説明

作業支援システム

【課題】作業者から見た作業対象品の向きに合せて、モニタ画面上の作業対象品画像の向きを自動的に変えて作業性を向上させる。
【解決手段】作業架台1上の鉛直軸回りに回転可能に設けられ作業対象品7が載置される作業台2と、作業指示情報を作業対象品の画像とともに画面に表示するモニタ3と、作業対象品に着脱可能に又は作業台の縁部に設けられた無線ICタグ5と、作業台の周縁部に設定角度ピッチで円周状に配置された無線ICタグリーダ・ライタ6と、無線ICタグリーダから出力される自己の角度位置情報を含むタグ検出情報に基いて作業対象品の回転角度を検出し、回転角度に合せてモニタ画面上の作業対象品の画像を回転して表示させることにより、違和感なくモニタ画面を見て作業をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援システムに係り、特に、製品や部品の組立工程における作業者の作業を支援して作業効率を向上させるのに好適な、作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような作業支援システムの一例として、特許文献1には、プリント板組立の作業を支援するために、組立に必要な部品の組み込み方法、組み込み順番、組み込み作業に使用する治具番号、組み込み上の注意事項などの細かな作業指示情報を記載した作業指示情報をモニタなどの画面上に表示することが提案されている。また、モニタなどの画面上に、作業指示に関連する基板や部品の形状の画像を表示するようにすることが提案されている。また、特許文献2には、作業の進み具合に対応して最適な作業指示情報及び組立対象の図面を作業者に提示するようにすることが提案されている。
【0003】
このようなモニタ画面に表示する作業指示情報や図面は、設計で作成したCADデータあるいはその他の基準に従って決められており、例えば、モニタ画面上の組立対象の図面画像の表示角度、すなわち画像も向きは予め決められた向きに固定されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−187402号公報
【特許文献2】特開平10−301472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、作業者は、作業がしやすい向きに作業対象品を回転させて作業することが多いから、作業者から見た作業台上の作業対象品の向きと、モニタ画面上の作業対象品の画像の向きが異なることがある。この場合、作業者はモニタ画面上の画像及び作業指示を見ながら作業台上の作業対象品に指示に従った作業をすることになるが、作業対象品の向きと、モニタ画面上の作業対象品の画像の向きが異なると、その向きを修正した想像に基いて作業をしなければならず、混乱することがある。
【0006】
そこで、例えば、モニタ自体を回転させて作業対象品と同じ向きに作業対象品の画像を回転させることが考えられるが、手に持っている作業対象品を一旦他の作業台に置いてから、モニタ自体を回転させなければならず、作業を中断することになるから、作業効率が悪く、かつ煩わしいという問題がある。また、作業対象品を一旦他の作業台に置く場合に、作業対象品を誤って落としたりするおそれがある。
【0007】
また、作業指示情報などの図面が記載された図書を、作業角度と同じ角度に回転させてクリップなどで固定し作業を行うことも考えられるが、手に持っている作業対象品を一旦他の作業台に置いてから行なう必要があるため、同様の問題がある。
【0008】
さらに、表示する作業対象の画像の向きを、0度、90度、180度、270度などに回転させた複数の画像を用意しておき、必要に応じて切り替えて表示することが考えられるが、複数の画像データを作成する時間がかかるだけでなく、作業時に複数の画像データから作業対象品の向きに合わせた画像を選び出さなければならないから、作業性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、作業者から見た作業対象品の向き(回転角度)に合せて、モニタ画面上の作業対象品画像の向きを自動的に変えて作業性を向上させた作業支援システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の作業支援システムは、作業架台上の鉛直軸回りに回転可能に設けられ作業対象品が載置される作業台と、前記作業対象品の作業指示情報を前記作業対象品の画像とともに画面に表示するモニタと、前記作業対象品に着脱可能に又は前記作業台の縁部に設けられた無線ICタグと、前記作業台の周縁部に対向させて前記作業架台上に設定角度ピッチで円周状に配置され、前記無線ICタグと交信して自己の無線ICタグリーダの角度位置を含むタグ検出情報を出力する複数の無線ICタグリーダと、前記無線ICタグリーダから出力されるタグ検出情報に基いて前記作業対象品又は前記作業台の回転角度を検出する回転角度検出手段と、該回転角度検出手段により検出された回転角度に合せて前記モニタ画面上の前記作業対象品の画像を回転して表示させる画像回転手段を備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
