説明

低減された導電率増加を有する改質顔料含有インクジェットインク組成物

本発明は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料ならびにそのような改質顔料を含むインクジェットインク組成物に関する。このましくは、この塩は、第四級アンモニウム対イオンを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低減された導電率増加を有する改質顔料ならびにそれらの改質顔料を含むインクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
改質顔料製品の調製方法が開発されてきており、それらは種々の異なる、結合した官能基を備えた顔料を提供することができる。例えば、米国特許第5,851,280号明細書には、例えば、ジアゾニウム反応を経由した結合を含む、顔料上への有機基の結合を開示しており、そこでは有機基は、ジアゾニウム塩の一部である。
【0003】
また、ポリマー基が結合されている改質顔料を含めて、改質顔料を調製するための他の方法も開示されている。例えば、国際公開第01/51566号には、第1の化学基と第2の化学基を反応させて、第3の化学基が結合されている顔料を形成することによる改質顔料の製造方法が開示されている。また、米国特許出願公開第2007/0100024号明細書には、少なくとも1つの有機基が結合されている着色剤を含む改質着色剤が開示されており、この有機基は、定められたカルシウム指数値を有している。これらの有機基の具体的な態様が記載されており、少なくとも1つのジェミナル(geminal)ビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含む有機基が挙げられている。更に、米国特許第5,672,198号明細書、第5,922,118号明細書、第6,042,643号明細書、および第6,641,656号明細書には、種々の基、例えばホスホン酸基が結合された改質顔料が開示されている。
【0004】
これらの改質顔料を含むインク組成物、例えばインクジェットインクもまた開示されており、そしてこれらのインクジェットインクは、良好な総合的性能特性を有することが示されている。一般に、これらのインクジェットインク組成物の性質は、種々の因子、例えば顔料の種類、結合基の種類、および添加剤の種類、に依存しており、従って、改質顔料は、インクジェット組成物、例えばサーマルおよびピエゾインクジェットインクプリンタ用として有用なインクジェットインク組成物、の種々の種類の要求に合致するように、誂えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、種々のインクジェットインク工業の要求はより過酷な要求になっているので、向上した性能特性、例えばピエゾプリンタ、特にせん断モードの印刷ヘッドを用いたピエゾプリンタ用では、低導電率、を有し、従って従来の改質顔料に対する有利な代替物を提供する改質顔料への要求が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、a)液体ビヒクル、b)所望による共溶媒、およびc)少なくとも1種の、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む少なくとも1種の改質顔料、を含むインクジェットインク組成物に関する。1つの態様では、このジェミナルビスホスホン酸基の塩またはその部分エステルは、NR'の構造を有する対応する第四級アンモニウム対イオンを有しており、ここでR'は、同じでも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは総炭素が少なくとも6個である。他の態様では、このインクジェットインク組成物は、このインクジェットインク組成物の総質量を基準として、10質量%〜40質量%の量の共溶媒を含んでおり、そして10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有しており、更に、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、60℃で4週間後に、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している。
【0007】
更に、本発明は、NR'の構造を有する対応する第四級アンモニウム対イオンを有する、少なくとも1種の、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料、を含む改質顔料に関し、ここでR7は、同じでも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは総炭素が少なくとも6個である。この改質顔料は、固体の形態、または分散液、特には水性分散液の形態であることができる。
【0008】
更に、本発明は、改質顔料の水性分散液の導電率増加を低減する方法に関する。この方法は、以下の工程、i)対応する対イオンを有する、少なくとも1種の、ジェミナルビスホスホン酸基の塩またはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料の水性分散液を準備する工程、ii)この改質顔料の対イオンをイオン交換して、対応するNR'の構造を有する第四級アンモニウム対イオンを有する、少なくとも1種の、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料の水性分散液を形成する工程であって、ここでR'は、同じでも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは総炭素が少なくとも6個である、工程、ならびにiii)所望により、工程ii)の水性分散液を、50℃〜100℃の温度で、0.5〜5日間の期間にわたり熱エイジングして、更に脱着イオンを含む改質顔料の水性分散液を形成し、そしてこの脱着イオンを除去して;導電率増加が低減された改質顔料の水性分散液を形成する工程、
を含んでいる。
【0009】
前述の一般的な記載と、以下の詳細な説明の両方が、例示的で、説明のためだけのものであり、そして特許請求の範囲に記載した本発明の、更なる説明を提供することを意図したものであることが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の改質顔料の水性分散液の経時の導電率曲線を示している。
【図2】図2は、本発明の改質顔料の水性分散液の経時の導電率曲線を示している。
【図3】図3は、本発明の改質顔料の水性分散液の経時の導電率曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、改質顔料を含むインクジェットインク組成物に関し、そしてこのインクジェットインク組成物は、低減された導電率増加を有している。
【0012】
本発明のインクジェットインク組成物は、少なくとも1つの有機基が結合されている顔料を含む改質顔料を含んでおり、以下により詳細に説明される。この改質顔料の顔料は、固体材料であり、通常は、粒子の形状または容易に粒子に形成される形態、例えば圧縮ケークである。この顔料は、慣用的に当業者に用いられるいずれかの種類の顔料であることができ、例えば黒顔料および他の有色顔料、例えば青、黒、茶、シアン(cyan)、緑、白、紫、マゼンタ(magenta)、赤、橙、または黄顔料であることができる。また、異なった顔料の混合物も、用いることができる。黒顔料の代表的な例としては、種々のカーボンブラック(ピグメントブラック7)、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、およびランプブラックが挙げられ、そして例えば、Cabot Corporationから入手可能な、Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Elftex(登録商標)、Monarch(登録商標)、Mogul(登録商標)およびVulcan(登録商標)の商標で市販されているカーボンブラック(例えば、Black Pearls(登録商標)2000、Black Pearls(登録商標)1400、Black Pearls(登録商標)1300、Black Pearls(登録商標)1100、Black Pearls(登録商標)1000、Black Pearls(登録商標)900、Black Pearls(登録商標)880、Black Pearls(登録商標)800、Black Pearls(登録商標)700、Black Pearls(登録商標)570、Black Pearls(登録商標)L、Elftex(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、Regal(登録商標)660、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標)330、Regal(登録商標)400、Vulcan(登録商標)P)、が挙げられる。他の供給者から入手可能なカーボンブラックも用いることができる。有色顔料の好適な種類としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニン青、フタロシアニン緑、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環黄(heterocyclic yellows)、キナクリドン、キノロノキノロン(quinolonoquinolones)、および(チオ)インジゴイド、が挙げられる。このような顔料は、粉末または圧縮ケークのいずれかで、BASF Corporation、Engelhard Corporation、Sun Chemical Corporation、Clariant、およびDianippon Ink and Chemicals(DIC)、を含めた多くの供給源から商業的に入手可能である。他の好適な有色顔料の例が、Colour Index、第3版(The Society of Dyers and Colourists、1982年)中に記載されている。好ましくは、この顔料としては、シアン顔料、例えば、ピグメントブルー15もしくはピグメントブルー60、マゼンタ顔料、例えばピグメントレッド122、ピグメントレッド177、ピグメントレッド185、ピグメントレッド202、もしくはピグメントバイオレット19、黄顔料、例えばピグメントイエロー74、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー218、ピグメントイエロー220、もしくはピグメントイエロー221、橙顔料、例えばピグメントオレンジ168、緑顔料、例えばピグメントグリーン7もしくはピグメントグリーン36、または黒顔料、例えばカーボンブラック、がある。
