説明

作動固有ガスのパラメータを測定する装置を備えた電気化学反応器、例えば燃料電池又は電解装置

本発明は、電気化学反応器、例えば燃料電池スタック又は電解装置であって、電気化学セル(25)のスタック(22)を有し、各電気化学セルは、電解質に電気的に接触している表面を備えた少なくとも1枚の電極板(108‐1)と、スタックの外部とガス交換する交換回路中において電気化学セルの各々のフェースに接続された少なくとも1つの管(24)と、交換回路中のガスの組成の影響を受けるセンサ(11)と、センサの測定値に従って反応器の動作状態を追跡し又はモニタする少なくとも1つの部材とを有する電気化学反応器に関する。セルのスタック(22)及び管(24)は、一体形反応器本体(15)を形成し、反応器本体は、管と連通関係をなして本体内に組み込まれた少なくとも1つのチャンバ(20)を有する。ガス組成センサ(11)は、一体形本体内に設けられ、ガス組成センサは、チャンバ(20)内のガスの成分の現場濃度に直接さらされる高感度ユニット(30)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応器、例えば燃料電池スタック又は電解装置に関する。本発明は、特に、かかる機器及びその動作上の制御状態をモニタする目的で測定値を取る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学反応器は、現在において、特に輸送分野における環境汚染を制限しようと努力している状況において多くの研究の主題である。現在最も研究が行われているシステムのうちの1つは、疑いもなく、空気又は純粋酸素を酸化体として用いる電解質型水素燃料発電機である。水含浸ポリマーメンブレンの形態をしたソリッドステート電解質の使用により、相当な技術的進歩を行うことができた。また、特に電気エネルギーを化学エネルギーの形態で貯蔵する電解装置において相当な開発が行われた。現行の構成では、良好な効率で且つ極めて安全な条件下で動作する燃料電池スタック及び電解装置を計画することができる。
【0003】
しかしながら、或る特定の必要な材料(例えば、触媒)のコストが高いこと及び最適動作条件を達成すると共にかかる最適動作条件を時が経っても維持するうえで遭遇する問題点に鑑みて経済的観点から行われるべき改良が依然として存在している。これら問題点のうちの1つは、必要であり又は有用であると分かった測定の全てがいずれの場合においても正確に実施されるべきガス温度及び圧力の測定を凌ぐものではないので、現行のシステムでは反応器の内部動作条件の完全な理解が可能ではないということにある。したがって、燃料電池スタックの場合、従来、燃料電池スタックへの供給に用いられる水素の特に純度の観点での高品質を前もって保証することが必要であった。これらの予防策にもかかわらず、スタックをスタックにより実際に用いられる水素の純度に関して「盲目状態」で作動させる必要がある。
【0004】
さらに、燃料電池スタックは、依然として今日、主として、実験段階にある装置である。検査対象のシステムの動作を妨害しないで、反応器及びその種々のコンポーネントの動作をできればリアルタイムで良好に判定したり理解したりするための手段から恩恵を受ける多くの研究が依然として行われている。大抵の工業用電解工場又は実験室内では、ガス分析器が電気化学反応器中に存在するガスの組成に関する情報をその動作中に送り出すために引き続き用いられている。事実、これらの分析器は、電解装置により生じ又は燃料電池スタックにより消費されるガスのサンプルを間欠的に又は連続的に採取することにより動作する。採取されたサンプルは、分析器に送られ、分析器は、電解装置により生じた1種類又は2種類以上のガスの濃度に関する所望の情報を提供する。このように反応器から採取されたサンプルは次に廃棄され、このことは、効率の低下を意味している。
【0005】
近年、燃料電池スタックの環境中の種々のガスの中の特に水素ガスの濃度を測定するセンサを特にモニタ目的のために使用する提案がなされ、これらセンサは、抵抗発熱体を備えた高感度ユニットを用いた熱伝導率の測定に基づいており、かかる抵抗発熱体の加熱具合又は放散による冷却具合は、周囲ガスの熱伝導率及びかくして一般にその組成で決まる。比較的コンパクトであり且つ動作が簡単なこれらセンサは、水素が混合する可能性のある通常のガスの大部分の熱伝導率と比較して水素の極めて高い熱伝導率に鑑みて、ガスの水素含有量を測定するのに最適である。
【0006】
かくして、米国特許出願公開第2005/0228596号明細書も又、問題のガス状媒体の熱伝導率を測定することにより自動車用の燃料電池システムの環境中の水素濃度の影響を受けるセンサの使用を記載しており、かかるガス状媒体は、水素とは別に、空気に由来する種々の不純物を含む場合があり又は比較的高い水分を有する場合がある。この特許文献は、或る状況において水素を主成分とする混合物の熱伝導率に影響を及ぼす種々のパラメータを関連付ける関係の非直線性にもかかわらず、モニタされるガス混合物中の水分又は他の不純物の存在により生じる場合のある誤差のない測定値を提供するのに適した技術を記載している。この特許文献は、採用する手段のうちで、特に、ガスセンサの高感度素子を水分から保護する手段の使用を記載しており、その手法として、例えば、モニタされるべきガスと高感度素子との間の連通路中に曲がりくねった経路を提供し若しくはバッフルを形成し、又は高感度素子を保護被膜、例えばシリカを主成分とする被膜で覆う。測定は、好ましくは、燃料電池システム中、更に、かかる燃料電池を搭載した車両中の種々の敏感な箇所で実施される。測定値が安全上の問題があることを示すと、警報がトリガされ、次に、燃料電池への水素供給が中断される場合がある。しかしながら、開示されているシステムは、燃料電池への動作条件を効果的にモニタし又は制御するのに適した手段を備えていない。
【0007】
日本国特開2008‐191019号公報は、熱伝導率測定値に基づいてガス濃度センサをどのようにすれば動作させることができるかを説明しており、その手段として、センサをモニタされるべきガスが流れるラインから遠ざけて配置し、数個のエンクロージャをこのラインと高感度素子との間の連通路に沿って配置し、その目的は、測定値を歪めてセンサを損なう恐れのある不純物、特に水蒸気の伝搬を遅らせることにある。センサは、燃料電池スタック(図示せず)の水素排出ライン上に配置される。排出される水素ガス中に必然的に含まれる水蒸気がセンサの高感度素子に接触するのを阻止する手段が提案され、この手段は、特に、テトラフルオロエチレンで作られた撥水性フィルタ及び電動化ウォームスクリューによって制御される遮断弁を用い、この遮断弁により、センサが位置するチャンバをモニタされるべきガスが流れるラインから隔離することができる。この手段により測定値に対する水分の影響を制限することによって、疑いもなく、排出回路中の水素混合物の含有量に関する或る特定の情報を得ることができる。しかしながら、開示された手段がかかる燃料電池の動作条件を正確且つ迅速にモニタし又は制御するのに適しているとは思われない。
【0008】
最近、米国特許出願公開第2009/00611261号明細書は、例えば、ライン中を流れるガスの物理的パラメータを検出する装置の使用を記載しており、かかる装置では、チャンバ内に配置された検出素子が液体としての水の付着層又は膜が検出素子上に形成するのを阻止する繊維状材料で作られたフィルタによりかかるラインの内部から隔てられる。かかるフィルタ及びチャンバの壁の処理により、ライン中を流れるガス中の液体としての水又は水蒸気の存在がこのチャンバ内のこの検出素子からの示度を歪めるのを阻止する。考慮されている一例では、検出素子は、電気抵抗発熱体を含み、その加熱温度は、その環境内におけるガスの濃度に応じて様々な場合がある。検出装置は、モニタされるべきガスの水素濃度を検出するために用いられる場合があり、かかる場合としては、水素濃度が高い場合や水蒸気が存在している場合が挙げられる。一例では、この特許文献は、原動力を車両に送り出す燃料電池システムを記載しており、このシステムは、一方において水素ガスが供給され、他方において酸素に富んだガス、例えば空気が供給される電気化学セルのスタックを含む。水素回路は、セルスタックの出口のところに、セルスタック中の消費されなかった水素ガスを排出するラインを有する。ポンプがこの排出ライン中の回収水素の流れをスタックの水素入口に再循環させるのに役立つ。この流れは、加圧タンクから来た新鮮な水素ガスの流れに加えられ、かかる組み合わせ状態の流れは、セルスタックの入口に注入される。また、水素ガス排出ラインは、パージ弁を介してシステムの外部に選択的に連結され、パージ弁により、オンオフ作用により、スタックの出口のところで回収された水素のうちの何割かを排出することができる。この特許文献によれば、上述のかかる水素濃度検出装置は、好ましくは、水素タンクから来た供給ガスの圧力を調節する弁を制御すると共に更に検出された濃度に従ってパージ弁を制御するためにスタックの外部に位置する水素排出ライン内に配置される。この特許文献によれば、検出装置は、再循環ポンプの下流側又は圧力調整弁の下流側に配置されても良い。しかしながら、この特許文献によれば、上述の、即ち、再循環ポンプの上流側に位置した第1の手段が好ましい。というのは、この時点における濃度測定の誤差の生じやすさが小さいからである。また、他の燃料電池システムのアーキテクチャは、水素又は酸素ガス回路中の1つ又は2つ以上のガス濃度検出装置の種々の構成が行われた状態で説明されている。
