説明

作業機械用のエネルギー回生システム

【課題】作業機械用のエネルギー回生システムを提供する。
【解決手段】第1および第2の可変容量形回生油圧モータが、油圧モータの第1および第2の油供給および油吐出ポートからそれぞれ吐出される油用の吐出流路として機能する第3および第4の流量制御ラインに設けられ、ここで、回生油圧モータの押しのけ容積を制御することによって、吐出油の流量ならびに第3および第4の流量制御ラインの圧力を制御することが許容される。第1および第2の回生油圧モータの回転により電力を発生させる第1および第2の発電機がさらに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータを備える作業機械用のエネルギー回生システムの技術分野に関し、該システムでは吐出流体のエネルギーが回生される。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧掘削機などの作業機械には、ポンプからの加圧流体によって作動される種々の流体圧アクチュエータが設けられ、またこの作業機械に関連して、流体圧アクチュエータから吐出された流体のエネルギーを回生するための方法、例えば、それぞれの流体圧アクチュエータから吐出された流体の圧力をアキュムレータに蓄積するように回収する方法が従来知られている。しかし、これらのアキュムレータは、バッテリなどの他のエネルギー蓄積手段と比較してエネルギー蓄積量に関して大きな容量を必要するという問題、さらに、蓄積時間が短くなるという問題を生じさせる。
【0003】
したがって、流体圧アクチュエータから吐出された流体のエネルギーを電気エネルギーとして回生して蓄積するための方法を改善する必要がある。
【0004】
一般に、流体圧アクチュエータから吐出された流体の流量が、絞りの大きさに基づいてメータアウト制御を行う制御弁によって制御されるように、油圧掘削機などの作業機械が構成される。既知の一実施例において、(特許文献1)に開示されている方法は、吐出流体の流入によって回転駆動されるタービンをこのような制御弁の下流側に設けている。したがって、タービンが回転してエネルギーを回生する前に、制御弁は、流体圧アクチュエータから吐出流体を除去し、この結果、温度が上昇し、これによりエネルギーが消費されて、エネルギー回生効率が低下するという問題が生じる。
【0005】
さらに、(特許文献1)では、流体圧アクチュエータが流体圧モータであることに対する考慮がなされていないが、上部回転体および/または油圧駆動モータを回転させるための油圧回転モータなどの種々の流体圧モータを、油圧掘削機などの作業機械内に含むことができる。このような流体圧モータは、一般に、流量を制御するための制御弁と、モータの始動時または停止時に流体供給流路および/または吐出流路の圧力上昇を防止するためのリリーフ弁とを含む。リリーフ弁を通過する流体の温度が上昇すると、エネルギーを消費することがあるので、この場合、リリーフ弁を通過する流体のエネルギーも回生できることが要求される。
【0006】
【特許文献1】特開第2002−195218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、当業者に知られているこの課題および他の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この方法により、流体圧シリンダからの吐出流体の流入によって回転駆動されるタービンが吐出流路に設けられ、この場合、タービンの駆動力により、発電機が電気エネルギーを発生させることが許容される。このようにして、吐出流体のエネルギーを電気エネルギーとして効率的に回生して蓄積することができ、さらに、電気エネルギーをエンジンへの代替動力源として利用できるので、環境に優しい方法となる。
【0009】
一形態では、本開示は、作業機械用のエネルギー回生システムを提供する。システムは、流体を供給/吐出することによって作動されるように適応された流体圧アクチュエータを含む。さらに、システムは、流体圧アクチュエータから吐出される流体用の吐出流路にある可変容量形回生流体圧モータであって、該回生流体圧モータの押しのけ容積を制御することによって、流体圧アクチュエータからの吐出流体の流量ならびに吐出流路の圧力を制御することが許容される可変容量形回生流体圧モータを含む。その上、システムは、回生流体圧モータを少なくとも部分的に回転させることによって吐出流体のエネルギーを電気エネルギーとして回生するためのエネルギー回生装置を含む。