このように構成されることから、まず、作業者はモニタ画面に表示された作業指示情報に従って、指定された作業対象品を部品置場から取り出して作業台の上に載置する。このとき、モニタ画面に表示された作業対象品の画像(以下、適宜、モニタ画像という。)の回転角度(向き)にほぼ合せて作業対象品を作業台上に載置する。そして、作業台又は作業対象品に無線ICタグを取り付け、無線ICタグが取り付けられた角度位置が基準角度位置として定義される。このとき、設定角度ピッチ(例えば、90°ピッチ)で円周状に配置されている無線ICタグの1つが作業台の0°位置(例えば、モニタ画像の上下、左右に合せて上向きを0°とする。)に配置されていれば、無線ICタグリーダが無線ICタグと交信し、このとき交信した無線ICタグリーダから出力される自己の無線ICタグリーダの角度位置を含むタグ検出情報に基いて、回転角度検出手段により作業対象品の回転角度位置が認識される。
【0012】
その後、作業者が作業対象品の回転角度(向き)を作業しやすい回転角度に作業台を回転すると、作業台とともに無線ICタグの位置が回転していずれかの無線ICタグリーダの位置を通過する。その通過の際に無線ICタグリーダが無線ICタグと交信し、このとき交信した無線ICタグリーダから自己の無線ICタグリーダの角度位置を含むタグ検出情報が出力されるから、回転角度検出手段により作業対象品の基準角度位置からの回転角度を検出することができる。これにより、検出された作業対象品の回転角度に合わせて、画像回転手段によりモニタ画面上の作業対象品のモニタ画像が回転して表示される。
【0013】
したがって、本発明によれば、作業者から見た作業対象品の向き(回転角度)に合せて、モニタ画面上の作業対象品のモニタ画像の向きが自動的に変わることから、作業者はモニタ画像を見ながら違和感なく作業対象品に対する作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。つまり、思考上で角度変換処理を行う煩わしさがないことから、作業効率を向上させるとともに、作業の誤りを低減できる。
【0014】
一方、組立工程には、作業対象品を塵埃から保護するためのコーティング剤を塗布する工程があるが、従来は、モニタ画像に塗布領域を指示する情報が表示されるだけであり、作業対象品を作業しやすい向きに回転すると、モニタ画像との向きの違いにより、上述したと同様に作業がやりにくいという問題があった。この点、本発明によれば、作業者から見た作業対象品の回転角度に合せて、モニタ画像の回転角度が自動的に変わることから、作業者はモニタ画像を見ながら違和感なく塗布領域に対して塗布作業を行うことができる。したがって、塗布作業中にモニタ画像の回転角度に合せて作業対象品を持ち替えるなどの作業が不要になるから、持ち替え時に誤ってコーティング剤を指などで触れたりして不良を作り込む要因を除くことができる。
【0015】
ところで、組立を行った作業対象品の作業の適否を確認する方法として、作業工程ごとに作業者がモニタ画面に基いて確認するとともに、更に別工程で同じ確認を行っていることから。チェック作業が重複化して作業効率が悪いという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、上記の構成に加えて、さらに、前記作業対象品の指定された領域に手作業でコーティング剤を塗る塗布具に設けられ該塗布具に加わる塗布圧力を検出する圧力検出器と、前記作業対象品の指定された領域を撮像するTVカメラと、前記圧力検出器により検出された塗布圧力が設定値以上のときに前記TVカメラで撮像された前記塗布具の動きを追跡して前記塗布具の軌跡を求める塗布具追跡手段と、該塗布具追跡手段により求められた前記塗布具の軌跡に基いて前記モニタの前記作業対象品の画像に前記コーティング剤の塗布実施領域の画像を重ねて表示する塗布画像生成手段とを備えて構成することができる。この場合において、前記塗布具追跡手段は、前記塗布具に表示されたマークを追跡する構成にすることができる。
【0017】