【0013】
この顔料は、その顔料の所望の性質に応じて、窒素吸収によって測定された広範囲のBET表面積を有することができる。好ましくは、これらの顔料は、約10m/g〜約1500m/gの範囲、より好ましくは約20m/g〜約600m/gの範囲、そして最も好ましくは約50m/g〜約300m/gの範囲のBET表面積を有している。また、もしも所望の用途に対して所望の表面積が容易に入手可能でなかったならば、その顔料を慣用の粒径低下または粉砕技術、例えばボールミルもしくはジェットミルもしくは超音波処理に掛けて、所望であれば、その顔料をより小粒径に小さくすることができることが、当業者にはよく認識されている。また、この顔料は、当技術分野で知られている、広範囲の一次粒子径を有することができる。例えば、この顔料は、約5nm〜約100nm、例えば約10nm〜約80nm、そして15nm〜約50nmの範囲の一次粒子径を有することができる。更に、この顔料はまた、広範囲のジブチルフタレート吸収(DBP)値を有することができ、これはその顔料の構造または分岐を測定している。例えば、この顔料は、約25〜400mL/100g、例えば約30〜200mL/100g、そして約50〜150mL/100gのDBP値を有するカーボンブラックであることができる。また、この顔料は、約5〜150mL/100g、例えば約10〜100mL/100g、そして約20〜80mL/100gの油吸収値(ISO 787 T5 中に記載されている)を有する有機有色顔料であることができる。
【0014】
また、この顔料は、イオン基および/またはイオン性基を表面上に導入するために、酸化剤を用いて酸化されている顔料であることができる。この方法で調製された酸化された顔料は、表面上により多量の酸素含有基を有していることが見出された。好適な酸化剤としては、酸素ガス、オゾン、NO(NOと空気の混合物を含む)、過酸化物、例えば過酸化水素、過硫酸塩、例えば過硫酸ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム、次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)、例えば次亜塩素酸ナトリウム、岩塩(halites)、ハロゲン酸塩(halates)、または過ハロゲン酸塩(perhalate)(例えば亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、もしくは過塩素酸ナトリウム)、酸化性酸、例えば硝酸、および遷移金属含有酸化剤、例えば過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、または硝酸セリウムアンモニウム、が挙げられるがそれらには限定されない。また、酸化剤の混合物も用いることができ、特に気体状の酸化剤、例えば酸素およびオゾンの混合物を用いることができる。更に、顔料表面上にイオン基またはイオン性基を導入する、他の表面改質法、例えば塩素化またはスルホニル化を用いて調製された顔料もまた、用いることができる。
【0015】
上記のように、本発明の改質顔料は、少なくとも1つの有機基が結合されている顔料を含んでいる。好ましくは、この有機基は、直接結合している。この改質顔料は、有機化学基がこの顔料に結合するように、当業者に知られたいずれかの方法を用いて調製することができる。例えば、この改質顔料は、米国特許第5,554,739号、第5,707,432号、第5,837,045号、第5,851,280号、第5,885,335号、第5,895,522号、第5,900,029号、第5,922,118号、および第6,042,643号の各明細書、ならびに国際特許公開第99/23174号中に記載された方法を用いて調製することができ、これらの記載はその全てを参照することによって本明細書の内容とする。これらの方法は、例えばポリマーおよび/または界面活性剤を用いる分散型の方法に比べて、それらの基の顔料上へのより安定な結合を与える。改質顔料を調製するための他の方法としては、利用可能な官能基を有する顔料と有機基を含む試薬とを反応させることが挙げられ、例えば、それは米国特許第6,723,783号明細書中に記載されており、その全てを参照することによって本明細書の内容とする。このような官能性顔料は、上記で参照した文献中に記載された方法を用いて調製することができる。また、更に、結合された官能基を含む改質カーボンブラックも、米国特許第6,831,194号明細書および第6,660,075号明細書、米国特許出願公開第2003-0101901号明細書および第2001-0036994号明細書、カナダ国特許第2,351,162号明細書、欧州特許第1 394 221号明細書および国際公開第04/63289号、ならびにN. Tsubokawa、Polym. Sci.、第17巻、p.417、1992年、中に記載された方法によって調製することができ、それらの全てを参照することによって本明細書の内容とする。
【0016】
この改質顔料の有機基は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含んでおり、すなわちこの有機基は、同じ炭素原子に直接結合している、少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含んでいる。また、そのような基は、1,1−ジホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩とも称することができる。「その部分エステル」とは、ホスホン酸基が−POAHの式を有するホスホン酸部分エステル基、またはその塩であることができることを意味しており、ここでAはアリール、アルカリル、アラルキル、またはアルキル基である。この有機基のホスホン酸基のいずれか、または両方は、ホスホン酸部分エステル基であることができる。また、ホスホン酸基の一方は、式−POを有するホスホン酸エステルであることができ、一方で、他のホスホン酸基は、ホスホン酸部分エステル基、ホスホン酸基、またはその塩であることができる。しかしながら、少なくとも1つのホスホン酸基は、ホスホン酸の塩か、またはその部分エステルであることが好ましい。
【0017】
例えば、改質顔料のこの有機基は、式−CQ(PO)を有する基の塩、またはその部分エステルを含むことができる。Qは、ジェミナル位に結合しており、そしてH、R、OR、SR、またはNRであることができ、ここでRは、同一でも異なっていてもよく、H、C1〜C18の飽和もしくは不飽和、分岐もしくは非分岐アルキル基、C1〜C18の飽和もしくは不飽和、分岐もしくは非分岐アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である。例えば、Qは、H、R、OR、SR、またはNRであることができ、ここでRは、同一でも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、またはアリール基、である。好ましくは、Qは、H、OH、またはNHである。更に、この有機基は、式−(CH)−CQ(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含むことができ、ここでQは上記の通りであり、そしてnは0〜9、例えば1〜9である。好ましくは、nは、0〜3、例えば1〜3である。また、この有機基は、式−X−(CH)−CQ(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含むことができ、ここでQおよびnは、上記の通りであり、そしてXは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、ビニリデン、アルカリレン(alkarylene)、アラルキレン、環状もしくはヘテロ環状基である。好ましくは、Xは、アリーレン基、例えばフェニレン、ナフタレン、またはビフェニレン基であり、それらは更にいずれかの基、例えば1もしくは2以上のアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。Xがアルキレン基である場合は、例としては、置換もしくは非置換アルキレン基が挙げられ、これらは分岐もしくは非分岐であることができ、そして1もしくは2以上の基、例えば芳香族基で置換されていてもよいが、それらには限定されない。例としては、C1〜C12基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレン基が挙げられるが、それらには限定されない。好ましくは、Xは顔料に直接結合しており、すなわち、顔料とXとの間には、結合した有機基からの更なる原子もしくは基は存在しない。