【0010】
他の形態では、本開示は、第1および第2の供給/吐出ポートを有する油圧アクチュエータと、前記第1および第2の供給/吐出ポートにそれぞれ接続されている第1および第2の流量制御ラインを含む流量制御回路とを含む作業機械を提供する。さらに、作業機械は、前記流量制御回路内の少なくとも1つの可変容量形油圧モータ、および前記少なくとも1つの可変容量形油圧モータと前記油圧アクチュエータとの間の前記流量制御回路内に配置された少なくとも1つの感圧手段を含む。その上、作業機械は、前記油圧アクチュエータの吐出流体のエネルギーの少なくとも一部を電気エネルギーとして回生するための、可変容量形油圧モータに接続されたエネルギー回生装置を含む。
【0011】
さらに他の形態では、本開示は、油圧エネルギー回収システムを作動させる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、油圧モータ1(例えば油圧掘削機の上部回転体を回転させるための油圧回転モータ)は、油圧掘削機などの作業機械内に設けられ、第1および第2の油供給および油吐出ポート1a、1bを有する油圧モータ1は、両方向回転型であり、第1の油供給および油吐出ポート1aに圧油を供給して第2の油供給および油吐出ポート1bから油を吐出した場合に一方向に回転するように、また第2の油供給および油吐出ポート1bに圧油を供給して第1の油供給および油吐出ポート1aから油を吐出した場合には反対方向に回転するように配置される。
【0013】
油圧モータ1は、油圧モータ1への圧油供給源としての油圧ポンプ2を含む。油圧ポンプ2は、主動力源として作業機械に取り付けられたエンジン32と、補助動力源として以下に記載するモータ33とを使用して駆動されるように適応され、この場合、油圧ポンプ2と油圧モータ1との間には、油圧回路が設けられ、この油圧回路は、油圧ポンプ2の吐出側に接続された吐出ライン3、吐出ライン3の下流側に接続された流量制御回路4、流量制御回路4と油圧モータ1の第1の油供給および油吐出ポート1aとを接続するように適応された第1のモータ側ライン5、および流量制御回路4と油圧モータ1の第2の油供給および油吐出ポート1bとを接続するように適応された第2のモータ側ライン6を含む。
【0014】
吐出ライン3の中間部には、分岐するように、油タンク7への戻りライン8が形成される。戻りライン8には、以下に記載する制御装置10からのコマンドに少なくとも部分的に基づいて作動するように配置されたバイパス弁9がある。さらに、吐出ライン3において、戻りライン8用の分岐点の下流側にはチェック弁11が配置され、このチェック弁11により、油圧ポンプ2および戻りライン8への油の逆流が防止される。
【0015】
流量制御回路4は、以下に説明するような長方形の環状形態に第1、第2、第3および第4の流量制御ライン12、13、14、15を接続することによって形成される。吐出ライン3は、第1の流量制御ライン12と第2の流量制御ライン13との間の接続部Aに接続される。第1のモータ側ライン5は、第1の流量制御ライン12と第3の流量制御ライン14との間の接続部Bに接続される。第2のモータ側ラインは、第2の流量制御ライン13と第4の流量制御ライン15との間の接続部Cに接続される。最後に、油タンク7に至る吐出ライン16は、第3の流量制御ライン14と第4の流量制御ライン15との間の接続部Dに接続される。
【0016】
第1の流量制御ライン12には、吐出ライン3から第1のモータ側ライン5への供給油の流量を制御するように適応された第1のメータインバルブ17が配置される。第2の流量制御ライン13には、吐出ライン3から第2のモータ側ライン6への供給油の流量を制御するように適応された第2のメータインバルブ18が配置される。第1および第2のメータインバルブ17、18は、制御装置10によって操作可能に制御される。
【0017】
