説明

体液吸収物品

【課題】セカンドシートとしての機能を十全に発揮させつつ、しかも、表面シートにエンボスが形成することで、「ハリツキ」を防止する。
【解決手段】表面シート1と、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20と、体液保持性を有する吸収要素ABとを順に備えた体液吸収物品であって、前記表面シート1と、前記体液透過性を有する透液材20との間に、前記体液透過性を有する透液材と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シート10が介在され、前記表面シート1及び前記第2の表面側シート10が一体でエンボス加工され、前記体液透過性を有する透液材20はエンボス加工されていない構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつや、生理用ナプキン、尿取りパッド、失禁パッド等の吸収性物品に適用可能な体液吸収物品に関するものである。特に好適には、生理用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、失禁パッド等の吸収性物品は、一般に、表面シートの下に、体液保持性を有する吸収要素を有する体液吸収物品である。そして、従来、かかる体液保持性を有する吸収要素は、例えば、綿状パルプや合成パルプなどのパルプや、フラッフ状パルプ中に、粒状粉などとされた吸収性ポリマーが混入された材料で形成されていた。しかしながら、これらの材料からなる吸収材は、体液を吸収するスピードが遅いため、体液は吸収要素に吸収される前に、物品端部にまで移動してしまい、その端部から漏れが生じるおそれがあった。
【0003】
そこで、近年では、表面シートと体液保持性を有する吸収要素との間に、不織布シートなどをいわゆるセカンドシートとして介在させ、体液をすばやく吸収要素側に透過させることにより、体液の端部への移動を抑制し、結果として、体液の端部漏れを防止する機能をもたせる構造が汎用されている。
【0004】
他方、特許文献1には、トウによる連続繊維の層を結合パターンにより表裏結合したものをセカンドシートとして使用したものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このものは、従来の形態に比較して、セカンドシートとしての機能が大幅にアップしている。
【0005】
しかし、トウによる連続繊維の層をたとえばエンボス結合パターンにより表裏結合したものであると、エンボスにより繊維間の空間が小さくなり、体液の透過性が阻害されるととともに、受け入れた体液を一時的に貯留する能力が低下し、本来のセカンドシートとしての機能が充分に発揮されないことが知見された。
【特許文献1】特表2001−524399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする主たる課題は、セカンドシートとしての機能を十全に発揮させつつ、しかも、表面シートにエンボスが形成することで、「ハリツキ」を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
表面シートと、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材と、体液保持性を有する吸収要素とを順に備えた体液吸収物品であって、
前記表面シートと、前記体液透過性を有する透液材との間に、前記体液透過性を有する透液材と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シートが介在され、
前記表面シート及び前記第2の表面側シートが一体でエンボス加工され、前記体液透過性を有する透液材はエンボス加工されていないことを特徴とする体液吸収物品。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
表面シート及び体液保持性を有する吸収要素の各面積に対し、第2の表面側シート及び体液透過性を有する透液材の各面積が小さい請求項1記載の体液吸収物品。
【0009】
〔請求項3記載の発明〕
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である請求項1または2に記載の体液吸収物品。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
表面シートと、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材と、体液保持性を有する吸収要素とを順に備えた体液吸収物品を製造する方法であって、
前記液吸収物品は、前記表面シートと、前記体液透過性を有する透液材との間に、前記体液透過性を有する透液材と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シートが介在され;
前記表面シートと前記第2の表面側シートとを一体でエンボス加工する工程、
これに対し前記体液透過性を配置する工程、
前記体液保持性を有する吸収要素を配置する工程、
を順に有することを特徴とする体液吸収物品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
表面シートが平坦面であると、着用者の肌が接したとき、特に汗をかいた肌が接すると、ハリツキ状態となり、感触を極度に悪化させる。しかるに、本発明に従ってエンボス加工により表面シートに凹面を形成することにより、肌と表面シートとの接触面積が小さくなり、ハリツキが防止できる。また、本発明では表面シート及び第2の表面側シートが一体でエンボス加工されている。表面シート可能な限り柔軟であることが肌触りの観点から要求される。しかし、柔軟性を重視した薄い表面シートであると、エンボスを形成しても大きな又は深いエンボスを形成し難い。これに対し、表面シート及び第2の表面側シートの両者を一体でエンボス加工すると、必要な大きさや深さのエンボスを形成できる。