【0018】
更に、この有機基は、式−X−Sp−(CH)n−CQ(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含むことができ、ここで、X、Q、およびnは上記の通りである。Spは、スペーサ基であり、これは本明細書で用いる場合は、2つの基の間の結合である。Spは、結合または化学基であることができる。化学基の例としては、−CO−、−OC−、−CO−、−OSO−、−SO−、−SO−、−SOO−、−SOS−、−SONR''−、−O−、−S−、−NR''−、−NR''CO−、−CONR''−、−NR''CO−、−OCNR''−、−NR''CONR''−、−N(COR'')CO−、−CON(COR'')−、−NR''COCH(CHCOR'')−およびそれらの環状イミド、−NR''COCHCH(COR'')−およびそれらの環状イミド、−CH(CHCOR'')CONR''−およびそれらの環状イミド、−CH(COR'')CHCONR''およびそれらの環状イミド(例えばそれらのフタルイミドおよびマレイミド)、スルホンアミド基(例えば、−SONR''−および−NR''SO−基)、アリーレン基、アルキレン基など、が挙げられるが、それらには限定されない。R''は、同一でも異なっていてもよく、水素または有機基、例えば置換もしくは非置換アリールまたはアルキル基を表す。上記の構造によって示されるように、少なくとも2つのホスホン酸基またはその塩を含む基は、スペーサ基Spを通してXへと結合されている。好ましくは、Spは、−CO−、−OC−、−O−、−NR''−、−NR''CO−、または−CONR''−、−SONR''−、−SOCHCHNR''−、−SOCHCHO−、または−SOCHCHS−であり、ここでR''は、水素またはC1〜C6アルキル基である。
【0019】
更に、この有機基は、式−CR(PO)を有する基の塩またはその部分エステルであることができる。この式では、RはHまたはC1〜C6アルキル基、例えばメチルまたはエチル基であるが、しかしながら、好ましくはHである。例えば、この有機基は、式−CO−Q−CH(PO)または−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩またはその部分エステルであることができ、ここでQは、O、S、またはNR'''であり、そしてR'''は、H、C1〜C18アルキル基、C1〜C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である。好ましくは、Qは、NHであり、そして従って、この有機基は、少なくとも1つのアルキルアミド基を含み、ここでアルキル基はジェミナルホスホン酸基の塩またはその部分エステルである。
【0020】
具体的な例としては、この有機基は、式−X−CO−Q−CH(PO)または−X−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩またはその部分エステルであることができる。この例では、Xは、顔料に結合しており、そしてアリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリレン、またはアラルキレン基である。Xがアルキレン基である場合には、例としては置換もしくは非置換アルキレン基が挙げられ、それらは分岐もしくは非分岐であることができ、そして1もしくは2以上の基、例えば芳香族基で置換されていてもよいが、それらには限定されない。具体的な例としては、C1〜C12基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、またはブチレン基が挙げられる。好ましくは、Xは、アリーレン基、例えばフェニレン、ナフタレン、またはビフェニレン基である。例えば、この有機基は、−C−CONHCH(PO)基の塩、−C−SONHCH(PO)の塩、またはそれらの部分エステルであることができる。好ましくは、Xは、顔料に直接結合しており、ここで意味するところでは、顔料とXとの間には、この結合した有機基からの更なる原子もしくは基は存在しない。
【0021】
上記の式では、Xは、さらに1もしくは2以上の官能基で置換されていてもよい。官能基の例としてはR、OR、COR、COOR、OCOR、カルボキシレート、ハロゲン、CN、NR、SOH、スルホナート、スルフェート、NR(COR)、CONR、イミド、NO、ホスフェート、ホスホネート、N=NR、SOR、NRSOR、およびSONRが挙げられ、これらの式中では、Rは同一でも異なっていてもよく、独立してハロゲンまたは分岐もしくは非分岐、置換もしくは非置換、飽和もしくは不飽和C1〜C20炭化水素基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル;置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換へテロアリール、置換もしくは非置換アルカリル、または置換もしくは非置換アラルキル基であるが、それらには限定されない。
【0022】
上記で議論したように、この有機基は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩またはその部分エステルを含んでいる。「塩」とは、このホスホン酸基が、部分的に、または完全に、カチオン性の対イオンを有した、イオン化された形態にあることを意味している。この有機基のこれらのホスホン酸基のいずれか、または両方は、部分的に、もしくは完全にイオン化された形態のいずれかであることができる。従って、この有機基は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基を含むことができ、ホスホン酸基のいずれか、または両方は、式−PO(一塩基塩)または−PO−2+2(二塩基塩)を有している。また、1つのホスホン酸基は、式−POを有していることができる。これらの式では、Mは、カチオン、例えばNa、K、Li、またはNR'であり、R'は、同一でも異なっていてもよく、水素または有機基、例えば置換もしくは非置換アリールおよび/またはアルキル基を表す。
【0023】
好ましくは、このカチオン性対イオンは、NR'の構造を有する第四級アンモニウム対イオンであり、ここでR'は、同一でも異なっていてもよく、H、アルキル基、またはアリール基である。R基の2つもしくは3つ以上は、1つもしくは2つ以上の脂肪族および/または芳香族環、例えばピリジニウム環を形成していてもよい。また、この環は、1つもしくは2つ以上の更なるヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、このカチオン性対イオンは、NR'の構造を有する第四級アルキルアンモニウム対イオンであり、ここでR'は、同一でも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基である。この第四級アンモニウム対イオンは、全体で少なくとも6個の炭素を有している。より好ましくは、この第四級アンモニウム対イオンは、少なくとも1つのR'がC2〜C6アルキル基である第四級アルキルアンモニウム対イオンである。特に好ましい例としては、テトラエチルアンモニウム対イオンがある。そのような対応する第四級アンモニウム対イオンを有する、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩またはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料は、特に分散液、例えば水性分散液、の形態で用いられた場合には、驚くべき性質を有していることが見出され、以下により詳細に説明する。これらの好ましい改質顔料は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩またはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料の調製に関連して上記した方法を用いて調製することができるが、更に、これらの好ましい改質顔料は、ジェミナルビスホスホン酸の塩またはその部分エステルが結合されている前もって調製された顔料から、その塩を、好ましい第四級アンモニウム対イオンにイオン交換することによって調製することができる。この方法は、存在する第四級アンモニウム対イオンの量の制御を可能にする。
【0024】
結合されている有機基の量は、この改質顔料の所望の用途および結合されている基の種類に応じて変えることができる。例えば、有機基の総量は、窒素吸収(BET法)によって測定して、顔料の表面積当たりに、基が約0.01〜約10.0ミクロモル/m、例えば約0.5〜約5.0ミクロモル/m、約1〜約3ミクロモル/m、または約2〜約2.5ミクロモル/mである。本発明の種々の態様について説明したものと異なる、更なる結合した有機基もまた存在していてよく、例えば、イオン基またはイオン性基、例えば米国特許第5,630,868号明細書および第5,698,016号明細書中に記載されたもの、ならびにポリマー基が挙げられる。
【0025】
本発明の改質顔料は、種々の異なる形態にあることができる。例えば、この改質顔料は、乾燥形態、例えば粉末、ペレット、顆粒またはケークであることができる。この改質顔料の形態に関してここで用いられる「乾燥」は、揮発性物質が実質的にないことを意味するのではない。むしろ、この用語は、材料の物理的な状態を表している。従って、乾燥形態は、高水準、例えば約50%以上の揮発性溶媒を含む形態を包含している。この乾燥形態は、例えば、固体もしくは半固体形態の、または例えば自由流動性もしくは粘着性の粉末であってもよい、ペーストあるいはパテの状態(consistency)を有する材料であることができる。
