説明

住宅設備部材用樹脂成形品

【課題】石油資源温存のため、石油由来樹脂原料の一部を植物由来原料に置き換えることができ、さらに耐久性を有する住宅設備部材を得ることができる住宅設備部材用樹脂組成物およびそれを用いた住宅設備部材用樹脂成形品を提供する。
【解決手段】桐油と無水マレイン酸とを反応させて得られる無水マレイン酸変性桐油およびエポキシ樹脂を植物繊維マット100質量部に対して5〜90質量部含浸した後、加熱加圧成形したものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅設備部材用樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源温存のため、樹脂成形品における石油由来樹脂原料の一部を植物由来原料に置き換えることが検討されている。例えば、植物由来の分解物である乳酸を重合して得られるポリ乳酸を植物由来原料として用いる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−260990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸を用いて成形した熱可塑性樹脂成形品は加水分解し易いため、住宅設備部材に用いる場合、耐久性が問題となる。
【0004】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、石油資源温存のため、石油由来樹脂原料の一部を植物由来原料に置き換えることができ、さらに耐久性を有する住宅設備部材を得ることができる住宅設備部材用樹脂組成物およびそれを用いた住宅設備部材用樹脂成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0006】
第一に、本発明の住宅設備部材用樹脂成形品は、桐油と無水マレイン酸とを反応させて得られる無水マレイン酸変性桐油およびエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物を植物繊維マットに含浸した後、加熱加圧成形したものであることを特徴とする。
【0007】
第二に、前記の樹脂組成物を植物繊維マット100質量部に対して5〜90質量部含浸することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明によれば、植物由来の桐油を原料とする無水マレイン酸変性桐油を含有する住宅設備部材用樹脂組成物を用いることで、樹脂原料の一部を植物由来原料に置き換えることできる。また、植物由来原料として植物繊維マットを用いることで、植物由来比率をさらに高めることができる。さらに、ポリ乳酸に比べて加水分解による劣化が大幅に抑制され、耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、住宅設備部材を成形する点からは、エポキシ樹脂は常温(25℃)で、または多少の加熱により、液状であることが好ましいが、固体のエポキシ樹脂を用いて、溶剤により粘度調整して用いるようにしてもよい。
【0011】
本発明に用いられる無水マレイン酸変性桐油は、桐油と無水マレイン酸とを反応させることにより、すなわち桐油の共役二重結合と無水マレイン酸の二重結合とをDiels-Alder
反応させて得られるものであり、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。桐油は、トウダイグサ科のシナアブラギリやアブラギリの種子から得られるものである。一般に桐油の主成分は3箇所の共役二重結合を持つため、量論的には桐油1分子に対して3分子の無水マレイン酸が反応すると考えられる。このことと、桐油の平均分子量が約900、無水マレイン酸の分子量が98であることから、桐油100質量部に対して無水マレイン酸33質量部を反応させればよいことになる。しかしながら桐油は天然由来であり、その他の類似化合物を含むため実際の共役二重結合の数に幅があることや、また、柔軟性や耐熱性を付与する目的で無水マレイン酸と桐油との配合比を適宜変更することも可能であることから、本発明における桐油と無水マレイン酸との配合比は桐油100質量部に対して無水マレイン酸10〜100質量部が好ましい。反応温度は、好ましくは15〜80℃、反応時間は、好ましくは1〜10時間である。
【0012】
無水マレイン酸変性桐油の配合量は、好ましくは、無水マレイン酸変性桐油のエポキシ樹脂に対する化学量論上の当量比が0.2〜1.4となる量であり、より好ましくは当量比が0.4〜1.2となる量である。当量比がこの範囲外であると、硬化不足や成形品の物性低下を生じる場合がある。
【0013】
本発明の住宅設備部材用樹脂組成物には、植物繊維を配合することができる。植物繊維としては、例えばリグノセルロース繊維を用いることができ、その具体例としては、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維、マニラ麻やサイザル麻等の麻類植物の茎または葉の筋から採取される繊維、木材繊維等が挙げられる。
【0014】
植物繊維は、植物を原料として従来より用いられている繊維化処理を施したものであれば特に制限はないが、例えば上記に例示したリグノセルロース繊維にレッティングと呼ばれる浸水処理や物理的な解繊処理を施したものや、さらにパルプ化等の化学処理を施して単繊維化したものを用いることができる。これ以外にも、綿糸、その他紡糸処理によって糸状としたもの等、各種のものを用いることができる。
【0015】
植物繊維の配合量は、成形品の植物由来比率を高め、且つ、耐久性その他の物性を確保する点からは、好ましくは無水マレイン酸変性桐油およびエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して5〜40質量部である。
【0016】