【0012】
さらに、第2の表面側シートとして、従来の汎用のセカンドシートに使用している不織布シートなどを使用すると、第2の表面側シートが体液の透過を促進し逆戻りを防止する。
【0013】
本発明は、第2の表面側シートに対し裏面側に、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材、さらに体液保持性を有する吸収要素を順に備える。
【0014】
表面シート及び第2の表面側シートを透過した体液が、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材に到ると、これが繊維間に大きな空間を有するために体液に透過性に優れ、かつ、繊維がほぼ一様な方向に配向されているために液の拡散性に優れ、体液保持性を有する吸収要素が体液を充分に吸収することが可能となる。
【0015】
なお、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材は繊維間の空間容積が大きいので、クッション性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔用途〕
本発明の体液吸収物品は、尿や径血等の体液を吸収する物品一般に適用することができる。この種の体液吸収性物品としては、例えば、紙おむつや、生理用ナプキン、尿取りパッド、失禁パッド等を例示することができる。特に最適には生理用ナプキンに適用されるものである。
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、添付図面に示す生理用ナプキンへの応用例を参照しながら本発明の実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係る生理用ナプキンの展開状態での体液吸収側面を示しており、図2は図1の2―2線矢視において誇張的に示した断面を示している。この生理用ナプキンは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、あるいは外面の不織布と不透液性シートを重ねた素材などからなる不透液性などの裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性の表面シート1とを有する。これら両シート1,2間の幅方向中央には、綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収コア4と、この吸収コア4の形状保持および拡散性向上のために、必要により設けられる前記吸収コア4を包むクレープ紙5とを含む、体液の保持性を有する吸収要素ABが介在されている。かかる体液を受け入れ吸収保持する機能を発揮する本体部が製品中央部分に構成されている。
【0018】
本実施形態では、表面シート1は吸収要素ABより大きい面積を示す形状を有し、吸収要素ABの表面全体を覆うように配置されている。不透液性裏面シート2は製品の平面形状と同じ形状を有しており、その両側部は吸収要素ABの両側縁よりも側方に延出されており、この延出部分の表面側全体を覆うように不透液性または難透液性の不織布などからなるサイドシート6,6が積層接合されている。この接合手法としては、ホットメルト接着剤による接着、超音波シール、熱融着、熱圧着、またはこれらの組み合わせを採用することができる。
【0019】
特に図示形態のように、製品周縁部、具体的には裏面シート2及びサイドシート6,6の積層部分の自由端縁と、透液性表面シート3および不透液性裏面シート2の前後端縁は、ヒートシールb1,b2により強固に接合するのが好ましい。
【0020】
本実施形態では、かかる不透液性裏面シート2とサイドシート6,6との積層部分のうち特に股間部およびヒップ部が吸収要素ABの側方に大きく延出され、これら各延出部分によって折返しフラップ部F1およびヒップカバーフラップ部F2がそれぞれ形成されている。これらのフラップ部は、必要により設けられるものであり、省略することもできる。
【0021】
他方、図示形態のように、製品の両側部において製品長手方向に延在する横漏れ防止バリヤー30,30を設けることもできる。図示の形態では、製品長手方向に延在するサイドシート6,6の他端部が自由端とされ、かつ自由端側部分に弾性伸縮部材は32,32が長手方向に沿って伸張下に固定されている。そしてこのサイドシート6,6の製品の長手方向前後端部は折り重ねられた状態で相互に接合され、中間部分では接合されていない。かくして、使用状態においては、図2に示すように、弾性伸縮部材32,32の収縮力によりサイドシート6,6の中間部分が起立し、経血の横漏れ防止バリヤー30,30として機能する。
【0022】
本発明では、図2に示すように、表面シート1と、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20と、体液保持性を有する吸収要素ABとを順に備える生理用ナプキンを提供する。
【0023】
さらに、表面シート1と、体液透過性を有する透液材20との間に、体液透過性を有する透液材20と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シート10が介在され、表面シート1及び第2の表面側シート10が一体でエンボス加工Eされ、体液透過性を有する透液材は20エンボス加工されていないものである。
【0024】
そして、表面シート1及び体液保持性を有する吸収要素ABの各面積に対し、第2の表面側シート10及び体液透過性を有する透液材20の各面積が小さい形態である。
【0025】
トウからなる繊維集合体の構成繊維としては、好適にはセルロースアセテートの繊維である。
【0026】
