説明

住宅監視システム

【課題】 赤外線センサーによる検出が無駄に行われることを防止しつつ、住人の検出の精度をできるだけ向上させるようにする。
【解決手段】 赤外線センサー1と、超音波センサー2と、温度を測定する温度測定装置3とを設け、測定した温度が人体の温度付近の所定の温度未満である場合には、赤外線センサー1により住人の動きを検出し、所定の温度以上である場合には、超音波センサー2により住人の動きを検出して、住人の動きの検出ができない時間が所定時間以上になった場合に通報を行うようにしているので、住居内の温度が人体の温度以上である場合には、物体を検出する超音波センサー2により検出が行われるので、赤外線センサー1による検出が無駄に行われなくなる。また、住居内の温度が人体の温度未満である場合には、赤外線センサー1により検出が行われるので、超音波センサー2のみで検出を行うよりも検出の精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの高齢者などが居住する集合住宅などの住居における住人の異常を管理人などに通報する住宅監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核家族化などの進行により、高齢者のみが居住する住宅が増えている。また、このような高齢者が居住する住居を集めて、管理人室などで管理人が管理する集合住宅が知られている。このような集合住宅において、赤外線センサーにより住居内の住人の動きを検出し、赤外線センサーによる検出ができない時間が所定時間以上になった場合に、住人に異常があったと判断して通報を行う集合住宅監視装置が知られている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
ところで、検出範囲内の空間に人体の温度付近の温度領域があることを検出する人体温度検出手段と、人体の温度付近の温度領域に物体が存在するかを検出する物体検出手段とを設け、検出範囲内の空間に人体の温度付近の温度領域があり且つその温度領域に物体が存在することを検出した場合に、検出範囲内の空間に人体が存在すると判断する技術が知られている(例えば、特許文献2など)。また、特許文献2には、人体温度検出手段として赤外線センサーを使用し、物体検出手段として超音波センサーを使用することが記載されている。
【0004】
そして、特許文献2に記載の人体認識装置を特許文献1に適用すると、人体と同程度の赤外線を発する熱源が存在する場合でも、赤外線センサーに加えて超音波センサーを使用することで、赤外線センサーのみを使用する場合に比べて住人の検出の精度を向上させることが可能となる。ここで、超音波センサーを使用すると、例えば夏場などに住居内の温度が人体の温度に近くなったときでも、超音波センサーが物体を検出することができるので、人体を正確に検出することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、住居内の温度が人体の温度に近くなった場合には、検出範囲内の空間に人体の温度付近の温度領域が多数存在してしまい、赤外線センサーによる検出が無駄に行われてしまうという問題があった。また、赤外線センサーの代わりに超音波センサーのみを使用した場合には、住居内の温度に関係なく人体の検出を行うことが可能になるが、例えば、カーテンなどの住居内の物体が超音波センサーによって誤って検出されてしまう可能性が生じてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−279221号公報
【特許文献2】特開平7−20252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、住居内の住人の動きを検出し、赤外線センサーによる検出ができない時間が所定時間以上になった場合に、住人に異常があったと判断して通報を行う際に、赤外線センサーによる検出が無駄に行われることを防止しつつ、住人の検出の精度をできるだけ向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、検出範囲内の空間に人体の温度付近の温度領域が存在するか否かを検出する赤外線センサーと、検出範囲内の空間に物体が存在するか否かを検出する超音波センサーと、検出範囲内の空間の温度を測定する温度測定装置とを設け、温度測定装置が測定した温度が人体の温度付近の所定の温度未満である場合には、少なくとも赤外線センサーにより検出範囲内の空間の住人の動きを検出し、測定した温度が所定の温度以上である場合には、超音波センサーにより検出範囲内の空間の住人の動きを検出して、住人の動きの検出ができない時間が所定時間以上になった場合に、住人に異常があったと判断して通報を行うようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、検出範囲内の空間が人体の温度付近の所定の温度以上であると温度測定装置により測定された場合には、物体が存在するか否かを検出する超音波センサーにより住人の動きが検出されるので、赤外線センサーによる検出が無駄に行われることを防止することができる。また、検出範囲内の空間が所定の温度未満であると温度測定装置により測定された場合には、少なくとも赤外線センサーにより検出範囲内の空間の住人の動きが検出されるので、超音波センサーのみで検出を行うよりも住人の検出の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態による住宅監視システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による住宅監視システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による住宅監視システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態による住宅監視システムは、赤外線センサー1、超音波センサー2、温度測定装置3、タイマー4、判定装置5、通報装置6を備えて構成されている。また、通報装置6は、制御部6aおよび報知部6bを備えて構成されている。ここで、赤外線センサー1、超音波センサー2、温度測定装置3、タイマー4、判定装置5は、複数の住居が存在する集合住宅では、各住居に設置される。また、通報装置6は、管理人が常駐する管理人室や、警備会社の施設内などに設置される。