又は、さらに、前記作業対象品の指定された塗布領域に手作業でコーティング剤を塗る塗布具に設けられ該塗布具に加わる塗布圧力を検出する圧力検出器と、前記塗布具に取り付けられた無線ICタグと、該無線ICタグと交信した前記複数の無線ICタグリーダから出力されるタグ検出情報に基いて前記塗布領域に対応する前記塗布具の2次元位置を求める塗布具位置検出手段と、前記圧力検出器により検出された塗布圧力が設定値以上のときの前記塗布具位置検出手段で検出された前記塗布具の位置変化の軌跡に基いて、前記モニタの前記作業対象品の画像に前記コーティング剤の塗布実施領域を重ねて表示する塗布画像生成手段とを備えて構成することができる。
【0018】
これらによれば、コーティング剤を塗る作業を自動で確認できるから、確認作業を効率化することができる。例えば、塗布作業が終了した領域に対応するモニタ画像の領域の色を塗り潰すことにより、作業完了箇所が明確になり、作業済又は未作業済を容易に判断できる。この場合、さらに、入力される作業確認指令に基いて、前記塗布実施領域と前記指定された塗布領域を比較し、塗布漏れがある場合は警報を出す塗布作業確認手段を設けることが望ましい。これによれば、塗布作業の作業終了時点で作業完了を確認することにより、作業漏れを判別することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作業者から見た作業対象品の向きに合せて、モニタ画面上の作業対象品画像の向きを自動的に変えて作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の作業支援システムを実施形態に基いて説明する。
(実施形態1)
図1、図2に、本発明の作業支援システムの実施形態1の概要構成図を示す。図示のように、本実施形態の作業支援システムでは、作業架台1の上面に作業台2が載置されている。作業台2は、作業架台1の鉛直軸回りに回転可能に設けられている。また、作業架台1の上面の奥側に作業対象品の作業指示情報と、作業対象品の画像を画面に表示するモニタ3が設けられている。モニタ3はコンピュータから構成される作業指示システム4により、作業指示システム4が保有する作業指示情報及び作業対象品の画像が必要に応じて切り替え表示されるようになっている。
【0021】
また、矩形の作業台1の上辺の縁部に無線ICタグ5が取り付けられている。さらに、回転される作業台1の周縁部に対向させた位置の作業架台1上に、複数(図示例では4個)の無線ICタグリーダ・ライタ6(a〜d)が設定角度ピッチ(図示例では、90°ピッチ)で円周状に配置されている。無線ICタグリーダ・ライタ6は電波を出して、無線ICタグ5が起電されるようになっている。例えば、無線ICタグリーダ・ライタ6は無線ICタグ5と交信可能な距離が設定されており、通常は、無線ICタグ5が無線ICタグリーダ・ライタ6の一つに近接したときに、無線ICタグ5が起電されるようになっている。起電された無線ICタグ5と交信した無線ICタグリーダ・ライタ6は、例えば、図3に示すように、管理番号11、作業台コード12、角度コード13を含むタグ検出情報14を、図示していない伝送路を介して作業指示システム4に伝送するようになっている。ここで、角度コード13は、無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dが設置された作業台2に対する角度位置を定義する角度情報であり、例えば、図1のように、モニタ3に表示される作業対象品の画像の上向きを0°とし、無線ICタグリーダ・ライタ6aが設置された回転角度位置を基準角度0°として、無線ICタグリーダ・ライタ6b〜dの角度位置が定義されている。
【0022】
作業指示システム4は、各無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dから出力されるタグ検出情報14に基いて、作業台2の回転角度を検出する回転角度検出手段と、回転角度検出手段により検出された回転角度に合せてモニタ3の画面上の作業対象品の画像を回転して表示させる画像回転手段を備えて構成されている。
【0023】
また、作業架台1上には、作業対象品である例えばプリント板7を収容する部品置場8と、コーティング樹脂が入れられたパレット9と、コーティング樹脂を塗布する塗布具10、例えば、筆10a又は刷毛10bが用意されている。
【0024】
このように構成される実施形態の詳細構成について動作とともに説明する。なお、作業の一例として、プリント板7にコーティング剤を塗布する作業を支援する場合を説明する。まず、モニタ3のモニタ画像に表示された作業指示情報に従って、プリント板7を作業台2の上にセットする。このとき、作業台2の無線ICタグ5を無線ICタグリーダ・ライタ6aの位置に合わせておき、プリント板7の向きをモニタ3のプリント板画像の向きに合せて作業台2上に載置する。また、モニタ画像に表示された作業指示情報には、プリント板7に実装されたコーティング対象部品やコーディング仕様といった作業指示情報が表示されている。作業者は、モニタ3に表示されているコーティング対象部品やコーティング方法の作業指示情報を見て、指示の通り、コーティング剤を塗布するために塗布具10を手に持ち、コーティング剤が入ったパレット4に塗布具10を浸して、コーティング剤を染み込ませる。次いで、モニタ3に表示されている作業指示情報を確認しながら塗布作業を行う。