【0009】
かくして上記の例で説明した燃料電池システムは、サンプルをこれらの分析目的でシステムの外部に送るためにサンプルをスタックの回路中のガス混合物から採取する必要なく、燃料電池スタックの挙動又は動作に関する情報を提供するという利点を有する。この情報は、燃料電池スタックの動作を決定する制御要素、例えばスタックの入口のところの新鮮な水素の吸気圧力及びパージ弁の開度に作用し、それにより、燃料電池スタックの挙動又は動作特性を変更するよう利用できる。かくして、これは、システムの動作特性を制御する手段となる。
【0010】
このことから、かかる手段がスタックの動作を永続的に最適化する目的で内部水素濃度に関するリアルタイムの知識からスタックそれ自体を制御することが導き出されるのではないかと思われる。しかしながら、実務の示すところによれば、そうではない。というのは、上述の手段により得ることができる情報が性質上依然として極めて近似的だからである。本出願人は、事実、このような電気化学反応器の制御を最適化するためには、上記において提案されたシステムの能力の範囲内にはない感度、精度及び応答時間に関する条件下において必要な特性パラメータを測定しなければならないということを見出した。事実、電気化学反応器の稼働及びモニタを最適化するよう水素センサにより、より十分に提供される情報を用いることができることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0228596号明細書
【特許文献2】日本国特開2008‐191019号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/00611261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
かくして、オペレータに電気化学反応器システムの動作に関する重要な要因について簡単に、頻繁に、迅速に且つ正確に知らせることができる測定を行い、かくして、オペレータが効果的に行動をとり、好ましくは自動的に行動が行われてこれらシステムの歩留り、効率、安全性及び寿命を維持することにより電気化学反応器、例えば燃料電池スタック及び電解装置の動作の理解度を向上させるための技術進歩の余地が存在する。
【0013】
これら要件に取り組むため、本発明は、内部動作の特性に関する情報を提供し、特にこの内部動作をモニタしたり制御したりするのに適した新規な電気化学反応器、特に燃料電池スタック又は電解装置を提要することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一要旨は、電気化学反応器、例えば燃料電池スタック又は電解装置であって、電気化学セルのスタックを有し、各電気化学セルは、電解質と電気的接触状態にある一フェースを備えた少なくとも1枚の電極板と、スタックの外部とガス交換する交換回路中において電気化学セルの各々のフェースに接続された少なくとも1つのマニホルドと、交換回路中のガスの組成の影響を受けるセンサと、特にセンサの制御下において反応器の状態をモニタする少なくとも1つの手段とを有する、電気化学反応器において、セルのスタック及びマニホルドは、一体形反応器本体を形成し、反応器本体は、マニホルドと連通関係をなして本体内に組み込まれた少なくとも1つのチャンバを有し、ガス組成センサは、一体形本体内に設けられ、ガス組成センサは、チャンバ内のガスの成分の現場濃度に直接さらされる高感度ユニットを含むことを特徴とする電気化学反応器にある。
【0015】
この構成により、反応器の電気化学セルで用いられるガスの濃度を測定するセンサ、特に、反応器の燃料電池スタック内の反応器の電気化学セルのアノード又は電解装置内の電気化学セルのカソードに接続された回路中の水素濃度を測定するセンサが、例えば、反応セルスタック中のガスの温度条件、湿度条件及び組成の面で電気化学セルの反応条件と密に関連している。さらに、このセンサは、セルのブロック及びダクトにより形成された本体中に直接組み込まれているチャンバ内に設けられているので(なお、このダクトは、これらセルとこのチャンバとの間のガス交換を行う)、測定の対象を形成するガスの流量は、比較的低く、セル中の流量に近い。これは、測定精度にとって好都合である。センサが反応の起こるスタックの近くに位置していることも又、反応時間を短縮するうえで有利な要因である。
【0016】
本発明を実施する好ましい実施形態によれば、チャンバは、システム板内に形成され、システム板は、スタックの端セルと並置関係をなしていて、マニホルドがマニホルドを挿通させるセルのスタックを出ると開口する第1のフェースと、第1のフェースと反対側に位置していて、ガス回路の1つ又は2つ以上の要素を本体の外側に固定する支持体を形成する第2のフェースとを有する。かくして、一体形本体の外部に位置するガス回路の部分は、ガスの流れを保証すると共に制御する制御部材も又固定されているシステム板のこの第2のフェースを介して組み込みチャンバに連結されるのが良い。
【0017】
組立体は、かくして、ガス組成センサであるコア中に組み込まれたコンパクトな組立体を形成し、その温度は、セルスタック内に存在する温度と同一のままである。これは、センサの高感度ユニットのすぐ真上に位置する空気中の水分の凝縮の恐れをそれ自体減少させる要因となり、後で、かかる凝縮は、種々の状況において有害である場合があることが理解されよう。この要因により、凝縮液をなくすために先行技術において上述した複雑精巧な構成を成してすますことが少なくとも部分的に可能である。さらに、回路の外側とセルの受け持つマニホルドとの間の組み込みチャンバを通るガスの流量は、ガス回路の他の部分中の流量よりも低い。この要因は、センサの測定精度にとって好都合である。すぐ近くに位置することは、混合物中の組成の変化に対するその応答時間の短縮にも寄与する。
【0018】
また、かかる実施形態では、ガス組成センサを第1のフェースと第2のフェースとの間で支持板の壁、特に側壁に内に設ける好ましい。このガス組成センサは、壁の内側に、チャンバの雰囲気と連通したキャビティを包囲している中空端部品を有し、チャンバ内のガスの成分の現場濃度の影響を受けるユニットをキャビティ内に収容するのが有利である。有利な実施形態によれば、中空端部品内に高感度ユニットを収容したキャビティは、ガス密及び液密仕切りによりセンサの一部分に形成されている別のチャンバから隔離されており、この部分は、高感度ユニットからの信号を処理する処理ユニットが収納されているチャンバに対して壁の外側に設けられる。この構成では、高感度ユニットから来た導体が仕切りを密封的に貫通しており、仕切りは、キャビティとセンサの他のチャンバとの間の差圧に耐えるのが良い。かくして、一体形反応器本体の外部への水素の漏れの恐れは、センサの構成により、特に、センサの電気的接続部が集められているゾーン内においてなくなる。かくして、更に、処理ユニットを一体形本体内に設けられた高感度ユニットのすぐ近くに配置できる。かくして、理解されるように、高感度ユニットにより出力される信号の干渉をこれら2つのユニットの近接性により大幅に減少させることができる。したがって、システムの精度は、これにより一段と向上する。
【0019】
本発明を実施する好ましい観点によれば、回路中のガス濃度センサは、これが浸漬されているガス混合物の熱伝導率の変化で左右される信号を送り出すのに適したセンサである。事実、この種のセンサは、反応器内で直接用いられるのに極めて適しており、かかるセンサは、特に、この種の反応器でしばしば見受けられる混合物中のガス濃度の測定値を良好な時間応答で送り出すようになっていることが判明した。
【0020】
一技術によれば、ガスの熱伝導率の変化に敏感なセンサは、支持体を有し、この支持体は、特に、制御された条件下で加熱する手段及びこの支持体の温度をモニタする手段を備えている。定常状態では、この温度は、加熱手段からの熱の流入と支持体の周囲媒体中への支持体による熱の放散の両方で決まる。熱の放散は、それ自体、一方において支持体の温度と周囲媒体の温度の差及び他方において周囲ガス混合物の熱伝導率に依存する。熱伝導率は、それ自体、存在するガスの各々の性状及び混合物中のこれらガスの濃度に依存する。
【0021】
これらの観察結果から始まり、本発明は又、科学目的で電気化学反応器内で生じる現象の知識のためだけでなく反応器それ自体の内部、その動作及びその性能に基づいて定期的にモニタする手段として上述の原理に従って設計された電気化学反応器内のガス、特に水素の現場濃度の測定値を取ることに関する。別の観点によれば、本発明により、これら測定値は、電気化学反応器の動作上の安全性を警告し、点検し、最適化すると共に/或いは保証するよう電気化学反応器の種々の動作上の制御装置によって用いられる。
【0022】