かかる構成のナプキンにおいては、表面シート1が平坦面であると、着用者の肌が接したとき、特に汗をかいた肌が接すると、ハリツキ状態となり、感触を極度に悪化させるが、エンボス加工Eにより表面シート1に凹面を形成することにより、肌と表面シートとの接触面積が小さくなり、ハリツキが防止できる。また、表面シート1及び第2の表面側シート10が一体でエンボス加工Eされている。表面シート1及び第2の表面側シート10の両者を一体でエンボス加工すると、必要な大きさや深さのエンボスを形成できる。さらに、第2の表面側シート10として、従来の汎用のセカンドシートに使用している不織布シートなどを使用すると、第2の表面側シートが体液の透過を促進し逆戻りを防止する。
【0027】
また、第2の表面側シート10に対し裏面側に、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20、液保持性を有する吸収要素4を順に備える構造においては、表面シート1及び第2の表面側シート10を透過した体液が、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20に到ると、これが繊維間に大きな空間を有するために体液に透過性に優れ、かつ、繊維がほぼ一様な方向に配向されているために液の拡散性に優れ、体液保持性を有する吸収要素が体液を充分に吸収することが可能となる。
【0028】
ここで、図2中の拡大図を参照するように、エンボス加工により表面側シート10が裏面側に突出している形態がより望ましく、さらにエンボス加工により形成した表面側シート10の裏面側に突出している部分(凸部)が、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20と実質的に接触しているのが特に望ましい。
【0029】
かかる形態であると、体液は主にエンボス部Eを通して裏面側に移行する傾向にあり、表面シート1の平坦部分に体液が残存し難いのでハリツキを防止できる。しかるに、エンボス加工により形成した表面側シート10の裏面側に突出している部分(凸部)が、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20と実質的に接触していると、主にエンボス部Eを通して裏面側に移行する傾向を示す体液が、速やかに体液透過性を有する透液材20に移行し、かつその体液透過性を有する透液材20が優れた体液透過性を示すので、これらの通路が通して体液を吸収要素ABへと迅速に移行させることができる。仮に、体液透過性を有する透液材20にもエンボスを形成すると、その透液材20のエンボスによる圧密部分の密度が高い状態となるから、表面側シート10の裏面側に突出している部分(凸部)が透液材20と実質的に接触していたとしても、表面側シート10の裏面側に突出している部分(凸部)から透液材20中への体液の移行速度が遅くなるから、吸収要素ABへと移行させる速度が遅くなり、吸収速度の低下を招く。かかる理由説明により、図示の形態の特別な利点が明らかであろう。
【0030】
かかるナプキンを製造するためには、図3に示すように、表面シート1をそのアンリーラから繰出し、必要によりサイドシート6をそのアンリーラから繰出し、さらに第2の表面側シート10をそのアンリーラから繰出し、エンボスローラ50により、表面シート1と第2の表面側シート10とに対しエンボス加工する。エンボスローラ50は、凹凸ローラとゴムローラとの組み合わせ、凹凸ローラ相互にかみ合わせによるエンボスなどの適宜の形態を採ることができるが、少なくとも表面シート1にエンボスが加工させるものである。
【0031】
一体化された表面シート1と第2の表面側シート10との表面に対し、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材20が、サクションローラにより保持されながら繰出されながら供給される。その後に、吸収コア4を構成する綿状パルプが繰出され、積層されて、その後にまたは適宜の過程で、切断や個別化加工がなされ、製品化されるものである。
【0032】
〔各部材の素材等〕
ここで、各素材について順次説明する。
(トウからなる繊維集合体)
トウからなる繊維集合体とは、繊維で構成されたトウ(繊維束)からなる(トウを原材料として製造された)ものである。トウ構成繊維としては、例えば、多糖類又はその誘導体(セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサンなど)、合成高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリラクタアミド、ポリビニルアセテートなど)などを用いることができるが、特に、セルロースエステル及びセルロースが好ましい。
【0033】
セルロースとしては、綿、リンター、木材パルプなど植物体由来のセルロースやバクテリアセルロースなどが使用でき、レーヨンなどの再生セルロースであってもよく、再生セルロースは紡糸された繊維であってもよい。セルロースの形状と大きさは、実質的に無限長とみなし得る連続繊維から長径が数ミリ〜数センチ(例えば、1mm〜5cm)程度のもの、粒径が数ミクロン(例えば、1〜100μm)程度の微粉末状のものまで、様々な大きさから選択できる。セルロースは、叩解パルプなどのように、フィブリル化していてもよい。
【0034】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは、単独で、又は二種類以上混合して使用することができる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
【0035】
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
【0036】
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロールアセテートは、特に空隙率を高くすることができ、体液の吸収容量を増やすに適するためである。具体的には、例えば、空隙率(空隙の容量/吸収材全体の容量)を、好ましくは60〜85%と、より好ましくは75〜85%とすることができる。
