説明

低温誘導性RNA結合タンパク質(CIRP)を阻害することによる炎症性疾患の治療

CIRP阻害剤を含む医薬組成物を開示する。炎症性状態に罹患している被験対象を処置する方法であって、前記被験対象にCIRP阻害剤を投与することを含む方法も本明細書に記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2009年4月13日に出願された米国仮特許出願第61/212,584号明細書の利益を主張するものである。上記出願の全教示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)からの助成金ROl HL 076179号の下で、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
炎症は、病原体、損傷細胞、または刺激物などの有害な刺激に対する脈管組織の複雑な生物反応である。有害な刺激を除去し、組織の修復プロセスを開始させることは、生体の保護的活動である。炎症が起こらなければ、よくても創傷および感染がもっとゆっくりと治癒することになり、組織の破壊が進んで生体の生存が危うくなる。しかしながら、炎症が抑制されずに広がると、多くの疾患が生ずることにもなる。
【0004】
炎症は、急性または慢性のいずれかに分類することができる。急性炎症は、有害な刺激に対する身体の初期反応であり、血液から損傷組織への血漿および白血球の移動が増大することにより起こる。生化学的事象のカスケードにより炎症反応が伝播し、完成する。この炎症反応には局所脈管系、免疫系、および損傷組織内の様々な細胞が関与する。慢性炎症として知られる長期にわたる炎症は、炎症部位に存在する細胞のタイプが進行につれて変化し、炎症過程による組織の破壊と修復が同時に起こることを特徴とする。
【0005】
急性の炎症性状態(たとえば、敗血症、外傷出血、および腸虚血再潅流障害)を有する患者の管理における最近の進歩にもかかわらず、多数の患者が続発性循環性ショックおよび多臓器不全が原因で死亡する。ショックおよび多臓器不全は、死亡率が容認できないほど高く、医療外科集中治療室における主要な死因であり続けている。循環虚脱を防ぎ、死亡率を低下させるために多数の治療法および物質が研究されてきたが、完全に成功したものはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今日、現代医療は、慢性炎症が慢性変性疾患の主な要因であると認め始めている。炎症促進性サイトカインは、酸化力のある化学薬品と共に細胞を攻撃し死滅させることができる免疫系の一部である。処置しなければ、炎症は組織および器官を損傷する可能性がある。たとえば、炎症は、関節炎患者に軟骨破壊をもたらし、糖尿病患者の膵臓を損傷し、現在では心臓血管疾患および癌に影響を与えると考えられている。
【0007】
これまでのところ、急性および慢性のヒト炎症性状態の処置には、非常に限定された特定の療法しかない。したがって、副作用を最小限に抑えた、炎症性状態の有効な新しい治療に対する、未だ満たされていない大きな医療ニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、低温誘導性RNA結合タンパク質(CIRP)の阻害により炎症反応が減弱するという発見に基づいている。より具体的には、本出願人は、出血性ショックの動物モデルにおいて、CIRPの阻害がアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、肝臓ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、乳酸、TNF、血清TNF、ならびに血清、肺、および肝臓のIL−6のレベルを無処置対照と比較して低下させことを発見した(図7〜図8)。さらに、CIRPの阻害は出血誘発性の死を減少させる(図6)。この発見に基づいて、炎症性状態の処置のための医薬組成物および方法を開示する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体または希釈剤、およびCIRP阻害剤を含む医薬組成物である。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、被験対象に有効量のCIRP阻害剤を投与することを含む、炎症性状態を有する被験対象を処置する方法である。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、CIRPに特異的に結合する単離抗体(「CIRP抗体」)またはその抗原性断片であり、前記抗体または抗原性断片は、CIRPの1つまたは複数の生物活性を阻害する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、有効量のCIRP阻害剤をそれを必要とする被験対象に投与することを含む、CIRP活性を阻害する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヒトCIRPアミノ酸配列(配列番号1)を示す図である。
【図2】出血の動物モデルにおいて、擬似(血液ではない)対照と比較して、肝臓、心臓、および血液のCIRP遺伝子が過剰発現することを示す図である。
【図3】組換えCIRP(rCIRP)の投与後にASTおよびALTが上昇することを示す1対のグラフである。
【図4】rCIRPの投与後に血液、肝臓、および腸のTNFおよびHMGBlが増大することを示す図である。
【図5】培養マクロファージからのサイトカイン(TNF、IL−6、HMGBl)の放出を促進し増大させる、rCIRPの時間経過および効果を示す図である。
【図6】出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体の添加により生存率が増大することを示すグラフである。
【図7】出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体組成物の投与後に血清のAST、ALT、および乳酸が減少することを示す1組のグラフである。
【図8】出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体の投与後に抗CIRP抗体により血清、肺、および肝臓のIL−6が減少することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願人は、驚いたことに、炎症反応の間にCIRP発現がアップレギュレートされ、血液循環に放出されることを発見した。本出願人はまた、いったんCIRPが血流に入ると、それは強力な炎症促進性メディエーターまたはサイトカインとして働き、組織障害および死さえも引き起こすことを発見した。
【0015】
本発明は、CIRPの阻害が、敗血症の動物モデルにおいて、これらに限定されるものではないが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、肝臓ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、乳酸、TNF、血清TNF、ならびに血清、肺、および肝臓のIL−6を含む炎症メディエーターおよびマーカーのレベルを無処置対照と比較して低下させるという発見に基づいている。この低下は、炎症性疾患および炎症性状態の処置においてCIRPを標的とすることが有益な効果を及ぼすことを反映し、ある場合には説明するものである。さらに、この低下は、そのような疾患および状態の処置においてCIRP阻害剤およびアンタゴニストが治療上有益であることを説明する。
【0016】
CIRPは、軽度の低温ストレス(32℃)によって培養細胞に誘導される、哺乳類、好ましくはヒトのタンパク質である。CIRPはN末端RNA結合ドメインおよびC末端グリシンリッチドメインを含む。ヒトCIRPのアミノ酸配列を図1の配列番号1に示す(Nishiyamaら、The Journal of Cell Biology、137巻、1997を参照されたい)。「哺乳類CIRP」は、天然に存在する哺乳類CIRPまたは内因性の対応する哺乳類CIRPと同じアミノ酸配列を有するタンパク質(たとえば、組換えタンパク質、合成タンパク質(すなわち、有機合成化学の方法を使用して生成したもの))を含む。この用語はまた、CIRPの多型または対立遺伝子の変異体および他のアイソフォーム(たとえば、選択的スプライシングまたは他の細胞プロセスによって生成されたもの)、ならびに前述したものの修飾形態または未修飾形態(たとえば、脂質付加形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態)を含む。このようなタンパク質は、哺乳類CIRPを天然に産生する供給源から回収または単離することができる。CIRPは、低温誘導性の細胞増殖抑制に本質的な役割を果たしている。
【0017】
本明細書において定義する「CIRP阻害剤」は、CIRPに結合し、CIRPの1つまたは複数の生物活性を阻害する(たとえば、低下させる、妨害する、減少させる、中和する)作用物質(たとえば、分子、天然もしくは合成の核酸または核酸アナログ、アンチセンス分子、低分子干渉RNA(siRNA)、タンパク質、ペプチド、抗体、抗原性断片、化学物質など)、あるいはCIRP遺伝子および/もしくはCIRPタンパク質の発現または生物活性CIRPの放出を阻害する作用物質である。用語「CIRPの生物活性」は、CIRP受容体結合、CIRPシグナリング、炎症促進性サイトカインのCIRP媒介放出、CIRP媒介炎症および/または他のCIRP媒介活性を指す。用語「アンタゴニスト」は、用語「阻害剤」と互換的に使用することができる。
【0018】
CIRP阻害剤は、CIRPの1つもしくは複数の生物活性または生物機能に結合し、阻害する(たとえば、低下させる、妨害する、または中和する)抗体であってもよい。
【0019】
抗体はポリクローナルであってもまたはモノクローナルであってもよく、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を包含するように意図したものである。ポリクローナルおよびモノクローナルという用語は、抗体調製物の均一性の程度を指すものであり、特定の製造方法に限定することを意図したものではない。本明細書において使用する用語「抗体」はさらに、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ベニヤ抗体、または単鎖抗体の断片を含む、抗体の機能的断片を包含する。この機能的断片には、哺乳類CIRPに結合する抗原結合性断片が含まれる。このような断片は酵素的切断または組換え技術によって作製することができる。たとえば、パパイン、ペプシン、または必要な基質特異性を有する他のプロテアーゼを使用して断片を生成することができる。抗体はまた、1つまたは複数の停止コドンが本来の停止部位の上流に導入された抗体遺伝子を使用して、様々な切断形態で作製することができる。