また、第3の流量制御ライン14には、第1の可変容量形回生油圧モータ19が配置される。第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積は、制御装置10から押しのけ容積制御手段19aに出力される制御コマンドに基づいて、ゼロから所定の最大値まで変化し、このことにより、第3の流量制御ライン14の流量をゼロから所定の最大値まで変更することが許容される。次に、第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積の変化により、第1のモータ側ライン5から吐出ライン16への吐出油の流量制御(メータアウト制御)と第1のモータ側ライン5の圧力制御とが許容される。さらに、第3の流量制御ライン14には、第1の回生油圧モータ19の上流側における第3の流量制御ライン14の圧力を検出するための第1の圧力センサ20が配置され、この第1の圧力センサ20は、検出信号を制御装置10に出力するために配置される。
【0018】
第4の流量制御ライン15には、第3の流量制御ライン14に配置された第1の回生油圧モータ19および第1の圧力センサ20と同様の第2の回生油圧モータ21および第2の圧力センサ22が配置される。次に、制御装置10から第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積制御手段21aに出力される制御コマンドに基づいて、第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積が変化することにより、第2のモータ側ライン6から吐出ライン16への吐出油の流量制御(メータアウト制御)と第2のモータ側ライン6の圧力制御とが許容される。
【0019】
第1および第2の発電機23と24は、第1および第2の回生油圧モータ19と21にそれぞれ連動するように接続される。第1および第2の回生油圧モータ19と21のトルクにより、第1および第2の発電機23と24を駆動させて電力を発生させることができる。
【0020】
第3および第4の流量制御ライン14と15は、第1および第2の回生油圧モータ19と21をそれぞれバイパスするためのバイパスライン14aと15aも含む。バイパスライン14aと15aには、吐出ライン16から第1のモータ側ライン5および第2のモータ側ライン6への油の流れを許容するが、反対方向への油の流れを防止するように配置されたチェック弁25と26がそれぞれ配置される。このようにして、第1のモータ側ライン5または第2のモータ側ライン6が減圧状態になった場合に油タンク7からの油の補給が行われる。
【0021】
マイクロコンピュータ等からなる制御装置10は、油圧モータ1用の制御レバー27から出力されたコマンド信号と、第1および第2の圧力センサ20と22から出力された検出信号とを受信し、次に、入力された信号に基づいて、油圧ポンプ2の押しのけ容積制御手段2a、バイパス弁9、第1および第2のメータインバルブ17と18、第1および第2の回生油圧モータ19と21の押しのけ容積制御手段19aと21a等に制御コマンドを出力する。
【0022】
制御装置10から出力された制御コマンドに関して、油圧モータ1用の制御レバー27が停止位置に位置決めされた(すなわち制御レバー27で操作が行われなかった)場合、制御装置10は、「弁の開口」という制御コマンドをバイパス弁9に出力し、一方、「弁の閉鎖」を第1および第2のメータインバルブ17と18に出力し、さらに、「押しのけ容積ゼロ」という制御コマンドを第1および第2の回生油圧モータ19と21の押しのけ容積制御手段19aと21aに出力する。このようにして、油圧ポンプ2から強制的に送られた油は戻りライン8を通して油タンク7に戻され、ここで、第1〜第4の流量制御ライン12〜15は閉鎖状態にあるので、油が油圧モータ1に供給されることもそこから吐出されることもなく、したがって、油圧モータ1は停止する。
【0023】
他方、油圧モータ1が一方向に回転するように指示した位置に制御レバー27があった場合、制御装置10は、「弁の閉鎖」という制御コマンドをバイパス弁9に出力し、一方、「弁の開口」という制御コマンドを第1のメータインバルブ17に出力し、また「弁の閉鎖」という制御コマンドを第2のメータインバルブ18に出力する。この場合、制御レバー27の動作の大きさの増大または減少に従って、第1のメータインバルブ17の開口の大きさが増大または減少するように制御される。