上述のことから理解されるように、多くの電気化学反応器の動作に伴い、液体、特に水の使用及び/又は生成が行われ、液体、特に水は、検査対象のガス混合物の熱伝導率の測定を利用するガス濃度センサの健全性を経時的に維持するうえでの問題をもたらす場合がある。
【0023】
かくして、実施上の一観点によれば、周囲ガスの伝導率の変化に敏感なユニットを備えたガス濃度センサが上述したような反応器内のガス回路中に用いられ、その用い方として、ガス濃度センサを例えば撥水性スクリーンを用いることによりその高感度ユニットが液体に接触しないよう保護された定位置に位置決めする。例えば、この目的のため、一体形本体中に組み込まれたチャンバの雰囲気と高感度ユニットの表面との間に気体を通すが水をはじくスクリーンを形成するために微孔質メンブレンを用いるのが良い。
【0024】
センサが浸漬されているガスの現場水素濃度の正確な測定を行うため、このようにして位置決めされると共にオプションとして保護されたこのセンサは、これが浸漬されているガスの熱伝導率の変化に敏感であるという事実を利用するのが良く、これは、対応のガス回路中の水素濃度だけでなくこのガス回路中の水蒸気濃度で決まる。種々の加熱温度に基づく高感度ユニットの環境内の伝導率の数回の測定を制御するのに適した制御装置を用いると、このセンサを包囲しているガスの水蒸気含有量に従って補正されたかかるガスの水素濃度を求めることができる。
【0025】
また、モニタされているガスの含水量を測定する公知の手段を用いることが可能である。センサの信号処理ユニットも又、混合物中の検出された含水量に従って高感度ユニットにより提供される濃度測定値を補正するために湿度センサから信号を受け取りやすい。実際、システムは、水素ガス回路中の水素の濃度に敏感なセンサを備えた水素ガス回路だけでなく純粋な状態の又は混合物、特に空気中の酸素を主成分とするガス混合物のための回路であって、センサの環境中のこのガス混合物の水素含有量に依存する情報を提供する回路を含む電気化学反応器においても利用できる。
【0026】
有利な用途によれば、本発明のガス濃度測定装置は、該当する場合には、二酸化炭素の存在を判定すると共にその濃度を測定するために反応器内のガス混合物の熱伝導率を測定する装置を有し、これらは、後で理解されるように、反応器の或る特定の部分の良好な健全性又は一体性に関して重要な指標を提供する場合がある。
【0027】
ちょうど説明したばかりの反応器は、有利には、改良型燃料電池スタック又は改良型電解装置の構成に利用できる。かくして、例えば、燃料電池スタックの水素回路中の水素濃度をモニタすることにより、動作中、燃料セルスタックの電気化学セルの入口に注入されるガスの水素濃度をチェックすることができる。水素濃度に依存するセンサの出力は、例えば、不純物と混ざり合った或る特定の量のガスを水素ガス回路から除去してこの回路中の水素濃度を所定レベルを超えて維持するようパージ弁を間欠的に作動させる制御装置によって利用可能である。
【0028】
さらに、燃料電池スタックを動作停止させる段階の際、酸化に敏感な素子の環境が水素涸渇モードにあるのを阻止するために水素回路中の水素濃度に関するかかるセンサからの示度を用いることが有利である。さらに、その後、エネルギーが作られない休止状態にスタックがある期間中、センサは、有利には、酸化に敏感な素子の環境が水素涸渇モードに入る危険を冒すことを意味し指示しているかどうかをチェックするよう待機モードに維持される。この場合、制御ユニットにより、追加の量の水素を水素回路中に注入し、水素濃度を再び上述の比較的低いしきい値を超えるようにする。実際、このしきい値は、燃料電池スタックの電解セルのアノード電位がゼロレベルのままであるようにするのに必要な水素濃度に相当している。
【0029】
水素濃度センサは又、有利には、2つの回路相互間の透過上の欠陥、例えば、電解質膜として用いられるポリマーメンブレンに生じた穴のために水素中への酸素の拡散を検出するよう使用可能である。酸素回路がかかるセンサを備えている場合、システムの安全性を向上させるよう酸素中への水素の拡散も又検出するのが良い。
【0030】
最後に、本出願人は、本発明の反応器が水素を含んでいない混合物中の二酸化炭素(CO2)のレベルを測定するのに適したセンサを備えるのが良いことを確認した。この構成は、実験上の理由で又は情報の冗長性をもたらすために、燃料電池スタックの調節が正確であるかどうか及び結果的に酸素で構成される場合のあるスタックの部分のタイミングの悪い酸化が生じることになる条件がないかどうかをチェックすることを目的とする燃料電池スタックに使用できる。これは、例えば、毛羽だった粉末状の黒鉛を主成分として作られる触媒支持体に利用できる。
【0031】
本発明は又、水素ガス回路が電解セルのスタックの要素セルのカソードの各々のガス結合した組み込みチャンバを有する電解装置の構成のための上述の電気化学反応器の用途に関する。水素濃度センサは、電解装置の動作を制御するために水素回路中で生じた水素の濃度に依存する少なくとも1つの信号を制御ユニットに送るよう水素回路内に設けられる。当然のことながら、同一の用途は、有利には、酸素生成回路に具体化される。この場合、受け取った示度は、生じたガスの純度を永続的にモニタすると共に電解装置が良好な安全条件下で動作するようにするために役立つ。例えば、酸素中への水素の拡散及び水素中への酸素の拡散は、2つの回路相互間の不透過性が低いので、検出可能である。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の内容の実施形態を非限定的な例として示す添付の図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】水素濃度センサを備えた燃料電池スタックの全体的斜視図である。
【図2】電気化学反応器の端板の壁を貫通してスタックのエンクロージャ内に入り込んだ図1のセンサのうちの1つの具体化例の断面図である。
【図3】水素供給入口に取り付けられたセンサによる測定に基づいてスタックを制御する装置の一例の機能上の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明による電気化学反応器の処理エレクトロニクスと共にガス混合物の水素濃度を測定するセンサの構成を示す極めて単純化された図である。
【図5】燃料電池スタック内の電気化学セルの一実施形態の図である。
【図6】本発明の原理に従って構成された制御装置を備える電解装置の単純化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、燃料電池スタック10の外部を示している。燃料電池スタックは、特に2枚の端板17,18相互間に互いに保持された電気化学セルのスタックによって形成されている全体として平行六面体の形の一体形本体15を有しており、一方の端板(17)は、システム板と呼ばれている。この図は、スタックの頂部のところに、セルスタック内に設けられた互いに整列状態の開口部により形成された2つのマニホルド24,24′のドーム型形状部13‐1,13‐2を示し、これら開口部は、2つのマニホルドにそれぞれ水素及び酸素を供給するようになっており、これについては、後で説明する。この例では、燃料電池スタック10の構成は、本出願人の国際出願2007/045416号パンフレットに示されていると共に説明されている形式のものである。
【0035】
システム板17は、開口部が種々の機能部材、例えばポンプ、弁、センサ等と連絡関係をなして設けられた外側フェース19を有している。これらの部材(これらのうちの幾つかは、図1に明確に示されている)は、このフェース19内に直接固定されるのが良く、これら部材は、流体をスタック内で循環させると共に外部との交換を可能にするようになっている。システム板17は、フェース19から見て反対側に、システムのコアを形成する電気化学セルのスタックのうちの端セルと直接的な並置関係をなす内側フェース29を有している。スタックの動作又はスタック内に設けられている反応器の動作を可能にするのに必要な流体の流れを保証するチャネルを互いに連結するマニホルドがこのスタックを貫通している。スタックのマニホルドは、図2に例えば符号26で示された開口部内に延び、これら開口部は、システム板17の端フェース29に設けられている。スタック22のマニホルドをシステム板17の外側フェース19と並置関係をなして機能部材に連結する通路、チャンバ又はマニホルド(これらは、システム板の材料から切断形成されるのが良い)がこのシステム板17の厚さを貫通している。したがって、システム板17は、反応器の作動流体相互間の機能的連結部の少なくとも大部分を構成するコンパクトであり且つ頑丈な組立体の製作に寄与する。
【0036】