【0020】
様々な種から由来する断片を含む、単鎖抗体、およびキメラ抗体、ヒト化抗体もしくは霊長類化抗体(CDR−grafted抗体)、またはベニヤ抗体、ならびにキメラ単鎖抗体、CDR−grafted単鎖抗体、もしくはベニヤ単鎖抗体などを、本発明および用語「抗体」は包含する。これらの抗体の様々な断片は、従来技術によって化学的に相互に連結することができるか、または遺伝子工学技術を使用して連続したタンパク質として調製することができる。たとえば、キメラ鎖またはヒト化鎖をコードする核酸を発現させて、連続したタンパク質を生成させることができる。たとえば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号明細書;Cabillyら、欧州特許第0,125,023(Bl)号明細書;Bossら、米国特許第4,816,397号明細書;Bossら、欧州特許第0,120,694(Bl)号明細書;Neuberger、M.S.ら、国際公開第86/01533号パンフレット;Neuberger、M.S.ら、欧州特許第0,194,276(Bl)号明細書;Winter、米国特許第5,225,539号明細書;Winter、欧州特許第0,239,400(Bl)号明細書;Queenら、欧州特許第0,451,216(Bl)号明細書;およびPadlan、E.A.ら、欧州特許出願公開第0,519,596(A1)号明細書を参照されたい。霊長類化抗体に関して、Newman,R.ら、BioTechnology、10:1455〜1460(1992)、ならびに単鎖抗体に関して、Ladnerら、米国特許第4,946,778号明細書およびBird,R.E.ら、Science、242:423〜426(1988)を参照されたい。
【0021】
ヒト化抗体は、標準的方法または他の適切な手法を用いる合成または組換えDNA技術を使用して作製することができる。ヒト化可変領域をコードする核酸(たとえばcDNA)配列はまた、あらかじめヒト化された可変領域からのDNA鋳型など、ヒト鎖またはヒト化鎖をコードするDNA配列を変更するためにPCR突然変異誘発方法を使用して構築することができる(たとえば、Kamman,M.ら、Nucl.Acids Res.、17:5404(1989);Sato,K.ら、Cancer Research、53:851〜856(1993);Daugherty,B.L.ら、Nucleic Acids Res.、19(9):2471〜2476(1991);ならびにLewis,A.P.およびJ.S.Crowe、Gene、101:297〜302(1991)を参照されたい)。これらの方法または他の適切な方法を使用すれば、変異体も容易に作製することができる。一実施形態では、クローン化した可変領域を変異させることができ、かつ所望の特異性を有する変異体をコードする配列を選択することができる(たとえば、ファージライブラリーから;たとえば、Krebberら、米国特許第5,514,548号明細書;Hoogenboomら、1993年4月1日に公開の国際公開第93/06213号パンフレットを参照されたい)。
【0022】
哺乳類(たとえばヒト)CIRPに特異的な抗体は、配列番号1の単離および/もしくは組換えヒトタンパク質またはその断片(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原に対して産生させることができる。また、CIRPを発現する細胞を有する適切な宿主(たとえばマウス)を免疫することによっても抗体を産生させることができる。さらに、CIRPを発現する細胞は、免疫原としてまたはCIRPを結合する抗体のスクリーニングに使用することができる。
【0023】
免疫抗原の調製ならびにポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の作製は、任意の適切な技術を使用して行なうことができる。様々な方法が記載されてきた(たとえば、Kohlerら、Nature、256:495〜497(1975)およびEur.J.Immunol.6:511〜519(1976);Milsteinら、Nature 266:550〜552(1977)、Koprowskiら、米国特許第4,172,124号明細書;Harlow,E.およびD.Lane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、N.Y.);Current Protocols In Molecular Biology、2巻(Supplement 27、Summer ’94)、Ausubel,F.M.ら編、(John Wiley & Sons:New York、N.Y.)、11章、(1991)を参照されたい)。一般に、ハイブリドーマは、抗体産生細胞と適切な不死細胞株(たとえば、SP2/0、P3X63Ag8.653などの骨髄腫細胞株、またはヘテロ骨髄腫細胞)とを融合させることにより作製する。抗体産生細胞は、目的の抗原で免疫したヒトまたは他の適切な動物の末梢血または好ましくは脾臓もしくはリンパ節から得ることができる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択培養条件を使用して単離し、限界希釈法によってクローン化することができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞を適切なアッセイ(たとえばELISA)によって選択することができる。
【0024】
必要な特異性を有する抗体(たとえばヒト化抗体または抗原結合性断片)を作製または単離する他の適切な方法を使用することができる。これらの方法には、たとえば、ライブラリー(たとえばファージディスプレイライブラリー)から組換え抗体を選択する方法、またはヒト抗体のレパートリーを作製することができるトランスジェニック動物(たとえばマウス)を免疫する方法(たとえば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551〜2555(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258(1993);Lonbergら、米国特許第5,545,806号明細書;Suraniら、米国特許第5,545,807号明細書;Lonbergら、国際公開第97/13852号パンフレットを参照されたい)が含まれる。このような免疫および単離の手法は、当業者には周知である。
【0025】
抗原性断片は、体内に入ると抗体産生を刺激する物質である。抗原には、毒素、細菌、外来の血球、および/または移植臓器の細胞を含めることができる。
【0026】
CIRP阻害剤は、CIRPの活性に特異的に結合し、阻害する(低下させる、妨害する、減少させる、中和する)ペプチド(たとえば、合成、組換え、融合、または誘導化されたペプチド)であってもよい。このペプチドは、直鎖状であっても、分岐を有していても、または環状であってもよい。たとえば、いくつかのアミド結合を含むヘテロ原子環状構造を有するペプチドであってもよい。特定の実施形態では、ペプチドは環状ペプチドである。ペプチドは、アミノ酸のアミノ基がペプチド結合によって別のアミノ酸のカルボキシル基に連結されている、約2から約100個のアミノ酸残基からなる化合物を指す。このようなペプチドの長さは、通常は約100アミノ酸残基未満であるが、好ましくは約10、約20、約30、約40、または約50残基である。
【0027】
CIRPの特定のドメイン(たとえばユニークなドメイン)に選択的に結合するペプチドを作製することができる。ペプチドはたとえば、酵素的または化学的切断によって天然タンパク質から誘導しても、または取り出してもよく、あるいはたとえば固層ペプチド合成(たとえばMerrifield型合成)(たとえば、Bodanszkyら「Peptide Synthesis」 John Wiley & Sons、第2版、1976を参照されたい)などの適切な方法によって合成してもよい。CIRP阻害剤になるペプチドはまた、たとえば組換えDNA法または他の適切な方法を用いて作製することもできる(たとえば、Sambrook J.およびRussell D.W.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、2001を参照されたい)。
【0028】
CIRP阻害剤はまた、たとえば、担体タンパク質(たとえば、myc、his、グルタチオンスルフヒドリルトランスフェラーゼ)に融合しかつ/または標識された(たとえば、放射性標識された、蛍光標識された)融合ペプチドであってもよい。
【0029】
ペプチドは、たとえば、一般α−アミノ酸(たとえば、アラニン、グリシン、バリン)、非α−アミノ酸(たとえば、β−アラニン、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、サルコシン、スタチン)、および異常アミノ酸(たとえば、シトルリン、ホモシトルリン、ホモセリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン)など任意の適切なL−またはD−アミノ酸を含むことができる。ペプチド上のアミノ基、カルボキシル基、および/または他の官能基は、フリー(たとえば、未修飾)であってもよく、または適切な保護基で保護されていてもよい。アミノ基およびカルボキシル基のための適切な保護基、および保護基を付加または除去する方法は、当技術分野で公知であり、たとえば、GreenおよびWuts,「Protecting Groups in Organic Synthesis」、John Wiley and Sons、1991に開示されている。ペプチドの官能基はまた、当技術分野で公知の方法を使用して、誘導体化(たとえば、アルキル化)することもできる。
【0030】
ペプチドは、合成して少数から多数の異なる分子種を含むライブラリーに集めることができる。このようなライブラリーは、コンビナトリアルケミストリーの方法を使用して作製することができ、そのライブラリーを任意の適切な方法を用いてスクリーニングすることにより、それが所望の生物活性を有するペプチドを含むか否かを決定することができる。次いで、そのようなペプチド阻害剤は適切な方法を使用して単離することができる。
【0031】