【0012】
赤外線センサー1は、検出範囲内である住宅内の所定の空間に人体の温度付近の温度領域の赤外線があるかどうかを、その所定の空間の温度変化に基づいて検出する。ここで、所定の空間とは、住人が頻繁に通るような空間が好ましく、例えば、トイレ内やリビング、寝室などが考えられる。また、赤外線センサー1は、後述する判定装置5に接続されており、動作の開始や終了などの制御が行われる。また、赤外線センサー1が人体の温度付近の温度領域の赤外線があることを検出した場合には、赤外線センサー1は第一の検出信号を判定装置5に出力する。第一の検出信号は、所定の空間における住人の動きを検出したことを示す信号である。なお、所定の空間を住宅内の一部の空間ではなく、住宅内の全ての空間としても良い。
【0013】
超音波センサー2は、検出範囲内である住宅内の所定の空間に物体が存在するかどうかを、図示しないセンサーヘッド部分から超音波を発信し、物体で反射した超音波を再度センサーヘッドで受信することで検出する。また、超音波センサー2は、後述する判定装置5に接続されており、動作の開始や終了などの制御が行われる。また、超音波センサー2が物体の存在を検出した場合には、超音波センサー2は第二の検出信号を判定装置5に出力する。第二の検出信号は、所定の空間における住人の動きを検出したことを示す信号である。
【0014】
温度測定装置3は、検出範囲内である住宅内の所定の空間内の温度を測定する。また、温度測定装置3は、測定した温度データを判定装置5に出力する。なお、本実施形態では、温度測定装置3は所定の空間内の温度を測定しているが、これに限定されない。例えば、住宅内の特定の位置の温度を測定するようにしても良い。
【0015】
タイマー4は、赤外線センサー1や超音波センサー2が所定の空間での住人の動きが検出されてから次に住人の動きが検出されるまでの時間を計測するためのものである。また、タイマー4は、後述する判定装置5に接続されており、動作の開始や終了などの制御が行われる。
【0016】
判定装置5は、住居内に設置された赤外線センサー1、超音波センサー2、温度測定装置3、タイマー4を接続しており、各構成要素を後述するように制御する。また、判定装置5は、CPU(central processing unit)などにより構成されている。また、判定装置5は、温度測定装置3が測定した温度データを入力し、その値が人体の温度付近の所定の温度であるか否かを判定する。ここで、所定の温度とは例えば35度などである。温度測定装置3の測定した温度が所定の温度未満であると判定装置5にて判断した場合には、判定装置5は赤外線センサー1を動作させ、赤外線センサー1により住居内の所定の空間の住人の動きを検出させる。一方、温度測定装置3の測定した温度が所定の温度以上であると判定装置5にて判断した場合には、判定装置5は超音波センサー2を動作させ、超音波センサー2により住居内の所定の空間の住人の動きを検出させる。
【0017】
また、赤外線センサー1が住人の動きを検出し、赤外線センサー1から出力された第一の検出信号を入力した場合に、判定装置5はタイマー4を動作させる。タイマー4が動作している状態で、赤外線センサー1から再度第一の検出信号を入力した場合に、判定装置5はタイマー4をリセットし、タイマー4は計測している時間を初期値に戻して、タイマー4は時間の計測を再度開始する。また、超音波センサー2が住人の動きを検出し、超音波センサー2から出力された第二の検出信号を入力した場合に、判定装置5はタイマー4を動作させる。タイマー4が動作している状態で、超音波センサー2から再度第二の検出信号を入力した場合に、判定装置5はタイマー4をリセットし、タイマー4は計測している時間を初期値に戻して、タイマー4は時間の計測を再度開始する。
【0018】
また、通報装置6は、判定装置5に接続されており、制御部6aは、タイマー4が動作している場合に、タイマー4により計測された時間が所定時間以上になったか否かを判定する。タイマー4により計測された時間が所定時間以上になったと制御部6aにて判断した場合には、制御部6aは、報知部6bを動作させて通報を行う。報知部6bは、住人に異常があったことを報知するためのものであり、スピーカなどの放音装置や液晶ディスプレイなどの表示装置により構成される。この報知を受けて、管理人や警備会社の担当者は住居内の状況を確認する。ここで、所定時間は、住人の動きが検出されなくなってから住人に異常が発生したことを報知するまでの時間であり、1時間〜12時間程度の間で住宅監視システムの提供者や住宅監視システムの管理人などにより設定される。
【0019】
なお、上述した住人の異常を通報する技術は、住人が住居内に在室している場合にのみ有効である。そのため、住人が在室しているか否かを電気錠の状態などにより判定することにより、通報の精度を向上させることができる。
【0020】
次に、本実施形態による住宅監視システムの動作を説明する。図2は、本実施形態による住宅監視システムの動作を示すフローチャートである。まず、住居内の住人が在室しているか否かを図示しない電気錠などの状態により判定装置5にて調べる(ステップS1)。住人が在室していないと判定装置5にて判断した場合には(ステップS1にてNO)、ステップS1の処理に戻る。一方、住人が在室していると判定装置5にて判断した場合には(ステップS1にてYES)、所定の空間内の温度が人体の温度付近の所定の温度以上であるか否かを判定装置5にて調べる(ステップS2)。