【0025】
この作業中に、プリント板7に実装された部品の制約や作業のやり易さからプリント板7の向きを変更したいとき、作業者はプリント板7をセットしている作業台2を手で押して回転をさせる。このとき、作業台2に搭載された無線ICタグ5が近接した無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dの1つで読込まれる。無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dは、無線ICタグ5を認識すると、作業指示システム4に読み取ったタグ検出情報14を作業指示システム4に送信する。
【0026】
作業指示システム4は、タグ検出情報14に含まれる角度コード13に基いて作業台2の回転角度を検出する。すなわち、図4のフローチャートに従って、作業台2が回転したことを、例えば無線ICタグリーダ・ライタ6aからのタグ検出情報14が喪失したことにより検知し(ステップS1)、続いて他の無線ICタグリーダ・ライタ6b〜dからタグ検出情報14を取り込み(ステップS2)、取り込んだタグ検出情報14の角度コード13が異なれば作業台2が回転されたと判断し(ステップS3)、そのとき入力されたタグ検出情報14の角度コード13に基いて作業台2の回転角度位置を検出する(ステップS4)。そして、検出した作業台2の回転角度に合せてモニタ3のプリント板画像を回転させる指令を画像回転手段に出力し(ステップS5)、画像回転手段によってモニタ3の表示画像が回転され、作業者から見たプリント板7の状態とモニタ3のプリント板画像が同じ角度になる。
【0027】
以上述べたように本実施形態によれば、作業台上の作業対象品の角度に合せて、モニタ画面上の作業対象品のモニタ画像の向きが自動的に変わることから、作業者はモニタ画像を見ながら違和感なく作業対象品に対する作業を行うことができる。その結果、思考上で角度変換処理を行う煩わしさがないことから、作業効率を向上させるとともに、作業性を向上させることができ、作業の誤りを低減できる。
【0028】
なお、本実施の形態では、無線ICタグ5を作業台2に取り付ける例について説明したが、本発明はこれに限らず、図5に示すように、作業対象品であるプリント板7にクリップなどで着脱自在に取り付けるようにしても、同一の効果を得ることができる。この場合、プリント板7の向きと、モニタ3に表示されているプリント板画像の向きを合わせて、プリント板7の基準角度位置(例えば、0°)に無線ICタグ5を取り付けることも本実施形態と同様である。
(実施形態2)
図6、図7を参照して、本発明の実施形態2の作業支援システムについて説明する。本実施の形態は、プリント板7の指定された領域に手作業でコーティング剤を塗る作業を支援する例である。本実施形態において、実施形態1と同一の構成部品には同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
本実施形態において、コーティング剤の塗布具10である例えば筆10aには、図示していない歪みセンサが設けられている。この歪みセンサは、コーティング剤を塗布する際に、プリント板7から筆10aに加わる反力(塗布圧力)を検出する圧力検出器として機能するものである。また、プリント板7のコーティング剤を塗布する指定された塗布対象領域を撮像するTVカメラ21が設けられている。さらに、筆10aには、TVカメラ21で撮像した画像上で筆10aを識別しやすいように、マーク22が取り付けられている。このマーク22は、コーティング剤が塗布された塗布実施領域と筆10aを識別しやすいように、例えば、顔料を塗料に加えて形成される。なお、図示していないが、刷毛10bについても、筆10aと同様に、歪みセンサ及びマーク22が設けられている。
【0030】
筆10aの歪みセンサは、図示していない無線又は有線の伝送路により、作業指示システム4に検出した塗布圧力を送信するようになっている。そして、作業指示システム4は、歪みセンサにより検出された塗布圧力が設定値以上のときに塗布作業が行なわれていることを検知するようになっている。そして、作業指示システム4は、塗布作業が行なわれていることを検知しているときに、TVカメラ21で撮像された画像に基いて、筆10aの動きを追跡して、筆10aの軌跡を求める塗布具追跡手段を備えて構成されている。また、作業指示システム4は、塗布具追跡手段により求められた筆10aの軌跡に基いて、塗布済みの領域を演算により求めて塗布実施領域の画像を形成し、モニタ3に表示されているプリント板画像に塗布実施領域の画像を重ねて表示する塗布画像生成手段を備えて構成されている。
