。フォーサル50PG(商標名)、フォーサル53MCT(商標名)またはフォーサル50SA+(商標名)などの前混合製品が下記で示されている場合、それの成分は所望に応じて、前混合製品の形態ではなくむしろ個々に加えることが可能である。フォーサル50PG(商標名)、フォーサル53MCT(商標名)およびフォーサル50SA+(商標名)のそれぞれの組成物は上記で示してある。実施例で使用される他の商標成分には、
アビテック社のカプテックス(Captex)355EP(商標名):カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;
ユニケマ(Uniqema)のトウィーン(Tween)80(商標名):ポリソルベート80界面活性剤;
ゲルシア(商標名)44/14:ラウロイルマクロゴールグリセリド;
ガッテフォッセ(Gattefosse)のラブラゾル(Labrasol;商標名):カプリロカプリルポリオキシグリセリド;
BASFのクレモフォル(Cremophor)EL(商標名):ポリオキシル35ヒマシ油;
ユニケマ(Uniquema)のトウィーン20(商標名):ポリソルベート20界面活性剤
などがある。
【0095】
下記の実施例は、本発明の態様を説明し、特にはリン脂質および製薬上許容される可溶化剤を含む液体担体が、そのような担体中の溶液で製剤されたABT−869、イソトレチノインまたはパリカルシトールなどの低水溶解度の薬剤の許容される溶解度および/または生物学的利用能を提供し得ることを示すものである。上記で引用した参考文献はいずれも、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0096】
本明細書におけるパーセント量は、別段の断りがない限り重量基準である。「含む」、「含有する」および「包含」という言葉は、排他的にではなく包括的に解釈すべきである。
【0097】
実施例1:ABT−869の溶解度についての担体のスクリーニング
ABT−869約20mgを秤取し、0.3mLバイアルに入れた。試験担体(100μL)をピペットによってバイアルに加えた。バイアルについて約30秒間の渦攪拌と約1分間の超音波処理を交互に3回行って、ABT−869の十分な濡れと分散を行った。バイアルをアルミホイルで覆い、ラブクエイク(Labquake;商標名)回転装置に入れ、最低24時間回転させた。24時間後、バイアルの内容物について、固体ABT−869の有無を観察した。まだ固体が存在していた場合は、固体が全て溶解して、得られた溶液が透明になるまで担体を加えた。大体の溶解度を、透明溶液を与える担体の容量と固体が存在した担体の容量に基づく範囲として、下記の表1に報告している。溶解度値はいずれも室温で測定した。
【0098】
【表1】

【0099】
このスクリーニング試験の結果から、フォーサル50PG(商標名)またはフォーサル53MCT(商標名)を含む担体が少なくとも約50mg/mLの薬剤濃度でABT−869の製剤を製造する上で有用となり得るという予備的知見が得られた。
【0100】
実施例2:フォーサル53MCT(商標名)を含む担体中でのABT−869の溶解度
フォーサル53MCT(商標名)を含む各種担体で、ABT−869の溶解度を測定した。ABT−869約100〜400mgを秤取し、4mLガラスバイアルに入れ、それに試験担体2mLを加えた。バイアルを10分間にわたって渦攪拌および超音波処理した。バイアルをアルミホイルで覆い、25℃の水浴に入れ、2日間攪拌した。バイアルの内容物を濾過し、濾液をHPLC分析用に移動相で25倍希釈した。結果を表2に示してある。
【0101】
【表2】

【0102】
結果から、フォーサル53MCT(商標名)(すでに約5%のエタノールを含んでいる)に5%のエタノールを加えることで、フォーサル53MCT(商標名)単独の場合よりABT−869溶解度が高くなることが明らかになった。エタノールに代えてPEG400を用いることで、溶解度にさらなる改善があり、担体中でのPEG400濃度が上昇するに連れて高くなった。
【0103】
実施例3:液体医薬組成物例の製造
担体の製造:フォーサル53MCT(商標名)(18.02g)およびエタノールUSP、純粋(2.01g)を秤取し、30mLの琥珀色瓶に入れた。10部のエタノールおよび90部のフォーサル53MCT(商標名)からなる均一な担体混合物が得られるまで瓶を手で攪拌した。
【0104】
医薬組成物の製造:上記で製造した担体混合物のうちの小分け量9.36gを秤取し、攪拌バーとともに20mLの琥珀色瓶に入れた。ABT−869(0.64g)を、そのABT−869が完全に熔解するまでバイアルに攪拌しながら加えた。6.4重量%のABT−869を含む得られた溶液は透明で黄色であった。
【0105】
所望に応じて、製剤中の薬剤の不安定さのための効力が低下するリスクを低減するために、窒素層流下で医薬組成物を製造することができる。
【0106】
実施例4:カプセル化医薬組成物例の製造
実施例3で調製した溶液を、カプセル化医薬組成物を製造するためのプレミックスとして用いた。軟弾性ゼラチンカプセルに個別に、プレミックス781mg(所定の充填重量)を充填して、カプセル当たり50mgのABT−869用量を得た。カプセルは、注射器/注射針の組み合わせを用いて充填し、その後に熱封止した。
【0107】
実施例5:薬物動態試験
本発明のABT−869組成物(製剤#2)および比較組成物(製剤#1)について、絶食イヌでの薬物動態試験で評価を行った。製剤#1は、濃度20mg/mLで溶液にてABT−869を含むPEG400を含んだ液体組成物であった。製剤#2は、上記の実施例3および4に記載の方法に従って製造した、ABT−869 50mg(担体溶液中6.4重量%のABT−869)をそれぞれが含む軟弾性ゼラチンカプセルの形態のものとした。担体は、
製剤#1:
100%PEG400、
製剤#2:
10%エタノールUSP、純粋90%
フォーサル53MCT(商標名)
であった。製剤#1は、ABT−869の用量が10mg/kgBWとなるように計算した0.5mL/kgBW(体重)の量でイヌ3頭に強制経口投与した。製剤#2は、イヌ1頭当たり100mg(50mgカプセル2個)の用量(平均で10.8mg/kgBWと等価な用量)でイヌ6頭に経口投与した。いずれの製剤も、絶食条件下で投与した。投与前(時間0)ならびに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、12、15および24時間で、血漿検体を採取した。各血漿検体中のABT−869濃度を、HPLC−MSによって測定した。データから計算した薬物動態(PK)パラメータを表3に示してある。別の群のイヌでABT−869のPEG400溶液を静脈投与した場合と比較して、生物学的利用能をパラメータFとして求めた。
【0108】
【表3】

【0109】
表3に示したように、本発明の製剤#2は、単純なPEG400溶液(製剤#1)よりかなり高いABT−869の生物学的利用能を与えた。
【0110】
実施例6:薬物動態試験
3種類の本発明のABT−869組成物(製剤#3、#4および#5)について、絶食イヌでの薬物動態試験で評価を行った。いずれも、それぞれが実質的に上記の実施例3および4に記載の方法に従って製造されたABT−869(7.5重量%ABT−869の担体溶液)75mgを含む軟ゼラチンカプセルの形態とした。担体は、
製剤#3:
10%PEG400
90%フォーサル53MCT(商標名)
製剤#4:
10%PEG400
0.5%トゥイーン80(商標名)
89.5%フォーサル53MCT(商標名)
製剤#5:
5%エタノールUSP、純粋
95%フォーサル53MCT(商標名)
であった。
【0111】
各組成物を、1頭当たり75mgのABT−869用量でイヌ3頭に経口投与した。投与前(時間0)および投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9および12時間で血漿検体を採取した。各血漿検体中のABT−869濃度を測定し、実施例5と同様にデータからPKパラメータを計算した。PKパラメータを表4に示してある。
【0112】
【表4】

【0113】
担体中でフォーサル53MCT(商標名)とともに10%PEG400を有する組成物(製剤#3および#4)は、上記の実施例5の試験で10%エタノール(製剤#2)を有する組成物と比較して高いABT−869の生物学的利用能を示した。エタノールを5%に減らしても(製剤#5)、実施例5での製剤#2と比較して生物学的利用能には実質的に影響はなかった。軟ゼラチンカプセル組成物中のエタノールの低減は、カプセル破損の危険性を低下させる上で有利であると考えられる。
【0114】
実施例7:薬物動態試験
本発明の2種類のABT−869組成物(製剤#6および#7)について、絶食イヌでの薬物動態試験で評価を行った。いずれもそれぞれが実質的に上記の実施例3および4に記載の方法に従って製造されたABT−869(10重量%ABT−869の担体溶液)100mgを含む軟ゼラチンカプセルの形態とした。担体は、
製剤#6:
20%PEG400
80%フォーサル50PG(商標名)
製剤#7:
10%PEG400
90%フォーサル53MCT(商標名)
であった。
【0115】
各組成物を、1頭当たり100mgのABT−869用量でイヌ3頭に経口投与した。投与前(時間0)および投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、12、15および24時間で血漿検体を採取した。各血漿検体中のABT−869濃度を測定し、実施例5と同様にデータからPKパラメータを計算した。PKパラメータを表5に示してある。
【0116】
【表5】