【0026】
また、本発明の改質顔料は、液体ビヒクル中の分散液の形態であってもよい。このビヒクルは、水性または非水性液体ビヒクルのいずれかであることができるが、しかしながら好ましくは水を含むビヒクルである。従って、このビヒクルは、好ましくは水性ビヒクルであり、50質量%超の水を含むビヒクルであり、そして例えば水または、水と水に混和性の溶媒、例えばアルコールとの混合物であることができる。非水性ビヒクルは、50質量%未満の水を含むか、または水と混和性のないものである。この分散液の形態で用いられる改質顔料の量は、変えることができるが、しかしながら典型的には、インクジェットインク組成物の質量を基準として、約0.1質量%〜約20質量%の範囲の量である。更に、この分散液は、当技術分野で知られている、この分散液に所望の性質を与える、好適な添加剤を含むことができる。
【0027】
この分散液は、当技術分野で知られているいずれかの方法を用いて調製することができる。例えば、乾燥形態にあるこの改質顔料は、攪拌しながら液体ビヒクルと混合して、安定な分散液を生成することができる。当技術分野で知られているいずれかの装置、例えば媒体ミルもしくはボールミル、または他の高せん断混合装置を用いることができ、そして種々の慣用の混合媒体を用いることもできる。この分散液を形成するための他の方法は、当業者には知られているであろう。
【0028】
本発明の改質顔料は、種々の異なる用途、例えば、プラスチック組成物、水性もしくは非水性インク、水性もしくは非水性コーティング剤、ゴム組成物、紙組成物および繊維組成物に用いることができる。特に、これらの改質顔料は、安定な水性分散液を形成し、それが、種々の水性組成物、例えば、自動車用および工業用コーティング剤、塗料、トナー、接着剤、ラテックス、ならびにインクを形成することができることが見出された。
【0029】
本発明の改質顔料は、インク組成物、特にはインクジェットインク組成物に特に有用であることが見出された。従って、本発明は、更に、ここに記載した、液体ビヒクルおよび少なくとも1種の改質顔料を含んだインクジェットインク組成物に関する。この液体ビヒクルは、この改質顔料の分散液形態に関して上記したいずれかの液体ビヒクルであることができるが、しかしながら好ましくは水性ビヒクルである。このインクジェットインク組成物中で用いられる改質顔料の量は、変えることができるが、しかしながら典型的には、このインクジェットインクの性能に有害に影響することなく、所望の画像品質(例えば、光学濃度)を与えるのに効果的な量である。例えば、典型的には、この改質顔料は、このインクジェットインク組成物の質量を基準として、約0.1質量%〜約20質量%の範囲で存在している。
【0030】
本発明のインクジェットインク組成物は、最小限の付加的な成分(添加剤および/または共溶媒)および加工工程で、形成することができる。しかしながら、好適な添加剤もまた、この組成物の安定性を維持しながら、種々の所望の性質を与えるためにこれらのインクジェットインク組成物中に加えることができる。例えば、界面活性剤を、この組成物のコロイド安定性を更に向上させるために加えることができる。他の添加剤は、当技術分野においてよく知られており、そして湿潤剤、殺生物剤および殺菌剤、結合剤、例えばポリマー結合剤、pH調節剤、乾燥促進剤、浸透剤などが挙げられる。特定の添加剤の量は、種々の因子に応じて変えることができるが、しかしながら一般には、このインクジェットインク組成物の質量を基準として、0質量%〜40質量%の範囲の量で存在している。更に、本発明のインクジェットインク組成物には、カラーバランスを変更し、そして光学濃度を調整するために、色素を更に加えることができる。このような色素としては、食用色素、FD&C色素、酸性染料、直接染料、反応性染料、フタロシアニンスルホン酸の誘導体、例えば銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩など、が挙げられる。ここに記載した改質顔料と、非改質顔料、他の改質顔料、もしくはそれらの両方との混合物を用いることもまた、本発明の範囲内である。
【0031】
特に好ましい所望による成分として、本発明のインクジェットインク組成物は、更に共溶媒を含むことができる。種々の異なる共溶媒を用いることができる。好ましくは、この共溶媒は、少なくとも10質量%の濃度で、水に可溶か、または混和性であり、そしてまた水性の加水分解条件(すなわち、以下でより詳細に説明する熱エイジング条件下での水との反応、例えばエステルおよびラクトンの加水分解)に化学的に安定である。更に、この共溶媒は、好ましくは水より小さい誘電率、例えば20℃で、約10〜約78を有している。好適な共溶媒の例としては、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメエチルもしくはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングルコールモノブチルエーテル);アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−1−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール);約2〜約40個の炭素原子を含むジオール(例えば、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,2,6−へキサントリオール、およびポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコール、ならびにそれらのアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシド、との反応生成物)、約3〜約40個の炭素原子を含むトリオール(例えば、グリセリン(グリセロール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオールなど、ならびにそれらの、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物、との反応生成物);ポリオール(例えば、ペンタエリスリトール);アミド(例えば、ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド);ケトンもしくはケトアルコール(例えば、アセトンおよびジアセトンアルコール);エーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン);ラクタム(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタム);尿素または尿素誘導体(例えば、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン(dantacol)および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン);内部塩(例えば、ベタイン);ならびにヒドロキシアミド誘導体(例えば、アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、およびプロピルカルボキシプロパノールアミン、ならびにそれらのアルキレンオキシドとの反応生成物)、が挙げられる。更なる例としては、サッカリド(例えば、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース);約2〜約40個の炭素原子を含むスルホキシド誘導体(対称および非対称の)(例えば、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、およびアルキルフェニルスルホキシド);および約2〜約40個の炭素原子を含むスルホン誘導体(対称および非対称の)(例えば、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、およびジメチルスルホラン)、が挙げられる。これらの材料は、単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0032】
共溶媒の量は、種々の因子、例えば共溶媒の性質(溶解度および/または誘電率)、改質顔料の種類、および結果として得られるインクジェットインク組成物の所望の性能、に応じて変えることができる。特に、所望による共溶媒は、このインクジェットインク組成物の総量を基準として約40質量%以下、例えば約30質量%以下、および約20質量%以下、の量で用いることができる。また、用いる場合には、所望による共溶媒の量は、このインクジェットインク組成物の総量を基準として約2質量%以上、例えば約5質量%以上、および約10質量%以上である。本発明の好ましい態様では、このインクジェットインク組成物は、約10質量%〜約40質量%の共溶媒、例えば約10質量%〜約20質量%を含むみ、これが向上した性能、特には向上した導電率を与えることが見出され、以下でより詳細に議論される。
【0033】
驚くべきことには、上記で規定した構造を有する。対応する第四級アンモニウム対イオン、好ましくは第四級アルキルアンモニウム対イオンを備えたビスホスホン酸基の塩が結合されている改質顔料を含み、更には所望により共溶媒を含む、水性分散液、特には水性インクジェットインク組成物は、異なるビスホスホン酸基の塩が結合している改質顔料を含む水性分散液およびインクジェットインク組成物に比べて、向上した性質を有していることが見出された。特に、これらのカチオン性対イオンおよび共溶媒の使用は、低導電率を有する組成物を生成すること、そしてより驚くべきことには、この導電率は、熱エイジングの後でさえも低いまま維持されることが、見出された。例えば、上記の対応するカチオン性対イオンを備えた改質顔料を含む、本発明のインクジェットインク組成物は、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下、好ましくは750マイクロジーメンス/cm以下、そしてより好ましくは500マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している。更に、この導電率は、10質量%〜15質量%の同じ改質顔料含量で、60℃で4週間の後に、1000マイクロジーメンス/cm以下を維持する。