【0021】
空間内の温度が所定の温度以上ではないと判定装置5にて判断した場合には(ステップS2にてNO)、判定装置5は赤外線センサー1を動作させ、赤外線センサー1により住人の動きを検出させる(ステップS3)。一方、空間内の温度が所定の温度以上であると判定装置5にて判断した場合には(ステップS2にてYES)、判定装置5は超音波センサー2を動作させ、超音波センサー2により住人の動きを検出させる(ステップS4)。そして、判定装置5はタイマー4を動作させ、タイマー4は時間の計測を開始する(ステップS5)。
【0022】
そして、住人の動きが再び検出されたか否かを判定装置5にて調べる(ステップS6)。住人の動きが再び検出されたと判定装置5にて判断した場合には(ステップS6にてYES)、判定装置5はタイマー4をリセットし、タイマー4は計測している時間を初期値に戻して、タイマー4は時間の計測を再度開始する(ステップS7)。一方、住人の動きが再び検出されていないと判定装置5にて判断した場合には(ステップS6にてNO)、通報装置6の制御部6aは、タイマー4により計測された時間が所定時間以上になったか否かを調べる(ステップS8)。タイマー4により計測された時間が所定時間以上になっていないと制御部6aにて判断した場合には(ステップS8にてNO)、ステップS6の処理に戻る。一方、タイマー4により計測された時間が所定時間以上になったと制御部6aにて判断した場合には(ステップS8にてYES)、住人に異常があったとして、制御部6aは報知部6bを動作させ、通報を行う(ステップS9)。
【0023】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、住居内の所定の空間で人体の温度付近の温度領域を検出する赤外線センサー1と、所定の空間で物体を検出する超音波センサー2と、所定の空間内の温度を測定する温度測定装置3とを設け、温度測定装置3が測定した温度が人体の温度付近の所定の温度未満である場合には、赤外線センサー1により住人の動きを検出し、測定した温度が所定の温度以上である場合には、超音波センサー2により住人の動きを検出して、住人の動きの検出ができない時間が所定時間以上になった場合に、住人に異常があったと判断して通報装置6により通報を行うようにしている。
【0024】
これにより、住居内の所定の空間の温度が人体の温度付近の所定の温度以上であると温度測定装置3により測定された場合には、物体を検出する超音波センサー2により住人の動きが検出されるので、赤外線センサー1による検出が無駄に行われることを防止することができる。また、所定の空間の温度が所定の温度未満であると温度測定装置3により測定された場合には、赤外線センサー1により住人の動きが検出されるので、超音波センサー2のみで検出を行うよりも住人の検出の精度を向上させることができる。
【0025】
なお、前述した実施形態では、住居内の所定の空間の温度が人体の温度付近の所定の温度未満であると温度測定装置3により測定された場合に、赤外線センサー1のみにより住人の動きが検出されているが、これに限定されない。例えば、所定の空間の温度が所定の温度未満であると温度測定装置3により測定された場合に、赤外線センサー1と超音波センサー2とを併用するようにしても良い。具体的には、赤外線センサー1により人体の温度付近の温度領域が検出された空間における物体の存在を超音波センサー2により検出し、両者による検出が行われた場合にのみ、住人の動きがあったと判定するようにする。
【0026】
また、前述した実施形態では、タイマー4により計測された時間が所定時間以上になったかどうかを通報装置6にて判定しているが、これに限定されない。例えば、判定装置5などにより判定するようにしても良い。
【0027】
また、前述した実施形態では、タイマー4、判定装置5を住居に設置しているが、これに限定されない。例えば、タイマー4、判定装置5を住居以外の管理人室などに設置するようにしても良い。
【0028】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 赤外線センサー
2 超音波センサー
3 温度測定装置
4 タイマー
5 判定装置
6 通報装置
6a 制御部
6b 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住居内に設置され、前記住居内の所定の空間で人体の温度付近の温度領域を検出する赤外線センサーと、
前記所定の空間で物体を検出する超音波センサーと、
前記所定の空間内の温度を測定する温度測定装置と、
前記温度測定装置の測定した温度が前記人体の温度付近の所定の温度未満であると判断した場合には、少なくとも前記赤外線センサーにより前記住居内の所定の空間の住人の動きを検出させ、測定した温度が所定の温度以上であると判断した場合には、前記超音波センサーにより前記住居内の所定の空間の住人の動きを検出させる判定装置と、
前記住人の動きが検出されてから次に前記住人の動きが検出されるまでの時間を計測するタイマーと、
前記タイマーにより計測された時間が所定時間以上であると判断した場合に、前記住人に異常があったとして通報を行う通報装置と、
を備えたことを特徴とする住宅監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−96074(P2011−96074A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250618(P2009−250618)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】