【0117】
この試験では、フォーサル50PG(商標名)(前混合製品内の主要な可溶化剤としてプロピレングリコールを有する)を含む製剤#6が、フォーサル53MCT(商標名)(前混合製品内の主要な可溶化剤として中鎖トリグリセリドを有する)を含む製剤#7と比較して低い生物学的利用能を示した。
【0118】
実施例8:薬物動態試験
3種類の本発明のABT−869組成物(製剤#8、#9および#10)について、絶食イヌでの薬物動態試験で評価を行った。いずれも、それぞれが実質的に上記の実施例3および4に記載の方法に従って製造されたABT−869(7.5重量%ABT−869の担体溶液)100mgを含む軟ゼラチンカプセルの形態とした。担体は、
製剤#8:
10%PEG400
90%フォーサル53MCT(商標名)
製剤#9:
10%PEG400
5%エタノールUSP、純粋
85%フォーサル53MCT(商標名)
製剤#10:
10%PEG400
0.5%トゥイーン80(商標名)
4.5%エタノールUSP、純粋
85%フォーサル53MCT(商標名)
であった。
【0119】
各組成物を、1頭当たり100mgのABT−869用量でイヌ3頭に経口投与した。投与前(時間0)および投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9および12時間で血漿検体を採取した。各血漿検体中のABT−869濃度を測定し、実施例5と同様にデータからPKパラメータを計算した。PKパラメータを表6に示してある。
【0120】
【表6】

【0121】
担体にトゥイーン80(商標名)を加えると(製剤#10)、製剤#9と比較して本試験では生物学的利用能が向上するように思われた。
【0122】
実施例9:絶食イヌおよび非絶食イヌでの薬物動態試験ならびにカプセル化して希釈した液体製剤での投与の比較
本発明のABT−869組成物(製剤#11)を、絶食および非絶食イヌでの薬物動態試験で評価して、食物の効果を評価した。
【0123】
ABT−869負荷量が50mg/mLである組成物を、100mg/イヌのABT−869用量(平均で9.8mg/kgBWと等価)とするために2mL/イヌの投与容量を与えるゼラチンカプセルとして投与した。製剤は、実質的に上記の実施例3および4に記載の方法に従って製造した。
【0124】
別の試験で、リンゴ果汁または経腸栄養処方(アボット・ラボラトリーズのエンシュア・プラス(EnsurePlus;商標名))、のいずれかで希釈した液体で、同じ用量にて製剤#11の試験を行った。液体組成物は、リンゴ果汁または栄養処方で1:20希釈して強制経口投与した。
【0125】
担体は、
製剤#11:
10%エタノールUSP、純粋
0.5%トゥイーン80(商標名)
89.5%フォーサル53MCT(商標名)
であった。
【0126】
両方の試験において、組成物はイヌ6頭の群での2期間交差設計を用いて投与した。投与前(時間0)および投与後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、12、15および24時間で、血漿検体を採取した。各血液検体中のABT−869濃度を測定し、実施例5に示した方法に従ってデータからPKパラメータを計算した。PKパラメータを表7に示してある。
【0127】
【表7】

【0128】
カプセル形態で非絶食イヌに投与した製剤#11の生物学的利用能は、絶食イヌに投与した場合より低かった。
【0129】
リンゴ果汁または栄養処方で予め希釈して投与した場合の製剤#11の生物学的利用能は、カプセル形態で同じ製剤を絶食イヌに投与した場合と非絶食イヌに投与した場合の中間であった。
【0130】
実施例10:ABT−869製剤#12
本発明の液体ABT−869組成物(製剤#12)は、実質的に上記実施例3に記載の方法に従って製造した。その組成物は下記の成分からなるものであった。
【0131】
ABT−869:5.18%
フォーサル53MCT(商標名):89.60%
エタノールUSP、純粋:4.74%
ポリソルベート80:0.47%。
【0132】
製剤#12は、5℃で光から保護して保存した場合に、少なくとも6ヶ月の有効期限を有すると推定された。
【0133】
実施例11:イソトレチノイン組成物
イソトレチノイン(分子量300.43g/molおよび水溶解度約5μg/mLを有する化合物)について、フォーサル53MCT(商標名)中での溶解度を調べたところ、溶解度限度が25℃で72〜78mg/gであることが認められた。これは、エタノール(16.7mg/g)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(5.1mg/g)、オレイン酸(19.1mg/g)および大豆油(2.4mg/g)などの代表的な溶媒系で認められるイソトレチノインの溶解度よりかなり高い。本発明のイソトレチノイン組成物は、12mLサンプルバイアルに、フォーサル53MCT(商標名)6.58gおよびイソトレチノイン0.42gを加えることで製造した。4mmガラスビーズ6個を加え、バイアルにキャップを施し、パラフィルムおよびアルミホイルで覆い、室温でラブクエイク(商標名)回転装置(8rpm)に乗せた。薬剤が完全に溶けた時点で、得られた薬剤−担体系からは、透明黄色の粘稠液体が形成された。各カプセルの底半分に薬剤−担体系666mg(イソトレチノイン40mgと等価)を充填することで、硬ゼラチンカプセルを製造した。カプセルシェルの両半分を合体させ、20体積%のエタノール溶液で封止した。
【0134】
実施例12:薬物動態試験
絶食イヌでの薬物動態試験では、イヌ6頭に上記実施例11の製剤として(カプセル1個)イソトレチノイン40mgを経口投与し、300、180または75μmの薬剤粒径を有する30%ロウ製剤と比較し、ロッシュ(Roche)のアクタン(Accutane;商標名)軟ゼラチンカプセルの2つのロットとの比較も行った。ロウ製剤は、実質的にホフマン−ラロッシュ社(Hoffmann-LaRoche AG)の国際特許公開WO00/25772(参照によって全体が本明細書に組み込まれるものとする)に記載の方法に従って製造することができる。
【0135】
投与前(時間0)ならびに投与後0.25、0.5、1、1.5、2、4、6、9、12、15および24時間に血漿検体を採取した。イソトレチノインおよびそれの代謝物である4−オキソイソトレチノインの血漿濃度を、HPLC−MSによって測定し、次に製剤効力について正規化した。PKパラメータを計算し、それらは表8および9に示してある(ND=測定せず)。
【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
本発明の実施例11の組成物は、イソトレチノインおよび4−オキソイソトレチノインの両方について、調べた比較製剤のいずれよりも高いCmaxおよび高いAUC0−∞を示した。
【0139】
実施例13:各種担体でのパリカルシトールの溶解度
ビタミンD類縁薬剤であるパリカルシトール(分子量416.63g/molおよびpH7.4緩衝液中での溶解度11.5ng/mLを有する化合物)を、各種担体中での溶解度を比較する試験の対象とした。過剰の薬剤で42時間回転攪拌した後に、平衡溶解度を2連で測定した。平均溶解度データを表10に示してある。
【0140】
【表10】

【0141】
例えば、フォーサル53MCT(商標名)中のパリカルシトールの溶解度は、調べたほとんどの担体と比較して相対的に高かった。
【0142】
実施例14:各種担体中でのABT−102の溶解度
各賦形剤約1gを正確に秤量した量を、3個のガラスバイアル中に量り入れた。半固体賦形剤を、完全に融解するまで約50〜60℃の水浴で加温してから秤量を行った。正確に秤量した量のABT−102 約25mg、50mgおよび100mgを、同じ賦形剤の入った3個のバイアルそれぞれに量り入れた。バイアルを気密封止し、渦攪拌によって約30秒間混合し、それから温水浴で超音波処理した。5〜6時間後にバイアルを肉眼で観察して溶解を調べた。透明溶液を与える担体の容量および固体が存在した担体の容量に基づいて、溶解度を下記の表11に報告してある。溶解度値はいずれも、室温で測定した。
【0143】
【表11】

【0144】
実施例15:薬物動態試験;イヌでのABT−102480mg経口用量の製剤
製剤#13
半固体製剤:8%ABT−102;25%TPGS;32%ゲルシア44/14;16%フォーサル50PG;19%VPD
製剤#14
半固体製剤:6%ABT−102;32%TPGS:29%ゲルシア44/14:15%フォーサル50PG;18%VPD
製剤#15
半固体製剤:4%ABT−102;52.8%TPGS:28.8%ゲルシア44/14:14.4%VPD。
【0145】
【表12】

【0146】
実施例16:薬物動態試験;イヌでのABT−102、640.800または900mg経口用量の製剤
製剤#16
半固体製剤
4%ABT−102;52.8%TPGS;28.8%ゲルシア44/14;14.4%VPD
製剤#17
半固体製剤;5%ABT−102;44%TPGS;36%ゲルシア44/14;15%VPD
製剤#18
半固体製剤;8%ABT−102;25%TPGS;32%ゲルシア44/14;16%フォーサル50PG;19%VPD。
【0147】
【表13】