具体的に説明すると、システム板17は、燃料ガス回路の2つのマニホルド24,44(図2及び図3)の入口及び出口を受け入れ、燃料ガス回路が、一方の側(24)に水素を供給すると共にセルの各々の出口のところで消費されなかった水素を排出する(44)ためにセルのスタックを通過する混合物を運搬する。同様に、システム板17は、酸素をセルに送る酸化体混合物回路のマニホルド用酸素入口及び出口ライン(図示せず)を収容している。このプレート内に収容されたライン系(図示せず)は、燃料電池のセルのスタックを冷却するための冷却剤を循環させるために設けられている。また、端板内に設けられた空間は、とりわけ後で詳細に説明する図3のブロック図に示された電気接続部材並びに流れ指令及び制御部材を収容することができる。上述したように、システム板17は又、例えばガスの圧力及び温度を測定し、又、冷却剤の温度を測定する測定部材を固定すると共に連結するのに役立つ。本発明の一特徴によれば、燃料電池スタック10内に存在するガス混合物のうちの少なくとも1種類の組成に関する情報を提供することができる装置も又、システム板17内に設けられている。この目的のため、水素濃度センサ11が高感度ユニット30(図2に見える)を有し、この高感度ユニットのヘッドは、このシステム板17内に設けられた水素回路の一部分を構成するチャンバ20内に開口し、水素濃度センサ11は、システム板17から外部に突き出たスリーブC40内に収容されている処理ユニット12を更に有する。高感度ユニット30から来た信号を受け取る処理ユニット12は、特に、反応器の1種類又は複数種類の作動ガス混合物中の現場水素濃度に依存する測定値をシステムに送るよう設計されている。オペレータに直接的情報を提供するこれら測定値の役割とは別に、これら測定値により、後で説明するように、反応器の稼働状態をモニタし、好ましくは、その作動を自動的に制御することができる。以下の説明において、特に、高純度レベルを維持するために水素回路の間欠的パージを最適に制御するうえで得られた測定値をどのように用いるかについて説明する。また、水素濃度を測定する潜在的な利点は、燃料電池スタックが作動を停止された場合、即ち、待機状態にある場合に電気化学セルの雰囲気の水素が少なくなって限度ぎりぎりになるのを阻止するための良好な使用にあるが、これには限定されない。
【0037】
図2は、上述のシステム板17の内部空間の一部分を示しており、この内部空間の一部分は、タンク50(図3で理解することができる)から来た水素の取り入れのためのチャンバ20を含む。このチャンバは、システム板17の外部端フェース19から見て反対側では、電気化学反応がおこるセル25のスタックによって境界付けられている。水素ガス供給マニホルド24が隣り合うセルを貫通しており、この水素ガス供給マニホルドは、その源を入口26を介してチャンバ20内に取り込む。
【0038】
ドリル穴28がシステム板17の上側側方フェース27に設けられており、中空端部品31が適当な加圧ガス密シール49を備えた状態でこのドリル穴を貫通しており、高感度ユニット30のヘッドは、この端部品内に収容され、これ又図1に見える水素濃度センサ本体11の一端部のところで保護されている。高感度ユニット30のヘッドは、高感度ユニットを構成する回路ウェーハ32から成り、この回路ウェーハは、端部品31の下側部分に設けられたチャンバ36内に設けられている。チャンバ36は、中空端部品31の端壁に穴あけされたチャネル34を経て反応器内のチャンバ20と連通している。高感度ユニットのウェーハ32(その一方のフェースは、チャンバ36内のチャネル34の出口の方へ向けられている)は、チャネル34を経てチャンバ20の雰囲気と直接的接触状態にある。重要な観点によれば、フィルタ37がチャンバ36のチャネル34の入口に設けられており、その目的は、後で明らかになる理由でチャンバ20のガスと混ざり合う場合のある液体としての水と接触しないよう隔離することにある。フィルタ37は、ガスを通すが液体としての水を通さない材料で作られている。「ゴアテックス(GORE-TEX(登録商標))」という商標名で市販されている織布が例えばかかる使用においてその能力を発揮するものとして知られている。この材料は、本質的に、テフロン(Teflon(登録商標))ヤーンの合成布から成る。
【0039】
水素濃度センサ11の本体は、中空端部品31から見て反対側に、円筒形スリーブ48を有し、この円筒形スリーブは、システム板17の外部側壁27、特に、この壁27に固定された中空スラストフランジ35から突き出ている。処理ユニット12は、プリント回路板42に取り付けられた回路により形成され、このプリント回路板の接触ピンは、端部71のところが、円筒形スリーブ48の内部空間内に設けられた支持体73に取り付けられている連結ハウジング78内のコネクタ72にプラグ接続されている。一端が連結ハウジング78内に接続された1組の電気導体46が円筒形スリーブ48の内部及びフランジ35の中空内部を貫通してセンサ31の端部品の端部のところのチャンバ36の上側部分を閉鎖している絶縁仕切りプラグ75で終端している。プラグ75は、その上側フェースで燃料電池スタックが収納されているスペース内の周囲圧力を受けることを知ったうえで、チャンバ36内のガスの圧力に耐えることができるよう中空端部品31の内部に設けられたスリーブ76の内側に密封的に固定されている。加うるに、各導体46は、この仕切りプラグ75を通って、チャンバ34内のプラグ75の下側フェース上に形成されたそれぞれの接触パッド77に電気的に接続されている。また、センサの高感度ユニット30のウェーハ32は、その敏感なフェースがチャンバ34の方に向けられた状態でこの下側フェースに結合されている。
【0040】
高感度回路のウェーハ32の各出力パッドは、結合ワイヤとも呼ばれている電気接続ワイヤ(図2では余り細すぎて見えない)を介してそれぞれの接触パッド77に接続されており、その目的は、電気導体46を介して高感度ユニット30と処理ユニット12との間の電気的リンクを確立することにある。電気接続部又は結合部は、反応器内に存在する雰囲気の腐食作用に耐えるよう作られている。通常工業用センサの電気結合導体に用いられているアルミニウム導体よりも金導体の方が好ましい。変形例として、保護層が導電性部分を覆う。この拘束は、レドックス電気化学反応器内で見受けられる雰囲気の性状に起因している。電気導体46は、プラグ75の密封具合を損なわないようガラスビードに入れた状態でプラグ75を貫通しており、その結果、チャンバ20内に入っているガスが逃げ出ることがないようになっている。
【0041】
水素濃度センサ11は、これら全ての予防措置を備えた状態で、その高感度ユニット30,32及び処理ユニット12と共に、チャンバ20内に入っているガスの特性、特に、燃料電池スタックの作動にとって極めて重要なパラメータであるその水素含有量を特徴付ける物理的パラメータの現場測定を実施するよう動作可能である。電気化学反応器内で連続的に又はほぼ連続的に現場測定を実施することは、高感度ユニット30,32が浸漬されているガスの熱伝導率に敏感なセンサを反応器内に組み込むことによって動作上実施可能であることが判明している。このパラメータを測定することは、電気化学反応器、例えば燃料電池スタックの雰囲気中の水素含有量を検出するのに特に適していることが分かる。事実、水素の熱伝導率は、性質的にガスに関して最も高いことが知られている。この特性により、窒素が或る特定の環境内において混合状態で見受けられがちなガス、特に、酸素や窒素のうちで水素を検出することが容易である。思い起こされるように、この種の測定を行うため、センサは、例えば電流が流れる抵抗器によって加熱される材料のウェーハを含む。規定された温度の維持に費やされる電力を測定することにより、ウェーハが浸漬されている雰囲気中の熱の損失によって散逸される電力を測定し、これから周囲ガスの熱伝導率を導き出すことが可能である。
【0042】
図4に非常に概略的に示されているように、水素濃度センサ11の高感度回路のウェーハ32は、プレート又はフィルムの形態をした基板、例えばシリコン基板で構成されている。この基板は、一体化されているにせよ成膜されているにせよいずれにせよ、電気抵抗発熱体132で覆われており、この発熱体には供給端子133,134を介して処理ユニット12により制御される電流源が供給される。ウェーハ32のフェースのうちの一方は、例えばPT100熱抵抗層と呼ばれるものによって形成される温度センサ135を有し、このセンサは、1組の導体136を介して処理ユニット12に接続されており、その目的は、高感度ユニット32のウェーハの瞬時温度に対応した信号を加熱と周囲ガス中の熱の放散の組み合わせ作用により送り出すことにある。さらに、水素濃度センサ11は、周囲ガスの温度を測定するために温度プローブ138、例えばPT100プローブを備えている。かかるセンサの物理的部分は、例えば、1988年5月11日発行の欧州特許第0291462(B1)号明細書及び1991年2月25日公開の欧州特許出願公開第0501089(A1)号明細書に記載されている。
【0043】
図4で理解できるように、水素濃度センサ11の処理ユニット12は、4本の信号ラインを介して高感度ユニット32に接続されているディジタルモジュール82を有している。図4に概略的に示されているディジタルモジュール82は、マイクロコントローラ内に入れられているアルゴリズムの機能の単純化された表示であり、このディジタルモジュールは、図3に概略的に示されているように燃料電池スタックの制御ユニット80に送られる水素濃度センサ11からの出力量をコンピュータ計算するモジュール81を含む。