本発明の住宅設備部材用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、さらに他の成分を配合することができる。このような他の成分の具体例としては、硬化促進剤、無機充填材、着色剤等が挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の第三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の住宅設備部材用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、無水マレイン酸変性桐油、および必要に応じて他の成分を配合し、必要に応じて温度を調整しながら撹拌等により混合して調製することができる。
【0018】
本発明の住宅設備部材用樹脂組成物は、注型成形、プレス成形等の公知の成形法により加熱硬化成形して住宅設備部材用樹脂成形品とすることができる。成形条件は特に制限はないが、例えば加熱温度140〜200℃、0.5〜2時間の条件で行うことができる。
【0019】
また、本発明の住宅設備部材用樹脂組成物を植物繊維マット(前述の植物繊維をマット状に成形したもの)に含浸し、この住宅設備部材用樹脂組成物を含浸した植物繊維マットを加熱加圧成形することにより住宅設備部材用樹脂成形品とすることもできる。植物繊維マットとしては、例えば、ケナフ繊維等のリグノセルロース長繊維の集合体をニードルパンチ等を用いて3次元状に絡ませマット状にしたもの等を用いることができる。
【0020】
植物繊維マットへの住宅設備部材用樹脂組成物の含浸量は、成形品の植物由来比率を高め、且つ、耐久性その他の物性を確保する点からは、好ましくは植物繊維マット100質量部に対して5〜90質量部である。
【0021】
本発明の住宅設備部材用樹脂成形品は、長期間用いられる住宅設備部材に用いることができ、例えば、キッチンカウンター、キッチンシンク、洗面カウンター、洗面ボウル、洗面キャビネット、浴槽、浴槽蓋、浴槽パン、浴室床、浴室壁、浴室天井、浴室カウンター、便器、手洗いボウル、水栓、ドアノブ、引出し取っ手、ファイバーボード等の住宅設備部材に好適に用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<参考例1>
桐油150質量部と無水マレイン酸100質量部とを80℃で反応させて、無水マレイン酸変性桐油を得た。
【0023】
この無水マレイン酸変性桐油100質量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(DIC(株)製、エピクロン 850)100質量部、N,N−ジメチルベンジルアミン10質量
部を混合し、住宅設備部材用樹脂組成物を調製した。
【0024】
この住宅設備部材用樹脂組成物を真空脱気した後、150℃で90分間加熱硬化成形し、植物由来比率約37質量%の洗面ミラーキャビネット用棚板に用いられる住宅設備部材用成形品を得た。この住宅設備部材用成形品は、ポリ乳酸に比べて大幅に耐久性が高く、長期間の使用に耐え得るものであった。
<参考例2>
実施例1で得られた無水マレイン酸変性桐油100質量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(DIC(株)製、エピクロン 850)100質量部、N,N−ジメチルベンジル
アミン10質量部、綿糸(生成、50番、長さ10mm)50質量部を混合し、住宅設備部材用樹脂組成物を調製した。
【0025】
この住宅設備部材用樹脂組成物を真空脱気した後、150℃で90分間加熱硬化成形し、植物由来比率約50質量%の引出し取っ手に用いられる住宅設備部材用成形品を得た。この住宅設備部材用成形品は、ポリ乳酸に比べて大幅に耐久性が高く、長期間の使用に耐え得るものであった。
<実施例>
実施例1で得られた無水マレイン酸変性桐油20質量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(DIC(株)製、エピクロン 850)20質量部、N,N−ジメチルベンジルアミ
ン0.4質量部、メチルエチルケトン20質量部の混合物を、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束を用いて作製したケナフ繊維マット100質量部に含浸し60℃で20分間乾燥後、これをプレス機にて150℃で60分間加熱加圧成形し、住宅設備部材用成形品として植物由来比率約80%のファイバーボードを得た。このファイバーボードは、ポリ乳酸に比べて大幅に耐久性が高く、長期間の使用に耐え得るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桐油と無水マレイン酸とを反応させて得られる無水マレイン酸変性桐油およびエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物を植物繊維マットに含浸した後、加熱加圧成形したものであることを特徴とする住宅設備部材用樹脂成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を植物繊維マット100質量部に対して5〜90質量部含浸することを特徴とする住宅設備部材用樹脂成形品。

【公開番号】特開2012−229452(P2012−229452A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−190546(P2012−190546)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2008−324652(P2008−324652)の分割
【原出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】