【0148】
実施例17:薬物動態試験;サルでのABT−102、30または100mg経口用量の製剤
投与のプロトコール:ABT−102製剤を、サル6匹の群に単一用量30または100mgで投与した。半固体製剤は、鼻強制投与によって、約37℃の温度で溶融させ、投与した。HPLC−MSによって血漿濃度を測定した。
製剤#19および#20
脂質製剤;5%ABT−102;32.3%TPGS;29.3%ゲルシア44/14;15.2%フォーサル53MCT;18.2%VPD。
【0149】
【表14】

【0150】
実施例18:薬物動態試験;イヌでのABT−102、50mg経口用量の製剤−食物効果の評価
投与のプロトコール:製剤を投与直前にカプセルに入れた。製剤を、ヒスタミンを前投与した(絶食)イヌ(投与の30分前ヒスタミン)に投与し、投与の30分前に、イヌに飼料を与えた(非絶食)。
製剤#21
半固体製剤;5%ABT−102;60%フォーサル53MCT;10%PEG400;25%クレモフォルEL
製剤#22
半固体製剤;6%ABT−102;59.4%フォーサル53MCT;9.9%PEG400;24.7%トゥイーン20。
【0151】
【表15】

【0152】
結果からは、非絶食イヌに投与した場合での曝露における4〜5倍の増加が示されている。ヒスタミン前投与(絶食)イヌに投与した場合、製剤#21および#22の両方の生物学的利用能は平均で8%であった。製剤#21および#22の両方の生物学的利用能は、非絶食イヌで32〜42%まで増加した。
【0153】
実施例18:薬物動態試験;イヌでのABT−102、50mg経口用量の追加の製剤
各製剤を、ヒスタミン前投与(絶食)イヌ3匹の群に投与し、投与から6時間後にイヌに飼料を戻した。50mg用量を、投与直前にカプセルに入れた。
製剤#23
半固体製剤:6%ABT−102;61.1%フォーサル53MCT;4.7%PEG400;28.2%ラブラゾル
製剤#24
半固体製剤:6%ABT−102;61%フォーサル53MCT;4.7%PEG400;28.2%ラブラゾル
製剤#25
半固体製剤:5%ABT−102;52%フォーサル53MCT;15%PEG400;28%ラブラゾル。
製剤#26
半固体製剤:6%ABT−102;56.5%フォーサル53MCT;14.5%PEG400;23%ゲルシア44/14。
【0154】
【表16】

【0155】
脂質に基づく製剤#23、#24、#25および#26からの結果から、10.3〜16.7%の範囲のABT−102生物学的利用能値が得られた。最良の結果は、製剤#24(6%負荷量;より高いPEG−400)で得られ、生物学的利用能は16.7%であった。残った3つの製剤からの生物学的利用能は全て非常に類似しており、製剤#23、#25および#26についてそれぞれ13.3%、12.5%および10.3%の値であった。
【0156】
追加例
正確に秤量した量のABT−102を、予めラベルを付けた20mL透明シンチレーションガラスバイアルに加えた。半固体賦形剤を最初の容器に入れて、完全に融解するまで約60〜70℃の水浴で加温してから秤量した。液体および溶融半固体賦形剤を個別に、使い捨てピペットを用いて適切な量のABT−102を含む個々のガラスバイアルに秤取した。バイアルを、薬剤が完全に溶解するまで60℃に設定された温水浴で超音波処理した。20mLより大きい溶液容量を得るため、磁気撹拌子を用いて、薬剤が完全に溶解するまで約35〜50℃に維持した溶液を混合した。
【0157】
イヌ試験−単一用量製剤スクリーニング
投与プロトコール(絶食状態)
ビーグル犬における100mgの単一用量での生物学的利用能について評価した製剤の詳細を、表2Aに挙げてある。各製剤は、絶食条件下にある非ヒスチジン前投与イヌ3匹の群に対して100mgの単一用量で投与した。HPLC−MSによって血漿濃度を測定した。この試験からの結果を、約14mg/kgのABT−102のPEG−400溶液から得られたものと比較した。
【0158】
飼料またはエンシュアとの同時投与
選択した製剤について、飼料またはエンシュア・プラスとの同時投与が薬物動態に与える効果を評価した。エンシュア・プラスの投与は、より一貫性のある給餌状態を与えるための有力な選択肢として試みた。一部の製剤は、7.5%ビタミンETPGS水溶液20mLと同時投与した。飼料のイヌへの投与は、薬剤投与の約30分前に行った。エンシュア・プラスおよびビタミンETPGS溶液は、薬剤投与直前にイヌに投与した。
【0159】
薬剤投与方法
脂質製剤は、強制経口投与またはその製剤を充填した硬ゼラチンカプセルとして投与しした。溶液を強制経口投与した場合は、投与後にPEG400 3mLを用いて強制投与チューブを洗った。エンシュア・プラスおよびビタミンETPGSは強制経口投与した。
【0160】
【表17】


【0161】
イヌでの単一用量試験−投与の総曝露プロトコールについてスクリーニングするための製剤
ビーグル犬での相対的に高い用量の投与による所望の総曝露達成についてスクリーニングした製剤の詳細を表3Aに挙げてある。
【0162】
【表18】


【0163】
絶食状態
絶食条件下でイヌ3〜6匹の群に対して、用量を480mg、640mg、800mg、900mgおよび1000mgと増加させながら製剤を投与した。脂質製剤は、製剤を充填した硬ゼラチンカプセルとして投与した。血漿濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0164】
同時投与
選択した製剤について、飼料またはエンシュア・プラスとの同時投与が薬物動態に与える効果を評価した。エンシュア・プラスの投与は、より一貫性のある給餌状態を与えるための有力な選択肢として試みた。一部の製剤は、37.5%ビタミンETPGSのPEG400溶液4mLを充填したカプセルと同時投与した。飼料のイヌへの投与は、薬剤投与前および後の各種時点で行った。エンシュア・プラスおよびビタミンETPGS溶液は、薬剤投与直前にイヌに投与した。ビタミンETPGS溶液は、硬ゼラチンカプセルに充填した37.5%PEG400溶液としてイヌに投与した。エンシュア・プラスは強制経口投与した。
【0165】
イヌでの単一用量試験−用量上昇応答の評価
投与のプロトコール
イヌでの単一経口用量投与後のABT−102血漿濃度に対する用量の効果について評価した製剤の詳細を表4に挙げてある。製剤については、イヌでの単一用量経口投与後のABT−102血漿濃度に対する用量の効果を評価した。3つの別個の試験を実施し、各試験が100mg、300mg、600mgおよび900mgの用量範囲を含むようにした。これらの試験のうちの2つで、8%ABT−102、35%ビタミンETPGS、35%ゲルシア44/14、22%VP二量体の処方を用いた。カプセルを絶食状態のイヌに投与し、一方の試験では投与約6時間後にイヌに飼料を摂取させ、他方の試験では、カプセル中の37.5%ビタミンETPGS4mLを同時投与し、投与から6時間後にイヌに飼料を摂取させた。第3の試験では、薬剤負荷量が若干低い処方を評価した(6.5%ABT−102、37.4%ビタミンETPGS、37.4%ゲルシア44/14、18.7%VP二量体)。この処方は、3個のゼラチンカプセルによって収容される最大量の賦形剤を含む。いずれの試験でも、900mg製剤を媒体で希釈して、それより低い用量100、300および600mgを得ることで、ほぼ等価な賦形剤量およびカプセル数が等しく維持されるようにした。血漿濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0166】
【表19】

【0167】
イヌ試験−多用量試験(投与のプロトコール)
ビーグル犬での多用量試験に用いられる製剤の詳細は表5に挙げてある。イヌ4匹の群(群当たり雄2匹、雌2匹)には、2週間にわたり1日1回で10mgまたは60mg/kgの用量で脂質製剤またはプラシーボ製剤を含む薬剤を経口投与した。製剤組成物は、全てのイヌに対してほぼ等価な量のビタミンETPGS、ゲルシア44/14およびVP二量体を投与するように調節した。各イヌには、1日1回2週間にわたってカプセル3個を投与し、絶食条件下で投与は行った。飼料は、投与から約6時間後にイヌに与えた。血漿検体を、第0日、第5日および第15日に各イヌから得た。2週間の投与間隔が終了してから、親薬剤および2つの代謝物(A−892856(ヒドロキシル代謝物)およびA−892667(カルボン酸代謝物)の血漿濃度を、HPLC/MSによって測定した。
【0168】
【表20】

