説明

低pH空気混入製品

ハイドロホビンを含む、5.5未満のpHを有する空気混入組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイドロホビンを含む食品など、低pH空気混入組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様の食品が、空気、窒素および/または二酸化炭素などの導入ガスを含んでいる。一般的に、空気混入食品は、相対的に中性のpH約6.0〜7.5を示す傾向にある。かかる製品の例には、アイスクリーム、ホイップトッピングおよびホイップクリームが含まれる。
【0003】
多くの空気混入食品はタンパク質を含み、これらが気泡の取込みおよびその後の気泡の安定性に不可欠である。しかしながら、特に乳タンパク質はpHに対して敏感な傾向を示す。すなわち、これらの電荷、相互作用、および構造は、pHの関数として変化し得る。これは、発泡能力とタンパク質を使用して作った泡の結果としての安定性の両方に、特にpH5.4以下の空気混入製品に悪影響を及ぼす。これは、pHが低下すると多くのタンパク質の表面活性と溶解度の両方が減少するためである。例えば、カゼイン酸ナトリウムは、約pH4.6〜4.8において沈澱する。これは不十分な空気の取入れの低下と、空気混入製品の結果としての不安定性をもたらす。
【0004】
この事実は、文献において広範囲に記述されており、低pHにおいて安定した泡を作り出すことは周知の問題である。しかし、当技術分野において、低pHにおける空気混入食品の作成を促進する手段は存在するが、これらは制限を有する傾向がある。かかる制限は現行の発明によって克服される。例えば、ゼラチンが、製品を濃縮し空気の安定性を支援するための安定剤としてしばしば加えられる。多くの「ムース」製品が、ゼラチンを使用すると有利である。しかしながら、ゼラチンは動物ベースの安定剤であり、多くの消費者から適切な成分であるとは思われていない。さらに、ゼラチンの使用は一般的に製品が「固まる」こと、すなわち流動しないことを意味する。これは、ゼラチンの使用が、この処方技術を用いて作成できる製品に限定されることを意味する。
【0005】
他の方法は、例えばスクロースエステルおよび/または飽和脂肪酸のモノグリセリド/ジグリセリドの変異体など、他の化学的乳化剤を活用するものである。これら非牛乳ベースの処方技術は、低pHにおいて空気を含有できる製品を形成するが、(3週間を超える)長期の安定のためには、しばしはかなりの量の乳化剤を必要とする。これは、味覚と質感の両方に望ましくない影響を及ぼす。さらに、食品中にかなりの量の化学的乳化剤が存在することは、消費者に受け入れられない。
【特許文献1】国際公開第06/010425号
【特許文献2】国際公開第96/41882号
【特許文献3】国際公開第01/57076号
【特許文献4】国際公開第00/58342号
【非特許文献1】Ice Cream、第4版、Arbuckle(1986)、Van Nostrand Reinhold Company、New York、NY.
【非特許文献2】Sambrook他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版 (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.
【非特許文献3】Ausubel他、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版、John Wiley & Sons、Inc.-および「Current Protocols in Molecular Biology」と題する完全版.
【非特許文献4】Wessels、1997、Adv. Microb. Physio. 38:1〜45頁
【非特許文献5】Wosten、2001、Annu Rev. Microbiol. 55: 625〜646頁
【非特許文献6】De Vocht他、1998、Biophys. J. 74: 2059〜68頁
【非特許文献7】Wosten 他、1994、 Embo. J. 13: 5848〜54頁
【非特許文献8】MacCabeおよび Van Alfen、1999、App. Environ. Microbiol 65: 5431〜5435頁
【非特許文献9】Collen他、2002、Biochim Biophys Acta. 1569:139〜50頁
【非特許文献10】Calonje他、2002、Can. J. Microbiol. 48:1030〜4頁
【非特許文献11】Askolin他、2001、Appl Microbiol Biotechnol. 57:124〜30頁
【非特許文献12】De Vries他、1999、Eur J Biochem. 262:377〜85頁
【非特許文献13】Mengual他、Colloids and Surfaces A、1999、152、112〜123頁
【非特許文献14】Rouimi他、Food Hydrocolloids、2005、19、467〜478頁
【非特許文献15】Linder 他、2001、 Biomacromolecules 2:511〜517頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
適切な空気混入剤は、理想的には、(その発泡性能に関して)pH非感受性であり、味覚と質感に悪影響を及ぼさないように低濃度において有効であることが明らかであり、冷えたまたは周囲温度において泡が3週間を超えて安定な空気混入食品を形成するのに使用することのできるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの同時係属中の出願、国際公開第06/010425号において、発明者らは空気混入食品を安定化するのに非常に有効な、ハイドロホビンと呼ばれる真菌タンパク質を特定した。本発明者らは、このたび驚くべきことに、低濃度のハイドロホビンタンパク質(<0.5重量%)を酸と混合して低pHの溶液を生成でき、この溶液が容易に発泡性であって冷えたおよび周囲温度において泡を形成し、この泡が3週間を超えて安定であることを見出した。ハイドロホビンは、連続相のゲル化または口中の望ましくない質感をもたらさないので、これは連続相の流動性には関係なく、低pHにおいて安定な泡が形成され得ることを意味する。したがって空気混入製品の適用可能性は、例えば空気混入酸性スムージー、空気混入茶飲料など、広範囲にわたる。
【0008】
これらの適用可能性は、食品のみならず、他の低pHを有する空気混入組成物にも適用することができる。