【0031】
このように構成される実施形態2の作業支援の動作について説明する。プリント板7自体に無線ICタグ5をクリップなどで取付け、プリント板7に実装されたコーティング対象部品やコーティング仕様といった作業指示情報を表示するモニタ3を見て、コーティング剤を塗布するための筆10a(又は刷毛10b)を手に持ち、コーティング剤が入ったパレット9に筆10a(又は刷毛10b)を浸して、コーティング剤を染み込ませて、作業指示情報を表示しているモニタ3を確認しながら塗布作業を行う。この場合、作業中にプリント板7に実装された部品の制約や作業のやり易さから、プリント板7を持ち上げたり、プリント板7を載置している作業台2を回転させて、プリント板7の向きを変更することがある。このようなときは、プリント板7に取付けられた無線ICタグ5を,実施形態1と同様に無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dで検知し、検知した無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dの角度コード13により、プリント板7の回転角度が検出される。そして、作業指示システム4は、モニタ3に表示されているプリント板画像をプリント板7と同じ角度で回転させて表示する。その結果、手に持ったプリント板7や筆10a(又は刷毛10b)を手から離すことなく、継続した作業が可能となり、作業性向上を図ることができる。
【0032】
また、図6に示すとおり、筆10a(又は刷毛10b)をプリント板7に押し付けると、それらに設けた歪みセンサから塗布圧力が作業指示システム4に入力され、設定値以上の塗布圧力のときに塗布作業が行なわれていると判断される。そして、モニタ3に表示されたプリント板画像に指示された塗布対象領域23の原点24から塗布作業を開始すると、モニタ3に表示されているプリント板画像の塗布対象領域23に塗布実施領域の画像が重ねて表示されるから、作業者は塗布対象領域23が塗り潰し表示された領域を確認することにより、塗布実施領域を容易に認識できる。
【0033】
さらに、塗布作業が終了したところで、モニタ3に表示されている作業確認ボタン25をタッチして押すと、作業指示システム4はモニタ3に表示された塗布対象領域23と塗布実施領域との比較を行い、塗布漏れなどを判定する。塗布漏れがない場合は、モニタ3に表示された作業完了26を点灯させて、作業者に塗布作業の終了を通知する。塗布漏れがある場合は、作業指示システム4からアラームを出し、さらにモニタ3に表示された作業未完了27が点滅し、さらにモニタ画像上に、未作業場所を明示するようにしている。これにより、塗布作業の作業終了時点で作業完了を確認することにより、塗布漏れを判別することができるから、確認作業を減らして作業効率を向上できる。
【0034】
なお、本実施形態では、TVカメラ21により撮像した画像に基いて筆10a(又は刷毛10b)の軌跡を求め、その軌跡に基いて塗布実施領域を判別したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図6に示すように、筆10a(又は刷毛10b)に無線ICタグ30を取り付け、図1又は図2に示した無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dにより、図7に示すように、無線ICタグ30の2次元(XY)位置を検出する。具体的には、無線ICタグリーダ・ライタ6a〜dから電波を出力してから返信されるまでの時間により、XYの距離を計測して無線ICタグ30の2次元(XY)位置を検出する。そして、作業指示システム4により、無線ICタグ30の2次元位置の変化の軌跡を求め、その軌跡に基いて塗布実施領域を演算により求めることができる。この場合も、本実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記の実施形態1,2においては、作業者の意思によって作業対象品の向きを作業しやすい角度に回転させることについて説明したが、これに限らず、例えば、作業指示システム4から作業対象品回転角度の指示をモニタ3に表示し、これに基いて作業者がプリント板7又は作業台2を回転させるようにすることができる。この場合、指示と異なる回転角度に回転させたり、又は、回転させないと、作業指示システム4で指示と違っていることを時間で判断し、作業指示システム4からアラームを出し、注意を促すことができる。
【0036】