【0169】
サル試験−単一用量および用量応答
投与のプロトコール
カニクイザルでの単一用量および用量応答についてサルでスクリーニングした製剤の詳細を表6に挙げてある。各製剤は、サル3匹の群に対して100mgの単一用量で投与した。血漿濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0170】
投与方法
脂質製剤を、強制経口投与によって投与した。
【0171】
サル試験−多用量試験
投与プロトコール
各製剤を、絶食条件下でサル3匹の群に100mgの単一用量で投与した。血漿濃度をHPLC−MSによって測定した。脂質製剤は、経鼻強制経口投与によって投与した。半固体製剤を、材料が液体状態となるまで50℃±5℃の温度で加温してから投与に供した。そして製剤は、動物に投与するまで、37℃±5℃の温度で液体状態に維持した。
【0172】
ラット試験−単一用量および用量応答試験
投与のプロトコール
各製剤を、ラット3匹の群に3mL/kgの最大値で投与した。ラットには飼料(通常の餌)および水を自由に摂取できるようにした。投与から24時間後に各ラットから採血を行った。血漿濃度をHPLC−MSによって測定した。
【0173】
用量試験−単一用量製剤スクリーニング
所望の目的は、100mgの単一用量を用いた絶食イヌでの約40%(ばらつきは30%未満)の生物学的利用能であった。少なくとも5%の薬剤負荷量を得て、より高い用量に必要な体積が投与可能な賦形剤限界を超えないようにすることも望ましかった。前DDC製剤スクリーニングの間、90.25%の脂質媒体(オレイン酸:クレモフォルEI:PEG−400の組成が重量比で81:9:10)、4.75%DMSOおよび1.4%ABT−102からなる脂質製剤を用いた。この処方を用いて41.3%の生物学的利用能が得られたが、毒性評価に関しては、APIを溶解させるためにDMSOを用いる必要性があることは望ましいものではなかった。前DDC脂質製剤について得られたデータに基づいて、1.5%〜5%の範囲の薬剤負荷量で界面活性剤としてのクレモフォルRH40および共溶媒としてのPEG400もしくはVP二量体を用いて、一連のオレイン酸に基づく脂質製剤を開発した。さらに、中鎖モノおよびジグリセリド、キャプムル(Capmul)MCMに基づく、2〜3%の薬剤負荷量を含む製剤も製造した。これらの製剤によって、0.1N HClまたは水中に1:100(重量/体積)比で分散させると粗乳濁液が得られた。オレイン酸に基づく製剤およびキャプムルMCMに基づく製剤のイヌでの評価の結果を表2に示してある。さらに、薬剤負荷量の関数としてのイヌでの生物学的利用能を、図2にプロットしてある。キャプムルに基づく製剤は、3%および2%という低い薬剤負荷量でそれぞれ11.6%〜16.4%の生物学的利用能を示した。オレイン酸に基づく製剤は、3.4%(5%の高薬剤負荷量)〜47.3%(1.5%の低薬剤負荷量)の範囲の生物学的利用能を与えた。
【0174】
いずれの種類の製剤においても、生物学的利用能は薬剤負荷量への強い依存性を示しており、同じ薬剤負荷量レベルで、オレイン酸に基づく製剤の方がキャプムルに基づく製剤と比べて相対的に高い生物学的利用能を与えた。ABT−102は非常に小さい水溶解度を示し、それのオレイン酸およびキャプムルでの溶解度も限られていることから、これらの脂質経が可溶化状態で薬剤を保持する能力は、薬剤負荷量が増加するに連れて低くなる。水に懸濁させると、薬剤は沈澱する傾向があり、比較的高い薬剤負荷量レベルでの生物学的利用能が低くなるのはそのためである可能性がある。
【0175】
次に、より微細な分散系を生じると考えられるフォーサル50PGを用いて脂質製剤を製造した。最初に、重量比57:28.5:9.5でのフォーサル50PG:PEG−400:EtOHからなる脂質中に5%ABT−102を含む処方をイヌで調べた。この処方によって、イヌで16.8%の生物学的利用能が得られた。次に、ポリソルベート80を界面活性剤として組み込んで、微細に分散した系をさらに形成できるようにした。水系媒体に分散させるとより均一に分散した乳濁液が形成されるにも拘わらず、界面活性剤を加えた結果として得られた製剤(ロット81284−146EE1および81284−146−FF1)でイン・ビボ吸収に有意差は認められなかった。全体的に、フォーサルに基づく製剤は、オレイン酸に基づく製剤およびキャプムルMCMに基づく製剤と比較した場合に、5%薬剤負荷量に関してより高い生物学的利用能を示した。しかしながら、得られた生物学的利用能は、このレベルの薬剤負荷量では所望の目標値よりかなり低かった。
【0176】
多くのラブラゾルに基づく微細分散製剤が、PARDLUによって提供されている。これらの製剤は、4〜6%の範囲の薬剤負荷量に関して2%〜23.3%の範囲の生物学的利用能値を与えた。薬剤負荷量の関数としての生物学的利用能は、フォーサルに基づく製剤と同じ傾向に従う。これもやはり、イン・ビボ吸収が油滴の分散程度に関連している可能性があることを示している。一つの興味深い所見は、ロット81284−154−24中のトランスクトール(transcutol)CG/キャプムルMCM/プロピレングリコールをロット81284−167−1でVP二量体およびビタミンETPGSに置き換えた場合、同様の薬剤負荷量(約6%)で、イヌの生物学的利用能が2%から11%に上昇するという点である。前記傾向からのこの逸脱は、界面活性剤としてのビタミンETPGSが系の分散性をさらに高めることができることを示している。
【0177】
この論理に従い、イン・ビトロ分散性試験に基づいて、クレモフォルRH40、ゲルシア44/14およびビタミンETPGSなどの界面活性剤ならびにプロピレングリコールおよびVP二量体などの溶媒の組み合わせを用いて、多くの自己乳化送達系(SEDDS)に基づく製剤を開発した。0.1N HCl溶液中に分散させると、これらの系を用いて得られた分散液は、コロイド状で半透明の溶液であった。やはり、上記の微細分散脂質系によって示されたBA−薬剤負荷量傾向に従うような形で、これらの製剤によって生物学的利用能が得られた。
【0178】
生物学的利用能をさらに高め、薬剤負荷量に対する依存性を低くするために、2種類のアプローチを行った。第1に、ビタミンETPGSの水溶液(7.5%溶液25mL)とともに、製剤を前投与した。第2に、ゲルシア44/14のレベルを高めながら、製剤中に含めた。前投与の手法は、TPGS溶液中でのTPGSに基づく脂質製剤の分散によって透明溶液が得られるが、水または0.1N HCl中に分散させた場合には半透明溶液となったという所見に基づいて選択した。動物種でのTPGSの高い耐容性(数字?)に基づくと、TPGSに基づく製剤を投与する前に強制経口投与される7.5%TPGS(1.875g)水溶液25mLの前投与が、本試験に関しては実施可能であると考えられる。結果は非常に有望なものであった。前投与せずに25.5%の生物学的利用能を与えた同じ4%製剤(ロット81396−051−1)は、この場合には39.4%の生物学的利用能を与えたものと考えられる(ロット81284−174−2)。TPGS前投与に加えて、製剤中でのゲルシア44/14の増加によっても、生物学的利用能における有意な改善があった(ロット81396−051−3における24.8%からロット81396051−2における47.8%)。これらの製剤に関しては、前投与によって、生物学的利用能の薬剤負荷量への依存性も排除された。TPGS溶液の前投与を高いゲルシアレベルと組み合わせることで、8%という高い薬剤負荷量として、40%を超える生物学的利用能を達成することが可能であった(ロット81283−14−1)。
【0179】
従って、100mgの単一用量の場合、NLT5%のDLでの40%BAの所望の目標は達成された。SEDDS系が、全ての脂質系の中で最も良好な性能を示した。TPGS溶液を前投与することで、BAがさらに高くなり、薬剤負荷量の効果は低減された。
【0180】
用量増加
所望の目標は、50〜60μg・時/mLのAUCの曝露レベルであった。理想的にはこれは、カプセル3個で投与すべきであり、4個以下が許容されるものであった。賦形剤の量は許容できる安全性範囲内とすべきであり、TPGS溶液による前投与は回避すべきであった。
【0181】
イヌ試験−合計曝露についての製剤スクリーニング
これを達成するために実験を行った製剤および用量を表3に挙げてある。用量は、100mgから1200mgまで上昇させ、製剤においていくつかの小さい変更を行った。用量は3〜4カプセルで維持し、薬剤負荷量を8%まで増やした。1200mg以下の賦形剤量で、安全性についての要件は満足された。前投与は、PEG/PG中のTPGS溶液を充填したカプセルに変更した。より高い用量を、前投与せずに投与した。AUC/用量は900mgまで直線関係を示しており、高用量で(>900mg)イヌでの嘔吐が認められ、高用量での前投与TPGSでは、それ以上AUCが高くはならない。
【0182】
イヌ試験−用量上昇/用量応答試験
用量応答試験用に2つの製剤を選択した。用量応答は十分であった。
【0183】
イヌ試験−多用量試験
イヌでの多用量試験用に選択した製剤は、得られた曝露、賦形剤の安全性および認められた用量応答に基づいたものとした。しかしながら、多用量試験の後、恐らくは代謝誘発が原因で、多用量投与によって血漿濃度が急激に低下することが認められた。最終試験献体を分析したところ、なお安定であることが認められた。
【0184】
サル試験−単一用量および用量応答
別の動物種であるカニクイザルで、製剤の評価を行った。製剤は経鼻強制経口投与によって投与する必要があることから、製剤は37℃でより液体性となるように改変を行った。そのために、フォーサル50PGおよびフォーサル53MCTを製剤に含有させた。この製剤は37℃で液体であったが、それは室温まで冷却すると徐々に半固体となった。
【0185】
R4P3からのスクリーニング研究に基づいて、 担体溶液の2つのファミリーについて検討を行い、一方では主溶媒としてフォーサル53MCT(American Lecitin Company, Oxford, CT)を用い、他方では主溶媒としてオレイン酸(Mednique 6322, Cognis corporation, Florence, KY)を用いた。いずれの場合も、PEG400(ルトロール400 NFまたはプルラケア(Pluracare)E400またはBASF社(BASF corp., Mount Olive, NJ)から)を薬剤溶解度促進剤として用いた。使用した乳化剤は、ポリソルベート80(Crillet 4HP, Croda Inc., Parsippany, NJ)およびポリオキシル35ヒマシ油(クレモフォルEL、BASF corp., Mount Olive, NJ)であった。調べた酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(アボットコード04703KJ00)、クエン酸(Sigma Aldrich Co., Inc., Milwaukee, WI)、L−アスコルビン酸(Sigma Aldrich Co., Inc., Milwaukee, WI)、6−パルミチン酸L−アスコルビル(Ascorbic palmitate)(Sigma Aldrich Co., Inc., Milwaukee, WI)およびdl−α−トコフェロール(Sigma Aldrich Co., Inc., Milwaukee, WI)であった。フォーサル53MCTにおける主要な薬剤可溶化剤は、レシチン(ホスファチジルコリン)および中鎖トリグリセリドオイルである。フォーサル53MCTの完全組成を表5に示してある。表5には、公定書状況とともに成分の機能についてのデータも挙げてある。フォーサル53MCTは上記の賦形剤ではないが、それの成分のいずれも、多くの医薬、化粧品および栄養の用途で用いられている。