所望であれば、ポリペプチドは修飾(たとえば、アミノ酸リンカー、アシル化、アセチル化、アミド化、メチル化、末端修飾(たとえば環化修飾))を含むことができる。ポリペプチドはまた、化学的修飾(たとえばN−メチル−α−アミノ基置換)を含有することができる。さらに、ペプチド阻害剤は、公知のかつ/または天然に存在するペプチドのアナログ、たとえば保存的アミノ酸残基置換を有するペプチドアナログであってもよい。これらの修飾により、CIRP阻害活性を含む、ペプチドの様々な性質(たとえば、溶解性、結合性)を改良することができる。
【0032】
ペプチドミメティックは、ポリペプチドではないが、その構造的側面を模倣する分子を指す。ペプチドミメティックアンタゴニストは、従来の化学的手法によって調製することができる(たとえば、Damewood J.R.「Peptide Mimetic Design with the Aid of Computational Chemistry」 in Reviews in Computational Biology、2007、9巻、1〜80頁, John Wiley and Sons、Inc.、New York、1996;Kazmierski W.K.、「Methods of Molecular Medicine: Peptidomimetic Protocols」 Humana Press、New Jersey、1999を参照されたい)。たとえば、ペプチドと同じ官能基を有する多糖を調製することができる。ペプチドミメティックは、たとえば標的分子に結合しているかまたは結合することになる環境における、ペプチド作用物質の3次元構造を確定することにより設計することができる。ペプチドミメティックは、少なくとも2つの構成要素、1つまたは複数の結合部分および骨格構造または支持構造を含む。
【0033】
結合部分は、(たとえば、疎水性相互作用またはイオン相互作用を介して)標的分子、たとえばリガンド結合部位またはその近傍のアミノ酸と反応するかまたは複合体を形成する化学原子または化学基である。たとえば、ペプチドミメティックの結合部分は、ペプチド阻害剤またはタンパク質阻害剤のものと同じとすることができる。この結合部分は、ペプチド阻害剤の結合部分と同じかまたは類似の様式で受容体と反応する原子または化学基とすることもできる。たとえば、CIRPに結合してCIRPの活性を阻害するペプチドミメティックを設計するために、計算化学を使用することができる。ペプチド中の塩基性アミノ酸に対するペプチドミメティックの設計で使用するのに適している結合部分の例としては、アミン、アンモニウム、グアニジン、およびアミドなどの窒素含有基またはホスホニウムが挙げられる。酸性アミノ酸に対するペプチドミメティックの設計で使用するのに適している結合部分の例としては、たとえば、カルボキシル、低級アルキルカルボン酸エステル、スルホン酸、低級アルキルスルホン酸エステル、または亜リン酸もしくはそのエステルが挙げられる。
【0034】
支持構造は、1つまたは複数の結合部分に結合していると、ペプチドミメティックの立体配置を与える化学要素である。この支持構造は有機的であっても、または無機的であってもよい。有機的支持構造の例としては、有機合成ポリマー(ポリビニルアルコールまたはポリラクチドなど)の多糖、ポリマー、またはオリゴマーが挙げられる。支持構造は、ペプチドの骨格すなわち支持構造と実質的に同じ大きさおよび次元を有することが好ましい。これは、ペプチドおよびペプチドミメティックの原子および結合の大きさを計算または測定することより決定することができる。一実施形態では、ペプチド結合の窒素を酸素または硫黄と置換して、たとえばポリエステル骨格を形成させることができる。別の実施形態では、カルボニルをスルホニル基またはスルフィニル基と置換して、ポリアミド(たとえば、ポリスルホンアミド)を形成させることができる。ペプチドの逆アミド(reverse amide)を作製することができる(たとえば、−NHCO−基を1つまたは複数の−CONH−基で置換する)。さらに別の実施形態では、ペプチド骨格はポリシラン骨格で置換することができる。
【0035】
これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。たとえば、ポリエステルペプチドミメティックは、アミノ酸のα−アミノ基を対応する水酸基で置換して、ヒドロキシ酸を調製し、次いでヒドロキシ酸をエステル化することによって調製することができる。場合によっては、副反応を最小限に抑えるために塩基性側鎖および酸性側鎖をブロックする。適切な化学合成ルートの決定は、一般に、化学構造の決定により容易に確認することができる。
【0036】
ペプチドミメティックは、合成して少数から多数の異なる分子種を含むライブラリーに集めることができる。このようなライブラリーはコンビナトリアルケミストリーの周知の方法を使用して作製することができ、そのライブラリーをスクリーニングすることによりそれが所望の活性を有する1つまたは複数のペプチドミメティックスを含むか否かを決定することができる。次いで、そのようなペプチドミメティック阻害剤を適切な方法によって単離することができる。
【0037】
非ペプチド性化合物または小分子などの他のCIRP阻害剤は、自然界に見つける(たとえば、同定する、単離する、精製する)ことができ、かつ/または作製する(たとえば、合成する)ことができる。作用物質は、化学物質および/または化学ライブラリー(たとえば、化学薬品、ペプチド、核酸のライブラリー)のハイスループットスクリーニングなどのスクリーニングでCIRP結合特異性に関してテストすることができる。化合物または小分子は、たとえば、the Chemical Repository of the National Cancer Institute、the Molecular Libraries Small Molecules Repository (PubChem)の多数の利用可能な化合物ライブラリーおよび市販の他のライブラリーから同定することができる。このような分子ライブラリーまたは分子コレクションはまた、コンビナトリアルケミストリーの周知の方法など周知の化学的手法を使用して作製することができる。ライブラリーをスクリーニングして、CIRPに結合し阻害する化合物を同定することができる。同定された化合物は、医薬品化学の周知の方法を使用してさらに多様性を得るためのリード化合物として用いることができる。たとえば、リードの構造変異体の化合物コレクションを作製して、CIRP結合活性および/または阻害活性に関してスクリーニングすることができる。これにより、化合物の構造と生物活性とを関連づける構造活性相関を展開させることができる。適度な結合活性および阻害活性を有する化合物は、インビボで使用するためにさらに開発を進めることができる。「Oxygen−regulated expression of the RNA−binding proteins RBM3 and CIRP by HIF−1−independent mechanism」、S.Wellmannら、Journal of Cell Science、117、1785〜1794、2004に開示されているように、ある例では、小分子のNaNがCIRP転写を阻害する。
【0038】
本発明のある実施形態では、CIRP阻害剤は分子量が1000ダルトン未満である。
【0039】
CIRP阻害剤には、CIRPの発現を阻害する(低下させる、減少させる、中和する、妨害する)作用物質もある。CIRP遺伝子の発現(たとえば、転写、mRNAのプロセシング、翻訳)を阻害する作用物質(分子、化合物、核酸、オリゴヌクレオチド)は、有効なCIRP阻害剤になる。アンチセンスオリゴヌクレオチド(たとえば、DNA、リボプローブ)もCIRPサブユニットの発現を阻害するCIRP阻害剤として使用することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列(たとえば、mRNA)に特異的にハイブリダイズし、標的核酸の分解(たとえば、リボヌクレアーゼH依存メカニズムによるRNAの分解)を誘導するか、またはスプライシングもしくは翻訳機構の進行を立体的に妨害する、概ね短い(約13〜約25塩基)一本鎖核酸である(たとえば、Dias N.およびStein C.A.、Mol.Can.Ther.1:347〜355、2002を参照されたい)。メチルホスホネートオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、リボースの2’位の水素がO−アルキル基(たとえば、メチル)によって置換されているオリゴヌクレオチド、ポリアミド核酸(PNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(デオキシリボース部分はモルホリン環に置換されている)、PN(リボースの3’位の酸素のアミン基によるN3’→P5’置換)、およびキメラオリゴヌクレオチド(たとえば、2’−0−メチル/ホスホロチオエート)を含む、CIRP阻害剤として使用することができる多くの様々なタイプのアンチセンスオリゴヌクレオチドがある。
【0040】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、予測アルゴリズムを使用してCIRPに特異的になるように設計することができる(たとえば、Ding,Y.およびLawrence,C.E.、Nucleic Acids Res.、29:1034〜1046、2001;Sczakiel,G.、Front.Biosci.、5:D194〜D201、2000;Scherr,M.ら、Nucleic Acids Res.、28:2455〜2461、2000;Patzel,V.ら、Nucleic Acids Res.、27:4328〜4334、1999;Chiang,M.Y.ら、J.Biol.Chem.、266:18162〜18171、1991;Stull,R.A.ら、Nucleic Acids Res.、20:3501〜3508、1992;Ding,Y.およびLawrence,C.E.、Comput. Chem.、23:387〜400、1999;Lloyd,B.H.ら、Nucleic Acids Res.、29:3664〜3673、2001;Mir,K.U.およびSouthern、E.M.、Nat.Biotechnol.、17:788〜792、1999;Sohail,M.ら、Nucleic Acids Res.、29:2041〜2051、2001;Altman,R.K.ら、J.Comb.Chem.、1:493〜508、1999を参照されたい)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは適切な方法によって作製することができる。たとえば、自動核酸シンセサイザー(たとえばApplied Biosystems製)を使用する核酸(たとえば、DNA、RNA、PNA)合成(Martin,P.、Helv.Chim.Acta 78:486〜504、1995も参照されたい)。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、適切な発現ベクトルを含有する細胞内で安定に発現させることができる。
