説明

住戸監視システム

【課題】監視装置および住戸制御機の全ての通信が不能となることを回避するとともに、通信が不能となった住戸制御機でも監視装置との間で通信することができるようにする。
【解決手段】住戸で火災が発生して通信線860が短絡した場合、火災の発生を検知した住戸制御機と一つ上流方向に接続されている住戸制御機との物理的な配線接続が切断される。このため、通信線860の短絡の影響が、火災の発生を検知した住戸制御機よりも上流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。また、配線接続の切断によって、電源の供給が停止した住戸制御機では、渡り配線以外の電源によって駆動する無線端末950が無線信号による通信を可能とする状態へと移行するため、通信線860の短絡の影響が、火災の発生を検知した住戸制御機を含む下流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅などの居室における異常を管理人などに通報する住戸監視システムに関し、特に、複数の住戸を有する集合住宅の各住戸における火災の発生を監視センターにて監視する住戸監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住戸監視システムでは、各住戸内の火災を監視している。例えば、住戸監視システムにおいて、住戸内の火災の発生を検知すると、その火災の発生を示す情報が監視センターの監視装置に伝送され、監視センターに常駐する管理者へ報知される。
【0003】
ここで、従来の住戸監視システムの構成例について説明する。図3は、従来の住戸監視システム10の構成例を示す図である。図3において、住戸監視システム10では、火災報知器(図示せず)を接続した住戸制御機60,80,100が各住戸に設置されている。緊急通報親機20と緊急通報制御機40とは通信接続されている。また、緊急通報制御機40および住戸制御機60,80,100は、通信線120を用いて渡り配線式(数珠繋ぎ)で接続されている。
【0004】
緊急通報親機20は、監視センターに設置され、例えば、住戸制御機60,80,100の何れかから緊急通報制御機40を介して火災発生の通知があった場合に、火災が発生した住戸の場所を設定して警報を出力する。
【0005】
図4は、図3にて示した住戸制御機60,80,100およびその間を繋ぐ通信線120の構成例を示す図である。図4に示すように、通信線120は、ペア線で構成されている。住戸制御機60は、通信線120の端点300,320に接続されている。住戸制御機80は、通信線120の端点340,360に接続されている。住戸制御機100は、通信線120の端点380,400に接続されている。以上のように配線することによって、緊急通報制御機40および各住戸制御機60,80,100は、通信線120を用いて渡り配線式で接続されている。
【0006】
各住戸制御機60,80,100は、通信ドライバ回路200およびCPU220をそれぞれ備えている。通信ドライバ回路200は、火災が発生した場所(住戸)などを示す情報を含めた火災発生情報を緊急通報制御機40に送信する。緊急通報制御機40は、通信ドライバ回路200から送信された火災発生情報を受信し、その受信した火災発生情報を緊急通報親機20に送信する。緊急通報親機20は、緊急通報制御機40から送信された火災発生情報を参照することによって、どこの住戸(住戸制御機)で火災が発生したかを特定することができる。CPU220は、通信ドライバ回路200の制御を行う。
【0007】
なお、図3のシステムのように、集合住宅の各住戸とセンター監視装置とを通信回線にて接続し、各住戸を監視できるようにしたシステムは、例えば特許文献1にも開示されている。この特許文献1では、通信回線を介して集合住宅と接続されたセンター監視装置において、各住戸からセンター監視装置までの伝送路における通信状態がわかるようにし、システムの信頼性を向上することができるようにしている。
【特許文献1】特開平9−261374号公報
【0008】
また、住戸内において、電化製品の火災による損害を最小限に抑える技術が提案されている(例えば、特許文献2など)。具体的には、電化製品のケーブルが加熱して、そのケーブルの被覆から発生する塩化水素ガスをセンサにて検知し、その検知結果として塩化水素ガスの濃度が所定値以上であれば、配電盤のブレーカを切るようにしている。