【0044】
処理ユニット12の出力を運ぶ第1のライン101は、ディジタル/アナログ変換器を介して、ウェーハ32のセンサの抵抗発熱体132に印加される電圧を制御する。この電圧は、制御ユニット80内に設けられている加熱電力調整器311を用いて制御される。
【0045】
第2のライン303は、抵抗発熱体132を通って流れる電流の像である電圧信号を受け取る。この情報は、処理ユニット12の入力のところに設けられていて、水素濃度センサ11の抵抗発熱体132中で実際に散逸される加熱電力を制御する制御回路313により用いられるA/D(アナログ/ディジタル)変換器によって変換される。図で理解できるように、ディジタルモジュール82内の比較器320に送られるこの情報は、コンピュータ計算モジュール81の出力322として生じる設定値と比較される。ディジタルモジュール82内では、これら2つの量の比較の結果は、加熱電力調整器311の入力321を制御する。したがって、高感度ユニット30のウェーハ32の加熱は、ディジタルモジュール82の出力322のところで各場合に表示される加熱電力設定値に基づいてディジタルフィードバックループにより生じる。良好な測定精度は、一定の加熱電力で達成される。
【0046】
第3のライン305により、ウェーハ32の温度センサ135により出力されるアナログ信号を出力ユニット12の入力のところで受け取ることができる。アナログ/ディジタル変換後、この信号は、ディジタルモジュール82内の温度コンピュータ計算ユニット315によって用いられ、この温度コンピュータ計算ユニット315は、コンピュータ計算モジュール81にこの情報を提供する。
【0047】
最後に、第4のライン307は、処理ユニット12の入力に対応しており、この入力は、温度プローブ138からの出力電圧(周囲温度)を受け取り、アナログ/ディジタル変換後、この情報をディジタルモジュール内の温度をコンピュータ計算ユニット317に送ってこれをコンピュータ計算モジュール81の入力のところで表示するようにする。
したがって、コンピュータ計算モジュール81がその入力314,316,318で有効センサ加熱電力、ウェーハ32の温度及び温度プローブ138の周囲温度に関する情報を受け取ることにより、以下の順序で、測定された水素含有量、周囲温度、百分率水蒸気含有量(以下において説明する技術により又は図示されていない絶対湿度センサから得られる)及び4つの出力342,344,346,348のところの二酸化炭素(CO2)含有量の測定値を得ることができ、これらについては以下において説明する。
【0048】
或る特定の場合、センサは、ガス状媒体の水素濃度の関数として直接較正されるのが良い。別の成分がガス混合物中に存在している場合、2回目の測定が必要である場合がある。かくして、水蒸気の存在下において、2回目の測定を異なる加熱電力で実施する技術を用いることが可能であり、それにより、異なる平衡温度が得られる。水蒸気の熱伝導率は、水素の熱伝導率とは異なる温度依存性を有しているので、互いに異なる温度での2つの測定値の組み合わせにより、水蒸気の百分率を湿性ガスの実際の水素含有量と同時に計算することができる。上述したように、別の解決策では、高感度ユニット30に組み込まれる既知の形式のセンサ、例えば容量型測定原理で動作するセンサにより水蒸気含有量の直接的な特定の測定法を利用する。
【0049】
注目されるべきこととして、上述の技術では、追加のガスが混合物中に存在している場合、これらの濃度を測定することは簡単なことではない。極めて幸運なこととして、問題の用途では、水素及び二酸化炭素は、同時に存在しにくいことが判明している。これは、レドックス反応を含む現行技術の電気化学反応器では、熱伝導率が空気の熱伝導率、即ち、25℃における16.4mW/Kmよりも著しく小さい二酸化炭素の生成をもたらす腐蝕現象の原因となるものは、正確にいえば、水素が存在していないことである。したがって、水素の代わりに二酸化炭素の存在を計測する類似の技術を採用することが可能である。
【0050】
実際の反応器構造の説明に戻ると、図3は、マニホルド24と交差したセル25のスタック22を概略的に示しており、マニホルドの入口は、入口ライン40によって送られた加圧水素をチャンバ20から受け取る。マニホルド44もまた、アノード側の各セルのコンポーネントと反応接触状態におかれた後、各電気化学セル25の出口のところに集められる水分含有水素混合物を排出するためにスタック22と交差している。
【0051】
次に図5を参照すると、この図は、反応器の電気化学セル、例えば図1の燃料電池スタック10の電気化学セルの分解組立て図である。スタック22の各電解セル25は、例えばデュポン(DuPont)社により開発されてNafion(登録商標)という名称で販売されているポリマー材料から成る固体電解質メンブレン104に基づいて形成される。このメンブレンは、ガスを介して運ばれる水及び更にセル中の反応により生じる水により永続的に加湿される。このメンブレンの各フェース104‐fは、例えば薄い白金含浸黒鉛層(図示せず)から成る触媒と密な接触状態にある。このようにして被覆されたメンブレンは、各側がガス拡散層106‐1,106‐2とそれぞれ密な接触状態にある。
【0052】
組立体は、バイポーラ板と呼ばれている2枚の金属板108‐1,108‐2相互間に圧縮されており、各金属板は、反応物のガスのうちの一方をチャネル110‐1,110‐2の系を介してガス拡散層に接触させる役割を果たす。これらチャネルは、ガスで非常に長い曲がりくねった経路に沿って触媒を洗浄するよう各板のフェースのうちの一方にエッチングされている。ここで思い起こされるべきこととして、各板の他方のフェースも又、各セル中における冷却剤の循環を可能にするチャネル網を形成するようエッチングされる。水素ガス回路の1つ又は複数のチャネルは、電気化学セルのアノード側が加圧下で供給が行われ、マニホルド44の入口で終端するマニホルド24を備えた側の入口内に開口し、この出口は、従って、セル内でのこれらの通過中(及び同様に、他方のガス、即ち酸素ガスについてはマニホルド24′,44′に関し)メンブレンと接触状態にある反応物により吸収されなかったガスを運ぶ。各金属板108‐1も又、電気的に、電気化学反応から生じた電子を集めるアノード板を構成し、電子は、適当な導体を介して燃料電池スタックの出口に導かれ、該当する場合には、外部ユーザ負荷に導かれる。セルの各アノード板は、隣接のセルのカソード板108‐2に押し付けられ、かくして、これら2つのセルが互いに電気的に直列接続され、それによりセルスタックの出口のところに十分な電圧が得られる。かくして、電気化学セルは、各アノード板108‐1の他方の側に、酸化体又は酸化剤ガスを触媒と密な接触状態にあるセルに供給する金属カソード板108‐2を有する。
【0053】
図3を参照すると、純粋な又はほぼ純粋な加圧水素燃料のタンク50がオン/オフ出力弁51を有している。水素出力圧力は、ガスを膨張させて細かく制御される圧力レベルに低下させるために弁51の次に位置する比例電磁弁52によって制御される。この弁は、ベンチュリ管54を介してライン40に連結されている。膨張後のガスは、スタックの電気化学セル中に送られ、ここで、このガスは、大幅な圧力降下を生じる。注目されるべきこととして、水素流量は、このシステムによっては制御されない。動作原理を説明すると、燃料電池スタックは、吸い込み流を生じさせるために必要な量の水素を正確に「受け取る」。しかしながら、ガスが十分な圧力で送り出されるようにすることが必要である。この圧力調節を行うことが比例電磁弁52の役割である。変形例として、圧力を水素濃度センサ11により測定される水素濃度の情報の関数として調節するようにすることが可能である。各セル25内で消費されなかった水素は、セルの入力のところに存在する非水素不純物と一緒に、マニホルド44によって取り込まれ、それにより出力ライン62中に集められる。このラインは、凝縮器60内に開口しており、これらガス中に含まれる水蒸気のうちの幾分かは、この凝縮器で液化する。水は、凝縮器60の底部のところで抜き出されて水素回路内の圧力の影響を受けて燃料電池から出力ライン64を経て排出され、この出力ラインは、燃料電池の制御に割り当てられたコンピュータ制御ユニット80の制御下に置かれているアクチュエータ118によって作動される電磁弁114によって制御される。
【0054】
マニホルド44から来たガスは、次に、凝縮器60内での除湿後、凝縮器60からライン66を経て回収され、ライン66は、かかるガスを戻し又は再循環ポンプ74に送る。このポンプは、ベンチュリ管54の2次取り入れ口56に連結され、このベンチュリ管によって、取り込まれたガスは、ライン40中に再注入されてタンク50から来た新鮮なガスの流れと混合されるのが良い。
【0055】