【0037】
また、セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。
【0038】
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
【0039】
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16デニール、好ましくは1〜10デニール、さらに好ましくは2〜8デニール程度とすることができる。トウ構成繊維は、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ(2.54cm)当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収材を製造することができるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。
【0040】
トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。
【0041】
トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
【0042】
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、体液の吸収を繰り返した場合においても、広い空隙を確保する目的で、繊維の接触部分を接着又は融着する作用を有するバインダーを用いるのが好ましい。
【0043】
バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0044】
熱可塑性樹脂は、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性又は水難溶性樹脂、及び水溶性樹脂が含まれる。水不溶性又は水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
【0045】
水不溶性又は水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
【0046】
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
【0047】
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
【0048】
繊維集合体は、トウを原材料として、公知の方法により製造することができ、その際、必要に応じて、所望のサイズ、嵩となるように帯状に開繊することができる。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは150〜1500mm程度とすることができる。トウを開繊すると、後述する吸収性ポリマーの移動がより容易になるため好ましい。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収材の空隙率を調整することができる。
【0049】
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛渡し、トウの進行にともなって次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
【0050】
図4は開繊設備例を示す概略図である。この例では、原反となるトウ21が順次繰り出され、その搬送過程で、圧縮エアーを用いる拡幅手段22と下流側のロールほど周速の速い複数の開繊ニップロール23,24,25とを組み合わせた開繊部を通過され拡幅・開繊された後、バインダー添加ボックス26に通され、バインダーを付与(例えばトリアセチンのミストをボックス中に充満させる)され、所望の幅・密度のトウからなる繊維集合体20として形成されるようになっている。
【0051】
(表面シート1)
本実施の形態において、表面シートは、体液を透過する性質を有する。したがって、表面シートの素材は、この体液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0052】
また、表面シートは、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを張り合わせて得た積層シートからなるものであってもよい。
【0053】
(体液保持性を有する吸収要素AB)
本実施の形態において、体液保持性を有する吸収要素は、吸収した体液を保持する性質を有する。この吸収材は、その素材が、特に限定されない。例えば、綿状パルプや合成パルプなどのパルプ単体からなるものや、フラッフ状パルプ中に、粒状粉などとされた吸収性ポリマーが混入されたものなどの、公知の素材を例示することができる。また、このうちのパルプの原料繊維は、特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、溶解パルプ等の木材から得られるセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維などを例示することができる。ただし、セルロース繊維の原材料となる木材は、広葉樹より針葉樹の方が、繊維長が長いため、機能及び価格の面で好ましい。
【0054】
吸収材の表面、及び又は内部に高吸収性ポリマーを含有させることができる。
【0055】
高吸収性ポリマーとしては、自重の、例えば、10倍以上の体液を吸収して保持するものを使用できる。この例として、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマーの形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0056】
高吸収性ポリマーの散布量(目付け量)は、当該吸収材の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、例えば、3〜400g/m2とすることができる。