【特許文献2】特開平7−39599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、住戸制御機が渡り配線式に接続されている図3のような住戸監視システムを導入した集合住宅において、ある住戸で火災が発生してその住戸に設置された住戸制御機が燃えるなどして、その燃えた住戸制御機に接続された通信線120が短絡してしまうと、緊急通報制御機40および渡り配線式に接続されている住戸制御機60,80,100の全てが通信不能となってしまうという問題があった。このことを図面により説明する。
【0010】
図4を用いて説明した住戸監視システム10において、ある住戸で火災が発生してその住戸の住戸制御機100が燃えてしまうと、その燃えた住戸制御機100が接続された通信線120の一部が燃えて、通信線120の端点380と端点400とが短絡してしまうことがある。この場合、短絡した部分に主に電流が流れてしまうことにより、緊急通報制御機40および住戸制御機60,80,100の全ての通信が不能となってしまう。このように、各住戸の住戸制御機60,80,100が渡り配線式に接続されている場合、ある住戸で火災が発生すると、その火災が発生した住戸に設置された住戸制御機だけではなく、それ以外の住戸制御機においても通信障害が発生してしまうことがあるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、監視装置と複数の住戸に設置された住戸制御機とが渡り配線式に接続されている場合、ある住戸で火災が発生したときに、監視装置および住戸制御機の全ての通信が不能となることを回避するとともに、通信が不能となった住戸制御機でも監視装置との間で通信することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明では、複数の住戸制御機および監視装置が渡り配線にて接続されている住戸監視システムにおいて、住戸制御機の通信障害検知部が監視装置との間における通信障害の発生を検知した場合、火災発生場所の住戸制御機よりも上流方向(火災が発生した住戸の住戸制御機に対して渡り配線において関し装置が接続されている方向)に接続されている住戸制御機の配線切断部が、渡り配線にて接続されている隣の住戸制御機との間の配線を切断するようにしている。また、配線の切断によって電源の供給が停止したことを検知すると、渡り配線以外の電源により駆動する無線端末は監視装置との間で無線信号による通信を可能とする状態に移行するようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、住戸制御機にて監視装置との間の通信障害の発生が検知されたとき、火災発生場所の住戸制御機よりも上流方向に接続されている住戸制御機において隣の住戸制御機との間の配線が切断される。これにより、火災が発生した住戸に設置された住戸制御機が燃えるなどして、その燃えた住戸制御機に接続された通信線が短絡してしまったとしても、その短絡の影響(通信障害の発生)が、配線が切断されたところよりも上流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。また、配線の切断によって渡り配線による通信および電源の供給が停止した住戸制御機において、バッテリーにより電源を供給される無線端末による通信が可能となる。これにより、火災が発生した住戸に設置された住戸制御機が燃えるなどして、その燃えた住戸制御機に接続された通信線が短絡してしまったとしても、その短絡の影響(通信障害の発生)が、配線が切断されたところよりも下流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。従って、監視装置および複数の住戸に設置された住戸制御機が渡り配線式に接続されている場合、ある住戸で火災が発生したときに、監視装置および住戸制御機の全ての通信が不能となることを回避することができる。また、配線の切断により通信が不能となった住戸制御機でも監視装置との間で通信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による住戸監視システム500の機能構成例を示す図である。図1において、本実施形態による住戸監視システム500は、緊急通報親機520、緊急通報制御機540(特許請求の範囲の監視装置に該当する)および住戸制御機560,580,600を備えて構成されている。緊急通報親機520と緊急通報制御機540とは、有線の通信回線を介して接続される。また、住戸制御機560,580,600と緊急通報制御機540とは、有線の通信線860を介して渡り配線式で接続されている。なお、本実施形態では複数の住戸を有する集合住宅に設けられる住戸監視システム500を例にとって説明するが、住戸監視システム500は、複数の住戸を有する場所であって各住戸の火災発生を監視することが必要な場所であれば、どのような場所に設けられていても良い。