【0009】
したがって本発明は、ハイドロホビンを含む、5.5未満のpHを有する空気混入組成物を提供する。
【0010】
一実施形態において、ハイドロホビンは実質的に単離した形態である。
【0011】
好まし実施形態において、ハイドロホビンは少なくとも0.001重量%、より好ましくは少なくとも0.01重量%の量で存在する。
【0012】
ハイドロホビンは、クラスIIのハイドロホビンであることが好ましい。
【0013】
本発明は、さらに5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の気泡の粗大化を防止する方法におけるハイドロホビンの使用を提供する。
【0014】
関連する態様において、本発明は5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の気泡の粗大化を防止する方法を提供し、この方法は組成物の空気混入の前および/または空気混入中に、ハイドロホビンを組成物に加えることを含む。
【0015】
また本発明は、5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の泡の安定化の方法における、ハイドロホビンの使用を提供する。
【0016】
また関連する態様において、本発明は5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の泡を安定化する方法を提供し、この方法は組成物の空気混入の前および/または空気混入中に、組成物にハイドロホビンを加えることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
別段の定義がない限り、本発明で使用される全ての技術的および科学的用語は、当技術分野(例えば、チルド菓子/冷凍菓子製造、化学およびバイオ技術)において一般的に理解されているのと同じ意味である。チルド/冷凍菓子製造において使用されるさまざまな用語および技術の定義および説明は、Ice Cream、第4版、Arbuckle(1986)、Van Nostrand Reinhold Company、New York、NY.において見出される。分子およびバイオケミカル方法に関する標準技術は、Sambrook他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubel他、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版、John Wiley & Sons、Inc.および「Current Protocols in Molecular Biology」と題する完全版において見出される。
【0018】
ハイドロホビン
ハイドロホビンは、タンパク質の明確な種類であり(Wessels、1997、Adv. Microb. Physio. 38:1〜45頁、Wosten、2001、Annu Rev. Microbiol. 55: 625〜646頁)、疎水性/親水性の界面において自己集合することができ、以下の保存配列を有している。
Xn-C-X5-9-C-C-X11-39-C-X8-23-C-X5-9-C-C-X6-18-C-Xm (配列番号1)
ここで、Xは任意のアミノ酸を表し、nおよびmは独立に整数を表す。一般的に、ハイドロホビンは125アミノ酸までの長さを有する。保存配列中のシステイン残基(C)は、ジスルフィド架橋の一部である。本発明の文脈では、ハイドロホビンという用語は、より広い意味合いを有しており、疎水性/親水性の界面における自己集合の特性を示し、結果としてタンパク質フィルムとなる、機能的に同等のタンパク質、例えば以下の配列、
Xn-C-X1-50-C-X0--5-C-X1-100-C-X1-100-C-X1-50-C-X0-5-C-X1-50-C-Xm (配列番号2)
または、疎水性/親水性の界面における自己集合の特性を依然として示し、結果としてタンパク質フィルムとなるこの配列の部分を含むタンパク質を含む。本発明の定義によれば、自己集合はタンパク質をテフロン(登録商標)に吸収させて、円偏光二色性を用いて二次構造(一般的αらせん)の存在を確立することにより検出することができる(De Vocht他、1998、Biophys. J. 74: 2059〜68頁) 。
【0019】
フィルムの形成は、テフロン(登録商標)シートをタンパク質溶液中でインキュベートし、続いて少なくとも3回水または緩衝溶液で洗浄することによって確立することができる(Wosten 他、1994、 Embo. J. 13: 5848〜54頁)。タンパク質フィルムは、例えば蛍光マーカーを用いたラベリング、蛍光抗体の使用など、当技術分野において十分に確立している任意の適切な方法によって可視化することができる。mおよびnは、一般的に0〜2000におよぶ値を有しているが、より一般的には合計で100または200未満である。本発明に関するハイドロホビンの定義は、ハイドロホビンおよび別のポリペプチドの融合タンパク質、ならびにハイドロホビンおよび多糖類など他の分子の複合体を含んでいる。
【0020】
今までに確認されたハイドロホビンは、クラスIまたはクラスIIのいずれかに分類される。両方の種類とも、菌類中でハイドロホビン性界面において、両親媒性フィルムへと自己集合する分泌タンパク質として確認された。クラスIハイドロホビンの集合体が比較的不溶性であるのに対して、クラスIIのハイドロホビンの集合体は、さまざまな溶媒に容易に溶解する。
【0021】
ハイドロホビン様のタンパク質も、例えば、アクチノミセテス属種およびステプトマイセス属種など、糸状菌中で確認されている(国際公開01/74864号)。これら細菌タンパク質は、2つだけのシステイン残基を有しているので、菌類ハイドロホビンと対照的に、1つまでのジスルフィド架橋形成する。かかるタンパク質は、配列番号1および2において示されるコンセンサス配列を有するハイドロホビンと機能的同等物の例であり、本発明の範囲内である。
【0022】
ハイドロホビンは、糸状菌などの自然源から、任意の適切な方法によって、抽出により得ることができる。例えば、ハイドロホビンは、ハイドロホビンを成長媒体へ分泌する糸状菌の培養または真菌性菌糸体を、60%エタノールを用いて抽出することによって得ることができる。自然においてハイドロホビンを分泌する宿主生物から、ハイドロホビンを単離することが特に好ましい。好ましい宿主生物は、ハイホミセトス(例えば、トリコデルナ)、バシジオマイセトスおよびアセトマイセトスである。特に好ましい宿主は、クリパリンと呼ばれるハイドロホビンを分泌するクリホネクトリア寄生虫などの、食品級の生物である(MacCabeおよびVan Alfen、1999、App. Environ. Microbiol 65: 5431〜5435頁)。