【0034】
また、驚くべきことに、上記の水性分散液および水性インクジェットインク組成物は、更に、熱エイジングの後に液相中に、低水準の可溶なリン酸塩イオンを有していることが見出された。例えば、上記の対応するカチオン性対イオンを備えた改質顔料を含む、本発明のインクジェットインク組成物は、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、400ppm以下、好ましくは300ppm以下のリン酸塩イオンの濃度を有していることが見出された。リン酸塩イオンの量は、当技術分野で知られているいずれかの方法、例えばイオンクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0035】
いずれかの特定の理論によって拘束されることは望まないが、特定のカチオン性対イオンの、特には特定の種類の共溶媒との組み合わせでの使用は、結合したビスホスホン酸基の更なる安定性を与え、これらの基がリン酸塩イオンを解放するいずれかの傾向を抑制する。従って、向上した化学的安定性は、エイジングの間の可溶性イオンの低水準をもたらし、それが、次には、エイジング後の低導電率の水準をもたらす。低く、かつ安定した導電率は、種々の種類のインクジェットインク印刷にとって重要な性質であるが、しかしながら、特に圧電性の印刷ヘッドを用いて印刷されるインクジェットインク組成物、例えばせん断モードの印刷ヘッドを用いるもの、にとって重要な性質であり、何故ならば、そのようなプリンタは、イオン濃度により感受性が高いからである。
【0036】
従って、本発明は、更に、少なくとも1種の改質含量を含む、インクジェットインク組成物、特には圧電性インクジェットインク組成物に関し、この改質顔料は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含んでおり、そしてこのインクジェットインク組成物は、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電性を有し、そして更に、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、60℃で4週間後に、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している。好ましくは、このインクジェットインク組成物は、このインクジェットインク組成物の総量を基準として、約10質量%〜約40質量%の量、そしてより好ましくは、このインクジェットインク組成物の総量を基準として、約10質量%〜約20質量%の量、の共溶媒を含む。更に、好ましくは、このジェミナルビスホスホン酸の塩またはその部分エステルは、NR'の構造を備えた、対応する第四級アンモニウム対イオン、好ましくは第四級アルキルアンモニウム対イオンを有しており、ここでR'は上記で規定した通りであり、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは総炭素が少なくとも6個である。
【0037】
更に、本発明はまた、改質顔料の水性分散液またはインクジェットインク組成物の、熱エイジング後の導電率増加を低減する方法に関し、この改質顔料は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含んでいる。この方法は、この改質顔料の塩を、例えばイオン交換によって、NR'の構造を有する、第四級アンモニウム対イオンへと転換する工程を含んでおり、ここでR'は上記で規定した通りであり、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは、総炭素が少なくとも6個である。所望により、共溶媒が加えられる。この改質顔料は、次いで、場合によっては、例えば50℃〜100℃の温度で、0.5〜5日間の間、熱エイジング(heat aged)され、脱着したイオン、例えば可溶性のリン酸塩イオンならびに他のイオン、結合していないイオン、を更に含む改質顔料の水性分散液を形成し、それから、この脱着したイオンは、次いで、当技術分野で知られているいずれかの方法、例えばダイアフィルとレーション/限外ろ過、を用いて除去される。結果として得られるイオン交換され、そして所望により熱エイジングされた、ジェミナルビスホスホン酸基の特定の第四級アンモニウム塩またはその部分エステルが結合されている改質顔料の水性分散液は、低減された導電率増加を有することが見出された。すなわち、更なるエイジングで、10質量%〜15質量%の改質顔料含量を有する分散液の導電率は、1000マイクロジーメンス/cm未満、好ましくは750マイクロジーメンス/cm以下、そしてより好ましくは500マイクロジーメンス/cm以下に維持される。
【実施例】
【0038】
本発明は、以下の例によって更に明らかにされるが、それらは本質的に例示のためだけを意図している。
【0039】

例1〜3および比較例1〜3
下記の例は、本発明の態様に関し、改質顔料は、対応する第四級アルキルアンモニウム対イオンを有する、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基の塩が結合されているカーボンブラック顔料を含んでいる。これらの例は、更に、グリセロール共溶媒が用いられた態様に関している。
【0040】
例1〜3では、改質顔料のカチオン性対イオンは、テトラエチルアンモニウム(TEA)であり、そしてこの改質顔料は、下記の一般的なイオン交換手順を用いて、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されているカーボンブラック顔料の15%固形分の水性分散液である、Cab-O-Jet(登録商標)400有色顔料分散液のイオン交換によって調製した。
【0041】
工程1:イオン交換樹脂の活性化
1200mLのNRW160(米国、ペンシルベニア州、Bala CynwydのPuroliteから入手可能な、2.1ミリモル/mLの能力を有する、強酸イオン交換樹脂)を、45ミクロンの篩上に配置して、そして2リットルの脱イオン水で洗浄した。これを、次いで、ビーカーに移し、そしてオーバーヘッド攪拌機を用いて、2リットルの脱イオン水と混合した。この分散液に、1160gの40%水酸化テトラエチルアンモニウムをゆっくりと、3時間に亘って加えた。活性化は、一晩中続けさせた。この樹脂を、次いで篩に掛け、そして脱イオン水で、pHが10未満となって、TEA活性化NRW160が形成されるまで、水で洗浄した。
【0042】
工程2:改質顔料のイオン交換
335mLのTEA活性化NRW160を、1000mLのCab-O-Jet(登録商標)400有色顔料分散液に加えた。この混合物を2時間にわたり攪拌し、その後、この樹脂を、ろ過によって分散液から分離した。この交換の効率を調べるために、イオン選択電極を用いて、ナトリウム数を測定した。この方法を用いて、95%超の交換効率が、典型的には生み出された(従って、この分散液中には、500ppm未満のNaが残っている)。結果として得られたイオン交換分散液は、次いで5倍体積の水を用いてダイアフィルトレーションされ、そしてこの分散液は15%固形分まで濃縮された(この分散液の固形分含量は、この分散液の少量を、110℃で、オーブン中で1時間乾燥することによって測定した)。
【0043】
比較例1〜3では、改質顔料は、例1〜3の改質顔料の調製に用いられた、出発のCab-O-Jet(登録商標)400有色顔料であり、従ってナトリウム対イオンを有していた。この分散液は、5倍体積の水を用いてダイアフィルトレーションし、そして15%固形分まで濃縮した。
【0044】
それぞれの例の分散液は、85gの15質量%の改質顔料分散液と、15gの適切な量の水および/またはグリセロールとを混合することによって調製した。例1および比較例1では、15gの水を加え(0%グリセロール)、例2および比較例2では、10gのグリセロールと5gの水を加え(10%グリセロール)、そして例3および比較例3では、15gのグリセロールを加えた(15%グリセロール)。それぞれの例で用いられた、全てが12.75%の固形分含量を有する、それぞれの分散液の説明を、下記の表1中に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
それぞれの分散液の導電率を、KCl標準溶液で較正したThermal Orion導電率計を用いて、室温で、測定した。また、それぞれの分散液を、Nalgeneビン中に容れ、そして60℃で、オーブン中でエイジングし、そして種々の長さの時間の後に導電率を測定した。結果を、下記の表2中に示し、そしてまた、図1中に図示した。
【0047】
【表2】

【0048】