【0041】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、吸着性エンドサイトーシスのプロセスを介して標的細胞に取り込まれ得る。したがって、被験対象(たとえば、哺乳類)の処置では、アンチセンスCIRPは、たとえば注射または点滴によって標的細胞に送達させることができる。たとえば、精製されたオリゴヌクレオチドまたはsiRNA/shRNAは、単独でまたは適切な薬物送達媒体(たとえば、リポソーム、カチオン性ポリマー(たとえば、ポリ‐L‐リジン、PAMAMデンドリマー、ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子、およびポリエチレンイミン))を含む製剤で投与可能であり、あるいは適切な担体ペプチド(たとえば、ホメオティック転写因子、アンテナペディアペプチド、HIV−1のTatタンパク質、E5CAペプチド)に結合させることができる。
【0042】
CIRPに対するアンタゴニスト作用物質(たとえば、抗体)を同定する方法を以下に述べる。
【0043】
CIRPを含む組成物を結合アッセイに使用して、本発明の抗体を含む、CIRPに結合できる作用物質を検出および/または同定することができる。
【0044】
結合アッセイにおける使用に適した組成物には、たとえば、哺乳類CIRPまたはその機能的変異体を自然に発現する細胞、および哺乳類CIRPまたはその機能的変異体を発現する組換え細胞が含まれる。さらに、結合アッセイにおける使用に適した組成物には、哺乳類CIRPまたはその機能的変異体を含む膜調製物も含まれる。そのような膜調製物には、天然膜(たとえば細胞膜)または合成膜が含まれ得る。この膜調製物は、哺乳類CIRPまたはその機能的変異体を含有する細胞の膜画分であることが好ましい。
【0045】
一実施形態では、哺乳類CIRPに結合する作用物質(たとえば、抗体)を検出または同定する方法は、試験作用物質(たとえば抗体)が参照作用物質(たとえば、リガンドまたは特異性が知られている別の抗体)の結合を阻害する能力を評価する競合的結合アッセイである。たとえば、参照作用物質は下記に記載のような適切な標識で標識することができ、アッセイ中に存在するCIRPを飽和させるために必要な標識参照作用物質の量を決定することができる。飽和量の標識参照作用物質および様々な量の試験作用物質を、哺乳類CIRPまたはその機能的変異体を含む組成物と、判定する結合および複合体形成に適した条件下で接触させることができる。CIRPと試験作用物質との間の複合体形成の特異性は、適切な対照(たとえば、非標識作用物質、標識のみ)を使用して決定することができる。
【0046】
参照作用物質または試験作用物質のいずれかとCIRPまたは上述した免疫原性ペプチドを含むCIRP断片との間の複合体形成は、適切な方法を使用して直接的または間接的に検出または測定することができる。たとえば、作用物質は適切な標識で標識することができ、複合体形成は標識の検出によって決定することができる。複合体の特異性は、非標識作用物質または標識のみなどの適切な対照を使用して決定することができる。作用物質と哺乳類CIRPまたはその機能的変異体との間の複合体の検出に使用するのに適した標識としては、たとえば、ラジオアイソトープ、エピトープ、アフィニティ標識(たとえば、ビオチン、アビジン)、スピン標識、酵素、蛍光基、または化学発光基が挙げられる。
【0047】
CIRPに結合する抗体などの試験作用物質の能力を決定するために使用する競合的結合アッセイに関していえば、そのような能力は、標識参照作用物質の特異的結合を50%阻害するのに要する試験作用物質濃度(IC50値)として報告することができる。特異的結合は、全結合(たとえば、複合体中の全標識)から非特異的結合を引いたものとして定義することが好ましい。非特異的結合は、過剰な非標識参照作用物質の存在下で形成した複合体中になお検出される標識の量として定義することが好ましい。この方法で使用するのに適した参照作用物質には、哺乳類CIRPまたはその機能的変異体に特異的に結合する分子および化合物、たとえばCIRPのリガンドまたは抗体が含まれる。好ましい参照作用物質は、ヒトCIRP(配列番号1)の断片に対する特異性が知られている抗体である。
【0048】
CIRPに結合する作用物質をさらに研究することにより、その作用物質が1つまたは複数の「CIRPの生物活性」を阻害する(たとえば、低下させる、妨害する、中和する)能力を評価することができる。前に定義した用語「CIRPの生物活性」は、CIRP受容体結合、CIRPシグナリング、炎症促進性サイトカインのCIRP媒介放出、CIRP媒介炎症および/または他のCIRP媒介活性を指す。したがって、これらのCIRP媒介機能を検出するアッセイを使用して、試験作用物質の阻害活性(たとえば、試験作用物質が1つまたは複数のCIRP機能を阻害する能力)を評価することができる。
【0049】
作用物質(たとえば抗体)がCIRPの生物活性を阻害するか否かの評価は、たとえば抗体が哺乳類細胞からの炎症促進性サイトカインの放出を阻害するか否かを決定することにより行なうことができる。適切なサイトカインの例としては、TNF、IL−6またはHMGBlが挙げられる。
【0050】
これらの方法についていえば、細胞は、炎症促進性サイトカインの産生を誘導できる任意の細胞でよい。この細胞は、免疫細胞、たとえば、マクロファージ、単球、または好中球である。
【0051】
サイトカイン産生阻害の評価は、サイトカインの定量(たとえば、ELISAによる)を含む公知の任意の方法、またはバイオアッセイ(たとえば、炎症促進性サイトカイン活性減少の判定)、または炎症促進性サイトカインmRNAの測定によって行うことができる。当業者は、過度の実験をすることなく、これらのアッセイのいずれかを利用することができるであろう。CIRP阻害作用物質による、炎症促進性サイトカイン放出の阻害に関する非限定実施例に関して、図4および図8を参照されたい。出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体の処置により血清TNFが減少することを図8Aに示す。出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体による処置によって組織TNFが減少することを図8B〜図8Cに示す。出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体による処置によってIL−6(たとえば、血清、肺、および肝臓のIL−6)が減少することを図8D〜図8Fに示す。
【0052】
炎症促進性サイトカイン放出を測定する別の方法では、炎症促進性サイトカインカスケードを刺激する作用物質と共に抗体で哺乳類細胞を処置することが含まれる。好ましい作用物質は細菌性リポ多糖(LPS)である。この化合物は、作用物質の前、作用物質と同時、または作用物質の後のいずれかに哺乳類細胞に投与することができる。この化合物は作用物質の前に投与することが好ましい。たとえば、米国特許第6,610,713号明細書を参照されたい。その関連する教示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0053】
CIRP阻害を評価するために測定することができるCIRPの他の生物活性としては、動物モデルのASTレベル、動物モデルの肝臓MPOレベル、および動物モデルの乳酸レベルが挙げられる。これらのマーカーのレベルは、炎症反応の間に通常上昇する。CIRPの生物活性の阻害剤は、炎症反応を起こしている動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、これらの1つまたは複数のマーカーのレベルを低下させることができる。CIRP阻害作用物質による、これらのマーカーの放出の阻害を評価する方法を、実施例セクションの図7A〜図7Cに示す。出血の動物モデルにおける、無処置対照と比較した、ASTレベルに対する抗CIRP抗体の阻害効果を図7Aに示す。出血の動物モデルにおいて、無処置対照と比較して、抗CIRP抗体の処置により肝臓MPOレベルが減少することを図8Gに示す。抗CIRP抗体により血清のALTおよび乳酸が減少することを図7B〜図7Cに示す。
【0054】
これらの方法は、動物、たとえばラットを、炎症促進性サイトカインカスケードを刺激する作用物質と共にこの化合物で処置するインビボで実施することができ、また、炎症促進性サイトカインカスケードの誘導に対するこの作用物質の効果は、たとえば血清TNFレベルの測定により測定する。しかしながら、動物全体を用いるよりも細胞培養物を用いてこのタイプのアッセイを行うほうが比較的容易であるため、それらの方法は、たとえばマクロファージ培養物を使用して、インビトロで実施することが好ましい。
【0055】
治療方法
本明細書において使用する「炎症性疾患または炎症性状態」とは、個体内の炎症を亢進させる疾患または状態を指す。炎症性疾患または炎症性状態はまた、個体内の炎症を亢進させる感染疾患または感染状態を指す。炎症性疾患または炎症性状態は、「慢性の炎症性疾患または炎症性状態」とすることができる。慢性の炎症性疾患または炎症性状態は、数週間、数ヶ月、またはそれより長期間過ぎても回復しない炎症性状態である。慢性の炎症性状態は、急性の炎症性状態の後に続くこともあり、またはある疾患もしくはある状態に関しては、急性の炎症性疾患または炎症性状態がない状態で起こることもある。あるいは、炎症性状態は急性の炎症性エピソードの結果であることもある。本明細書において使用する「急性の炎症性エピソード」は、亢進した免疫反応を指す。急性炎症の症状には、発赤、熱、腫脹、疼痛、および機能の喪失、たとえば関節運動の喪失が挙げられる。たとえば、慢性の炎症性疾患または炎症性状態の急性の炎症性エピソードは、以下のように慢性の炎症性疾患または炎症性状態の典型的な症状とは異なる。急性の炎症反応中に、血流中に検出できる急性期タンパク質または急性期反応物質を肝臓が合成することがしばしば起こる。急性期反応物質としては、C反応性タンパク質(CRP);α1−アンチトリプシン;α1−アンチキモトリプシン;α2−マクログロブリン;フィブリノゲン、フィブリン、プロトロンビン、トロンビン、第VIII因子、およびプラスミノゲンなどの凝固因子;補体タンパク質、ならびに血清アミロイドタンパク質が挙げられる。さらに、急性の炎症性エピソードの間に、局所の炎症細胞、たとえば好中球およびマクロファージが、血流中へ多くのサイトカイン、最も顕著にはIL−I、IL−6、IL−11、HMGBl、およびTNF−α(「サイトカインカスケード」)を分泌する。CIRP阻害剤は、投与されて、これらの炎症性状態の作用物質およびマーカーの一部またはすべてを阻害するか、低下させるか、さもなければ改善することができる。