【0023】
別法として、ハイドロホビンは組換え技術を使用することによって得ることができる。例えば、宿主細胞、典型的に微生物は、ハイドロホビンを発現するように改質してよく、次いでハイドロホビンを分離して本発明に従って使用することもできる。ハイドロホビンをコードする核酸構成物を宿主細胞中に導入する技術は、当技術分野において良く知られている。ハイドロホビンをコードする34を超える遺伝子は、16を超える真菌種からクローン化されている(例えば、アガリカスビスポラスにおいて確認されているハイドロホビンの配列を示している国際公開第96/41882号およびWosten、2001、Annu Rev. Microbiol.55: 625〜646頁を参照されたい)。組換え技術は、ハイドロホビン配列の改変または所望の/改良された性質を有する新規のハイドロホビンの合成にも使用することができる。
【0024】
一般的に、適切な宿主細胞または生物は、所望のハイドロホビンをコードする核酸構成物によって形質転換される。このポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切な条件の下で(例えば、適切な配向および正しい読み取り枠において適切なターゲッティングおよび発現配列で)発現されるように、転写および翻訳のために必要なエレメントをコードする適切な発現ベクター中に挿入することができる。これらの発現ベクターを構築するのに必要な方法は、当業者に良く知られている。
【0025】
ポリペプチドをコードする配列を発現するのに数多くの発現システムを使用することもできる。これらには、それだけに限定されないが、細菌、菌類(酵母菌を含む)、昆虫細胞システム、植物細胞培養システムおよび適切な発現ベクターを用いて形質転された全ての植物が含まれる。好ましい宿主は、食品級すなわち「一般的に安全である」 (GRAS)」とみなされる宿主である。
【0026】
適切な真菌種には、例えば、サッカロミセス属、クリュイベロミセス属、ピチア属、ハンゼヌラ属、カンジダ属、スキゾサッカロミセス属などの(ただしこれらに限定されない)酵母菌、および例えばアスペルギルス属、トリコデルマ属、ムコール属、ニューロスポラ属、フザリウム属などの(ただしこれらに限定されない)糸状種が含まれる。
【0027】
ハイドロホビンをコードする配列は、アミノ酸レベルにおいて、自然において確認されたハイドロホビンに対して少なくとも80%同一であることが好ましく、少なくとも95%または100%同一であることがより好ましい。しかしながら、当業者は同類置換またはハイドロホビンの生物活性を低下させない他のアミノ酸変換を行うこともできる。本発明の目的において、自然に産するハイドロホビンに対して高い同一性を有するこれらのハイドロホビンも、「ハイドロホビン」という用語に包含される。
【0028】
ハイドロホビンは、培地または細胞抽出体から、例えば、国際公開第01/57076号に記述されている手順によって精製することができる。この手順は、ハイドロホビン含有溶液中に存在するハイドロホビンを表面に吸着し、次いで表面を例えばTween 20などの界面活性剤と接触させてハイドロホビンを表面から溶離することを含んでいる。また、Collen他、2002、Biochim Biophys Acta. 1569:139〜50頁;Calonje他、2002、Can. J. Microbiol.48:1030〜4頁;Askolin他、2001、Appl Microbiol Biotechnol. 57:124〜30頁;およびDe Vries他、1999、Eur J Biochem. 262:377〜85頁も同様に参照されたい。
【0029】
空気混入低pH組成物
「低pH組成物」という用語によって、本発明者らは、水相のpHが製品の寿命の一部または全部において5.5未満である任意の組成物を意味する。pHは、5.4、5.2または5.0未満であることが好ましい。一般的に、pHは1.0以上、好ましくは3.0以上、例えば4.0以上である。空気混入食品に関し、一般的に低pH製品は3.0〜5.4のpHを示す。
【0030】
「空気混入」という用語は、気体が機械的手段などで製品に意図的に組み込まれたことを意味する。気体はどんな気体でもよいが、特に食品の関連においては、空気、窒素または二酸化炭素など食品用気体であることが好ましい。空気混入の程度は、一般的に「オーバーラン」という用語で定義される。本発明に関して、%オーバーランは容積で以下のように定義される。
(空気混入製品の容積−混合物の容積)/混合物の容積)×100
製品中に存在するオーバーランの程度は、所望の製品特性により変わる。例えば、冷凍ヨーグルトにおけるオーバーランの水準は一般的に約70〜100%であり、ムースなどの砂糖菓子では、オーバーランは200〜250%の高さであることができる。一部のチルド製品、常温製品およびホット製品のオーバーラン水準はもっと低くできるが、一般的に10%を超えており、例えばミルクシェークにおけるオーバーラン水準は一般的に10〜40%である。
【0031】
他の製品におけるオーバーランの水準は、100〜800%であることが好ましい。
【0032】
製品中で泡が均一である必要はないが、それでも一実施形態において、泡は実質的に均一である。
【0033】
本発明の空気混入組成物は、空気混入食品を含む。他の組成物は、泡が低pHの連続相内で、製品の所望される使用時間を通してその安定性を維持できることが求められる組成物を含む。
【0034】
本発明の空気混入組成物は、その元の空気相容積の好ましくは少なくとも50%を、より好ましくは75%を、少なくとも3週間(一般的に冷温 (約5℃)における保管後に測定して)保持する。オーバーランは、製品を通して均一に分散している必要はない。
【0035】
組成物中の平均気泡直径は、3週間にわたって(一般的に冷温 (約5℃)における保管後に測定して)、組成物が最初に調製されたt=0のときの平均直径より、感知し得るほど変化しないことが好ましい。相対的平均気泡直径(dr)は、3週間にわたって好ましくは2.5倍未満、より好ましくは2倍未満である。時間=tにおける相対的平均気泡直径(dr)は、試料中次式で決定される。
【0036】
【数1】

【0037】
ここでd0は調製直後すなわちt=0における平均気泡直径であり、dtは時間=tにおける平均気泡直径である.