これらの結果は、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されている改質顔料を含む、比較例1〜3の分散液は、初期には1000マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有していることを示している。しかしながら、エイジングによって、この導電率は、4週間後に、1000マイクロジーメンス/cm超に増加した。比較すると、同じジェミナルビスホスホン酸基の第四級アルキルアンモニウム塩が結合されている改質顔料を含む分散液(例1〜3)は、同等の出発導電率を有していたが、しかしながら、これらの分散液は、エイジングの間に、導電率の著しい増加を示さなかった。例1〜3のこれらの分散液は、4週間のエイジングの後に、全てが1000マイクロジーメンス/cmよりも有意に小さな導電率(750マイクロジーメンス/cm未満)を有していた。更に、共溶媒としてグリセロールを更に含む、例2と3の分散液は、エイジングによる導電率の増加の、更なる抑制を示した。共溶媒の量が増加すると、4週間のエイジングの後の分散液の導電率は、より低かった(約500マイクロジーメンス/cm)。このことは、比較例の分散液でも認められたが(グリセロールを含む比較例2および3の分散液は、4週間のエイジングの後に、比較例1の分散液に比べて、より低い導電率を有していた)、これらの比較例の分散液のいずれも、1000マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有してはいなかった。
【0049】
更に、リン酸塩イオンの濃度もまた、4週間のエイジングの後に、これらの水性分散液のそれぞれについて、超高速遠心分離を用いて、これらの分散液の試料を遠心分離して、そしてイオンクロマトグラフィー(IC)により上澄み液中のリン酸塩イオンの量を測定することによって、測定した。結果を、下記の表3中に示した。
【0050】
【表3】

【0051】
これらの結果が示すように、ジェミナルビスホスホン酸基の第四級アルキルアンモニウム塩が結合されている改質顔料を含む、例1〜3の分散液は、4週間のエイジングの後に、比較例1〜3の分散液(ナトリウム対イオン有している)に比べて、有意に低いリン酸塩イオン濃度を有していた。更に、グリセロール共溶媒の添加はまた、エイジングの後のリン酸塩イオン濃度を更に低減することが見出された。
【0052】
例1〜3の分散液は、エイジングしても維持される、非常に低い導電率と低いリン酸塩イオン濃度を示したので、これらの分散液は、良好な導電性能を有する、特に圧電性インクジェット印刷、例えばせん断モード印刷ヘッドを用いるものに特に有用な、黒色インクジェットインク組成物を調製するのに用いることができると期待される。
【0053】
例4〜6および比較例4
以下の例は、本発明の態様に関し、改質顔料は、対応する第四級アルキルアンモニウム対イオンを有する、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基の塩が結合されているマゼンタ顔料を含んでいる。これらの例は、更に、グリセロール共溶媒が用いられている例に関する。
【0054】
例4〜6では、改質顔料のカチオン性対イオンは、テトラエチルアンモニウム(TEA)であり、そしてこの改質顔料は、例1〜3中に記載した一般的なイオン交換手順を用いて、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されているマゼンタ顔料の15%固形分水性分散液である、Cab-O-Jet(登録商標)465有色顔料分散液のイオン交換によって調製された。比較例4では、改質顔料は、例4〜6の改質顔料を調製するのに用いられた出発の、Cab-O-Jet(登録商標)465有色顔料分散液であり、従って、ナトリウム対イオンを有していた。それぞれの例の分散液は、例1〜3および比較例1〜3中に記載したように調製した。全てが12.75%の固形分含量を有する、それぞれの例のそれぞれの分散液の説明を、下記の表4中に示した。
【0055】
【表4】

【0056】
それぞれの分散液の導電率を、KCl標準溶液で較正した、Thermal Orion導電率計を用いて、室温で、測定した。また、それぞれの分散液を、Nalgeneビン中に容れ、そして60℃で、オーブン中でエイジングし、そして種々の長さの時間の後に、導電率を測定した。結果を、下記の表5中に示し、そしてまた図2中に図示した。
【0057】
【表5】

【0058】
これらの結果が示すように、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されている改質顔料を含む比較例4の分散液は、初期には低い導電率を有している。しかしながら、エイジングによって、導電率は、2週間後に、有意に増加しており、そして4週間後には、導電率の更に大きな増加が観察されるであろうことが予想された。比較すると、同じジェミナルビスホスホン酸基の第四級アルキルアンモニウム塩が結合されている改質顔料を含む分散液(例4〜6)はまた、非常に低い初期の導電率を有しているが、しかしながら、これらの分散液は、エイジングの間に、導電率の顕著な増加は示さなかった。例4〜6の分散液の全ては、2週間のエイジングの後に、750マイクロジーメンス/cmよりも有意に小さい導電率を有しており、そして、4週間のエイジングの後にも、これらの値は更にいっそう増加することはないと予測された。更に、共溶媒としてグリセロールを更に含む、例5および6の分散液は、エイジングによる導電率増加の更なる抑制を示した。共溶媒の量が増加すると、2週間のエイジング後の分散液の導電率は、より低かった(約500マイクロジーメンス/cm)。
【0059】
例4〜6の分散液は、非常に低い導電率を示し、それがエイジングによっても維持されるので、これらの分散液は、良好な導電特性を有する、特に圧電性インクジェット印刷、例えばせん断モード印刷ヘッドを用いるものに特に有用な、マゼンタインクジェットインク組成物を調製するのに用いることができることが期待される。
【0060】
例7〜8
以下の例は、本発明の態様に関し、改質顔料は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基の塩が結合されているマゼンタ顔料を含み、そして更に、このインクジェットインク組成物の総質量を基準として10質量%〜40質量%の量の共溶媒を含んでいる。
【0061】
これらの例では、改質顔料は、例4〜6の改質顔料を調製するのに用いられた、Cab-O-Jet(登録商標)465有色顔料分散液であり、そして従って、ナトリウム対イオンを有しており、そしてこの分散液は、例4〜6および比較例4中に記載したように調製した。それぞれの例で用いた、全てが12.75%の固形分含量を有する、それぞれの分散液の説明を、下記の表6中に示した。
【0062】
【表6】

【0063】
それぞれの分散液の導電率を、KCl標準溶液で較正した、Thermal Orion導電率計を用いて、室温で測定した。また、それぞれの分散液を、Nalgeneビン中に容れ、そして60℃で、オーブン中でエイジングし、そして種々の長さの時間の後に、導電率を測定した。結果を、下記の表7中に示し、そしてまた図3中に図示した。
【0064】
【表7】

【0065】
これらの結果が示しているように、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されている改質顔料を含む、比較例4の分散液は、初期には低い導電率を有していた。しかしながら、エイジングによって、この導電率は、2週間後に有意に増大しており、そして4週間後には、導電率の更なる大幅な増加が観察されるであろうことが予測された。比較すると、同じ改質顔料を含み、そして更に共溶媒を含む分散液(例7〜8)はまた、非常に低い初期導電率を有しているが、しかしながら、これらの分散液は、エイジングの間に導電率の顕著な増加は示さなかった。例7〜8の分散液は、全てが、2週間のエイジングの後に、1000マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有しており、そしてこれらの値は、4週間のエイジングの後に、1000マイクロジーメンス/cm超に増加しないであろうと予測された。
【0066】
例7〜8の分散液は、非常に低い導電率を示し、それがエイジングによっても維持されるので、これらの分散液は、良好な導電性能を有する、特に圧電性インクジェット印刷、例えばせん断モード印刷ヘッドを用いるものに特に有用な、マゼンタインクジェットインク組成物を調製するのに用いることができることが期待される。
【0067】
例9〜15および比較例5〜11
以下の例は、本発明の態様に関し、改質顔料は、対応する第四級アルキルアンモニウム対オンを有する、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基の塩を有するカーボンブラックを含んでおり、そして幾つかは、更に種々の種類の共溶媒を含んでいる。
【0068】
例9〜15では、改質顔料のカチオン性対イオンは、テトラエチルアンモニウム(TEA)であり、そしてこの改質顔料は、例1〜3中に記載された一般的なイオン交換手順を用いて、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩を有するカーボンブラック顔料の15%固形分水性分散液である、Cab-O-Jet(登録商標)400有色顔料分散液の、イオン交換によって調製された。比較例5〜11では、改質顔料は、例9〜15の改質顔料の調製に用いられた出発のCab-O-Jet(登録商標)400有色顔料分散液であり、従って、ナトリウム対イオンを有していた。更に、例10〜15および比較例6〜11では、この分散液は、更に、この分散液の総量を基準として10質量%の共溶媒を含んでおり、そして、異なる共溶媒を用いてはいるが、例2および比較例2中に記載されているように調製された。全てが12.75%の固形分含量を有する、それぞれの例で用いられたそれぞれの分散液の説明を、下記の表8中に示した。この表において、TEGMBEは、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルであり、そしてdantacolは、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントインである。