【0056】
本発明を使用して、有用に処置することができる炎症性状態の非限定例は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、喉頭蓋炎、無弛緩症、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、器官虚血再潅流障害、器官ネクローシス、枯草熱、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、過高体温、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血症性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、肋膜炎、静脈洞炎、インフルエンザ、呼吸合包体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、小児脂肪便症、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、脳膜炎、脳炎、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節炎、関節滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性紅斑性狼瘡、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、強直性脊椎炎、ベルガー病、ライター症候群、ホジキン病、乾癬、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、および外傷出血からなる群から選択される。
【0057】
別の実施形態では、炎症性状態は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、肝炎、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、器官ネクローシス、枯草熱、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、敗血症、内毒素性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、悪液質、敗血症性流産、播種性菌血症、小児脂肪便症、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、関節炎、全身性紅斑性狼瘡、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、脊髄損傷、麻痺、乾癬、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、および外傷出血からなる群から選択される。
【0058】
別の実施形態では、炎症性状態は、腹膜炎、膵臓炎、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、内毒素性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、喘息、および外傷出血からなる群から選択される。
【0059】
また、炎症性状態は、外傷出血、セプシス−敗血症性ショック、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、および壊死性小腸大腸炎からなる群から選択される。
【0060】
投与方法
CIRP阻害剤の投与ルートは、処置すべき炎症性状態に依存する。たとえば、静脈注射は、敗血症性ショックなど全身性疾患の処置に好ましく、経口投与は、胃潰瘍など胃腸障害を処置するのに好ましい。
【0061】
この方法によれば、本発明の1つまたは複数のCIRP阻害剤は、適切なルートによって、単独または他の薬との併用のいずれかで被験対象に投与することができる。有効量の作用物質(すなわちCIRP阻害剤)を投与する。「有効量」は、炎症反応の阻害および炎症性状態の緩和または治癒のために十分な量など、投与条件下で所望の治療効果または予防効果を達成するために十分な量である。作用物質の投与は、単回または複数回とすることができる。用量は、当技術分野で公知の方法によって決定することができ、たとえば、選ばれた具体的な作用物質、被験対象の年齢、薬剤に対する感受性および耐性、ならびに全体的な健康状態に依存する。抗体の適正用量は、1回の処置当たり約0.01mg/kg体重〜約100mg/kg体重とすることができる。
【0062】
たとえば、経口、食事、局所、経皮、直腸、非経口(たとえば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射、皮内注射)、および吸入(たとえば、気管支内吸入、鼻腔内吸入、または経口吸入、鼻腔内点滴)の投与ルートを含む様々な投与ルートが、作用物質および処置すべき疾患または状態に依存して可能になる。投与は、指示どおりに局所または全身とすることができる。投与の好ましい方法は、選択した具体的な作用物質(CIRP阻害剤)、および処置される具体的な状態(たとえば、疾患)に依存して変えることができる。静脈内、経口、または非経口の投与が好ましい。
【0063】
作用物質は中性の化合物、または薬学的に許容される塩として投与することができる。アミンまたは他の塩基性基を含有する化合物の塩は、たとえば、塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸など適切な有機酸または無機酸と反応させることによって得ることができる。第四級アンモニウム基を有する化合物もまた、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、過塩素酸塩などの対アニオンを含有する。カルボン酸または他の酸性官能基を含有する化合物の塩は、適切な塩基、たとえば水酸化物(hydoxide base)と反応させることにより調製することができる。酸性官能基の塩は、ナトリウム、カリウムなどの対カチオンを含有する。
【0064】
本明細書において使用する、開示化合物の「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物を酸または塩基のいずれかと反応させて得られる、被験対象に投与するのに適したイオン結合含有生成物である。たとえば、アミンまたは他の塩基性基を含有する化合物の酸性塩は、塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸などの適切な有機酸または無機酸とこの化合物を反応させることにより得ることができる。このような塩の他の例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(たとえば、(+)−酒石酸塩、(−)−酒石酸塩、またはラセミ混合物を含むその混合物)、コハク酸塩、安息香酸塩、およびグルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。化合物が−COOHまたは−SOHなどの酸性官能基を含む場合、適切な有機塩基と共に塩を形成させることもできる。本発明の化合物との、薬学的に許容される塩基添加塩の形成に適したそのような塩基には、無毒で酸性官能基と反応するのに十分強い有機塩基が含まれる。このような有機塩基は当技術分野で周知であり、アルギニンおよびリジンなどのアミノ酸、モノ−、ジ−、およびトリエタノールアミン、コリン、モノ−、ジ−、およびトリアルキルアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリメチルアミンなど)、グアニジン、N−ベンジルフェネチルアミン、N−メチルグルコサミン、N−メチルピペラジン、モルホリン、エチレンジアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが含まれる。
【0065】
作用物質は、CIRP阻害剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の一部として個体に投与することができる。
【0066】
本明細書において使用する「医薬組成物」とは、開示されたCIRPアンタゴニスト(抗CIRP抗体など)および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む、被験対象への投与に適した形態の製剤である。薬学的に許容される適切な担体には、不活性な固体賦形剤または固体希釈剤、および無菌の水溶液または有機溶液が含まれる。製剤は、選択した投与ルートによって変えることになる(たとえば、溶液、エマルジョン、カプセル)。適切な医薬担体は、CIRPの促進剤(アゴニスト)または阻害剤(アンタゴニスト)と相互作用しない不活性成分を含有することができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Paに記載のものなど、標準医薬品製剤技術を使用することができる。非経口投与に適した医薬担体としては、たとえば、滅菌水、生理食塩水、静菌食塩水(約0.9%mg/mlのベンジルアルコールを含有する食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。組成物の封入方法(固いゼラチンまたはシクロデキストランのコーティングの中など)は、当技術分野で公知である(Bakerら、「Controlled Release of Biological Active Agents」、John Wiley and Sons、1986)。吸入については、作用物質を可溶化して投与に適したディスペンサー(たとえば、アトマイザ、ネブライザー、または加圧式エアロゾルディスペンサー)に充填することができる。
【0067】
医薬組成物はバルク、または単位用量形態とすることができる。単位用量形態は、たとえば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ、またはバイアルを含む様々な形態のうちのいずれでもよい。組成物の単位用量中の有効成分(すなわち開示化合物またはその塩の製剤)の量は、有効量とし、関係する具体的な処置によって変えることができる。患者の年齢および状態に応じてルーチン的に用量を変えることが必要になる場合があることを認識することができる。用量はまた投与ルートに依存することになる。
【0068】