【0038】
気泡直径および泡容積の変化を測定する適切な方法は、光散乱技術を使用することである。Turbiscan TLab測定システム(Formulaction、フランス)は、簡便に使用することができ、これは対象とする空気混入サンプルからの後方散乱光および透過光の両方を分析する。
【0039】
分析する発泡体を、円筒形サンプルセルに収納する(例えば、直径25mmのサンプルセルに、20mlの発泡体を充填する)。入射光線を与えるのに波長λ=880nmの光源を使用し、2つの光学センサーが、サンプルを透過してきた(入射光から180°の)透過光および(入射光から45°の)後方散乱光を受ける。走査様式において、光学センサーはチューブの高さをスキャンして、透過および後方散乱のデータをサンプル高さおよび時間の関数として得る。したがって、移動現象(クリーム分離など)および粒径の変化(気泡寸法など)を経時的にモニターすることができる。関連性理論およびTurbiscan測定システムの使用例は、Mengual他、Colloids and Surfaces A、1999、152、112〜123頁;Rouimi他、Food Hydrocolloids、2005、19、467〜478頁において見出すことができる。同様に、適用に際しての注意および有用な情報が、製造者のウェブサイト:www.turbiscan.comから得ることができる。
【0040】
実験的に、平均気泡寸法変化は、他の変化(泡の崩壊または気泡のクリーム分離など)が起こらないサンプルのある領域を通る後方散乱光の変動によって最も良く観察される。ここにおいて、本発明者らは泡の中央領域を使用した。後方散乱水準(BS)は、泡を通して光子の輸送平均自由行程、λ*、に以下の関連性により関連づけられる。
【0041】
【数2】

【0042】
λ*は、気体容積分率φ、および気泡平均直径dに以下の関係で依存する。
【0043】
【数3】

【0044】
Qおよびgは、共にMie理論からの光学的パラメータであり、ここでQは散乱有効性係数で、gは非対称性係数である。既知の空気容積分率の泡に関して、平均気泡直径の変化を経時的にモニターすることができる。これはTurbiscanソフトウェアを通して、自動的に計算される。
【0045】
使用することのできる正確な測定パラメータは、実施例において述べる。
【0046】
泡の安定性(時間の関数としての泡の容積)およびクリーム分離の程度は、計測シリンダーに入れた泡のこれらの現象を観察することによる目視方法によっても決定することができる。(気泡の浮力による)クリーム分離は、容器中で垂直相分離を導き、その結果として気泡の大部分が上部表面近くに集まり、底部における気泡が減少するプロセスである。
【0047】
空気混入食品
本発明の空気混入食品は、一般的に4つのグループ、すなわちホット、周囲温度(すなわち、冷却/冷蔵の必要がない室温で保管および/またはサービスされる製品)、チルドまたは冷凍のグループ、の1つに分類される。「食品」という用語には、飲料が含まれる。チルド空気混入食品には、スムージーおよび茶が含まれる。冷凍空気混入食品には冷凍ヨーグルトなどの冷凍菓子が含まれる。
【0048】
本発明の低pH食品において使用するのに適した酸には、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、カルボン酸、コハク酸、マレイン酸、グルコン酸、およびこれらの混合物が含まれるが、それだけには限定されない。
【0049】
食品は、場合によっては、乳タンパク質などの他のタンパク質、純粋な成分または液体成分のどちらかの、例えばミルクまたはクリームなど;特に乳化相形態のオイルまたは脂肪;砂糖;塩;着色剤および芳香剤;モノグリセリドなどの化学的乳化剤、茶またはコーヒー;果物または野菜のピューレ/エキス/ジュース;ポリサッカリドなどの安定剤または増粘剤;保存剤;ナッツ、果実、トッフィーなどの内包物などの、1つまたは複数の他の成分を含むこともできる。本発明の食品は、ゼラチンを含んでいないことが好ましい。
【0050】
本発明の実施形態ついて、幾つかの特定の例を以下に示す。
【0051】
一実施形態において、製品は、例えばミルクセーキ、スムージー、炭酸飲料、ビール、または茶などの空気混入飲料であり、ここで泡は低pHにおいて製品の寿命期間中安定に維持されることが求められる。この場合、空気混入製品のオーバーランは5%と300%の間でよく、最も好ましくは10%と200%の間である。気体は、製品中を通して均一に分散している必要はない。
【0052】
第二の実施形態において、製品はムース、チーズケーキ、ジャム、ホイップトッピングまたはホイップクリームなどの空気混入セットフードであり、ここで泡は低pHにおいて製品の寿命期間中安定に維持されることが求められる。この場合、好ましいオーバーランは、50%と400%の間である。
【0053】
第三の実施形態において、製品はシャーベット、アイスクリーム、または冷凍ヨーグルトなどの空気混入冷凍デザートであり、ここで泡は低pHにおいて製品の寿命期間中安定に維持されることが求められる。好ましいオーバーランは、50%と300%の間である。
【0054】
空気混入食品は空気混入菓子製品であることが好ましい。
【0055】
製品に存在するハイドロホビンの量は、一般的に製品の配合および空気相の容積により変わる。一般的に、製品はハイドロホビンを少なくとも0.001重量%、より好ましくは少なくとも0.005重量%または0.01重量%含んでいる。一般的に製品は1重量%未満のハイドロホビンを含んでいる。ハイドロホビンは、単一源からまたは複数源から得ることができ、例えばハイドロホビンは2つ以上の異なるハイドロホビンポリペプチドの混合物であることができる。
【0056】
ハイドロホビンは、クラスIIハイドロホビンであることが好ましい。
【0057】
また本発明は、本発明の空気混入食品を作り出すためのハイドロホビンを含む組成物を包含する。かかる組成物には、例えば冷凍菓子の生産に使用される与混合品などの予混合液体、および空気混入の前または空気混入の間にミルクまたは水などの水性液体が加えられる、例えば粉末などの乾燥混合物が含まれる。