【0186】
薬剤溶解度の測定
化合物約100〜400mgを、4mLガラスバイアル中に秤取し、それに混合物2mLを加えた。次に、バイアルを10分間渦攪拌および超音波処理した。バイアルをアルミホイルで覆ってAPIを光による分解から保護し、25℃に保持した水浴に入れ、2日間攪拌した。サンプルを濾過および希釈してから、溶質100μLをHPLC分析用に25mLメスフラスコにピペットで入れた。正確な重量を記録したら、サンプルをメタノールに溶かした。正確な重量希釈は25倍であった(サンプル40μL/移動相960μL)。
【0187】
製剤試験用の薬剤溶液の調製
最初に、琥珀色の瓶またはバイアル中に個々の賦形剤を秤取することで、担体溶液を調製した。液体成分の混合物を、渦攪拌とそれに続く超音波処理によって均質化した。次に、第2の琥珀色瓶中にて、APIを担体溶液に加えた。API溶解プロセスを、透明液体が得られるまで、渦攪拌とそれに続く20〜30分間の超音波処理によって促進した。そして、溶液を室温で終夜保存してから、使用に供することになると考えられる。
【0188】
場合によっては、封入ボックスを有する280リットルのグローブバッグ(アルドリッチ・アトモスバッグ(AtmosBag)、Z11282−8型、Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)を用いて窒素雰囲気下に溶液を調製した。全ての必要な装置をグローブバッグ内に入れたら、最初に空気を追い出し、次にバッグを窒素で膨らませることでパージを行った。次に、バッグを再度圧縮し、封止し、窒素で再度膨らませ、製造工程を通じて陽圧を維持した。窒素純度は99.995%であった。
【0189】
イヌでの薬物動態試験
イヌPKの作業を、絶食条件下で行った。親薬剤の血漿濃度を、HPLC−MSによって測定した。
【0190】
API溶液を、軟ゲルカプセルでの経口投与で、またはリンゴ果汁で希釈した後の強制経口投与によってイヌに投与した。使用した軟ゲルカプセルは、親水性で空気充填したカプセルであった(L3DXHB、Cardinal Health, Inc., Dublin, OH)。ゼラチンカプセルは注射器(ゲージ20針)で充填し、スパーテルで熱封止した。リンゴ果汁希釈試験の場合、API溶液およびリンゴ果汁は別個に供給し、投与直前に混合した。希釈試験用のリンゴ果汁は、「ビタミンC添加100%リンゴ果汁」とラベル表示されたドミニクス(Dominick's)で購入した1.89瓶から得たものである。
【0191】
安定性試験
2つの別個の安定性試験を実施した。第1の試験は、少なくとも1ヶ月間にわたって5℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHに保持した1cc注射器およびHI型琥珀色瓶中での一つのフォーサル53MCT製剤(2.5重量%の薬剤を含むF11)および一つのオレイン酸に基づく製剤(2.5重量%の薬剤を含むF13)の安定性を確認するためのものであった。使用した1cc注射器および琥珀色瓶ならびにそれらの選択理由は、本セクションの最後に記載している。第1の試験に用いたサンプルはいずれも空気中で調製した。薬剤ロット#1251524−0を用いて、第1の安定性試験に供した溶液を調製した。
【0192】
第2の安定性試験の目的は、オレイン酸に基づく製剤に加える酸化防止剤の有効性を確認することにあった。サンプルはいずれも、窒素層流下に調製した。色変化および相分離を肉眼で観察しやすくするため、容器は透明のシンチレーションバイアルとした。保存中、光から保護するために、バイアルはアルミホイルで覆った。保存条件は、5℃、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHであった。合計10個の製剤を調べた。第1の安定性試験と同様に、薬剤負荷量はいずれの場合も2.5重量%とした。薬剤ロット#16−632−ALを用いて、第2の安定性試験に供する溶液を調製した。
【0193】
NC−R14にある冷温室LC943137を用いて5℃での保存を行った。NC−R13−142にあるチャンバーLC932330およびLC932329を用いて、それぞれ25℃/60%RHおよび40℃/75%RHでの保存を行った。安定性試験用に選択した瓶および注射器は、
瓶および蓋:
・10ccのIII型琥珀色特殊部品#WO12442(Alcan Packaging PPC Inc., Millville, NJ)
・テフロンで表面処理したフォーム状PEライナーを有する20−400キャップ、カタログ番号239229(図番号A=W010638)(Alcan Packaging PPC Inc., Millville, NJ);
注射器および注射器キャップ:
・キャップ付きバクサ(Baxa)1cc注射器、品番7101(Baxa corporation, Englewood, Co)
・品番BUCCの透明キャップを有するHSWノーム−ジェクト(HSW Norm-Ject)1cc注射器、品番A1(Air-Tite Co., Inc., Virginia Beach, VA)
であった。
【0194】
琥珀色瓶はアボットの消耗品である。製造および輸送には比較的大きい瓶が必要であることから、10cc瓶の組成は同じ供給者からのより大きいIII型琥珀色瓶のものと同じであることを本発明者らは確認している。
【0195】
いずれの注射器も、ほとんどの医薬成分と適合性である高分子量ポリオレフィン製のピストンおよび外筒を特徴とする。バクサ注射器では、外筒とピストンの間のすき間は、小さいシリコンリングで封止されており、医療用シリコーンオイルのコーティングによって摩擦が低減されている。 それに対してHSW注射器は、精密成形プロセスにより、ガスケットが必要ない。その注射器は、2つの構成要素の平滑仕上げにより、潤滑剤が必要ない。HSW設計でエラストマーおよび潤滑剤がないことで、製品汚染のリスクが大きく低減される。
【0196】
効力アッセイ
安定性試験を支援する効力アッセイを、PARDアナリティカル(PARD Analytical)によって行った。
【0197】
薬剤溶解度およびイヌ薬物動態
一つの媒体製剤から別のものまで密度を変えると、単位体積当たり重量の基準より、重量%基準で製剤する方がより実際的であることが認められた。最終 製剤を選択したら、媒体の密度を測定し、濃度を体積基準での患者投与についてmg/mLで報告する。F13の場合を除き、明細書で報告のいずれのPK試験も100mgの薬剤用量を送達した。
【0198】
フォーサル53MCTに基づく製剤
調べた5個の製剤についての溶解度およびイヌPKデータを表6Bにまとめてある。イヌPK結果はいずれも表6Bにまとめてある。いずれの薬剤溶解度値も室温で測定したものである。
【0199】
前製剤(R4P3)によってスクリーニングした基準担体製剤(表6Bで「基底線」と略してある)は、9.7重量%の薬剤溶解度を有しており、イヌでの生物学的利用能は37.4%であった。製剤試行の初期の段階では、目的は100mg/mLの最大薬剤負荷量、最大薬剤負荷量より少なくとも50%大きい飽和溶解度を達成し、可能であれば、R4P3試作物の生物学的利用能に改善をもたらすことにあった。基底線製剤に存在する10重量%のエタノールが10重量%PEG400(F11−4)に置き換わった場合、薬剤溶解度は9.7重量%から13.9重量%に上昇した。すなわちかなりの改善があったが、15重量%の飽和溶解度の目標を満足するには不十分であった。生物学的利用能についての傾向も、基底線製剤からF11−4で下降していた。PEG400レベルが増加することで、恐らくは薬剤溶解度が高くなり、生物学的利用能について不利な条件がさらに生じ、安定性リスクが高くなったものと考えられる。むしろ、最大薬剤負荷量要件を7.5重量%に緩め、最大薬剤負荷量の150%より高い飽和溶解度を維持しながらイヌでの生物学的利用能を高めることで合意に達した。
【0200】
薬剤負荷量 が7.5%である担体F11−4で、上記の目的は全て達成された。しかしながら、F11−4は粘性が高すぎて、診療所での室温で注射器中に吸い込むことは容易ではなかった。この問題に対処するため、5%重量のエタノールを含む媒体F11−5を導入した。フォーサル53MCT含有量が小さくなっていることで、薬剤溶解度および生物学的利用能のいずれも低下した。得られた12.2重量%の薬剤溶解度は最大薬剤負荷量の150%より高かったが、さらなる検討は、薬剤溶解度の目標を維持しながら生物学的利用能を高めることに焦点を当てた。これを達成するため、0.5%ポリソルベート80を導入して乳化を改善することにより、担体F11−5の変性を行った。得られた溶液(F11−6)の特性を表6に示してある。F11−6を用いることで、薬剤溶解度は維持されながら、粘度は診療所で取り扱うのに許容できるレベルまで低下した。さらに、初期の製剤と比較して、生物学的利用能はかなり上昇した。
【0201】
F11−6は、プロジェクトがLUに移った時の主要なフォーサル53MCT担体製剤であった。結局はPEG400からの不純物が後にAPI分解の原因であることが認められる可能性があったため、PEGを含まない媒体が開発された。そのようなPEGを含まない媒体の例がF11−7である。この担体でのAPI溶解度は測定しなかったが、それの組成はR4P3試作品の「基底線」のものに非常に近い(わずか0.5%のポリソルベートを添加)ことから、それは9〜10重量%の範囲になる可能性がある。結果的に、F11−7は、F11−6ほど高い薬剤負荷量を保持することはできないと考えられる。表6にまとめたイヌPKデータは、それのイヌでの生物学的利用能が高く、F11−6のものに非常に近いことを示している。
【0202】
R4EKによってイヌで実施されたフォーサル53MCTの初期の毒性試験では、用量非線形性の証拠は示されなかった。従って、表6B全体で認められる薬剤負荷量のおける変動は、イヌでの生物学的利用能に影響を与えないものと考えられる。
【0203】
リンゴ果汁での希釈効果の試験
薬剤負荷量が5重量%である担体「基底線」、F11−6およびF11−7のイヌにおける生物学的利用能に対してリンゴ果汁での1:20(重量基準)希釈が与える効果も調べた。用量はいずれの場合も100mgであったが、薬剤負荷量は変動させた。全てのデータを表7Bにまとめてある。5%薬剤負荷量を有しリンゴ果汁で希釈した基底線担体を、同じイヌの群で得られたそれ以前のデータと比較したが、軟ゲルカプセルおよび薬剤負荷量6.5重量%で投与を行った。対照を軟ゲルカプセル中薬剤負荷量7.5重量%で得た点を除き、5%薬剤のF11−6担体でも同じことを行った。これら2つの製剤についての血漿プロファイルを本明細書では示している。少数のイヌのばらつきの範囲内で、希釈および未希釈のF11−6間、または希釈および未希釈の基底線製剤間で薬物動態に有意差はなかった。