上述のサイクルは、電磁弁114がパージ段階をトリガする時点まで続き、パージ段階の結果として、凝縮器60からのガスの一部分は、再循環されないで排出され、その目的は、ライン40、出力ライン62、ライン66、2次取り入れ口56、マニホルド24,44及びスタック22の各セル内の電解メンブレン104への供給を行うチャネルにより形成された水素回路中に存在するガス混合物中への再循環に起因して堆積する傾向のある非水素ガス不純物の量を減少させることにある。酸素回路(図示せず)に関し、一般に、燃料電池が酸化体回路中に酸素を用いる場合には再循環が行われない。酸素回路に純粋酸素を供給する場合、水素に関して図3に示された回路と同様な回路が再循環及び自動パージシステムを備えるのが良いが、熱伝導率に基づくガス濃度センサを用いる可能性がない。というのは、ガス混合物中に存在しやすいガスの熱伝導率は、互いに近すぎるからである。
【0056】
図3に示されているシステムの説明を終えるために、水素濃度センサ11は、図3の制御ライン120によって概略的に互いにまとめられている図4の出力342,344,346,348を介して制御ユニット80に接続されている。高い精度を得るため、電子処理ユニット12は、図2に示されているようにセンサの高感度ユニットのすぐ近くに配置されると共にチャンバ20の壁内に固定された同一のセンサ本体内に設けられている。マニホルド24の外壁内の水素濃度センサ11の横に並んで配置された圧力センサ125により送られるマニホルド24内のガス圧力の測定値は、別の制御ライン122を介して制御ユニット80に送られる。制御ユニット80から来た制御ライン124は、比例圧力調節電磁弁52を作動させるアクチュエータ58を制御するのに役立つ。最後に、制御ユニットは又、ポンプ74のモータに連結されていて、特にセンサ11,125により送られた測定値の制御下でポンプ74の回転速度を調節する制御ライン126を制御する。
【0057】
電気化学反応器業界、特に燃料電池業界では、少なくとも水素酸化体の場合、極めて純粋なガスを用いることが慣例である。しかしながら、ガスを収容したタンク50(図3)内の数種類の微量の不純物がガスを新鮮なガスの供給源を備えた燃料電池スタックの要素中に再循環させているときに堆積する。かくして、例えば、通常の温度及び圧力条件下において、当初別のガスから成る0.5%の不純物を含む水素ガスを毎分100リットル消費する燃料電池スタックでは、非水素不純物の通常の0.5リットルが毎分燃料電池スタックの燃料供給回路に入る。不純物は、短時間で堆積する場合がある。したがって、比較的頻繁な一定の持続時間の或る特定の間隔で水素出力回路をパージし、従って、要件によって厳格に正当化される量よりも場合によっては多くの量のガスを抽出することにより純度レベルを高いしきい値よりも高く維持することが必要である。
【0058】
本発明の観点のうちの1つによれば、水素ガス回路中の水素濃度センサ11により実施される純粋水素濃度の測定に従って水素回路のパージを制御するために電気化学反応器の周囲環境に適した水素含有量の測定技術を利用できれば有利である。動作中、モニタされている濃度が、水素ガス回路中の%水素ガス含有量が所定のしきい値を下回ったことを示す所定レベルに達した場合、制御ユニット80は、パージ電磁弁114の制御装置115に作用して水素ガス回路のパージ条件を変更する。
【0059】
制御ユニット80は、この例では、燃料電池の適正な動作を行ううえでの限界と考えられる非水素不純物含有量に対応した低いしきい値に対してマニホルド24の水素濃度をモニタするよう動作的にプログラムされている。かくして、現在における標準のやり方に続き、水素含有量が99%を超えている場合、パージ電磁弁114を最小限の頻度で且つ最小限の持続時間で開き、それにより水素を無駄にすることなく過剰の水を除去する。しかしながら、制御ユニットによりこの水素含有量が水素濃度センサ11により送られた情報に基づいて99%を下回っていることが検出されると、凝縮器60の抽出出力ライン64に設けられているパージ電磁弁114の開放頻度を増大させる。水素ガス回路中に含まれているガスの補給のために2回のパージ相互間でセンサにより検出される水素含有量が上昇するやいなや、制御ユニットは、パージ電磁弁114の開放頻度を再び減少させる。当然のことながら、例えば一定間隔でパージをトリガし、開放持続時間を変化させることによりパージ機能を異なる仕方で制御するために水素濃度センサ11を用いることが可能である。
【0060】
本明細書では、熱伝導率に基づく水素濃度センサ11によって要件に応じて連続的に又はほぼ連続的に現場で実施される測定に従って回路パージ手順を制御することによって燃料電池の動作をほぼ最適状態に維持するために燃料電池内の主ガス回路をパージするシステムの有利な実施形態について説明したが、その具体例については図2と関連して説明してある。理解されるように、この構成により、タンク内に貯蔵され又は反応器それ自体の雰囲気中に貯えられている酸化体ガスの実際の汚染レベルに従って燃料電池スタックの入口のところの純粋水素の消費量を最適化することが可能である。事実、一般に推奨されている構成とは対照的に、燃料電池スタックにこれを損なう恐れなく低純度の水素を供給する可能性を提供している。ガスを生成させるコストは、所望の純度につれて大幅なばらつきがあるので、低純度の水素を用いることができるということは、燃料電池スタックの開発を促進するうえで相当な経済上の利点である。
【0061】
別の観点によれば、上述した例えば符号11で示されているガス濃度センサは、動作停止中及び次の休止又は貯蔵期間中、システムの健全性を維持するために、場合によってはちょうど説明したばかりのパージ制御機能に伴って燃料電池内で用いられる。具体的に説明すると、制御ユニット80は、水素濃度センサ11による制御された定期的測定に基づいて燃料ガス回路の水素含有量をモニタし続けると共に水素が常時存在するかどうかをチェックするようプログラムされている。上述したモデルで動作する燃料電池スタックに対する実験結果の示すところによれば、事実、スタックの或る特定の要素、特に炭素を含む要素、例えば黒鉛を主成分とする触媒支持体を潜在的にほぼゼロに又はゼロに等しい状態に維持しなければならない。この条件は、これらの要素が水素で包囲される限り満たされ、水素の電気化学ポテンシャルは、ゼロである。もしそうでなければ、電気化学ポテンシャルは、酸素がゆっくりと、しかしながら矯正できない状態で、空中に貯蔵されている燃料電池の電気化学セルの環境に入り込むので、約1ボルトまで上昇する。この状態は、黒鉛要素の酸化に好都合な電気的条件を作り、かくして、システムの動作にとって極めて重要な部分を破壊しがちである。
【0062】
本出願人は、例えば符号11で示されている熱伝導率センサが燃料電池動作停止段階中又はその後の休止期間中、酸化に敏感な要素の環境が水素涸渇状態になるのを阻止するために燃料電池の水素回路中で考慮に入れられるべき比較的低い濃度(数パーセント)しきい値の検出にも極めて向いていることを確認することができた。この状態の発生を阻止するため、動作停止手順は、有利には、水素濃度センサ11により送られる水素濃度情報に従って実施されるのが良い。動作停止に続く休止段階中、水素濃度センサ11は、測定を実施するよう定期的に起動される。例えば、制御ユニットが水素濃度センサ11により送られた情報中にかかる状態が間近に迫っていることを検出した場合、制御ユニットは、制御ライン124を介して、純粋水素取り入れ弁の開放をトリガし、それにより動作停止の際又は貯蔵状態で、反応器の燃料回路中の水素含有量をプログラムされたレベルに再び確立する。
【0063】
変形実施形態によれば、凝縮器60から出た出力ライン64は、小型バッファタンク170に連結されており、このバッファタンクは、通常、パージ中に燃料電池から排出された燃料ガスの圧力に維持される。燃料電池が動作停止モード又は待機状態にあるとき、水素回路内の内部圧力は、最低ほぼ大気圧に等しい圧力まで下げられる。制御ユニット80が電磁弁114を一時的に開くためにアクチュエータ115を作動させると、圧力差により、小型バッファタンク170からの或る量のガスが凝縮器60を通って水素ガス中に流れ、それにより水素含有量を適当なレベルに再び確立する。本出願人は、更に、出力ライン64が電磁弁114から十分遠くに延びる場合、出力ラインは、それ自体、電磁弁114が開くようにされると、所望の最小水素含有量を再び確立するのに十分なバッファ予備手段を構成することができるということを発見した。
【0064】
例えば符号11で示されているセンサを用いた燃料電池の制御の考えられる一観点によれば、制御ユニットは、この例では、水素回路のマニホルド24に流入したガスの水蒸気含有量の測定値をもたらすようプログラムされている。思い起こされるように、入力ライン40を経てこの回路に入ったガスは、タンク50から来た純粋乾燥水素ガスと場合によってはポンプ71によって支援されるベンチュリ管を経て再循環されたガスの混合物により生じる。水が燃料電池中における電気化学反応の生成物のうちの1つであることを知ったうえで、ライン66内の凝縮器から出たガスは、水分で飽和している。したがって、マニホルド24の入口26に流入したガスの含水量は、混合物の計量によって調整されるのが良い。このパラメータは、燃料電池の動作にとって重要である。というのは、燃料化学反応の現場である固体メンブレン電解質は、最適に動作することができるようにするためには濡れたままでなければならないからである。その結果、処理ユニット12の制御下において、水素濃度センサ11は、周囲温度に対する温度差T1,T2での第1及び第2の熱伝導率測定を行い、これら熱伝導率測定から、制御ユニットによって純粋酸素の熱伝導率及び水蒸気含有量を別の特定のセンサ、例えば容量型センサにより出力しても良い。各場合、制御ユニット80は、再循環ポンプの速度を調節して含水量を固体電解質メンブレンの正確な動作に好ましい所望の範囲内に維持する一方で、依然として、マニホルド24に流入するガスの水素含有量を適当なレベルに維持する。