【0058】
本発明の空気混入食品を作成するための組成物は、ハイドロホビンに加えて、例えば砂糖、脂肪、乳化剤、着香剤など、通常食品に含まれる他の成分を含む。組成物は、本発明の空気混入食品を形成するために、組成物が処理すなわち空気混入できるように準備するために必要な残りの成分の全てを含むこともできる。
【0059】
また本発明の空気混入食品を作成するための乾燥組成物は、ハイドロホビンに加えて、例えば砂糖、脂肪、乳化剤、着香剤など、通常食品に含まれている他の成分も含む。組成物は、使用者が、例えば水またはミルクなどの水性液体を加えるだけで本発明の空気混入食品が形成されるように、食品を作成するのに必要な残りの非液体成分の全てを含むこともできる。これら乾式組成物の例には粉末および顆粒が含まれ、これらは産業用および小売用両方に設計することができ、容積の減少および有効期間の延伸によって利益を受ける。
【0060】
本発明の空気混入食品を作成するための組成物は、一般的に5.5未満のpHを有し、または乾燥組成物の場合には、水またはミルクを加えて、製品をその通常の最終形態にもどした時に5.5未満のpHを有する組成物を形成する。
【0061】
ハイドロホビンは、空気相を安定化するのに利用可能な形態および量で加えられる。「加える」という用語によって、本発明者らはハイドロホビンがその泡安定特性を利用する目的で製品に意図的に導入されることを意味する。したがって、ハイドロホビンポリペプチドを含む可能性がある真菌汚染を含む成分が存在するかまたは加えられた場合には、本発明の文脈におけるハイドロホビンを加えるには含まれない。
【0062】
一般的に、ハイドロホビンは空気-液体面において自己集合できるような形態で製品に加えられる。
【0063】
一般的に、ハイドロホビンは本発明の製品または組成物に、一般的に固体の重量に対して少なくとも10%純度など、少なくとも部分的に精製された単離した形態で加えられる。「単離した形態で加えられる」という用語によって、本発明者らはハイドロホビンが、例えば天然にハイドロホビンを発現するマッシュルームなど、天然産の生物の一部として加えられるものではないことを意味している。そうではなくて、ハイドロホビンは天然産原料から抽出されたものかまたは宿主生物中の組換え発現で得たものかのいずれかである。
【0064】
一実施形態において、ハイドロホビンは単量体、二量体および/またはオリゴマー(すなわち、10単量体単位以下より成る)の形態で製品に加えられる。加えられるハイドロホビンの好ましくは少なくとも50重量%が、より好ましくは少なくとも75、80、85または90重量%が、これら形態の少なくとも1つである。ハイドロホビンは、いったん加えられると通常は空気/液体界面で集合するので、単量体、二量体およびオリゴマーの量は減少すると予想される。
【0065】
一実施形態において、ハイドロホビンは単離した形態で、一般的に少なくとも部分的に精製されて、本発明の空気混入組成物に加えられる。
【0066】
加えられたハイドロホビンは、一般的に気泡の破壊の防止によって、空気混入組成物中の空気相を安定化するのに使用することができる。すなわち、ハイドロホビンは、泡の容積を安定化するだけでなく、同時に泡の中の気泡寸法も安定化することが見出された。
【0067】
次に、本発明を、例示的であって制限するものではない以下の実施例を参照にしてさらに説明する。
【実施例1】
【0068】
空気混入低pH製品
酸、キサンタンガム、および以下に一覧を示す3つの空気混入剤(A〜C)の1つを含有する溶液を含む空気混入製品を調製した。
A:Hyfoama DS
B:モノグリセリドの乳酸エステル(Grinsted Lactem P 22、LACTEM)
C:トリコデルマレーセイからのハイドロホビン(HFBII)。HFBIIは、VTT Biotechnology(フィンランド)から入手、基本的に国際公開第00/58342号およびLinder他、2001、Biomacromolecules 2:511〜517頁に記載されているようにトリコデルマレーセイから精製したものである。
【0069】
使用した材料の詳細を表1に示す。また各泡サンプルのそれぞれを調製した配合物(混合物A〜C)を表2に示す。
【0070】
泡のクリーム分離を防止するために、それぞれの混合物にキサンタンを加えた。これは、クリーム分離などの他の脱安定化要因の複雑な状況を排除し、時間の関数としての気泡寸法の完全な分析を可能にする。換言すれば、本発明者らは不均衡および崩壊などの脱安定化機構に対する泡の安定性を測定している。
【0071】
混合物の調製
混合物Aに関しては、タンパク質とキサンタンガムをブレンドし、室温の撹拌している水にゆっくりと加えた。その後溶液を、タンパク質が適切に溶解することを確実にするために40℃に加熱し、全体で30分間撹拌した。この混合物を冷却し、さらなる使用まで5℃において保管した。
【0072】
混合物Bに関しては、Lactemとキサンタンを室温の撹拌している水に分散した。次いでこの分散体を、Lactemが適切に溶解することを確実にするために60℃に加熱し、全体で30分間撹拌した。この混合物を冷却し、さらなる使用まで5℃において保管した。
【0073】
混合物Cに関しては、キサンタンを撹拌しながら冷水にゆっくりと加え、ポリマーが完全に水和するのを確実にするため、少なくとも30分間撹拌した。次いで所要の濃度のHFB IIをアリコートとして加えた。この溶液を、次いでHFB IIを十分に溶解するため、音響浴中で30秒静かに超音波処理した。この混合物を冷却し、さらなる使用まで5℃において保管した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
空気混入プロセス
空気混入の前に、サンプル溶液は10重量%クエン酸溶液を用いて、所望のpHである5.4または3.5のいずれかに酸性化した。これらを表3に要約する。
【0077】
【表3】

【0078】
80mLの酸性化混合物を、撹拌ポット装置を用いて、100%オーバーランを得るのに相当する時間剪断した。この装置は、内寸法が高さ105mm、直径72mmである、シリンダー状の、垂直に設置されている、ジャケット付きステンレス鋼容器で構成されている。