【0204】
同様の希釈試験を、5重量%薬剤を含む担体F11−7について行った。軟ゲルカプセル投与を別の群のイヌで行ったが、薬剤負荷量は同じままとした。血漿濃度は、リンゴ果汁での希釈後には若干低下した。希釈F11−7のばらつきは実際、カプセル投与から認められるものより低かった。比較のため、基底線製剤およびF11−6製剤を同じプロット上で示してある。最低生物学的利用能は基底線で得られており、ポリソルベート80またはPEG/ポリソルベート80を加えることで生物学的利用能は増加した。
【0205】
上記製剤をリンゴ果汁で希釈することで得られた乳濁液の安定性について、肉眼観察も行った。乳濁液の安定性は、F11−7>>F11−6>基底線と等級分けされた。ポリソルベート80は、特にF11−7の場合に、乳濁液の長期安定性に大きい影響を有していた。
【0206】
オレイン酸に基づく製剤
調べた6個の製剤についての溶解度およびイヌPKデータを表8Bにまとめてある。イヌPK結果は表8にまとめてある。
【0207】
オレイン酸製剤は、ノルビル(Norvir)およびカレトラ(Kaletra)について用いられるものと同様である。これらの製剤は、フォーサル53MCTに基づくものに対する代替品と考えた。いずれの媒体製剤にも、オレイン酸を乳濁させるために20重量%PEG400および10重量%ポリオキシル35ヒマシ油を含有させた。重要な製剤の可変要素は酸化防止剤の種類であった。別のものは、5重量%エタノールの有無であった。酸化防止剤は、第1の安定性試験でこの製剤が酸化分解を受けやすいことが示された時点で導入した。担体製剤F13−13中の5%エタノールは、冷蔵条件下での相分離を低減または起こさないようにするために導入した。イヌ生物学的利用能は、調べたいずれの製剤においても非常に高いことが認められた(表8B)。従って、この段階での製剤選択の要素は、薬剤溶解度および物理的安定性であった。
【0208】
担体製剤F13−13(エタノール含有)を除き、薬剤溶解度は室温で10.5〜11.4重量%と測定された。すなわち50%溶解度限界で7.5重量%の薬剤負荷量を維持するには十分であった。残念ながら、5%エタノールを加えることで、室温での薬剤溶解度は7.8重量%まで低下した。5℃での相分離は許容できないと考えられたことから、担体F13−13での薬剤溶解度も5℃で測定し、それは室温での値(10.3重量%)より高いことが認められた。この通常とは異なる逆温度効果は、各温度での複数の試験(n=3)で確認された。F13−13での薬剤溶解度が比較的低いことは、この製剤をFIM試験に選択した場合には、最大薬剤負荷量を5重量%まで下げなければならなくなる可能性があることも意味している。
【0209】
リンゴ果汁での希釈効果試験
製剤F13−12およびF13−13のイヌでの生物学的利用能を、リンゴ果汁で1:20(重量基準)希釈した後にも調べた。いずれの場合も、薬剤負荷量は7.5重量%であり、用量は100mgであった。リンゴ果汁と混合したらすぐに乳濁液が生成した。肉眼観察のみに基づくと、その乳濁液は少なくとも30分間安定なように見えた。イヌ試験で用いた希釈懸濁液は、混合直後に強制経口投与によって投与した。リンゴ果汁で得られたイヌPK結果を、未希釈製剤を充填した軟ゲルカプセルを摂取させたイヌの同じ集合で得られたそれ以前のデータと比較した。結果を表9にまとめてある。
【0210】
安定性
効力
安定性試験#1:瓶および注射器に入った2.5重量%のAPIを含むF11とF13
ロット1251524−0中の既知の不純物について補正を行った、製造時に用いた実際の薬剤物質量から効力を計算する。この試験の主要結果は、下記のようにまとめることができる。
【0211】
・フォーサル53MCTに基づく製剤F11は、容器および保存条件とは無関係に、オレイン酸に基づく製剤F13よりかなり安定であった。
【0212】
・製造時の効力損失はF13の場合にかなり大きかったが、F11の場合は比較的小さい(瓶)か無視できる程度であった(注射器)。
【0213】
・安定性は、バクサ注射器よりHSW注射器での方が高かった。
【0214】
・25℃/60%RHで4週間保存した後に、HSW注射器において有意な効力損失は検出されなかった。
【0215】
・注射器で保存した場合の25℃/60%RHでの4週間の保存後のF13における効力損失は8〜13%の範囲であった。
【0216】
瓶中でのF11の安定性が最も良い注射器での場合ほど高くないということは、当初は驚くべきことであると考えられる。しかしながら、この異常さは、製造上の欠陥のために湿度チャンバー内で保存した瓶でキャップが緩んだために、瓶の内外に物質の移動が生じた可能性が高く、その後に問題が発見されてキャップが交換されたという事実によって説明することができる。
【0217】
安定性試験#2:オレイン酸に基づく製剤の安定性に対する酸化防止剤の効果
第2の安定性試験で用いた製剤については、表10に記載されている。F13は、酸化防止剤を添加していない対照である。添加されるBHT量の増加の効果を調べるために、溶液F13−3〜F13−5を調製した。クエン酸およびBHTの組み合わせた効果を調べるために溶液F13−6〜F13−9を調製し、アスコルビン酸およびBHTの組み合わせた効果を調べるために溶液F13−10〜F13−11を調製した。最初に、すなわちPEG400を他の賦形剤と混合する前に、クエン酸とアスコルビン酸の両方をPEG400に溶かした。空気中で製造した一部の対照を除き、他の溶液はいずれも窒素層流下で製造した。いずれの場合も薬剤負荷量は2.5重量%とした。
【0218】
本明細書に記載の上記10個の製剤の安定性のまとめ。既知不純物について補正した製造時に用いた薬剤物質の実際の量から効力を計算する。主要な結果は下記のようにまとめることができる。
【0219】
・製造時の効力損失はいずれの場合も大きかったが(6〜8%)、安定性試験#1の場合(10%)より小さかった。
【0220】
・BHTレベル上昇によって効力損失は低下しなかった。
【0221】
・BHTと組み合わせたクエン酸によって、効力損失は低下しなかった。
【0222】
・BHTと組み合わせたアスコルビン酸は、製造時の効力損失を1〜2%低下させるように見えた。
【0223】
・5週間にわたる5℃での保存の結果、有意な効力損失は検出されなかった。
【0224】
・25℃/60%RHで4週間保存した後の効力損失は6%と高いものであった。
【0225】
・40℃/75%RHで2週間保存した後の効力損失は8%と高いものであった。
【0226】
各製剤は、関連物質のHPLCによっても同様であり、2つの「酸化」ピークを示した。しかしながら留意すべき点として、クロマトグラフィーのベースラインは、賦形剤からの有意な妨害を示しており、恐らくは重要な情報がマスクされている。
【0227】
物理的外観
安定性試験#2
安定性試験#2で用いたサンプルについては、各種条件下に4週間保存した後の色および相分離についても調べた。結果を表10にまとめてある。主な結果は下記のようにまとめることができる。
【0228】
・5℃で4週間保存後は、全ての製剤の元の淡黄色は維持された。
【0229】
・25℃/60%RHで3週間保存後は、全てのサンプルが淡黄色からピンクに変わったが、顕著な例外はアスコルビン酸を含む2個のサンプルであった。
【0230】
・40℃/75%RHで4週間保存した後は、全てのサンプルが淡黄色からピンクに変わった。しかしながら、アスコルビン酸を含む2個のサンプルにおける色変化は、25℃/60%RHの場合ほど顕著ではなかった。
【0231】
・5℃で4週間保存した後は、沈澱および表面フィルムの形態で、全てのサンプルで相分離が生じた。いずれの場合も、この相分離は、サンプルを昇温させて室温とすると熱的に可逆的であった。
【0232】
別の製剤を用いた補完的安定性
第2の安定性試験で認められた結果について改善を行う一環で、表11Bで定義の3個の別の製剤いついて、加速的品質安定性試験を行った。F13−13には、冷蔵保存条件下での相分離を起こさないようにするために5%エタノールを含有させた。F13−14およびF13−15には、酸化防止剤としてビタミンEおよびパルミチン酸アスコルビルを含有させた。3つのいずれの場合も、これらの溶液が、正式の安定性試験の一部ではなくイヌ試験から過剰であったことから、薬剤負荷量は7.5重量%とした。溶液は5℃で保存し、やはり終夜にて50℃に曝露することで加速分解を受けた。表11Bに示した結果は下記のようにまとめることができる。
【0233】
・50℃で終夜保存した後には、0.18%パルミチン酸アスコルビルを含むF13−15以外の全ての製剤が淡黄色からピンクになった。
・5℃で保存した後は、エタノールを含まない2製剤のいずれにおいても、沈澱および表面フィルムの形態で同じ相分離が生じた。しかしながら、F13−13(エタノールを含む)の場合には、沈澱がなくなり、表面フィルムは非常に軽度で、熱的に可逆的であった。
【0234】
考察
フォーサルに基づく製剤およびオレイン酸に基づく製剤の両方の試みで、薬剤溶解度およびイヌPK(リンゴ果汁希釈後)を有する担体が得られた。これは、脂質を好適なレベルのPEG400および乳化剤と組み合わせることで達成された。アルコールも加えて、粘度を低下させ、冷蔵条件下での相分離を低減した。2つの担体ファミリーの間の主要な相違は安定性にある。F11は、製造時およびHSW注射器で25℃にて4週間保保存している間に効力損失を示さなかったが、F13および派生処方では、製造損失および保存時分解の両方の問題があった。有意な形でのこれらの効力損失低下において、酸化防止剤の添加は奏功しなかった。アスコルビン酸およびパルミチン酸アスコルビルによって、淡黄色からピンクへの変色プロセスが大幅に遅くなったが、効力損失の低下は同時にはほとんどなかった。
【0235】
効力損失
効力損失の機構は、LCとLUの間のプロジェクト以降の際には解明されなかった。この問題に関する詳細については、LUチームから出される今後の記録を読むことが推奨される。
【0236】
冷蔵条件下での濁り
活性およびプラシーボの両方のオレイン酸に基づく製剤が、冷蔵条件下(5℃)で保存した時に濁った。この相分離は、パルミチン酸、ミリスチン酸およびステアリン酸などのオレイン酸中の飽和脂肪酸不純物の存在によるものである。それ以下では相分離が起こる温度を、分析証明書では「力価」と称する。その力価は5℃に近い。冷蔵条件下での相分離は、(1)振動がない状態で経時的に底に沈澱する傾向のある濁り、および(2)表面で浮遊する薄い固体フィルムという2つの形態を取る。濁りは以前から報告されてきた。それは容易に認められ、5%エタノールで容易に消失する。それに対して、表面での薄膜は、見えることがより困難で、5%エタノールを加えても持続する可能性がある。
【0237】
可溶化の機構
本試験からの選択された製剤を水系溶媒で希釈し、偏光顕微鏡で分析すると、「マルタ十字架」パターンが認められた。これは、疎水性薬剤が多層リポソーム構造内に捕捉される可能性のあることを示唆している。仮説として、これらの構造は薬剤の再結晶を遅延させることで、リポソーム構造と腸壁との間の受動輸送による吸収が可能となり得る。
【0238】
【表21】