【0069】
【表8】

【0070】
それぞれの分散液の導電率を、上記の例1〜3中に記載したように測定し、そしてまた、それぞれの分散液を、例1〜3中に記載したようにエイジングした。結果を、下記の表9中に示した。
【0071】
【表9】

【0072】
これらの結果に示されるように、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されている改質顔料を含み、更に種々の共溶媒を含む、比較例5〜11の分散液は、初期には1000マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有していた。しかしながら、エイジングによって、この導電率は、4週間の後に、1000マイクロジーメンス/cm超に増加した。比較として、同じジェミナルビスホスホン酸基の第四級アルキルアンモニウム塩が結合されている改質顔料を含む分散液(例9〜15)は、同様の出発導電率を有しているが、しかしながら、これらの分散液は、エイジングの間に、導電率の顕著な増加を示さなかった。例9〜15の分散液は、全てが、1000マイクロジーメンス/cmよりも有機に小さい導電率を有していた。更に、例10〜15の分散液は、それぞれが更に共溶媒を含んでおり、4週間のエイジングの後に、例9の導電率よりも小さい導電率を有していた。従って、これらの共溶媒の添加は、エイジングによる導電率の増加に更なる抑制を与える。特に、例10および15では、共溶媒は、それぞれ1,2−ヘキサンジオールおよびグリセロールであるが、導電率は、4週間のエイジングの後に、750マイクロジーメンス/cm未満であった。
【0073】
例9〜15の分散液は、非常に低い導電率を示し、それがエイジングによっても維持されるので、これらの分散液は、良好な導電性能を有する、特に圧電性インクジェット印刷、例えばせん断モード印刷ヘッドを用いるものに特に有用な、黒インクジェットインク組成物を調製するのに用いることができることが期待される。
【0074】
例16および比較例12〜13
例16では、ジェミナルビスホスホン酸基のテトラエチルアンモニウム(TEA)塩が結合されているカーボンブラック顔料を含む改質顔料の分散液を、上記の例1中に記載したように調製した。比較例12〜13では、ジェミナルビスホスホン酸基のテトラメチルアンモニウム(TMA+)塩が結合されているカーボンブラック顔料を含む改質顔料の分散液を、ジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩が結合されているカーボンブラック顔料の15%固形分水性分散液である、Cab-O-Jet(登録商標)400有色顔料分散液のイオン交換によって、水酸化テトラエチルアンモニウムの代わりに水酸化テトラメチルアンモニウムを用いた以外は例1〜3中に記載した一般的なイオン交換手順を用いて、調製した。共溶媒は、加えなかった。
【0075】
それぞれの分散液の導電率は、上記の例1〜3中に記載したように測定し、そしてまた、それぞれの分散液を例1〜3中に記載したようにエイジングした。結果を、下記の表10中に示した。
【0076】
【表10】

【0077】
これらの結果に示されるように、ジェミナルビスホスホン酸基のテトラメチルアンモニウム塩(これは少なくとも6個の総炭素を有してはいない)が結合されている改質顔料を含む比較例12および13の分散液では、導電率は、4週間にわたるエイジングによって有意に増加した。比較すると、同じジェミナルビスホスホン酸基のテトラエチルアンモニウム塩(これは少なくとも6個の総炭素を有している)が結合されている改質顔料を含む、例16の分散液は、非常に低い初期の導電率を有しているが、しかしながら、この分散液は、エイジングの間に、導電率の顕著な増加を示さなかった。例16の分散液は、4週間のエイジングの後に、1000マイクロジーメンス/cm未満の導電率を有していた。
【0078】
例16の分散液は非常に低い導電率を示し、それがエイジングによっても維持されるので、この分散液は、良好な導電性能を有する、特に圧電性インクジェット印刷、例えばせん断モード印刷ヘッドを用いるものに特に有用な、黒インクジェットインク組成物を調製するのに用いることができることが期待される。
【0079】
上述した本発明の好ましい態様の記載は、例示と説明の目的のために提示したものであある。網羅的であること、または本発明を開示した厳密な形に限定することを意図したものではない。修正および変更が、上記の教示を踏まえて可能であり、または本発明の実行を通して取得されることができる。これらの態様は、当業者が、本発明の原理とその実際的な応用を、想定される具体的な用途に適合するように、本発明を種々の態様で、そして種々の変更を加えて用いることができるように、説明するために選択され、そして記載されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物によって規定されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体ビヒクル、
b)場合による共溶媒、ならびに、
c)対応するNR'4の構造を有する第四級アンモニウム対イオンを有する、少なくとも1つの、ジェミナルビススルホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む少なくとも1種の改質顔料、を含んでなるインクジェットインク組成物であって、R'は、同一でも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、かつ該第四級アンモニウム対イオンは、総炭素が少なくとも6個である、インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム対イオンが、第四級アルキルアンモニウム対イオンであり、かつ少なくとも1つのR'が、C2〜C6アルキル基である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記インクジェットインク組成物が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記インクジェットインク組成物が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、750マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記インクジェットインク組成物が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、500マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記インクジェットインク組成物が、更に、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、60℃で4週間後に、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項3記載のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記インクジェットインク組成物が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、400ppm以下のリン酸塩イオン濃度を有している、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記インクジェットインク組成物が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、300ppm以下のリン酸塩イオン濃度を有している、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記有機基が、式−CQ(PO)を有する基の塩を含んでおり、Qは、水素、R、OR、SRまたはNRであり、Rは同一でも異なっていてもよく、H,C1〜C18アルキル基、C1〜C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記有機基が、式−(CH)−CQ(PO)を有する基の塩を含んでおり、nは1〜3である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
前記有機基が、式−CR(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含んでおり、RはHもしくはC1〜C6アルキル基である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
前記有機基が、式−CO−Q−CH(PO)または−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含んでおり、QはO、S、もしくはNR'であり、R'は、H、C1〜C18アルキル基、C1〜C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項13】
Qが、NHである、請求項12記載のインクジェットインク組成物。
【請求項14】
前記有機基が、式−X−CO−Q−CH(PO)または−X−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩あるいはその部分エステル、またはそれらの塩を含んでおり、Xは、該顔料に結合しており、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリレン、またはアラルキレン基である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項15】