【0065】
燃料電池スタック10内に例えば符号11で示された2つのガス濃度センサを用いることが有利である場合がある。図1は、水素燃料回路の入口のところの水素濃度センサ11に加えて、酸素(又は加圧空気)を送り出す酸化体回路の入口のところに設けられていて、水素濃度センサ11と同一であるのが良い第2の水素濃度センサ11′を示している。カソードに送られるガスの含水量の測定のため、水素濃度センサ11′を用いて酸素回路から測定値を取るのが有利な場合がある。再循環ガスは、水素回路(アノード回路)側よりも酸素回路(カソード回路)側の方がより多くの水を取り込む。
【0066】
最後に、好適な用途によれば、例えば符号11で示された水素濃度センサにより、適宜、酸素回路中の二酸化炭素の存在による腐蝕の発生を検出することができる。二酸化炭素の熱伝導率は、熱伝導率が極めて似通っており、当然のことながら水素の熱伝導率よりも更に低い多くのよく見受けられるガス、特に窒素や水素の熱伝導率と比較して低いことが知られている。燃料電池スタック10内に例えば符号11で示された2つのガス濃度センサを用いることが有利な場合がある。図1は、水素燃料回路の入口のところの水素濃度センサ11に加えて、酸素(又は加圧空気)を送り出す酸化体回路の入口のところに設けられていて、水素濃度センサ11と同一であるのが良い第2の水素濃度センサ11′を示している。2つの回路相互間の透過性における欠陥部、例えばメンブレンに開いた穴を検出するため、センサ11により、水素中の酸素の存在を検出することができ、他方、センサ11′により、酸素中の水素の存在を検出することができる。一方のガスの他方のガスへの拡散が安全性を損ないがちなので、この情報の冗長度をもたらすことが有利である。
【0067】
最後に、好適な用途によれば、例えば符号11で示された水素濃度センサにより、適宜、酸素回路中の二酸化炭素の存在による腐蝕の発生を検出することができる。二酸化炭素の熱伝導率は、熱伝導率が極めて似通っており、当然のことながら、水素の熱伝導率よりも更に低い多くのよく見受けられるガス、特に窒素や水素の熱伝導率と比較して低いことが知られている。燃料電池スタック10内に例えば符号11で示された2つのガス濃度センサを用いることが有利な場合がある。これらガスの熱伝導率が分かれば、水素濃度センサ11又は11′をプログラムしてガス混合物の二酸化炭素含有量を計算し、かくして、水素濃度センサによる測定に基づいて非常に僅かな量のCO2の存在を検出することが容易である。
【0068】
アノード側では、高い水素濃度を有するガスの流れは、接触状態にある部品についてゼロのポテンシャルを示唆し、従って、十分な水素が存在する限り腐蝕の恐れを回避する。その結果、燃料電池の動作停止時に上述の予防措置がとられた場合、腐蝕の恐れは、適正に制御下にある。したがって、この場合、水素濃度センサ11又は11′により提供される追加の能力は、特に燃料電池システムの研究及び開発段階において最も利用度が高い。しかしながら、かかる能力は、相当な安全性の補助手段となる。
【0069】
図6は、電気供給源から水素及び酸素を製造するために用いることができる工業用電解装置を極めて概略的に示している。この種の用途の場合、生じたガスが良好な品質のものであるようにすることが重要である。生じたガスが意図した用途を考慮してできるだけ純粋であることが重要であるだけでなく、これらガスの性状そのものにより、かかる混合物は、財産及びオペレータの安全性にとって非常に有害である場合がある。この種の装置では、水素回路は、カソード板の小型ガスチャネルの出口の全てを互いに連結してこれらをスタックの水素出口に接合するためのマニホルドを有する。同様に、酸素マニホルドは、スタックの要素セルのカソード板の酸素出口をこの装置の外部に位置した出口に連結する。各回路では、生じたガスは、高い又は低い純度のものである場合がある。というのは、生じたこれらガスの一部分は、集められる前に電解質中に拡散するからである。さらに、漏れがあると、回路相互間で水素と酸素の交換が生じる場合があり、これは、検出されなければ、水素/酸素混合物の爆発の深刻な危険をもたらす場合がある。
【0070】
本発明のこの観点(図6)によれば、熱伝導率に基づく2つの水素濃度センサが用いられ、一方のセンサ211は、アノード側の酸素出力マニホルド(図では見えない)を備えたセルのスタックによって形成されている反応器本体中に組み込まれたシステム端板215内のチャンバ217内に設けられ、他方の水素濃度センサ212は、カソード側で、水素マニホルド(見えない)の出口のところで反応器本体に一体化されたシステム端板216内のチャンバ237内に設けられている。したがって、これらセンサのうちの一方は、少量の水素ガス濃度を測定し、他方のセンサは、高い濃度を測定する。この場合の一利点は、ガスサンプルを間欠的に又は連続的に除く必要なく、電解装置内で直接生じたガスの量を測定することができるということにある。
【0071】
図6では、電解装置200は、要素電気化学セル225のスタック220を有している。これら電気化学セルには、水が供給され、水は、電気化学セルを通って流れる電流の影響により触媒の存在下で水素と水に分解される。スタック220は、2枚のシステム端板相互間にクランプされ、システム端板のうちの一方215は、分離エンクロージャを閉鎖し、この分離エンクロージャの上方部分は、セル225のスタックから来た酸素を受け入れるチャンバ217を形成している。他方のシステム端板216は、分離エンクロージャを閉鎖し、この分離エンクロージャの上方部分は、セル225中における反応に起因して生じた水素を受け入れるチャンバ237を形成している。これらシステム端板の各々内において、分離エンクロージャの底部は、スタック220内のセル225に水を供給するためのマニホルド(見えない)の入口226,227中に開口している。 ダクト218から来た分離板215内に集められた酸素は、回路中に入っている水から分離され、水は、分離エンクロージャ217の底部に集まって入口226のところで電解装置内に再循環される。分離エンクロージャ217の上方部分のチャンバ217は、生じた酸素を抜き出すコック230を有する。水素濃度センサ211の高感度ユニット223は、このチャンバ217の上方部分内に開口しており、この高感度ユニットは、生じた酸素ガスの純度をチェックすると共に%水素含有量が安全しきい値を超えて上昇する潜在的に危険な状態を前もって検出するために用いられる。同様に、セル内で生じた水素は、スタック220から来たダクト228を経てシステム板216内に形成されている分離チャンバ内に送り込まれる。システム板216の分離エンクロージャの底部に溜まった水は、スタックのセル225に水を供給するマニホルド(見えない)の入口227に再循環される。システム板216内に導入された水素は、システム板216の上方部分内のチャンバ237内に溜まる。水素濃度センサ212の高感度ユニット233は、このチャンバ237内に開口し、この高感度ユニット233は、生じた水素ガスの純度をチェックするために用いられ、かかる水素ガスは、抜き取りコック230を経て排出されるのが良い。反応は、発電機によって電気エネルギーが供給され、この発電機には、アノード回路側の集電板235及びカソード回路側の集電板236が連結されている。
【0072】
したがって、上述した内容は、電気化学反応器、燃料電池スタック又は電解装置用の作動制御システムであり、この制御システムは、反応器の本体内に組み込まれたチャンバの外部にサンプルを取り出す必要がなく又は反応器の作動を停止させる必要なく、この装置の連続作動に好適である。電気化学反応器及び水素が関与するレドックス反応器の特定の環境における熱伝導センサの汎用性、動作上の融通性、広い感度範囲及び優れた応答時間により、この種のセンサは、貴重なツールになる。このセンサは、水素濃度、場合によっては、モニタする媒体中の他のガス、特に二酸化炭素CO2の水素濃度を測定し、単純且つ経済的な仕方で、電気化学反応器の動作条件及びパラメータを管理するのに特に効果的である。これが特にそうである場合は、センサの単一の機能の管理に対するかかる測定法の利用に甘んじることなく、本発明は、燃料電池スタックを待機状態に維持すると共に連続動作時にその性能を維持するための条件で、スタックの稼働に対して影響を及ぼしがちな幾つかのパラメータを同時に又は互いに付随して制御するために上述のことから恩恵を受ける場合である。熱伝導率の測定に基づくガス濃度センサを用いることによって、かかる電気化学プロセスを制御する相当多くの機能を実行することが可能である。また、このシステムにより、電解装置の場合に送り出されるガスの量をモニタすると共にその動作上の安全性を永続的にチェックすることができるようにすることができる。