また、制御装置10は、第1の圧力センサ20によって検出された第3の流量制御ライン14の圧力P1が所定のリリーフ圧PS以下であった場合、「押しのけ容積ゼロ」という制御コマンドを第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積制御手段19aに出力し、一方、圧力P1が所定のリリーフ圧PSよりも大きかった場合、所定のリリーフ押しのけ容積になるような制御コマンドを前記押しのけ容積制御手段19aに出力する。さらに、制御装置10は、第2の圧力センサ22によって検出された第4の流量制御ライン15の圧力P2が所定のリリーフ圧以下であった場合、制御レバー27の動作の大きさの増大または減少に従って押しのけ容積が増大または減少されるように制御コマンドを第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積制御手段21aに出力し、また圧力P2が所定のリリーフ圧PSよりも大きかった場合、リリーフ押しのけ容積になるような制御コマンドを前記押しのけ容積制御手段21aに出力する。この場合、制御レバー27の動作の大きさに対応する第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積が、リリーフ押しのけ容積よりも大きかった場合、モータは、第4の流量制御ライン15の圧力に関係なく、制御レバー27の動作の大きさに対応する押しのけ容積になるように制御される。
【0024】
したがって、油圧ポンプ2から強制的に送られた油は、吐出ライン3を通って第1の流量制御ライン12に流れ、次に、第1のモータ側ライン5を通して油圧モータ1の第1の油供給および油吐出ポート1aに供給されるように、油の流量が、第1の流量制御ライン12に配置された第1のメータインバルブ17によって制御される。他方、第2の油供給および油吐出ポート1bからの吐出油は、第2のモータ側ライン6を通って第4の流量制御ライン15に流れ、次に、吐出ライン16を通して油タンク7に流入させるように、流量が、第4の流量制御ライン15に配置された第2の回生油圧モータ21によって制御され、これにより、油圧モータ1が一方向に回転する。さらに、油圧モータ1が一方向に回転すると、油圧モータ1からの吐出流路における流量を制御する第2の回生油圧モータ21が少なくとも部分的に回転するので、第2の発電機24が駆動されて電力を発生させる。
【0025】
一方、制御レバー27を停止位置に戻して、上記の一方向の回転状態で作動していた油圧モータ1を停止させた場合、第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積が、制御レバー27からの操作コマンドに基づきゼロになるように制御されて、第4の流量制御ライン15が閉状態になり、ここで、油圧モータ1は、慣性負荷が付与されて依然として回転しているので直ちに停止することができず、またこのように回転している油圧モータ1から吐出された油は、第2のモータ側ライン6を通って第4の流量制御ライン15に流れて、第4の流量制御ライン15の圧力を上昇させる。第4の流量制御ライン15の圧力P2は、第2の圧力センサ22によって検出され、ここで、第4の流量制御ライン15の圧力P2が所定のリリーフ圧PS以上になった場合、制御装置10は、上述したように、リリーフ押しのけ容積になるような制御コマンドを第2の回生油圧モータ21に出力する。このようにして、第4の流量制御ライン15は油が通過している状態にあり、ここで、第2の回生油圧モータ21は、所定のリリーフ圧PSを保持する程度の回転抵抗を有し、次に、吐出油が油圧モータ1から油タンク7に流れることが許容される。したがって、第2の回生油圧モータ21は、モータの停止時にリリーフ制御を行い、またリリーフ制御のために作動されている場合には、第2の回生油圧モータ21の回転により、第2の発電機24が駆動されて電力を発生させる。
【0026】
また、油圧モータ1が一方向に回転すると、第1の流量制御ライン12および第1のモータ側ライン5は、油圧モータ1への圧油供給流路として機能し、ここで、吐出ライン16を介して油タンク7に至る第3の流量制御ライン14は、圧油供給流路の中間部に配置された接続部Bに接続される。例えば、油圧モータ1が一方向に回転すると、第3の流量制御ライン14は、圧油供給流路に接続されたリリーフ流路に対応する。
【0027】