本明細書において使用する「被験対象」には、哺乳動物、たとえば、ヒト、コンパニオンアニマル(たとえば、イヌ、ネコ、トリなど)、家畜(たとえば、畜牛、ヒツジ、ブタ、ウマ、家禽など)、実験動物(たとえば、ラット、マウス、モルモットなど)が含まれる。本開示方法の好ましい実施形態では、被験対象はヒトである。
【0069】
本発明の実施には、特に指示がないかぎり、当技術分野の範囲に入る、細胞培養、分子生物学、微生物学、細胞生物学、および免疫学の通常技術を使用する。このような技術は、文献に十分に説明されている。Sambrookら、1989、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubelら(1995)、「Short Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons;Methods in Enzymology (数巻);Methods in Cell Biology (数巻)、および Methods in Molecular Biology (数巻)を参照されたい。
【0070】
本発明の好ましい実施形態は、以下の実施例において述べる。本明細書における特許請求の範囲に含まれる他の実施形態は、本明細書において開示する、本発明の詳細または実施を検討することにより当業者には明らかであろう。本明細書は、実施例と共に例示のみであって、実施例に続く特許請求の範囲によって示される本発明の範囲と精神をもって考慮されるべきことを意図するものである。
【実施例】
【0071】
材料および方法
実験動物:雄Sprague−Dawleyラット(体重275〜325g)は、Charles River Laboratories(Wilmington、MA)から入手し、12時間の明/暗サイクルの恒温室に収容し、標準Purinaラット用固形飼料を摂取させた。出血ショックの誘発に先立って、ラットを一晩絶食させた。ただし、水は自由に飲ませた。本実験は、実験動物の使用のためのNational Institutes of Healthのガイドラインに従って実施した。このプロジェクトは、The Feinstein Research Institute for Medical ResearchのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認された。
【0072】
出血ショックの動物モデル:本実験で使用する出血ショックのモデルは、少し変更を伴うが以前に詳細に記載したものである(Wang P、Hauptman JG、Chaudry IH:Hemorrhage produces depression in microvascular blood flow which persists despite fluid resuscitation.Circ Shock 32:307〜318、1990.;Wu R、Dong W、Zhou M、Cui X、Simms H H、Wang P:A novel approach to maintaining cardiovascular stability after hemorrhagic shock:beneficial effects of adrenomedullin and its binding protein.Surgery 137:2005)。手短に言えば、ラットをイソフルラン吸入薬で麻酔した。大腿部の神経および血管を注意深く分離した後に大腿部の静脈および動脈にカテーテル(PE−50チューブ)を挿入した。反対側の大腿動脈にもカテーテルを挿入した。一方の動脈カテーテルは、血圧アナライザー(Digi−Med,Louisville,KY)によって平均動脈圧(MAP)および心拍数(HR)をモニターするために使用し、他方は採血用とし、静脈カテーテルは、輸液蘇生のために使用した。ラットを出血させて10分以内にMAP40mmHgとした。少量の血液をさらに採血することによって、または少量の乳酸リンゲル液を供給することによって、この血圧を90分間維持した。この低血圧期間の終了後に、60分間をかけて乳酸リンゲル液(計算血液量の約60%である、最大出血量の4倍相当量)によりラットを蘇生した。採血した血液は蘇生のために使用せず、動物は出血の前、その間、またはその後でヘパリン処理をしなかった。4時間後に、血液試料を集め、氷上に置いて凝固させた。次いで、この試料を4℃にて10分間、1200gで遠心分離し、血清試料は分析するまで−80℃で保存した。組織試料も集め、液体窒素に直ちに保存した後、分析するまで−80℃で保存した。擬似手術動物は、同じ外科手術を受けたが、出血も蘇生もさせなかった。
【0073】
組換えタンパク質(rCIRP):我々は、細菌の発現系によるヘキサヒスチジンタグ(His−tag)を有する組換えタンパク質の発現およびその精製のための一連の方法を使用した。cDNAは、以前に記載したように(Dwivedi AJ、Wu R、Nguyen E、Higuchi S、Wang H、Krishnasastry K、Marini CP、Ravikumar TS、Wang P:Adrenomedullin and adrenomedullin binding protein−1 prevent acute lung injury after gut ischemia−reperfusion.J Am Coll Surg 205:284〜293、2007)、修飾オリゴd(T16)プライマーを使用して、MuLV逆転写酵素50Uによりラット心臓の全ての組織RNA4μgを逆転写することによって調製した。CIRPタンパク質を得るために、プライマーセット(センス5’−CAC CAT GGC ATC AGA TGA AGG−3’(配列番号2)およびアンチセンス5’−CTC GTT GTG TGT AGC ATA GC−3’(配列番号3)を合成し(GenBank:NM_031147、NCBIによる設計)、ラットCIRPクローンを単離するために使用した)を用いてCIRPcDNAからPCRによってCIRPコード配列を増幅した。次いで、EcoRVおよびNotIによりPCR産物を消化し、pENTRベクター、すなわちC末端ヘキサヒスチジンタグ(His−tag)システム(Invitrogenによって記載されている)にクローン化した後、得られた発現プラスミドとして大腸菌BL21(DE3)に導入した。製造業者(Novagen、Madison、WI)によって記載されているように、CIRPの発現誘導を数リットルのBL21(DE3)細胞培養液中で実施し、次いでCIRPを単離し精製した。不注意によるいかなるリポ多糖(LPS)の混入も回避するために、我々は、Triton X−114抽出を用いてエンドトキシン混入の可能性を取り除き、最終的なLPS含量は、カブトガニ血球溶解物(LAL)アッセイ(BioWhittaker Inc、Walkersville、MD)を使用して、以前に記載のように決定した(Ertel W、Morrison MH、Wang P、Ba ZF、Ayala A、Chaudry IH:The complex pattern of cytokines in sepsis.Association between prostaglandins,cachectin,and interleukins.Ann Surg 214:141〜148、1991)。
【0074】
rCIRPの投与:追加の健常動物群では、rCIRP(1mg/kg体重)または緩衝液(同容量、1ml)を投与した。処置終了の4時間後に、血液試料を集め、氷上に置いて凝固させた後、4℃にて10分間、1200gで遠心分離し、血清試料は分析するまで−80℃で保存した。また、組織試料を集め、液体窒素に直ちに保存した後、分析するまで−80℃で保存した。別の出血動物群では、大腿部の静脈カテーテルを介した45分間にわたる出血動物の蘇生を開始して15分後に、CIRPに対する抗体(3mg/kg体重)または緩衝液(同容量、1ml)を投与した。処置終了の1.5時間後に、組織試料または血液試料を上述と同じに集めた。
【0075】
抗CIRP抗体の作製:CIRPに対するポリクローナル抗血清は、標準手順に従い3週以上の間隔で精製組換えCIRPをウサギに注射して作製した(Covance Research Products、Denver、PA)。抗CIRP抗体のIgGは、供給者の説明書(Pierce、Rockford、IL)に従い、固定化immunopureprotein−A/Gカラムを使用して血清からアフィニティ精製した。抗体価は、96穴フォーマットで直接ELISAにより決定した(Covance Research Products、Denver、PAによる記載のように)。LPSは、カブトガニ血球溶解物アッセイ(BioWhittaker)によって測定したとき精製抗体調製物中に検出されなかった。
【0076】
CIRP遺伝子発現の測定:CIRP遺伝子の発現が出血において変化するか否かを調べるために、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって出血組織を測定し定量した。マウス白血病ウイルス逆転写酵素(Applied Biosystems)を使用して、RNA4μgから逆転写されたcDNA試料についてQ−PCRを実施する。QuantiTect SYBR Green PCRキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して、順方向プライマーおよび逆方向プライマー2pmol、QuantiTect Master Mix12μl、およびcDNAlμlを含有する最終容量24μlの中で反応を実施する。Qiagenの推奨に従い、Applied Biosystems 7300のリアルタイムPCRを使用して増幅を実施する。ラットG3PDHのmRNAの発現量を各試料の規準化のために使用し、個々の特定のmRNAの分析は二つ組で行う。mRNAの相対的な発現をΔΔCt法によって計算し、対応する実験対照に対する倍率変化(fold change)として結果を表す。以下のラットプライマーを使用する:CIRP(NM_031147):5’−GGG TCC TAC AGA GAC AGC TAC GA−3’(順方向)(配列番号4)、5’−CTG GAC GCA GAG GGC TTT TA−3’(逆方向)(配列番号5);G3PDH(XM_579386):5’−ATG ACT CTA CCC ACG GCA AG−3’(順方向)(配列番号6)、5’−CTG GAA GAT GGT GAT GGG TT−3’(逆方向)(配列番号7)。TNF−αの遺伝子発現は、RT−PCRを使用して評価した。TNF−α遺伝子およびハウスキーピング遺伝子のためのプライマーは以下のものであった。以前に記載のように(Wu R、Zhou M、Wang P:Adrenomedullin and adrenomedullin binding protein−1 downregulate TNF−alpha in macrophage cell line and rat Kupffer cells.Regul Pept 112:19〜26、2003)、ラットTNF−α、5’CCC AGA CCC TCA CAC TCA GA3’(配列番号8)、5’GCC ACT ACT TCA GCA TCT CG3’(配列番号9)およびG3PDH、5’TGA AGG TCG GTG TCA ACG GAT TTG、GC3’(配列番号10)、5’CAT GTA GGC CAT GAG GTC CAC CAC3’(配列番号11)。