【0015】
次に、住戸制御機560,580,600の機能構成について説明する。住居制御機560,580,600は、火災検知部(特許請求の範囲の火災発生検知部に該当する)620、火災発生情報送信部640、切断情報受信部660、記憶制御部680、切断情報記憶部700、通信障害検知部720、配線切断部740、電源停止検知部940、無線端末950を備えて構成されている。
【0016】
火災検知部620は、住戸内の随所(例えば各部屋の天井や壁面)に設置されている火災報知器(図示せず)から入力される火災検知信号に基づいて住戸内の火災の発生を検知する。火災報知器は、例えば火災により生じる煙や熱を感知することにより、周囲に警報音を発生させるとともに火災検知信号を火災検知部620に出力する。
【0017】
火災発生情報送信部640は、火災検知部620により住戸内の火災の発生が検知された場合、当該住戸内の火災の発生を知らせる火災発生情報を緊急通報制御機540に送信する処理を行う。ここで、火災発生情報には、例えば、火災が発生した住戸に設置された住戸制御機を特定する火災発生住戸制御機ID情報および火災が発生した日時を示す火災発生日時情報などが含まれる。
【0018】
本実施形態では、火災発生情報送信部640は、自己の住戸制御機に対して緊急通報制御機540が接続されている方向(以下、これを上流方向とする)とは逆方向(以下、これを下流方向とする)に接続されている他の住戸制御機の火災発生情報送信部640から送信された火災発生情報を、上流方向に接続されている住戸制御機または緊急通報制御機540に転送する処理は行わない。すなわち、本実施形態では、各住戸制御機560,580,600は、図2を用いて後述する各住戸制御機のハードウェア構成から、自己の住戸制御機に対して上流方向に接続されている他の住戸制御機を経由させずに火災発生情報を緊急通報制御機540に送信することができる。
【0019】
切断情報受信部660は、緊急通報制御機540から送信された自己宛の切断情報を受信する。ここで、切断情報は、当該切断情報を受信する対象の住戸制御機を特定する住戸制御機ID情報と、その住戸制御機に対して一つ下流方向に接続されている他の住戸制御機(以下、「切断対象の住戸制御機」と記載する)との物理的な配線接続を切断する必要性を示す情報とを含む。また、切断情報受信部660は、切断情報に含まれる住戸制御機ID情報を確認することによって、緊急通報制御機540から送信された切断情報が自己宛のものであるか否かを判断することができる。ここで、切断対象の住戸制御機は、火災が発生した住戸に備えられた住戸制御機である。換言すると、切断情報を受信する住戸制御機は、火災が発生した住戸の住戸制御機より一つ上流方向の住戸制御機ということになる。
【0020】
本実施形態では、住戸制御機560の切断情報受信部660は、住戸制御機580を備えた住戸で火災が発生した場合に、当該住戸制御機580との物理的な配線接続を切断する必要性を示す切断情報を緊急通報制御機540から自己宛のものとして受信する。また、住戸制御機580の切断情報受信部660は、住戸制御機600を備えた住戸で火災が発生した場合に、当該住戸制御機600との物理的な配線接続を切断する必要性を示す切断情報を緊急通報制御機540から自己宛のものとして受信する。ここで、渡り配線の末端に接続された住戸制御機600の切断対象受信部660は、住戸制御機600の接続構成から切断対象の住戸制御機が存在しないため、切断情報を緊急通報制御機540から自己宛のものとして受信することはない。
【0021】
記憶制御部680は、切断情報受信部660により自己宛のものとして切断情報が受信された場合、当該切断情報を切断情報記憶部700に記憶させる。通信障害検知部720は、自己の住戸制御機と緊急通報制御機540との間の通信障害の発生を検知する。具体的には、通信障害検知部720は、緊急通報制御機540に対して疎通確認用データを一定時間(例えば、30秒)間隔毎に送信している。もし、通信障害検知部720が疎通確認用データを送信してから所定時間(例えば、1秒)内に緊急通報制御機540から応答データの返信があれば、通信障害検知部720は、緊急通報制御機540との通信障害は発生していないと判断する。一方、通信障害検知部720が疎通確認用データを送信してから所定時間内に緊急通報制御機540から応答データの返信がなければ、通信障害検知部720は、緊急通報制御機540との通信障害が発生していると判断する。