Xが、アリーレン基である、請求項14記載のインクジェットインク組成物。
【請求項16】
Qが、NHである、請求項14記載のインクジェットインク組成物。
【請求項17】
前記有機基が、式−C−CONHCH(PO)基、−C−SONHCH(PO)基、それらの部分エステル、またはそれらの塩である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項18】
前記顔料が、青顔料、黒顔料、茶顔料、シアン顔料、緑顔料、白顔料、紫顔料、マゼンタ顔料、赤顔料、橙顔料、黄顔料またはそれらの混合物である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項19】
前記顔料が、黒顔料である、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項20】
前記液体ビヒクルが、水性ビヒクルである、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項21】
前記共溶媒が、1,2−ヘキサンジオール、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、ジ−(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、またはグリセロールである、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項22】
前記共溶媒が、1,2−ヘキサンジオールまたはグリセロールである、請求項1記載のインクジェットインク組成物。
【請求項23】
a)液体ビヒクル、
b)インクジェットインク組成物の総質量を基準として、10質量%〜15質量%の量の共溶媒、ならびに、
c)少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む少なくとも1種の改質顔料、
を含んでなるインクジェットインク組成物であって、該インクジェットインク組成物は、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有しており、かつ更に、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、60℃で4週間の後に1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、インクジェットインク組成物。
【請求項24】
対応するNR'4の構造を有する第四級アンモニウム対イオンを有する、ジェミナルビスホスホン酸基の少なくとも1つの塩を有する顔料を含んでなる改質顔料であって、R'は、同一でも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、該第四級アンモニウム対イオンは、少なくとも6個の総炭素を有している、改質顔料。
【請求項25】
前記第四級アンモニウム対イオンが、第四級アルキルアンモニウム対イオンであり、かつ少なくとも1つのR'が、C2〜C6アルキル基である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項26】
前記改質顔料が、水性分散液の形態にある、請求項24記載の改質顔料。
【請求項27】
前記水性顔料が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項26記載の改質顔料。
【請求項28】
前記水性顔料が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、750マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項26記載の改質顔料。
【請求項29】
前記水性顔料が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、500マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項26記載の改質顔料。
【請求項30】
前記水性顔料が、更に、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、60℃で4週間の後に1000マイクロジーメンス/cm以下の導電率を有している、請求項27記載の改質顔料。
【請求項31】
前記水性分散液が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、400ppm以下のリン酸塩イオン濃度を有している、請求項27記載の改質顔料。
【請求項32】
前記水性分散液が、10質量%〜15質量%の改質顔料含量で、300ppm以下のリン酸塩イオン濃度を有している、請求項27記載の改質顔料。
【請求項33】
前記有機基が、式−CQ(PO)を有する基の塩を含んでおり、Qは、水素、R、OR、SRまたはNRであり、Rは同一でも異なっていてもよく、H,C1〜C18アルキル基、C1〜C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項34】
前記有機基が、式−(CH)−CQ(PO)を有する基の塩を含んでおり、nは1〜3である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項35】
前記有機基が、式−CR(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含んでおり、RはHもしくはC1〜C6アルキル基である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項36】
前記有機基が、式−CO−Q−CH(PO)または−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩またはその部分エステルを含んでおり、QはO、S、もしくはNR'であり、R'は、H、C1〜C18アルキル基、C1〜C18アシル基、アラルキル基、アルカリル基、またはアリール基である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項37】
Qが、NHである、請求項36記載の改質顔料。
【請求項38】
前記有機基が、式−X−CO−Q−CH(PO)または−X−SO−Q−CH(PO)を有する基の塩あるいはその部分エステル、またはそれらの塩を含んでおり、Xは、該顔料に結合しており、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリレン、またはアラルキレン基である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項39】
Xが、アリーレン基である、請求項38記載の改質顔料。
【請求項40】
Qが、NHである、請求項38記載の改質顔料。
【請求項41】
前記有機基が、式−C−CONHCH(PO)基、−C−SONHCH(PO)基、それらの部分エステル、またはそれらの塩である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項42】
前記顔料が、青顔料、黒顔料、茶顔料、シアン顔料、緑顔料、白顔料、紫顔料、マゼンタ顔料、赤顔料、橙顔料、黄顔料またはそれらの混合物である、請求項24記載の改質顔料。
【請求項43】
前記顔料が、カーボンブラックである、請求項24記載の改質顔料。
【請求項44】
改質顔料の水性分散液の導電率増加を低減する方法であって、以下の工程、
i)対応する対イオンを有する、ジェミナルビスホスホン酸基の少なくとも1種の塩またはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料の水性分散液を準備する工程、
ii)該改質顔料の対イオンをイオン交換して、NR'の構造を有する対応する第四級アンモニウム対イオンを有する、少なくとも1種の、ジェミナルビスホスホン酸基の塩もしくはその部分エステルが結合されている顔料を含む改質顔料の水性分散液を形成する工程であって、ここでR'は、同じでも異なっていてもよく、H、C1〜C6アルキル基、アリール基であるか、または環を形成しており、そしてこの第四級アンモニウム対イオンは総炭素が少なくとも6個である、工程、ならびに、
iii)場合により、工程ii)の水性分散液を、50℃〜100℃の温度で、0.5〜5日間の期間にわたり熱エイジングして、更に脱着イオンを含む改質顔料の水性分散液を形成し、そして脱着イオンを除去して;導電率増加が低減された改質顔料の水性分散液を形成する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項45】
前記第四級アンモニウム対イオンが、第四級アルキルアンモニウム対イオンであり、かつ少なくとも1つのR'が、C2〜C6アルキル基である、請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514683(P2012−514683A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545376(P2011−545376)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/000013
【国際公開番号】WO2010/080686
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】