【0079】
サンプルを剪断するために使用されるローターは、回転したときに容器の内部表面をこすり取るための正確な割合の長方形インペラー(寸法72mmx41.5mm)で構成されている。またローターに、長方形付属品に対して45°角度に位置する半円形(直径60mm)の高剪断ブレードが取り付けられている。回転速度は、1200rpmであり、ローターを含む鋼製容器は、空気混入中5℃に冷却された。
【0080】
空気混入後、さらなる分析を行うまで、サンプルはTurbiscan水薬瓶または100mL秤量シリンダー中において、5℃で保管した。
【0081】
泡および気泡の安定性測定
泡およびその中の気泡の安定性は、その操作について以下に詳しく説明するTurbiscan TLabを用いて測定した。これは、(1)泡容積(すなわち、全体的空気相損失の測定)、(2)平均気泡寸法を時間の関数として決定することを可能にする。
【0082】
作られた泡を、Turbiscanガラスサンプル管へ、20mLの泡にほぼ相当する約42mmの高さまで投入した。次いで、高さ2mmと55mmの間の後方散乱および透過光の両方を装置でスキャンして測定した。測定は、泡の安定性に基づき数週間かかった。データは全サンプル長について収集しているので、規定された限度(上下の高さ)の間の後方散乱のプロフィールの平均値は、その領域におけるサンプル中の変化に関する特定の情報、例えば気泡寸法を提供する。
【0083】
気泡寸法:20mmと30mmの間で測定した後方散乱データから、平均気泡寸法は後方散乱光から自動的に計算された。屈折率は水および空気の屈折率として取られた。泡の空気相容積分率は、0.5(100%オーバーランに相当する)であった。泡の空気相容積分率は、特に泡が安定でなかったりクリーム分離が生じたりする場合には、時間と共に変化し得るが、本発明者らはサンプルの高さ20mmと30mmの間を測定することで、泡が非常に不安定でない限り、信頼性のある寸法データが得られることを見出した。泡が非常に不安定な場合、寸法データは定量的意味からは慎重に取り扱わねばならないが、他の泡と比較することはできる。
【0084】
結果および考察
時間の関数としての安定性
平均気泡寸法(t=0分において測定した値に対する)を、各発泡体混合物について時間の関数として測定した結果を図1に示す。pH3.5および5.2の両方において、HFBIIは、HyfoamaまたはLactemのどちらか一方用いて空気混入した泡よりも、気泡がずっと長く安定な泡を形成する。HFBIIによって安定化された泡は、3週間を超えて安定であった。
【0085】
HyfoamaおよびLactemを用いて作られた泡は、著しい気泡成長が認められるだけでなく、その短い寿命の後半では崩壊 (空気相容積の損失)が生じた。HFBIIの場合、製品から空気相容積の損失は測定されなかった。
【0086】
図2および3は、HFBII、Lactem、またはHyfoamaを空気混入剤として作成した泡の画像を示す。図2は、HFBIIを使用して作成した泡が、PH3.5および5.4の両方において非常に安定していることを明らかに実証している。3週間の保管後でも、泡の崩壊または目に見える気泡の成長は観察されなかった。
【0087】
図3および4は、HFBIIを用いて作成した泡の安定性を再度実証している。pH3.4においてLactemを使用して作成した泡は、空気相容積の保持に関しては適度な安定性を示しているが、目に見える気泡を示している図4の接近写真から明らかなように、著しい気泡成長が起こっていることが明らかである。Hyfoamaの場合には、著しい気泡成長が起こり、同時に空気相容積が損失している。
【0088】
したがって、酸の存在の下、ハイドロホビンを高度に安定な泡を形成するのに使用できることが明らかである。これらの泡は、その空気相容積を冷却された状態で3週間にわたり保持し、その間気泡寸法は著しくは変化しない。
【実施例2】
【0089】
茶抽出物を含む空気混入製品
空気混入製品の調製
0.1%のHFBII、0.5%のキサンタン、0.16%の緑茶粉末、残りが水の茶抽出物含有混合物を作成した。混合物は、以下により調製した。キサンタンおよび緑茶粉末を、撹拌しながら冷水にゆっくりと加え、ポリマーが完全に水和するのを確実にするため、少なくとも30分間撹拌した。次いで所要の濃度のHFBIIをアリコートとして加えた。次いでHFBIIを十分に溶解するため、音響浴中で30秒静かに超音波処理した。この混合物を冷却し、さらなる使用まで5℃において保管した。
【0090】
空気混入の前に、クエン酸10重量%溶液を用いて、溶液を所望のpH5.4に酸性化した。次いで混合物を、撹拌ポットを用いて実施例1の混合物について説明したのと同じ方法で100%オーバーランに空気混入した。空気混入した混合物は、次いで5℃で保管し、実施例1で説明したのと同じように調整したTurbiscanを用いて、気泡寸法と泡の容積を時間の関数として分析した。
【0091】
結果および考察
平均気泡直径に関する泡の安定性を図5に示す。明らかに、ある期間にわたって気泡寸法に最小限の変化しかないことは、気泡が著しい変化に対して安定していることを示している。さらに、全体の泡の容積はこの期間において一定に保たれている。
【実施例3】
【0092】
空気混入した冷凍フルーツシャーベット
2つのシャーベットを、表4に示す成分を用いて作成した。製品Jは、表5に示す混合物Jに関する配合を用いて作成した。この製品中の空気安定剤は、Hygelと呼ばれる市販されている乳タンパク質の加水分解物であった。製品Kは、混合物Kに関して示す配合を用いて作成した。この製品中の空気安定タンパク質はハイドロホビン、HFBIIであった。
【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
混合物の調製