一方、油圧モータ1が停止状態から回転状態に変化した場合、油圧モータ1に付与された慣性負荷によって始動するモータのタイムラグにより、油圧モータ1への圧油供給流路の圧力が上昇する。上昇した圧力は、第1の圧力センサ20によって検出されるように、接続部Bを通って第3の流量制御ライン14に流れる。ここで、第3の流量制御ライン14の圧力P1が所定のリリーフ圧PSよりも大きくなった場合、第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積は、上述したように、制御装置10からのコマンドに基づいてリリーフ押しのけ容積になるように制御され、これにより、圧油供給流路の圧油は第3の流量制御ライン14と吐出ライン16とを通して油タンク7に逃がされる。このようにして、第1の回生油圧モータ19は、モータの始動時にリリーフ制御を行うことが可能であり、またこのようにリリーフ制御のために作動されている第1の回生油圧モータ19の回転により、第1の発電機23を駆動させて電力を発生させることが可能である。
【0028】
他方、油圧モータ1が反対方向に回転するように指示した位置に制御レバー27が操作された場合、制御装置10は、「弁の閉鎖」という制御コマンドをバイパス弁9に出力し、また「弁の閉鎖」という制御コマンドを第1のメータインバルブ17に出力し、一方、「弁の開口」という制御コマンドを第2のメータインバルブ18に出力する。この場合、制御レバー27の動作の大きさの増大または減少に従って、第2のメータインバルブ18の開口部の大きさが増大または減少するように制御される。また、制御装置10は、第1の圧力センサ20によって検出された第3の流量制御ライン14の圧力P1が、所定のリリーフ圧PS以下であった場合、制御レバー27の動作の大きさの増大または減少に従って押しのけ容積が増大または減少されるように制御コマンドを第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積制御手段19aに出力し、一方、圧力P1が所定のリリーフ圧PSよりも大きかった場合、リリーフ押しのけ容積になるような制御コマンドを前記押しのけ容積制御手段19aに出力する。ここで、制御レバー27の動作の大きさに対応する第1の回生油圧モータ19の押しのけ容積が、リリーフ押しのけ容積よりも大きかった場合、モータは、第3の流量制御ライン14の圧力に関係なく、制御レバー27の動作の大きさに対応する押しのけ容積になるように制御される。さらに、制御装置10は、第2の圧力センサ22によって検出された第4の流量制御ライン15の圧力P2が、所定のリリーフ圧PS以下であった場合、「押しのけ容積ゼロ」という制御コマンドを第2の回生油圧モータ21の押しのけ容積制御手段21aに出力し、一方、圧力P2が所定のリリーフ圧PSよりも大きかった場合、リリーフ押しのけ容積になるような制御コマンドを前記押しのけ容積制御手段21aに出力する。したがって、油圧ポンプ2から強制的に送られた油は吐出ライン3を通って第2の流量制御ライン13に流れ、次に、第2のモータ側ライン6を通して油圧モータ1の第2の油供給および油吐出ポート1bに供給されるように、油の流量が、第2の流量制御ライン13に配置された第2のメータインバルブ18によって制御される。他方、一方の側の第1の油供給および油吐出ポート1aからの吐出油は第1のモータ側ライン5を通って第3の流量制御ライン14に流れ、次に、吐出ライン16を通して油タンク7に流入させるように、油の流量が、第3の流量制御ライン14に配置された第1の回生油圧モータ19によって制御され、これにより、油圧モータ1が反対方向に回転する。さらに、油圧モータ1が反対方向に回転すると、油圧モータ1からの吐出流路における流量を制御する第1の回生油圧モータ19が回転するので、第1の発電機23が駆動されて電力を発生させる。
【0029】
油圧モータ1の反対方向の回転が停止した場合、上述したような一方向の回転の場合と同様に、吐出流路に配置された第1の回生油圧モータ19はリリーフ制御を行い、またこのようにリリーフ制御のために作動されている第1の回生油圧モータ19の回転により、第1の発電機23が駆動されて電力を発生させる。また、油圧モータ1が反対方向に回転し始めた場合、第4の流量制御ライン15は、圧油供給流路に接続されたリリーフ流路として機能し、ここで、リリーフ流路に配置された第2の回生油圧モータ21はリリーフ制御を行い、またこのようにリリーフ制御のために作動されている第2の回生油圧モータ21の回転により、第2の発電機24が駆動されて電力を発生させる。
【0030】