【0022】
配線切断部740は、通信障害検知部720により通信障害の発生が検知された場合、切断情報記憶部700に切断情報が記憶されているか否かを判定する。もし、切断情報記憶部700に切断情報が記憶されている場合、配線切断部740は、切断対象の住戸制御機(一つ下流方向で、火災の発生を検知した住戸制御機)との物理的な配線接続を切断する。なお、切断対象の住戸制御機との物理的な配線接続を切断する具体的な方法については、後述する。一方、切断情報記憶部700に切断情報が記憶されていない場合、配線切断部720は何もしない。ここで、配線切断部740は、周囲に対して自己の住戸制御機と緊急通報制御機540との通信障害の発生を報知するために例えば警報音を発生させても良い。
【0023】
本実施形態では、住戸制御機560の配線切断部740は、切断情報記憶部700に切断情報が記憶されている場合、一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機580との物理的な配線接続を切断する。また、住戸制御機580の配線切断部740は、切断情報記憶部700に切断情報が記憶されている場合、一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機600との物理的な配線接続を切断する。ここで、住戸制御機600の配線切断部740は、住戸制御機600の接続構成から、それより下流方向に切断対象となる住戸制御機が存在しないため、切断処理を行うことはない。
【0024】
電源停止検知部940は、上述した切断処理によって住戸制御機に電源が供給されなくなったことを検知する。ここで、電源停止検知部940は、住戸制御機の電源と別の電源(停電時に使用される電源やバッテリーなど)で動作する。住戸制御機560の配線切断部740が一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機580との物理的な配線接続を切断すると、住戸制御機580への電源の供給が停止する。住戸制御機580の電源停止検知部940は、住戸制御機580への電源の供給の停止を検知する。また、住戸制御機580の配線切断部740が一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機600との物理的な配線接続を切断すると、住戸制御機600への電源の供給が停止する。住戸制御機600の電源停止検知部940は、住戸制御機600への電源の供給の停止を検知する。
【0025】
ここで、住戸制御機560の電源停止検知部940は、住戸制御機560の接続構成から、それより上流方向に住戸制御機560への切断処理を行う住戸制御機が存在しないため、電源の供給の停止を検知することはない。ただし、住戸制御機560と緊急通報制御機540との間の通信線860が断線した場合、住戸制御機560の電源停止検知部940は、住戸制御機560への電源の供給の停止を検知することになる。
【0026】
無線端末950は、電源停止検知部940に接続されており、緊急通報制御機540に設けた無線通信部(図示せず)との間で無線信号によって通信を行う。ここで、無線端末950は、住戸制御機の電源と別の電源(停電時に使用される電源やバッテリーなど)で動作する。また、バッテリーは、電池式のものであっても良いし、充電式のものであっても良い。また、充電式の場合、バッテリーは住戸制御機に電源が供給されているときに充電される。また、無線端末950と緊急通報制御機540との間に中継装置(図示せず)を設けるようにしても良い。
【0027】
また、本実施携帯では、無線端末950は、住戸制御機に電源が供給されている場合には、動作しないようにしてある。なお、住戸制御機と緊急通報制御機540との間で呼び出しや通話を行う際に使用され、住戸内に設置された有線式のハンドセット(図示せず)を無線端末950と兼用するようにしても良い。このような場合には、無線端末950は住戸制御機に電源が供給されている場合にも動作するようにしている。
【0028】