【0077】
ウエスタンブロット解析:血清および組織におけるCIRPタンパク質の発現は、CIRPに対するウサギポリクローナル抗体(ProteinTech Group、Chicago、IL)を使用してウエスタンブロット解析により測定した。手短に言えば、等量の血清(容量)および組織ホモジネート(タンパク質mg/レーン)を、4〜12%NuPAGE Bis−Trisゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA)上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、次いで、5%脱脂粉乳を含有するTBST緩衝液(10mM Tris−HCl[pH 7.5]、150mM NaCl、0.1% Tween20)中、室温で1時間インキュベートすることによってブロックした。膜は、ウサギポリクローナル抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。TBST緩衝液中で数回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)と共にインキュベートした後、製造業者の説明書に従い化学発光ペルオキシダーゼ基質(ECL;GE Healthcare Bio−Sciences、Piscataway、NJ)を供し、膜をX線フィルムに暴露した。GS800 Calibrated Densitometer、Bio−Rad Image Analysis Systems(Hercules、CA)を使用して、ウエスタンブロットの結果を走査し相対的なバンド強度を定量した。抗β−アクチン抗体(細胞質タンパク質用、Santa Cruz Biotechnology)をロードが等量であることを確認するために使用した。ラット血清中のHMGBlのレベルは、以前に記載したように(Wang H、Bloom O、Zhang M、Vishnubhakat JM、Ombrellino M、Che J、Frazier A、Yang H、Ivanova S、Borovikova L、Manogue KR、Faist E、Abraham E、Andersson J、Andersson U、Molina PE、Abumrad NN、Sama A、Tracey KJ:HMG−1 as a late mediator of endotoxin lethality in mice.Science 285:248〜251、1999)、ウサギポリクローナル抗HMGBl抗体を使用して測定した。
【0078】
細胞培養:マウスマクロファージ様RAW264.7細胞をATCC(American Type Culture Collection、Manassas、VA)から入手し、10%(容積/容積)FBS(56℃で30分加熱不活性化)、l00U/mlペニシリン、l00μg/mlストレプトマイシン、および2mMグルタミンを含有するダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(DMEM、Life Technologies、Grand Island、NY)中で増殖させた。細胞を培地中に再懸濁し、加湿インキュベーター(37℃、5%CO)中で一晩、6穴または48穴の組織培養プレートで培養した。本実験では、様々な指示濃度および様々な指示時間で組換えCIRPと共にまたはCIRPなしで細胞単層を刺激した。TNF−αについてELISAにより、HMGBlについてウエスタンブロット解析により無細胞の上清を分析した。
【0079】
炎症性サイトカインの分析:炎症性サイトカインカスケードおよび急性炎症反応の指標として、組換えCIRPと共にインキュベートした細胞の上清を、市販の酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キット(BioSource International、Camarillo、CA)を使用して製造業者の説明書に従いTNF−αおよびIL−6のレベルについて測定した。血清中および組織中のTNF−αおよびIL−6のタンパク質レベルを定量するために、我々は、出血の4時間後または組換えCIRPによる処置の4時間後にラットを屠殺したときの心穿刺によって動物から血清試料を採取し、また組織試料を集め、上記と同じ方法によって測定した。
【0080】
トランスアミナーゼおよび乳酸の血中レベルの測定:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、および乳酸の血清濃度は、アッセイキットを使用して製造業者の説明書 (Pointe Scientific、Lincoln Park、MI)に従い測定した。
【0081】
顆粒球ミエロペルオキシダーゼの評価:肺および肝臓の組織内好中球の蓄積は、以前に報告したように(Dwivedi AJ、Wu R、Nguyen E、Higuchi S、Wang H、Krishnasastry K、Marini CP、Ravikumar TS、Wang P:Adrenomedullin and adrenomedullin binding protein−1 prevent acute lung injury after gut ischemia−reperfusion.J Am Coll Surg 205:284〜293、2007)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性測定法を使用して評価した。
【0082】
統計分析:データはすべて平均±SEとして示し、一元配置分散分析(ANOVA)およびStudent−Newman−Keuls法によって比較する。生存率はKaplan−Meier法によって評価し、ログランク検定によって比較した。P<0.05の場合、値の相違は有意であると見なした。
【0083】
結果
出血後の循環血中および組織内のCIRPレベルの変化:実験により失血(出血)したラットでは、様々な組織においてCIRP mRNAの発現が顕著に増大することが示された。擬似手術対照と比較して、CIRPの発現が肝臓において約5倍(図2A)、心臓において約3倍(図2B)増大した。循環血中に高レベルのCIRPタンパク質が、出血ラットのウエスタンブロット解析によって検出された。出血群では免疫反応性の明確なCIRPバンドが示されたが、擬似群ではそのバンドは見つからなかった(図2C)。擬似手術ラットと比較して、CIRPタンパク質の発現が出血動物の心臓でも増大した(図2D)(β−アクチンが、ロードが等量であることを確認することになる)。
【0084】
組換えCIRP(rCIRP)は、健常ラットに組織障害を誘発する:健常動物におけるrCIRPの影響を調べるために、我々は、細菌の発現系から精製した組換えタンパク質であるrCIRP(1mg/kg体重)を健常ラットに投与し、ASTおよびALT(肝臓障害の指標)の血清レベルを測定した。rCIRPで処置したラットでは、AST(図3A)およびALT(図3B)のレベルが顕著に上昇することが示された。これらの結果は、rCIRPが炎症性組織障害を直接引き起こすことを示す。
【0085】
組換えCIRP(rCIRP)は、健常ラットにおいて炎症促進性サイトカインのレベルを増大させる:rCIRP(1mg/kg体重)または対照として緩衝液(同容量)を注射した後に、TNF−αの血清レベルは、rCIRP群において著しく増大し、緩衝液(擬似)群より約5倍高かった(図4A)。TNF−αの遺伝子およびタンパク質の両方の発現が、rCIRPの投与後に肝臓(図4Cおよび図4D)および腸(図4Eおよび図4F)において増大した。図4Bに、rCIRP(1mg/kg体重)の投与後に、炎症促進性サイトカインであるHMGBlの循環血中レベルが増大することを示す。擬似群(二つ組)における弱いバンドと比較して、rCIRP処置ラットでは強い免疫反応性HMGBlバンド(三つ組)が示された。
【0086】
rCIRPによるマクロファージ刺激後の炎症性サイトカイン放出の増大:並列実験において、我々はrCIRPと共に培養した培養RAW細胞の上清中のサイトカインを測定した。組換えCIRPと共にインキュベートした培養RAW細胞の上清中のTNF−αおよびIL−6のレベルの上昇は、用量依存的かつ時間依存的であった。図5Aに示すように、100ng/mlのrCIRP(4時間インキュベーション)は、TNF−αの放出を顕著に増大させた。時間経過に関して、100ng/mlのrCIRPは、TNF−αおよびIL−6の産生をそれぞれインキュベーションの4時間後および2時間後には早くも顕著に増大させた(図5C〜図5D)。上清のHMGBlレベルは、rCIRP刺激後に用量依存的に増大した。培養RAW細胞からのHMGBlの放出が、500ng/mlのrCIRPと共に20時間インキュベートした後に約6倍に増大することがウエスタンブロットの定量によって示された(図5B)。
【0087】
抗CIRP抗体には出血後の有意な延命効果がある:CIRPが、出血などの様々な誘発に対する炎症反応での新しいメディエーターであることをさらに確認するために、我々は、CIRP(3mg/kg体重)に対する特異抗体を出血ラットに投与した。その結果は、急性の失血において、CIRPの遮断が有意な延命効果を与えることを示した。図6に示すように、抗CIRP抗体による処置は、実験的に出血させた動物の生存率を43%から85%に増大させた(P<0.05)。
【0088】
抗CIRP抗体は出血後の組織障害を減弱する:出血に対する反応でのrCIRPの病態生理学的影響を引き続き調べるために、我々は、CIRPに対する特異抗体(3mg/kg体重)を出血ラットに投与した。我々の結果は、出血後のAST、ALT、および乳酸のレベルの増大が、抗CIRP抗体によって有意に減弱される(30%〜40%の減少、P<0.05)ことを示した(図7A〜図7C)。
【0089】