【0073】
当然のことながら、本発明は、図示すると共に説明した実施形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、これら実施形態の種々の改造例を想到できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応器、例えば燃料電池スタック又は電解装置であって、電気化学セル(25)のスタック(22)を有し、各電気化学セルは、電解質と電気的接触状態にある一フェースを備えた少なくとも1枚の電極板(108‐1)と、前記スタックの外部とガス交換する交換回路中において前記電気化学セルの各々の前記フェースに接続された少なくとも1つのマニホルド(24)と、前記交換回路中の前記ガスの組成の影響を受けるセンサ(11)と、特に前記センサの制御下において前記反応器の状態をモニタする少なくとも1つの手段とを有する、電気化学反応器において、前記セルのスタック及び前記マニホルドは、一体形反応器本体(15)を形成し、前記反応器本体は、前記マニホルドと連通関係をなして前記本体内に組み込まれた少なくとも1つのチャンバ(20)を有し、前記ガス組成センサ(11)は、前記一体形本体内に設けられ、前記ガス組成センサは、前記チャンバ(20)内の前記ガスの成分の現場濃度に直接さらされる高感度ユニット(30)を含む、電気化学反応器。
【請求項2】
前記チャンバは、システム板(17)内に形成され、前記システム板は、前記スタックの端セルと並置関係をなしていて、前記マニホルド(24)が前記マニホルドを挿通させる前記セルのスタックを出ると開口する第1のフェース(29)と、前記第1のフェースと反対側に位置していて、前記ガス回路の1つ又は2つ以上の要素を前記本体(15)の外側に固定する支持体を形成する第2のフェース(19)とを有する、請求項1記載の電気化学反応器。
【請求項3】
前記ガス組成センサ(11)は、前記支持板(17)の壁(27)内に設けられ、前記ガス組成センサは、前記壁(27)の内側に、前記チャンバ(20)の雰囲気と連通したキャビティ(36)を包囲している中空端部品(31)を有し、前記チャンバ(20)内の前記ガスの成分の現場濃度の影響を受ける前記ユニット(30,32)は、前記キャビティ(36)内に収容されている、請求項2記載の電気化学反応器。
【請求項4】
前記中空端部品(31)内に前記高感度ユニット(30,32)を収容した前記キャビティ(36)は、ガス密及び液密仕切り(75)により前記センサの一部分(48)に形成されている別のチャンバから隔離されており、前記部分(48)は、前記高感度ユニットからの信号を処理する処理ユニット(12)が収納されている前記チャンバ(20)に対して前記壁(27)の外側に設けられている、請求項3記載の電気化学反応器。
【請求項5】
前記高感度ユニット(30,32)から来た導体(46)が前記仕切り(75)を密封的に貫通しており、前記仕切り(75)は、前記キャビティ(36)と前記センサ(11)の前記他のチャンバとの間の差圧に耐える、請求項4記載の電気化学反応器。
【請求項6】
前記高感度ユニット(30,32)は、ガスを通すが水を通さないフィルタ(37)によって前記チャンバ(20)の雰囲気から隔離されている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項7】
前記ガス組成センサ(11)は、前記チャンバ内のガス混合物の水素含有量で決まる測定値を送り出すために、その高感度ユニット(30,32)が浸漬されているガスの熱伝導率の変化の影響を受ける、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項8】
前記一体形本体(15)は、前記スタックの前記セルを第2のガス回路中で前記本体中に組み込まれた第2のチャンバに連結する第2のマニホルド(24′)と、前記一体形本体(15)内に設けられていて、前記第2のチャンバ内のガスの成分の現場濃度に直接さらされる高感度ユニットを備えた第2のガス組成センサ(11′)とを有する、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項9】
前記処理ユニット(12)は、前記本体に固定されるのに適した前記高感度ユニット(30)のすぐ近くに配置されている、請求項1又は2記載の電気化学反応器。
【請求項10】
前記ガス組成センサは、前記高感度ユニット(30,32)の環境中の二酸化炭素濃度を検出するのに適している、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項11】
前記センサは、前記センサが浸漬されているガスの熱伝導率の変化の影響を受け、前記熱伝導率は、対応のガス回路中の水素濃度及び前記ガス回路中の水蒸気濃度で決まり、前記センサは、前記高感度ユニットの環境中の水蒸気濃度を求めるために、前記高感度ユニットの前記環境中の熱伝導率の幾つかの測定値を種々の加熱温度に基づいて制御するのに適した制御装置を有する、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項12】
前記ガス組成センサ(11)は、前記ガス組成センサが浸漬されているガスの熱伝導率の変化の影響を受け、前記熱伝導率は、対応のガス回路中の水素濃度及び前記ガス回路中の水蒸気濃度で決まり、前記反応器は、前記組み込まれたチャンバ内のガスの湿度の影響を直接受ける第2のセンサと、前記ガス組成センサ及び前記湿度センサの制御下において前記チャンバ内の水素濃度の測定値を送り出すのに適した処理装置とを更に有する、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の電気化学反応器。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の電気化学反応器で構成された燃料電池スタックにおいて、前記センサ(11)は、水素ガス回路内に設けられ、前記水素ガス回路は、少なくとも部分的に水素源から来た水素ガスを前記燃料電池スタックの入口ダクト中に導入する前記組み込みチャンバと、前記電気化学セル中の反応後に前記スタックの出口のところに位置する水素ガス取り込みラインと、前記取り込みラインから来た前記水素ガスの少なくとも何割かを前記組み込みチャンバ内に注入する注入装置と、前記組み込みチャンバ内の水素濃度を所定の純度レベルよりも高く維持するために前記ガス組成センサ(11)により制御される制御ユニットの作用下にある前記取り込みラインのパージ弁(114)とを有する、電気化学反応器で構成された燃料電池スタック。
【請求項14】
前記燃料電池スタックは、シャットダウン段階中及び/又はエネルギーが作られない待機状態において前記水素ガス回路中の前記水素濃度センサ(11)に応答して水素濃度を所定のしきい値よりも高く維持する警告又はモニタ手段を有する、請求項1〜12のうちいずれか一に記載の電気化学反応器で構成された燃料電池スタック。
【請求項15】
前記燃料電池スタックは、酸素ガス中の水素の存在を検出することができるよう酸素回路内に設けられた第2のガス濃度センサ(11′)を有する、電気化学反応器で構成された燃料電池スタック。
【請求項16】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の反応器で構成された電解装置(200)であって、水素ガス回路が水素セパレータ(237)を有し、前記水素セパレータは、前記反応器本体中に組み込まれると共に電気化学セル(225)のスタックの要素セルのカソードのガス出口に連結されたチャンバを有する、電解装置において、前記ガス組成センサ(212)は、前記水素ガス中で生じた水素の濃度に依存する少なくとも1つの信号を前記制御ユニット(80)に送るよう前記チャンバ内に設けられている、電解装置。
【請求項17】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の反応器で構成された電解装置であって、酸素ガス回路が酸素セパレータ(217)を有し、前記酸素セパレータは、前記反応器本体中に組み込まれると共に電気化学セルのスタックの要素セルのアノードのガス出口に連結されたチャンバを有する、電解装置において、水素組成センサ(211)が前記酸素ガス回路内に存在する水素の濃度に依存する少なくとも1つの信号を前記制御ユニット(80)に送るよう前記チャンバ内に設けられている、電解装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−506240(P2013−506240A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530268(P2012−530268)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064109
【国際公開番号】WO2011/036236
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】