無線端末950は、電源停止検知部940が住戸制御機への電源の供給の停止を検知した場合に、緊急通報制御機540の無線通信部との間で通信可能な状態へと移行する。住戸制御機560の配線切断部740が一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機580との物理的な配線接続を切断すると、住戸制御機580への電源の供給が停止する。住戸制御機580の電源停止検知部940は、住戸制御機580への電源の供給の停止を検知する。住戸制御機580の電源停止検知部940が電源の供給の停止を検知すると、無線端末950は、緊急通報制御機540との間で無線信号による通信が可能な状態へと移行する。住戸制御機580の配線切断部740が一つ下流方向に接続されている切断対象の住戸制御機600との物理的な配線接続を切断すると、住戸制御機600への電源の供給が停止する。住戸制御機600の電源停止検知部940は、住戸制御機600への電源の供給の停止を検知する。住戸制御機600の電源停止検知部940が電源の供給の停止を検知すると、無線端末950は、緊急通報制御機540との間で無線信号による通信が可能な状態へと移行する。
【0029】
ここで、住戸制御機560の無線端末950は、住戸制御機560の接続構成から、それより上流方向に住戸制御機560への切断処理を行う住戸制御機が存在しないため、無線信号による通信を行うことができる状態へ移行することはない。ただし、住戸制御機560と緊急通報制御機540との間の通信線860が断線した場合、住戸制御機560の無線端末950は、緊急通報制御機540との間で無線信号による通信を行うことができる状態へと移行する。このように、配線切断部740によって配線接続が切断された住戸制御機では、無線端末950による通信が可能となる。
【0030】
次に、緊急通報制御機540の機能構成について説明する。緊急通報制御機540は、火災発生情報受信部760、火災発生情報送信部780、切断情報送信部800を備えて構成されている。火災発生情報受信部760は、住戸制御機560,580,600の火災発生情報送信部640から送信された火災発生情報を受信する。火災発生情報送信部780は、火災発生情報受信部760により火災発生情報が受信された場合、当該火災発生情報を緊急通報親機520に送信する。
【0031】
切断情報送信部800は、火災発生情報受信部760により火災発生情報が受信された場合、当該火災発生情報により特定される住戸制御機よりも一つ上流方向に接続されている住戸制御機に切断情報を送信する。また、切断情報送信部800は、各住戸制御機560,580,600の渡り配線における接続関係を表した接続関係テーブルを有している。この接続関係テーブルは、例えば、各住戸制御機560,580,600の渡り配線上での並び順を住戸制御機IDによって示したものである。切断情報送信部800は、この接続関係テーブルを参照することで、火災発生情報に含まれる火災発生住戸制御機ID情報により特定される住戸制御機(火災が発生した場所)よりも一つ上流方向に接続されている住戸制御機の住戸制御機ID情報を特定することができる。切断情報送信部800は、その特定した住戸制御機ID情報を含む切断情報を送信する。
【0032】
本実施形態では、住戸制御機600の火災発生情報送信部640が火災発生情報を送信した場合、切断情報送信部800は、住戸制御機600よりも一つ上流方向に接続されている住戸制御機580に切断情報を送信する。また、住戸制御機580の火災発生情報送信部640が火災発生情報を送信した場合、切断情報送信部800は、住戸制御機580よりも一つ上流方向に接続されている住戸制御機560に切断情報を送信する。ここで、住戸制御機560の火災発生情報送信部640が火災発生情報を送信した場合、切断情報送信部800は、住戸制御機560の接続構成からそれより上流方向に接続されている住戸制御機が存在しないため、切断情報を送信することはない。
【0033】
また、緊急通報制御機540は、住戸制御機560,580,600に設けた無線端末950との間で無線信号による通信を可能とする無線通信部(図示せず)を備えている。この無線通信部の構成は周知の無線通信部であれば良いので、説明を省略する。
【0034】
次に、緊急通報親機520の機能構成について説明する。緊急通報親機520は、火災発生情報受信部820、報知部840を備えて構成されている。火災発生情報受信部820は、緊急通報制御機540の火災発生情報送信部780から送信された火災発生情報を受信する。
【0035】