上述したように、油圧モータ1の回転時、始動時および停止時に、第1および第2の回生油圧モータ19と21の回転により、第1および第2の発電機23と24が駆動されて電力を発生させ、また電力が、キャパシタ29と蓄電バッテリ30とに蓄電されるように、ダイオード28によって整流される。次に、キャパシタ29と蓄電バッテリ30とに蓄電されている電力は、直流電力を交流電力に変換するためのおよび電圧を制御するための変換器31を介して、油圧ポンプ2用の補助動力源として機能するモータ33に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上述したような実施形態では、油圧モータ1の回転時に、圧油は一方の油供給および油吐出ポート1a(または他方の油供給および油吐出ポート1b)に供給され、一方、油は他方の油供給および油吐出ポート1b(または一方の油供給および油吐出ポート1a)から吐出され、また第2の油供給および油吐出ポート1b(または一方の油供給および油吐出ポート1a)からの吐出油は第2のモータ側ライン6(または第1のモータ側ライン5)を通って第4の流量制御ライン15(または第3の流量制御ライン14)に流れ、次に、上述したように吐出ライン16を通して油タンク7に流入させるべく、油の流量が、第4の流量制御ライン15(または第3の流量制御ライン14)に配置された第2の可変容量形回生油圧モータ21(または第1の回生油圧モータ19)によって制御される(メータアウト制御)。第2の回生油圧モータ21(または第1の回生油圧モータ19)の回転により、第2の発電機24(または第1の発電機23)が駆動されて電力を発生させる。
【0032】
また、上述したように、油圧モータ1の始動時または停止時に、第1および第2の回生油圧モータ19と21は圧力制御(リリーフ制御)を行い、この圧力制御において、供給流路または吐出流路の圧力が所定のリリーフ圧以上になった場合に、流路の油を油タンク7に導くことによって、圧油供給流路または油吐出流路の圧力上昇が防止され、ここで、圧力制御によって、第1および第2の回生油圧モータ19および21が回転することにより、第1および第2の発電機23と24も駆動されて電力を発生させる。第1および第2の発電機23と24の駆動によって発生した電力は、キャパシタ29と蓄電バッテリ30とに蓄電され、また蓄電された電力は、油圧ポンプ用の補助動力源として機能するモータ33に供給することが可能である。
【0033】
上述したように、本発明の実施形態では、第1および第2の回生油圧モータ19と21は、回転時の油圧モータ1からの吐出油の流入によって回転されるか、あるいは吐出油は、モータの始動時または停止時に逃がされ、また第1および第2の発電機23と24は、第1および第2の回生油圧モータ19と21の回転駆動によって電力を発生させる。このようにして、吐出油のエネルギーを電気エネルギーとして回生でき、ここで、第1および第2の回生油圧モータ19と21は、第1および第2の発電機23と24を駆動させるだけでなく、油圧モータ1からの吐出油の流量制御ならびに圧油供給流路および油吐出流路の圧力制御(リリーフ制御)も行う。
【0034】
したがって、油圧モータ1から油を吐出するための流量制御弁またはリリーフ弁を設ける必要がなくなり、この結果、流量制御弁またはリリーフ弁の通過時におけるエネルギー損失がなくなる。このようにして、吐出油のエネルギーを電気エネルギーとして高効率で回生でき、これにより、エネルギー回生効率の向上を達成することが可能になる。油圧ポンプ2を駆動させるための補助動力源となって機能するモータ33の動力源として、回生電気エネルギーを用いると、エンジン32によって消費される化石燃料の低減が許容されるので、省エネルギーに貢献でき、また環境にも優しい。
【0035】
さらに、吐出油用の流量制御弁もリリーフ弁も不要になり、部品数の低減に貢献できる。油圧モータ1の一方の油供給および油吐出ポート1a(または他方の油供給および油吐出ポート1b)への圧油供給流路に接続されたリリーフ流路が、一方の油供給および油吐出ポート1a(または他方の油供給および油吐出ポート1b)からの吐出流路として機能するように、回路が構成されるので、油圧モータ1が一方向に(または反対方向に)回転し始めた場合に圧油供給流路の圧力を制御する第1の回生油圧モータ19(または第2の回生油圧モータ21)は、モータが反対方向に(または一方向に)回転した場合に吐出流量制御を行い、また反対方向の(または一方向の)回転が停止した場合には吐出流路の圧力制御を行う。したがって、リリーフ流路および吐出流路のために、別々の回生流体圧モータをそれぞれ設ける必要がなくなり、この結果、回生油圧モータの数、およびそれに接続されている発電機の数が低減されて、コスト低減および空間節約に貢献できる。