抗CIRP抗体は、炎症促進性サイトカインにおける、出血誘発性の増大を減弱する:抗CIRP抗体(3mg/kg体重)による処置は、血清中のTNF−α(図8A)およびIL−6(図8D)の出血誘発性のアップレギュレーションを有意に減少させた。極めて類似の結果が、実験による血液除去(出血)後の動物の肺および肝臓それぞれのTNF―α(図8Bおよび図8C)およびIL−6(図8Eおよび図8F)の組織内レベルにおいても観察された。
【0090】
抗CIRP抗体は、出血後のMPO活性の増大を低下させる:MPO(ミエロペルオキシダーゼ)は炎症の一般的な指標と考えられ、組織MPO活性の増大は好中球の血管外遊出を反映する。実験による出血は、肝臓のMPO活性の増大を誘発した。我々は、抗CIRP抗体の投与後にMPOの増大が有意に低下することを観察した(図8G)。
【0091】
本明細書で引用したすべての参考文献は参照によって本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)薬学的に許容される担体または希釈剤と、
ii)CIRP阻害剤と
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記CIRP阻害剤が、CIRPに特異的に結合する抗体またはその抗原性断片であり、前記抗体または抗原性断片が、CIRPの1つもしくは複数の生物活性を阻害する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記CIRP抗体が、ポリクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記CIRP抗体が、モノクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記CIRP抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくはヒト抗体、またはそれらの抗原性断片である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記CIRP抗体が、単鎖抗体またはその抗原性断片である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記CIRP阻害剤が、CIRPの発現を低下させるCIRPアンチセンス分子である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記CIRP阻害剤が、1000ダルトン未満の分子量を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
被験対象に有効量のCIRP阻害剤を投与することを含む、炎症性状態を有する被験対象を処置する方法。
【請求項10】
前記CIRP阻害剤が、CIRPに特異的に結合する抗体またはその抗原性断片であり、前記抗体または抗原性断片が、CIRPの1つまたは複数の生物活性を阻害する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CIRP抗体が、ポリクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CIRP抗体が、モノクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記CIRP抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、もしくはヒト化抗体、またはそれらの抗原性断片である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記CIRP抗体が、単鎖抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記CIRP阻害剤が、CIRPの発現を妨げるCIRPアンチセンス分子である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記CIRP阻害剤が、1000ダルトン未満の分子量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症性状態が、急性の炎症性エピソードである、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症性状態が、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、喉頭蓋炎、無弛緩症、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、ウィップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、器官虚血再潅流障害、器官ネクローシス、枯草熱、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、過高体温、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血症性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、肋膜炎、静脈洞炎、インフルエンザ、呼吸合包体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、脈管炎、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓性静脈炎、心膜炎、心筋炎、虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、小児脂肪便症、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、脳膜炎、脳炎、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節炎、関節滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性紅斑性狼瘡、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、強直性脊椎炎、ベルガー病、ライター症候群、ホジキン病、乾癬、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、および外傷出血からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症性状態が、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵臓炎、肝炎、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、器官ネクローシス、枯草熱、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、敗血症、内毒素性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、悪液質、敗血症性流産、播種性菌血症、小児脂肪便症、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、関節炎、全身性紅斑性狼瘡、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、脊髄損傷、麻痺、乾癬、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、および外傷出血からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症性状態が、腹膜炎、膵臓炎、セプシス、セプシス−敗血症性ショック、内毒素性ショック、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、慢性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、壊死性小腸大腸炎、喘息、および外傷出血からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記炎症性状態が、外傷出血、セプシス−敗血症性ショック、虚血再潅流(腸、肝臓、腎臓、心臓、脳、および四肢)、心筋梗塞、脳卒中、炎症性腸疾患、および壊死性小腸大腸炎からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験対象が、ヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
CIRPに特異的に結合する単離抗体またはその抗原性断片であって、前記抗体または抗原性断片がCIRPの1つまたは複数の生物活性を阻害する、単離抗体またはその抗原性断片。
【請求項24】
前記CIRP抗体がポリクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
前記CIRP抗体が、モノクローナル抗体またはその抗原性断片である、請求項23に記載の抗体。
【請求項26】
前記CIRP抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体、あるいはそれらの抗原性断片である、請求項23に記載の抗体。
【請求項27】
前記CIRP抗体が、単鎖抗体またはその抗原性断片である、請求項23に記載の抗体。
【請求項28】
CIRP活性を阻害する方法であって、有効量のCIRP阻害剤をそれを必要とする被験対象に投与することを含む方法。
【請求項29】
前記CIRP阻害剤が、CIRP受容体結合を阻害する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記CIRP阻害剤が、CIRPシグナリングを阻害する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記CIRP阻害剤が、CIRP媒介炎症を阻害する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記CIRP阻害剤が、炎症促進性サイトカインのCIRP媒介放出を阻害する、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−523460(P2012−523460A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506113(P2012−506113)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030824
【国際公開番号】WO2010/120726
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】