報知部840は、火災発生情報受信部820により火災発生情報が受信された場合、受信された火災発生情報に基づいて、火災が発生した住戸(火災発生住戸制御機ID情報から特定される)および日時(火災発生日情報から特定される)などを示す情報を報知する。本実施形態では、報知部840は、例えば緊急通報親機520に設けられたスピーカ(図示せず)から火災が発生した住戸および日時を報知するための警報音や警報音声などを出力する。また、報知部840は、緊急通報親機520に設けられた表示部(図示せず)に対して火災が発生した住戸および日時を報知するための警告メッセージを出力する。報知部840による報知を受けて、緊急通報親機520の周囲に居る管理人は、報知の内容を確認したり、火災があった住戸の居住者へハンドセット(図示せず)による通話により詳しい状況を確認したりする。
【0036】
なお、上述したように、緊急通報親機520は、住戸制御機560,580,600からの呼び出しを報知する機能を備えている。つまり、各住戸における火災の発生だけではなく、様々な事象を報知することが可能である。
【0037】
次に、住戸監視システム500における住戸制御機560,580の切断動作例について説明する。ここで、住戸制御機600では、切断動作を行っていないので、切断動作例の説明の対象外としている。図2は、図1中の住戸制御機560,580,600のハードウェア構成例を示す図である。同図に示すように、住戸制御機560,580,600は、ペア線の通信線860を介して渡り配線式で接続されている。
【0038】
住戸制御機560,580,600の内部では、通信線860に通常コネクタ(図示せず)を介して接続された内部配線が配線されている。住戸制御機560の内部では、端点920で分岐した一方の内部配線がスイッチSW1に接続され、端点920で分岐した他方の内部配線が通信回路900に接続されている。住戸制御機580の内部では、端点940で分岐した一方の内部配線がスイッチSW2に接続され、端点940で分岐した他方の内部配線が通信回路900に接続されている。住戸制御機600の内部では、端点960で分岐した一方の内部配線がスイッチSW3に接続され、端点960で分岐した他方の内部配線が通信回路900に接続されている。
【0039】
本実施形態では、住戸制御機560,580,600は、オン/オフ切り替え可能なスイッチSW1,SW2,SW3、CPU880、通信回路900、メモリ910を備えて構成されている。住戸制御機560,580,600のCPU880は、上述した火災検知部620、記憶制御部680、配線切断部740、電源停止検知部940の機能を有している。特に、住戸制御機560,580,600のCPU880(配線切断部740)は、スイッチSW1,SW2,SW3のオン/オフをそれぞれ切り替え制御する機能を有している。ここで、CPU880(配線切断部740)は、各住戸で火災が発生していない場合、内部配線に設けられたスイッチSW1,SW2,SW3をオンとしている。
【0040】
住戸制御機560,580,600の通信回路900は、上述した火災発生情報送信部640、切断情報受信部660および通信障害検知部720の機能を有している。住戸制御機560,580,600のメモリ910は、上述した切断情報記憶部700の機能を有している。
【0041】
まず、住戸監視システム500における住戸制御機560の切断動作例について説明する。もし、住戸制御機580のCPU880(火災検知部620)にて火災の発生を検知した場合、住戸制御機580の通信回路900(火災発生情報送信部640)は、火災発生情報を緊急通報制御機540に送信する。次に、住戸制御機580より一つ上流方向に接続されている住戸制御機560の通信回路900(切断情報受信部660)は、切断対象の住戸制御機580との物理的な配線接続を切断する必要性を示す切断情報を緊急通報制御機540から受信する。次に、住戸制御機560のCPU880(記憶制御部680)は、通信回路900(切断情報受信部660)により受信された切断情報を内部メモリ910(切断情報記憶部700)に記憶させる。
【0042】
その後、住戸制御機560のCPU880(通信障害検知部720)が緊急通報制御機540との通信障害の発生を検知した場合、住戸制御機560のCPU880(配線切断部740)は、内部メモリ910に切断情報が記憶されていることを確認して、スイッチSW1をオンからオフに切り替えることによって、切断対象の住戸制御機580との物理的な配線接続を切断する。
【0043】
ここで、住戸制御機560に通信障害が発生しているのは、火災発生を検知した住戸制御機580が燃えるなどして、これに接続された通信線860が短絡している場合である。よって、住戸制御機580においても通信障害が発生している。しかし、住戸制御機580の内部メモリ910には切断情報が記憶されていないので、スイッチSW2がオンからオフに切り替えられることはない。同様に、住戸制御機600においても通信障害が発生している。しかし、住戸制御機600の内部メモリ910には切断情報が記憶されていないので、スイッチSW3がオンからオフに切り替えられることはない。