【0239】
【表22】

【0240】
【表23】

【0241】
【表24】

【0242】
【表25】

【0243】
【表26】

【0244】
【表27】

【0245】
【表28】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一つのリン脂質および(b)製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の担体中の溶液で低水溶解度の低分子薬剤を有する薬剤−担体系を含み、前記薬剤−担体系が、水相と混合すると、非ゲル化性で実質的に不透明の液体分散液を形成する医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤−担体系が液体である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一つのリン脂質が、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルエタノールアミン類およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一つのリン脂質が大豆レシチン由来のホスファチジルコリンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記可溶化剤がグリコールおよび/またはグリセリド材料を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記可溶化剤が、中鎖および長鎖モノ、ジおよびトリグリセリドならびにそれらの混合物からなる群から選択されるグリセリド材料を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記可溶化剤が1以上の中鎖トリグリセリドを含む請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体がさらにエタノールを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記担体がさらに製薬上許容される界面活性剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤−担体系が封入された経口投与に適したカプセルシェルをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記カプセルシェルが、硬または軟弾性ゼラチンカプセルシェルである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬剤が約500g/mol以下の分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記薬剤が、約10μg/mL未満の水溶解度を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬剤がタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬である請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬剤が、下記式(I)の化合物または該化合物の治療上許容される塩である請求項1に記載の組成物。
【化1】

[式中、
Aは、インドリル、フェニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジルおよびチエニルからなる群から選択され;
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシ−アルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)アルキニル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシおよびLRからなる群から選択され、ただしR、RおよびRのうちの少なくとも二つはLR以外であり;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基はAに結合している端部が左となるように描かれており;
は、水素、アリール、シクロアルキル、複素環および1,3−ベンゾジオキソリルからなる群から選択され、前記1,3−ベンゾジオキソリルは独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルコキシ、アリールアルキル、アリールオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、第2の複素環基、複素環アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロ、−NRおよび(NR)アルキルからなる群から選択される1、2または3個の置換基で置換されていても良く;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルケニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニル、シクロアルキル、複素環、複素環アルキルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルおよび複素環からなる群から選択される。]
【請求項16】
前記薬剤が下記式(II)の化合物または該化合物の治療上許容される塩である請求項15に記載の組成物。
【化2】

[式中、
Xは、O、SおよびMRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキルおよびヒドロキシからなる群から選択され;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基は左端がRおよびRで置換された環に結合して描かれており;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
10およびR11は独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボキシ、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロおよび−NRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環および複素環アルキルからなる群から選択される。]
【請求項17】
前記薬剤がN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素である請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬剤を単位用量当たり約1〜約500mg含む請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬剤を単位用量当たり約20〜約200mg含む請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記担体が、(a)約25℃で少なくとも約50mg/mLの前記薬剤の溶解度;および(b)少なくとも約25%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの前記組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分および該成分の量を含む請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記担体が、(a)約25℃で少なくとも約67mg/mLの前記薬剤の溶解度;および(b)少なくとも約30%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの前記組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分および該成分の量を含む請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記担体が、(a)約25℃で少なくとも約100mg/mLの前記薬剤の溶解度;および(b)少なくとも約50%の生物学的利用能を示すイヌモデルでの前記組成物の経口投与時の薬物動態プロファイルが得られるよう選択された成分および該成分の量を含む請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記担体中で、前記少なくとも一つのリン脂質が、大豆レシチン由来のホスファチジルコリンを含み、前記可溶化剤が1以上の中鎖トリグリセリドを含む請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記担体が、該担体の重量基準で約30%〜約60%のホスファチジルコリン、約25%〜約50%の中鎖トリグリセリド、約3%〜約15%のエタノール、0%〜約20%のグリコール成分および0%〜約2%の界面活性剤成分を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記担体が、該担体の約50重量%〜100重量%の量でフォーサル53MCT(商標名)または実質的にそれと等価な製品を含む請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記フォーサル53MCT(商標名)または実質的にそれと等価な製品が、前記担体の約80重量%〜100重量%の量で存在する請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
薬剤を含む請求項1に記載の組成物を経口投与する段階を有する、被験者に対して低水溶解度の薬剤を送達する方法。
【請求項28】
少なくとも一つのリン脂質および製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の液体担体中の溶液で薬剤を含む液体薬剤−担体系を含む医薬組成物であって、前記薬剤が下記式(I)の化合物または該化合物の治療上許容される塩である組成物。
【化3】