【0057】
(裏面シート2)
本実施の形態において、裏面シートは、体液を透過しない性質を有する。したがって、裏面シートの素材は、この体液不透過性を発現するものであれば足り、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで体液不透過性の裏面シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
【0058】
(第2の表面側シート10)
本実施の形態において、第2の表面側シート10は、体液透過性を有する。例えば、表面シート1と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
【0059】
(表面シート1と第2の表面側シート10との関係)
本発明において、表面シートとしては、坪量が8〜40g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、表面側シート10としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
【0060】
〔他の実施の形態〕
本発明において、先に説明の形態の他に種々の形態を採用できる。たとえば、第2の表面側シート10として、製品の長手方向全長にわたって設けることができる。体液透過性を有する透液材20として、製品の長手方向全長にわたって設けることができる。また、第2の表面側シート10及びまたは体液透過性を有する透液材20は、製品の長手方向に間隔を置いて複数、あるいは製品の幅方向に間隔を置いて複数設ける形態(すなわち間欠配置形態)でもよい。
【0061】
他方、体液透過性を有する透液材20は、図5〜図7に示す(要部のみを示している)ように、複数、図示では上層20Aと下層20Bとの2層に積層したものでもよい。さらに、上層20Aと下層20Bとは、幅方向に同一(図6)、上層20Aが下層20Bより幅狭(図5)、上層20Aが下層20Bより幅広(図7)などの形態とすることができる。
【0062】
一方、第2の表面側シート10と体液透過性を有する透液材20との位置関係は、平面的に見て少なくとも一部が重ねる関係であればよいが、特には第2の表面側シート10が体液透過性を有する透液材20の全体が、少なくとも70%以上覆う関係にあるのが望ましい。
【0063】
エンボスEについては、図示の円形エンボスのほか、楕円、四角形など適宜の形状とすることができる。さらに、図示の形態では散点状のエンボスであるが、連続的な溝状のエンボスでもよい。連続的な溝状のエンボスを製品の長手方向に配向すると、そのエンボス溝に沿って体液を誘導もしくは拡散することができ、体液の吸収性能の優れたものとなる。また、連続的な溝状のエンボスは、製品の長手方向に間隔を置いてあるいは幅方向に間隔を置いて複数形成することもできる。エンボス形成領域(散点状エンボスの場合には形成領域全体として見て)としては、体液透過性を有する透液材20の全体が、少なくとも70%以上覆う関係にあるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態の体液吸収物品の平面図である。
【図2】第1の実施の形態の体液吸収物品の断面模式図である。
【図3】製造方法及び設備の概要図である。
【図4】繊維集合体の製造フローを示す概略図である。
【図5】他の実施の形態の体液吸収物品の断面模式図である。
【図6】さらに別の実施の形態の体液吸収物品の断面模式図である。
【図7】変形例の体液吸収物品の断面模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1…表面シート、2…裏面シート、10…第2の表面側シート、20…液透過性を有する透液材、AB…吸収要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シートと、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材と、体液保持性を有する吸収要素とを順に備えた体液吸収物品であって、
前記表面シートと、前記体液透過性を有する透液材との間に、前記体液透過性を有する透液材と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シートが介在され、
前記表面シート及び前記第2の表面側シートが一体でエンボス加工され、前記体液透過性を有する透液材はエンボス加工されていないことを特徴とする体液吸収物品。
【請求項2】
表面シート及び体液保持性を有する吸収要素の各面積に対し、第2の表面側シート及び体液透過性を有する透液材の各面積が小さい請求項1記載の体液吸収物品。
【請求項3】
トウからなる繊維集合体の構成繊維が、セルロースアセテートの繊維である請求項1または2に記載の体液吸収物品。
【請求項4】
表面シートと、トウからなる繊維集合体を含む体液透過性を有する透液材と、体液保持性を有する吸収要素とを順に備えた体液吸収物品を製造する方法であって、
前記液吸収物品は、前記表面シートと、前記体液透過性を有する透液材との間に、前記体液透過性を有する透液材と少なくとも一部が重なる位置関係で第2の表面側シートが介在され;
前記表面シートと前記第2の表面側シートとを一体でエンボス加工する工程、
これに対し前記体液透過性を配置する工程、
前記体液保持性を有する吸収要素を配置する工程、
を順に有することを特徴とする体液吸収物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14889(P2006−14889A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194876(P2004−194876)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】