【0044】
このように、住戸制御機560と住戸制御機580との物理的な配線接続が切断されると、住戸制御機580のCPU(電源停止検知部940)は、住戸制御機580への電源の供給が停止したことを検知する。この検知結果を受けた無線端末950は、緊急通報制御機540との間で無線信号による通信を可能とする状態へと移行する。すると、住戸内の居住者は、無線端末950を利用して緊急通報親機520の周囲に居る管理人を呼び出したり、通話したりすることが可能となる。
【0045】
次に、住戸監視システム500における住戸制御機580の切断動作例について説明する。もし、住戸制御機600のCPU880(火災検知部620)にて火災の発生を検知した場合、住戸制御機600の通信回路900(火災発生情報送信部640)は、火災発生情報を緊急通報制御機540に送信する。次に、住戸制御機600より一つ上流方向に接続されている住戸制御機580の通信回路900(切断情報受信部660)は、切断対象の住戸制御機600との物理的な配線接続を切断する必要性を示す切断情報を緊急通報制御機540から受信する。次に、住戸制御機580のCPU880(記憶制御部680)は、通信回路900(切断情報受信部660)により受信された切断情報を内部メモリ910(切断情報記憶部700)に記憶させる。
【0046】
その後、住戸制御機580のCPU880(通信障害検知部720)が緊急通報制御機540との通信障害の発生を検知した場合、住戸制御機580のCPU880(配線切断部740)は、内部メモリ910に切断情報が記憶されていることを確認して、スイッチSW2をオンからオフに切り替えることによって、切断対象の住戸制御機600との物理的な配線接続を切断する。
【0047】
ここで、住戸制御機580に通信障害が発生しているのは、火災発生を検知した住戸制御機600が燃えるなどして、これに接続された通信線860が短絡している場合である。よって、住戸制御機600においても通信障害が発生している。しかし、住戸制御機600の内部メモリ910には切断情報が記憶されていないので、スイッチSW3がオンからオフに切り替えられることはない。同様に、住戸制御機560においても通信障害が発生している。しかし、住戸制御機560の内部メモリ910には切断情報が記憶されていないので、スイッチSW1がオンからオフに切り替えられることはない。
【0048】
このように、住戸制御機580と住戸制御機600との物理的な配線接続が切断されると、住戸制御機600のCPU(電源停止検知部940)は、住戸制御機600への電源の供給が停止したことを検知する。この検知結果を受けた無線端末950は、緊急通報制御機540との間で無線信号による通信を可能とする状態へと移行する。すると、住戸内の居住者は、無線端末950を利用して緊急通報親機520の周囲に居る管理人を呼び出したり、通話したりすることが可能となる。
【0049】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、ある住戸で火災が発生して通信線860が短絡した場合、火災の発生を検知した住戸制御機とそれより一つ上流方向に接続されている住戸制御機との物理的な配線接続が切断される。このため、火災の発生による通信線860の短絡の影響(通信障害の発生)が、火災の発生を検知した住戸制御機よりも上流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。
【0050】
また、物理的な配線接続の切断によって、通信線860による通信および電源の供給が停止した住戸制御機では、渡り配線以外の電源によって駆動する無線端末950が無線信号による通信を可能とする状態へと移行する。このため、火災の発生による通信線860の短絡の影響(通信障害の発生)が、火災の発生を検知した住戸制御機を含む下流方向に接続されている住戸制御機に及ぶことを防止することができる。従って、緊急通報制御機540および住戸制御機560,580,600の全ての通信が不能となることを回避することができる。また、配線の切断により通信が不能となった住戸制御機でも緊急通報制御機540との間で通信することができる。
【0051】
なお、上述した本実施形態では、切断情報は、緊急通報制御機540により生成され、切断情報送信部800により各住戸制御機に送信されているが、これに限定されない。例えば、切断情報は、各住戸制御機にて生成されるようにしても良い。