【0036】
次に、本発明が上記の実施形態に限定されず、油圧ポンプ2を駆動させるための動力源としてモータ33が十分である場合にエンジンを使用することなくモータ33のみによって油圧ポンプ2が駆動される図2に示した第2の実施形態と同様に、本発明を構成することができることが認識される。また、発電機23と24によって発生した電力を蓄電するための装置は、キャパシタ29または蓄電バッテリ30に限定されず、図3に示した第3の実施形態と同様に構成することができる。この実施形態は、発電機23と24によって発生した電力を用いて水を電気分解して水素と酸素を発生させるための電解セル34と、電解セル34に発生した水素を吸蔵するための水素貯蔵合金を含む水素貯蔵装置35と、水素と酸素を燃料等として用いて電力を発生させて、燃料電池装置37から供給された電力を用いてモータ33を駆動させるための燃料電池36とからなる燃料電池装置37を含む実施例である。第2および第3の実施形態において、第1の実施形態に記載されている構成要素に共通の(それと同一の)構成要素は、それらの説明を省略するために、同じ参照番号で示されていることに留意されたい。
【0037】
さらに、上記の実施形態について、流体圧アクチュエータとして油圧モータを説明してきたが、上記の実施形態を油圧シリンダに当てはめてもよく、さらに、油圧の分野の加圧流体のみならず、空気圧の分野の加圧流体にも広く適用することが可能である。
【0038】
最後に、上記の実施形態は、加圧流体を流体圧アクチュエータに供給するように適応されたポンプを駆動させるためのモータ用の動力供給源として、流体圧アクチュエータからの吐出流体のエネルギーを回生することによって得られる電気エネルギーを利用するが、上記の実施形態に限定されず、当然、作業機械に取り付けられた種々の電気機械のために電気エネルギーを利用できることが理解されるであろう。当業者は、包含した請求項、図面、および発明の詳細な説明に基づいて、上記の開示のこれらのおよび他の利点または形態を理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本開示の第1の実施形態によるエネルギー回生システムの図面である。
【図2】同じ要素が図1と同じ番号を有する本開示の第2の実施形態によるエネルギー回生システムの図面である。
【図3】同じ要素が図1と図2と同じ番号を有する本開示の第3の実施形態によるエネルギー回生システムの図面である。
【符号の説明】
【0040】
1 油圧モータ
1a 第1の油供給および油吐出ポート
1b 第2の油供給および油吐出ポート
2 油圧ポンプ
2a 押しのけ容積制御手段
3 吐出ライン
4 流量制御回路
5 第1のモータ側ライン
6 第2のモータ側ライン
7 油タンク
8 戻りライン
9 バイパスライン
10 制御装置
11 チェック弁
12 第1の流量制御ライン
13 第2の流量制御ライン
14 第3の流量制御ライン
14a バイパスライン
15 第4の流量制御ライン
15a バイパスライン
16 吐出ライン
17 第1のメータインバルブ
18 第2のメータインバルブ
19 第1の回生モータ
19a 押しのけ容積制御手段
20 第1の圧力センサ
21 第2の回生モータ
21a 押しのけ容積制御手段
22 第2の圧力センサ
23 第1の発電機
24 第2の発電機
25 チェック弁
26 チェック弁
27 制御レバー
28 ダイオード
29 キャパシタ
30 蓄電バッテリ
31 変換器
32 エンジン
33 モータ
A 接続ポート
B 接続ポート
C 接続ポート
D 接続ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械用のエネルギー回生システムであって、
流体を供給/吐出することによって作動されるように適応された流体圧アクチュエータと、
流体圧アクチュエータから吐出される流体用の吐出流路にある可変容量形回生流体圧モータであって、該回生流体圧モータの押しのけ容積を制御することによって、流体圧アクチュエータからの吐出流体の流量ならびに吐出流路の圧力を制御することが許容される可変容量形回生流体圧モータと、