混合物Jに関して、全ての成分を冷水に加え、磁器撹拌機を用いて分散し、絶えず撹拌しながら80℃に加熱した。溶液を、-18℃に設定した冷却浴を用いて5℃へと急速に冷却した。ハイドロホビンを含む混合物Kに関しては、HFB IIを冷却した溶液にアリコートとして加えたことを除き、同じ手順に従った。混合物は、さらなる処理まで5℃で保管した。空気混入していない混合物のpHは、pH4であることが測定された。
【0096】
空気混入および冷凍段階
80mLの冷却した混合物を、空気混入および冷凍のために、(実施例1で説明した)撹拌ポットに移した。冷凍は撹拌ポットの周りのジャケットに循環冷却材を通すことで実施した。混合物を空気混入および冷凍し、以下の剪断および温度状態を用いてシャーベット製品を作成した。100rpmで1分間撹拌し、冷却材(-18℃)循環のスイッチを入れ、次いで1000rpmで2分間撹拌し、次いで300rpmでトルクが1Nmに達するまで(これは製品温度-5℃で起こった)撹拌した。このシャーベットを、-20℃より低い温度に冷却してある適切な容器に収集した。製品Jのオーバーランは113%であること、および製品Kのオーバーランは101%.であることが測定された。
【0097】
保管および温度誤用状態
シャーベット製品は、その後2つの温度状態で保管した。
(a)「新鮮」サンプルは、分析まで-80℃で保管した(約1週間)。-80℃では、構造的変化は起こらないので、微細構造は基本的に新鮮サンプルと同じである。
(b)「温度誤用」サンプルは、-10℃において1週間保管した。一部のサンプルは、-10℃においてさらに1週間保管した。
【0098】
保管後、製品を走査型電子顕微鏡(SEM)ならびに総体的な製品品質の目視検査により分析した。
【0099】
走査型電子顕微鏡
製品の微細構造を、低温型走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて可視化した。顕微鏡用試験片を調製するために、サンプルをドライアイス上で-80℃に冷却し、部分を切断した。この寸法が約6mmx6mmx10mmの部分を、TissueTek:OCT(商標)コンパウンド(PVA11%、カーボワックス5% および85%の非反応性成分)を用いて、冷凍点上のサンプルホルダーに乗せた。ホルダーに含まれたサンプルを、液体窒素の中にさっとくぐらせ、約10-4ミリバールの真空に保持されている低温調製チャンバー(Oxford Instrument CT1500HF)に移した。サンプルを、チャンバー内部で手術用メスの刃を用いて破砕した。次いで氷がゆっくりと昇華して表面細部が現れるように、サンプルを約60〜90秒間-90℃まで温めた。次いでサンプルを、-110℃に冷却して昇華を終わらせた。次にサンプルを、アルゴンプラズマを用いて金で被覆した。この工程も適用圧力10-1mbarの真空下、6ミリアンペア電流で45秒間実施した。次いでサンプルを、通常の走査型電子顕微鏡(JSM 5600)に移し、Oxford Instrument冷却段を-150℃の温度で取り付けた。サンプルを画像化し、該当する区域をデジタル画像取込みソフトウェアを介して捕捉した。
【0100】
結果
図6は、比較製品の製品J(左側)、本発明による製品K(右側)の微細構造のSEM像を示す。上部の画像は新鮮な製品を示し、下部の画像は温度誤用製品の画像を示す。
【0101】
新鮮な製品は、小さな、球形の気泡を有する類似の微細構造を有している。しかしながら、温度誤用の後、比較製品Jは、大きな空気チャンネルと極わずかな分離した空気セルを示しており、激しい気泡崩壊が生じたことを示唆している。本発明による製品K(すなわちハイドロホビン含有)は、空気相の多少の気泡崩壊およびチャネリングがかなり少なく、数多くの小さな分離した気泡が残存していることを示している。
【0102】
図7は、温度誤用サンプルの微細構造をより高倍率で示す。シャーベットKは、シャーベットJには存在しない、小さな気泡(直径100μm未満)の存在を示している。
【0103】
図8は、温度誤用2週間後の比較シャーベット製品(J)およびハイドロホビンを含むシャーベット製品(K)の写真を示す。シャーベットJは、サンプル中の気泡寸法の増加により、シャーベットKよりも暗い色をしている。さらに、シャーベットJは空気の損失のため容積が減少しているが、一方シャーベットKは減少していない。
【0104】
これらの画像から、ハイドロホビンを含む低pHシャーベット(K)が、標準的な空気安定乳タンパク質を含む比較シャーベット(J)よりも、実質的により安定な空気相を有していることは明らかである。
【実施例4】
【0105】
空気混入フルーツスムージー
空気混入フルーツスムージーを、Unilever UKによって製造されたVie Shots(商標)飲料を使用し、フルーツピューレベースとして調製した。Vie Shots(商標)は、バナナピューレ(28%)、オレンジジュース濃縮液(26%)、ニンジンジュース濃縮液(23%)、カボチャジュース濃縮液(14%)、オレンジパルプ(4%)、レモンジュース濃縮液、アセロラチェリー濃縮液(1.5%)、およびリンゴペクチンを含んでいた。測定されたpH(室温)は、pH4.17であった。キサンタンガムを、撹拌しながらゆっくりとフルーツピューレに、0.5重量%の濃度まで加えた。次いでこれを20分間撹拌し、キサンタンガムを完全に水和させた。既知の容積の0.5重量%のハイドロホビン溶液を、手持ちサイズのaerolatte(商標)装置を用いて、400%オーバーランに空気混入した。これをフルーツピューレに加えて、約100%のオーバーラン、総ハイドロホビン濃度0.1重量%および総キサンタン濃度約0.41重量%.を有する空気混入フルーツスムージー製品を得た。この空気混入フルーツスムージー製品を5℃において保管し、その安定性を3週間にわたってモニターした。図9は、3週間後に空気混入フルーツスムージー製品が安定した空気相を保持しており、著しい気泡成長またはクリーム分離が生じていないことを示している。
【実施例5】
【0106】
ビネグレットドレッシング