[式中、
Aは、インドリル、フェニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジルおよびチエニルからなる群から選択され;
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシ−アルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)アルキニル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシおよびLRからなる群から選択され、ただしR、RおよびRのうちの少なくとも二つはLR以外であり;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基はAに結合している端部が左となるように描かれており;
は、水素、アリール、シクロアルキル、複素環および1,3−ベンゾジオキソリルからなる群から選択され、前記1,3−ベンゾジオキソリルは独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルコキシ、アリールアルキル、アリールオキシ、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、第2の複素環基、複素環アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロ、−NRおよび(NR)アルキルからなる群から選択される1、2または3個の置換基で置換されていても良く;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルケニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニル、シクロアルキル、複素環、複素環アルキルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルおよび複素環からなる群から選択される。]
【請求項29】
前記薬剤が下記式(II)の化合物または該化合物の治療上許容される塩である請求項28に記載の組成物。
【化4】

[式中、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、複素環、複素環アルケニル、複素環アルコキシ、複素環アルキル、複素環オキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ、ヒドロキシアルキル、(NR)アルコキシ、(NR)アルケニル、(NR)アルキル、(NR)カルボニルアルケニルおよび(NR)カルボニルアルキルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルコキシ、アルキル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキルおよびヒドロキシからなる群から選択され;
Lは、(CHN(R)C(O)N(R)(CHおよびCHC(O)NRからなる群から選択され、mおよびnは独立に0または1であり、各基は左端がRおよびRで置換された環に結合して描かれており;
およびRは独立に、水素およびアルキルからなる群から選択され;
は、水素、アルケニル、アルコキシアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、複素環アルキル、ヒドロキシアルキルおよび(NR)アルキルからなる群から選択され;
10およびR11は独立に、水素、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルキル、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボキシ、シアノ、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロおよび−NRからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ハロアルキルスルホニルおよび複素環スルホニルからなる群から選択され;
およびRは独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、複素環および複素環アルキルからなる群から選択される。]
【請求項30】
前記薬剤がN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素である請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
請求項28に記載の組成物を好適な投与経路によって被験者に投与する段階を有する、タンパク質チロシンキナーゼ阻害薬が適応である被験者での状態の治療方法。
【請求項32】
前記投与経路が経口である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物を、投与直前に好適な液体希釈剤で希釈する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物を、経口投与に好適なカプセルシェルに封入する請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記状態が、腫瘍症の関与するものである請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍症が関与する状態が、急性骨髄性白血病、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳癌、前立腺癌および腎臓癌からなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が前記薬剤としてN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N′−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素を含む請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物を、前記薬剤約1mg〜約500mgの用量を与える量で投与する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物を、前記薬剤約20mg〜約200mgの用量を与える量で投与する請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記薬剤が下記式(III)の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはプロドラッグである請求項1に記載の組成物。
【化5】

[式中、
−−−は非存在であるか単結合であり;
はNまたはCRであり;
はNまたはCRであり;
はN、NRまたはCRであり;
は結合、NまたはCRであり;
はNまたはCであり;
ただし、X、X、XおよびXのうちの少なくとも一つがNであり;
はO、NHまたはSであり;
は結合、NHまたはOであり;
Arは、ジヒドロ−1H−インデニル、1H−インデニル、テトラヒドロナフタレニル、またはジヒドロナフタレニルであり、Ar基は独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルから選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていても良く、ZおよびZはそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、ホルミル、アリールまたはアリールアルキルであり;
、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルであり;RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)アルキルカルボニル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキル、(NZ)スルホニル、(NZ)C(=NH)−、(NZ)C(=NCN)NH−または(NZ)C(=NH)NH−であり;
は水素またはアルキルであり;
はアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり;
8aは水素またはアルキルであり;
8bは非存在、水素、アルコキシ、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ハロゲンまたはヒドロキシであり;
ただし、XがNの場合はR8bは非存在である。]
【請求項41】
前記化合物が(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素または該化合物の製薬上許容される塩もしくはプロドラッグである請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
少なくとも一つのリン脂質および製薬上許容される可溶化剤を含む実質的に非水系の液体担体中の溶液で薬剤を含む液体薬剤−担体系を含む医薬組成物であって、前記薬剤が下記式(III)の化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくはプロドラッグである医薬組成物。
【化6】

[式中、
−−−は非存在であるか単結合であり;
はNまたはCRであり;
はNまたはCRであり;
はN、NRまたはCRであり;
は結合、NまたはCRであり;
はNまたはCであり;
ただし、X、X、XおよびXのうちの少なくとも一つがNであり;
はO、NHまたはSであり;
は結合、NHまたはOであり;
Arは、ジヒドロ−1H−インデニル、1H−インデニル、テトラヒドロナフタレニル、またはジヒドロナフタレニルであり、Ar基は独立にアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルから選択される1、2、3、4もしくは5個の置換基で置換されていても良く、ZおよびZはそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルキルカルボニル、ホルミル、アリールまたはアリールアルキルであり;
、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキルまたは(NZ)スルホニルであり;RおよびRはそれぞれ独立に、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、(CF(HO)C−、−NRS(O)、−S(O)OR、−S(O)、−NZ、(NZ)アルキル、(NZ)アルキルカルボニル、(NZ)カルボニル、(NZ)カルボニルアルキル、(NZ)スルホニル、(NZ)C(=NH)−、(NZ)C(=NCN)NH−または(NZ)C(=NH)NH−であり;
は水素またはアルキルであり;
はアルキル、アリールまたはアリールアルキルであり;
8aは水素またはアルキルであり;
8bは非存在、水素、アルコキシ、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ハロゲンまたはヒドロキシであり;
ただし、XがNの場合はR8bは非存在である。]
【請求項43】
前記化合物が、(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素または該化合物の治療上許容される塩である請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
単位用量当たり、前記薬剤約50〜約900mgを含む請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記薬剤−担体系が液体である請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
前記少なくとも一つのリン脂質が、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルエタノールアミン類およびこれらの混合物からなる群から選択される請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
前記少なくとも一つのリン脂質が、大豆レシチン由来のホスファチジルコリンを含む請求項42に記載の組成物。
【請求項48】
前記可溶化剤がグリコールおよび/またはグリセリド材料を含む請求項42に記載の組成物。
【請求項49】
前記可溶化剤が、中鎖および長鎖モノ、ジおよびトリグリセリドならびにそれらの混合物からなる群から選択されるグリセリド材料を含む請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記担体が製薬上許容される界面活性剤をさらに含む請求項42に記載の組成物。
【請求項51】
前記界面活性剤が非リン脂質界面活性剤である請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記界面活性剤が、d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンETPGS)である請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記可溶化剤がグリコールおよびグリセリド材料以外である請求項42に記載の組成物。
【請求項54】
前記可溶化剤が(1,3−ビス−(ピロリドン−1−イル)−ブタン(VP二量体)である請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記薬剤−担体系が封入された経口投与に適したカプセルシェルをさらに含む請求項42に記載の組成物。
【請求項56】
前記カプセルシェルが、硬または軟弾性ゼラチンカプセルシェルである請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
請求項42に記載の組成物を好適な投与経路によって被験者に投与する段階を有する、TRPV1拮抗薬が適応である被験者での状態の治療方法。
【請求項58】
前記投与経路が経口である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物を、投与直前に好適な液体希釈剤で希釈する請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記組成物を、経口投与に好適なカプセルシェルに封入する請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記状態が、疼痛、神経因性疼痛、異痛症、炎症もしくは炎症性疾患に関連する疼痛、炎症性痛覚過敏、膀胱過敏および尿失禁からなる群から選択される請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物が、(+)−1−(5−tert−ブチル−1−イル)−3−(1H−インダゾール−4−イル)−尿素または該化合物の治療上許容される塩を前記薬剤として含む請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物を、前記薬剤約1mg〜約900mgの用量を与える量で投与する請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物を、前記薬剤約20mg〜約200mgの用量を与える量で投与する請求項62に記載の方法。

【公表番号】特表2009−513642(P2009−513642A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537868(P2008−537868)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041419
【国際公開番号】WO2007/050574
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】