【0052】
また、上述した実施形態では、緊急通報制御機540と三つの住戸制御機560,580,600とが渡り配線式で接続される構成について説明したが、これに限定されない。例えば、緊急通報制御機540と四つ以上の住戸制御機が渡り配線式で接続される構成にしても良い。
【0053】
また、上述した実施形態では、図2において、端点920,940,960で分岐した先の内部配線上にスイッチSW1,SW2,SW3を設けた例について説明したが、端点920,940,960で分岐する前の内部配線上にスイッチSW1,SW2,SW3を設けるようにしても良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、火災の発生を検知した住戸制御機に対して一つ上流方向に接続されている住戸制御機で切断動作を行う例について説明したが、これに限定されない。例えば、二つ以上上流方向に接続されている住戸制御機で切断動作を行うようにしても良い。
【0055】
また、上述した実施形態では、無線端末950が住戸制御機に収容されているが、これに限定されない。例えば、住戸内に設置されていれば、独立して動作するように構成されていても良い。この場合、電源停止検知部940との接続を無線化することで、無線端末950の配置により自由度が増す。
【0056】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態による住戸監視システムの機能構成例を示す図である。
【図2】本実施形態による住戸制御機のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】従来の住戸監視システムの構成例を示す図である。
【図4】従来の住戸制御機のハードウェア構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
500 住戸監視システム
540 緊急通報制御機
560,580,600 住戸制御機
620 火災検知部
640 火災発生情報送信部
660 切断情報受信部
680 記憶制御部
700 切断情報記憶部
720 通信障害検知部
740 配線切断部
760 火災発生情報受信部
800 切断情報送信部
940 電源停止検知部
950 無線端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸にそれぞれ設置されて前記住戸の火災監視を行う複数の住戸制御機と、前記住戸制御機と通信を行って前記複数の住戸の火災監視を行う監視装置とを備え、前記複数の住戸制御機および前記監視装置が、前記監視装置側から前記住戸制御機側に電源を供給する配線を含む渡り配線にて接続されている住戸監視システムであって、
前記複数の住戸制御機はそれぞれ、
火災報知器より入力される火災検知信号に基づいて火災の発生を検知する火災発生検知部と、
前記火災発生検知部により前記火災の発生が検知された場合に、前記火災が発生した住戸の住戸制御機に対して前記渡り配線における前記監視装置が接続されている方向を上流方法、その逆方向を下流方向として、火災発生場所を特定するための情報を含む火災発生情報を、前記渡り配線にて上流方向に接続されている他の住戸制御機を順次介して前記監視装置に送信する火災発生情報送信部と、
前記監視装置との間における通信障害の発生を検知する通信障害検知部と、
前記通信障害検知部により前記通信障害の発生が検知された場合に、前記渡り配線にて接続されている隣の住戸制御機との間の配線を切断する配線切断部と、
前記配線切断部による前記配線の切断により電源の供給が停止したことを検知する電源停止検知部と、
前記渡り配線以外の電源によって駆動し、前記電源停止検知部が前記電源の供給の停止を検知した場合に、前記監視装置との間で無線信号による通信を可能とする無線端末とを備え、
前記火災発生情報により特定される前記火災発生場所の住戸制御機よりも上流方向に接続されている一の住戸制御機の前記配線切断部が、前記渡り配線にて接続されている隣の住戸制御機との間の配線を切断することを特徴とする住戸監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−271575(P2009−271575A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118681(P2008−118681)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】