空気混入ドレッシングを、Hellman(商標)のLight Vinaigretteをベースとして用いて調製した。このベースは、水、スピリットビネガー、砂糖、改質ポテトマッシュ、ニンニク、塩、レッドペッパー、保存剤、パセリ、ブラックペッパー、タイムおよび着色剤を含んでいた。測定したpH(室温)は、pH3.58であった。キサンタンガムを、撹拌しながら、ビネグレットに0.3重量%.の濃度までゆっくりと加えた。次いでこれを20分間撹拌し、キサンタンガムを完全に水和させた。既知の容積の0.5重量%のハイドロホビン溶液を、手持ちサイズのaerolatte(商標)装置を用いて、400%オーバーランに空気混入した。これをビネグレットドレッシングに加えて、約100%のオーバーラン、総ハイドロホビン濃度0.1重量%、総キサンタン濃度約0.25重量%を有する空気混入ドレッシング製品を得た。次いで製品を5℃で保管し、その安定性を3週間にわたってモニターした。図10は、3週間後に著しい泡の崩壊または気泡成長が生じていないことを示している。また著しい量のクリーム分離も生じていなかった。したがって、ハイドロホビンは、流し込みのできる低pHドレッシング中の泡を、少なくとも3週間適切に安定化することができる。
【0107】
上記の個々のセクションで言及した本発明のさまざまな特徴および実施形態は、必要に応じて、必要な変更を加えて他のセクションに適用される。したがって、1つのセクションに特定の特徴は、必要に応じて、他のセクションに特定の特徴と結合されてよい。
【0108】
上記明細書で説明した全ての出版物は、参照により本明細書に組み込まれている。本発明の説明した方法および製品のさまざまな修正形態および変形形態が、本発明の精神から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の請求は、かかる特定の実施形態に不当に制限されるものではないことが理解されなければならない。実際には、本発明を実施するために説明した方法の、関連する分野の当業者には明らかなさまざまな修正形態は、以下の特許請求範囲内であることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】時間t=0と比較した、時間を関数とする平均気泡直径を示す図である。
【図2】pH3.5および5.2(それぞれ左側および右側)において、0.1%HFBIIおよび0.5%キサンタンを使用して作成し、5℃において3週間保管した泡を示す図である。この期間の後、泡容積の損失または目に見える気泡の成長は生じていない。
【図3】pH3.5において作成し、全て5℃で保管した、0.5%キサンタンと0.1%HFBII(左側)-3週間保管、1.5%LACTEM(中央)-2週間保管、および0.5%Hyfoama(右側)-3週間保管を含む泡の図である。
【図4】pH3.5において作成した、0.5%キサンタンと0.1%HFBII(左側)-3週間保管、1.5%LACTEM(右側)-2週間保管の泡の接近図である。HFBIIを有する実施例が、保管中に気泡が成長した泡を示していないのに対して、LACTEMを有する泡が、保管中に成長した目に見える泡を示していることに注目されたい。
【図5】緑茶を含む泡に関し、時間t=0と比較した時間を関数とする平均気泡直径を示す図である。
【図6】0.2%Hygelおよび0.1%HFBIIを使用して作成したシャーベットに関する、新鮮なおよび温度誤用後両方の微細構造のSEM図である。
【図7】0.2%Hygelおよび0.1%HFBIIを使用して作成したシャーベットに関する、温度誤用後の高倍率SEM図である。
【図8】0.2%Hygelおよび0.1%HFBIIを使用して作成したシャーベットに関する、2週間の温度誤用後の写真である。
【図9】0.1%HFBIIおよび0.41%キサンタンを含む、作りたて(左側)および5℃において3週間保管後(右側)の空気混入フルーツスムージー製品の写真である。わずかなクリーム分離または気泡成長を示している。
【図10】0.1%HFBIIおよび0.25%キサンタンを含む、作りたて(左側)および5℃において3週間保管後(右側)の空気混入ビネグレット製品の写真である。わずかなクリーム分離または気泡の成長を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロホビンを含む、5.5未満のpHを有する空気混入組成物。
【請求項2】
少なくとも0.001重量%のハイドロホビンを含む、請求項1に記載の空気混入組成物。
【請求項3】
ハイドロホビンが単離した形態である、請求項1または請求項2に記載の空気混入組成物。
【請求項4】
ハイドロホビンがクラスIIハイドロホビンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気混入組成物。
【請求項5】
空気混入食品である、請求項1から4のいずれか一項に記載の空気混入組成物。
【請求項6】
冷凍食品である、請求項5に記載の空気混入食品。
【請求項7】
3.0から5.4までのpHを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の空気混入組成物。
【請求項8】
3.0から5.0までのpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の空気混入組成物。
【請求項9】
5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の気泡粗大化防止方法における、ハイドロホビンの使用。
【請求項10】
5.5未満のpHを有する空気混入組成物中の泡安定化方法における、ハイドロホビンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−508502(P2009−508502A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531587(P2008−531587)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008992
【国際公開番号】WO2007/039065
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】