また、無線ICタグリーダ・ライタ6を4つ設けて等角度ピッチで配置する例について説明したが、回転角度を細かく検出する場合は、無線ICタグリーダ・ライタ6の数を増やして、さらに小さな角度ピッチ(例えば、15°〜45°ピッチ)で円周状に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1の作業支援システムの外観構成図である。
【図2】本発明の実施形態1の作業支援システムのブロック構成図である。
【図3】タグ検出情報のフォーマットの一例を示す図である。
【図4】モニタ画像を回転する処理の手順を示すフローである。
【図5】本発明の実施形態1の作業支援システムの変形例を説明する外観構成図である。
【図6】本発明の実施形態2の作業支援システムの外観構成図である。
【図7】本発明の実施形態2の作業支援システムの変形例を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1 作業架台
2 作業台
3 モニタ
4 作業指示システム
5、30 無線ICタグ
6,6a〜d 無線ICタグリーダ・ライタ
7 プリント板
8 部品置場
9 パレット
10 塗布具
10a 筆
10b 刷毛
21 カメラ
22 マーク
23 塗装対象領域
24 原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業架台上の鉛直軸回りに回転可能に設けられ作業対象品が載置される作業台と、前記作業対象品の作業指示情報を前記作業対象品の画像とともに画面に表示するモニタと、前記作業対象品に着脱可能に又は前記作業台の縁部に設けられた無線ICタグと、前記作業台の周縁部に対向させて前記作業架台上に設定角度ピッチで円周状に配置され、前記無線ICタグと交信して自己の無線ICタグリーダの角度位置を含むタグ検出情報を出力する複数の無線ICタグリーダと、前記無線ICタグリーダから出力されるタグ検出情報に基いて前記作業対象品又は前記作業台の回転角度を検出する回転角度検出手段と、該回転角度検出手段により検出された回転角度に合せて前記モニタ画面上の前記作業対象品の画像を回転して表示させる画像回転手段を備えてなることを特徴とする作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
さらに、前記作業対象品の指定された領域に手作業でコーティング剤を塗る塗布具に設けられ該塗布具に加わる塗布圧力を検出する圧力検出器と、前記作業対象品の指定された領域を撮像するTVカメラと、前記圧力検出器により検出された塗布圧力が設定値以上のときに前記TVカメラで撮像された前記塗布具の動きを追跡して前記塗布具の軌跡を求める塗布具追跡手段と、該塗布具追跡手段により求められた前記塗布具の軌跡に基いて前記モニタの前記作業対象品の画像に前記コーティング剤の塗布実施領域の画像を重ねて表示する塗布画像生成手段とを備えてなることを特徴とする作業支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の作業支援システムにおいて、
前記塗布具追跡手段は、前記塗布具に表示されたマークを追跡することを特徴とする作業支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業支援システムにおいて、
さらに、前記作業対象品の指定された塗布領域に手作業でコーティング剤を塗る塗布具に設けられ該塗布具に加わる塗布圧力を検出する圧力検出器と、前記塗布具に取り付けられた無線ICタグと、該無線ICタグと交信した前記複数の無線ICタグリーダから出力されるタグ検出情報に基いて前記塗布領域に対応する前記塗布具の2次元位置を求める塗布具位置検出手段と、前記圧力検出器により検出された塗布圧力が設定値以上のときの前記塗布具位置検出手段で検出された前記塗布具の位置変化の軌跡に基いて、前記モニタの前記作業対象品の画像に前記コーティング剤の塗布実施領域を重ねて表示する塗布画像生成手段とを備えてなることを特徴とする作業支援システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の作業支援システムにおいて、
入力される作業確認指令に基いて、前記塗布実施領域と前記指定された塗布領域を比較し、塗布漏れがある場合は警報を出す塗布作業確認手段を設けたことを特徴とする作業支援システム。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−73041(P2010−73041A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241439(P2008−241439)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】