回生流体圧モータを少なくとも部分的に回転させることによって吐出流体のエネルギーを電気エネルギーとして回生するためのエネルギー回生装置と
を備える作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項2】
流体圧アクチュエータからの吐出流体の流量がゼロから所定の最大値に変化するように、回生流体圧モータの押しのけ容積が制御される請求項1に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項3】
供給流路の中間部と流体タンクとの間の流体圧アクチュエータに供給される流体用の供給流路に接続されたリリーフ流路と、
リリーフ流路にある可変容量形回生流体圧モータであって、該回生流体圧モータの押しのけ容積を制御することによって、流体圧アクチュエータへの供給流路の圧力を制御することが許容される可変容量形回生流体圧モータと、
回生流体圧モータを少なくとも部分的に回転させることによって、リリーフ流路の流体のエネルギーを電気エネルギーとして回生するためのエネルギー回生装置と
をさらに備える請求項2に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項4】
回生流体圧モータによって行われる吐出流路および/または供給流路の圧力制御がリリーフ制御であり、リリーフ制御において、吐出流路および/または供給流路の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に、吐出流路および/または供給流路の流体が逃がされる請求項3に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項5】
流体圧アクチュエータへの供給流体の流量が、供給流量制御弁によって制御される請求項1に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項6】
流体圧アクチュエータが、2つの流体供給および吐出ポートを有する両方向回転流体圧モータであり、
回生流体圧モータが、流体供給および吐出ポートのそれぞれから吐出される流体用の吐出流路に設けられた可変容量形流体圧モータである請求項2に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項7】
リリーフ流路が、供給流路の中間部と流体タンクとの間の両方向回転流体圧モータの流体供給および吐出ポートの一方に供給される流体用の供給流路に接続され、
リリーフ流路が、流体供給および吐出ポートの一方から吐出される流体用の吐出流路として機能するように適応される請求項6に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項8】
流体圧アクチュエータ操作ツールからの操作信号と、流体圧アクチュエータの吐出流路および/または供給流路の圧力を検出するための圧力検出手段からの検出信号とを受信するように操作可能な制御装置が作業機械に装備され、さらに、前記制御装置が、操作信号と検出信号とに基づいて、制御コマンドを回生流体圧モータ用の押しのけ容積制御手段に出力するように操作可能である請求項7に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項9】
エネルギー回生装置によって得られた電気エネルギーが、加圧流体を流体圧モータに供給するように適応されたポンプを駆動させるためのモータ用の動力供給源として用いられる請求項1に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。
【請求項10】
モータがポンプ用の補助動力源として使用される請求項9に記載の作業機械用のエネルギー回生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−162458(P2007−162458A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334536(P2006−334536)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】